説明

苦味又は酸味低減剤及びそれを配合した飲食品

【課題】 現在の食生活においては様々な種類の食品がそのまま、加工して、または調理して飲食品として摂取されている。しかしながら、一部の飲食品は、栄養学的に優れていて安全性の面で問題のないものであっても、その飲食品の苦味、渋味、酸味、青臭み、エグ味、その他の特異臭や雑味などにより、飲食が制限されている。本発明は、新たな苦味又は酸味低減剤及びそれを配合した飲食品を提供することを目的とする。
【解決手段】 飲食品中の水不溶性成分を除去した水溶性画分をα−アミラーゼ処理、さらにアミログルコシダーゼ処理した後、処理物にエタノールを加え80%エタノール濃度としたときに沈殿する80%エタノール不溶性糖質を含有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、80%エタノール不溶性糖質または80%エタノール不溶性糖質とグルタミン、グルタミン酸、グルタミン誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有し、苦味もしくは酸味が低減された飲食品を提供する。
【背景技術】
【0002】
現在の食生活においては様々な種類の食品がそのまま、加工して、または調理して飲食品として摂取されている。しかしながら、一部の飲食品は、栄養学的に優れていて安全性の面で問題のないものであっても、その飲食品の苦味、渋味、酸味、青臭み、エグ味、その他の特異臭や雑味などにより、飲食が制限されている。
【0003】
特にその中でも苦味又は酸味を感じさせる飲食品が多い。分岐アミノ酸配合飲料や生薬などを原料とした薬酒、健康ドリンク、ゴーヤを配合した飲食品などは原料からくる特有の苦味を有し、栄養的には優れるにも関わらず、人々から敬遠されている。また、コーヒーに含まれるクロロゲン酸やビールに含まれるフムロン酸、茶葉等に含まれるポリフェノール、カフェイン、サポニンも特有の苦味を有し、その苦味を特徴とし、それを好む人の嗜好品であるが、これらの苦味を苦手とする人もおり、敬遠される場合がある。
【0004】
酸味に関しては、さわやかな酸味は好ましい味として扱われる場合があるが、舌を刺すような刺激のある酸味は異味として嫌われ、敬遠されている。また、アセロラやグレープフルーツ、レモン等にはビタミンCが多く含まれ、最近の健康志向からそれらの果汁を含み、高ビタミンC含有の飲食品が消費されているが、ビタミンCも強い酸味を呈するため、嗜好の面からビタミンCの含有量を上げることができない。また、柑橘類に含まれるクエン酸、酢に含まれる酢酸、日本酒に含まれるコハク酸等、種々の食品に特有の酸味を有する有機酸が含まれており、その酸味を特徴とし、それを好む人の嗜好品であるが、これらの酸味を苦手とする人もおり、敬遠される場合がある。
【0005】
かかる事情の下、これらの問題を解決するために、従来より飲食品の苦味又は酸味を低減しようという試みが成されてきた。α−結合ガラクトオリゴ糖を含有する飲食品の風味改善剤及びこれらが添加された飲食品並びに飲食品の風味改善方法(例えば特許文献1参照)が提供されている。また、ヘスペリジン配糖体またはヘスペリジン配糖体とヘスペリジンとの混合物を飲食品に添加する風味の改善方法(例えば特許文献2参照)が提供されている。また、甘蔗由来の蒸留物または画分を有効成分とする風味改善剤(例えば特許文献3参照)が提供されている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−250486号公報(第1頁−6頁)
【特許文献2】特許第3208113号公報(第1頁−14頁)
【特許文献3】特開2001−299264号公報(第1頁−12頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のいずれの風味改善方法や風味改善剤においても、その効果は十分なものではなかった。そこで、本発明は、新たな苦味又は酸味低減剤及びそれを配合した飲食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明者らは80%エタノール不溶性糖質あるいは80%エタノール不溶性糖質及びグルタミン、グルタミン酸、グルタミン誘導体から選ばれる1種又は2種以上を様々な飲食品に添加して研究を重ねた結果、本発明に想到した。すなわち、本発明は、80%エタノール不溶性糖質あるいは80%エタノール不溶性糖質及びグルタミン、グルタミン酸、グルタミン誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする飲食品の苦味又は酸味低減剤を提供することを要旨とする。また、上記発明により、飲食品の苦味又は酸味を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明における水溶性画分とは、水に分散させたときに完全溶解する画分であり、水不溶性成分の除去とは、遠心分離やろ過により水に不溶な部分を除去することである。
