説明

茶抽出物の精製方法

【課題】茶抽出物を効率よく高度に清澄化する精製方法を提供すること。
【解決手段】茶抽出物を温度30〜100℃に調整し、次いでこれをメジアン径1〜200μmの微細気泡と接触させ、次いで液表面に形成された泡の層を除去する、茶抽出物の精製方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶抽出物の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
消費者の嗜好の多様化や健康志向の高揚により、茶系飲料の需要が増大している。茶系飲料は、通常茶から得られた茶抽出物を配合して製造されているが、配合する茶抽出物中のタンニン濃度により風味バランスが崩れたり、茶抽出物中の茶成分の凝集等により濁りが発生して商品価値を損ねることがあった。
【0003】
従来、茶抽出液の風味を改善する方法として、例えば、茶葉から得た茶抽出液に室温で窒素を注入してバブリングを行い、更に攪拌して起泡させ、茶抽出液表面に形成された泡を除去する方法が提案されている(特許文献1)。また、清澄度の高い茶抽出物の製造方法として、茶葉から得た茶抽出液をゼータ膜で処理し、0.03程度の濁度に精製した茶抽出物を含む溶液内にメジアン径1〜200μmの気泡を放出し、次いで液表面に形成された泡の層を除去する方法が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−176761号公報
【特許文献2】特開2008−113621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は風味バランスの改善に有効であるが、清澄度の向上が不十分であった。また、特許文献2に記載の方法は清澄度の高い茶抽出物が得られるものの、高度に清澄化するには長時間を要するため、製造効率の点で改善の余地がある。
したがって、本発明の課題は、茶抽出物を効率よく高度に清澄化する精製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者は、茶抽出物の清澄度を向上させる手段について種々検討した結果、茶抽出物の温度を一定に制御し、これを微細気泡と接触させ、液表面に形成された泡の層を除去することで、高度に清澄化された精製茶抽出物が効率よく得られることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、茶抽出物を温度30〜100℃に調整し、次いでこれをメジアン径1〜200μmの微細気泡と接触させ、次いで液表面に形成された泡の層を除去する、茶抽出物の精製方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、茶抽出物を簡便な操作により効率よく高度に清澄化することが可能であり、しかも苦渋味の低減された風味の良好な精製茶抽出物とすることができる。このように、本発明の精製方法により得られた精製茶抽出物は、清澄度が高く、かつ風味が良好であるので、茶系飲料及びスポーツドリンク等の非茶系飲料の原料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の精製方法に適用可能な精製装置の一例を示す模式図である。
【図2】処理時間と、精製前後の茶抽出物の濁度の比(精製後/精製前)との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の精製方法について具体的に説明する。
先ず、茶抽出物を準備する。茶抽出物としては、茶抽出液又はその濃縮物が例示され、これらは混合して使用してもよい。
ここで、茶抽出液とは、茶から熱水又は水溶性有機溶媒を用いてニーダー抽出やカラム抽出等により抽出したものであって、濃縮や精製操作が行われていないものをいう。なお、茶の抽出の際には、酸化安定性の観点から、抽出溶媒にあらかじめアスコルビン酸ナトリウムなどの有機酸類の塩を添加することができる。また、煮沸脱気や窒素ガス等の不活性ガスを通気して溶存酸素を除去しつつ、いわゆる非酸化的雰囲気下で抽出する方法も併用してもよい。
【0011】
抽出に使用する茶としては、例えば、Camellia属、例えば、C.var.sinensis(やぶきた種を含む)、C.var.assamica及びそれらの雑種から選択される茶樹が例示される。茶は、その加工方法により、不発酵茶、半発酵茶、発酵茶に大別することができる。不発酵茶としては、例えば、煎茶、番茶、碾茶、釜入り茶、茎茶、棒茶、芽茶等の緑茶が例示される。また、半発酵茶としては、例えば、鉄観音、色種、黄金桂、武夷岩茶等の烏龍茶が例示される。更に、発酵茶としては、ダージリン、アッサム、スリランカ等の紅茶が例示される。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0012】
