説明

苗移植機

【課題】従来の苗移植機は、苗載台を左右往復移動させて苗トレイから苗を取出して圃場に移植する構成である為に、苗載台を往復移動させる構成が複雑で大掛かりなものとなり、小型でコンパクトな構成ではなく、作業性、操作性、及び作業効率において課題があった。
【解決手段】走行装置2・3にて走行する走行部1aに苗供給装置4及び苗植付装置5を有する植付部1bを設けた苗移植機において、該苗供給装置4は、苗トレイTを機体の一方に移動する機体に固定された苗トレイ移動装置40と、苗トレイTの苗Sを押出す苗押出し装置41と、苗押出し装置41によって苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持する苗保持装置43と、苗保持装置43に保持された各苗Sを各々受け取って苗植付装置5に順次供給する苗供給カップ62を装備した苗供給具61で構成されている苗移植機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、野菜等の苗を圃場に植付ける苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種従来例としては、機体左右方向に往復横移動する苗載台に載置した苗トレイを縦送りしながら苗を一個ずつ取出して、圃場に移植する苗移植機がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−124708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、上記従来の苗移植機は、苗載台を左右往復移動させて苗トレイから苗を取出して圃場に移植する構成である為に、苗載台を往復移動させる構成が複雑で大掛かりなものとなり、小型でコンパクトな構成ではなく、また、複雑な構成であるが故に故障等の不具合の発生率も高く、作業性、操作性、及び作業効率において未だ課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、走行装置2・3にて走行する走行部1aに苗供給装置4及び苗植付装置5を有する植付部1bを設けた苗移植機において、該苗供給装置4は、苗トレイTを機体の一方に移動する機体に固定された苗トレイ移動装置40と、苗トレイTの苗Sを押出す苗押出し装置41と、苗押出し装置41によって苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持する苗保持装置43と、苗保持装置43に保持された各苗Sを各々受け取って苗植付装置5に順次供給する苗供給カップ62を装備した苗供給具61で構成されている苗移植機としたものである。
【0006】
従って、苗供給装置4は、苗トレイTを機体の一方に移動する機体に固定された苗トレイ移動装置40と、苗トレイTの苗Sを押出す苗押出し装置41と、苗押出し装置41によって苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持する苗保持装置43と、苗保持装置43に保持された各苗Sを各々受け取って苗植付装置5に順次供給する苗供給カップ62を装備した苗供給具61で構成されているので、機体に固定された苗トレイ移動装置40にて苗トレイTを機体の一方に移動する簡潔な構成でありながら、苗トレイTの苗Sを適切に圃場に移植できる。そして、機体構成を小型でコンパクトな構成にすることができて、作業性、操作性、及び作業効率を従来に比して格段に向上させることができる。
【0007】
請求項2記載の発明は、苗トレイ移動装置40は苗トレイTを水平状態若しくは略水平状態で載置支持すると共に、前後方向にのみ間欠移動する構成とし、その前部のU字状に湾曲した部位の後方内側に苗トレイTの左右方向一列の苗Sを同時に前方に押出す苗押出し装置41を設け、苗トレイ移動装置40の前方側に苗押出し装置41によって苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持する苗保持装置43を設け、該苗保持装置43に保持された各苗Sを各々受け取って苗植付装置5に順次供給する苗供給カップ62を装備した苗供給具61を苗保持装置43の下方に設けた請求項1記載の苗移植機としたものである。
【0008】
従って、請求項1記載の作用に加えて、苗供給装置4を上下高さが低いコンパクトな構成とすることができ、機体の上下高さを低く構成できて、機体の重心が低い構成となるので走行安定性が向上すると共に、機体を小型で簡潔な構成にすることができ、更に、作業性、操作性、及び作業効率を従来に比して格段に向上させることができる。
【0009】
請求項3記載の発明は、苗トレイ移動装置40は苗トレイTを水平状態若しくは略水平状態で載置支持すると共に、前後方向にのみ間欠移動する構成とし、その前部のU字状に湾曲した部位で苗トレイTから苗Sを取出し、その後、苗トレイTを下面側へおり返して機体後方側へ移送し、機体後部に設けた操縦ハンドル6下方空間部に設けた収容部104内に収容する構成とした請求項1または請求項2記載の苗移植機としたものである。
【0010】
