苦味抑制剤
【課題】苦味を有する組成物の苦味抑制に有効な苦味抑制剤を提供すること。
【解決手段】平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤。
【解決手段】平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苦味抑制剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
苦味を有する飲食品として、例えば、コーヒー、緑茶等の飲料、大豆、小豆等の豆類、ピーマン等の野菜類、グレープフルーツ等の柑橘類が知られている。これら飲食品には、苦味成分として、例えば、カフェイン、カテキン、サポニン、フラボノイド、リモニン又はナリンギンが含まれている。
【０００３】
ところで、苦味は味覚の一種であり、ほのかな苦味は嗜好性を高める上で有効であるが、苦味が強過ぎると不快感ないし嫌悪感を伴うようになる。
このような不快な苦味を抑制する手段として、ポリ−γ−グルタミン酸、その分解物及びその塩類から選ばれた１種以上を有効成分とする苦味抑制剤（特許文献１）、あるいはホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールを一定の割合で含有する苦味抑制剤（特許文献２）等が提案されている。
【０００４】
近年、生体を構成するコラーゲンを酵素により分解し低分子化したコラーゲンペプチドが、コラーゲンよりも生体内でアミノ酸に分解されやすく、溶解性及び吸収性に優れることから、化粧品、医薬品又は飲食品の分野で注目されている。しかしながら、コラーゲンペプチドが苦味の抑制に有効であるとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】国際公開第００／２１３９０パンフレット
【特許文献２】特開２００７−１２９９３６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
したがって、本発明の課題は、苦味を有する組成物の苦味抑制に有効な苦味抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、苦味を有する組成物の苦味抑制に有効な物質について検討したところ、原料や分子量等の異なる種々のコラーゲンペプチドが存在する中で、特定の平均分子量を有し、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドが苦味の抑制に有効であることを見出した。
【０００８】
すなわち、本発明は、平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤を提供するものである。
【０００９】
本発明はまた、苦味を有する組成物に、上記苦味抑制剤を添加する、苦味を有する組成物の苦味抑制方法を提供するものである。
【００１０】
本発明は更に、０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）、及び上記苦味抑制剤（Ｂ）を含有する、飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、苦味を有する組成物の苦味をより少ない添加量で有効に抑制することの可能な苦味抑制剤が提供される。本発明の苦味抑制剤は、哺乳類から得られるコラーゲンペプチドを有効成分とするものであり、水溶解性が良好で安全性が高いため、飲食品、医薬品、医薬部外品の分野で使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
（苦味抑制剤）
本発明の苦味抑制剤は、平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とするものである。
本発明で使用するコラーゲンペプチドは、平均分子量が５００〜４５００であるが、より一層の苦味抑制の観点から、平均分子量の下限は１０００、更に１５００、特に１８００であることが好ましく、他方上限は４０００、更に３５００、特に３３００であることが好ましい。なお、本明細書において「平均分子量」とは、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいい、平均分子量が上記範囲内にあれば、その分布は特に限定されない。
【００１３】
また、本発明で使用するコラーゲンペプチドは、哺乳類由来のものであれば特に限定されるものではないが食用に供されるものが好ましく、例えば、ウシ、ブタ、ウマ等が例示される。中でも、より一層の苦味抑制の観点から、ブタが好適である。また、哺乳類の抽出部位としては、コラーゲンを含有すれば特に限定なく任意の部位から抽出可能であるが、例えば、骨、皮等が例示される。中でも、抽出効率の観点から、皮が好適である。
なお、コラーゲンペプチドには魚類由来のものも存在するが、それを使用すると平均分子量が上記範囲内であっても、苦味抑制効果が不十分となる（比較例２参照）。
【００１４】
上記性状を有するコラーゲンペプチドは、公知の方法を適用して製造することが可能である。例えば、哺乳類から通常の抽出技術を適用して得られたコラーゲン又はゼラチンに酵素を作用し分解する方法、上記ゼラチンを果汁で分解し、必要により発酵させる方法が例示されるが、所望の平均分子量のコラーゲンペプチドを得るために必要により分画を行ってもよい。分画操作は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、イオンクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーや、ペプチドの分離手段として通常使用されている膜分離処理を、単独で又は任意の順序で組み合わせて行うことができる。なお、酵素分解に使用するコラーゲン及びゼラチンは、分解前に酸処理等が施されていてもよい。
酵素としては、例えば、Clostridium histolyticum Streptomyces parvulus等の細菌、放線菌又は真菌等に由来のコラゲナーゼが例示される。また、果汁としては、例えば、パイナップル果汁が例示される。
本発明においては、コラーゲンペプチドとして市販品を使用してもよく、例えば、スーパーコラーゲンペプチドＳＣＰシリーズ（例えば、SCP-5200、SCP-5100、SCP-3100、以上、新田ゼラチン（株））、発酵コラーゲンペプチドＬＣＰシリーズ（例えば、LCP微粉、LCP液体、以上、新田ゼラチン（株））等が例示される。
【００１５】