また、茶抽出液の濃縮物とは、茶から熱水又は水溶性有機溶媒により抽出した抽出液から溶媒を一部除去してタンニン濃度を高めたものをいい、例えば、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報等に記載の方法により調製することができる。ここで、タンニンとは、非重合体カテキン類、そのエステル誘導体(例えば、没食子酸エステル)及びそれらの縮合物を包含する概念である。
茶抽出液の濃縮物として市販品を使用してもよく、例えば、三井農林(株)の「ポリフェノン」、伊藤園(株)の「テアフラン」、太陽化学(株)の「サンフェノン」等の緑茶抽出物の濃縮物が例示される。茶抽出物の濃縮物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等の種々のものが例示される。
【0013】
本発明で使用する茶抽出物としては、緑茶抽出液及びその濃縮物から選択される少なくとも1種の緑茶抽出物が好ましい。
【0014】
また、本発明においては、茶抽出物として、茶抽出液をそのまま使用しても、茶抽出液及び/又は茶抽出液の濃縮物を、必要により濃縮又は水希釈して使用してもよい。なお、茶抽出後において、例えば、茶から得た茶抽出液を、茶葉と分離するためにパンチングメタルや100メッシュ程度の金網で濾過しても、茶由来の微粒子を除去するために目開き5μm程度のフィルタで濾過してよい。
【0015】
このように、本発明で使用する茶抽出物は、高度に精製することを要さず、清澄度の低い茶抽出物をも使用することが可能である。茶抽出物の濁度(OD660nm)としては、好ましくは0.015〜0.6、より好ましくは0.02〜0.45、特に好ましくは0.05〜0.4である。なお、本明細書において「濁度」は、後掲の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0016】
また、茶抽出物として、タンナーゼ等の酵素で処理したものを使用してもよい。ここで、「タンナーゼ処理」とは、茶抽出液及び/又はその濃縮物を、タンナーゼ活性を有する酵素と接触させることをいう。なお、タンナーゼ処理における具体的な操作方法は公知の方法を採用することが可能であり、例えば、特開2004−321105号公報に記載の方法が例示される。
【0017】
茶抽出物中のタンニン濃度は特に限定されないが、好ましくは10〜500mg/100mL、より好ましくは20〜400mg/100mL、特に好ましくは30〜350mg/100mLである。
また、茶抽出物のBrixも特に限定されないが、0.05〜5%、より好ましくは0.15〜3.5%、特に好ましくは0.4〜3%である。
なお、本明細書において「タンニン濃度」及び「Brix」は、後掲の実施例に記載の方法により測定した値である。
【0018】
準備した茶抽出物の温度を調整する。茶抽出物の温度は30〜100℃であるが、清澄度及び風味向上の観点から、好ましくは30〜90℃、より好ましくは35〜80℃、更に好ましくは40〜70℃、特に好ましくは50〜70℃である。なお、温度の調整方法として、例えば、高温のイオン交換水で茶抽出物を希釈する方法、茶抽出物を加熱する方法が挙げられる。茶抽出物を加熱するために、例えば、図1に示す処理槽12に加温手段又は保温手段を設けてもよい。
【0019】
また、本発明においては、茶抽出物の温度調整とともに、pHを調整してもよい。茶抽出物のpH(20℃、以下同様)は、好ましくは5.5以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは4.5以下、特に好ましくは4以下である。このように茶抽出物のpHを5.5以下とすることで、茶抽出物中の濁り成分等が微細気泡の表面に電気的に吸着されやすくなる。なお、pHの下限は装置の部材が腐食しなければ特に限定されず、部材の材質により適宜決定することが可能である。例えば、部材がチタン等の耐食性材質である場合、好ましくはpH2であり、またSUS等の比較的耐酸性の低い材質である場合、好ましくはpH2.8、特に好ましくは3である。なお、pH調整には、無機酸及び/又は有機酸を使用することが可能であり、例えば、塩酸やアスコルビン酸が好適に使用される。
【0020】
次に、温度調整された茶抽出物と、メジアン径1〜200μmの微細気泡とを接触させる。これにより、微細気泡は茶抽出物中の濁り成分や苦渋味成分を吸着して液表面に浮上し、泡の層を形成する。その結果、茶抽出物は高度に清澄化されると共に、苦味及び渋味が低減されてすっきりとした味わいを有する精製茶抽出物となる。