従って、請求項1または請求項2記載の作用に加えて、苗トレイ移動装置40を上下高さが低いコンパクトな構成とすることができ、機体の上下高さを低く構成できて、機体の重心が低い構成となるので走行安定性が向上すると共に、機体を小型で簡潔な構成にすることができる。また、苗トレイTを下面側へおり返して機体後方側へ移送し、機体後部に設けた操縦ハンドル6下方空間部に設けた収容部104内に収容する構成としたので、使用済みの苗トレイTは自動的に収容部104内に収容されて作業性が良く、更に、収容部104は機体後部に設けた操縦ハンドル6下方空間部に設けているので機体を簡潔で小型の機体構成とすることができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、苗保持装置43は、その苗保持具51の各苗保持部50が苗トレイ移動装置40前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置に接近した位置で且つ苗トレイTの左右方向一列の各ポット部Pに対応した位置と苗トレイ移動装置40前部のU字状に湾曲した部位から前方側に離れた苗供給具61の苗供給カップ62の上方位置との間を前後移動する構成とすると共に、各苗保持部50は、固定保持体53に対して対向する移動保持体54が接近した位置と離れた位置に移動する構成とし、各苗保持部50が苗トレイ移動装置40前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置に接近した位置で固定保持体53に対して対向する移動保持体54が離れた位置から接近した位置に移動して苗押出し装置41によって苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持し、苗トレイ移動装置40前部のU字状に湾曲した部位から前方側に離れた苗供給具61の苗供給カップ62の上方位置で固定保持体53に対して対向する移動保持体54が離れた位置に移動して保持した苗Sを離して、苗供給具61の各苗供給カップ62内に供給する構成とした請求項1から請求項3記載の何れか1項に記載の苗移植機としたものである。
【0012】
従って、請求項1から請求項3記載の何れか1項に記載の作用に加えて、簡潔な構成で苗トレイTの左右方向一列の各ポット部Pから苗Sを取出して苗供給具61の各苗供給カップ62内に供給することができ、機体構成を小型でコンパクトな構成にすることができ、作業性、操作性、及び作業効率を向上させることができる。
【0013】
請求項5記載の発明は、固定保持体53または移動保持体54には、苗保持部50内方に突出する苗姿勢矯正体60を苗保持部50から落下する苗Sの茎葉に接当する位置に設けた請求項4記載の苗移植機としたものである。
【0014】
従って、請求項4記載の作用に加えて、移動保持体54が対向する固定保持体53に対して離れた位置になって保持していた苗Sを離した時、苗保持部50が水平姿勢状態で保持していた苗Sが下方に落下し、苗Sの茎葉部が苗姿勢矯正体60に接当して、苗Sは茎葉部が上方に向くように姿勢変更され(根部が下方に位置するように姿勢変更され)、適正な姿勢で苗供給具61の苗供給カップ62内に供給される。従って、苗供給カップ62内の苗Sが苗植付装置5内に適正な姿勢で落下供給され、苗植付装置5は適正な姿勢で苗Sを圃場に移植することができる。
【0015】
請求項6記載の発明は、苗トレイ移動装置40の上方位置に予備苗載台36を設けた請求項1から請求項5記載の何れか1項に記載の苗移植機としたものである。
従って、請求項1から請求項5記載の何れか1項に記載の作用に加えて、作業者は、機体後方側で機体の操向操作をしながら、植付部1bの苗移植作業状態を確認し、苗トレイ移動装置40に載置されたトレイTを見て、新たな苗トレイTの供給が必要と判断した時に、苗トレイ移動装置40の上方位置にある予備苗載台36から苗トレイTを取出して苗トレイ移動装置40に供給する。この時、作業者は、植付部1bの方向を向いているので、苗移植作業状態が確認し易く、苗移植作業が適切に行われないような事態が発生した場合には、即座に対応することができて、苗移植作業が適切に且つ効率よく行える。また、予備苗載台36は苗トレイ移動装置40の上方位置に配置されているので、作業者は、予備苗載台36から容易に苗トレイTを取出して苗トレイ移動装置40に供給することができ、作業効率が良い。
【発明の効果】
【0016】
上記のように苗移植機を構成することにより、機体構成を小型でコンパクトな構成にすることができて、作業性、操作性、及び作業効率を従来に比して格段に向上させることができて、発明の課題を適切に解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】野菜移植機の全体側面図である。
【図2】野菜移植機の全体平面図である。
【図3】苗載台90の平面図である。
【図4】要部の作用説明用側面図である。
【図5】苗押出し装置41の作用説明用一部断面側面図である。
【図6】苗保持装置43の作用説明用正面図である。
【図7】走行部と植付部の連結部分の斜視図である。
【図8】畝U上面を検出するセンサ192と植付深さ調節レバー197の関係を示す斜視図である。
【図9】苗植付装置5の側面図である。
【図10】苗植付装置5の平面図である。
【図11】油圧回路図である。
【図12】苗供給装置4の他の例を示す作用説明用側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
この発明の一実施例として苗移植機の一例である野菜移植機を図面に基づき詳細に説明する。この野菜移植機1は、左右後輪2及び左右前輪3を有する走行部1aによって畝Uを跨いだ状態で機体を進行させながら、苗供給装置4・苗植付装置5等からなる植付部1bで苗トレイT内の野菜のポット苗Sを畝Uの上面に植付ける構成となっている。作業者は、苗移植作業時には機体の後部で畝U間を歩きながら、植付部1bの苗移植作業状況を確認しながら苗Sが少なくなると予備苗載台36から新しい苗トレイTを植付部1bに供給する。また、畦端での機体旋回時には、機体後方に設けた操縦ハンドル6で機体を旋回操作する。以下、各部の構成について説明する。
【0019】
