説明

苗移植機

【課題】従来の苗供給装置は機体進行方向と直交する機体左右方向に設けられており、左右覆土鎮圧輪の後端部は苗供給装置の後端部よりも機体後方に配置した構成であった。従って、苗供給装置の機体後方側を歩きながら苗供給装置の各苗受カップ内に苗を供給する作業者の側方に左右覆土鎮圧輪が配置された構成となり、作業者の作業空間が狭く苗供給作業において課題があった。
【解決手段】駆動輪5にて走行する機体に多数の苗受カップ7cを連結して設けた苗供給装置7と該苗供給装置7から苗を受け取って圃場に植付ける植付具11と圃場に植付けられた苗に対して覆土鎮圧作用する左右覆土鎮圧輪8L,8Rを装備した苗移植機において、該苗供給装置7を平面視で左右一側を機体前方に位置させ他側を機体後方に位置させて前後傾斜した状態で配置すると共に、苗供給装置7の後端よりも左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端を機体前方側に設けた苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜苗や球根等を圃場に植付ける苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に示されるように、多数の苗受カップを連結して設けた苗供給装置と該苗供給装置から苗を受け取って圃場に植付ける植付具と圃場に植付けられた苗に対して覆土鎮圧作用する左右覆土鎮圧輪と苗供給装置の前方に設けた予備苗載台を備えた苗移植機がある。
【特許文献1】特開2004−113208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記苗供給装置は機体進行方向と直交する機体左右方向に設けられており、左右覆土鎮圧輪の後端部は苗供給装置の後端部よりも機体後方に配置した構成であった。従って、苗供給装置の機体後方側を歩きながら苗供給装置の各苗受カップ内に苗を供給する作業者の側方に左右覆土鎮圧輪が配置された構成となり、作業者の作業空間が狭く作業性に問題があり、また、欠株があって補植する場合には、作業者の側方に左右覆土鎮圧輪があるために機体の後方に回って補植しないといけないと謂う問題もあった。更に、苗供給装置の前方に設けた予備苗載台から苗を数個取出しては苗受カップ内に苗を供給するという作業を繰り返さなければならず、苗供給作業においても作業性に問題があった。
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、苗移植作業の作業性や作業効率を向上させた苗移植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、駆動輪5にて走行する機体に多数の苗受カップ7cを連結して設けた苗供給装置7と該苗供給装置7から苗を受け取って圃場に植付ける植付具11と圃場に植付けられた苗に対して覆土鎮圧作用する左右覆土鎮圧輪8L,8Rを装備した苗移植機において、該苗供給装置7を平面視で左右一側を機体前方に位置させ他側を機体後方に位置させて前後傾斜した状態で配置すると共に、苗供給装置7の後端よりも左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端を機体前方側に設けた苗移植機とした。
【0006】
従って、苗供給装置7を平面視で左右一側を機体前方に位置させ他側を機体後方に位置させて前後傾斜した状態で配置し、苗供給装置7の後端よりも左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端を機体前方側に設けたので、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側の苗受カップ7cに苗を供給する作業者の作業領域Sを広くすることができ、作業者は、この広い作業領域Sで左右覆土鎮圧輪8L,8Rが邪魔にならず作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0007】
請求項2に係る発明は、苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側の覆土鎮圧輪8Lを他方の覆土鎮圧輪8Rよりも機体前方に設けて、左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置した請求項1記載の苗移植機とした。
【0008】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方部位の苗受カップ7cに苗を供給する作業者の作業領域S側の覆土鎮圧輪8Lが更に機体前方に位置する構成となり、更に作業領域Sを広くすることができ、作業者は、この更に広い作業領域Sで左右覆土鎮圧輪8L,8Rが邪魔にならず作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、更に作業効率及び作業性が良い。また、左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置したことにより、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの間隔を狭くして配置することができ、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの鎮圧力を高めることができて、植付具11が植付けた苗に対して適切に覆度及び鎮圧作用することができ、適切な苗の移植作業が行える。
【0009】
請求項3に係る発明は、苗供給装置7よりも機体後方に操縦ハンドル9の左右握り部9bを設け、該左右握り部9bを苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に機体の左右中央から偏倚して配置すると共に、該操縦ハンドル9のハンドルフレーム9’を苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に配置して操縦ハンドル9を機体に連結した請求項1または請求項2記載の苗移植機とした。
【0010】