本発明の苦味抑制剤は、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に６以下である苦味に対して好ましく適用される。なお、苦味強度の下限は特に限定されないが、３、特に４であることが好ましい。ここで、本明細書において「硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度」とは、硫酸キニーネを用いて苦味の強さを等間隔で１０段階に予め調整した標準溶液（実施例の表１参照、Indow, T, Perception & Psychophysics, Vol.5(1969),pp.347-351）を基準とする官能試験において、被験者により硫酸キニーネの標準溶液の中から被験物質と同等の苦味の強さと認識された標準溶液の苦味強度をいう。具体的には、次の手順で苦味強度が決定される。先ず正常な味覚を有する健常人５名を被験者とし、各被験者が硫酸キニーネの標準溶液を低濃度から順に口に含み苦味の強さを記憶する。次いで、各被験者が被験物質を口に含み苦味の程度を認識し、硫酸キニーネの標準溶液の中から最も苦味レベルの近いものを決定する。そして、各被験者が決定した苦味強度の数値を平均化して被験物質の苦味強度とする。なお、苦味強度が小さいほど、苦味が弱いことを意味する。
【００１６】
本発明の苦味抑制剤は、使用条件に応じて公知の調製法に従い、粉末状、顆粒状又は粒子状の固形物とすることができる。また、本発明の苦味抑制剤には、酸化を防止して保存安定性を高めるために抗酸化剤を添加してもよい。
【００１７】
（苦味抑制方法）
本発明の苦味抑制方法は、苦味を有する組成物に、上記苦味抑制剤を添加することを特徴とする。
苦味を有する組成物としては、例えば、苦味を有する医薬品、医薬部外品又は飲食品等が例示される。本発明においては、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に６以下の苦味を有する組成物の苦味抑制に特に有効である。なお、苦味強度の下限は特に限定されないが、３、特に４であることが好ましい。
【００１８】
医薬品中の苦味成分としては、例えば、ストリキネーネ、キニーネ、パパベリン、ベルベリン、ブロメタジン、ブルシン、プロプラノロール、クロルプロマジン等が例示される。薬物は酸付加塩であってもよく、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩等の鉱酸塩及び有機酸塩が例示される。
医薬部外品としては、例えば、歯磨き、マウスウオッシュ、マウスリンス等が例示される。医薬部外品中の苦味成分としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、モノアルキルリン酸ナトリウム等の界面活性剤、メントール、リナロール、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール等の香料、メチルパラベン、プロピルパラベン等の殺菌剤等が例示される。なお、医薬品及び医薬部外品の剤型は特に限定されず、公知の剤型を採用することができる。
【００１９】
苦味を有する飲食品としては、次のものが例示される。
グレープフルーツ、オレンジ、レモン等の柑橘果実又はこれら果実から得られる果汁；トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス等の野菜又はこれら野菜から得られる野菜汁若しくは野菜ジュース；ソース、醤油、味噌、唐辛子、うま味調味料等の調味料；豆乳等の大豆食品；クリーム、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン等の乳化食品；魚肉、すり身、魚卵等の水産加工食品；ピーナツ等のナッツ；納豆等の発酵食品；食肉又はその加工食品；ビール、コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、機能性飲料等の飲料；漬物；めん；粉末スープを含むスープ；チーズ、牛乳等の乳製品；パン・ケーキ；スナック、ビスケット、米菓、チューインガム、チョコレート、キャンディー等の菓子。
これら飲食品中の苦味成分としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等のアミノ酸、ペプチド、サポニン、タンニン、リモニン、ナリンギン、非重合体カテキン類、カフェイン、クロロゲン、フラボノイド、オリゴ糖等が例示される。
【００２０】
本発明の苦味抑制剤の添加量は苦味成分の種類により適宜選択することが可能であるが、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に３〜７である苦味を有する組成物の場合、苦味を有する組成物の風味等に影響を与えない点から、苦味を有する組成物中に苦味抑制剤を０．００１〜０．０８質量％、更に０．００２〜０．０５質量％、より更に０．００３〜０．０３質量％、特に０．００４〜０．０１質量％添加することが好ましい。また、苦味を有する組成物中の苦味成分（Ａ）と、苦味抑制剤（Ｂ）との質量比［（Ｂ）／（Ａ）］は、０．０１〜０．２、更に０．０２〜０．１５、特に０．０３〜０．１であることが好ましい。
【００２１】
（飲料）
本発明の飲料は、０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）と、上記苦味抑制剤（Ｂ）を含有することを特徴とするものである。
苦味成分（Ａ）としては、カフェイン、非重合体カテキン類、サポニン、フラボノイド、リモニン、ナリンギンが好適である。ここで、本明細書において「（Ａ１）非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記８種の合計量に基づいて定義される。
【００２２】
本発明の飲料中の苦味成分（Ａ）の濃度は０．０５〜０．８質量％であるが、より一層の苦味抑制の観点から、０．０８〜０．７５質量％、更に０．１〜０．６５質量％、特に０．１２〜０．６質量％であることが好ましい。
【００２３】
本発明の飲料は公知の方法により調製することが可能であるが、例えば、上記濃度の非重合体カテキン類を含有する飲料は、例えば、茶抽出物を配合して非重合体カテキン類濃度を調整して得ることができる。
茶抽出物としては、例えば、茶から得られた抽出物が例示される。使用する茶としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis（やぶきた種を含む）、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹が好適に使用される。その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。
