説明

苗移植機

【課題】従来の苗移植機は、左右整地用ロータと中央整地用ロータとが各々別々に苗植付装置に装着された複雑な構成となっており、然も、整地用ロータの重量が重くなる構成であって、圃場での苗移植作業性を悪化させるものであった。
【解決手段】苗植付部4に機体正面視で左右後輪11間に位置するセンターフロート55の前方には機体側面視で左右後輪11間に中央整地作業装置27bを設け、左右後輪11の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート56の前方には機体側面視で左右後輪11の後方に左右整地作業装置27a設けると共に、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとを連結して一体構成とし、走行車体2側から駆動部材72にて中央整地作業装置27bに駆動力を伝動し、該中央整地作業装置27bから左右整地作業装置27aに左右伝動機構73にて駆動力を伝動する構成とした苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畦際で機体を旋回させる際に車輪によって荒らされた圃場面(枕地)を整地する整地作業装置を装備した苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の苗移植機(乗用型田植機)において、苗植付装置による苗植付けの直前に圃場面を整地して均平化するための整地用ロータを備えたものがある。
この従来技術の苗移植機は、機体旋回時に車輪によって荒らされた圃場面(枕地)を整地用ロータにより整地して均平にすることができて、作業能率の向上が図れるものであった。
【特許文献1】特開2003−102219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に開示された苗移植機は、左右整地用ロータと中央整地用ロータとが各々別々に苗植付装置に装着された複雑な構成となっており、然も、整地用ロータの重量がとても重くなる構成であって、圃場での苗移植作業性を悪化させるものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、左右後輪11を装備した走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4を装着した苗移植機において、該苗植付部4に機体正面視で左右後輪11間に位置するセンターフロート55の前方には機体側面視で左右後輪11間に中央整地作業装置27bを設け、左右後輪11の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート56の前方には機体側面視で左右後輪11の後方に左右整地作業装置27a設けると共に、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとを連結して一体構成とし、走行車体2側から駆動部材72にて中央整地作業装置27bに駆動力を伝動し、該中央整地作業装置27bから左右整地作業装置27aに左右伝動機構73にて駆動力を伝動する構成とした苗移植機としたものである。
【0005】
従って、畦際での機体旋回時に乱した圃場面を中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとで整地して苗移植作業が行なえるので、適切な苗移植作業が作業能率良く行なえる。また、中央整地作業装置27bを左右後輪11の後方に配置した左右整地作業装置27aよりも前方の左右後輪11間に設けて、機体全長を短く構成したものでありながら、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとを連結して一体構成としたので、簡潔な構成となり、更に、左右整地作業装置27aよりも機体前方側で機体の左右中央部にある中央整地作業装置27bは、走行車体2に最も近い位置に配置されることになるから、走行車体2側から駆動部材72にて中央整地作業装置27bに駆動力を伝動し、該中央整地作業装置27bから左右伝動機構73にて左右整地作業装置27aに駆動力を伝動する構成とすることにより、簡潔な伝動構成で中央整地作業装置27b及び左右整地作業装置27aを駆動させることができて、機体全体の重量を軽量な構成とすることができて、水田圃場での走行性能が良好となり苗移植作業が適切に行なえる。
【0006】
請求項2記載の発明は、中央整地作業装置27bの左右両側と左右整地作業装置27aの各々の内端側とを左右伝動機構73にて連結した請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、中央整地作業装置27bの左右両側と左右整地作業装置27aの各々の内端側とを左右伝動機構73にて連結したので、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとの駆動構成が簡潔なものとなり、然も、左右伝動機構73が連結部材を兼用する構成となるので、更に、機体の軽量化が図れて、水田圃場での走行性能が更に良好となり苗移植作業が適切に行なえる。
【0008】
請求項3記載の発明は、中央整地作業装置27bの左右両側と左右整地作業装置27aの各々の内端側とを左右伝動機構73にて連結し、該左右伝動機構73をセンターフロート55と左右後輪11間に配置した請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0009】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、中央整地作業装置27bの左右両側と左右整地作業装置27aの各々の内端側とを左右伝動機構73にて連結したので、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとの連結構成が簡潔なものとなり、更に、機体の軽量化が図れて、水田圃場での走行性能が更に良好となり苗移植作業が適切に行なえる。また、左右伝動機構73をセンターフロート55と左右後輪11間に配置したので、左右後輪11が持ち上げた泥土がセンターフロート55上に落下するのを左右伝動機構73が防止し、センターフロート55の前部は適正に泥面に追従して上下動し、センターフロート55を苗植付部4を昇降制御するセンサとしての機能を持つ構成とした場合には、苗植付部4は適正に昇降制御されて、良好な苗植付け作業が行なえる。