走行部1aは、走行部ミッションケース7の前部にエンジン9が配置されている。エンジン9の左側面部には該エンジンの動力で駆動する油圧ポンプ10が設けられている。また、エンジン9の上側には燃料タンク11が設けられ、その上部をボンネット12が覆っている。走行部ミッションケース7の背面部に側面視長方形の左右に長い連結フレーム13が一体に設けられており、この連結フレームの背面右端部に走行部1aと操縦ハンドル6をつなぐメインフレーム14の前端部が固着連結されている。メインフレーム14は、後方に延び、途中で斜め上向きに湾曲し、そのまま植付部1bの後方位置まで延びている。そして、その後端部に操縦ハンドル6の前端部が回動調節自在に取り付けられており、操縦ハンドル6の左右グリップ6aは高さ調節できるようになっている。
【0020】
走行部ミッションケース7の左右側面から突出する左右回動筒部15に左右走行伝動ケース16が一体に取り付けられ、その左右走行伝動ケース16の先端部に駆動走行車輪である左右後輪2が軸支されている。また、エンジン9の下側に前後方向のピボット軸17aを中心に揺動自在に設けた前輪支持フレーム17の左右両端部に左右前輪支持ロッド18が高さ調節可能に取り付けられ、該ロッドの下端部に各々従動走行車輪である左右前輪3が軸支されている。
【0021】
走行部1aには機体に対し左右後輪2を上下動させて機体位置を制御する機体制御機構が設けられている。この機体制御機構は、走行部ミッションケース7の上に配置した油圧バルブユニット20から後方に向けて昇降シリンダ21が設けられ、該シリンダのピストンロッドの先端部に天秤杆22が上下方向の軸まわりに回動自在に取り付けられている。ピストンロッドは、前後両端が油圧バルブユニット20とメイフレーム14に取り付けた取付部材23とに支持されたガイド軸24に沿って摺動するようになっている。天秤杆22の左右両端部と、左右回動筒部15に固着した左右スイングアーム25とが、左右連結ロッド26を介して連結されている。左側の連結ロッド26は、ローリングシリンダ27が組み込まれており、該シリンダを伸縮作動させることにより長さを変えられるようになっている。
【0022】
昇降シリンダ21及びローリングシリンダ27は、前記油圧ポンプ10から供給される作動油を油圧バルブユニット20内の制御バルブ20a,20bで各々制御して作動させられる。昇降シリンダ21を伸縮作動させると、左右の後輪2が同方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が昇降する。また、ローリングシリンダ27を伸縮作動させると、左右の後輪2が逆方向に同量だけ機体に対し上下動し、機体が左右に傾斜する。
【0023】
植付部1bは、前記連結フレーム13の上面に走行部ミッションケース7から伝動される植付部ミッションケース30の下部が固着され、該植付部ミッションケース30の上部に第一植付伝動ケース31の基部が固着され、更に該第一植付伝動ケース31の先端部に第二植付伝動ケース32の基部が固着されている。そして、第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32に後述する苗植付装置5の各作動機構が連結されており、この第一植付伝動ケース31と第二植付伝動ケース32にて苗植付装置5への植付駆動伝動系D1が構成されている。苗植付装置5の後記苗植付具42は、走行部1aの後部側に配置している。また、植付部ミッションケース30の前壁部に基部を固着したフレーム34に、苗トレイTが載せられる予備苗載台36が取り付けられている。
【0024】
図3に示すように、植付部ミッションケース30の入力軸30aは該ケースの下端部から前方に突出しており、これを走行部ミッションケース7のPTO取出部7aに挿入することにより、該PTO取出部内の走行部側の軸に伝動連結するようになっている。また、植付部ミッションケース30は、前記連結フレーム13にボルト35…によって着脱自在に取り付けられている。このため、ボルト35…を外し、PTO取出部7aから入力軸31aを抜くことにより、走行部1aから植付部1bごと取り外せることができ、植付部1bのメンテナンスが容易に行える。
【0025】
側面視において、植付部ミッションケース30は連結フレーム13から後方上向きに設けられ、且つ第一植付伝動ケース31は植付部ミッションケース30の上端部から後方下向きに設けられ、且つ第二植付伝動ケース32は第一植付伝動ケース31の下端部から水平方向に設けられている。この構成とすることにより、機体の前後長を必要以上に長くすることなく、第二植付伝動ケース32の下側に前記天秤杆22が移動するためのスペースが確保されている。
【0026】
苗供給装置4は、植付部ミッションケース30の上部から機体後方に向けて配置されており、複数個のソイルブロック苗Sを縦方向と横方向とに多数収容した苗トレイTを水平状態若しくは略水平状態で載置支持すると共に、縦方向(機体前後方向)にのみ間欠移動する苗トレイ移動装置40と、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位で苗トレイTの左右方向一列の苗Sを同時に前方に押出す苗押出し装置41と、苗トレイ移動装置40の前方側に配置されていて苗押出し装置41によって前記苗トレイTから押出された苗Sを一つずつ保持する苗保持装置43と、該苗保持装置43に保持された各苗Sを各々受け取って苗植付装置5に順次供給する苗供給カップ62を装備した苗供給具61とから構成されている。
【0027】
尚、苗トレイTは、薄肉に形成されて可撓性を有するプラスチック製で、縦方向及び横方向に所定のピッチで碁盤目状に配列された多数のポット部Pを有し、ポット部Pの開口縁部が互に平面状に連結されて成型されている。そして、ポット部Pに充填した床土に播種し育苗することで、ソイルブロック苗Sが育成されている。また、各ポット部Pの底面中央には水抜き用の貫通孔Hが設けられている。
【0028】