不発酵茶としては、例えば、茎茶、棒茶、芽茶、番茶、碾茶、釜入り茶等の緑茶が例示される。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が例示される。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が例示される。これらは単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも緑茶が好適である。
茶を抽出する方法としては、例えば、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出等の従来の方法を採用することができる。また、抽出用水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。このようにして得られた抽出物は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に使用できる。茶抽出物の形態としては、例えば、液体、スラリー、半固体、固体等が例示される。
【００２４】
また、茶抽出物として、茶から抽出した抽出物の代わりに、茶抽出物の濃縮物又は精製物を使用してもよく、また茶から抽出した抽出物と、茶抽出物の濃縮物又は精製物を併用してもよい。ここで、茶抽出物の濃縮物とは、茶から水及び／又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭５９−２１９３８４号公報、特開平４−２０５８９号公報、特開平５−２６０９０７号公報、特開平５−３０６２７９号公報等に記載の方法により調製することができる。茶抽出物の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林社製の「ポリフェノン」、伊藤園社製の「テアフラン」、太陽化学社製の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が例示される。
また、茶抽出物の精製物とは、溶剤やカラムを用いて茶抽出物又はその濃縮物から沈殿物等を除去したものをいい、必要によりタンナーゼ処理しても（例えば、特開２００４−３２１１０５号公報）、タンナーゼ処理後に更に活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも１種で処理してもよい（例えば、特公開２００７−２８２５６８号公報）。
【００２５】
なお、本発明の飲料に使用される苦味抑制剤（Ｂ）については、上記において説明したとおりである。また、また、上記苦味成分は、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度は通常３〜７の範囲内にあるため、本発明の飲料中に苦味抑制剤（Ｂ）を上記と同量配合することが可能である。具体的には、飲料の風味等に影響を与えない点から、飲料中の苦味抑制剤（Ｂ）の含有量は、０．００１〜０．０８質量％、更に０．００２〜０．０５質量％、より更に０．００３〜０．０３質量％、特に０．００４〜０．０１質量％であることが好ましい。また、苦味成分（Ａ）と、苦味抑制剤（Ｂ）との質量比[（Ｂ）／（Ａ１）]は、０．０１〜０．２、更に０．０２〜０．１５、特に０．０３〜０．１であることが好ましい。
【００２６】
本発明の飲料は、茶飲料でも、非茶系飲料であってもよい。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、ニアウォーター、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。
【００２７】
本発明の飲料には、酸化防止剤、香料、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、ｐＨ調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独で又は併用して配合してもよい。
【００２８】
本発明の飲料のｐＨ（２５℃）は、呈味及び非重合体カテキン類の安定性の観点から、２〜７、特に３〜６．５であることが好ましい。
【００２９】
また、本発明の飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器（いわゆるＰＥＴボトル）、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填した容器詰飲料として提供することができる。
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規（日本にあっては食品衛生法）に定められた殺菌条件で製造できる。ＰＥＴボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【００３０】
１．コラーゲンペプチドの平均分子量の測定
コラーゲンペプチドの平均分子量は、パギイ法により測定した。すなわち、高速液体クロマトグラフィーを用いて、試料をゲル濾過法によってクロマトグラムを求め、分子量分布を推定した。具体的には、以下のとおりである。
【００３１】
（１）検液の調製
ｉ）試料０．２ｇを１００ｍＬメスフラスコに量り取り、溶離液（０．１ｍｏｌ／Ｌリン酸二水素カリウム溶液と、０．１ｍｏｌ／Ｌリン酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液）を加え、１時間膨潤させた後、４０℃で６０分間加温して溶解した。室温まで冷却後、溶離液を標線まで加えた。
ii）得られた溶液を溶離液で正確に１０倍希釈し、検液とした。
iii）検液は、使用直前に孔径０．４５μｍのメンブランフィルターで濾過した。
【００３２】
（２）測定操作
ｉ）以下の条件で、ゲル濾過法によってクロマトグラムを求めた。
カラム：Ｓｈｏｄｅｘ Ａｓａｈｉｐａｋ ＧＳ ６２０ ７Ｇ を２本直列
溶離液の流速：１．０ｍＬ／ｍｉｎ
カラムの温度：５０℃
試料の注入量：１００μＬ
検出方法：測定波長２３０ｎｍの吸光度
ii）保存時間を横軸にとり、対応した２３０ｎｍの吸光度値を縦軸にして、試料の分子分布曲線を作成し、平均分子量を算出した。分子量マーカーとしてβ−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ヒトインシュリン、バシトラシン、グルタチオン及びグリシンの分子量（対数目盛）と溶出時間から得られた分子量分布の検量線から、分子量１０，０００、５，０００、１，０００、５００及び１００に相当する溶出時間を求めた。
