説明

芳香発生装置

【課題】適度な強さの芳香を効率よく発生させる機能を有し、長時間使用する場合にも芳香が強過ぎないために快適性に優れた芳香発生装置を提供することを目的とする。
【解決手段】芳香発生装置1は、芳香性の燃焼性液体を浸して吸引する基部11と、この基部11の外周端部に環状で一体化されて加熱触媒を含む加熱部13と、この加熱部13の中心部分に多孔質材料で前記基部11と一体化され、前記基部11で吸引された燃焼性液体を前記加熱部13からの加熱で気化させる気化部12と、前記加熱部13と前記気化部12との間に前記基部11から上方へ拡がる断面を持つ凹溝状の溝部14から構成される。前記気化部12が外気との開口部を持たないために芳香が強過ぎず、また前記気化部12がテーパー面及び前記加熱部13よりも高い頂上部を持ち、前記加熱部13の輻射熱の強さが前記気化部12の下方では強く上方では弱いことで芳香発生効率の向上効果が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質材料からなり触媒燃焼により芳香を発生する芳香発生装置に関し、特に芳香を外気に放出する気化部における芳香発生機能の向上により、適度な強さの芳香が発生して長時間の使用にも芳香が強過ぎないために快適性に優れた芳香発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術となる芳香発生装置は、特開2002−517699号公報(第1の背景技術)、特開2005−16925号公報(第2の背景技術)に開示されるものがある。この各背景技術を図6及び図7に従来の芳香発生装置の概略構成断面図として示す。
図6における、この第1の背景技術に係る芳香発生装置としての、触媒燃焼バーナ及びそれを備えたフラスコは、多孔性材料により形成される触媒燃焼バーナ103に関するものであり、可燃液体をバーナ103へ運ぶように設計された芯を受容する実質的に軸状のキャビティ106を下部103aに備え、触媒を収納するとともに触媒の無い中央ゾーン140を包囲し、気化ゾーンを形成する環状の外周ゾーン107を上部103bに備える。上記バーナは、上部103bに開口108を備え、該開口108は、キャビティ106の上部124を外気に連通させる構成である。
【0003】
また、図7における、この第2の背景技術に係る芳香発生装置としての、多孔性物質からなる触媒燃焼バーナー(catalyticcombustionburner)および該触媒燃焼バーナーが取り付けられた触媒燃焼フラスコ(catalyticcombustionflask)は、多孔性物質からなる触媒燃焼バーナー213を備え、この触媒燃焼バーナー213は上記多孔性物質の細孔に浸入する燃焼性組成物を触媒燃焼バーナー213に搬送する燃焼器具用芯205と連携するように設計されている。上記触媒燃焼バーナー213は、触媒207を担持し、気化領域を形成する触媒を含まない中央領域218を取り囲む周縁領域216を含んでいる。上記周縁領域216と中央領域218とは、触媒燃焼バーナー213の上部213bに位置している。触媒燃焼バーナー213は、上方に開くテーパーが付いている構成である。
【特許文献1】特開2002−517699号公報
【特許文献2】特開2005−16925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記第1の背景技術に係る芳香発生装置は以上のように構成されていたことから、芳香を愉しむという目的で内部の可燃液体102が芳香性を持つ場合には、開口108により可燃液体102から気化した芳香が外気に直接放出されるために、芳香を愉しむという目的に対して芳香が強過ぎることとなり、長時間の使用には不向きで快適性を損なうという課題を有する。
【0005】
また、前記第2の背景技術に係る芳香発生装置は以上のように構成されていたことから、芳香を愉しむという目的で内部の燃焼性組成物が芳香性を持つ場合には、芳香を発生させる前記中央領域218が、外気に連通された開口部を具備しない構造であり、且つ外気と接する表面積が小さいために、十分な量の芳香を外気に放出することが困難で芳香を狭く限定された範囲にしか拡散できず、芳香を愉しむという目的に対して満足な量の芳香が得られないという課題を有する。
【0006】
