説明

茶製品の製造方法

【課題】伝統的な茶の製造方法から揮発性芳香化合物を回収する方法であって、任意の茶製品に戻して製品の芳香の印象を向上できるように、回収される芳香化合物が良好な量及び質で生産される、方法を提供する。
【解決手段】茶製品の製造方法であって、a.乾燥ベースで気体相1kgあたり30g未満の水蒸気を含む気体相に茶葉を接触させて、芳香含有気体相を得る工程;及びb.i.芳香凝縮物を得る凝縮工程、場合によって、前記芳香凝縮物を濃縮して芳香濃縮物を得るさらなる工程、又はii.吸着体に接触させる工程、場合によって、脱着させるさらなる工程に前記芳香含有気体相を供することによって前記芳香含有気体相から芳香を回収する工程を含み、茶葉の乾燥質量に対する水の比率が工程(a)の間に5未満であり、かつ、工程(b)が茶葉の酵素を不活性化する工程の前にある、方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、茶製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市場で市販されている茶製品には多数の形態が存在する。これらには、紅茶、緑茶、ウーロン茶、レディトゥドリンクティー、及びホット又はコールドのインスタントティーパウダー、並びに特定の消費者の必要に応じた他の多数のティーブレンドが含まれる。
【0003】
紅茶は、しおれさせる工程(ウィザーリング;withering)、浸軟させる工程(マセレーティング;macerating)、発酵させる工程、及び焙煎/乾燥工程を含む方法によって一般的に製造される。紅茶の特徴的な色、味、及び香りは発酵の間に生じる。発酵なる用語は、茶の加工において、酵素による酸化を意味するものとして伝統的に使用されている。茶は発酵後に高温で乾燥して、酵素活性を停止させ、かつ、水分を低レベルにする。ウーロン茶は、発酵工程を部分的にのみ完了させる工程以外は、紅茶を製造するために使用したものと同じ加工工程によって得られるタイプの茶である。新しく摘まれた葉を熱処理(例えば、蒸気又は煎ることによる)し、次いで、葉を揉捻(rolling)及び乾燥の1以上の工程に供することによって、緑茶は一般的に製造される。レディトゥドリンクティーは、缶又は任意の他の適切な容器に消費可能な茶飲料を詰めた他の態様である。代替的には、レディトゥドリンクティーは、葉又は水溶性のティーパウダーから自動販売機の中で茶が製造され得る、自動販売機から1回の消費毎にカップに得られるものでもある。さらに最近では、茶は、ホットのインスタント又はコールドのインスタントの茶の態様でも得られている。この態様では、茶葉(緑茶、紅茶、又はウーロン茶のいずれか)の湯に可溶性の画分又は冷たい水に可溶性の画分を固体形状に乾燥させる。消費者は、所望の温度の水をこれらの茶の態様に添加して、各自が選択した飲料を調製するだけである。一般的には、製造業者は、ホットのインスタント又はコールドのインスタントの茶を、ミルクパウダー、砂糖、レモン、ピーチ、カルダモンなどの香味剤などの他の配合成分と混合して、様々な消費者の要求に応じた各種のタイプのインスタントティーを販売する。
【0004】
様々な特別の消費者の要求を満たすために、互いに非常にスムーズに混合する必要がある茶飲料の多数の官能特性が存在する。これらは、多数の他の特性の中でも、とりわけ、芳香、味、香味、苦味、渋味を含む。飲料が調製される前であっても茶を飲むヒトに最初に魅力的な印象を与える最も重要な特性の1つは、茶の芳香である。同様に重要なものは、沸騰させることによって茶を調製する間及び飲んでいる間の、茶を飲むヒトによる茶の芳香の知覚である。かくして、茶の製造者は、より良好な芳香の印象を有する茶製品を提供するために努力している。これを実施する1つの方法は、外部混合によって合成又は天然の同一の芳香化合物を茶製品に添加することである。他の方法は、高温で加工する工程、すなわち、紅茶製造方法の乾燥工程で放出される揮発性芳香化合物を回収することである。
【0005】