従って、請求項1または請求項2記載の発明の作用に加えて、苗供給装置7よりも機体後方に操縦ハンドル9の左右握り部9bを設け、該左右握り部9bを苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に機体の左右中央から偏倚して配置すると共に、該操縦ハンドル9のハンドルフレーム9’を苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に配置して操縦ハンドル9を機体に連結したので、作業者の作業領域Sを更に広くすることができ、作業者は、この更に広い作業領域Sで作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、更に作業効率及び作業性が良い。また、機体後部と左右握り部9bとの間には空間があり、作業者は、植付けた苗の姿勢が悪い場合には、容易に苗の姿勢を修正することができ、欠株などがある場合にも、容易に補植作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0011】
請求項4に係る発明は、複数個のセルトレイを載置できる予備苗載台80を設け、苗供給装置7の外側方から上方に亘ってセルトレイを載置できる苗取り台82を設けた請求項1、請求項2または請求項3記載の苗移植機とした。
【0012】
従って、請求項1、請求項2または請求項3記載の発明の作用に加えて、作業者は、苗取り台82に載置収納したセルトレイから容易に苗を取出して、苗供給装置7の苗受カップ7cに順次供給する作業が効率良く行える。
【0013】
請求項5に係る発明は、苗取り台82をセルトレイの長手方向を機体の左右方向に向けた状態で載置できる構成とし、苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側が低く機体中央側が高くなるように左右傾斜した状態で配置した請求項4記載の苗移植機とした。
【0014】
従って、請求項4記載の発明の作用に加えて、作業者は、苗取り台82に載置収納した長手方向を機体の左右方向に向けた状態のセルトレイから苗を容易に取出すことができ、苗取り台82の後方の苗受カップ7cに順次供給する作業が効率良く行える。また、苗供給装置7の前後傾斜した後方部位は植付具11内に苗を供給して空になっている苗受カップ7cが周回してくる位置であり、苗受カップ7c内には苗が入っていないので、苗取り台82を苗受カップ7cの上端近くの低い位置に配置しても支障はなく、作業者はセルトレイから苗を容易に取出すことができる。また、苗取り台82の機体中央側が高くなるように配置されているので、苗が入っている苗受カップ7cの上方にこの苗取り台82が位置しても、苗取り台82が苗受カップ7c内の苗に接当することを防止できる。そして、苗取り台82に載置されたセルトレイの苗を全部使いきった時には、予備苗載台80に載置された新しい苗の入っているセルトレイを取出して、苗取り台82に載置収納して、苗供給作業を継続する。尚、苗取り台82の空のセルトレイは、予備苗載台80の空いた部分に載置する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明は、苗供給装置7を平面視で左右一側を機体前方に位置させ他側を機体後方に位置させて前後傾斜した状態で配置し、苗供給装置7の後端よりも左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端を機体前方側に設けたので、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側の苗受カップ7cに苗を供給する作業者の作業領域Sを広くすることができ、作業者は、この広い作業領域Sで左右覆土鎮圧輪8L,8Rが邪魔にならず作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方部位の苗受カップ7cに苗を供給する作業者の作業領域S側の覆土鎮圧輪8Lが更に機体前方に位置する構成となり、更に作業領域Sを広くすることができ、作業者は、この更に広い作業領域Sで左右覆土鎮圧輪8L,8Rが邪魔にならず作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、更に作業効率及び作業性が良い。また、左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置したことにより、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの間隔を狭くして配置することができ、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの鎮圧力を高めることができて、植付具11が植付けた苗に対して適切に覆度及び鎮圧作用することができ、適切な苗の移植作業が行える。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2記載の発明の効果に加えて、苗供給装置7よりも機体後方に操縦ハンドル9の左右握り部9bを設け、該左右握り部9bを苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に機体の左右中央から偏倚して配置すると共に、該操縦ハンドル9のハンドルフレーム9’を苗供給装置7の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に配置して操縦ハンドル9を機体に連結したので、作業者の作業領域Sを更に広くすることができ、作業者は、この更に広い作業領域Sで作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7cに苗を供給する作業が行えて、更に作業効率及び作業性が良い。また、機体後部と左右握り部9bとの間には空間があり、作業者は、植付けた苗の姿勢が悪い場合には、容易に苗の姿勢を修正することができ、欠株などがある場合にも、容易に補植作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1、請求項2または請求項3記載の発明の効果に加えて、作業者は、苗取り台82に載置収納したセルトレイから容易に苗を取出して、苗供給装置7の苗受カップ7cに順次供給する作業が効率良く行える。
【0019】
請求項5に係る発明は、請求項4記載の発明の効果に加えて、作業者は、苗取り台82に載置収納した長手方向を機体の左右方向に向けた状態のセルトレイから苗を容易に取出すことができ、苗取り台82の後方の苗受カップ7cに順次供給する作業が効率良く行える。また、苗供給装置7の前後傾斜した後方部位は植付具11内に苗を供給して空になっている苗受カップ7cが周回してくる位置であり、苗受カップ7c内には苗が入っていないので、苗取り台82を苗受カップ7cの上端近くの低い位置に配置しても支障はなく、作業者はセルトレイから苗を容易に取出すことができる。また、苗取り台82の機体中央側が高くなるように配置されているので、苗が入っている苗受カップ7cの上方にこの苗取り台82が位置しても、苗取り台82が苗受カップ7c内の苗に接当することを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の具体的に構成された実施の一形態について、図面に基づいて説明する。本実施例では、エンジン1を設けた側を前と言い、操縦ハンドル9を設けた側を後と言う。また、機体後から前を見て、右側及び左側と言う。