苗トレイ移動装置40は、苗トレイTを載置する苗載台90を備えており、この苗載台90は、植付部ミッションケース30の後部に基部を固着した苗供給用伝動ケース91aとメインフレーム14に支持固定されている。
【0029】
また、苗載台90は、上部の後端部に配置された苗トレイTの底部を横一列のポット部Pに亘って支持する載置板96を有し、この載置板96は左右両側に対向配置された一対の側板97に連結して設けられている。そして、載置板96と左右側板97との空間部には、苗トレイTのポット部P間の縦方向の底凹部に嵌り込んで苗トレイTの底面を受けて支持する案内杆92が左右方向に3本設けられている。
【0030】
左右側板97間下部には、縦移動駆動軸98が左右方向に配置されて設けられており、左右側板97間上部には、縦移動従動軸99が左右方向に配置されて設けられており、縦移動駆動軸98には左右一対の駆動スプロケット100が固定され、縦移動従動軸99には左右一対の従動スプロケット101が固定されている。また、駆動スプロケット100と従動スプロケット101との間には、これらに亘ってエンドレスチェーン102が掛装され、このチェーン102には、苗トレイTの縦方向(上下方向)のポット部P間の間隙に係合する搬送ピン103が左右方向内方突出状に取付けられている。したがって、駆動軸98が、回動駆動することによって苗トレイTが搬送ピン103によって押動されて縦移動可能とされている。
【0031】
次に、苗トレイTの縦移動機構について説明すると、後述の苗トレイTの横一列分のポット部Pから苗Sが抜き取られた後に、前記縦移動駆動軸98が苗供給用伝動ケース91a内の駆動力で間欠駆動機構を介して間欠駆動されて、駆動スプロケット100と従動スプロケット101との間に亘って掛装されたエンドレスチェーン102の搬送ピン103によって苗トレイTをポット部Pの縦配列方向(左右方向に直交する配列方向)にポット部Pの1ピッチだけ移送される。
【0032】
これによって、横一列のポット部Pからの苗Sの取出しを終えた時点で、苗トレイTがポット部Pの縦方向の間隔に相当する分縦移動されるようになっている。苗トレイTの苗Sが取り出された後の部分は、駆動スプロケット100に沿って左右側板97の下面側へとおり返されるようになっている。
【0033】
尚、苗トレイTのポット部Pの底部が案内杆92から浮き上がって離反する方向に移動するのを防止すべく苗トレイT上面の左右側縁側を押さえる押さえ部材115が設けられている。この押さえ部材115は弾性変形自在な鋼棒材を折曲して形成されており、基部側が側板97に取付固定され、中途部が苗トレイTの上面に接当して、先端側は苗トレイTから離反するように構成されている。
【0034】
苗トレイTは、苗Sが取り出された後に駆動スプロケット100に沿って左右側板97の下面側へとおり返されて、機体後方側へ移送されるが、この移送案内は左右側板97と案内杆92にて行なわれる。そして、機体後部の操縦ハンドル6下方空間部には、空になった苗トレイTを縦方向に積み重ねて収容できる杆体にて枠組み構成された収容部104がメインフレーム14に固定されており、前記苗載台90の下面側後端部(左右側板97と案内杆92の後端部)90aが収容部104の上部開口部104aに臨んで配置されており、苗Sが取り出された後に駆動スプロケット100に沿って左右側板97の下面側へとおり返されて機体後方側へ移送された苗トレイTは順次収容部104内に積み重ねられた状態で収容される。
【0035】
苗押出し装置41は、苗供給用伝動ケース91a先端部に固着された押出し駆動ケース91b内の駆動力で回転作動する押出し具45と該押出し具45の機体左右方向に並列配置された押出し棒46を進退作動させるカム47にて構成されている。
【0036】
押出し具45は、押出し駆動ケース91bに設けられた駆動軸にて回転する機体左右方向に長い円筒48に、苗トレイTの横一列のポット部Pと各々対向すべくポット部Pのピッチと同じ間隔で配置された押出し棒46が各々圧縮バネ49にて退入する方向に付勢された状態で設けられた構成となっている。尚、各押出し棒46の先端は、進出時に各ポット部Pの水抜き用の貫通孔Hに突入して各ポット部P内の苗Sを機体前方に押出す円柱状棒体の構成となっている。
【0037】
カム47は、押出し駆動ケース91bに固定されており、機体前方側の略水平部が大径カムでその他は小径カムとなっている。そして、各押出し棒46の基端は、各々圧縮バネ49にて付勢されてカム47のカム面47aに接当した構成となっている。従って、各押出し棒46は、機体前方側の水平位置Aの少し回動手前側位置Bから水平位置Aの間で最も進出して突出した状態となっており、その他の位置では退入して引っ込んだ状態となっている。
【0038】
よって、各押出し棒46は、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置Aの少し上方の位置B(ポット部Pの苗Sが水平になる少し手前の状態)から上下方向中央位置A(ポット部Pの苗Sが水平な状態)の間で苗トレイTの左右方向一列のポット部Pの苗Sを同時に前方に押出す。
【0039】
苗保持装置43は、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置A(ポット部Pの苗Sが水平な状態)の前方で、苗トレイTの左右方向一列の各ポット部Pに対応した位置に各々苗保持部50を設けた苗保持具51と該苗保持具51を苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置Aに接近した位置と前方側に離れた位置(後述の苗供給具61の苗供給カップ62の上方位置)とに前後移動する保持具前後移動装置52とで構成されている。
【0040】