この例は、英国特許出願GB1209055(Tenco Brooke Bond,1970)に開示されており、そこでは、発酵させたが焙煎していない茶(ドール)を、好ましくは減圧条件下において、蒸して、凝縮して揮発性香味成分の多くを含有する蒸留物を形成する水蒸気混合物が回収され、前記蒸留物は濃縮されるか又はそこから回収されるエッセンシャルオイルであってよい。蒸されたドールを、次いで、焙煎し、抽出して、可溶性の固形物である濃縮物を、例えば水とともに、好ましくは不活性雰囲気下で得る。蒸気蒸留物(又はその濃縮物若しくはオイル)を、濃縮されていてもよい焙煎したドール抽出物(焙煎したドールとともに抽出されてよい)と混合し、その混合物を凍結乾燥又は噴霧乾燥してインスタントティーを得る。上述の文献で例示される具体的な方法は、280トールの圧力の圧力で蒸し器の中で蒸気とドールを接触させることであり、蒸し器から発生する蒸気の温度は約70℃である。その様な方法は、発酵の後に追加の蒸す工程を伴い、加工時間全体を増大させ、バキュームの取り付けられた追加の蒸し器に投資するための資本支出を必要とする。そして、得られた芳香は比較的フレッシュノートに乏しいものである。
【0006】
茶の中の揮発性芳香化合物を回収して利用する他の方法は、GB1117102(Nestle,1968)に開示されており、そこでは、粉砕した未発酵の新鮮な茶葉を液体中に懸濁して、例えば減圧条件下で約60℃において、芳香の少なくとも一部を溶液から取り出して、回収し、可溶性物質を次いで茶から抽出して抽出物を得る。前記懸濁物を、望ましい場合には、取り出す工程の間に好ましくは20から60℃で、抽出前に発酵させてよい。実施例では、取り出す工程の前に全体で4から5%の固体を有する懸濁物を調製するために水と葉を混合する方法が示されている。その様な方法では、対象の水及び/又は溶媒が芳香を有する揮発性物質とともに凝縮され、水/溶媒を分離する更なる工程が必要とされる。さらに、その様な方法は、薄膜エバポレーターなどの追加の装置を必要とし、従来の加工には使用することができない。さらに、その様な方法に供される新鮮な茶葉は、従来の紅茶又はウーロン茶の特性を有する紅茶又はウーロン茶などのさらなる茶製品をさらに得るために使用することができない。
【0007】
WO 2009/083420(Unilever)は、水又は水蒸気に茶材料を接触させることによって茶材料から芳香化合物を回収するための方法を開示している。
【0008】
幾つかの方法では、製造する茶の特性を変化させる傾向がある、茶の通常の製造方法の修正が存在する。揮発性芳香化合物が非常に不足している乾燥器の排出ガスから揮発性芳香化合物を回収する他の場合には、高価な回収方法を用いる必要があり、その方法を経済的に魅力の無いものにする傾向がある特殊化した装置を用いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】GB1209055
【特許文献2】GB1117102
【特許文献3】WO 2009/083420
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点の少なくとも1つを克服若しくは緩和すること又は有用な代替技術を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、比較的高度のフレッシュノートを有する茶製品を得ることである。
【0012】
本発明の他の目的は、茶葉から良好な量及び質で揮発性芳香化合物を回収する工程を含む、茶の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、茶葉からさらに得られ得る茶製品の質に妥協することなく、茶葉の加工の間に芳香を回収できることである。
【0014】
本発明の他の目的は、伝統的な茶の製造方法から揮発性芳香化合物を回収する方法であって、任意の茶製品に戻して製品の芳香の印象を向上できるように、回収される芳香化合物が良好な量及び質で生産される、方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の第一の態様によれば、茶製品の製造方法であって、
a.乾燥ベースで気体相1kgあたり30g未満の水蒸気を含む気体相に茶葉を接触させて、芳香含有気体相を得る工程;及び
b.i.芳香凝縮物を得る凝縮工程、場合によって、前記芳香凝縮物を濃縮して芳香濃縮物を得るさらなる工程、又は
ii.吸着体に接触させる工程、場合によって、脱着させるさらなる工程
に前記芳香含有気体相を供することによって前記芳香含有気体相から芳香を回収する工程を含むことを特徴とし、
茶葉の乾燥質量に対する水の比率が工程(a)の間に5未満であり、かつ、工程(b)が茶葉の酵素を不活性化する工程の前にある、方法が提供される。