特に、前記触媒207を担持した前記周縁領域216と前記中央領域218とがスリット状の溝部を介して配設される構成であるものの、この溝部のスリットが前記触媒燃焼バーナー213の下部において前記燃焼器具用芯205と連携する基部側から略均等な幅で形成されていることから、前記周縁領域216における前記触媒207の燃焼によって、前記中央領域218は下方から上方にかけて略一定の温度で加熱される。このため、前記中央領域218の下方において大部分が液体状態の燃焼性組成物を気化させるのに十分強い熱量で前記触媒207が燃焼する場合には、前記中央領域218の上方においても前記中央領域218の下方と同様の十分強い熱量が与えられ、大部分が気化して芳香を発生する燃焼性組成物に対して更なる燃焼が行われることとなり、発生する芳香の量を減少若しくは変質させるという課題を有する。また、前記中央領域218の上方において、前記中央領域218の下方で既に気化して芳香を発生する燃焼性組成物に対して、余分な燃焼による芳香量の減少若しくは変質を防ぐ目的で十分弱い熱量で前記触媒207が燃焼する場合には、前記中央領域218の下方においても前記中央領域218の上方と同様の十分弱い熱量が与えられ、燃焼性組成物の気化が十分に促進されないこととなり、液体状態の燃焼性組成物が前記中央領域218の下方においても残存して、発生する芳香の量自体が少なくなるという課題を有する。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、芳香性のある燃焼性液体に対して、適度な強さの芳香を効率よく発生し、長時間使用する場合にも芳香が強過ぎないために快適性に優れた芳香発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る芳香発生装置は、多孔質材料にて形成され、芳香性を有する燃焼性液体を浸透吸引する基部と、当該基部の外周端部に略円環状の多孔質材料で一体的に形成され、当該多孔質材料に金属を加熱触媒として含ませてなる加熱部と、当該略円環状の加熱部の中心部分に多孔質材料で前記基部と一体的に形成され、前記基部で吸引された燃焼性液体を前記加熱部からの加熱により気化させる気化部とを備える芳香発生装置において、前記加熱部と前記気化部との間に断面形状が基部から拡開状の凹溝部として形成される隔離部を備えるものである。このように本発明によれば、多孔質材料にて形成され、芳香性を有する燃焼性液体を浸透吸引する基部と、当該基部の外周端部に略円環状の多孔質材料で一体的に形成され、当該多孔質材料に金属を加熱触媒として含ませてなる加熱部と、当該略円環状の加熱部の中心部分に多孔質材料で前記基部と一体的に形成され、前記基部で吸引された燃焼性液体を前記加熱部からの加熱により気化させる気化部とを備える芳香発生装置において、前記加熱部と前記気化部との間に断面形状が基部から拡開状の凹溝部として形成される隔離部を備えることから、隔離部の断面形状が基部から拡開状であるために、前記気化部の下方では前記加熱部からの輻射熱が強く照射され、前記気化部の下方では前記加熱部からの輻射熱が弱く照射されることとなり、大部分が液体状態である前記燃焼性液体が含まれる前記気化部の下方では前記燃焼性液体の気化が促進され、十分に気化して芳香性を発する前記燃焼性液体が含まれる前記気化部の上方では前記燃焼性液体の燃焼を抑制することで、気化により芳香を発生する前記燃焼性液体に対して余分な燃焼による芳香成分の消失が低減される。
【0009】
また、本発明に係る芳香発生装置は必要に応じて、前記隔離部が、前記気化部との境界面において凹凸形状を有するものである。このように本発明によれば、前記隔離部が、前記気化部との境界面において凹凸形状を有することから、前記気化部において外気と接する表面積がより大きくなることとなり、また、前記加熱部から前記気化部に照射される輻射熱の表面積が増大することとなり、前記気化部が外気に連通された開口部を具備しない構造にも関わらず、より多量の芳香を発生させることができる。
【0010】
また、本発明に係る芳香発生装置は必要に応じて、前記気化部の頂上部が、前記加熱部の頂上部よりも高い位置に配設されるものである。このように本発明によれば、前記気化部の頂上部が、前記加熱部の頂上部よりも高い位置に配設されるために、前記気化部において外気と接する表面積がより大きくなることとなり、また、前記加熱部から前記気化部に照射される輻射熱の表面積が増大することとなり、前記気化部が外気に連通された開口部を具備しない構造にも関わらず、より多量の芳香を発生させることができる。
【0011】
また、本発明に係る芳香発生装置は必要に応じて、前記隔離部が、前記加熱部との境界面において鉛直形状を有するものである。このように本発明によれば、前記隔離部が、前記加熱部との境界面において鉛直形状を有することにより、前記加熱部から前記気化部に照射される輻射熱が、前記境界面に対して垂直方向に発生することから、前記気化部に照射される輻射熱の強度が最大となり前記気化部が吸収する熱量が最大となるために、前記気化部における燃焼性液体の気化が一層促進され、前記気化部から外気への芳香の発生量をより一層増大させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る芳香発生装置を、図1及び図2に基づいて説明する。
