説明

芳香装置

【課題】使用者にとっての快適さを損なわずに、適度な芳香を発する芳香装置を提供する。
【解決手段】芳香装置1は、ファン15と、ファン15によって作り出される空気流が流れる送風ダクト13と、送風ダクト13の内面に、表面3aを露出させるように配置された芳香カートリッジ3とを備える。芳香カートリッジ3は、ケース30と、ケース30内で積層されている芳香オイルが含浸している芳香オイル含浸層31と、揮発性の液体が含浸している揮発成分含浸層33とを備える。そして、芳香オイル含浸層31が揮発成分含浸層33よりも表面3a側である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香を発生させる芳香装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレ等の悪臭が発生する空間で悪臭を解消させたり、通常の居住空間での快適性を向上させたりするために、人工的に芳香を発生させる芳香装置がある。例えば、特許文献1に記載の芳香装置は、温水洗浄便座の送風ダクト内に芳香装置を収容している。
【0003】
また、別の芳香装置として、送風ダクト内に香料を含んだオイル含浸層を着脱自在に設けたものがある。このような構成の場合、オイル含浸層が比較的小さいので、オイル含浸層内のオイルが短期間の間に蒸散する。この結果、芳香オイルの交換周期が短くなり、季節ごとにそれぞれ適した香りを選択することにより、使用者は快適に過ごすことができる。(本出願人は、これを特願2004−329571として出願している)
【特許文献1】特開平4−261928号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、オイル含浸層には所定の芳香オイルを浸し、これが徐々に気化することにより芳香成分が空気中に拡散する。ここで、高濃度の芳香オイルをオイル含浸層に含浸させると、芳香が強すぎてしまい、使用者はかえって不快に感じることがある。一方で、適当な濃度の芳香オイルを含浸させた場合でも、当初は芳香を感じても、すぐにそれに慣れて芳香を感じなくなってしまい、快適さが損なわれてしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、使用者にとっての快適さを損なわずに、適度な芳香を発する芳香装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の芳香装置は、ファンと、前記ファンによって作り出される空気流が流れる送風ダクトと、前記送風ダクトの内面に、表面を露出させるように配置された芳香カートリッジとを備える。前記芳香カートリッジは、ケースと、芳香オイルが含浸している芳香オイル含浸層と、揮発性の液体が含浸している揮発成分含浸層とを備え、前記芳香オイル含浸層及び前記揮発成分含浸層は、前記ケース内で積層されていて、かつ、前記送風ダクトの内面に露出される表面側に、前記芳香オイル含浸層が配置されている。
【0007】
この芳香装置によれば、揮発性の液体が気化して芳香カートリッジの外に出て発散されるときに、芳香オイルの気化も促進し、これにより芳香成分の発散も促進されるので、適当な濃度の芳香オイルを用いても、強い香りを持続的に発散することができる。
【0008】
請求項2に記載の芳香装置では、前記芳香カートリッジの、前記送風ダクトの内面に露出される表面は、気体成分のみを通過させる通気性フィルムで覆われていることを特徴とする。
【0009】
芳香カートリッジの表面を通気性フィルムで覆うことにより、芳香カートリッジから液体の芳香オイルまたは揮発性の液体が漏れ出ることを防止しつつ、気化した芳香オイル及び揮発成分を発散させることができる。
【0010】
請求項3に記載の芳香装置は、前記揮発成分含浸層に含浸されている揮発性の液体は、水であることを特徴とする。
【0011】
揮発性の液体が水であれば、揮発成分含浸層のメンテナンスが容易である。
【0012】
請求項4に記載の芳香装置は、便器装置をさらに備え、前記便器装置の洗浄が実行されたときに、前記洗浄の実行前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする。
【0013】
使用者がトイレ内にある程度以上いると、匂いになれてしまい、芳香を感じなくなるので、便器洗浄をしたときにファンを回転させ、または回転速度を速くすることにより、芳香成分の発散を促進し、より強い芳香を放つことができる。
【0014】
請求項5に記載の芳香装置は、着座センサを備えた便器装置をさらに備え、前記着座センサが、使用者が前記便器装置に着座したこと、または前記便器装置から立ち上がったことを検出したときに、前記着座または立ち上がりの検出前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする。