【0016】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様の芳香凝縮物又は芳香濃縮物又は脱着された芳香を含む紅茶又はウーロン茶であって、脱着の間に吸着体から分離された物質が脱着された芳香と称される、紅茶又はウーロン茶が提供される。前記芳香凝縮物又は芳香濃縮物又は脱着された芳香は、好ましくは、紅茶の0.01から10重量%、より好ましくは0.1から5重量%の範囲にある。
【0017】
本発明の第三の態様によれば、第一の態様の芳香凝縮物又は芳香濃縮物又は脱着された芳香を含むレディトゥドリンクティーを提供することである。前記芳香凝縮物又は芳香濃縮物又は脱着された芳香は、好ましくは、レディトゥドリンクティーの0.01から10重量%、より好ましくは、0.01から5重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明では、「茶」は、カメリアシネンシス(Camellia sinensis var.sinensis)又はカメリアシネンシスアッサミカ(Camellia sinensis var. assamica)から得られる物質を意味する。「茶」は、これらの物質の任意の2以上を混合した製品を含むことも意図する。
【0019】
本発明の方法によって製造される茶製品は、発酵された茶(すなわち、紅茶)又は半発酵させた茶(すなわち、ウーロン茶)であってよい。
【0020】
「レディトゥドリンクティー」は、茶の固形物を含む飲料を意味する。レディトゥドリンクティーは、通常、少なくとも80%の水の含有量を有し、最適には85から99.9重量%の間である。レディトゥドリンクティーは、缶又はビンなどの気密容器に詰めてよい。レディトゥドリンクティーの茶の固形物の含有量は、典型的には、0.001から5重量%、好ましくは0.001から3重量%、最も好ましくは0.1から1重量%の範囲にある。
【0021】
本明細書で使用する茶葉なる用語は、茶の植物の葉及び茎を含む。好ましくは、前記茶葉は、例えば、開いていない芽とともに最初の2又は3の葉の形態(いわゆる、「二つ葉芽」又は「三つ葉芽」のもの)にある、活発に成長している芽を含む。新鮮な茶葉をまず約12から36時間にわたってしおれさせてよい。しおれさせる工程の間に生じる生化学的及び/又は化学的な変化が、茶の中の揮発性香味化合物の量を増大させ得る。
【0022】
粉砕した茶葉及び粉砕していない茶葉の双方が使用されてよい。しかしながら、好ましくは、茶葉は粉砕した茶葉である。好ましくは、茶葉は、浸軟によって粉砕する。浸軟は、例えば葉を回転及び/又は潰すこと、すなわち、植物組織構造を破壊することによって、葉を傷つけることを伴う。浸軟は、好ましくは、切断機に茶葉を通過させることによって達成される。かくして、本発明の目的のために、茶葉は、CTC、ローターバン、ボールミル、又はグラインダー、又はハンマーミル、又はLawriティープロセッサー、又はLegg切断機を使用する浸軟工程によって浸軟するか、または正統派の茶加工のように茶揉み機を使用して揉捻してよい。これらの浸軟工程の組合せも使用してもよい。しおれさせて浸軟されている新鮮な茶葉はドールとして知られている。
【0023】
工程(a)
工程(a)は、気体相に茶葉を接触させることを伴う。前記気体相は、好ましくは、酸素を含む。より好ましくは、前記気体相は空気である。
【0024】
粉砕した茶葉及び粉砕していない茶葉を使用してよい。しかしながら、前記茶葉は好ましくは粉砕した茶葉である。好ましくは、茶葉は浸軟によって粉砕する。浸軟は、例えば葉を回転及び/又は潰すこと、すなわち、植物組織構造を破壊することによって、葉を傷つけることを伴う。浸軟は、好ましくは、切断機に茶葉を通過させることによって達成される。かくして、本発明の目的のために、茶葉は、CTC、ローターバン、ボールミル、又はグラインダー、又はハンマーミル、又はLawriティープロセッサー、又はLegg切断機を使用する浸軟工程によって浸軟するか、または正統派の茶加工のように茶揉み機を使用して揉捻してよい。これらの浸軟工程の組合せも使用してもよい。しおれさせて浸軟されている新鮮な茶葉はドールとして知られている。
【0025】
前記気体相は、好ましくは150℃未満、より好ましくは120℃未満の温度にある。前記気体相は、好ましくは5℃超、より好ましくは20℃超の温度にある。特に好ましくは、前記気体相は、20℃から120℃の範囲にある温度にある。
【0026】