【0010】
請求項4記載の発明は、中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとを連結し、昇降リンク装置3にて苗植付部4を上昇させた時に中央整地作業装置27bが昇降リンク装置3に接当して下動するように、左右整地作業装置27aに対して中央整地作業装置27bを上下動自在に支持機構78にて支持した請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0011】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、中央整地作業装置27bを左右後輪11の後方に配置した左右整地作業装置27aよりも前方の左右後輪11間に設けて、機体全長を短く構成したものでありながら、苗植付部4を上昇させる際には、中央整地作業装置27bは昇降リンク装置3に接当して下動し破損することが防止されて、苗植付部4の上昇を適切に行なわせることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、畦際での機体旋回時に乱した圃場面を中央整地作業装置27bと左右整地作業装置27aとで整地して苗移植作業が行なえるので、適切な苗移植作業が作業能率良く行なえる。また、中央整地作業装置27bを左右後輪11の後方に配置した左右整地作業装置27aよりも前方の左右後輪11間に設け、且つ、簡潔な駆動構成で機体全長を短く構成して、機体全体の重量を軽量な構成とすることができ、特に、水田圃場での走行性能が良好となり苗移植作業が適切に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい一つの実施形態について説明する。
図1及び図2は本発明を用いた一実施例である施肥装置を装着した施肥装置付き乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0014】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして左右後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その左右後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。尚、左右後輪ギヤケース18,18には、ミッションケース12の後壁から突出して設けた左右後輪駆動軸に連結した左右後輪伝動軸18a,18aにて動力が伝達される構成となっている。
【0015】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが左右後輪ギヤケース18,18に伝達されて左右後輪11,11を駆動する。また、ミッションケース12の右側側面より取出された外部取出動力は、植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動される。尚、施肥装置5の肥料繰出し機構へは、右後輪ギヤケース18から動力が駆動軸29にて取出されて伝動される。
【0016】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の左右前部には複数の貫通孔35a…が形成されており、座席31に着座して機体を操縦する操縦者が左右前輪10,10を見通せることができて操縦が容易な構成となっていると共に、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35の後部は、リヤステップを兼ねる後輪フェンダ36となっている。
【0017】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、先端側には縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に基部を回動自在に枢支した昇降油圧シリンダ46の先端を上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部に連結して設けており、該昇降油圧シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0018】
苗植付部4は4条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52…、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ(図示せず)等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0019】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド62a…まで導き、施肥ガイド62a…の前側に設けた作溝体62b…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。電動モータで駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62…に吹き込まれ、施肥ホース62…内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0020】
苗植付部4には圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータ27(左右サイドフロート56,56の各々の前方に配置された左右整地ロータ27a,27a,センターフロート55の前方に配置された中央整地ロータ27b)が取り付けられている。また、苗載台51は苗植付部4のフレームを兼ねる伝動ケース50に基部が固定された矩形状の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0021】
尚、28,28は左右補助ステップであって、作業者が機体に乗り降りする時に足を載せるステップである。
図3の側面図と図4の背面図に整地ロータ支持構造の要部を示し、図5に整地ロータ27とフロート55,56と苗植付装置52部分の要部平面図を示す。
【0022】
ここで、整地ロータ27の支持構造と駆動構成について説明する。