【0021】
図1及び図2は、発明適用構成例を示す野菜等の苗を移植する苗移植機の側面図と平面図である。
苗移植機1は、前部にエンジン2及びミッションケース3と走行車輪としての前側の左右前輪4,4及び後側の駆動輪としての左右駆動後輪5,5と、ミッションケース3のケース後部から延びる機体フレーム3aに植付装置6および苗供給装置7による植付部、左右覆土鎮圧輪8L,8R及び操縦ハンドル9等を備えて構成される。
【0022】
詳細には、ミッションケース3には、機体高さと左右高さを調整するために、その両側にアーム状の左右の伝動ケース5a,5aを回動可能に備え、この左右の伝動ケース5a,5aを介して左右の駆動後輪5,5を支持するとともに、後述の植付具11を昇降可能に備えた植付装置6と周回テーブル型の苗供給装置7とからなる植付部を走行系と同期して駆動する。
【0023】
植付部の苗供給装置7は、投入苗株を受ける苗受カップ7c…を等ピッチでチェーン状に連結して配置し、伝動軸7aを介して走行系と連動して(イ)方向に周回移動する構成とし、植付具11の上昇端位置を通る長円状の軌道を周回移動可能に構成する。個々の苗受カップ7c…により、植付具11と対応するタイミングで植付装置6の植付具11内に苗株を搬送して投下する。また、植付具11は機体の左右中央位置に配置され、苗供給装置7は機体の左右一側にオフセットした状態で配置されている。
【0024】
そして、苗供給装置7は、平面視で左右一側(実施例では、右側)を機体前方に位置させ、他側(実施例では、苗供給装置7をオフセットして設けた左側)を機体後方に位置させて、前後傾斜した状態とし、チェーン状に連結された各苗受カップ7c…が平面視で前後傾斜した状態で植付具11の上昇端位置を通る長円状の軌道を周回移動する構成となっている。また、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側に位置する側(左側)の後端部は、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端部よりも機体後方側に位置する構成としている。
【0025】
また、左右覆土鎮圧輪8L,8Rは、機体に支持された鎮圧フレーム8Fに各々回転自在に枢支して設けており、左覆土鎮圧輪8Lを右覆土鎮圧輪8Rよりも少し前方に位置させて、左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置している。このように左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置することにより、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの間隔を狭くして配置することができ、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの鎮圧力を高めることができて、植付装置6の植付具11が畝Kに植付けた苗に対して適切に覆度及び鎮圧作用することができ、適切な苗の移植作業が行える。
【0026】
植付装置6は、要部拡大側面図を図3に示すように、上部に形成した開口11aから苗株を受けて左右に開閉可能な嘴状の植付具11と、この植付具11を昇降駆動する植付伝動部3cに前端側を連結する昇降アーム12と、この昇降アーム12の下方に並行して昇降動作しつつ植付具11のホルダ11bと連結してその姿勢を保持する副リンク13とから構成される。また、昇降アーム12と副リンク13の前端部12a・13aは連結リンクRにより連結されており、前後に揺動可能に上端14aを支軸に軸支した揺動アーム14を介して前後移動可能に連結するとともに、昇降アーム12の中間部分の連結点12bを回転駆動するクランクアーム15を設ける。
【0027】
副リンク13と植付具11との連結部13cは、ホルダ11bの後部に配置してコンパクト化を図り、また、植付具11の開閉動作のための開閉レバー16を昇降アーム12との支点12cに軸支する。開閉レバー16には連結ロッド17を介して並行動作が可能な開閉アーム18を設けてクランクアーム15の連結点12bに軸支するとともに、このクランクアーム15の回転動作と同期して回転動作して副リンク13の中途部を連結点19bで支持する副クランクアーム19を設け、この副クランクアーム19と一体に開閉カム20を設け、ローラ18aを介して開閉アーム18を所定のタイミング(植付具11が畝の土中に入って苗を植付けるタイミング)で作用し、植付具11が左右に開いて畝に苗を植付ける。
【0028】
昇降アーム12と副リンク13は、各々の中途部がクランクアーム15と副クランクアーム19により駆動されて上下動する平行リンクとなっており、各々の後端側が植付具11に連結されて、植付具11を所定の軌跡で上下動させる構成であるが、各々の前端側が連結リンクRにより連結されているので、該連結リンクRにより昇降アーム12と副リンク13が回動部の遊びにより平行リンクの姿勢が崩れるのを防止し、昇降アーム12と副リンク13は平行リンクの姿勢を適正に維持して作動し、植付具11を所定の軌跡で上下動させて適正な苗の移植作業が行える。尚、連結リンクRに植付伝動部3c側に固定したガイドピンに嵌る作動規制用の長穴を設けて、連結リンクRが適正な所定の作動をするように構成すれば、更に、昇降アーム12と副リンク13は平行リンクの姿勢を適正に維持して作動し、植付具11を所定の軌跡で上下動させて適正な苗の移植作業が行える。
【0029】
上記構成の植付装置6は、クランクアーム15及び副クランクアーム19の回転によって上下に揺動される昇降アーム12と副リンク13により、植付具11が昇降動作と連動して左右に開閉して苗株の植付けを行う。詳細には、リンク構成線図である図4に示すように、クランクアーム15及び副クランクアーム19が回転すると、昇降アーム12及び副クランクアーム19の前端部12a・13aが揺動アーム14により前後移動しつつ上下に揺動され、後端位置の植付具11の下端が縦長の長円状軌跡Aを描いて作動する。尚、昇降アーム12と副リンク13、連結リンクR、クランクアーム15及び副クランクアーム19及び揺動アーム14にて植付具11の昇降機構Uが構成されている。