苗保持具51の各苗保持部50は、左右移動しない板体よりなる固定保持体53と左右移動する板体よりなる移動保持体54とで構成されている。そして、固定保持体53と移動保持体54は、苗Sを保持する対向した垂直な板状保持面53a・54aとその上方に左右に開いた苗ガイド部53b・54bとで構成されている。尚、垂直な板状保持面53a・54aには、凹凸が設けられており、各苗保持部50が苗Sを離した時に、苗Sが板状保持面53a・54aに付着して離れなくなることを防止している。
【0041】
そして、各固定保持体53は、苗保持具アーム55に下端基部が固定されて設けられている。一方、各移動保持体54は、苗保持具アーム55の右端部上面に固定されたソレノイドSOLの可動鉄心に連結された作動体56に下端基部が固定されて設けられている。従って、ソレノイドSOLにより作動体56がイ−ロ方向に進退動すると、各移動保持体54は、対向する各固定保持体53に対して近づいたり離れたりするので、ソレノイドSOLの作動にて各苗保持部50は一斉に苗Sを挟持して保持した状態と苗Sを離す状態とに切替えられる。
【0042】
保持具前後移動装置52は、植付部ミッションケース30の上面にボルトによって固定された電動モータ57と該電動モータ57にて駆動される駆動ギヤ58と該駆動ギヤ58に噛合して機体前後方向にのみ作動するラック59にて構成されており、該ラック59の後端部が前記苗保持具51の苗保持具アーム55に固定連結されている。従って、電動モータ57の作動にて、苗保持具51の各苗保持部50は、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置Aに接近した位置と前方側に離れた位置(後述の苗供給具61の苗供給カップ62の上方位置)とに前後移動する。
【0043】
尚、各苗保持部50の下方位置には、固定保持体53の内面側に苗姿勢矯正用ピン60が各々苗保持位置の下方で保持された苗Sの茎葉部の下方位置に突出した状態で設けられており、各苗保持部50にて保持した水平姿勢の苗Sが開放されて下方に落下する際に、該苗姿勢矯正用ピン60に苗Sの茎葉部が接当して、苗Sは茎葉部が上方に向くように姿勢変更される(根部が下方に位置するように姿勢変更される)。
【0044】
61は複数の苗供給カップ62が前後の直線移動部と左右の円弧状移動部とで周回移動するように設けたチェーン状の苗供給具であって、この苗供給具61は機体の左右中心で、苗供給カップ62内に入れられた苗Sを開放する位置が苗植付具42のすぐ上になるように配置されている。苗供給具61は、前記植付部ミッションケース30の後壁面に固定された支持板63の左右に設けた左右駆動スプロケット64にチェーン状に連結された上記の苗供給カップ62が直接係合して、植付部ミッションケース30からの駆動力にて回転する左右駆動スプロケット64により苗供給カップ62が周回移動する構成となっている。
【0045】
苗供給カップ62は上下に連通しており、その底部に開閉自在なシャッタが取り付けられている。苗供給カップ62の直下部の苗供給カップ62内に入れられた苗Sを開放する位置以外の位置には、シャッタ閉じ杆が設けられている。このため、苗供給カップ62内に入れられた苗Sを開放する位置(苗植付具42のすぐ上)にある苗供給カップ62のシャッタ65は開く側に付勢するスプリングで開くが、それ以外の位置にある苗供給カップ62のシャッタ65…はシャッタ閉じ杆に規制されて閉じた状態になる。
【0046】
苗植付装置5は、下端が尖ったカップ状の苗植付具42を備えている。この苗植付具42は、前側部材42aと後側部材42bとからなっており、苗植付具42の後方に位置する前側部材回動軸161Aに回動自在に支持された左右前側部材取付アーム162Aに前側部材42aが一体に取り付けられ、苗植付具42の前方に位置する後側部材回動軸161Bに回動自在に支持された左右後側部材取付アーム162Bに後側部材42bが一体に取り付けられている。よって、回動軸161A・161Bを支点にして両部材42a・42bが回動すると、苗植付具42の下部が開閉する。前側部材取付アーム162Aと後側部材取付アーム162Bに形成された長穴に遊嵌する連動ピン163によって、前側部材42aと後側部材42bは互いに連動して回動する。前側部材取付アーム162Aの脚部162aAと後側部材取付アーム162Bの脚部162aBとの間に、前側部材42a及び後側部材42bを閉じる側に付勢するスプリング164が張設されている。この苗植付具42は、下記の作動機構によって所定の動作を行う。
【0047】
第二植付伝動ケース32から上方に突出する支持部33aに後リンク支持アーム167Aが回動自在に取り付けられ、その支持アーム167Aに基部が枢着された後リンク168Aの後端に前側部材回動軸161Aが連結されている。後リンク168Aの中間部には、第二植付伝動ケース32の後端部に設けた後リンク駆動アーム169Aが連結されている。また、植付部ミッションケース30に前リンク支持アーム167Bが回動自在に取り付けられ、その支持アームに基部が枢着された前リンク168Bの後端に後側部材回動軸161Bが連結されている。前リンク168Bの中間部には、第一植付伝動ケース31の後端部に設けた前リンク駆動アーム169Bが連結されている。両駆動アーム169A・169Bが駆動回転すると、後リンク168A及び前リンク168Bが基部の位置を前後に変動させつつ上下に揺動し、苗植付具42が一定姿勢のまま上下動する。
【0048】
