苗移植機
【課題】
肥料成分検出装置により圃場の不足している肥料成分を検出し、不足している肥料成分を散布する苗移植機を提供する。
【解決手段】
走行車体1の後方に昇降リンク装置2を介して苗植付部3を昇降自在に設け、走行車体1の後上部に肥料を散布する施肥装置6を設けた苗移植機において、土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置62を設け、成分検出装置62の検出結果を受ける制御装置63を設け、施肥装置6の肥料貯留部材51に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部51f,51g,51h…を形成し、複数の区分投入部51f,51g,51h…に夫々肥料を送り出す繰出部材57…を開閉自在に設け、成分検出装置62の検出結果に基づき制御装置63から信号を発して該当する区分投入部51f,51g,51h…から放出される肥料の量を調節する放出調節部材57…を夫々動作させる構成とした。
肥料成分検出装置により圃場の不足している肥料成分を検出し、不足している肥料成分を散布する苗移植機を提供する。
【解決手段】
走行車体1の後方に昇降リンク装置2を介して苗植付部3を昇降自在に設け、走行車体1の後上部に肥料を散布する施肥装置6を設けた苗移植機において、土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置62を設け、成分検出装置62の検出結果を受ける制御装置63を設け、施肥装置6の肥料貯留部材51に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部51f,51g,51h…を形成し、複数の区分投入部51f,51g,51h…に夫々肥料を送り出す繰出部材57…を開閉自在に設け、成分検出装置62の検出結果に基づき制御装置63から信号を発して該当する区分投入部51f,51g,51h…から放出される肥料の量を調節する放出調節部材57…を夫々動作させる構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植え付けと共に圃場に肥料を散布する施肥装置を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥料ホッパの肥料繰出量を調節する施肥量調節機構と、肥料ホッパ内の肥料の一定時間当りの減少量を検出する肥料減量用のセンサとを設け、このセンサの検出値に基づいて施肥量調節機構を駆動制御して設定施肥量に維持させ、良好な施肥作業をするものは公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−27811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肥料成分検出装置を用いて圃場の不足する肥料成分を検出し、圃場に不足している肥料成分を散布し、肥料の過不足を回避して作物の成育障害を防止し、収穫量の増加及び品質の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、圃場を走行する走行車体(1)の後方に昇降リンク装置(2)を介して苗植付部(3)を昇降自在に設け、該走行車体1の後上部に肥料を圃場に散布する施肥装置(6)を設けた苗移植機において、土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置(62)を設け、該成分検出装置(62)の検出結果を受ける制御装置(63)を設け、前記施肥装置(6)の肥料貯留部材(51)に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部(51f,51g,51h…)を形成し、該複数の区分投入部(51f,51g,51h…)に夫々肥料を送り出す繰出部材(57…)を開閉自在に設け、前記成分検出装置(62)の検出結果に基づき制御装置(63)から信号を発信して該当する区分投入部(51f,51g,51h…)から放出される肥料の量を調節する放出調節部材(57…)を夫々動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0006】
請求項2の発明は、回転自在なディスク板(62a)の側面に圃場の肥料成分を検出する複数の成分検出センサ(62b…)を設け、該ディスク板(62a)が圃場面よりも上方に移動すると肥料成分センサ(62b…)に付着した泥土を除去する清掃部材(62c)を設けて前記成分検出装置(62)を構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0007】
請求項3の発明は、前記肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h)に貯留された肥料に対応する成分を夫々検出する単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)を前記ディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、成分検出装置(62)で圃場の肥料成分を検出し、この検出結果に基づいて制御装置(63)が放出調節部材(57…)を動作させて圃場に必要な肥料を必要な量だけ肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h…)から放出することができるので、圃場に特定の成分が過剰に供給されることが防止され、苗が養分過多で倒伏しやすく育つことがなくコンバイン等の収穫作業能率が向上すると共に、収穫物の食味が劣化することが防止されるので、商品価値が向上する。
【0009】
また、特定の成分が不足することを防止できるので、苗が生育不良を起こすことが防止され、収穫量が安定する。
請求項2の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、ディスク板(62a)の周辺部に複数の成分検出センサ(62b…)を設けたことにより、圃場の成分を連続して検出することができるので、場所ごとの成分の変化に関わらず必要な成分の肥料を必要な量だけ肥料貯留部材(51)から放出させることができるので、肥料の過剰供給や肥料不足により苗の生育に問題が生じることがなく、収穫量が安定すると共に商品価値が向上する。