【0030】
植付具11の開閉動作については、昇降アーム12の支軸12cに軸支した開閉レバー16が、連結ロッド17を介して開閉アーム18と並行動作し、この開閉アーム18は、クランクアーム15と同一位相で回転動作する副クランクアーム19と一体の開閉カム20によって動作制御される。したがって、簡易な形状のカムによって開閉タイミングと開閉量の高精度の制御が可能となる。
【0031】
次に、伝動機構について説明すると、エンジンと一体構成のミッションケース3は、その要部展開図を図5に示すように、入力ギヤ31からエンジン動力を主クラッチ32Kを介して受ける入力軸32、該入力軸32と一体回転する駆動ギヤ32bと噛合している従動ギヤ33aと一体回転するカウンタ軸33、シフトギヤ34を備える変速軸35、機体走行用の駆動後輪5,5を各々駆動する左右の駆動軸36,36を備え、変速軸35は、シフトギヤ34のシフト位置により、入力軸32の高速ギヤ32aの選択による移動速、低速ギヤ32bの選択による植付速、カウンタ軸33の後進ギヤ33Rの選択による後進速に変速される。
【0032】
また、低速ギヤ32bの選択による植付速にした場合、植付変速レバー33Sにて操作されるシフトキー33Kにて前記カウンタ軸33と一体回転する大駆動ギヤ33b,中駆動ギヤ33c,小駆動ギヤ33dが設けられており、一方、入力軸32には遊転自在に設けられた前記低速ギヤ32bと一体回転する小従動ギヤ32c,中従動ギヤ32d,大従動ギヤ33eが設けられており、大駆動ギヤ33b,中駆動ギヤ33c,小駆動ギヤ33dと小従動ギヤ32c,中従動ギヤ32d,大従動ギヤ33eは各々常時噛合している。従って、植付速は、植付変速レバー33Sにて3段階に変速できる構成となっている。
【0033】
また、カウンタ軸33によりベベルギヤ機構37aを介して植付軸37を一定速度で駆動する一方で、植付速は植付変速レバー33Sにて3段階に変速して株間距離を変更するべく植付速度を変えて植付けが行える。
【0034】
植付伝動部3cは、要部拡大側面図およびその伝動系統展開図を図7に示すように、植付装置6の伝動軸44と苗供給装置7の伝動軸45を配置する。すなわち、ミッションケース3からの動力を植付軸37を介して受ける入力軸41aから株間変速装置41を経由して植付クラッチ45aを介して苗供給装置7の伝動軸45を変速駆動するとともに、この変速動力を間欠クラッチ44aの制御側に入力する。従って、株間変速装置41によって変速された動力が間欠的に苗供給装置7のテーブル駆動に合わせて植付装置6の伝動軸44に伝動され、前記クランクアーム15及び副クランクアーム19を駆動する。
【0035】
前記株間変速装置41は、駆動側の小ギヤ41a,中ギヤ41b,大ギヤ41cと従動側の小ギヤ41d,中ギヤ41e,大ギヤ41fとが各々カウンタギヤを介して噛合しており、且つ、駆動側の小ギヤ41a,中ギヤ41b,大ギヤ41cの何れかを駆動側軸42aと一体回転させる株間変速第1レバー43a及び従動側の小ギヤ41d,中ギヤ41e,大ギヤ41fの何れかを駆動側軸42aと一体回転させる株間変速第2レバー43bが設けられている。従って、駆動側の3つのギヤの選択と従動側の3つのギヤの選択との組合せで、株間は9段に変速できる構成となっている。
【0036】
従って、この株間変速装置41の9段の変速と前記機体の進行速度の変速である植付速の3段の変速とで、株間は27段に変更でき、植付ける苗の種類に対する適応性や地域独特の植付株間に対する適応性が拡大し、汎用性のある苗移植機を得ることができる。
【0037】
また、この植付装置6の伝動軸44には、伝動トルクを変更するカム機構46が設けられている。即ち、伝動軸44に固定されたカム46aと該カム46aに引張りバネ47aにて圧接する押圧ローラ47bと該押圧ローラ47bを揺動自在に支持するローラ支持揺動アーム47cとによって構成されている。また、カム46aは、植付具11の上昇位置での停止位置T1直前から伝動軸44にブレーキをかけて、その後、植付具11が下降する際に植付具11の自重による下動慣性力を抑える為にブレーキ力を徐々に増大しながらブレーキをかけ続け、植付具11の最下降位置T2の直前で伝動軸44に対するブレーキをかけるのを中止し、その後、植付具11が上昇する過程では回転をアシストする形状となっている。従って、植付具11を軌跡Aにて上下作動させる伝動軸44の伝動トルクが植付具11の上下動に合わせて変更され(植付具11が下降する際に植付具11の自重による下動慣性力を抑える為にブレーキ力をかけ、植付具11が上昇する過程では回転をアシストする)、植付具11は所定の適正な作動速度を維持して円滑に作動し、適切な苗の移植作業が行える。また、このカム機構46にて植付具11の上昇位置での停止位置T1直前から伝動軸44にブレーキをかけるので、植付具11は植付クラッチ45aによる間欠駆動の停止位置で適正に停止し、別途植付具11を停止させるブレーキ装置を設ける必要がなく、簡潔な構成で安価に構成できる。
【0038】
50は植付具11内部に付着した泥土を掻き落とすスクレープ装置であって、植付伝動部3cに回動自在に軸支された揺動支持アーム51と該揺動支持アーム51の下端部にボルト52にて着脱自在に固定したスクレープ部53と揺動支持アーム51の上端部に設けた作動従動カムローラ54とによって構成されている。一方、クランクアーム15の駆動軸15aに作動駆動カム55を設けて、該作動駆動カム55の回転により作動従動カムローラ54を作動させて、揺動支持アーム51が所定のタイミングで揺動作動し、即ち、植付具11の機体左右方向に開く左右植付片11L,11Rが左右に開いて内部に保持していた苗を圃場に植付けて開いたまま上昇する過程で、スクレープ部53が植付具11の左右植付片11L,11R内部に嵌り込んで内部の泥土を掻き落とすように作動する。
【0039】
図9に示すように、スクレープ部53には、平板状のゴム材より構成されるスクレーパ53aが装着されている。該スクレーパ53aは、平面視で後退角Mを持った三角形状で、背面視で下方傾斜角Nを持った形状に構成されている。このような形状にスクレーパ53aを構成することによって、スクレープ部53が植付具11の左右植付片11L,11R内部に嵌り込み易く、また、左右植付片11L,11R内部に付着した泥土の掻き落とし性能も良くて、適切に植付具11の左右植付片11L,11R内部を清掃し、植付具11の苗植付け性能を適正に維持できて、良好な苗の移植作業が行える。
【0040】