後リンク168Aの基部には開閉アーム171が回動自在に取り付けられ、その開閉アーム171の先端部と前側部材取付アーム162Aとが開閉ロッド172で連結されている。また、後リンク168Aの中間部には後リンク駆動アーム169Aと一体に回転する開閉カム173が取り付けられている。この開閉カムのカムフォロアとしてのローラ174が開閉アーム171に設けられている。苗植付具42が下死点付近にある位置から上昇する行程で、開閉カム173がローラ174に係合するようになっている。開閉カム173がローラ174に係合すると、開閉ロッド172が引かれ、前側部材42aと後側部材42bが互いに連動して回動し、苗植付具42が開く。開閉カム173がローラ174に係合しない時は、スプリング164の張力によって苗植付具42が閉じている。
【0049】
苗植付具42が上死点にある時に、苗供給装置4により苗Sが落下供給される。供給された苗Sは、前側部材回動軸161Aと後側部材回動軸161Bに取り付けられている筒状の苗案内176を通って苗植付具内に導かれる。苗Sを保持した苗植付具42が下降し、下死点では苗植付具42の下部が畝の表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具42が開き、保持していた苗Sを上記苗移植用穴の中に開放する。そのまま苗植付具42が上昇し、上死点付近まで上昇すると苗植付具42が閉じる。
【0050】
苗植付位置の後方には、左右一対の鎮圧輪180が配置されている。該左右鎮圧輪180は、メインフレーム14の前後中間部に固着した支持枠186に上下に揺動自在に支持された揺動フレーム187の中途部に回転自在に装着されている。そして、該揺動フレーム187の後端部の左右中央位置より上方に向けてロッド188が延設されており、該ロッド188の上端部は、メインフレーム14の後端部に基部が固設された支持アーム189の貫通孔189aを貫通して支持されている。そして、ロッド188には錘190が貫通して設けられており、この錘190の個数を調節することにより、左右鎮圧輪180の鎮圧荷重が調節できるようになっている。尚、191はヘアピンであって、ロッド188が支持アーム189の貫通孔189aから抜けるのを防止するものである。
【0051】
この左右鎮圧輪180は、下部ほど互いの間隔が狭くなるように斜めに取り付けられ、機体の進行に伴って畝面を転動し、苗Sが植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧するようになっている。
【0052】
192は畝上面を検出するセンサであって、該センサ192が上下回動すると、その回動をリンク機構193にて上下制御バルブ20aに伝え、センサ192の角度が元に戻る方向に昇降シリンダ21を作動させる。これにより、畝の上面から機体までの高さを一定に維持するように機体を昇降制御し、畝の高さの変更に係わらず常に苗Sの植付深さが一定になるように制御され、植付後の苗Sの成育が良い。
【0053】
また、上記センサ192はメイフレーム14に左側が軸支された回動軸194に後端部が固着され先端が前方に向けて延設されたアーム195に軸196にて回動自在に軸支されている。そして、回動軸194は植付深さ調節レバー197の基部が連繋されており、植付深さ調節レバー197を係合案内198の調節係合部に係合係止して固定状態にすると、回動軸194は回動が固定され、従って、アーム195の軸196は上下高さが固定されるので、センサ192は畝上面に摺接しながらその軸196回りに回動して、上記のように畝の高さ変更に係わらず常に苗Sの植付深さが一定になるように制御される。そして、植付深さ調節レバー197を係合案内198の調節係合部に対して位置調節して係合係止して固定状態にすることにより、アーム195の軸196の上下高さ位置を調節できるので、畝に対する機体高さを制御する基準位置を自由に設定できるので、苗Sの植付深さが調節できる。
【0054】
尚、油圧バルブユニット20内の左右傾斜制御バルブ20bは左右傾斜検出用の振り子200の動きに連動して切り替わるようになっており、機体が左右に傾斜するとローリングシリンダ27が適宜作動し、機体を左右水平に戻すように制御する。操縦ハンドル6は両端が後方に延びる平面視略コ字形をしており、その両端部に左右グリップ6aが取り付けられている。旋回時や路上走行時には、作業者が左右グリップ6aを握って操縦する。
【0055】
左右グリップ6aの下側には各々左右サイドクラッチレバー201が設けられている。また、操縦ハンドル6の基部には操作パネル202が設けられ、該操作パネルに、苗供給装置4及び苗植付装置5へ伝動する植付クラッチの入・切操作と機体の昇降操作をする植付昇降レバー203、メインクラッチの入・切操作をするメインクラッチレバー204等が設けられている。
【0056】
上記の野菜移植機1にて苗トレイTで育苗した野菜の苗Sを圃場に移植する作業について、説明する。
先ず、苗トレイ移動装置40の苗載台90に野菜苗Sが育苗された苗トレイTを載置し、予備苗載台36上に左右方向に並べて4枚の苗トレイTを載置する。そして、作業者は、機体後方でメインクラッチレバー204を入操作して左右前輪3と左右後輪2を畝溝に沿わせて機体を進行させ、植付昇降レバー203を操作して植付クラッチを入操作し且つ機体制御機構を制御状態にして、移植作業を開始する。
【0057】
苗トレイ移動装置40の苗載台90に載置された苗トレイTは、左右側板97と案内杆92に案内されて縦移動機構により移送されるが、苗押出し装置41の各押出し棒46が、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置Aの少し上方の位置B(ポット部Pの苗Sが水平になる少し手前の状態)から上下方向中央位置A(ポット部Pの苗Sが水平な状態)の間で苗トレイTの左右方向一列のポット部Pの苗Sを同時に前方に押出す。
【0058】