【0021】
茶抽出物と、微細気泡を接触させるには、茶抽出物中に微細気泡を放出すればよい。微細気泡の発生手段としては、上記粒径の気泡を発生できれば特に限定されないが、例えば、加圧溶解法、旋回法、衝撃波法、細孔法、剪断法、超音波法が例示され、市販の微細気泡発生装置を使用することができる。
ここで、加圧溶解法とは、加圧下で液体に気体を溶解させ、その後減圧開放させて微細気泡を発生させる方法である。図1を参照しつつ、より具体的に説明すると、気体導入管19から供給した気体をポンプ18により吸引し、その気体を気液溶解手段16内で茶抽出物13に加圧条件下で溶解させた後、減圧開放して微細気泡発生ノズル17から微細気泡14を処理槽12内の茶抽出物13中に放出させる方法である。また、旋回法とは、気泡と水との旋回流により空洞を発生させ、その空洞前後の旋回流差で微細気泡を発生させる方法である。衝撃波法とは、狭路部に気体を供給し、その狭路部に衝撃波(キャビテーション)を与えることにより、微細気泡を発生させる方法である。細孔法とは、フィルタやシラス多孔質ガラス膜の微細孔から気体を高圧で押し出し微細気泡を発生させる方法である。剪断法とは、水ジェット等の機械的揃断力を与えることにより、微細気泡を発生させる方法である。超音波法とは、超音波場の水中に、細い針先から気体を供給することにより、微細気泡を発生させる方法である。
中でも、加圧溶解法が微細気泡の生成量が最も多い点で特に好ましい。
【0022】
接触させる気泡のメジアン径は1〜200μmであるが、清澄度向上、気泡の安定性及び粒子径制御の観点から、好ましくは1〜150μm、より好ましくは1〜100μm、更に好ましくは5〜100μm、特に好ましくは5〜60μmである。なお、「メジアン径」は、レーザー回折法(島津製作所製SALD−7100など)を用いてバッチセルで測定することができる。
【0023】
放出する気体の種類は特に限定されないが、酸素による品質劣化を防止するために、二酸化炭素、窒素、その他の不活性ガスを含むことが好ましい。中でも、窒素は、茶抽出物中の成分との反応性が低く、かつ溶解度が低く残存しない点で特に好ましい。気体中の窒素濃度は、95体積%以上がよい。
【0024】
放出する気体の体積は、精製効率の観点から、茶抽出物に対する25℃、1気圧での換算値として、好ましくは0.1〜10体積%、更に好ましくは0.2〜7体積%、特に好ましくは0.2〜5体積%である。また、茶抽出物中の気泡の数密度は、好ましくは102〜106個/cm3、更に好ましくは103〜105個/cm3である。なお、気泡の数密度は、パーティクルカウンター(RION製KS−17A)などで測定することができる。
【0025】
茶抽出物と微細気泡との接触時間は、より一層の清澄度向上の観点から、好ましくは20〜120分、より好ましくは30〜90分、特に好ましくは40〜60分である。
【0026】
気泡の放出位置は、茶抽出物と微細気泡との接触効率の観点から、図1に示す処理槽12の底部付近が好ましい。
【0027】
本発明においては、茶抽出物と、微細気泡を接触させる際に、両者を攪拌接触させてもよい。攪拌接触は、攪拌翼を有する攪拌機等の攪拌手段を用いて行うことができる。攪拌翼の種類は特に限定されず、例えば、パドル翼、タービン翼、プロペラ翼、アンカー翼等を使用することができる。翼枚数は適宜選択することが可能である。また、翼径は、図1に示す処理槽12の内径に対して好ましくは50〜80%程度である。更に、攪拌翼の設置位置は特に限定されず、液相を十分に攪拌できる場所に設置すればよい。
【0028】
本発明においては、図1に示す処理槽12内に邪魔板を配置してもよく、更には完全邪魔板状態としてもよいが、より一層の清澄度向上及び風味の観点から、穏やかな攪拌条件とすることが好ましい。具体的には、攪拌条件として、茶抽出物の攪拌レイノルズ数(攪拌Re)を、好ましくは2300〜60000、より好ましくは2300〜50000、更に好ましくは2300〜45000、特に好ましくは4000〜40000とすることが挙げられる。
【0029】
次に、液表面に形成された泡の層を除去する。泡の層の除去方法としては、例えば、フィルタ濾過、遠心分離、気泡のバキューム等の操作を採用できる。また、簡便な操作として、液表面に形成された泡の層だけを残すように、図1に示す処理槽12の下方の排出管22から精製茶抽出物を排出する方法が例示される。
【0030】
また、浮上分離時において、上記した加温手段又は保温手段により、液温を制御してもよい。
【0031】
