説明

茶の製造方法

(i)茎および葉物質を含む茶植物物質源を回収する工程;(ii)葉物質から茎物質を物理的に分離し、茎が豊富な葉植物源を供給する工程;ならびに、(iii)乾燥、浸漬、破砕、蒸気処理、発酵、火入れおよび煎出から選択される、少なくとも1つの一般的な茶製造の単位操作で、茎源を処理する工程:
を含む方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸が豊富な茶または茶抽出物の製造方法に関する。特に、テアニンが豊富な茶または茶抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
茶は、一般的に、緑茶(green leaf tea)または紅茶(black leaf tea)として製造される。このような茶を製造する方法は、当業者に良く知られている。一般的に、紅茶を製造するために、植物Camellia sinensisの新鮮な緑葉を乾燥させ(穏やかに乾燥させる)、細かく砕き、発酵させ(この方法においては、葉茶中の酵素が、大気下の酸素を使用して、様々な基質を酸化して褐色の生成物を生じさせる)、その後、火入れを行う(茶葉を乾燥させる)。緑茶は、発酵工程を行わない。部分的な発酵を使用し、「ウーロン」茶として知られる中間タイプの茶を製造することができる。通常、茶植物の上部の大半のうちの一部を回収し、この回収には、芽とともに多くの葉(通常2から7枚まで)を摘むことが含まれる。必然的に、幾つかの茎物質も摘まれる。この茎物質は、茶製造者にとっては問題であるとみなされている。なぜならば、消費者は、加工された大きな葉を見るのを好み、繊維質の茎物質を見るのを好まないからである。それゆえ、幾つかの工程で、その方法から茎を取り除くことは通常実施されていることである。唯一、より安価な茶において、茎物質は通常含まれている。
【0003】
現在、茶に基づく飲料は、温水中で葉を煎出する以外の方法で製造することができ、そして、ティーポットから注ぎ込む以外の方法で提供することができる。例えば、自動販売機においては、温水と混合させる濃縮物または粉末から調製することができ、または、カンおよびボトルにおいては、レディ・トゥ・ドリンクの茶を調製するために使用することができる。消費者は、また、促進された煎出、より色が濃い、より香り高いなどの、茶に由来するより多くのものを求めている。
【特許文献1】GB 893 551
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、現在の消費者は、現在の健康なライフスタイルの一部を形成する、自然で健康な飲料に興味を有している。飲料としては、茶は、自然に由来する内容物(とりわけ、フラボノイド、カテキンおよびアミノ酸)の観点から、この姿勢に合致する。それ故、この業界においては、合成化合物を添加することなしに、茶の健康な特性を維持したまま、これらの天然に存在する健康成分を濃縮する方法を提供することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願人は、驚くべきことに、茶植物camelia sinensisの茎物質が、葉物質よりも高い濃度のアミノ酸を含むことを発見した。それゆえ、適切な茶製造方法を使用することによって、天然に存在するアミノ酸の含量を、茎物質の選択的な加工により増加させることができる。
【0006】
GB 893 551により、葉茶の品質を改善することを目的として、葉物質から茎物質を機械的に分離することが知られている。しかしながら、この場合は、茎は不要物とみなされ、廃棄されている。
【0007】
それゆえ、第一の態様においては、本発明は、茎および葉物質を含む茶植物物質源を回収する工程;葉物質から茎物質を物理的に分離し、茎が豊富な茶植物源を供給する工程;ならびに、乾燥、浸漬、破砕、蒸気処理、発酵、火入れおよび煎出から選択される、少なくとも1つの一般的な茶製造の単位操作で、茎源を処理する工程を含む方法を提供する。
【0008】
第二の態様においては、本発明は、少なくとも50重量%の茎植物物質を含む紅茶を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書においては、用語「茎」は、葉の部分ではない細長い茶植物物質を意味する。
【0010】
本発明の方法は、葉物質から茎物質を物理的に分離する工程、および、その後に行う、茎物質を加工し、最終的にその中に存在するアミノ酸および他の茶固形分を得る工程を含む。
【0011】