【0010】
また、成分検出センサ(62b…)が圃場面よりも上方に移動した際に、肥料センサ(62b,…)に付着している泥土を除去する清掃部材(62c)を設けたことにより、汚れの無い状態で成分検出センサ(62b…)が土中に進入するため、圃場の肥料成分を正確に検出することができるので、放出される肥料の量をいっそう適正化される。
【0011】
また、無駄に放出される肥料が軽減されるので、施肥作業にかかる費用を低減させることができる。
請求項3の発明によると、請求項2記載発明の効果に加えて、単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)をディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことにより、複数の肥料成分を一つの成分検出装置(62)で検出することができるので、肥料貯留部材(51)から適切な量の肥料成分が放出されて、肥料の過剰供給や肥料不足による苗の生育問題が防止され、収穫量が安定すると共に商品価値が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用苗移植機の全体側面図
【図2】乗用苗移植機の全体平面図
【図3】肥料ホッパの斜視図
【図4】施肥装置の側面図
【図5】施肥装置の別実施例の側面図
【図6】肥料成分検出装置の側面図
【図7】肥料成分検出装置の別実施例の側面図
【図8】肥料成分検出装置の別実施例の側面図
【図9】整地ロータと肥料成分検出装置の平面図
【図10】作溝器を設けたフロートの要部側面図
【図11】施肥成分変更制御を示すブロック図
【図12】施肥成分変更制御を示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施例について説明する。
まず、図1及び図2に基づき本発明を実施する苗移植機の全体構成について説明する。
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付部3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車とし、全体を乗用苗移植機に構成している。
【0014】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8をボルトにより取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置(図示省略)をボルトにより一体的に組み付け、エンジン12からの動力を前後進無段変速するように構成している。
【0015】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を設置し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0016】
また、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0017】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸にケース連結フレーム(図示省略)をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0018】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置(図示省略)の入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置(図示省略)により前後進切替及び前後進無段変速され、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達される。
【0019】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸(図示省略)に取り出され、PTO伝動軸(図示省略)からPTO軸(図示省略)を経て苗植付部3に伝達されている。
【0020】
次に、苗植付部3について説明する。
PTO軸(図示省略)から動力の伝達される伝動ケース25と、該伝動ケース25から後方に延出しているチエンケース26と、伝動ケース25から左右両側に突設した左右支持枠体27,27とで植付フレームが構成されていて、チエンケース26の後端部両側に左右2組4条の苗植付装置28,28が設けられている。苗植付装置28,28の上側には、前側が上位となるように傾斜した苗載せ台29が支持枠とレールによって左右方向に移動自在に支持されている。苗載せ台29の上面には植付条数分の4個の苗載せ部に仕切られており、各苗載せ部毎に苗を下方に送るベルト式の苗送り装置33,…が設けられている。また、苗載せ台29の下端部には、苗植付装置28,…に対応する苗取出口の形成されている受け板34が左右支持筒体(図示省略)と一体に設けられている。
【0021】
また、左右の内側、外側植付杆41,…の下方には車輪跡を消すセンターフロート30C、左右フロート30L,30Rを設け、前記伝動ケース25の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動し、前記昇降用リンク2作動用の昇降シリンダ42を伸縮調節し、苗植付部3を所定の植付深さに調節するように構成している。
【0022】
次に、苗植付部3の前方に設けている整地ロータ43について説明する。
苗植付部3の左右支持枠体27,27にはリンク(図示省略)を介して整地ロータ支持フレーム(図示省略)を昇降調節自在に設け、整地ロータ支持フレームに取り付けている伝動ケース44に整地ロータ43を左右方向の軸回りに回転するように支架している。そして、右側の後輪伝動ケース17から代掻き動力を分岐し、伝動ケース44を経由して整地ロータ43に伝達している。
【0023】
次に、施肥装置6について説明する。