一方、植付具11の左右植付片11L,11Rには、その前面側(スクレープ部53が嵌り込んでくる側)にスクレープ装置のスクレープ部53のスクレーパ53aが左右植付片11L,11Rの側端部に接当して破損しないようにガイド板60,60が各々溶接して設けられている。図11の断面図に示すように、ガイド板60は、スクレーパ53aが接当しても破損しないように曲面60aを形成した形状になっている。従って、スクレープ部53のスクレーパ53aは、このガイド板60の曲面60aに案内されて円滑に左右植付片11L,11R内に嵌り込む。よって、ゴム材にて形成されたスクレーパ53aの破損が防止できて、長期に亘り適切な植付具11の左右植付片11L,11R内部の清掃作用が維持できて、良好な苗の移植作業が行える。
【0041】
尚、上記の板上のガイド板60に替えてステンレス製の丸棒を左右植付片11L,11R(左右植付片11L,11Rもステンレスを成型したものである)の側壁部に各々溶接固定しても、該丸棒の外周曲面がスクレーパ53aを案内するので同様の効果があり、且つ、左右植付片11L,11Rの側壁部を補強する効果もある。更に、他の部材を設けないで、左右植付片11L,11Rの側壁部を内側に向けて曲面を設けて折り曲げて構成しても良い。また、スクレーパ53aに摺動抵抗の非常に少ない樹脂シートを貼り付けて、スクレーパ53aが左右植付片11L,11R内に滑って嵌り込み易くすれば、更に、破損防止効果がある。
【0042】
更に、スクレーパ53aの上面又は下面にスクレーパ53aの左右幅からはみ出るビニールパイプ等の接当防止材を固定して、スクレーパ53aが直接左右植付片11L,11Rの側壁部に接当しないようにしてもスクレーパ53aの破損防止効果がある。
【0043】
また、左右植付片11L,11Rの側壁部間に隙間70が構成されているので、左右植付片11L,11Rが閉じる際に発生する音を軽減させる効果もある。尚、閉じる際の音を軽減させる為に、左右植付片11L,11Rの下端部接当面に樹脂板を貼り付けても良い。
【0044】
図12はスクレープ部の他の実施例を示し、揺動支持アーム51の下端部に左右に左右縦軸51a’,51a’を設け、該左右縦軸51a’,51a’に弾性ゴム材よりなるロール状スクレーパ53a’,53a’を各々回転自在に枢支した構成である。このように弾性ゴム材よりなるロール状スクレーパ53a’を縦軸51a’回りに回転自在に枢支した構成にすると、ロール状スクレーパ53a’が植付具11の左右植付片11L,11R内部に嵌り込み易く、また、左右植付片11L,11R内部に付着した泥土の掻き落とし性能も良くて、適切に植付具11の左右植付片11L,11R内部を清掃し、植付具11の苗植付け性能を適正に維持できて、良好な苗の移植作業が行える。また、ロール状スクレーパ53a’が左右植付片11L,11Rに接当しても回転することにより、ロール状スクレーパ53a’の破損が防止でき、長期に亘り左右植付片11L,11R内部を清掃し植付具11の苗植付け性能を適正に維持できる。
【0045】
80は予備苗載台であって、苗を育苗したセルトレイを長手方向を機体の前後方向に向けた状態で左右方向に3個載置収納できる広さに構成し、支持フレーム81により機体に支持して設けている。
【0046】
82は苗取り台であって、苗を育苗したセルトレイを長手方向を機体の左右方向に向けた状態で1個載置収納できる箱状の構成で、前記予備苗載台80の後端部に支持されて設けられている。そして、苗取り台82は、機体平面視で苗供給装置7の前方から上方に亘って配置されている。更に詳細に言うと、機体平面視で苗取り台82は、苗供給装置7の機体前方側の(イ)方向に周回移動する苗受カップ7c…の上方に配置されており、(イ)方向に周回移動する苗受カップ7c…の機体後方側部分の上方は開放した空間部となっている。従って、作業者は、苗取り台82に載置収納した長手方向を機体の左右方向に向けた状態の苗を育苗したセルトレイから苗を取出して、苗取り台82の後方の(イ)方向に周回移動してくる苗受カップ7c…に順次容易に供給することができる。
【0047】
更に、苗取り台82は、機体外側(平面視で前後傾斜した状態で配置された苗供給装置7の左側)が低くて機体中央側(苗供給装置7の右側)が高くなるように左右傾斜した状態で配置されているので、作業者は、苗取り台82に載置収納した長手方向を機体の左右方向に向けた状態の苗を育苗したセルトレイから苗を容易に取出すことができ、苗取り台82の後方の(イ)方向に周回移動してくる苗受カップ7c…に順次供給する作業が効率良く行える。また、苗供給装置7の左側は植付具11内に苗を供給して空になっている苗受カップ7c…が周回してくる位置であり、苗受カップ7c…内には苗が入っていないので、苗取り台82を苗受カップ7c…の上端近くの低い位置に配置しても支障はなく、作業者はセルトレイから苗を容易に取出すことができる。また、苗取り台82の機体中央側(苗供給装置7の右側)が高くなるように配置されているので、苗が入っている苗受カップ7c…の上方にこの苗取り台82が位置しても、苗取り台82が苗受カップ7c…内の苗に接当することを防止できる。
【0048】
そして、苗取り台82に載置収納されたセルトレイの苗を全部使いきった時には、予備苗載台80に載置された新しい苗の入っているセルトレイを取出して、苗取り台82に載置収納して、苗供給作業を継続する。尚、苗取り台82の空のセルトレイは、予備苗載台80の空いた部分に載置する。
【0049】
尚、図13に示すように、苗供給装置7の苗受カップ7c…の駆動構成は、苗供給装置7の左右両側に設けた左右駆動スプロケット7b,7bにチェーン状に連結した苗受カップ7c…を掛け回し、該左右駆動スプロケット7b,7bを植付伝動部3cからの伝動軸7aを介して駆動して、苗受カップ7c…が(イ)方向に周回移動する構成としている。
【0050】
操縦ハンドル9は、機体右側を迂回したハンドルフレーム9’の後部にバーハンドル部9aを形成してU字状形状をしており、ハンドルフレーム9’の前端基部が機体フレーム3aの後部に固定されて設けられている。そして、バーハンドル部9aには左右握り部9b,9bと左右操向クラッチレバー9c,9cが設けられている。そして、操縦ハンドル9の基部から機体左側に向けてバー状の補助ハンドル9dを延設して設け、該補助ハンドル9dは前記苗供給装置7の左側部(平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側部)の後方位置に配置されている。また、補助ハンドル9dには、エンジン2の回転数を上下制御操作するアクセルレバー9eが設けられている。
【0051】