苗載台51の前記支持枠体65に基部を固着した左右アーム65c,65cの先端に回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した左右支持アーム67,67と該支持アーム67,67に各々回動自在に取り付けられた左右整地ロータ支持フレーム68,68が設けられている。該左右ロー夕支持フレーム68,68の下端には左右整地ロータ27a,27aの駆動軸70a,70aが回転自在に支持されて取り付けられている。また、該左右整地ロータ支持フレーム68,68の下端部近くは伝動ケース50に基部が回動自在に取り付けられた左右連結部材71,71が連結されている。
【0023】
そして、左右ロー夕支持フレーム68,68の下端が左右整地ロータ27a,27aを回転自在に支持する部位(軸受け部)69,69は、各々左右後輪11,11の後方に位置する構成となっている。
【0024】
また、フロート55,56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは左右サイドフロート56,56の前方にある左右整地ロータ27a,27aより前方に配置されている。即ち、左右整地ロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの各々の内側から機体前方に向けて左右チェーンケース73,73を配置し、該左右チェーンケース73,73間に中央整地ロータ27bの駆動軸70bを軸支して、中央整地ロータ27bを設けている。
【0025】
一方、中央整地ロータ27bの駆動軸70bの中央部に伝動ケース90を駆動軸70bに対して回転自在に設け、左後輪11の左ギアケース18内のギアから自在継手72を介して伝動ケース90から中央整地ロータ27bの駆動軸70bに動力を伝達する構成になっている。そして、該中央整地ロータ27bの駆動軸70bの両端部から左右チェーンケース73,73内のチェーンにて左右整地ロータ27a,27aの駆動軸70a,70aに伝達し、左右整地ロータ27a,27aに動力を伝達する構成となっている。
【0026】
尚、左ギアケース18のギヤ軸には、自在継手72への動力を入り切りするクラッチCを設けており、操作ワイヤWの一端を該クラッチCのシフター(切替具)に連携し、操作ワイヤWの操作にて自在継手72への動力を入り切りして整地ロータ27を駆動させる状態と停止させる状態とに切り替えれる構成となっている。即ち、操作ワイヤWの他端を整地ロータ上下位置調節レバー81及び昇降リンク装置3に連携して、整地ロータ上下位置調節レバー81による整地ロータ27の使用時における上下位置調節操作ではクラッチCは入りで整地ロータ27が駆動している状態となり、整地ロータ上下位置調節レバー81にて整地ロータ27を収納位置まで上動操作した時にはクラッチCは切りで整地ロータ27が停止している状態となる。また、苗植付部4を植付け作業状態まで昇降リンク装置3で下げている時は、クラッチCは入りで整地ロータ27が駆動している状態となり、苗植付部4を非植付け作業状態まで昇降リンク装置3で上げた時は、クラッチCは切りで整地ロータ27が停止している状態となる。
【0027】
また、中央整地ロータ27bは、左右後輪11,11の後方に位置する左右整地ロータ27a,27aよりも前方で左右後輪11,11間に位置しているので、中央整地ロータ27bの駆動軸70bは左右後輪11のギアケース18に近い位置となり、また、走行車体2に対して苗植付部4は昇降動するから、中央整地ロータ27bの駆動軸70bと左右後輪11のギアケース18との距離は、苗植付部4の昇降動により大きく変動する。そこで、自在継手72は、断面六角形状の嵌合穴を有する外軸72aと、該外軸72aの断面六角形状の嵌合穴に嵌合して伸縮摺動する中間軸72bと、該中間軸72bに設けた断面六角形状の嵌合穴に嵌合して伸縮摺動する内軸72cとにより構成されており、伸縮長さが長くなる構成としている。従って、後輪11のギアケース18から中央整地ロータ27bの駆動軸70bへの駆動は、この伸縮長さが長い3軸構成の自在継手72にて行なっているので、距離が短くて然も駆動間距離が苗植付部4の昇降動により大きく変動しても、良好に整地ロータ27を駆動させることができて、整地ロータ27は良好な整地作用を発揮して、適切な苗植付け作業が行える。
【0028】
また、上記梁部材66に基部が固着されたリンク部材76の先端に上下方向の支持部材77を回動自在に連結し、該支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部はその左右方向中央部が吊り下げられた構成となっている。
【0029】
次に、整地ロータ27を上下位置調節及び収納位置に操作する構成を説明する。
苗載台51の前記支持枠体65の左右方向中央部に基部を固定して下方に向けて設けたコ字状体80aに機体前方に向けて枢支ピン81bを固定し、該枢支ピン81bに整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左右方向に回動自在に枢支している。また、整地ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、整地ロータ上下位置調節レバー81が機体左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着された突出部66aに下方から接当して折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方と接当しているので、該突出部66aが整地ロータ上下位置調節レバー81の機体右方向(図4の矢印S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の上向きの回動により左右支持アーム67,67と左右整地ロータ支持フレーム68,68とが上方に移動するので、左右整地ロータ27a,27aは上方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も上方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も上方に移動する。
【0030】