施肥装置6は、肥料ホッパ51に貯溜されている粒状の肥料を繰出装置52の繰出部によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース53でセンターフロート30Cの左右両側に取り付けた肥料ガイド(図示省略)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示省略)によって苗植付条の側部近傍に形成された施肥溝内に落し込むようにしている。
【0024】
電動モータで駆動するブロワ54で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ55を経由して施肥ホース53に吹き込まれ、該施肥ホース53内の肥料を風圧で施肥ガイドへ強制的に搬送するようになっている。このブロワ54の空気吸入口をエンジン12に向けて開口し、エンジン12の排気ガスを吸引するようにしている。
【0025】
また、図3及び図4に示すように、肥料ホッパ51を左右方向に長く構成し、複数の仕切板51a…を配置して条別ホッパ51b,51b…に仕切り、更に、前後仕切板51d,51eにより窒素肥料投入用の前側ホッパ51f…、燐酸肥料用の中間ホッパ51g…、カリウム肥料用の後側ホッパ51h…に仕切り区分している。これらホッパの底部には開閉量に対応した量の肥料を放出する繰出シャッタ57a,57b,57cを夫々設けており、該第1繰出シャッタ57a、第2繰出シャッタ57b,第3繰出シャッタ57cに夫々別個に第1繰出シャッタ57aを回動させる第1繰出モータ66a、第2繰出シャッタ57bを回動させる第2繰出モータ66b、第3繰出シャッタ57cを回動させる第3繰出モータ66cを設け、下方のブレンド室58に肥料を繰り出し、更に、前記繰出装置52,52から肥料を施肥ホース53に繰り出すように構成している。
【0026】
なお、第1〜第3繰出モータ66a,66b,66cは正逆転自在なモータとし、制御装置Cからの信号に従って正逆転することにより第1〜第3繰出シャッタ57a,57b,57cの開閉量を連動して変更するものであり、これにより全ての条に均等に各成分の肥料を放出することができる。
【0027】
なお、田植機が一度直進する際に苗の植え付けを行う条列(2〜10条)の一端部から他端部までで成分が極端に異なることは稀である。
従って、各条毎に成分検出センサ62b…を設け、各条毎に繰出シャッタ57a,57b,57c…を開閉可能に構成し、検出結果に応じて制御装置Cが繰出シャッタ57a,57b,57c…の開閉量を厳密に制御する設定を行ってまで各条毎に放出する肥料成分を変更する構成とする必要性はきわめて小さい。
【0028】
次に、図5に基づき他の実施例について説明する。
前記前側ホッパ51f…、中間ホッパ51g…、後側ホッパ51h…にペースト状の窒素肥料、燐酸肥料、カリウム肥料を入れるようにし、これらホッパから各肥料専用の施肥ホース56…を経由して肥料を下方に導き、肥料専用のペーストノズル59…を排出制御し、肥料を散布するようにしている。また、各肥料用の施肥ホース56…の終端側をセンターフロート30Cの左右両側に延出し排出位置を上下調節自在に支持し、苗植付部3に設ける支持フレーム65に基部を有する複数のアクチュエータ65a…で排出位置を上下に調節し、肥料の散布深さを調節するように構成している。
【0029】
次に、図6に基づき肥料成分検出装置62について説明する。
苗植付部3のフレーム部から下方へ延出している取付アーム61に肥料成分検出装置62を取り付け、センターフロート30Cの前側部左右両側の土壌の肥料成分を検出するようにしている。この肥料成分検出装置62は、取付アーム61の下端部に左右方向の軸回りに回転するように設けている円板状のディスク板62aと、このディスク板62aの周辺部に回転方向に沿うように所定間隔毎に設けている多数の成分検出センサ62b…と、取付アーム61に取り付けられているブラシスクレーパ62cとで構成されている。
【0030】
前記構成によると、走行車体1が前進すると、整地ロータ43が回転して整地し、その後をセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rにより均平し苗植付装置28…により苗の移植がされ、施肥装置6により施肥がされる。
【0031】
次に、図11、図12に基づき、施肥作業を更に具体的に説明する。
ディスク板62aの下側部が土中に埋没した状態で回転しながら前進し、下部に回動したセンサ62bが土中に侵入した際の電気電導率を検出データとして制御装置Cに入力する。すると、制御装置Cの肥料判定手段に基づき電気誘導率の相違から窒素肥料、燐酸肥料、カリウム肥料の含有比率を判定する。そして、上部に回動した成分検出センサ62bに付着している検出泥土及び水分をブラシスクレーパ62cで除去し、次の検出に備えるようにしている。次いで、検出肥料含有比率に基づき制御装置Cから不足肥料繰出指令が出され、不足している肥料の左右ホッパ51f,51f、51g,51g、51h,51hの繰出シャッタ57a,57b,57cが上下回動して、不足している肥料の放出量を増やすと共に過剰な肥料の放出量を減少、または放出停止させる。
【0032】
なお、肥料成分検出装置62を植付条毎に設け、肥料ホッパ51及び施肥ホース53を植付条列に対応するように設け、肥料成分検出装置62の植付条列毎の検出含有比率情報に基づき不足する肥料を繰り出し、肥料散布の精度向上を図るようにしてもよい。
【0033】
また、図6で示すように、窒素肥料検出用センサ62bN…、燐酸肥料検出用センサ62bP…、カリウム肥料検出用センサ62bK…をディスク板62aの側面に円周状に所定間隔を空けて順次配設すると、走行方向に沿った土壌の肥料成分のうちどの成分が不足しているか、または余剰しているかを正確に検出することができるので、特定の肥料成分の不足による生育不良が防止されて収穫物の収量が増加すると共に、特定の肥料成分の過剰による軟弱化や食味の低下が防止されて収穫物の商品価値が向上する。
【0034】