従って、機体操向操作時のバーハンドル部9aは機体の後部で左右幅が狭くて、機体の左右中心から右側にオフセットした状態で配置した構成となっており、併せて、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側に位置する側(左側)の後端部は、左右覆土鎮圧輪8L,8Rの後端部よりも機体後方側に位置する構成としているので、平面視で前後傾斜した苗供給装置7の機体後方側(機体の左側)の苗受カップ7c…に苗を供給する作業者の作業領域Sを広くすることができる。また、左覆土鎮圧輪8Lを右覆土鎮圧輪8Rよりも少し前方に位置させて、左右覆土鎮圧輪8L,8Rを機体前後方向に位置をずらして配置しているので、更に作業領域Sを広くすることができる。
【0052】
よって、作業者は、この広い作業領域Sで左右覆土鎮圧輪8L,8Rが邪魔にならず作業性良く上記苗供給装置7の苗受カップ7c…に苗を供給する作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。また、作業領域Sの畝K側には左右覆土鎮圧輪8L,8Rがなく、然も、バーハンドル部9aは機体右側を迂回した形状でその基部が機体フレーム3aの後部に固定されているので、機体フレーム3aの後部とバーハンドル部9aとの間には空間があり、作業者は、畝Kに植付けた苗の姿勢が悪い場合には、容易に苗の姿勢を修正することができる。また、欠株などがある場合にも、容易に補植作業が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0053】
また、作業領域Sで上記苗供給装置7の苗受カップ7c…に苗を供給する作業をしている際には、補助ハンドル9dを握って容易に機体の方向修正等を行なうことができる。更に、補助ハンドル9dには、エンジン2の回転数を上下制御操作するアクセルレバー9eが設けられているので、作業領域Sで上記苗供給装置7の苗受カップ7c…に苗を供給する作業をしている際に、作業状態にあわせて機体の進行速度を容易に調整できて、作業効率及び作業性が良い。
【0054】
また、バーハンドル部9a部に補植用の苗を入れた補植用苗入れ9fを吊り下げておけば、作業者は、この補植用苗入れ9fから苗を取出して、作業領域S又は機体後方位置(バーハンドル部9aの後方位置)で容易に補植作業が行える。
【0055】
図14は左右駆動後輪5,5を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構の油圧回路図を示し、この機体制御機構は、ミッションケース3の上に配置した油圧バルブユニット90から後方に向けて昇降シリンダ91が設けられ、該シリンダのピストンロッドの先端部に天秤杆92が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。天秤杆92の左右両端部と、左右回動筒部95,95に固着した左右スイングアーム95aとが、左右連結ロッド96を介して連結されている。尚、左右回動筒部95,95は、各々左右の伝動ケース5a,5aの前端部に固定され、ミッションケース3から左右に突出して設けた左右車輪駆動軸回りに回動自在に設けている。左側の連結ロッド96は、ローリングシリンダ97が組み込まれており、該シリンダを伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0056】
昇降シリンダ91及びローリングシリンダ97は、前記油圧ポンプ100から供給される作動油を油圧バルブユニット90内の制御バルブ90a,90bで各々制御して作動させられる。昇降シリンダ91を伸縮作動させると、左右の駆動後輪5,5が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ97を伸縮作動させると、左の駆動後輪5が機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0057】
また、畝K上面を検出するセンサ85は機体フレーム3aに左側が軸支された回動軸101に後端部が固着され先端が前方に向けて延設されたアーム102に軸103にて回動自在に軸支されている。そして、回動軸101は植付深さ調節レバー104の基部が連繋されており、植付深さ調節レバー104を係合案内の調節係合部に係合係止して固定状態にすると、回動軸101は回動が固定され、従って、アーム102の軸103は上下高さが固定されるので、センサ85は畝上面に摺接しながらその軸103回りに回動して、下記のように畝Kの高さ変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御される。そして、植付深さ調節レバー104を係合案内の調節係合部に対して位置調節して係合係止して固定状態にすることにより、アーム102の軸103の上下高さ位置を調節できるので、畝Kに対する機体高さを制御する基準位置を自由に設定できるので、苗の植付深さが調節できる。
【0058】
畝上面を検出するセンサ85が上下回動すると、その回動をリンク機構にて上下制御バルブ90aに伝え、センサ85の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ91を作動させる。これにより、畝Kの上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さの変更に係わらず常に苗の植付深さが一定になるように制御される。
【0059】
また、油圧バルブユニット90内の左右傾斜制御バルブ90bは左右傾斜検出用の振り子105の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ97が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。
【0060】
尚、機体フレーム3aの後端部には操作パネル110が設けられ、該操作パネル110に、苗供給装置7及び苗植付装置6へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー111、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー112等が設けられている。図中の符号113は苗の植付間隔を調節する株間調節レバーである。
【0061】