【0010】
本発明のα−アミラーゼ処理とは、水不溶性成分を除去して得られた水溶性画分にpH 7.5±0.1、60%±2℃でα−アミラーゼ0.1ml(10,000−11,000単位 /ml)を30分間処理することをいう。ここでいう単位とは、1%デンプン糊液10ml(100mgデンプン)のBlue Valueを40℃、1分間に1%低下させる酵素量を1単位と定義する。
【0011】
本発明のアミログルコシダーゼ処理とは、水溶性画分にpH 4.3±0.3、60±2℃でアミログルコシダーゼ0.3ml(140単位 /ml)を30分間処理することをいう。ここでいう単位とは、30分間に10mgのブドウ糖に相当する還元力の増加をもたらす酵素量を1単位と定義する。
【0012】
80%エタノール不溶性糖質の測定法は、α−アミラーゼ処理、さらにアミログルコシダーゼ処理した後、80%エタノール濃度とし60分間、室温放置後、遠心分離し得られた沈殿の重量から、蛋白質量、灰分量、脂質量と水分量を差し引き得られた量を80%エタノール不溶性糖質量とする。
【0013】
80%エタノール不溶性糖質を含む素材としては、例えば、ペクチン、ガラクトマンナン、低分子化アルギン酸、難消化性デキストリン、ポリデキストロースやチコリファイバーなどを挙げることができる。物性の面で特に好ましくはガラクトマンナン、難消化性デキストリン及びポリデキストロースから選ばれる1種又は2種類以上である。好ましくはガラクトマンナンと難消化性デキストリンから選ばれる1種又は2種類以上である。最も好ましくはガラクトマンナンである。80%エタノール不溶性糖質は1種類単独で使用しても良いし、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。2種類以上の組み合わせとしては特に制限されない。
【0014】
前記ガラクトマンナンとしては、ガラクトマンナンを主成分とするグアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、カシアガム、セスバニアガム、フェヌグリーク、低分子化ガラクトマンナンなどの天然粘質物が挙げられる。粘度の面から特に好ましくは低分子化ガラクトマンナンである。低分子化ガラクトマンナンは、前記のガラクトマンナンを加水分解し低分子化することにより得られるものである。加水分解の方法としては、酵素分解法、酸分解法など、特に限定するものではないが、分解物の分子量が揃い易い点から酵素分解法が好ましい。酵素分解法に用いられる酵素は、マンノース直鎖を加水分解する酵素であれば市販のものでも天然由来のものでも特に限定されるものではないが、アスペルギルス属菌やリゾップス属菌などに由来するβ−マンナナーゼが好ましい。市販品としては、サンファイバー(太陽化学社製)などが挙げられる。
【0015】
前記、低分子化アルギン酸としては、種々の細菌や褐藻類などの海生動物に存在するものなどのアルギン酸を、酸と熱とによって分解したものを用いることができる。市販品としては、ソルギン(カイゲン社製)などが挙げられる。
【0016】
前記、難消化性デキストリンとしては、澱粉を加熱、酵素処理して得られる難消化性の食物繊維を用いることができる。具体的には例えば、澱粉を酸性下で加熱処理して得られる焙焼デキストリンを、α−アミラーゼで加水分解処理し、さらに必要に応じて、グルコα−アミラーゼ処理、イオン交換樹脂クロマトグラフィー処理などの精製処理などを施して得ることができる。市販品としては、パインファイバー(松谷化学社製)やニュートリオース(ロケット社製)などが挙げられる。
【0017】
前記、ポリデキストロースとしては、ブドウ糖、ソルビトール及びクエン酸をおおよそ89:10:1の割合で混合し高温真空下で重合させたものなどを用いることができる。市販品としては、ライテス(ファイザー社製)などが挙げられる。
【0018】
前記、チコリファイバーとしては、特に限定されないがチコリの根から温水抽出し、精製、スプレードライにより粉末化したものを用いることができる。市販品としては、ラフィテリンST(日本シーベルヘグナー社製)などが挙げられる。
【0019】