【００３３】
２．非重合体カテキン類の測定
試料溶液をフィルター（０．４５μｍ）で濾過し、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム（Ｌ−カラムＴＭ ＯＤＳ、４．６ｍｍφ×２５０ｍｍ：財団法人 化学物質評価研究機構製）を装着した高速液体クロマトグラフ（型式ＳＣＬ−１０ＡＶＰ、島津製作所製）を用いて、カラム温度３５℃でグラジエント法により分析した。移動相Ａ液は酢酸を０．１ｍｏｌ／Ｌ含有する蒸留水溶液、Ｂ液は酢酸を０．１ｍｏｌ／Ｌ含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は２０μＬ、ＵＶ検出器波長は２８０ｎｍの条件で行った。
【００３４】
３．苦味の評価
５名のパネラーが下記の表１の硫酸キニーネの標準溶液を基準として各試験液の苦味レベルを官能試験し、その後各パネラーの評点の平均値を求めた。
【００３５】
【表１】
【００３６】
実施例１
市販のカテキン類製剤（ポリフェノン７０Ｓ、三井農林（株）製）と、表２に示す割合の苦味抑制剤を用いて、非重合体カテキン類濃度が０．１５質量％の飲料（硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度６）を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３７】
実施例２
苦味抑制剤を平均分子量３０００の豚皮由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３８】
実施例３
苦味抑制剤の配合量を変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３９】
比較例１
苦味抑制剤を平均分子量５０００の豚皮由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４０】
比較例２
苦味抑制剤を平均分子量３０００の魚由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４１】
比較例３
苦味抑制剤を平均分子量５０００の魚由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４２】
【表２】
【００４３】
実施例４
市販のカテキン類製剤（ポリフェノン７０Ｓ、三井農林（株）製）と、表３に示す割合の苦味抑制剤を用いて、非重合体カテキン類濃度が０．０９質量％の飲料（苦味強度５．５）を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４４】
比較例４
苦味抑制剤を表３に示す割合のβ−サイクロデキストリンに変更したこと以外は、実施例４と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４５】
比較例５
苦味抑制剤を表３に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例４と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４６】
【表３】
【００４７】
実施例５
０．００２３０Ｍの硫酸キニーネの標準溶液中（苦味強度５）に、表４に示す割合の苦味抑制剤を配合して試験液を調製した後、官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００４８】
実施例６
苦味抑制剤の配合量を変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００４９】
比較例６
苦味抑制剤を表４に示す割合のβ−サイクロデキストリンに変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５０】
比較例７
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５１】
比較例８
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５２】
比較例９
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５３】
【表４】
【００５４】
表２〜４から、所定の平均分子量を有する哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする苦味抑制剤を含有せしめることで、苦味が顕著に抑制されることが確認された。また、実施例５と比較例９との対比から、本願発明の苦味抑制剤は、従来の苦味抑制剤に比べて、極めて少ない添加量で苦味を十分抑制できることがわかった。
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苦味抑制剤に関する。
【背景技術】
【０００２】
苦味を有する飲食品として、例えば、コーヒー、緑茶等の飲料、大豆、小豆等の豆類、ピーマン等の野菜類、グレープフルーツ等の柑橘類が知られている。これら飲食品には、苦味成分として、例えば、カフェイン、カテキン、サポニン、フラボノイド、リモニン又はナリンギンが含まれている。
【０００３】
ところで、苦味は味覚の一種であり、ほのかな苦味は嗜好性を高める上で有効であるが、苦味が強過ぎると不快感ないし嫌悪感を伴うようになる。
このような不快な苦味を抑制する手段として、ポリ−γ−グルタミン酸、その分解物及びその塩類から選ばれた１種以上を有効成分とする苦味抑制剤（特許文献１）、あるいはホスファチジン酸及びホスファチジルイノシトールを一定の割合で含有する苦味抑制剤（特許文献２）等が提案されている。
【０００４】
近年、生体を構成するコラーゲンを酵素により分解し低分子化したコラーゲンペプチドが、コラーゲンよりも生体内でアミノ酸に分解されやすく、溶解性及び吸収性に優れることから、化粧品、医薬品又は飲食品の分野で注目されている。しかしながら、コラーゲンペプチドが苦味の抑制に有効であるとの報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】国際公開第００／２１３９０パンフレット
【特許文献２】特開２００７−１２９９３６号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