【0015】
使用者が便座に着座、または立ち上がったときにファンを回転させ、または回転速度を速くすることにより、排便の前後に芳香成分の発散を促進し、より強い芳香を放つことができ、使用者に排便に伴う悪臭を感じさせなくすることができる。
【0016】
請求項6に記載の芳香装置は、人体センサを備えた便器装置をさらに備え、前記人体センサが、使用者が前記便器装置に近接したことを検出したときに、前記近接の検出前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする。
【0017】
使用者が便器装置に近づいたときにファンを回転させ、または回転速度を速くすることにより、使用者のトイレ使用の直前に芳香成分の発散を促進し、より強い芳香を放つことができ、使用者に前の使用者の残り臭を感じさせなくすることができる。
【0018】
請求項7に記載の芳香装置は、便器装置と、局部洗浄を行うための衛生洗浄装置とをさらに備え、前記衛生洗浄装置による局部洗浄が実行されたときに、前記局部洗浄の実行前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする。
【0019】
衛生洗浄装置による局部洗浄を行ったときにファンを回転させ、または回転速度を速くすることにより、排便の後に芳香成分の発散を促進し、より強い芳香を放つことができ、使用者に排便に伴う悪臭を感じさせなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る芳香装置について、図面を参照して説明する。
【0021】
本願明細書では、本発明に係る芳香装置の一実施形態として、便器装置と一体で構成されて、トイレ内に設置されるものを例にあげて説明する。しかしながら、これ以外にも、本発明に係る芳香装置は、便器装置に取り付け可能なタイプのものであってもよいし、便器装置とは独立して使用される芳香装置であってもよい。
【0022】
図1は、本実施形態に係る芳香装置1を備えた便器装置5の外観を示す。
【0023】
便器装置5は、便器装置本体51と、便座と、便蓋52と、内部に組み込まれた局部洗浄のための衛生洗浄装置53とを備える。衛生洗浄装置53の側面には、芳香装置1の排気口10と、芳香カートリッジの挿入口11とを備える。そして、この挿入口11に芳香カートリッジ3が挿入されているときに、排気口10から芳香成分を含んだ空気が排出されるように構成されている。
【0024】
図2は、芳香装置1の概略を示す図である。
【0025】
芳香装置1は、送風ダクト13と、送風ダクト13内に配置されたファン15及びファン15を回転させるためのファンモータ16とを有し、ファン15によって生成された空気流が排気口10から排出される。
【0026】
送風ダクト13内には、芳香カートリッジ3を収容する収容部12が設けられている。そして、同図では、芳香カートリッジの挿入口11から、芳香カートリッジ3が挿入されている。芳香カートリッジ3が収容部12に収容されているときは、芳香カートリッジ3の表面3aが送風ダクト13の内面に露出した状態になっている。
【0027】
図3は、芳香カートリッジ3の構成を示す。図2に示されている芳香カートリッジ3の断面図と図3とを参照して、芳香カートリッジ3について説明する。
【0028】
図3A、Bに示すように、芳香カートリッジ3は、ケース30と、ケース30内に収容される芳香オイル含浸層31と、揮発成分含浸層33と、芳香オイル含浸層31と揮発成分含浸層33とを隔てるための隔て層35または隔て部材36とを備える。
【0029】
芳香オイル含浸層31及び揮発成分含浸層33は、いずれも、例えば不織布などで構成されている。そして、この不織布に、それぞれ芳香オイル及び揮発性の液体(例えば、水あるいは無臭アルコールなど)が含浸されている。
【0030】
隔て層35は、例えば、通気性を有するフィルムである。
【0031】
図2に示すように、ケース30内には、揮発成分含浸層33,隔て層35または隔て部材36、芳香成分含浸層31が、この順序で下層から上層へ向けて積層された状態で収容されている。
【0032】
これにより、揮発成分含浸層33の揮発性の液体が気化し、隔て層35ないし隔て部材36を通過し、芳香成分含浸層31を通過する。そして、芳香成分含浸層31を通過するときに、気化した揮発成分によって芳香成分含浸層31に含浸している芳香オイルの揮発が促進されて、香りが強い芳香を得ることができる。
【0033】
また、最上層の芳香成分含浸層31の上のケース30の開口部には、気体成分のみを通過させる通気性フィルム37が張られている。これにより、ケース30内の芳香オイルや揮発性の液体が、ケース30から液体のままこぼれることを防止でき、かつ、気化した芳香オイル及び揮発成分を発散させることができる。
【0034】
なお、隔て層35及び隔て部材36、通気性フィルム37は省略することもできる。