逆に、整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左方向に回動すると、折曲片82は前記突出部66aの下方から離れるので整地ロータ27の重みで突出部66aは下向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の下向きの回動により左右支持アーム67,67と左右整地ロータ支持フレーム68,68とが下方に移動するので、左右整地ロータ27a,27aは下方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も下方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も下方に移動する。
【0031】
そして、整地ロータ上下位置調節レバー81は、苗植付部4の中央部(若しくは、略中央部)で操縦座席31と苗載台51との間に配置されて操縦座席31の側に向かって伸びた構成となっており、また、その操作方向は機体左右方向であるから、整地ロータ27の上下動を行う場合の操作が容易で、且つ、苗載台51の前方側に機体前後方向で幅狭いスペースに配置できて機体全長を短く構成でき、更に、機体の左右バランスも良くて、適正な苗移植作業が行なえる。また、整地ロータ上下位置調節レバー81は、苗植付部4を苗移植作業状態の下降させた状態でも操作できるので、適切な上下高さ調節が行なえる。
【0032】
また、整地ロータ27を整地作用しない収納位置まで上動させるには、整地ロータ上下位置調節レバー81を大きく右方向に(収納操作位置まで)操作すると、整地ロータ27の上動操作と同じ要領で、整地ロータ27を収納位置、すなわち苗載台51の裏面側に収納状態となるように移動させることができる。
【0033】
尚、81aは整地ロータ上下位置調節レバー81のレバーガイドで、レバー操作時に操作位置でレバーを係合させて固定する係合溝が設けられている。また、整地ロータ上下位置調節レバー81は、その把持部81cが整地ロータ27を上動させる操作方向(矢印S方向)と反対側に折り曲げられた構成となっており、作業者が把持部81cを握って整地ロータ上下位置調節レバー81を操作して整地ロータ27を上動操作するとき、握っている作業者の手が把持部81cから滑っても、作業者の手は軸部81dで止まり、整地ロータ27が落下してしまうことを防止できる。また、手の側方が軸部81dに当たるように把持部81cを握ると、整地ロータ上下位置調節レバー81を操作して整地ロータ27を上動操作する方向へのレバーに対する力が入れやすくなり、上動操作が容易に行なえる。更に、整地ロータ上下位置調節レバー81の先端部である把持部81cを折り曲げることにより、整地ロータ上下位置調節レバー81を狭い空間に配置することができ、機体の小型が図れる。
【0034】
本実施例では整地ロータ上下位置調節レバー81の標準位置で圃場面より40mmの高さにある整地ロータ27a,27bを図4の矢印S方向への回動で標準位置より最大15mm高くでき、図4の矢印S方向の反対方向への回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。この整地ロータ上下位置調節レバー81による整地ロータ27の上下高さ調節は、フロート55,56の後部回動支点を上下動させて苗の植付深さの変更を行なう際に、同時に行なって、適正な整地作用が行なえるようにするものである。
【0035】
特に、植付作業時に苗の植付深さを常に一定に維持するために、苗植付部4を昇降制御する為のセンサとして機能するセンターフロート55は、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしないと適切な苗植付部4の昇降制御が行えない。そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、サイドフロート56の前方にある左右整地ロータ27aよりも機体前方に位置させた構成としているが、中央整地ロータ27bと左右整地ロータ27aとはその動力伝達機構である左右チェーンケース73,73にて一体の構成とし、整地ロータ上下位置調節レバー81で作動する一つの上下動機構で上下調節及び収納位置への移動が行なえるようになっているので、構成が簡潔で、軽量な整地装置付き田植機を得ることができ、軽量であることにより優れた水田での走行性能を発揮して、良好な苗の移植作業が行なえる。
【0036】
ところが、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしたセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bを左右後輪11,11間に配置させて機体全長を短い構成にしている為に、該中央整地ロータ27bが昇降リンク装置3の左右下リンク41,41の下方に位置することとなり、苗植付部4を上昇させようとした時、左右下リンク41,41に中央整地ロータ27bが衝突してしまって苗植付部4を上昇できない構成となってしまう問題がある。
【0037】
そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としている。従って、苗植付部4を下降させて整地ロータ27で整地しながら苗植付け作業を行なっている時には、中央整地ロータ27bはその重量でスプリング78が少し伸びて左右整地ロータ27aと同じ高さになり適正な整地作業が行なえ、また、苗植付部4を上昇させる際には、中央整地ロータ27bの上面に設けた接当部91が左右下リンク41,41に接当して、苗植付部4が上昇するにつれてスプリング78は大きく伸びていき中央整地ロータ27bは下方を向く姿勢に変更されて、苗植付部4を支障なく上昇させることができる。
【0038】
また、中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としているので、スプリング78の製造誤差や中央整地ロータ27bの重量誤差等にて、苗植付部4を下降させた時に、中央整地ロータ27bが左右整地ロータ27aと高さが異なる場合には、スプリング78の上部を係合させる係合孔77a,77b,77cを変更して、中央整地ロータ27bの上下高さを調節して、中央整地ロータ27bを左右整地ロータ27aと同じ高さにして適正な整地作業を行なうようにすることができる。
【0039】