したがって、本発明の課題は、苦味を有する組成物の苦味抑制に有効な苦味抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
本発明者らは、苦味を有する組成物の苦味抑制に有効な物質について検討したところ、原料や分子量等の異なる種々のコラーゲンペプチドが存在する中で、特定の平均分子量を有し、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドが苦味の抑制に有効であることを見出した。
【０００８】
すなわち、本発明は、平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤を提供するものである。
【０００９】
本発明はまた、苦味を有する組成物に、上記苦味抑制剤を添加する、苦味を有する組成物の苦味抑制方法を提供するものである。
【００１０】
本発明は更に、０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）、及び上記苦味抑制剤（Ｂ）を含有する、飲料を提供するものである。
【発明の効果】
【００１１】
本発明によれば、苦味を有する組成物の苦味をより少ない添加量で有効に抑制することの可能な苦味抑制剤が提供される。本発明の苦味抑制剤は、哺乳類から得られるコラーゲンペプチドを有効成分とするものであり、水溶解性が良好で安全性が高いため、飲食品、医薬品、医薬部外品の分野で使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【００１２】
（苦味抑制剤）
本発明の苦味抑制剤は、平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とするものである。
本発明で使用するコラーゲンペプチドは、平均分子量が５００〜４５００であるが、より一層の苦味抑制の観点から、平均分子量の下限は１０００、更に１５００、特に１８００であることが好ましく、他方上限は４０００、更に３５００、特に３３００であることが好ましい。なお、本明細書において「平均分子量」とは、後掲の実施例に記載の方法により測定されるものをいい、平均分子量が上記範囲内にあれば、その分布は特に限定されない。
【００１３】
また、本発明で使用するコラーゲンペプチドは、哺乳類由来のものであれば特に限定されるものではないが食用に供されるものが好ましく、例えば、ウシ、ブタ、ウマ等が例示される。中でも、より一層の苦味抑制の観点から、ブタが好適である。また、哺乳類の抽出部位としては、コラーゲンを含有すれば特に限定なく任意の部位から抽出可能であるが、例えば、骨、皮等が例示される。中でも、抽出効率の観点から、皮が好適である。
なお、コラーゲンペプチドには魚類由来のものも存在するが、それを使用すると平均分子量が上記範囲内であっても、苦味抑制効果が不十分となる（比較例２参照）。
【００１４】
上記性状を有するコラーゲンペプチドは、公知の方法を適用して製造することが可能である。例えば、哺乳類から通常の抽出技術を適用して得られたコラーゲン又はゼラチンに酵素を作用し分解する方法、上記ゼラチンを果汁で分解し、必要により発酵させる方法が例示されるが、所望の平均分子量のコラーゲンペプチドを得るために必要により分画を行ってもよい。分画操作は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、イオンクロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー等の各種クロマトグラフィーや、ペプチドの分離手段として通常使用されている膜分離処理を、単独で又は任意の順序で組み合わせて行うことができる。なお、酵素分解に使用するコラーゲン及びゼラチンは、分解前に酸処理等が施されていてもよい。
酵素としては、例えば、Clostridium histolyticum Streptomyces parvulus等の細菌、放線菌又は真菌等に由来のコラゲナーゼが例示される。また、果汁としては、例えば、パイナップル果汁が例示される。
本発明においては、コラーゲンペプチドとして市販品を使用してもよく、例えば、スーパーコラーゲンペプチドＳＣＰシリーズ（例えば、SCP-5200、SCP-5100、SCP-3100、以上、新田ゼラチン（株））、発酵コラーゲンペプチドＬＣＰシリーズ（例えば、LCP微粉、LCP液体、以上、新田ゼラチン（株））等が例示される。
【００１５】
本発明の苦味抑制剤は、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に６以下である苦味に対して好ましく適用される。なお、苦味強度の下限は特に限定されないが、３、特に４であることが好ましい。ここで、本明細書において「硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度」とは、硫酸キニーネを用いて苦味の強さを等間隔で１０段階に予め調整した標準溶液（実施例の表１参照、Indow, T, Perception & Psychophysics, Vol.5(1969),pp.347-351）を基準とする官能試験において、被験者により硫酸キニーネの標準溶液の中から被験物質と同等の苦味の強さと認識された標準溶液の苦味強度をいう。具体的には、次の手順で苦味強度が決定される。先ず正常な味覚を有する健常人５名を被験者とし、各被験者が硫酸キニーネの標準溶液を低濃度から順に口に含み苦味の強さを記憶する。次いで、各被験者が被験物質を口に含み苦味の程度を認識し、硫酸キニーネの標準溶液の中から最も苦味レベルの近いものを決定する。そして、各被験者が決定した苦味強度の数値を平均化して被験物質の苦味強度とする。なお、苦味強度が小さいほど、苦味が弱いことを意味する。
【００１６】
本発明の苦味抑制剤は、使用条件に応じて公知の調製法に従い、粉末状、顆粒状又は粒子状の固形物とすることができる。また、本発明の苦味抑制剤には、酸化を防止して保存安定性を高めるために抗酸化剤を添加してもよい。
【００１７】
（苦味抑制方法）
本発明の苦味抑制方法は、苦味を有する組成物に、上記苦味抑制剤を添加することを特徴とする。
苦味を有する組成物としては、例えば、苦味を有する医薬品、医薬部外品又は飲食品等が例示される。本発明においては、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に６以下の苦味を有する組成物の苦味抑制に特に有効である。なお、苦味強度の下限は特に限定されないが、３、特に４であることが好ましい。
【００１８】