なお、本実施例では植物の生育に必要な三大成分である窒素・燐酸・カリウムを用いているが、カルシウムや硫黄を投入してもよく、また複数の肥料成分を混ぜ合わせた混合肥料を複数種類投入してもよい。その際には、成分検出センサ62b…は成分に対応するものを用いるものとする。
【0035】
さらに、図7で示すように、成分検出センサ62b…をディスク板62aの周辺部に回転方向に沿うように所定間隔ずらしながら複数配設するにあたり、中心部から成分検出センサ62b…までの距離が順次長くなるように配設している。このように構成すると、圃場の浅い位置から深い位置までの所定深さの肥料濃度を測定することができ、より正確な肥料の散布が行なわれる。
【0036】
なお、上記構成においても、成分検出センサ62b…を窒素肥料検出用センサ62bN…、燐酸肥料検出用センサ62bP…、カリウム肥料検出用センサ62bK…とすると、特定の肥料成分の不足による生育不良が防止されて収穫物の収量が増加すると共に、特定の肥料成分の過剰による軟弱化や食味の低下が防止されて収穫物の商品価値が向上する。
【0037】
また、図8に示すように、後下がり傾斜の検出棒64に成分検出センサ62b…を所定間隔ずらしながら複数配設しても、同様の効果が期待できる。
また、前記ブラシスクレーパ62cに代えて、ノズルで成分検出センサ62bに水を懸け、泥土を洗い流し清掃するようにしてもよい。
【0038】
次に、図9について説明する。
苗植付部3のセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rの前方に整地ロータ43…を夫々配設し、この整地ロータ43…の例えば左右方向中央部の後方に前記成分検出センサ62b…を夫々設け、成分検出センサ62b…の前方に位置している部分のロータ板43aを大径ロータ43bに置き換えて構成すると、圃場の深い部分を掘り起こし、撹拌した泥土の肥料成分を検出することができ、検出精度を高めることができる。
【0039】
また、圃場の水分の多少を検出する水分センサ(図示省略)を設け、肥料成分検出センサ62の検出水分値が高い場合には、肥料検出値を減少補正し、また、検出水分値が低い場合には、肥料検出値を増加補正し、肥料の繰出量を増減補正するようにしてもよい。
【0040】
また、圃場の硬軟を検出する土壌硬軟検出センサ(図示省略)を設け、土壌硬軟検出センサの検出硬度が高い場合には、肥料検出値を増大補正し、また、土壌硬軟検出センサの検出軟度が高い場合には、肥料検出値を減少補正する。このようにすると、肥料の検出精度を高めることができる。
【0041】
次に、図10に基づき、フロート30C,30L,30Rの他の実施例について説明する。
前記フロート30C,30L,30Rに、圃場に溝を切って肥料を土中に浸透し易くする際に使用する作溝器71を左右方向の軸を回動支点として上下方向に回動自在に取り付ける。該作溝器71を下方に回動させると圃場面に進入し、機体の前進によって圃場に溝が形成され、圃場に散布された肥料はこの溝から土中に浸透する。
【0042】
これにより、圃場面だけでなく土中にも肥料が移動するので、稲の生育の過程で圃場に張った水を排水しても、土中には十分な肥料成分が残るので、稲の生育が安定し、収穫量が向上する。
【0043】
そして、排水と共に河川に流入する肥料成分が過剰になりにくいので、肥料成分により河川が富栄養化を起こし、プランクトン等が異常発生して生態系を汚染することが防止される。
【0044】
また、肥料成分が浸透しやすい土壌であり、地面に溝を形成する必要が無い場合は、作溝器71を上方に回動させて、該作溝器71の下端部をフロート30C,30L,30Rの下端部よりも上方に位置させることにより、圃場に溝を刻まずに作業をすることができ、様々な作業条件に柔軟に対応することができる。
【0045】
さらに、該作溝器71は、直播機を走行車体1の後部に装着して作業を行う場合にも使用することができ、カルパー剤(酸素供給剤)で被覆した籾を播種する場合には、作溝器71を下方へ突出した作溝状態とし、作溝した溝にカルパー籾を播種し、後続の覆土器(図示省略)で覆土する。
【0046】
また、鉄粉で被覆した籾を播種する場合には、作溝器71を収納した非作溝状態とし、作溝にせずに圃場の表面に鉄粉の被覆した籾を播種し、覆土をせずに播種作業を終了する。
【0047】
上記構成によると、作溝器71を作溝状態と、非作溝状との変更できるので、種々の直播き用の籾に対応することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 走行車体
2 昇降リンク装置
3 苗植付部
6 施肥装置
51 肥料ホッパ
51f 区分投入部(窒素肥料投入部)
51g 区分投入部(燐酸肥料投入部)
51h 区分投入部(カリウム肥料投入部)
57 繰出手段
57 繰出手段
62 肥料成分検出装置
62a ディスク板
62b 成分検出センサ
62c ブラシスクレーパ(清掃手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、苗の植え付けと共に圃場に肥料を散布する施肥装置を備えた苗移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
肥料ホッパの肥料繰出量を調節する施肥量調節機構と、肥料ホッパ内の肥料の一定時間当りの減少量を検出する肥料減量用のセンサとを設け、このセンサの検出値に基づいて施肥量調節機構を駆動制御して設定施肥量に維持させ、良好な施肥作業をするものは公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−27811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、肥料成分検出装置を用いて圃場の不足する肥料成分を検出し、圃場に不足している肥料成分を散布し、肥料の過不足を回避して作物の成育障害を防止し、収穫量の増加及び品質の向上を図ろうとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、圃場を走行する走行車体(1)の後方に昇降リンク装置(2)を介して苗植付部(3)を昇降自在に設け、該走行車体1の後上部に肥料を圃場に散布する施肥装置(