この時、苗保持装置43の苗保持具51の各苗保持部50は、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置(ポット部Pの苗Sが水平な状態)に接近した位置で且つ苗トレイTの左右方向一列の各ポット部Pに対応した位置に保持具前後移動装置52にて移動し、更に、各苗保持部50は、ソレノイドSOLにより作動体56がロ方向に退入動して、各移動保持体54が対向する各固定保持体53に対して離れた位置にあり、苗Sを受け入れる状態となっている。
【0059】
従って、苗押出し装置41の各押出し棒46にて前方に押出された苗トレイTの左右方向一列のポット部Pの苗Sは、苗保持装置43の苗保持具51の各苗保持部50にその根部が受け止められると同時に、ソレノイドSOLにより作動体56がイ方向に進出動して、各移動保持体54が対向する各固定保持体53に対して近づき各苗保持部50は一斉に苗Sを挟持し保持する。
【0060】
その後、保持具前後移動装置52の電動モータ57の作動にて、苗保持具51の各苗保持部50は、苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置に接近した位置から前方側に離れた位置の苗供給具61の苗供給カップ62の上方位置に移動する。
【0061】
そして、各苗保持部50は、ソレノイドSOLにより作動体56がロ方向に退入動して、各移動保持体54が対向する各固定保持体53に対して離れた位置になり、保持していた苗Sを離す。すると、各苗保持部50が水平姿勢で保持していた各苗Sは、下方に落下する際に、苗姿勢矯正用ピン60に苗Sの茎葉部が接当して、苗Sは茎葉部が上方に向くように姿勢変更され(根部が下方に位置するように姿勢変更され)、適正な姿勢で苗供給具61の各苗供給カップ62内に供給される。
【0062】
そして、苗供給カップ62内に供給された苗Sは、各苗供給カップ62が周回移動して苗供給カップ62内に入れられた苗Sを開放する位置(苗植付具42のすぐ上)に来た時に、苗供給カップ62のシャッタ65が開き、内部に収納された苗Sが苗植付具42内に落下供給される。
【0063】
苗Sが供給されて苗Sを保持した苗植付具42は下降してその下部が畝Uの表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具42が開き、保持していた苗Sを苗移植用穴の中に開放する。そのまま苗植付具42が上昇して、畝Uに苗Sが植付けられる。そして、苗植付位置の後方の左右一対の鎮圧輪180が、機体の進行に伴って畝U上面を転動し、苗Sが植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧する。
【0064】
このようにして、苗トレイ移動装置40の苗載台90に載置された苗トレイTから順次苗Sが抜き取られて畝Uに植付けらるが、苗トレイTは、苗Sが取り出された後に駆動スプロケット100に沿って左右側板97の下面側へとおり返されて、機体後方側へ移送され、機体後部の操縦ハンドル6下方空間部の収容部104内に積み重ねられた状態で収容される。
【0065】
そして、作業者は、機体後方側で機体の操向操作をしながら、植付部1bの苗移植作業状態を確認し、苗載台90に載置されたトレイTを見て、新たな苗トレイTの供給が必要と判断した時に、苗載台90の上にある予備苗載台36から苗トレイTを取出して苗トレイ移動装置40の苗載台90に供給する。この時、作業者は、植付部1bの方向を向いているので、苗移植作業状態が確認し易く、苗移植作業が適切に行われないような事態が発生した場合には、即座に対応することができて、苗移植作業が適切に且つ効率よく行える。また、予備苗載台36は苗載台90の上方位置に配置されているので、作業者は、予備苗載台36から容易に苗Sが入った苗トレイTを取出して苗トレイ移動装置40の苗載台90に供給することができ、作業効率が良い。
【0066】
図12は苗供給装置4の他の例を示し、上記の実施例とは、苗押出し装置41と苗保持装置43の部分の構成が異なっている。
即ち、上記の苗押出し装置41は押出し棒46が作動するメカ機構であったが、この例の苗押出し装置41は、空気又は水を噴出するコンプレッサー300を設け、該コンプレッサー300に苗トレイTの横一列のポット部Pと各々対向すべくポット部Pのピッチと同じ間隔で配置された噴出管301を設けている。そして、コンプレッサー300からの圧縮空気又は圧水にて苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置A(ポット部Pの苗Sが水平な状態)で苗トレイTの左右方向一列のポット部Pの苗Sを同時に前方に押出す構成としている。
【0067】
また、苗トレイ移動装置40の前方側には、上例の実施例の苗保持装置43に代えて断面形状コ字状の苗ガイド体302が苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の前方で、苗トレイTの左右方向一列の各ポット部Pに対応した位置に各々設けられている。また、各苗ガイド体302は、苗供給具61の各苗供給カップ62の上方位置に対応して配置されている。
【0068】
従って、コンプレッサー300からの圧縮空気又は圧水にて苗トレイ移動装置40の前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置A(ポット部Pの苗Sが水平な状態)で苗トレイTの左右方向一列のポット部Pの苗Sが同時に前方に押出されると、該押出された各苗Sは各苗ガイド体302にて受け止められて、下方苗供給具61の各苗供給カップ62内へ落下供給される。
【0069】
そして、苗供給カップ62内に供給された苗Sは、各苗供給カップ62が周回移動して苗供給カップ62内に入れられた苗Sを開放する位置(苗植付具42のすぐ上)に来た時に、苗供給カップ62のシャッタ65が開き、内部に収納された苗Sが苗植付具42内に落下供給される。