医薬品中の苦味成分としては、例えば、ストリキネーネ、キニーネ、パパベリン、ベルベリン、ブロメタジン、ブルシン、プロプラノロール、クロルプロマジン等が例示される。薬物は酸付加塩であってもよく、酸付加塩としては、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、炭酸塩等の鉱酸塩及び有機酸塩が例示される。
医薬部外品としては、例えば、歯磨き、マウスウオッシュ、マウスリンス等が例示される。医薬部外品中の苦味成分としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム、モノアルキルリン酸ナトリウム等の界面活性剤、メントール、リナロール、フェニルエチルアルコール、ゲラニオール等の香料、メチルパラベン、プロピルパラベン等の殺菌剤等が例示される。なお、医薬品及び医薬部外品の剤型は特に限定されず、公知の剤型を採用することができる。
【００１９】
苦味を有する飲食品としては、次のものが例示される。
グレープフルーツ、オレンジ、レモン等の柑橘果実又はこれら果実から得られる果汁；トマト、ピーマン、セロリ、ウリ、ニンジン、ジャガイモ、アスパラガス等の野菜又はこれら野菜から得られる野菜汁若しくは野菜ジュース；ソース、醤油、味噌、唐辛子、うま味調味料等の調味料；豆乳等の大豆食品；クリーム、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリン等の乳化食品；魚肉、すり身、魚卵等の水産加工食品；ピーナツ等のナッツ；納豆等の発酵食品；食肉又はその加工食品；ビール、コーヒー、ココア、緑茶、紅茶、烏龍茶、清涼飲料、機能性飲料等の飲料；漬物；めん；粉末スープを含むスープ；チーズ、牛乳等の乳製品；パン・ケーキ；スナック、ビスケット、米菓、チューインガム、チョコレート、キャンディー等の菓子。
これら飲食品中の苦味成分としては、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン等のアミノ酸、ペプチド、サポニン、タンニン、リモニン、ナリンギン、非重合体カテキン類、カフェイン、クロロゲン、フラボノイド、オリゴ糖等が例示される。
【００２０】
本発明の苦味抑制剤の添加量は苦味成分の種類により適宜選択することが可能であるが、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下、特に３〜７である苦味を有する組成物の場合、苦味を有する組成物の風味等に影響を与えない点から、苦味を有する組成物中に苦味抑制剤を０．００１〜０．０８質量％、更に０．００２〜０．０５質量％、より更に０．００３〜０．０３質量％、特に０．００４〜０．０１質量％添加することが好ましい。また、苦味を有する組成物中の苦味成分（Ａ）と、苦味抑制剤（Ｂ）との質量比［（Ｂ）／（Ａ）］は、０．０１〜０．２、更に０．０２〜０．１５、特に０．０３〜０．１であることが好ましい。
【００２１】
（飲料）
本発明の飲料は、０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）と、上記苦味抑制剤（Ｂ）を含有することを特徴とするものである。
苦味成分（Ａ）としては、カフェイン、非重合体カテキン類、サポニン、フラボノイド、リモニン、ナリンギンが好適である。ここで、本明細書において「（Ａ１）非重合体カテキン類」とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート及びガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類と、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート及びエピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類を合わせての総称であり、非重合体カテキン類の濃度は、上記８種の合計量に基づいて定義される。
【００２２】
本発明の飲料中の苦味成分（Ａ）の濃度は０．０５〜０．８質量％であるが、より一層の苦味抑制の観点から、０．０８〜０．７５質量％、更に０．１〜０．６５質量％、特に０．１２〜０．６質量％であることが好ましい。
【００２３】
本発明の飲料は公知の方法により調製することが可能であるが、例えば、上記濃度の非重合体カテキン類を含有する飲料は、例えば、茶抽出物を配合して非重合体カテキン類濃度を調整して得ることができる。
茶抽出物としては、例えば、茶から得られた抽出物が例示される。使用する茶としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis（やぶきた種を含む）、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹が好適に使用される。その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。
不発酵茶としては、例えば、茎茶、棒茶、芽茶、番茶、碾茶、釜入り茶等の緑茶が例示される。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が例示される。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が例示される。これらは単独で又は２種以上を組み合わせて用いることができるが、中でも緑茶が好適である。
茶を抽出する方法としては、例えば、攪拌抽出、カラム法、ドリップ抽出等の従来の方法を採用することができる。また、抽出用水にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸又は有機酸塩類を添加してもよい。このようにして得られた抽出物は、そのままでも、乾燥、濃縮しても本発明に使用できる。茶抽出物の形態としては、例えば、液体、スラリー、半固体、固体等が例示される。
【００２４】
また、茶抽出物として、茶から抽出した抽出物の代わりに、茶抽出物の濃縮物又は精製物を使用してもよく、また茶から抽出した抽出物と、茶抽出物の濃縮物又は精製物を併用してもよい。ここで、茶抽出物の濃縮物とは、茶から水及び／又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物を濃縮したものであり、例えば、特開昭５９−２１９３８４号公報、特開平４−２０５８９号公報、特開平５−２６０９０７号公報、特開平５−３０６２７９号公報等に記載の方法により調製することができる。茶抽出物の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林社製の「ポリフェノン」、伊藤園社製の「テアフラン」、太陽化学社製の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が例示される。