6)を設けた苗移植機において、土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置(62)を設け、該成分検出装置(62)の検出結果を受ける制御装置(63)を設け、前記施肥装置(6)の肥料貯留部材(51)に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部(51f,51g,51h…)を形成し、該複数の区分投入部(51f,51g,51h…)に夫々肥料を送り出す繰出部材(57…)を開閉自在に設け、前記成分検出装置(62)の検出結果に基づき制御装置(63)から信号を発信して該当する区分投入部(51f,51g,51h…)から放出される肥料の量を調節する放出調節部材(57…)を夫々動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機とした。
【0006】
請求項2の発明は、回転自在なディスク板(62a)の側面に圃場の肥料成分を検出する複数の成分検出センサ(62b…)を設け、該ディスク板(62a)が圃場面よりも上方に移動すると肥料成分センサ(62b…)に付着した泥土を除去する清掃部材(62c)を設けて前記成分検出装置(62)を構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とした。
【0007】
請求項3の発明は、前記肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h)に貯留された肥料に対応する成分を夫々検出する単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)を前記ディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、成分検出装置(62)で圃場の肥料成分を検出し、この検出結果に基づいて制御装置(63)が放出調節部材(57…)を動作させて圃場に必要な肥料を必要な量だけ肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h…)から放出することができるので、圃場に特定の成分が過剰に供給されることが防止され、苗が養分過多で倒伏しやすく育つことがなくコンバイン等の収穫作業能率が向上すると共に、収穫物の食味が劣化することが防止されるので、商品価値が向上する。
【0009】
また、特定の成分が不足することを防止できるので、苗が生育不良を起こすことが防止され、収穫量が安定する。
請求項2の発明によると、請求項1記載の発明の効果に加えて、ディスク板(62a)の周辺部に複数の成分検出センサ(62b…)を設けたことにより、圃場の成分を連続して検出することができるので、場所ごとの成分の変化に関わらず必要な成分の肥料を必要な量だけ肥料貯留部材(51)から放出させることができるので、肥料の過剰供給や肥料不足により苗の生育に問題が生じることがなく、収穫量が安定すると共に商品価値が向上する。
【0010】
また、成分検出センサ(62b…)が圃場面よりも上方に移動した際に、肥料センサ(62b,…)に付着している泥土を除去する清掃部材(62c)を設けたことにより、汚れの無い状態で成分検出センサ(62b…)が土中に進入するため、圃場の肥料成分を正確に検出することができるので、放出される肥料の量をいっそう適正化される。
【0011】
また、無駄に放出される肥料が軽減されるので、施肥作業にかかる費用を低減させることができる。
請求項3の発明によると、請求項2記載発明の効果に加えて、単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)をディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことにより、複数の肥料成分を一つの成分検出装置(62)で検出することができるので、肥料貯留部材(51)から適切な量の肥料成分が放出されて、肥料の過剰供給や肥料不足による苗の生育問題が防止され、収穫量が安定すると共に商品価値が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用苗移植機の全体側面図
【図2】乗用苗移植機の全体平面図
【図3】肥料ホッパの斜視図
【図4】施肥装置の側面図
【図5】施肥装置の別実施例の側面図
【図6】肥料成分検出装置の側面図
【図7】肥料成分検出装置の別実施例の側面図
【図8】肥料成分検出装置の別実施例の側面図
【図9】整地ロータと肥料成分検出装置の平面図
【図10】作溝器を設けたフロートの要部側面図
【図11】施肥成分変更制御を示すブロック図
【図12】施肥成分変更制御を示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の実施例について説明する。
まず、図1及び図2に基づき本発明を実施する苗移植機の全体構成について説明する。
走行車体1の後側部には昇降用リンク装置2により苗植付部3を昇降自在に連結し、走行車体1は駆動輪である左右一対の前輪4,4及び後輪5,5を有する四輪駆動車とし、全体を乗用苗移植機に構成している。
【0014】
左右メインフレーム7,7の前側端部にはミッションケース8をボルトにより取り付け、左右メインフレーム7,7の前後方向中間部にはゴムマウントを介してエンジン12を搭載し、ミッションケース8の例えば左側壁面に油圧式無段変速装置(図示省略)をボルトにより一体的に組み付け、エンジン12からの動力を前後進無段変速するように構成している。
【0015】
ミッションケース8の前側部からステアリング軸(図示省略)を上方に向けて突設し、ステアリング軸の上端部にステアリングハンドル10を取り付け、ステアリングハンドル10の下方部位に操作パネル9を設けている。また、左右メインフレーム7,7上方にはフロアとなる合成樹脂製の機体カバー11を取り付け、エンジン12の上方部位に操縦席13を設置し、操縦席13の後方には施肥装置6を配設している。
【0016】