【0070】
苗Sが供給されて苗Sを保持した苗植付具42は下降してその下部が畝Uの表土部に突き刺さり、苗移植用穴を形成する。これとほぼ同期して苗植付具42が開き、保持していた苗Sを苗移植用穴の中に開放する。そのまま苗植付具42が上昇して、畝Uに苗Sが植付けられる。そして、苗植付位置の後方の左右一対の鎮圧輪180が、機体の進行に伴って畝U上面を転動し、苗Sが植付けられた後の苗移植穴の周囲の土を崩落させて穴を埋め戻すと共に、その跡を軽く鎮圧する。
【0071】
尚、上記実施例においては、畝に移植する作業例を示したが、平らな圃場に苗を移植する場合も同様である。また、野菜苗としては、キャベツや白菜等の葉菜類の苗・大根やさつま芋等の根菜類の苗・南瓜や西瓜等の果菜類の苗が挙げられるが、他に、い草や花等の如何なる苗でも良い。
【符号の説明】
【0072】
1a 走行部
1b 植付部
2 走行装置(左右後輪)
3 走行装置(左右前輪)
4 苗供給装置
5 苗植付装置
6 操縦ハンドル
36 予備苗載台
40 苗トレイ移動装置
41 苗押出し装置
43 苗保持装置
50 苗保持部
51 苗保持具
53 固定保持体
54 移動保持体
60 苗姿勢矯正体(苗姿勢矯正用ピン)
61 苗供給具
62 苗供給カップ
104 収容部
P ポット部
S 苗
T 苗トレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2・3)にて走行する走行部(1a)に苗供給装置(4)及び苗植付装置(5)を有する植付部(1b)を設けた苗移植機において、該苗供給装置(4)は、苗トレイ(T)を機体の一方に移動する機体に固定された苗トレイ移動装置(40)と、苗トレイ(T)の苗(S)を押出す苗押出し装置(41)と、苗押出し装置(41)によって苗トレイ(T)から押出された苗(S)を一つずつ保持する苗保持装置(43)と、苗保持装置(43)に保持された各苗(S)を各々受け取って苗植付装置(5)に順次供給する苗供給カップ(62)を装備した苗供給具(61)で構成されていることを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
苗トレイ移動装置(40)は苗トレイ(T)を水平状態若しくは略水平状態で載置支持すると共に、前後方向にのみ間欠移動する構成とし、その前部のU字状に湾曲した部位の後方内側に苗トレイ(T)の左右方向一列の苗(S)を同時に前方に押出す苗押出し装置(41)を設け、苗トレイ移動装置(40)の前方側に苗押出し装置(41)によって苗トレイ(T)から押出された苗(S)を一つずつ保持する苗保持装置(43)を設け、該苗保持装置(43)に保持された各苗(S)を各々受け取って苗植付装置(5)に順次供給する苗供給カップ(62)を装備した苗供給具(61)を苗保持装置(43)の下方に設けたことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
苗トレイ移動装置(40)は苗トレイ(T)を水平状態若しくは略水平状態で載置支持すると共に、前後方向にのみ間欠移動する構成とし、その前部のU字状に湾曲した部位で苗トレイ(T)から苗(S)を取出し、その後、苗トレイ(T)を下面側へおり返して機体後方側へ移送し、機体後部に設けた操縦ハンドル(6)下方空間部に設けた収容部(104)内に収容する構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の苗移植機。
【請求項4】
苗保持装置(43)は、その苗保持具(51)の各苗保持部(50)が苗トレイ移動装置(40)前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置に接近した位置で且つ苗トレイ(T)の左右方向一列の各ポット部(P)に対応した位置と苗トレイ移動装置(40)前部のU字状に湾曲した部位から前方側に離れた苗供給具(61)の苗供給カップ(62)の上方位置との間を前後移動する構成とすると共に、各苗保持部(50)は、固定保持体(53)に対して対向する移動保持体(54)が接近した位置と離れた位置に移動する構成とし、各苗保持部(50)が苗トレイ移動装置(40)前部のU字状に湾曲した部位の上下方向中央位置に接近した位置で固定保持体(53)に対して対向する移動保持体(54)が離れた位置から接近した位置に移動して苗押出し装置(41)によって苗トレイ(T)から押出された苗(S)を一つずつ保持し、苗トレイ移動装置(40)前部のU字状に湾曲した部位から前方側に離れた苗供給具(61)の苗供給カップ(62)の上方位置で固定保持体(53)に対して対向する移動保持体(54)が離れた位置に移動して保持した苗(S)を離して、苗供給具(61)の各苗供給カップ(62)内に供給する構成としたことを特徴とする請求項1から請求項3記載の何れか1項に記載の苗移植機。
【請求項5】
固定保持体(53)または移動保持体(54)には、苗保持部(50)内方に突出する苗姿勢矯正体(60)を苗保持部(50)から落下する苗(S)の茎葉に接当する位置に設けたことを特徴とする請求項4記載の苗移植機。
【請求項6】
苗トレイ移動装置(40)の上方位置に予備苗載台(36)を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5記載の何れか1項に記載の苗移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−65579(P2012−65579A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212263(P2010−212263)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】