また、茶抽出物の精製物とは、溶剤やカラムを用いて茶抽出物又はその濃縮物から沈殿物等を除去したものをいい、必要によりタンナーゼ処理しても（例えば、特開２００４−３２１１０５号公報）、タンナーゼ処理後に更に活性炭、酸性白土及び活性白土から選ばれる少なくとも１種で処理してもよい（例えば、特公開２００７−２８２５６８号公報）。
【００２５】
なお、本発明の飲料に使用される苦味抑制剤（Ｂ）については、上記において説明したとおりである。また、また、上記苦味成分は、硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度は通常３〜７の範囲内にあるため、本発明の飲料中に苦味抑制剤（Ｂ）を上記と同量配合することが可能である。具体的には、飲料の風味等に影響を与えない点から、飲料中の苦味抑制剤（Ｂ）の含有量は、０．００１〜０．０８質量％、更に０．００２〜０．０５質量％、より更に０．００３〜０．０３質量％、特に０．００４〜０．０１質量％であることが好ましい。また、苦味成分（Ａ）と、苦味抑制剤（Ｂ）との質量比[（Ｂ）／（Ａ１）]は、０．０１〜０．２、更に０．０２〜０．１５、特に０．０３〜０．１であることが好ましい。
【００２６】
本発明の飲料は、茶飲料でも、非茶系飲料であってもよい。茶飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料、エンハンスドウォーター、ボトルドウォーター、ニアウォーター、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。
【００２７】
本発明の飲料には、酸化防止剤、香料、有機酸類、有機酸塩類、無機酸類、無機酸塩類、無機塩類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、ｐＨ調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独で又は併用して配合してもよい。
【００２８】
本発明の飲料のｐＨ（２５℃）は、呈味及び非重合体カテキン類の安定性の観点から、２〜７、特に３〜６．５であることが好ましい。
【００２９】
また、本発明の飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器（いわゆるＰＥＴボトル）、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填した容器詰飲料として提供することができる。
また、容器詰飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規（日本にあっては食品衛生法）に定められた殺菌条件で製造できる。ＰＥＴボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【００３０】
１．コラーゲンペプチドの平均分子量の測定
コラーゲンペプチドの平均分子量は、パギイ法により測定した。すなわち、高速液体クロマトグラフィーを用いて、試料をゲル濾過法によってクロマトグラムを求め、分子量分布を推定した。具体的には、以下のとおりである。
【００３１】
（１）検液の調製
ｉ）試料０．２ｇを１００ｍＬメスフラスコに量り取り、溶離液（０．１ｍｏｌ／Ｌリン酸二水素カリウム溶液と、０．１ｍｏｌ／Ｌリン酸水素二ナトリウム溶液の等量混合液）を加え、１時間膨潤させた後、４０℃で６０分間加温して溶解した。室温まで冷却後、溶離液を標線まで加えた。
ii）得られた溶液を溶離液で正確に１０倍希釈し、検液とした。
iii）検液は、使用直前に孔径０．４５μｍのメンブランフィルターで濾過した。
【００３２】
（２）測定操作
ｉ）以下の条件で、ゲル濾過法によってクロマトグラムを求めた。
カラム：Ｓｈｏｄｅｘ Ａｓａｈｉｐａｋ ＧＳ ６２０ ７Ｇ を２本直列
溶離液の流速：１．０ｍＬ／ｍｉｎ
カラムの温度：５０℃
試料の注入量：１００μＬ
検出方法：測定波長２３０ｎｍの吸光度
ii）保存時間を横軸にとり、対応した２３０ｎｍの吸光度値を縦軸にして、試料の分子分布曲線を作成し、平均分子量を算出した。分子量マーカーとしてβ−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミン、ヒトインシュリン、バシトラシン、グルタチオン及びグリシンの分子量（対数目盛）と溶出時間から得られた分子量分布の検量線から、分子量１０，０００、５，０００、１，０００、５００及び１００に相当する溶出時間を求めた。
【００３３】
２．非重合体カテキン類の測定
試料溶液をフィルター（０．４５μｍ）で濾過し、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム（Ｌ−カラムＴＭ ＯＤＳ、４．６ｍｍφ×２５０ｍｍ：財団法人 化学物質評価研究機構製）を装着した高速液体クロマトグラフ（型式ＳＣＬ−１０ＡＶＰ、島津製作所製）を用いて、カラム温度３５℃でグラジエント法により分析した。移動相Ａ液は酢酸を０．１ｍｏｌ／Ｌ含有する蒸留水溶液、Ｂ液は酢酸を０．１ｍｏｌ／Ｌ含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は２０μＬ、ＵＶ検出器波長は２８０ｎｍの条件で行った。
【００３４】
３．苦味の評価
５名のパネラーが下記の表１の硫酸キニーネの標準溶液を基準として各試験液の苦味レベルを官能試験し、その後各パネラーの評点の平均値を求めた。
【００３５】
【表１】
【００３６】
実施例１
市販のカテキン類製剤（ポリフェノン７０Ｓ、三井農林（株）製）と、表２に示す割合の苦味抑制剤を用いて、非重合体カテキン類濃度が０．１５質量％の飲料（硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度６）を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３７】
実施例２
苦味抑制剤を平均分子量３０００の豚皮由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３８】
実施例３
苦味抑制剤の配合量を変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００３９】