このようにして得られた精製茶抽出物は、精製後の茶抽出物の濁度と、精製前の茶抽出物の濁度との比(精製後/精製前、「精製前後の濁度比」とも称する)を好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下、特に好ましくは0.45以下とすることができる。なお、濁度の比の下限は、特に限定されない。
【0032】
また、得られた精製茶抽出物は、清澄度が高いだけでなく、苦渋味が顕著に低減されている。そのため、本発明の精製茶抽出物は、そのまま、又は必要により希釈若しくは濃縮して飲料とすることができる。
【0033】
飲料としては、例えば、茶系飲料、非茶系飲料が例示される。茶系飲料としては、例えば、緑茶飲料、烏龍茶飲料、紅茶飲料が例示される。また、非茶系飲料としては、清涼飲料(例えば、果汁ジュース、野菜ジュース、スポーツ飲料、アイソトニック飲料)、コーヒー飲料、栄養ドリンク剤、美容ドリンク剤等の非アルコール飲料、ビール、ワイン、清酒、梅酒、発泡酒、ウィスキー、ブランデー、焼酎、ラム、ジン、リキュール類等のアルコール飲料が例示される。
【0034】
飲料には、酸化防止剤、香料、有機酸、有機酸塩、無機酸、無機酸塩、無機塩、色素、乳化剤、保存料、調味料、甘味料、酸味料、ガム、油、ビタミン、アミノ酸、果汁エキス、野菜エキス、花蜜エキス、pH調整剤、品質安定剤等の添加剤を単独で、あるいは併用して配合してもよい。
【0035】
飲料中のタンニン濃度は、風味の観点から、当該飲料100mL当たり60〜500mg、更に好ましくは80〜500mg、特に好ましくは100〜400mgである。
【0036】
飲料のpH(20℃)は、風味及びタンニンの安定性の観点から、好ましくは2〜7、特に好ましくは2〜6.5である。
【0037】
飲料は、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の包装容器に充填して提供することができる。
【0038】
また、容器詰した飲料は、例えば、金属缶のような容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた殺菌条件で製造できる。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用できる。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。さらに、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻すなどの操作も可能である。
【実施例】
【0039】
(1)タンニンの測定
各緑茶抽出物又は精製緑茶抽出物中のタンニン量の測定は酒石酸鉄法により、標準液として没食子酸エチルを用い、没食子酸の換算量として求めた(参考文献:「緑茶ポリフェノール」飲食料品用機能性素材有効利用技術シリーズNo.10)。試料5mLを酒石酸鉄標準溶液5mLで発色させ、リン酸緩衝液で25mLに定溶し、540nmで吸光度を測定し、没食子酸エチルによる検量線からタンニン量を求めた。
酒石酸鉄標準液の調製:硫酸第一鉄・7水和物100mg、酒石酸ナトリウム・カリウム(ロッシェル塩)500mgを蒸留水で100mLとした。
リン酸緩衝液の調製:1/15mol/Lリン酸水素二ナトリウム溶液と1/15mol/Lリン酸二水素ナトリウム溶液を混合しpH7.5に調整した。
【0040】
(2)濁度の測定
各緑茶抽出物又は精製緑茶抽出物をタンニン濃度65mg/100mLとなるようにイオン交換水で希釈した後、濁度計(U-2010 HITACHI社製)を用いて、波長660nm、90°透過散乱比較方式で20℃にて測定した。
【0041】
(3)Brixの測定
各緑茶抽出物又は精製緑茶抽出物について、糖度計((株)アタゴRX−5000α−Bev)を用いて20℃にてBrix測定した。
【0042】
(4)官能評価
各精製緑茶抽出物をタンニン濃度65mg/100mLとなるようにイオン交換水で希釈した後、渋味及び苦味についてパネラー5名により下記の基準で評価し、その後協議により最終スコアを決定した。
【0043】
渋味の評価基準
各精製緑茶抽出物の渋味について、比較例1の緑茶抽出物(タンニン濃度65mg/100mL)の渋味を評点5(基準)として、0〜10の11段階で評価した。数値が低いほど渋味が弱く、数値が高いほど、渋味を強く感じることを意味する。
【0044】
苦味の評価基準
各精製緑茶抽出物の苦味について、比較例1の緑茶抽出物(タンニン濃度65mg/100mL)の苦味を評点5(基準)として、0〜10の11段階で評価した。数値が低いほど苦味が弱く、数値が高いほど、苦味を強く感じることを意味する。
【0045】
実施例1