一方、中央整地ロータ27bの左右チェーンケース73,73は、苗植付部4を昇降制御するセンサとしての機能を持つセンターフロート55と左右後輪11,11(左右補助車輪11a,11a)との間に位置する構成となっているので、左右後輪11,11(左右補助車輪11a,11a)が持ち上げた泥土がセンターフロート55上に落下するのを左右チェーンケース73,73が防止し、センターフロート55の前部は適正に泥面に追従して上下動するので苗植付部4は適正に昇降制御されて、良好な苗植付け作業が行なえる。
【0040】
そして、特に、畦際での機体旋回時に乱した圃場面を中央整地ロータ27bと左右整地ロータ27a,27aとで整地して苗移植作業が行なえるので、適切な苗移植作業が作業能率良く行なえる。また、中央整地ロータ27bを左右後輪11の後方に配置した左右整地ロータ27a,27aよりも前方の左右後輪11間に設けて、機体全長を短く構成したものでありながら、中央整地ロータ27bと左右整地ロータ27a,27aとを連結して一体構成としたので、簡潔な構成となり、更に、左右整地ロータ27a,27aよりも機体前方側で機体の左右中央部にある中央整地ロータ27bは、走行車体2に最も近い位置に配置されることになるから、走行車体2側から自在継手72にて中央整地ロータ27bに駆動力を伝動し、該中央整地ロータ27bから左右チェーンケース73,73にて左右整地ロータ27a,27aに駆動力を伝動する構成とすることにより、簡潔な伝動構成で中央整地ロータ27b及び左右整地ロータ27a,27aを駆動させることができて、機体全体の重量を軽量な構成とすることができて、水田圃場での走行性能が良好となり苗移植作業が適切に行なえる。
【0041】
尚、図6は、苗植付部4を5条植えにした構成の例を示し、上記の実施例と同じ構成部材にて構成されており、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51a…に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a…に供給すると苗送りベルト51b…により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a…に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52…等を備えている。苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52…により苗が植付けられる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0042】
また、中央2条分の植付け位置を整地するセンターフロート55の前方位置に配置された中央整地ロータ27bは、中央2条分の植付け位置を整地する左右幅に構成されており、左右1条分づつの植付け位置を整地するサイドフロート56,56の前方位置に配置された左右整地ロータ27a,27aは左右1条分づつの植付け位置及び左右整地ロータ27a,27aの各左右幅が整地できる構成となっている。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、田植機以外に、野菜移植機やイ草移植機等の色々な苗移植機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】図1の乗用型田植機の平面図である。
【図3】図1の苗植付部の要部側面図である。
【図4】図1の苗載台の支持構造の要部正面図である。
【図5】図1の苗植付部の要部平面図である。
【図6】他の例を示す苗植付部の要部平面図である。
【符号の説明】
【0045】
2 走行車体
3 昇降リンク装置
4 苗植付部
11 左右後輪
27a 左右整地作業装置(左右整地ロータ)
27b 中央整地作業装置(中央整地ロータ)
55 センターフロート
56 サイドフロート
72 駆動部材(自在継手)
73 左右伝動機構(左右チェーンケース)
78 支持機構(スプリング)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右後輪(11)を装備した走行車体(2)の後側に昇降リンク装置(3)を介して苗植付部(4)を装着した苗移植機において、該苗植付部(4)に機体正面視で左右後輪(11)間に位置するセンターフロート(55)の前方には機体側面視で左右後輪(11)間に中央整地作業装置(27b)を設け、左右後輪(11)の後方若しくは外側方に位置するサイドフロート(56)の前方には機体側面視で左右後輪(11)の後方に左右整地作業装置(27a)設けると共に、中央整地作業装置(27b)と左右整地作業装置(27a)とを連結して一体構成とし、走行車体(2)側から駆動部材(72)にて中央整地作業装置(27b)に駆動力を伝動し、該中央整地作業装置(27b)から左右整地作業装置(27a)に左右伝動機構(73)にて駆動力を伝動する構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
中央整地作業装置(27b)の左右両側と左右整地作業装置(27a)の各々の内端側とを左右伝動機構(73)にて連結したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
中央整地作業装置(27b)の左右両側と左右整地作業装置(27a)の各々の内端側とを左右伝動機構(73)にて連結し、該左右伝動機構(73)をセンターフロート(55)と左右後輪(11)間に配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項4】
中央整地作業装置(27b)と左右整地作業装置(27a)とを連結し、昇降リンク装置(3)にて苗植付部(4)を上昇させた時に中央整地作業装置(27b)が昇降リンク装置(3)に接当して下動するように、左右整地作業装置(27a)に対して中央整地作業装置(27b)を上下動自在に支持機構(78)にて支持したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−300873(P2007−300873A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−133943(P2006−133943)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】