120は畝終り検出センサであって、機体の前部下方に配置されている。詳しい構成は、機体の前部下方に設けた機体左右方向の枢支軸121に上端基部が枢支され下端が上下回動自在に支持アーム122を設け、該支持アーム122の下端に機体左右方向の軸123にて回動ローラ124を枢支し、バネにて支持アームを下動する方向に付勢して構成している。従って、畝終り検出センサ120は、苗植付作業時にはバネに付勢されて回動ローラ124が畝K上面に接当して自由回転しており、畝終りになって、畝Kがなくなって回動ローラ124が大きく下動すると、支持アーム122の基部に設けた検出センサが該回動ローラ124が大きく下動して支持アーム122が大きく下動したことを検出して、畝終り報知ブザーを鳴らす構成にしている。よって、作業者が苗受カップ7c…への苗供給作業に専念していて、畝終りに気付かなくても、該畝終り検出センサ120によって畝終りが検出されて畝終り報知ブザーが鳴るので、作業者は畝終りであることに気付き、旋回操作の準備が行えて、作業効率及び作業性が良い。
【0062】
以下に、作業性及び作業効率を良くする例について詳述する。
先ず第1例は、変速レバー130にてミッションケース3内の変速ギヤを切替え操作することによって、機体の車速を「路上走行速(高速)」と「植付作業速(低速)」と「後進速」に変速操作することができる構成とし、変速レバー130を「植付作業速」にしたことを検出する車速センサを設け、該車速センサにて車速が「植付作業速」であることを検出したときのみ、バーハンドル部9aの左右操向クラッチレバー9c,9cを操作すると、エンジン2の回転数を高回転に制御して車速を速くする制御機構を設けている。このように、苗植付作業を行なう時は、変速レバー130を「植付作業速」にしており、その場合にのみ、左右操向クラッチレバー9c,9cを操作するとエンジン2の回転数が高回転に制御されて車速が速くなると、畦際での機体旋回時にエンジン2の回転数が高回転に制御されて車速が自動的に速くなるので、旋回が早く行え、然も、旋回後に左右操向クラッチレバー9c,9cの操作を止めると自動的にエンジン2の回転数は元に戻って元の車速になるので、畦際での機体旋回時に一々アクセルレバー9eを操作する作業がなくなり、作業性及び作業効率が向上する。また、車速が「路上走行速(高速)」や「後進速」の場合には、エンジン2の回転数が自動的に高回転に制御されないので、安全である。
【0063】
また、上記の実施例において、変速レバー130が「植付作業速」で且つ植付昇降レバー111を機体上昇位置に操作したときのみ、エンジン2の回転数を高回転に制御して車速を速くする制御機構にすると、機体が上昇して機体を旋回操作するときに、車速が速くなるので、作業者は速い車速での旋回操向操作が行ない易くなる。尚、上記のエンジン2の回転数を高回転に制御して車速を速くする制御機構を働かせる状態と働かせない状態に切替えるスイッチを設け、自動高速旋回を行なう場合と行わない場合を作業状態によって選択できるようにしても良い。
【0064】
次に、畝終り検出センサ120が畝終りを検出すると、畝終り報知ブザーを鳴らして作業者に報知すると共に、エンジン2の回転数を低回転に制御して車速を遅くし、そして、畝上面を検出するセンサ85が畝Kを検出しなくなると、植付昇降レバー111を植付クラッチ切で機体上昇位置に自動操作する制御機構を設ける。このような制御機構を設けると、畦終り近くで自動的に車速が遅くなり、作業者は旋回準備態勢になることができ、然も、センサ85が畝Kを検出しなくなって機体が旋回する位置にくると自動的に植付クラッチが切れて機体が上昇するので、旋回がすばやく効率的に行える。
【0065】
また、畝終り検出センサ120が畝Kを検出した時に、変速レバー130を「植付作業速」に自動的に切替える制御機構を設けておくと、路上走行してきて圃場に入り苗植付作業を行なう時に、変速レバー130を「路上走行速(高速)」や「後進速」にしていても、植付作業を開始すると畝終り検出センサ120が畝Kを検出して自動的に変速レバー130を「植付作業速」にするので、安全であり、且つ、作業性及び作業効率も良い。
【0066】
次に、機体旋回時に自動的に旋回側の操向クラッチが切れて、旋回時の左右操向クラッチレバー9c,9cの操作を省くことができて、作業性及び作業効率が良くなる例を説明する。即ち、畦終りで機体を旋回する時に、作業者は、植付昇降レバー111を操作して苗供給装置7及び苗植付装置6へ伝動する植付クラッチを切操作し機体を上昇させて、旋回方向側の操向クラッチレバー9cを操作して旋回内側の操向クラッチを切って(旋回内側の駆動車輪5の駆動を切って)、機体の旋回を行なう。そして、並列して形成した畝Kを畝終りで旋回して順次往復しながら、苗植付作業を行なう。従って、最初に畝終りで右旋回すると、次は、畝終りで左旋回して苗植付作業を行なう。そこで、左右操向クラッチレバー9c,9cの何れを操作したかを検出するセンサを設けると共に、左右操向クラッチを各々入り切り操作する左右電磁ソレノイドを設け、圃場に入って最初の畝Kの苗植付けが終わって、畝終りで旋回するときに左右操向クラッチレバー9c,9cの何れを操作して旋回したかをセンサにて検出して記憶しておき、次回の旋回時からは、順次、逆側の操向クラッチが自動的に電磁ソレノイドにて切り及び入り操作される制御機構を設ける。即ち、植付昇降レバー111を植付クラッチが切で機体が上昇する位置にすると、旋回と判断して、順次、逆側の操向クラッチを自動的に電磁ソレノイドにて切り、植付昇降レバー111を植付クラッチが入で機体を下降させる位置にすると、旋回終りと判断して切った操向クラッチを自動的に電磁ソレノイドにて入りにする。このような制御機構を設けると、機体旋回時に自動的に旋回側の操向クラッチが切れて、旋回時の左右操向クラッチレバー9c,9cの操作を省くことができて、作業性及び作業効率が良い。
【0067】
次に、苗供給装置7への作業者の苗供給作業状態に応じて機体の車速を変更して、作業者の苗供給作業状態に応じた苗移植作業が行える例を説明する。即ち、苗供給装置7の各苗受カップ7c…に苗が入っていることを検出する苗センサを各々設け(実施例では、14個の苗受カップ7c…の各々に苗が入っていることを検出するセンサを各苗受カップ7c…に設ける)、そして、苗供給が可能な苗受カップ7c…の何個の供給カップ7cに苗が入っているかを判断する(実施例では、苗取り台82後端から作業者側に出てきて植付具11に苗を供する位置までの10個の苗受カップ7c…の何個に苗が入っているかを判断する)。そして、苗移植作業時に、苗供給が可能な苗受カップ7c…の全てに苗が入っている場合(実施例では、苗供給が可能な苗受カップ7c…が10個であるので、10個の苗受カップ7c…に苗が入っている場合)は、作業者は余裕をもって苗供給作業をしていると判断して、エンジン2の回転数を高回転側に制御して車速を速くして作業速度を上げ、逆に、苗供給が可能な苗受カップ7c…の60%しか苗が入っていない場合は、作業者は苗供給作業が追いつかない状態であると判断して、エンジン2の回転数を低回転側に制御して車速を遅くして作業速度を落とす。従って、作業者にとって最適な作業速度での苗移植作業が行なえる。また、作業者が畝Kに植付けた苗姿勢が悪くて修正している場合や欠株の時に補植している場合には、苗供給作業ができず車速を落とす操作か機体を停止する操作をしないといけないが、この制御機構が働くと自動的に車速が落ちるので、作業性及び作業効率が良い。