また、ミッションケース8の前側部から左右フロントアクスルケース14,14を左右両側に向けて延出し、左右フロントアクスルケース14,14の端部に縦軸回りに回動可能に左右前輪支持ケース15,15を取り付け、左右前輪支持ケース15,15に左右前輪4,4を支架している。
【0017】
また、左右メインフレーム7,7の後側端部に横フレーム7aを連結し、この横フレーム7aに設けたローリング軸にケース連結フレーム(図示省略)をローリング自在に支持し、その左右両側部に左右後輪伝動ケース17,17を取り付けている。また、左右メインフレーム7,7の後端部には左右縦フレーム7b,7bを立設し、この左右縦フレーム7b,7bに前記昇降用リンク装置2の前端部を上下回動自在に支持している。
【0018】
エンジン12の回転動力はベルト伝動装置18を介して油圧式無段変速装置(図示省略)の入力軸に伝達され、油圧式無段変速装置(図示省略)により前後進切替及び前後進無段変速され、出力軸を経てミッションケース8に伝達される。ミッションケース8に伝達された動力は、ケース内のギヤ式変速装置、デフ機構を経由してミッションケース8の左右両側部から取り出され、前記左右フロントアクスルケース14,14内の左右前輪駆動軸(図示省略)、伝動ギヤ群を経て左右前輪4,4に伝達される。
【0019】
また、ミッションケース8内のデフ機構を経由した後輪動力は、ケース内の左右後輪サイドクラッチ機構を経由して左右後輪伝動軸19,19に取り出され、左右後輪伝動ケース17,17内の減速機構を経て左右後輪5,5に伝達されている。また、ミッションケース8の前側部右側から作業動力がPTO伝動軸(図示省略)に取り出され、PTO伝動軸(図示省略)からPTO軸(図示省略)を経て苗植付部3に伝達されている。
【0020】
次に、苗植付部3について説明する。
PTO軸(図示省略)から動力の伝達される伝動ケース25と、該伝動ケース25から後方に延出しているチエンケース26と、伝動ケース25から左右両側に突設した左右支持枠体27,27とで植付フレームが構成されていて、チエンケース26の後端部両側に左右2組4条の苗植付装置28,28が設けられている。苗植付装置28,28の上側には、前側が上位となるように傾斜した苗載せ台29が支持枠とレールによって左右方向に移動自在に支持されている。苗載せ台29の上面には植付条数分の4個の苗載せ部に仕切られており、各苗載せ部毎に苗を下方に送るベルト式の苗送り装置33,…が設けられている。また、苗載せ台29の下端部には、苗植付装置28,…に対応する苗取出口の形成されている受け板34が左右支持筒体(図示省略)と一体に設けられている。
【0021】
また、左右の内側、外側植付杆41,…の下方には車輪跡を消すセンターフロート30C、左右フロート30L,30Rを設け、前記伝動ケース25の下方にはセンターフロート30Cを昇降調節自在に設けている。このセンターフロート30Cの昇降移動をフロートセンサ(図示省略)により検出し、この検出値により制御弁(図示省略)を作動し、前記昇降用リンク2作動用の昇降シリンダ42を伸縮調節し、苗植付部3を所定の植付深さに調節するように構成している。
【0022】
次に、苗植付部3の前方に設けている整地ロータ43について説明する。
苗植付部3の左右支持枠体27,27にはリンク(図示省略)を介して整地ロータ支持フレーム(図示省略)を昇降調節自在に設け、整地ロータ支持フレームに取り付けている伝動ケース44に整地ロータ43を左右方向の軸回りに回転するように支架している。そして、右側の後輪伝動ケース17から代掻き動力を分岐し、伝動ケース44を経由して整地ロータ43に伝達している。
【0023】
次に、施肥装置6について説明する。
施肥装置6は、肥料ホッパ51に貯溜されている粒状の肥料を繰出装置52の繰出部によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース53でセンターフロート30Cの左右両側に取り付けた肥料ガイド(図示省略)まで導き、施肥ガイドの前側に設けた作溝体(図示省略)によって苗植付条の側部近傍に形成された施肥溝内に落し込むようにしている。
【0024】
電動モータで駆動するブロワ54で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ55を経由して施肥ホース53に吹き込まれ、該施肥ホース53内の肥料を風圧で施肥ガイドへ強制的に搬送するようになっている。このブロワ54の空気吸入口をエンジン12に向けて開口し、エンジン12の排気ガスを吸引するようにしている。
【0025】
また、図3及び図4に示すように、肥料ホッパ51を左右方向に長く構成し、複数の仕切板51a…を配置して条別ホッパ51b,51b…に仕切り、更に、前後仕切板51d,51eにより窒素肥料投入用の前側ホッパ51f…、燐酸肥料用の中間ホッパ51g…、カリウム肥料用の後側ホッパ51h…に仕切り区分している。これらホッパの底部には開閉量に対応した量の肥料を放出する繰出シャッタ57a,57b,57cを夫々設けており、該第1繰出シャッタ57a、第2繰出シャッタ57b,第3繰出シャッタ57cに夫々別個に第1繰出シャッタ57aを回動させる第1繰出モータ66a、第2繰出シャッタ57bを回動させる第2繰出モータ66b、第3繰出シャッタ57cを回動させる第3繰出モータ66cを設け、下方のブレンド室58に肥料を繰り出し、更に、前記繰出装置52,52から肥料を施肥ホース53に繰り出すように構成している。
【0026】
なお、第1〜第3繰出モータ66a,66b,66cは正逆転自在なモータとし、制御装置Cからの信号に従って正逆転することにより第1〜第3繰出シャッタ57a,57b,57cの開閉量を連動して変更するものであり、これにより全ての条に均等に各成分の肥料を放出することができる。
【0027】
なお、田植機が一度直進する際に苗の植え付けを行う条列(2〜10条)の一端部から他端部までで成分が極端に異なることは稀である。
従って、各条毎に成分検出センサ62b…を設け、各条毎に繰出シャッタ57a,57b,57c…を開閉可能に構成し、検出結果に応じて制御装置Cが繰出シャッタ57a,57b,57c…の開閉量を厳密に制御する設定を行ってまで各条毎に放出する肥料成分を変更する構成とする必要性はきわめて小さい。
