説明

茶苗植装置、それを使用した茶苗の植付け方法、及び茶苗

【課題】本発明は、従来、製造、販売されていなかった茶苗専用の茶苗植装置を提供し、茶苗を植える重労働から作業者を解放することを課題としている。
【解決手段】本発明の第1手段は、茶苗を茶園へ植え付ける茶苗植付手段と、該茶苗植付手段へ茶苗を供給する茶苗供給手段と、植え付けた茶苗へ土をかける覆土手段と、前記茶苗供給手段に茶苗を補填するための作業台とより構成するとともに、アタッチメント取付部を有する乗用型茶園管理機のアタッチメント取付部に装着することを特徴とする茶苗植装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶樹の苗(以下、茶苗とする)を茶園に植え付ける装置、それを使用した茶苗の植付け方法、及び茶苗に関するものである。
【背景技術】
【0002】
茶園に茶苗を植え付ける場合、準備として、土を耕し、畝を作る。そして、茶苗をまっすぐ並べて植えるための印をつけ、その印に沿って植え付ける間隔を図り、茶苗の根が入る深さの穴を掘る。その中へ茶苗を垂直に入れ、穴の開いている部分へ土をかぶせ、上から軽く押さえ、水をかける。この作業を繰り返し行なう。一般的な茶園は、1畝に茶苗を2条、千鳥で植えてある。植え付ける間隔を測るための棒や、茶苗の根が入る深さの穴を掘るための道具などを工夫して、効率化を図っているが、大変な重労働であり、30メートルほどの畝、7〜8列へ植え付けるのに、作業者6人で約1日かかる。これは、約60センチメートル間隔で植えつけるとして、1畝に100本、全部で700〜800本の茶苗を1日で植え付けるものである。
【0003】
茶樹は1度植え付けると、30〜40年間、栽培する。以前は、摘採や施肥、防除などの管理を行なうために、作業者が歩いて茶園へ入っていたが、近年では、作業者が乗って茶園の摘採や施肥、防除などの管理を行なうための乗用型茶葉摘採機や乗用型茶園管理機が普及してきており、茶園そのものを乗用型茶葉摘採機や乗用型茶園管理機に合わせて、作り変えることが多くなっている。
【0004】
1年に何度も植え付け作業を行なう野菜等の場合、専用の苗植機が製造、販売され、一般に使用されている。しかし、前記したように、あまり改植をしない茶苗専用の茶苗植装置は、従来、製造、販売されていなかった。野菜等の畑は、比較的平らで、キレイに耕され、高さの高い畝をきれいに作ってあるが、茶園は傾斜地が多く、地面は略平らで、あまり高い畝を作らない。よって、野菜等の苗植え機では、特に走行体が適さず、傾斜地では導入できなかった。
【0005】
茶園においては、特許文献1のような汎用型の乗用型茶園管理機が開発されており、防除、施肥、剪枝、深耕などの装置をアタッチメントとして取り付けることにより、作業をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来、製造、販売されていなかった茶苗専用の茶苗植装置を提供し、茶苗を植える重労働から作業者を解放することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1手段は、茶苗を茶園へ植え付ける茶苗植付手段と、該茶苗植付手段へ茶苗を供給する茶苗供給手段と、植え付けた茶苗へ土をかける覆土手段と、前記茶苗供給手段に茶苗を補填するための作業台とより構成するとともに、アタッチメント取付部を有する乗用型茶園管理機のアタッチメント取付部に装着することを特徴とする茶苗植装置。本発明の第2手段は、前記第1手段において、前記アタッチメント取付部の上に前記作業台を載せ、固定具によって固定する。本発明の第3手段は、前記第1または2手段において、前記作業台を乗用型茶園管理機への固定部とし、前記茶苗植付手段と、前記茶苗供給手段と、覆土手段とを従動輪にて保持して、地面に追従して高さを一定に保つ茶苗植付部とするとともに、前記固定部と前記茶苗植付部とを回動軸を備えたアームによって接続する。
【0009】