茶葉の乾燥質量に対する水の比率は、5未満、より好ましくは4.5未満、さらに好ましくは4未満である。任意の非水性液体が工程(a)の間に存在している場合は、茶の乾燥質量に対する非水性液体の比率は5未満、より好ましくは4未満である。特に好ましくは、茶葉は非水性液体と接触させない。
【0027】
前記気体相は、乾燥ベースで気体相1kgあたり30g未満の水蒸気を含む。前記気体相は、乾燥ベースで気体相1kgあたりに、好ましくは25g未満、より好ましくは20g未満、最も好ましくは15gの水蒸気又は蒸気を含む。気体相1kgあたりの水の量は、茶葉と接触させる前の気体相の水蒸気量(g)である。気体相1kgあたりの水蒸気量(g)は、相対湿度及び温度の測定から当業者が容易に決定し得る。
【0028】
気体相への茶葉の接触は、多数の方法で実施されてよい。茶葉は、床に薄層状(典型的には、2インチ未満の厚み)に置くか又は深い床(2から10インチ)に置いて、気体相を上方に向って床を通過させる。そのような深い床の接触装置の例は、茶葉を置く穴の開いたメッシュ状のサポートを有するボウルとおけ等のなどのバッチ単位、及び茶葉を層状にして置く穴の開いたベルトを含む連続単位を含む。気体相は、穴を通過させて床へと上方に向って送り込む。空気は、発酵の間に生じる反応に酸素を利用できるようにする。
【0029】
気体相への茶葉の接触は、気体相に開放される揮発性物質の移動を生じさせ、芳香含有気体相を生じさせる。
【0030】
前記気体相は、好ましくは1時間あたり茶葉の乾燥質量1kgに対して0.01から50kgの気体相、より好ましくは1時間あたり茶葉の乾燥質量1kgに対して1から30kgの気体相、最も好ましくは1時間あたり茶葉の乾燥質量1kgに対して2から20kgの気体相の速度で茶葉に接触させる。特に好ましくは、前記気体相は、1時間あたり茶葉の乾燥質量1kgに対して2から15kgの気体相の速度で茶葉に接触させる。
【0031】
工程(b)
工程(b)は、芳香含有気体相から芳香を回収することを含む。工程(a)及び(b)は連続しているか又は同時であり、好ましくは連続していることを意図する。本質的には、工程(b)は、酵素の不活性化の工程の前に実施される。特に好ましくは、工程(a)も酵素の不活性化の工程の前に実施される。
【0032】
前記芳香含有気体相は、好ましくは凝縮工程に供して、芳香凝縮物を回収する。好ましくは、前記芳香含有気体相を凝縮工程に供して、芳香凝縮物を回収する。例えば、前記芳香含有気体相を凝縮器に供して、−5℃から30℃、より好ましくは−5℃から20℃の範囲、最も好ましくは−5℃から10℃の範囲の温度の冷却器が取り付けられた凝縮器を使用して水とともに芳香化合物を凝縮する。代替的には、芳香含有気体相を圧縮して芳香凝縮物を得る。
【0033】
前記芳香凝縮物は、1から1000mg/Lの範囲、より好ましくは10から500mg/Lの範囲、最も好ましくは10から300mg/Lの範囲の全有機炭素を含む。
【0034】
前記芳香凝縮物は、茶葉の乾燥質量1kgあたり好ましくは1から2000g、より好ましくは10から1000g、最も好ましくは50から500gである。
【0035】
凝縮物以外で芳香を回収する方法を使用することができる。芳香含有蒸気を、吸着体と接触させる工程に供してよい。前記吸着体は、好ましくは、活性炭、樹脂(例えば、ポリスチレン−ジビニルベンゼンビーズ)、ゼオライト、及び茶(例えば、紅茶)からなる群から選択される。芳香含有蒸気と接触させた吸着体は、好ましくは、さらに脱着工程に供される。前記脱着は、好ましくは、熱処理によって実施されるか又は有機溶媒又は超臨界COに吸着体を接触させることによって実施する。脱着工程の間に吸着体から分離された物質を脱離された芳香と称する。
【0036】
前記芳香凝縮物は、好ましくは、さらに濃縮して芳香濃縮物を得る。当該技術分野で既知の任意の濃縮方法を使用してよい。例えば、前記芳香凝縮物を、逆浸透、蒸留、クリオ濃縮、凍結乾燥、及び/又は段階凝縮(staged condensation)/分縮によって濃縮して、茶芳香濃縮物を調製してよい。特に好ましくは、濃縮に蒸留法を使用する。
【0037】
代替的には、前記凝縮物は他の方法で濃縮できるであろう。例えば、前記凝縮物は、活性炭、樹脂(例えば、ポリスチレン−ジビニルベンゼンビーズ)、ゼオライト、又は茶(紅茶)から選択される1つ又は複数の吸着体に凝縮物を吸着させることができるであろう。前記吸着体は、カラム又は流動床に詰めて、その後に脱着させて、熱処理、有機溶媒、又は超臨界COを使用して芳香成分を放出させる。
【0038】