【0028】
次に、図5に基づき他の実施例について説明する。
前記前側ホッパ51f…、中間ホッパ51g…、後側ホッパ51h…にペースト状の窒素肥料、燐酸肥料、カリウム肥料を入れるようにし、これらホッパから各肥料専用の施肥ホース56…を経由して肥料を下方に導き、肥料専用のペーストノズル59…を排出制御し、肥料を散布するようにしている。また、各肥料用の施肥ホース56…の終端側をセンターフロート30Cの左右両側に延出し排出位置を上下調節自在に支持し、苗植付部3に設ける支持フレーム65に基部を有する複数のアクチュエータ65a…で排出位置を上下に調節し、肥料の散布深さを調節するように構成している。
【0029】
次に、図6に基づき肥料成分検出装置62について説明する。
苗植付部3のフレーム部から下方へ延出している取付アーム61に肥料成分検出装置62を取り付け、センターフロート30Cの前側部左右両側の土壌の肥料成分を検出するようにしている。この肥料成分検出装置62は、取付アーム61の下端部に左右方向の軸回りに回転するように設けている円板状のディスク板62aと、このディスク板62aの周辺部に回転方向に沿うように所定間隔毎に設けている多数の成分検出センサ62b…と、取付アーム61に取り付けられているブラシスクレーパ62cとで構成されている。
【0030】
前記構成によると、走行車体1が前進すると、整地ロータ43が回転して整地し、その後をセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rにより均平し苗植付装置28…により苗の移植がされ、施肥装置6により施肥がされる。
【0031】
次に、図11、図12に基づき、施肥作業を更に具体的に説明する。
ディスク板62aの下側部が土中に埋没した状態で回転しながら前進し、下部に回動したセンサ62bが土中に侵入した際の電気電導率を検出データとして制御装置Cに入力する。すると、制御装置Cの肥料判定手段に基づき電気誘導率の相違から窒素肥料、燐酸肥料、カリウム肥料の含有比率を判定する。そして、上部に回動した成分検出センサ62bに付着している検出泥土及び水分をブラシスクレーパ62cで除去し、次の検出に備えるようにしている。次いで、検出肥料含有比率に基づき制御装置Cから不足肥料繰出指令が出され、不足している肥料の左右ホッパ51f,51f、51g,51g、51h,51hの繰出シャッタ57a,57b,57cが上下回動して、不足している肥料の放出量を増やすと共に過剰な肥料の放出量を減少、または放出停止させる。
【0032】
なお、肥料成分検出装置62を植付条毎に設け、肥料ホッパ51及び施肥ホース53を植付条列に対応するように設け、肥料成分検出装置62の植付条列毎の検出含有比率情報に基づき不足する肥料を繰り出し、肥料散布の精度向上を図るようにしてもよい。
【0033】
また、図6で示すように、窒素肥料検出用センサ62bN…、燐酸肥料検出用センサ62bP…、カリウム肥料検出用センサ62bK…をディスク板62aの側面に円周状に所定間隔を空けて順次配設すると、走行方向に沿った土壌の肥料成分のうちどの成分が不足しているか、または余剰しているかを正確に検出することができるので、特定の肥料成分の不足による生育不良が防止されて収穫物の収量が増加すると共に、特定の肥料成分の過剰による軟弱化や食味の低下が防止されて収穫物の商品価値が向上する。
【0034】
なお、本実施例では植物の生育に必要な三大成分である窒素・燐酸・カリウムを用いているが、カルシウムや硫黄を投入してもよく、また複数の肥料成分を混ぜ合わせた混合肥料を複数種類投入してもよい。その際には、成分検出センサ62b…は成分に対応するものを用いるものとする。
【0035】
さらに、図7で示すように、成分検出センサ62b…をディスク板62aの周辺部に回転方向に沿うように所定間隔ずらしながら複数配設するにあたり、中心部から成分検出センサ62b…までの距離が順次長くなるように配設している。このように構成すると、圃場の浅い位置から深い位置までの所定深さの肥料濃度を測定することができ、より正確な肥料の散布が行なわれる。
【0036】
なお、上記構成においても、成分検出センサ62b…を窒素肥料検出用センサ62bN…、燐酸肥料検出用センサ62bP…、カリウム肥料検出用センサ62bK…とすると、特定の肥料成分の不足による生育不良が防止されて収穫物の収量が増加すると共に、特定の肥料成分の過剰による軟弱化や食味の低下が防止されて収穫物の商品価値が向上する。
【0037】
また、図8に示すように、後下がり傾斜の検出棒64に成分検出センサ62b…を所定間隔ずらしながら複数配設しても、同様の効果が期待できる。
また、前記ブラシスクレーパ62cに代えて、ノズルで成分検出センサ62bに水を懸け、泥土を洗い流し清掃するようにしてもよい。
【0038】
次に、図9について説明する。
苗植付部3のセンターフロート30C,左右フロート30L,30Rの前方に整地ロータ43…を夫々配設し、この整地ロータ43…の例えば左右方向中央部の後方に前記成分検出センサ62b…を夫々設け、成分検出センサ62b…の前方に位置している部分のロータ板43aを大径ロータ43bに置き換えて構成すると、圃場の深い部分を掘り起こし、撹拌した泥土の肥料成分を検出することができ、検出精度を高めることができる。
【0039】
また、圃場の水分の多少を検出する水分センサ(図示省略)を設け、肥料成分検出センサ62の検出水分値が高い場合には、肥料検出値を減少補正し、また、検出水分値が低い場合には、肥料検出値を増加補正し、肥料の繰出量を増減補正するようにしてもよい。
【0040】
また、圃場の硬軟を検出する土壌硬軟検出センサ(図示省略)を設け、土壌硬軟検出センサの検出硬度が高い場合には、肥料検出値を増大補正し、また、土壌硬軟検出センサの検出軟度が高い場合には、肥料検出値を減少補正する。このようにすると、肥料の検出精度を高めることができる。
【0041】
次に、図10に基づき、フロート30C,30L,30Rの他の実施例について説明する。