本発明の第4手段は、前記第1、2または3手段において、前記乗用型茶園管理機の動力を利用して、駆動する。本発明の第5手段は、前記第1、2、3または4手段において、植え付けた茶苗への散水手段を設ける。本発明の第6手段は、前記第1、2、3、4または5手段において、電磁弁により茶苗への散水を制御する。本発明の第7手段は、前記第1、2、3、4、5または6手段において、茶苗植装置を使用して茶苗を植付ける、茶苗植付け方法。本発明の第8手段は、前記第7手段において、植付けに使用される茶苗。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、作業者は茶苗を植える重労働から解放される。特に、本発明の第1手段により、汎用性のある乗用型茶園管理機に取付けることができるため、茶苗を植える作業のための装置は安価となり、導入しやすくなる。本発明の第2手段により、茶苗植装置を乗用型茶園管理機に取付ける作業が容易である。本発明の第3手段により、茶苗植付部が地面に追従し、自動的に一定の高さとなる。つまり、傾斜地などで、固定部である作業台が固定されている乗用型茶園管理機Aの走行装置が接触している地面の高さと、茶苗植付部が接触している地面の高さが異なったとしても、地面に沿って良好に走行することができる。本発明の第4手段により、茶苗植付装置に動力源を備えなくても、乗用型茶園管理機に接続することで動力を得ることができる。本発明の第5手段により、植え付けた茶苗の土着を良くする。本発明の第6手段により、水をムダにすることなく、茶苗のみに散水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は茶苗植装置を取り付けた乗用型茶園管理機の説明図である。(前面)
【図2】図2は茶苗植装置を取り付けた乗用型茶園管理機の説明図である。(背面)
【図3】図3は乗用型茶園管理機へ茶苗植装置を取り付ける説明図である。
【図4】図4は茶苗植装置の右側面図である。(乗用型茶園管理機によって上へ上がっている状態)
【図5】図5は茶苗植装置の右側面図である。(着地している状態)
【図6】図6は茶苗を植え付けた茶園の説明図である。
【図7】図7は茶苗を植え付ける一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、乗用型茶園管理機Aについて説明する。機体1は茶樹を跨ぐ門型の形状となっており、茶樹の両脇に走行装置2を備えて機体1を走行させる。この走行装置2はエンジン3、油圧ポンプ4などの駆動源により駆動され、走行する。シート11は作業者が座る部分であり、運転者15は走行ハンドル13を操作して、乗用型茶園管理機Aを走行させ、作業を行なう。ブロア17はアタッチメントによる作業を行うときに送風が必要となる場合があるため、機体1に固着してあるが、本発明の茶苗を植える作業には使用しない。よって、茶苗を植える場合には、ブロアを固着していない乗用型茶園管理機Aでもよい。
【0013】
機体1の後部に、アタッチメント取付部7を設け、機体1に対してアタッチメント取付部上下シリンダ8及びアタッチメント取付部アーム9によって上下可動となるように設ける。上下可動とするための機構は他の機構でもよく、モータによるものでもよい。アタッチメント取付部7は、取付けるアタッチメントの種類によっては、作業荷台となることもある。
【0014】
次に、茶苗植装置Bについて説明する。茶苗を茶園に植え付けるのは茶苗植付手段21であり、この茶苗植付手段21が上下することにより、茶苗を植え付ける(図7参照)。茶苗植付手段21の先端はくちばし状となっており(以下、茶苗植付手段21の先端をくちばし31とする)、茶苗植付手段21が上方にある状態で茶苗14を茶苗植付手段21内に供給し(図7(a)参照)、くちばし31を閉じた状態でくちばし31を地面18に突き刺して穴を開け(図7(b)参照)、くちばし31を開いて地面18の穴を広げ(図7(c)参照)、くちばし31を地面18から抜きながら、茶苗植付手段21内の茶苗14を地面18に置いてくる(図7(d)参照)。茶苗植付手段21は上方および前方へ移動しながら、くちばし31を閉じ、次の茶苗14を供給される。これを繰り返すことにより、茶苗14を植える。
【0015】
この茶苗植付手段21へ茶苗を供給するのは、茶苗供給手段22であり、茶苗を供給するポット32を複数備え、そのポット32が回転し、ポット32が茶苗植付手段21上に来たときにポット32の底面が開き、ポット32内の茶苗を落下させる構造となっている。
【0016】
これらの茶苗植付手段21と茶苗供給手段22は従動輪23によって地面18から支えられており、茶苗植付手段21と茶苗供給手段22の地面18からの高さは一定である。