前記芳香濃縮物は、好ましくは少なくとも25mg/L、より好ましくは少なくとも1000mg/L、より好ましくは少なくとも5000mg/Lの全有機炭素を含む。前記芳香濃縮物中の全有機炭素は、好ましくは、1000から500000mg/Lの範囲にある。
【0039】
前記方法は、好ましくは、工程(b)の後に酵素の不活性化の工程を含む。
【0040】
前記方法は、好ましくは、工程(b)の後に10重量%未満の水分含有量まで茶葉を乾燥して、茶製品を得る工程を含む。
【0041】
乾燥工程は不活性化工程の後であるか、又はこれら2つの工程が同時であってよい。好ましくは、酵素の不活性化は、葉を蒸気又は70℃超の温度の空気に接触させることによって実施される熱による不活性化である。前記乾燥工程は、好ましくは、茶の水分含有量を1から10%の範囲、最適には約5重量%の水分含有量にするようなものである。従来、乾燥工程は、高対流(high convection)乾燥器において熱い乾燥した空気の強風に茶を曝露することを伴う。乾燥/焙煎加工工程の間に芳香が発生することがよく知られており、これも回収されてよい。しかしながら、その様な高対流乾燥器からの回収は、薄い芳香を生じさせ、過度な濃縮を必要とする。かくして、EP1926386(Unilever、2008年に公開)に開示されている低対流乾燥器が、本発明の方法によって回収される芳香に加えて、芳香を回収するために使用されてよい。
【0042】
本発明は、例示のみとして、非制限的な実施例を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0043】
気体相の温度及び粉砕の効果
しおれさせた茶葉(South Indian garden産)を浸軟/粉砕してドールを形成した。1つの実験では、粉砕していない茶を使用した。500gのドール(又は粉砕していない茶葉)を4インチの深さの床に詰めた。ドールは、湿潤ベースで75重量%の水分含有量を有しており、すなわち、茶葉の乾燥質量に対する水の比率は3であった。(下記の表に示す)各種の温度の空気は、約30L/分の流速で120分にわたって床を通過させた。空気中の水蒸気含有量は、1kgの乾燥空気あたり12gであった。床から出る芳香含有気体相は凝縮器に送った。前記凝縮器は、2℃の冷却水の設備とともに準備した。120分の終わりに芳香凝縮物を前記凝縮器から回収した。発酵させたドール(100g)を流動床乾燥器で120℃の温度の空気で20分間にわたって乾燥させて、5重量%の水分を含む紅茶を得た。この乾燥工程は焙煎工程とも称される。
【0044】
テアフラビン類(TF)の測定:茶製品(1g乾燥重量)を50mLの70%メタノール(V/V)を用いて80℃で10分間にわたって抽出した。液体を25℃まで冷却させて遠心分離した。上清を希釈し、次いで、HPLC(Shimadzu LC−10AT model)に供して、TF含有量を測定した。
【0045】
Total Organic Carbon分析器(Shimadzu Model 5000A)によって、凝縮物1Lあたりの芳香のmg量で水性凝縮物の濃度を測定した。前記方法から得られた芳香の量を、次いで、ドール材料の乾燥重量1kgあたりに回収された芳香のmg量に変換した。
【0046】
前記方法の終わりに得られた紅茶を以下のように評価した。2gの紅茶を200mLの100℃の湯で3分間入れて、濾すことによって最終的な一杯を得た。その最終的な一杯の嗅覚評価を専門家が実施した。
【0047】
【表1】

【0048】
その結果から、本発明の方法が、茶葉から良好な量及び質で揮発性芳香化合物を提供することが明らかである。さらに、前記方法は、茶葉から得られる茶製品の質に妥協することなしに茶葉の加工の間の芳香の回収を可能にする。粉砕した茶葉は、粉砕していない茶葉と比較してより良好な結果を与えることも認められる。25℃から80℃の工程(a)の気体相の温度の増大とともに、芳香の回収量が顕著に改善され(2倍超)、テアフラビン含有量がわずかに(約20%)低下していることも認められる。表1の例Aは、本発明の乾燥空気1kgあたりに30g未満の水蒸気量を有する気体相の代わりに、蒸気(〜90℃の温度)である、従来技術の比較例である。結果として回収された芳香の特徴は、表に記載のとおり許容され得ないものである。
【0049】
茶葉の乾燥質量に対する水の比率の効果
下表に記載したとおり、実施例1と同じ条件下であるが、茶葉の乾燥質量に対する水の比率を変化させて実験を実施した(実施例1の関連するデータを簡便化のために再度記載している)。全ての実験において、乾燥条件及び乾燥時間は同一であった。