好ましくは、葉茶は、通常、乾燥、浸漬、発酵、火入れの工程を含む一般的な紅茶製造方法において加工される。
【0012】
(物理的な分離)
葉および茎の物理的な分離は、第一の工程として実施されることが好ましいが、葉および茎の物理的分離は、乾燥後または発酵後でさえも、実施することができる。
【0013】
分離は、多くの方法(例えば手により)達成することができる。しかしながら、この工程は、例えばGB 893 551に記載されているように、機械によって実施することが好ましい。このような機械は、茎および葉を含む摘んだ茶植物物質を打ちつける工程に続く、次々と落下する打ちつけた物質に空気を噴きつけ、1つは茎が豊富で、もう1つは葉が豊富な2つの流れを提供する工程によって作動させることができる。
【0014】
物理的分離工程により、茎物質が豊富な茶植物源、すなわち、新鮮な葉を単に摘むことによって得られるよりも多い茎を含む茶植物源が提供される。
【0015】
(茎物質の加工)
本発明の方法においては、茎物質は、好ましくは、あたかも葉茶のように、加工される。このようにして、茎物質は、少なくとも1つの以下の茶製造の単位操作:乾燥、浸漬、破砕、蒸気処理、発酵、火入れおよび煎出に供する。
【0016】
好ましくは、茎物質を発酵させ、発酵を止めるために火入れを行う。好ましくは、葉物質は、通常、加工されて紅茶を産生する。
【0017】
1つの特定の好ましい方法においては、加工された茎物質を、葉物質と組み合わせる。この葉物質は、工程(i)において茎から物理的に分離された葉物質とすることができる。この場合、この再度組み合わせることは、一般的な茶製造方法における任意の適切な段階で実施することができるが、好ましくは、いったん葉および茎の両方が加工されてから、再度組み合わせる。
【0018】
好ましくは、茎物質は、物質的に茎に似ていないように物理的構造を変化させる工程で処理する。
【0019】
好ましくは、また、葉物質を一般的に加工して、葉茶を製造する。
【0020】
処理された茎源は、好ましくは、少なくとも2重量%のテアニンを含む。
【0021】
(茎物質の煎出)
好ましい加工においては、茎物質を、茎固形分およびアミノ酸を抽出するために、水中で煎出させる。好ましくは、茎物質は、煎出前に、少なくとも発酵させる。
【0022】
茎物質の煎出は、単純な抽出方法または酵素を補助的に使用した抽出方法のいずれかを使用して、調製することができる。
【0023】
茎物質は、好ましくは、望ましい温度で、抽出機内で水と混ぜ合わせ、抽出された茶物質および固体茶物質を含む茶煎出スラリーを得る。1つの好ましい方法においては、煎出は、相対的に低温の水内で、すなわち、50℃より低い水内で実施する。煎出後、固体茶成分を、例えばろ過および/または遠心分離により、茶煎出物から分離する。
【0024】
酵素を補助的に使用した抽出を行う場合は、抽出機への酵素混合物の形態での酵素の添加が必要であるか、または、酵素を、単独に抽出機に供給することができる。例えば、セルラーゼおよびマスセラーゼを含むカルボハイドラーゼ(例えば、NOVO industri A/S Denmarkから入手可能なViscozyme L(商標))などの選択された細胞壁融解物酵素を含む酵素混合物を使用することができる。酵素を含む茶スラリーを、その後、熱抽出し、煎出工程を完全に行い、前記したように、固体茶物質を茶抽出物から分離させる。茶抽出物を、その後、好ましくは低温殺菌し、酵素を不活性化させる。
【0025】
その後、得られた茶煎出物を濃縮してもよく、その後、冷却し、遠心分離またはろ過等の他の浄化方法により精製する。精製後、抽出物は、例えば真空下濃縮により、または、薄膜降下式蒸発により濃縮し、そして、例えばスプレードライにより乾燥させて、本発明に使用するための茶粉末を得る。
【0026】
好ましい実施態様においては、葉中の茶固形物およびアミノ酸の含量を増加させるために、別個に製造した葉茶に、抽出物を加える。もしも実施するならば、茎茶固形物およびアミノ酸の添加は、好ましくは、葉茶が最終的に製造される紅茶状態である場合に、実施される。葉茶は、機械的に茎から分離された葉茶とすることができる。
【0027】
(製茶)
本発明により、茶に由来するアミノ酸が豊富である様々な製茶が可能となる。
【0028】
本発明の1つの態様においては、高いレベルの茎植物物質を含む茶が提供される。それゆえ、少なくとも50重量%の茎物質を含む紅茶が可能となる。好ましくは、製造した紅茶は、少なくとも70重量%の茎物質、より好ましくは本質的に100%の茎物質を有する。