本発明において苦味又は酸味低減剤として用いるには、低減する苦味又は酸味の強さによって異なるが、一般に苦味又は酸味低減を要する製品に対して、80%エタノール不溶性糖質として0.01重量%以上であれば充分な効果を得ることができる。従って、本発明の苦味又は酸味低減剤がその効果を充分に発揮するためには、80%エタノール不溶性糖質を製品に対して0.001重量%〜10.0重量%添加することが好ましい。さらに望ましくは0.01重量%〜5.0重量%添加することが好ましい。また、0.01重量%〜1.0重量%とすることが最も好ましい。
【0020】
本発明に用いられるグルタミンは、生理学的に認められる塩の化合物または混合物として用いることもできる。
【0021】
本発明で用いられるグルタミン酸は、グルタミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、タンパク質加水分解物から得られるグルタミン酸、グルタミン酸そのものなどを用いて添加することが可能である。
本発明に用いられるグルタミン誘導体としては、例えば、グルタミルフェニルアラニン、グルタミルチロシンメチルエステル、グルタミルDOPA、グルタミルグルタミン等があげられ、好ましくは、ピログルタミン酸、γ−グルタミルエチルアミド、γ−グルタミルメチルアミドである。
【0022】
グルタミン及びグルタミン酸、グルタミン誘導体として一般に苦味又は酸味低減を有する製品の0.001重量%以上であれば充分な効果を得ることができる。本発明の苦味又は酸味低減剤がその効果を充分に発揮するためには、グルタミン及びグルタミン酸、グルタミン誘導体を製品に対して0.001重量%〜5重量%添加することが好ましい。さらに好ましくは0.001重量%〜0.5重量%添加である。また、0.001重量%〜0.05重量%とすることが最も好ましい。
【0023】
本発明の苦味又は酸味低減剤は苦味又は酸味低減剤の有効成分である80%エタノール不溶性糖質もしくはグルタミン及びグルタミン酸、グルタミン誘導体は、そのまま使用しても良いが、食品では乾燥品、嗜好品に添加する製剤、清涼飲料やミネラルウォーター、嗜好飲料、アルコール飲料、ドリンク剤に添加する可溶性製剤としても使用可能である。また、医薬品ではカプセル剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、ドリンク剤等に製剤化することができる。
【0024】
本発明の低減剤を添加する製品形態としては、溶液、懸濁物、粉末、固体成形物等であり、ムース、ゼリー、冷菓、飴、チョコレート、クラッカー、ケーキ、パン、スープ、コーヒー、ココア、ジュース、酒、医薬品等多様であり、これによって本発明が限定されるものではない。
【0025】
本発明における飲食品の苦味又は酸味低減とは特に限定するものではなく、分岐アミノ酸の苦味低減、コーヒーの苦味低減、ビールの苦味低減、果汁の酸味もしくは苦味低減、アセロラもしくはレモンの酸味低減、炭酸飲料の苦味低減、有機酸の酸味低減、サポニンの苦味低減、ポリフェノールの苦味低減、カフェインの苦味低減、ゴーヤの苦味低減、生薬配合飲料の苦味低減等があげられ、特に分岐アミノ酸の苦味低減、コーヒーの苦味低減、ビールの苦味低減、果汁の酸味もしくは苦味低減、アセロラもしくはレモンの酸味低減、炭酸飲料の苦味低減、有機酸の酸味低減、サポニンの苦味低減、ポリフェノールの苦味低減、カフェインの苦味低減が普段一般的に飲食されるものの苦味もしくは酸味を低減する点から好ましい。具体的には次のものである。
【0026】
1.分岐アミノ酸の苦味低減
分岐アミノ酸とは、側鎖が分岐・枝分かれしているバリン、ロイシン、イソロイシンの3種のことである。これらの苦味を低減する。
【0027】
2.コーヒーの苦味低減
コーヒー由来の苦味を低減する。
【0028】
3.ビールの苦味低減
ビール原料であるホップに由来する苦味を低減する。
【0029】
4.果汁の酸味もしくは苦味低減
果汁とは、たとえばグレープフルーツ、夏みかん、はっさく、スウィーティー、ブンタン、ライム、キウイフルーツ、リンゴなどの果物を絞って得られた液体である。これらの果汁由来の苦味もしくは酸味を低減する。
【0030】
5.アセロラもしくはレモンの酸味低減
アセロラもしくはレモン由来の酸味を低減する。
【0031】
6.炭酸飲料の苦味低減
炭酸飲料由来の苦味を低減する。
【0032】
7.有機酸の酸味低減
有機酸としては、クエン酸やリンゴ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸等があげられる。これらの有機酸由来の酸味を低減する。
【0033】
8.サポニンの苦味低減
サポニンとしては、茶サポニン、大豆サポニン、人参サポニン等があげられる。これらのサポニン由来の苦味を低減する。
【0034】
9.ポリフェノールの苦味低減
ポリフェノールとしては、フラボノイド類であるカテキン、アントシアニン、イソフラボン、フラバン、フラバノン、フェノール類であるクロロゲン酸等があげられる。これらのポリフェノール由来の苦味を低減する。