【0035】
図2において、ファン15が停止しているときは、送風ダクト13内に空気の流れがないので、芳香カートリッジ3からの芳香オイルの気化は抑制されている。一方、ファン15が回転すると、送風ダクト内13の芳香カートリッジ表面3aを通過する空気流により、気化した芳香オイル成分を含む空気が排気口10から排出され、トイレ内に香りが漂うようになる。さらに、これに伴って、送風ダクト内13の芳香カートリッジ表面3aを通過する空気流により、芳香カートリッジ3からの芳香オイルの気化も促進され、芳香もより強くなる。
【0036】
本実施形態に係る芳香装置1において、芳香カートリッジ3は消耗品であり、香りが弱くなると、使用者は適宜交換可能である。従って、補充用の芳香カートリッジ3は、単体で流通するものである。
【0037】
そこで、図4及び図5は、芳香カートリッジ3の流通時のパッケージについて示す。
【0038】
まず、図4に示すように、カートリッジ3表面の通気性フィルム37の上には、芳香オイル及び揮発性液体の揮発防止のために、気体遮断性の高い素材の保護フィルム38が張られる。保護フィルム38の貼り付け方法は、例えば熱溶着でもよい。
【0039】
そして、図5に示すように、保護フィルム38が張られたカートリッジ3は、さらに流通用パッケージ8で包装される。流通用パッケージ8は、カートリッジ3に密着するように施されている。
【0040】
使用時には、使用者が流通用パッケージ8から保護フィルム38がついたカートリッジ3を取り出し、保護フィルム38を剥がして、カートリッジ挿入口11に挿入する。このとき、保護フィルム38を全部剥がし、通気性フィルム37が完全に露出するようにしてもよいし、保護フィルム38の一部分を剥がし、通気性フィルム37の一部が露出するようにしてもよい。
【0041】
例えば、図6には、保護フィルム38の一部分を剥がしたときのカートリッジの正面図を示す。同図に示すように、保護フィルム38の一部分を剥がすことにより、通気性フィルム37が露出する開口部38a、38b、38cが形成される。この開口部38a、38b、38cは、保護フィルム38に予めミシン目が入っていて、使用者が好みのものを選択するようにしてもよい。これにより、開口部の大きさに応じて、蒸発する芳香オイルの量が調整され、その結果香りの強さを調整することが可能である。
【0042】
なお、この通気性フィルム37が露出する面積を調整するのに、保護フィルム38に予め開けておいた孔をシールで塞ぐ構成にしてもよい。
【0043】
次に図7は、本実施形態に係る芳香装置1の制御に関する機能構成図である。
【0044】
便器装置5は、便器装置本体51及び衛生洗浄装置53の他に、さらに、人体センサ55と、着座センサ56とを備える。
【0045】
人体センサ55は、便器装置5が設置されているトイレ内に存在する使用者を検知するためのセンサである。
【0046】
着座センサ56は、便器装置5の便座に使用者が着座しているか否かを検知するセンサである。
【0047】
芳香装置1は、ファンモータ16を制御する制御部18を備える。ファンモータ16は、制御部18の指示に基づいてファン15を回転させ、停止させる。ファン15は、例えば、低速、中速、高速などのように、複数の異なる回転速度の中から制御部18が指定した回転速度で回転する。
【0048】
また、制御部18は、便器装置本体51,衛生洗浄装置53,人体センサ55及び着座センサ56からの信号に基づいて、ファンモータ16を制御する。
【0049】
例えば、人体センサ55の出力が非検知(トイレ内に人が存在しない)の場合、制御部18はファンモータ16の回転を停止させてもよいし、あるいは、間欠的に低速で回転させてもよい。一方、人体センサ55の出力が検知(トイレ内に人がいる)の間は、ファンモータ16を連続的に回転させる。特に、人体センサ55の出力が、非検知から検知へ変化(つまり、トイレ内に使用者が入ってきた)したときは、変化前よりも送風量が多くなるように、制御部18がファンモータ16を制御するようにして、前の使用者の残り臭を消すようにしてもよい。ここで、「変化前よりも送風量が多くなる」とは、例えば、変化前にファンの回転が停止していたときはファンを回転させ、変化前にファンが回転していたときは、ファンの回転速度をより速くすることなどである。
【0050】
また、着座センサ56の出力に変化があった場合、例えば、着座センサ56の出力が、非検知から検知(つまり使用者が着座した)へ変化した場合、または、その逆に検知から非検知(つまり使用者が着座から立ち上がった)へ変化した場合には、制御部18は、変化前よりも送風量が多くなるように制御してもよい。
【0051】
さらに、衛生洗浄装置53が局部の洗浄を実行したとき、及び便器装置本体51が便器洗浄を実行したときにも、それぞれの洗浄実行前よりも送風量が多くなるように、制御部18がファンモータ16を制御するようにしてもよい。