緑茶葉0.35kgに65℃の熱水10.5kgを投入し、30秒間手で攪拌して1分30秒間静置し、次いで10秒間手で攪拌して2分50秒間静置し、次いで120メッシュの金網で濾過し、更に目開き5μmのフィルタで濾過し、そして25℃まで冷却して緑茶抽出液を得た。
得られた緑茶抽出液に、90℃のイオン交換水を混合して、55℃の緑茶抽出物20kgを得た。得られた緑茶抽出物は、タンニン濃度が130mg/100mL、濁度(OD660)が0.071、Brixが0.48%であった。
以下、緑茶抽出物の精製は、図1に示す茶抽出物精製装置を使用した。先ず、55℃の緑茶抽出物20Lを、処理槽12(高さ1000mm×内径160mm)に投入し、55℃に保持した。次いで、緑茶抽出物を渦流ポンプ18(M20LD、(株)ニクニ製)により気液溶解手段16に移送した。次いで、気体導入管19から0.5L/minの速度で供給された窒素を、緑茶抽出物中に窒素溶解圧力0.4MPaにて溶解(加圧溶解法)した後、未溶解の窒素を気液分離手段20の気体排出管21から除去した。そして、窒素を溶解した緑茶抽出物を減圧開放して微細気泡発生ノズル17から微細気泡14(メジアン径50μm)を、処理槽12内の緑茶抽出物中に放出した。なお、緑茶抽出物は、速度10L/minで循環させた。
製造開始から20分経過後及び30分経過後に液相をサンプリングして濁度を測定した。製造開始から60分経過後に液表面に浮上した気泡を除去し、得られた精製緑茶抽出物の濁度を測定した。得られた精製緑茶抽出物の分析結果及び官能評価の結果を表1に示す。なお、表1中、A0は精製前の緑茶抽出物の濁度を示し、A20、A30及びA60は製造開始からそれぞれ20分、30分及び60分経過後の緑茶抽出物の濁度を示す。また、B0は精製前の緑茶抽出物のBrixを示し、B60は製造開始から60分経過後の緑茶抽出物のBrixを示す。更に、処理時間に対する精製前後の濁度比(精製後/精製前)の変化を表2に示す。
【0046】
実施例2
緑茶抽出物の温度を45℃に調整したこと以外は、実施例1と同様の操作により精製緑茶抽出物を得た。得られた精製緑茶抽出物の分析結果及び官能評価の結果を表1に示す。また、処理時間に対する精製前後の濁度比(精製後/精製前)の変化を表2に示す。
【0047】
比較例1
実施例1と同様の操作により得られた緑茶抽出液を、イオン交換水で20kgにメスアップして25℃の緑茶抽出物を得た。この緑茶抽出物を分析し、官能評価を行った。その結果を表1に示す。
【0048】
比較例2
緑茶抽出物の温度を25℃に調整したこと以外は、実施例1と同様の操作により精製緑茶抽出物を得た。得られた精製緑茶抽出物の分析結果及び官能評価の結果を表1に示す。また、処理時間に対する精製前後の濁度比(精製後/精製前)の変化を図2に示す。
【0049】
比較例3
緑茶抽出物の温度を10℃に調整したこと以外は、実施例1と同様の操作により精製緑茶抽出物を得た。得られた精製緑茶抽出物の分析結果及び官能評価の結果を表1に示す。また、処理時間に対する精製前後の濁度比(精製後/精製前)の変化を図2に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より、茶抽出物を温度30〜100℃に調整し、これを微細気泡と接触させ、液表面に形成された泡の層を除去することで、高度に清澄化されるとともに、渋味及び苦味が低減されてすっきりとした味わいを有する精製茶抽出物が得られることが確認された。また、実施例1及び2と、比較例2及び3との対比から、実施例1及び2の精製方法は、比較例2及び3に対して半分の精製時間で茶抽出物をより高度に清澄化できることがわかった。
【符号の説明】
【0052】
10 茶抽出物精製装置
11 微細気泡発生手段
12 処理槽
13 茶抽出物
14 微細気泡
15 泡の層
16 気液溶解手段
17 微細気泡発生ノズル
18 循環ポンプ
19 気体導入管
20 気液分離手段
21 気体排出管
22 排出管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶抽出物を温度30〜100℃に調整し、次いでこれをメジアン径1〜200μmの微細気泡と接触させ、次いで液表面に形成された泡の層を除去する、茶抽出物の精製方法。
【請求項2】
前記茶抽出物が緑茶抽出物である、請求項1記載の精製方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−182713(P2011−182713A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51908(P2010−51908)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】