【0029】
他の態様においては、紅茶は、葉に付加された、茶に由来するテアニンのレベルが増す。
【実施例】
【0030】
摘んだ茶のサンプルを、ケニアの茶農園から入手した。頂点から四番目の葉のちょうど下で植物茎を切断することによって、茶を摘み、「4枚の葉および芽(four leaves and a bud)」として知られているカットを得た。その後、サンプルを手により、葉部分と茎という異なるカテゴリーへと物理的に分類した。その後、葉および茎物質を、テアニン(茶中の利用可能な主要成分のアミノ酸)の濃度について分析した。
【0031】
以下の結果が得られた。
【0032】
【表1】

【0033】
茎物質は、一般的な紅茶加工に従い、乾燥させ、CTC(押し潰す-引き裂く-丸める(crush-tear-curl))によって浸漬させ、その後発酵させてから、発酵を停止させるために火入れを行った。その後、得られた発酵させた茎物質を、温水内で煎出し、アミノ酸豊富な煎出物を得た。これを濃縮し、一般的な紅茶にスプレーすることにより、茶に由来する完全に天然源であるアミノ酸レベルが増大した葉茶が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)茎および葉物質を含む茶植物物質源を回収する工程;
(ii)葉物質から茎物質を物理的に分離し、茎が豊富な茶植物源を供給する工程;
(iii)乾燥、浸漬、破砕、蒸気処理、発酵、火入れおよび煎出から選択される、少なくとも1つの一般的な茶製造の単位操作で、茎源を処理する工程:
を含む方法。
【請求項2】
前記の工程(iii)が、茎物質の発酵および火入れを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の葉物質が、通常に加工されて、紅茶を製造する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記の工程(iii)に続き、葉物質と加工した茎とをブレンドする工程を実施する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記の葉物質が、工程(i)において茎から物理的に分離した葉物質である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の葉物質が、通常に加工されて、葉茶を製造する、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記の工程(iii)が、茎物質から茶固形物を煎出する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記の抽出した茎茶固形物を、葉茶に添加する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出した茎茶固形物を、発酵して乾燥させた紅茶に添加する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記の茶固形物を添加した葉茶が、茎物質から機械的に分離された葉物質から調製された茶を含む、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記の回収した茶植物物質を、機械的な分離の前に乾燥させる、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記の処理した茎源が、少なくとも2重量%のテアニンを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも50重量%の茎植物物質を含む紅茶。
【請求項14】
少なくとも70重量%の茎植物物質を含む、請求項13に記載の紅茶。
【請求項15】
本質的に100%の茎物質を含む、請求項14に記載の紅茶。

【公表番号】特表2008−510472(P2008−510472A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528666(P2007−528666)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008494
【国際公開番号】WO2006/021317
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(590003065)ユニリーバー・ナームローゼ・ベンノートシヤープ (494)
【Fターム(参考)】