【0052】
図8は、制御部18によるファン15の回転制御の一例を示す。
【0053】
同図の例は、まず、トイレに使用者がいないときは、ファンの回転は停止している。そして、使用者がトイレに入室したときに(図中A)、制御部18は、ファンを低速(回転速度R1)で回転させる。これにより、使用者は入室時に香りを感じる。
【0054】
その後、使用者が着座したとき(図中B)、または便器洗浄を実行したとき(図中C)、または局部洗浄を実行したときに(図中D)、制御部18は、ファンを高速(回転速度R2,R2>R1)で回転させる。これにより、香りに慣れてきてあまり感じなくなってきたときに、香りをより強くすることができ、使用者は改めて香りを感じる。
【0055】
最後に、使用者がトイレから退出したときに(図中E)、制御部18は、ファンの回転を停止させる。
【0056】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0057】
例えば、芳香カートリッジ3の全体を消耗品とせずに、芳香カートリッジ3のうち、芳香成分含浸層31のみを消耗品とし、ケース30や揮発成分含浸層33を耐久品としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態に係る芳香装置1を備えた便器装置5の外観を示す。
【図2】芳香装置1の概略を示す図である。
【図3】芳香カートリッジ3の構成を示す。
【図4】芳香カートリッジ3の保護フィルムを示す。
【図5】芳香カートリッジ3の流通時のパッケージについて示す。
【図6】通気性フィルム37が露出する開口部の例を示す。
【図7】芳香装置1の制御に関する機能構成図である。
【図8】ファン15の回転制御の例を示す。
【符号の説明】
【0059】
1 芳香装置
3 芳香カートリッジ
5 便器装置
10 排気口
11 カートリッジ挿入口
12 収容部
13 送風ダクト
13 送風ダクト内
15 ファン
16 ファンモータ
18 制御部
30 ケース
31 芳香オイル含浸層
31 芳香成分含浸層
33 揮発成分含浸層
51 便器装置本体
52 便蓋
53 衛生洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファンと、
前記ファンによって作り出される空気流が流れる送風ダクトと、
前記送風ダクトの内面に、表面を露出させるように配置された芳香カートリッジとを備え、
前記芳香カートリッジは、
ケースと、芳香オイルが含浸している芳香オイル含浸層と、揮発性の液体が含浸している揮発成分含浸層とを備え、
前記芳香オイル含浸層及び前記揮発成分含浸層は、前記ケース内で積層されていて、かつ、前記送風ダクトの内面に露出される表面側に、前記芳香オイル含浸層が配置されていることを特徴とする芳香装置。
【請求項2】
前記芳香カートリッジの、前記送風ダクトの内面に露出される表面は、気体成分のみを通過させる通気性フィルムで覆われていることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項3】
前記揮発成分含浸層に含浸されている揮発性の液体は、水であることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項4】
便器装置をさらに備え、
前記便器装置の洗浄が実行されたときに、前記洗浄の実行前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項5】
着座センサを備えた便器装置をさらに備え、
前記着座センサが、使用者が前記便器装置に着座したこと、または前記便器装置から立ち上がったことを検出したときに、前記着座または立ち上がりの検出前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項6】
人体センサを備えた便器装置をさらに備え、
前記人体センサが、使用者が前記便器装置に近接したことを検出したときに、前記近接の検出前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。
【請求項7】
便器装置と、局部洗浄を行うための衛生洗浄装置とをさらに備え、
前記衛生洗浄装置による局部洗浄が実行されたときに、前記局部洗浄の実行前よりも、前記ファンによる送風量を多くすることを特徴とする請求項1記載の芳香装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−263(P2008−263A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171256(P2006−171256)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】