【0068】
また、前記苗取り台82の重量を検出する重量センサを設け、苗取り台82に載置収納しているセルトレイの苗がなくなって苗取り台82の重量が軽くなったことを重量センサが検出した際に、予備苗載台80から新しいセルトレイを取出して苗取り台82に載せ換える作業をしないといけないと判断して、エンジン2の回転数を低回転側に制御する制御機構を設ける。予備苗載台80から新しいセルトレイを取出して苗取り台82に載せ換える作業時には、苗供給作業が一時的に行えないので、車速を落とす必要があるが、このような制御機構を設けると自動的に苗取り台82のセルトレイ載せ換え作業時にエンジン2の回転数が低回転側に制御されて車速が遅くなり、作業性が良い。
【0069】
縦方向に並列して畝Kを形成し、該縦方向に並列した畝K列の畝終り両側位置に横方向に畝Kを形成した圃場で、縦方向に並列して形成した畝Kに苗植付作業を行なう場合、畝終りで機体を旋回させる際に畝終り位置の前方近くに横方向に畝Kがあるので、機体を上昇させた後に機体を少し後進させてから旋回する必要がある(少し後進させないと、横方向の畝Kがあるので旋回が行えない)。そこで、前輪4に機体前後方向の応力(負荷)が掛かったことを検出する応力センサを設け(例えば、前輪4の車軸が多少前後移動する構成とし、通常はバネにより車軸を前方に付勢して車軸が前方側にある状態とし、前輪4が何かに接当して機体前後方向の応力を受けた場合には、車軸が後方に移動する構成とし、該車軸が後方に移動したことを検出するセンサを設け)、該応力センサが前輪4に機体前後方向の応力(負荷)が掛かったことを検出した時には、植付昇降レバー111を植付クラッチが切で機体が上昇する位置に自動操作すると共に変速レバー130を「後進速」に切替えて所定距離だけ機体を後進させた後に再び変速レバー130を「植付作業速」に切替える制御機構を設ける。尚、植付昇降レバー111及び変速レバー130の切替え操作は、制御機構によって作動制御される電磁ソレノイド若しくは電気シリンダー等のアクチュエータにて行なわれる構成とする。このような制御機構を設けると、縦方向に並列した畝Kでの苗植付作業時に、畝終りで前輪4が横畝Kに接当して応力センサがそれを検出し、自動的に植付クラッチが切となり機体が上昇し、所定距離だけ機体が後進するので、作業者は機体の旋回操作が効率良く行えて作業性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】発明適用の構成例を示す苗移植機の側面図である。
【図2】発明適用の構成例を示す苗移植機の平面図である。
【図3】植付装置の要部拡大側面図である。
【図4】植付装置のリンク構成線図である。
【図5】ミッションケースの要部展開図である。
【図6】ミッションケースの要部展開図である。
【図7】植付伝動部の伝動系統展開図である。
【図8】カム機構の作用説明用側面図である。
【図9】スクレープ部の平面図と背面図である。
【図10】植付具の正面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】スクレープ部の他の例を示す背面図である。
【図13】苗供給装置の駆動構成を示す一部拡大平面図である。
【図14】油圧回路図である。
【符号の説明】
【0071】
5 駆動輪
7 苗供給装置
7c 苗受カップ
8L 左覆土鎮圧輪
8R 右覆土鎮圧輪
9 操縦ハンドル
9’ ハンドルフレーム
9b 左右握り部
11 植付具
80 予備苗載台
82 苗取り台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪(5)にて走行する機体に多数の苗受カップ(7c)を連結して設けた苗供給装置(7)と該苗供給装置(7)から苗を受け取って圃場に植付ける植付具(11)と圃場に植付けられた苗に対して覆土鎮圧作用する左右覆土鎮圧輪(8L,8R)を装備した苗移植機において、該苗供給装置(7)を平面視で左右一側を機体前方に位置させ他側を機体後方に位置させて前後傾斜した状態で配置すると共に、苗供給装置(7)の後端よりも左右覆土鎮圧輪(8L,8R)の後端を機体前方側に設けたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗供給装置(7)の前後傾斜した後方部位がある側の覆土鎮圧輪(8L)を他方の覆土鎮圧輪(8R)よりも機体前方に設けて、左右覆土鎮圧輪(8L,8R)を機体前後方向に位置をずらして配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
苗供給装置(7)よりも機体後方に操縦ハンドル(9)の左右握り部(9b)を設け、該左右握り部(9b)を苗供給装置(7)の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に機体の左右中央から偏倚して配置すると共に、該操縦ハンドル(9)のハンドルフレーム(9’)を苗供給装置(7)の前後傾斜した後方部位がある側と機体の左右反対側に配置して操縦ハンドル(9)を機体に連結したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
複数個のセルトレイを載置できる予備苗載台(80)を設け、苗供給装置(7)の外側方から上方に亘ってセルトレイを載置できる苗取り台(82)を設けたことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の苗移植機。
【請求項5】
苗取り台(82)をセルトレイの長手方向を機体の左右方向に向けた状態で載置できる構成とし、苗供給装置(7)の前後傾斜した後方部位がある側が低く機体中央側が高くなるように左右傾斜した状態で配置したことを特徴とする請求項4記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−148378(P2010−148378A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327733(P2008−327733)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】