【0035】
10.カフェインの苦味低減
カフェイン由来の苦味を低減する。
【実施例】
【0036】
次に実施例、及び試験例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に何ら制約されるものではない。
【0037】
実施例1(80%エタノール不溶性糖質の調製)
水900gに0.1N塩酸を加えてpH4.5に調整し、これにアスペルギルス属由来のβ−マンナナーゼ(NOVO社製)0.2gとグァーガム粉末(サティアン社製)100gを添加混合して40〜45℃で24時間酵素を作用させた。反応後90℃、15分間加熱して酵素を失活させた。濾過分離(吸引濾過)して、不溶物を除去して得られた透明な溶液を減圧濃縮(RE200型エバポレーター;Yamato製)した後(固形分20%)、噴霧乾燥(大川原化工機(株))し、ガラクトマンナン(平均分子量 約20,000)の粉末65gが得られた。この得られた粉末65gに石油エーテル1625mlを加え脱脂し、水不溶性成分を除去した水溶性画分62gを得た。この得られた水溶性画分62gに0.08mol/Lリン酸緩衝液500mlを加え完全に溶解し、そこに熱安定性α−アミラーゼ(Novo Nordisk社製)1.0mlを加え沸騰水浴中で30分間処理し、さらにアミログルコシダーゼ(Sigma社製)1.0ml加え60℃で30分間処理した後、処理物にエタノールを加え、80%エタノール濃度とした際に沈殿する80%エタノール不溶性糖質52gを得た。
【0038】
実施例2(γ−グルタミルエチルアミドの調製)
0.3Mグルタミン及び1.5Mエチルアミンをホウ酸緩衝液(Na−NaOH、pH11)中、0.3U/グルタミナーゼ(Pseudomonas属細菌由来)にて30℃、22時間反応させた。反応液1より225mmolのγ−グルタミルエチルアミドを得た。なお、副生成物のグルタミン酸は20mmolであった。なお、反応液からの精製は、反応液をDowex 50×8、Dowex 1×2カラムクロマトグラフィーにかけ、これをエタノール処理することにより行った。
【0039】
γ−グルタミルエチルアミドの確認はこの単離物質をアミノ酸アナライザー、ペーパークロマトグラフィーにかけると、標準物質と同じ挙動を示すことにより行った。塩酸またはグルタミナーゼで加水分解処理を行なうと、1:1の割合で、グルタミン酸とエチルアミンを生じた。このように、単離物質がグルタミナーゼによって加水分解されたことから、エチルアミンがグルタミン酸のγ位に結合していたことが示される。また、加水分解で生じたグルタミン酸がL型であることも、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(GluDH)により確認され、得られた化合物がγ−グルタミルエチルアミドであることを確認した。
【0040】
試験例1(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物による分岐アミノ酸の苦味低減効果)
表1の配合組成に従い、分岐アミノ酸であるバリン、ロイシン、イソロイシンを添加した飲料を調製した。A区分にはブランクとして何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを1.0重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表2及び3、4に各区分を選択した人数を示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0046】
試験例2(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるコーヒーの苦味低減効果)
【0047】
表5の配合組成に従いコーヒー飲料を調製した。A区分にはブランクとして何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表6及び7、8に各区分を選択した人数を示す。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0053】
試験例3(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるビールの苦味低減効果)
【0054】
市販のビール(商品名:スーパードライ、アサヒビール社製)に、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表9及び10、11に各区分を選択した人数を示す。
【0055】
【表9】