前記フロート30C,30L,30Rに、圃場に溝を切って肥料を土中に浸透し易くする際に使用する作溝器71を左右方向の軸を回動支点として上下方向に回動自在に取り付ける。該作溝器71を下方に回動させると圃場面に進入し、機体の前進によって圃場に溝が形成され、圃場に散布された肥料はこの溝から土中に浸透する。
【0042】
これにより、圃場面だけでなく土中にも肥料が移動するので、稲の生育の過程で圃場に張った水を排水しても、土中には十分な肥料成分が残るので、稲の生育が安定し、収穫量が向上する。
【0043】
そして、排水と共に河川に流入する肥料成分が過剰になりにくいので、肥料成分により河川が富栄養化を起こし、プランクトン等が異常発生して生態系を汚染することが防止される。
【0044】
また、肥料成分が浸透しやすい土壌であり、地面に溝を形成する必要が無い場合は、作溝器71を上方に回動させて、該作溝器71の下端部をフロート30C,30L,30Rの下端部よりも上方に位置させることにより、圃場に溝を刻まずに作業をすることができ、様々な作業条件に柔軟に対応することができる。
【0045】
さらに、該作溝器71は、直播機を走行車体1の後部に装着して作業を行う場合にも使用することができ、カルパー剤(酸素供給剤)で被覆した籾を播種する場合には、作溝器71を下方へ突出した作溝状態とし、作溝した溝にカルパー籾を播種し、後続の覆土器(図示省略)で覆土する。
【0046】
また、鉄粉で被覆した籾を播種する場合には、作溝器71を収納した非作溝状態とし、作溝にせずに圃場の表面に鉄粉の被覆した籾を播種し、覆土をせずに播種作業を終了する。
【0047】
上記構成によると、作溝器71を作溝状態と、非作溝状との変更できるので、種々の直播き用の籾に対応することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 走行車体
2 昇降リンク装置
3 苗植付部
6 施肥装置
51 肥料ホッパ
51f 区分投入部(窒素肥料投入部)
51g 区分投入部(燐酸肥料投入部)
51h 区分投入部(カリウム肥料投入部)
57 繰出手段
57 繰出手段
62 肥料成分検出装置
62a ディスク板
62b 成分検出センサ
62c ブラシスクレーパ(清掃手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(1)の後方に昇降リンク装置(2)を介して苗植付部(3)を昇降自在に設け、該走行車体1の後上部に肥料を圃場に散布する施肥装置(6)を設けた苗移植機において、
土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置(62)を設け、該成分検出装置(62)の検出結果を受ける制御装置(63)を設け、前記施肥装置(6)の肥料貯留部材(51)に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部(51f,51g,51h…)を形成し、該複数の区分投入部(51f,51g,51h…)に夫々肥料を送り出す繰出部材(57…)を開閉自在に設け、前記成分検出装置(62)の検出結果に基づき制御装置(63)から信号を発信して該当する区分投入部(51f,51g,51h…)から放出される肥料の量を調節する放出調節部材(57…)を夫々動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
回転自在なディスク板(62a)の側面に圃場の肥料成分を検出する複数の成分検出センサ(62b…)を設け、該ディスク板(62a)が圃場面よりも上方に移動すると肥料成分センサ(62b…)に付着した泥土を除去する清掃部材(62c)を設けて前記成分検出装置(62)を構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h)に貯留された肥料に対応する成分を夫々検出する単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)を前記ディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【請求項1】
圃場を走行する走行車体(1)の後方に昇降リンク装置(2)を介して苗植付部(3)を昇降自在に設け、該走行車体1の後上部に肥料を圃場に散布する施肥装置(6)を設けた苗移植機において、
土壌内の肥料成分の濃度を検出する成分検出装置(62)を設け、該成分検出装置(62)の検出結果を受ける制御装置(63)を設け、前記施肥装置(6)の肥料貯留部材(51)に異なる肥料成分を貯留する複数の区分投入部(51f,51g,51h…)を形成し、該複数の区分投入部(51f,51g,51h…)に夫々肥料を送り出す繰出部材(57…)を開閉自在に設け、前記成分検出装置(62)の検出結果に基づき制御装置(63)から信号を発信して該当する区分投入部(51f,51g,51h…)から放出される肥料の量を調節する放出調節部材(57…)を夫々動作させる構成としたことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
回転自在なディスク板(62a)の側面に圃場の肥料成分を検出する複数の成分検出センサ(62b…)を設け、該ディスク板(62a)が圃場面よりも上方に移動すると肥料成分センサ(62b…)に付着した泥土を除去する清掃部材(62c)を設けて前記成分検出装置(62)を構成したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記肥料貯留部材(51)の区分投入部(51f,51g,51h)に貯留された肥料に対応する成分を夫々検出する単一成分センサ(62bN,62bP,62bK…)を前記ディスク板(62a)の側面に円周状に配置したことを特徴とする請求項2記載の苗移植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−160704(P2011−160704A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−25653(P2010−25653)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]