【0017】
覆土手段24は茶苗植付手段21の後方にあり、左右から土を寄せて、土をかぶせるような構造になっている。
【0018】
茶苗供給手段22のポット32は約40個程度しかなく、あっという間に茶苗を植え終わってしまうため、作業台25の上に作業者16が乗り、作業台25に備えられたシート33に座り、茶苗載置台26上の茶苗を茶苗供給手段22のポット32に補填していく。茶苗載置台26は図面では3段あり、この1段に約80個の茶苗がのる。図面ではこの程度の大きさであるが、必要に応じて茶苗載置台26を大きくすることは可能である。作業台25付近には、駆動スイッチ27を設け、茶苗植装置Bの駆動を操作する。
【0019】
茶苗植付手段21や茶苗供給手段22、従動輪23、覆土手段24などの地面と接触する茶苗植付部Dは、アタッチメント取付部7への固定した作業台25などの固定部Cとは平行リンクにより接続されており、回動自在な回動軸34を有するアーム35によって接続されており、地面と追従している。これによって、固定部Cである作業台25が固定されている乗用型茶園管理機Aの走行装置2が接触している地面の高さと、茶苗植付部Dが接触している地面の高さが異なったとしても、茶苗植付部Dは地面に追従して高さを一定に保ち、地面に沿って良好に走行することができる。(傾斜地でも、少しガタガタした道でも良好に茶苗を植えつけることができる。)
【0020】
散水手段として、水を入れるタンク36とポンプ、タンクから水をまくホース37を設ける。ホース37の先端にはノズルを設けてもよく、茶苗植付手段21の後方に設置し、植え付けられた茶苗に散水する。水をずっと散水してもよいが、電磁弁などを設けて茶苗植付部Dとのタイミングをはかり、植え付けた茶苗に向かってのみ散水するようにすると、ムダがない。植えた直後に茶苗の根元に少量の水を散水することによって、土着を良くすることができる。
【0021】
茶園の畝は2条植えであるため、茶苗植装置Bには、これらの茶苗植付手段21、覆土手段24、散水手段は2セット備えてあり、左右の茶苗植付手段21は交互に動く。
【0022】
乗用型茶園管理機Aへの茶苗植装置Bの取り付けについて説明する。乗用型茶園管理機のアタッチメント取付部7を最低の高さまで下げておき、そのアタッチメント取付部7へ茶苗植装置Bを移動していく。茶苗植装置Bの作業台25がアタッチメント取付部7へのり、その部分を固定具40で固定する。この固定具40は、工具を必要とするものではなく、クランプや蝶番などがよい。本実施例では、左右2箇所ずつ、合計4箇所で固定している。そして、乗用型茶園管理機Aの動力を得るため、駆動源を接続する。本実施例では、茶苗植装置Bの茶苗植付手段21と茶苗供給手段22を油圧駆動にしているため、乗用型茶園管理機Aの走行装置2の油圧ポンプ4からワンタッチカプラー29により接続し、散水手段のポンプの駆動用の電気をバッテリ5からカプラー(図示しない)により接続する。
【0023】
次に、茶園にて茶苗を植え付ける場合の動きについて説明する。茶苗を植え付ける場所まで乗用型茶園管理機Aの走行装置2にて移動する。この時、乗用型茶園管理機Aのアタッチメント取付部7をアタッチメント取付部上下シリンダ8により上へ移動し、茶苗植装置Bを地面から離して移動する。茶苗を植え付ける場所へ移動すると、乗用型茶園管理機Aのアタッチメント取付部7をアタッチメント取付部上下シリンダ8により下へ移動し、茶苗植装置Bを着地させる。この時、茶苗植装置Bが着地後、もう少しアタッチメント取付部7を下降させる。これにより、茶苗植付部Dの上下移動に余裕を持たせることができる。
【0024】
乗用型茶園管理機Aには、速度を感知するセンサーと、速度を表示するスピードメータが設置されており、運転者15は茶苗の植え付けを行なうために速度を見ながら操縦を行なう。茶園が進行方向に向けて低く傾斜している場合は平らな時より増速し、進行方向に向けて高く傾斜している場合は平らな時より減速するため、一定速度となるように走行ハンドル13にてコントロールを行なう。茶苗植装置Bの作業者16は、運転者15と連携をとりながら、目的の位置(畝の一端)から茶苗植装置Bの駆動スイッチ27により始動させ、その後は茶苗を茶苗供給手段22のポット32へ補填する。畝の他端へ到達すると、茶苗植装置Bの作業者16は、茶苗植装置Bの駆動スイッチ27により停止させる。その後、乗用型茶園管理機Aを隣の畝へ移動し、茶苗植装置Bにより再び茶苗を植える。隣の畝へ移動する際には、旋回の邪魔とならないように、アタッチメント取付部7を上昇させ、茶苗装置Bを地面から離したほうがよい。乗用型茶園管理機Aの運転者15は、2畝目からは、前の畝を走行したときの一方の走行装置2の軌跡上を走行装置2により走行すると、等間隔で、前の畝と平行して茶苗を植えることができる。作業が終了したら、アタッチメント取付部7を上昇させて、茶苗植装置Bを上昇させて、地面から離して移動をする。