【0056】
【表10】

【0057】
【表11】

【0058】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0059】
試験例4(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物による果汁の苦味又は酸味低減効果)
【0060】
リンゴ(長野県産)を皮むき後ジューサーにて搾汁を行い、リンゴ汁をえた。A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表12及び13、14に各区分を選択した人数を示す。
【0061】
【表12】

【0062】
【表13】

【0063】
【表14】

【0064】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0065】
試験例5(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるアセロラの酸味低減効果)
【0066】
市販のアセロラ飲料(商品名:アセロラドリンク、ニチレイ社製)に、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表15及び16、17に各区分を選択した人数を示す。
【0067】
【表15】

【0068】
【表16】

【0069】
【表17】

【0070】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0071】
試験例6(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるレモンの酸味低減効果)
市販のレモン飲料(商品名:ポッカ100レモン、ポッカコーポレーション社製)に、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表18及び19、20に各区分を選択した人数を示す。
【0072】
【表18】

【0073】
【表19】

【0074】
【表20】

【0075】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0076】
試験例7(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物による炭酸飲料の苦味低減効果)
【0077】
市販の炭酸飲料(商品名:サントリーソーダ、サントリーフーズ社製)に、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表21及び22、23に各区分を選択した人数を示す。
【0078】
【表21】

【0079】
【表22】

【0080】
【表23】

【0081】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0082】
試験例8(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物による有機酸の酸味低減効果)
【0083】
有機酸として酢酸1.0重量%水溶液を調製した。この水溶液を最終濃度が0.1重量%となるように分配し、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表24及び25、26に各区分を選択した人数を示す。
【0084】
【表24】

【0085】
【表25】

【0086】
【表26】

【0087】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0088】
試験例9(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるサポニンの苦味低減効果)
サポニンとして茶葉サポニン1.0重量%水溶液を調製した。この水溶液を最終濃度が0.1重量%となるように分配し、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表27及び28、29に各区分を選択した人数を示す。
【0089】
【表27】

【0090】
【表28】

【0091】
【表29】

【0092】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0093】
試験例10(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるポリフェノールの苦味低減効果)
【0094】
ポリフェノールとして緑茶ポリフェノール1.0重量%水溶液を調製した。この水溶液を最終濃度が0.1重量%となるように分配し、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表30及び31、32に各区分を選択した人数を示す。
【0095】
【表30】

【0096】
【表31】

【0097】
【表32】

【0098】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【0099】
試験例11(80%エタノール不溶性糖質もしくは80%エタノール不溶性糖質及びγ−グルタミルエチルアミドの混合物によるカフェインの苦味低減効果)
カフェイン1.0重量%水溶液を調製し、この水溶液を最終濃度が0.1重量%となるように分配し、A区分には何も添加せず、B区分にはガラクトマンナンを0.1重量%添加し、C区分にはガラクトマンナンを0.1重量%及びγ−グルタミルエチルアミドを0.01重量%添加した。これらの3区分について、AとB及びAとC、BとCの3グループに分け、男女合計22名のパネラーに、AとBもしくはAとC、BとCを比較した際に、いずれか苦味の強い方、飲みやすい方を選択させた。表33及び34、35に各区分を選択した人数を示す。
【0100】
【表33】

【0101】
【表34】

【0102】
【表35】

【0103】
明らかにガラクトマンナンを添加したB区分ならびに、ガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分が、苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。また、ガラクトマンナンを添加したB区分とガラクトマンナン及びγ−グルタミルエチルアミドを添加したC区分を比較した際に、C区分がより苦味が減少し、飲みやすくなっている傾向が見られた。同様の方法で試験を実施したところ、ガラクトマンナンの添加率が0.01%の場合ならびにガラクトマンナンの添加率が0.01%及びγ−グルタミルエチルアミドの添加率0.01%の場合においても同様の傾向がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
栄養学的な面においても特長があり、安全性の面で問題のない飲食品であっても、飲食品の成分が持つ苦味又は酸味により飲食が制限される。本発明によれば、易溶性であるガラクトマンナンもしくはガラクトマンナン及びグルタミン、グルタミン酸、グルタミン誘導体から選ばれる1種又は2種以上を飲食品に微量添加することによって、飲食品の苦味や酸味を軽減することができ、これまで敬遠されていた様々な食品が、より多くの人に提供することができるようになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲食品中の水不溶性成分を除去した水溶性画分をα−アミラーゼ処理、さらにアミログルコシダーゼ処理した後、処理物にエタノールを加え80%エタノール濃度としたときに沈殿する80%エタノール不溶性糖質を含有することを特徴とする飲食品の苦味又は酸味低減剤。
【請求項2】
80%エタノール不溶性糖質がガラクトマンナンである請求項1記載の苦味又は酸味低減剤。
【請求項3】
さらにグルタミン、グルタミン酸、グルタミン誘導体から選ばれる1種又は2種以上を含有することを特徴とする請求項1及び2いずれか記載の苦味又は酸味低減剤。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の苦味又は酸味低減剤を含む飲食品。

【公開番号】特開2008−109869(P2008−109869A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293799(P2006−293799)
【出願日】平成18年10月30日(2006.10.30)
【出願人】(000204181)太陽化学株式会社 (244)
【Fターム(参考)】