この図1は本発明の第1の実施形態に係る芳香発生装置の概略構成図、図2は図1記載の芳香発生装置を装着したアロマディフューザーの全体断面図を示す。
前記各図において、本発明の第1の実施形態に係る芳香発生装置1は、芳香性のある燃焼性液体32が収納される容器30の開口部31に装着され、この容器30の底面側へ垂下する芯体21を介して前記燃焼性液体32を浸して吸引する基部11と、この基部11の外周端部に略円環状の多孔質材料で一体的に形成されて加熱触媒を含む加熱部13と、この略円環状の加熱部13の中心部分に多孔質材料で前記基部11と一体的に形成され、前記基部11で吸引された燃焼性液体32を前記加熱部13からの加熱により気化させる気化部12と、前記加熱部13と前記気化部12との間に断面形状が基部11から上方へ拡がる断面を持つ凹溝状の溝部14とを備える構成である。
【0013】
また、前記基部11は、素材となる多孔質材料としてセラミックが好ましく、例えばカオリンやコージェライトを使用することができる。また、前記芯体21の一部を包囲して収容するための空間として鉛直方向に沿った軸方向に延びる空洞2が設けられる。
また、前記加熱部13は前記セラミック等の多孔質材料で作製され、前記加熱部の内部には触媒が埋め込まれており、この触媒は例えば元素周期律表VIII族の金属をベースに
作製され、例えば白金(Pt)13aを使用することができる。
【0014】
また、前記気化部12は前記セラミック等の多孔質材料で作製され、前記気化部12の外周面はテーパー面を持つ。
また、前記溝部14は、前記セラミック等の多孔質材料で作製され、例えば、前記加熱部13の外周直径を18mm、前記気化部12の最大外周直径を9mmとした場合に、1mm程度の溝幅で作製することができる。
【0015】
また、前記燃焼性液体32には、イソプロピルアルコール等のアルコール類に精油(エッセンシャルオイル)を含ませたアロマオイルを使用することができ、精油(エッセンシャルオイル)の種類を選択することにより、芳香を愉しむことや部屋の消臭をすることやアロマテラピーを実践すること等の目的で前記芳香発生装置1を使用することができる。また、前記燃焼性液体32にはヒナギクやシトロネル等の殺虫用オイルを使用することもでき、虫除けの目的でも前記芳香発生装置1を使用することができる。
以下、前記構成に基づく本実施形態の具体的な芳香発生装置の使用方法について説明する。
【0016】
まず前記基部11を前記芯体21に固定する。前記芯体21は、例えば綿製で紐状に作製され、幅が10mm、長さが300mmの輪状に形成され、前記燃焼性液体32を浸潤させるために、初回使用時には前記燃焼性液体32を約20分間浸しておくことが望ましい。前記燃焼性液体32が前記芯体21から前記基部11に十分に浸潤した後、前記加熱部13をマッチやライター等で着火して2分程度経過した後に火を吹き消す。このようにして触媒燃焼が開始され、この触媒燃焼により前記基部11から前記気化部12に浸潤した前記燃焼性液体32が気化し、芳香を発生する気体として外気に放出される。また、前記芯体21は触媒燃焼中には300度以上の高温となるために、安全性の観点から触媒燃焼中には例えば透かし編み形状の外蓋を前記芳香発生装置1に覆い被せて使用されることが望ましい。
【0017】
また、前記気化部12がテーパー面を有することから、前記気化部12の下方では前記気化部12と前記加熱部13との距離が最も短いために、前記加熱部13から前記気化部12に照射される輻射熱が最も強くなり前記燃焼性液体32の気化が促進される。この気化促進は、前記燃焼性液体32が前記気化部12の下方では大部分が液体状態であるために、より強い芳香を効率良く発生されるために有効となる。また、前記気化部12の上方では前記気化部12と前記加熱部13との距離が最も長いために前記輻射熱が最も弱くなる。前記燃焼性液体32が前記気化部12の上方では大部分が気化されて気体状態であるために、気化により芳香を発生する前記燃焼性液体32に対して余分な燃焼による芳香成分の消失が低減される。また、使用後には、消火用キャップとして例えば密閉された外蓋を前記芳香発生装置1に覆い被せることで、触媒燃焼の停止とともに芳香の発生を停止することができる。
【0018】
(本発明の第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る芳香発生装置を、図4、図5に基づいて説明する。
この図4は本発明の第2の実施形態に係る芳香発生装置の概略構成図で、図5は芳香発生装置の前記加熱部13が鉛直状態の場合に、前記加熱部13から発生する輻射熱の説明図を示す。
本実施形態は、第1の実施形態のうち、前記気化部12の頂上部が前記加熱部13の頂上部よりも高い位置に配設され、前記溝部14が前記気化部12との境界面の断面形状において鉛直形状を有するものである。構成としては、第1の実施形態と同様である。