【0025】
このように植えると茶園は図6のようになり、2条の茶苗の間隔x(本実施例では約50センチメートル)は左右の茶苗植付手段21の間隔により調整可能であり、長手方向の茶苗14の間隔y(本実施例では約60センチメートル)は乗用型茶園管理機Aの走行装置2の走行スピードにより調整可能である。そして、畝の巾は乗用型茶園管理機Aの左右の走行装置2の巾z(本実施例では約180センチメートル)で一定となる。
【0026】
本実施例では、茶苗植装置Bは22回/分(片側)で駆動しており、乗用型茶園管理機Aの走行装置2が22センチメートル/秒で走行することにより、約60センチメートル間隔(片側)で植付が行なわれる。
【符号の説明】
【0027】
1 機体
2 走行装置
3 エンジン
4 油圧ポンプ
5 バッテリ
6 作動油タンク
7 アタッチメント取付部
8 アタッチメント取付部上下シリンダ
9 アタッチメント取付部アーム
10 燃料タンク
11 シート
12 ステップ
13 走行ハンドル
14 茶苗
15 運転者
16 作業者
17 ブロア
18 地面
21 茶苗植付手段
22 茶苗供給手段
23 従動輪
24 覆土手段
25 作業台
26 載置台
27 駆動スイッチ
29 ワンタッチカプラー
31 くちばし
32 ポット
33 シート
34 回動軸
35 アーム
36 タンク
37 ホース
40 固定具
A 乗用型茶園管理機
B 茶苗植装置
C 固定部
D 茶苗植付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶苗を茶園へ植え付ける茶苗植付手段と、該茶苗植付手段へ茶苗を供給する茶苗供給手段と、植え付けた茶苗へ土をかける覆土手段と、前記茶苗供給手段に茶苗を補填するための作業台とより構成するとともに、アタッチメント取付部を有する乗用型茶園管理機のアタッチメント取付部に装着することを特徴とする茶苗植装置。
【請求項2】
前記アタッチメント取付部の上に前記作業台を載せ、固定具によって固定することを特徴とする請求項1記載の茶苗植装置。
【請求項3】
前記作業台を乗用型茶園管理機への固定部とし、前記茶苗植付手段と、前記茶苗供給手段と、覆土手段とを従動輪にて保持して、地面に追従して高さを一定に保つ茶苗植付部とするとともに、前記固定部と前記茶苗植付部とを回動軸を備えたアームによって接続することを特徴とする請求項1または2記載の茶苗植装置。
【請求項4】
前記乗用型茶園管理機の動力を利用して、駆動することを特徴とする請求項1、2または3記載の茶苗植装置。
【請求項5】
植え付けた茶苗への散水手段を設けることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の茶苗植装置。
【請求項6】
電磁弁により茶苗への散水を制御することを特徴とする請求項5記載の茶苗植装置。
【請求項7】
前記請求項1、2、3、4、5又は6記載の茶苗植装置を使用して茶苗を植付ける、茶苗植付け方法。
【請求項8】
前記請求項7記載の茶苗植付け方法に使用される茶苗。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−90608(P2013−90608A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235886(P2011−235886)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000145116)株式会社寺田製作所 (90)
【出願人】(509307118)株式会社日本製紙グループ本社 (2)
【Fターム(参考)】