【0050】
【表2】

【0051】
上記の結果から、茶葉の乾燥質量に対する水の比率が増大すると、加工された材料の質に悪影響を及ぼし、その後の乾燥時間及びエネルギーを必要とする点で悪影響を及ぼす。
【0052】
方法の順序の効果
方法の順序を変えて実験を繰り返した。乾燥/焙煎/不活性化の後及び焙煎/乾燥/不活性化の実施の前に前記方法(工程a)を実施することによって方法の順序を変更した。残りの実験条件は実施例1に記載のものと同一のままである。床に接触させた気体相の温度は25℃であった。
【0053】
【表3】

【0054】
その結果から、芳香を回収するためには、不活性化(焙煎)工程が工程(b)に規定するプロセスの後でなければならない。
【0055】
気体相接触速度の効果
茶葉を気体相に接触させる速度を変化させ、他の全ての条件は同一のままで、実施例1の方法を繰り返した。結果を下表に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
その結果から、芳香回収量に関する最良の結果は、選択的な範囲の気体相接触速度で得られることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶製品の製造方法であって、
a.乾燥ベースで気体相1kgあたり30g未満の水蒸気を含む気体相に茶葉を接触させて、芳香含有気体相を得る工程;及び
b.i.芳香凝縮物を得る凝縮工程、場合によって、前記芳香凝縮物を濃縮して芳香濃縮物を得るさらなる工程、又は
ii.吸着体に接触させる工程、場合によって、脱着させるさらなる工程
に前記芳香含有気体相を供することによって前記芳香含有気体相から芳香を回収する工程を含むことを特徴とし、
茶葉の乾燥質量に対する水の比率が工程(a)の間に5未満であり、かつ、工程(b)が茶葉の酵素を不活性化する工程の前にある、方法。
【請求項2】
前記気体相が150℃未満の温度にある、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記茶葉が粉砕された茶葉である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記気体相が、1時間あたり茶葉の乾燥質量1kgに対して0.01から50kgの気体相の速度で茶葉に接触される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記気体相が酸素を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)の後に酵素の不活性化工程を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)の後に10重量%未満の水分含有量まで茶葉を乾燥させて茶製品を得る工程を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
芳香凝縮物を回収する凝縮工程に前記芳香含有気体相を供する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記芳香凝縮物が1から1000mg/Lの範囲の全有機炭素を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記芳香凝縮物が、茶葉の乾燥質量1kgあたり1から2000gである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記芳香凝縮物を濃縮する工程に前記芳香凝縮物を供して、芳香濃縮物を得る、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に規定の芳香凝縮物、芳香濃縮物、又は脱着された芳香を含む紅茶又はウーロン茶であって、前記脱着の間に吸着体から分離された物質が脱着された芳香と称される、紅茶又はウーロン茶。
【請求項13】
前記芳香凝縮物、芳香濃縮物、又は脱着された芳香が0.01から10重量%である、請求項12に記載の紅茶又はウーロン茶。
【請求項14】
請求項1に規定の芳香凝縮物、芳香濃縮物、又は脱着された芳香を含む、レディトゥドリンクティー。
【請求項15】
前記芳香凝縮物、芳香濃縮物、又は脱着された芳香が0.01から10重量%である、請求項14に記載のレディトゥドリンクティー。