以下、前記構成に基づく本実施形態の具体的な芳香発生装置1の使用方法について説明する。
【0019】
上記の第1の実施形態と同様に、着火により触媒燃焼が開始され芳香が外気に放出される。図4に示すように前記気化部12の高さは前記加熱部13の高さと高さ差hが設けられ、この高さ差hにより、前記気化部12の高さが前記加熱部13の高さと同じ又は低い場合と比較して前記気化部12の外気と接する表面積が大きくなり、より強い芳香を発生させることができる。
【0020】
また、図5に示すように、前記溝部14が前記気化部12との境界面の断面形状において鉛直形状を有している場合、触媒燃焼により前記加熱部13の外周面からこの外周面の垂直方向に沿って前記気化部12へ照射される輻射熱(矢印で図示)が最大の強度となることから、芳香の発生量が増大する。さらに前記気化部12がテーパー面を有することから、前記気化部12の下方では輻射熱が強く前記燃焼性液体32の気化が促進され、前記気化部12の上方では輻射熱の照射方向から外れて輻射熱が届かないために、余分な加熱により芳香を有する気体に気化した前記燃焼性液体32の燃焼による芳香成分の消失が低減される。
【0021】
なお、図3に示すように、本発明における芳香発生装置1においては、前記気化部12の外周部が平坦な形状に限定されず、複数の切込み部を持つ凹凸形状を有することも可能である。前記気化部12の外周部が複数の切込み部を持つ凹凸形状の場合には、前記気化部12の外周部が平坦な場合と比較して前記気化部12と外気が接する表面積が大きいために、より多量の芳香を外気へ発生させることができ、芳香を一層強めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る芳香発生装置の概略構成図である。
【図2】本発明の芳香発生装置を装着したアロマディフューザーの全体断面図である。
【図3】本発明の芳香発生装置の気化部が凹凸形状の芳香発生装置の斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る芳香発生装置の概略構成図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る芳香発生装置の加熱部が鉛直状態の場合に、この加熱部から発生する輻射熱の説明図である。
【図6】従来の芳香発生装置の概略構成図である。
【図7】従来の芳香発生装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 芳香発生装置
11 基部
12 気化部
13 加熱部
13a 白金(Pt)
14 溝部
2 空洞
21 芯体
30 容器
31 開口部
32 燃焼性液体
h 高さ差(気化部12の頂上部の高さと加熱部13の頂上部の高さ差に相当)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材料にて形成され、芳香性を有する燃焼性液体を浸透吸引する基部と、当該基部の外周端部に略円環状の多孔質材料で一体的に形成され、当該多孔質材料に金属を加熱触媒として含ませてなる加熱部と、当該略円環状の加熱部の中心部分に多孔質材料で前記基部と一体的に形成され、前記基部で吸引された燃焼性液体を前記加熱部からの加熱により気化させる気化部とを備える芳香発生装置において、
前記加熱部と前記気化部との間に断面形状が基部から拡開状の凹溝部として形成される隔離部を備えることを
特徴とする芳香発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の芳香発生装置において、
前記隔離部が、前記加熱部との境界面の断面形状において凹凸形状を有することを
特徴とする芳香発生装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の芳香発生装置において、
前記気化部の頂上部が、前記加熱部の頂上部よりも高い位置に配設されることを
特徴とする芳香発生装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載の芳香発生装置において、
前記隔離部が、前記加熱部との境界面の断面形状において鉛直形状を有することを
特徴とする芳香発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−82649(P2009−82649A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259760(P2007−259760)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(507328793)株式会社イマリ (3)
【Fターム(参考)】