比較例１
苦味抑制剤を平均分子量５０００の豚皮由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４０】
比較例２
苦味抑制剤を平均分子量３０００の魚由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４１】
比較例３
苦味抑制剤を平均分子量５０００の魚由来コラーゲンペプチドに変更したこと以外は、実施例１と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料について、ゼラチン味及びゼラチン臭の有無、苦味について官能試験を行った。それらの評価結果を表２に併せて示す。
【００４２】
【表２】
【００４３】
実施例４
市販のカテキン類製剤（ポリフェノン７０Ｓ、三井農林（株）製）と、表３に示す割合の苦味抑制剤を用いて、非重合体カテキン類濃度が０．０９質量％の飲料（苦味強度５．５）を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４４】
比較例４
苦味抑制剤を表３に示す割合のβ−サイクロデキストリンに変更したこと以外は、実施例４と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４５】
比較例５
苦味抑制剤を表３に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例４と同様の操作にて飲料を調製した。次いで、得られた飲料の苦味について官能試験を行った。その結果を表３に併せて示す。
【００４６】
【表３】
【００４７】
実施例５
０．００２３０Ｍの硫酸キニーネの標準溶液中（苦味強度５）に、表４に示す割合の苦味抑制剤を配合して試験液を調製した後、官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００４８】
実施例６
苦味抑制剤の配合量を変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００４９】
比較例６
苦味抑制剤を表４に示す割合のβ−サイクロデキストリンに変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５０】
比較例７
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５１】
比較例８
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５２】
比較例９
苦味抑制剤を表４に示す割合の環状オリゴ糖に変更したこと以外は、実施例５と同様の操作にて試験液を調製した。次いで、得られた試験液の苦味について官能試験を行った。その結果を表４に併せて示す。
【００５３】
【表４】
【００５４】
表２〜４から、所定の平均分子量を有する哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする苦味抑制剤を含有せしめることで、苦味が顕著に抑制されることが確認された。また、実施例５と比較例９との対比から、本願発明の苦味抑制剤は、従来の苦味抑制剤に比べて、極めて少ない添加量で苦味を十分抑制できることがわかった。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤。
【請求項２】
前記コラーゲンペプチドが豚皮由来のものである、請求項１記載の苦味抑制剤。
【請求項３】
硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下である苦味を抑制するためのものである、請求項１又は２記載の苦味抑制剤。
【請求項４】
苦味を有する組成物に、請求項１〜３のいずれか一項に記載の苦味抑制剤を添加する、苦味を有する組成物の苦味抑制方法。
【請求項５】
前記苦味の強度が硫酸キニーネの標準溶液を基準として７以下である、請求項４記載の苦味抑制方法。
【請求項６】
前記組成物中の前記苦味抑制剤の添加量が０．００１〜０．０８質量％である、請求項５記載の苦味抑制方法。
【請求項７】
０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）、及び
請求項１〜３のいずれか一項に記載の苦味抑制剤（Ｂ）
を含有する、飲料。
【請求項８】
前記苦味成分（Ａ）と、前記苦味抑制剤（Ｂ）との含有質量比[（Ｂ）／（Ａ）]が０．０１〜０．２である、請求項７記載の飲料。
【請求項１】
平均分子量が５００〜４５００であり、かつ哺乳類由来のコラーゲンペプチドを有効成分とする、苦味抑制剤。
【請求項２】
前記コラーゲンペプチドが豚皮由来のものである、請求項１記載の苦味抑制剤。
【請求項３】
硫酸キニーネの標準溶液を基準とする苦味強度が７以下である苦味を抑制するためのものである、請求項１又は２記載の苦味抑制剤。
【請求項４】
苦味を有する組成物に、請求項１〜３のいずれか一項に記載の苦味抑制剤を添加する、苦味を有する組成物の苦味抑制方法。
【請求項５】
前記苦味の強度が硫酸キニーネの標準溶液を基準として７以下である、請求項４記載の苦味抑制方法。
【請求項６】
前記組成物中の前記苦味抑制剤の添加量が０．００１〜０．０８質量％である、請求項５記載の苦味抑制方法。
【請求項７】
０．０５〜０．８質量％の苦味成分（Ａ）、及び
請求項１〜３のいずれか一項に記載の苦味抑制剤（Ｂ）
を含有する、飲料。
【請求項８】
前記苦味成分（Ａ）と、前記苦味抑制剤（Ｂ）との含有質量比[（Ｂ）／（Ａ）]が０．０１〜０．２である、請求項７記載の飲料。
【公開番号】特開２０１１−１５６３２（Ｐ２０１１−１５６３２Ａ）
【公開日】平成２３年１月２７日（２０１１．１．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００９−１６１７９４（Ｐ２００９−１６１７９４）
【出願日】平成２１年７月８日（２００９．７．８）
【出願人】（００００００９１８）花王株式会社 (8,290)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１月２７日（２０１１．１．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２１年７月８日（２００９．７．８）
【出願人】（００００００９１８）花王株式会社 (8,290)
【Ｆターム（参考）】
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