説明

荷崩れ防止ネット

【課題】サイズの異なるパレット上の荷物に対しても1種類で対応可能な荷崩れ防止ネットを提供する。
【解決手段】全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所(13,15)及び中間に少なくとも1個所(14)、紐のリングが水平方向に設定されており、しかも上端の紐リング(13)はその他の紐リング(14,15)よりも直径が小さい。少なくとも前記下端リングに複数の係止部(19)を設けると共に、これら複数の係止部のうちの2個を選択的に連結具(21)で着脱可能に連結している。好ましくは、前記中間リング(14)に対しても複数の係止部(20)を設けると共に、これら複数の係止部のうちの2個を選択的に連結具(22)で着脱可能に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷崩れ防止ネットに関する。特に、荷物輸送用のパレットに搭載した荷物の荷崩れを防止するためのネットに関する。
【背景技術】
【0002】
物流業界における荷物運搬具として、繰り返し使用可能な木製パレットが広く用いられている。このようなパレットは木材をすのこ状に組み合わせて構成されており、上下板の間に設けた空隙にフォークリフトのフォーク部分を挿入し持ち上げることにより、パレット上面に積載した荷物を容易に荷役し輸送することができる。
【0003】
このパレットに搭載した荷物の輸送時における荷崩れを防止するために、従来、紐掛け、網掛け、シュリンク包装といった荷物固定方法が用いられている。紐掛けは、パレタイジングした荷物を紐で緊締することにより固定する方法である。網掛けは、端縁に複数のフック部を設けた一枚のネット部材を荷物の上に被せ、フック部をパレットに係止させて荷物を固定する方法である(下記特許文献1参照)。シュリンク包装とは、熱可塑性のプラスチックフィルムで荷物を覆った後、熱でプラスチックフィルムを収縮させて荷物を固定する方法である。
【0004】
さらに本願出願人が共同出願人の1名となっている下記特許文献2では、全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所及び中間に少なくとも1個所、弾性紐のリングが水平方向に設定されており、しかも上端の弾性紐リングはその他の弾性紐リングよりも直径が小さいことを特徴とする荷崩れ防止ネットを提案している。
【特許文献1】特許第3231028号
【特許文献2】実用新案登録第3107177号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、ベルトを掛けるのに、一端を支える者と荷物の周囲にベルトを掛ける者の最低二人が必要であって、能率が悪い。さらに、ベルトの端部を握って縛り上げるという作業を行うために、特別に装着作業スペースが必要となり、さらに能率を悪くしていた。
【0006】
上記特許文献1の技術でもフックを使用して一端を固定する必要があり、作業に熟練を要していた。さらに、不要時のネット収納スペース確保に難点があった。
【0007】
これらの先行技術の問題点を克服している上記特許文献2の考案は市場で好評を博している。しかし、この特許文献2の考案でも、サイズの異なるパレットに対して別々の荷崩れ防止ネットを用意しておかなければならないという欠点があり、費用面及び管理面で改善の余地があった。現在、パレットの標準サイズとして、Mサイズ(パレット1100mm×1100mm、荷物外周4400〜4700mm、荷物高さ1500〜1600mm)と、Sサイズ(パレット900mm×1100mm、荷物外周3800〜4200mm、荷物高さ1500〜1600mm)がよく使用されている。
【0008】
本発明は、上記特許文献2の利点は保持しつつ、さらに、サイズの異なるパレット上の荷物に対しても1種類で対応可能な荷崩れ防止ネットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明請求項1の発明は、全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所及び中間に少なくとも1個所、紐リングが水平方向に設定されており、しかも上端の紐リングはその他の紐リングよりも直径が小さいものである荷崩れ防止ネットにおいて、少なくとも前記下端リングに複数の係止部を設けると共に、これら複数の係止部のうちの2個を選択的に連結具で着脱可能に連結することを特徴とする。
【0010】
本発明請求項3の発明は、全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所、紐リングが水平方向に設定されている荷崩れ防止ネットにおいて、前記上端リング及び下端リングに複数の係止部を設けると共に、これら複数の係止部のうち水平位置にある2個を選択的に連結具で着脱可能に連結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記特許文献2と同様、次の効果が得られる。荷崩れ防止ネットにはフック部材が必要ないので、それに関する問題点がすべて解消される。また、本発明によれば、荷物の荷崩れを防ぐのは、水平方向に設定されている紐リングであり、バンド部材でいちいち絞るような作業は必要ない。したがって、誰でも熟練を要することなく、作業協力者なしで一人で荷物を覆うことができし、特別な作業スペースも必要ない。また、フィルムのシュリンク包装と異なり、何度でもリサイクル使用が可能であるので、廃棄物処理の問題がない。
【0012】
さらに、本発明独自の効果として、紐リングに複数の係止部を設けると共に、これら複数の係止部のうちの2個を選択的に連結具で着脱可能に連結するので、これにより、紐リングの周長を調節することができる。その結果、サイズの異なるパレット状の荷物に対しても1種類で対応が可能となる。
【0013】
請求項1の発明の特別な効果として、上端の紐リングはその他の紐リングよりも直径が小さいので、次のような効果が得られる。
(1)荷崩れ防止ネットを荷物にかぶせて下端部を下に引き下ろすだけでよく、ネットの後端を調節しながら絞り上げる煩雑な作業が必要なくなる。
(2)荷崩れ防止ネットの上下が分かりやすいので、間違えることがない。
【0014】
また、請求項2の発明の特別な効果として、構造が簡単であって、ネットの上下を考慮することなく、より簡易迅速にネットがけができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、ネットの目は菱形とすることが伸縮性を発生させる上で好ましい。ネットとしては、ラッセル編みのネットが好ましく、編み目の大きさは10×10mm〜20×20mmが好ましく、特に好ましいのは、15×15mm程度である。大きさ、太さ、強度、等は異なるが、みかんを入れたネットの袋を想定してもらえればよい。上下に引っ張ると、横方向に締め付け、横方向に力が加わると上下に締め付けることができる。これにより、いろいろな方向からの力による荷崩れを防ぐことができる。
【0016】
本発明において、紐リングにおける紐は、例えばゴム紐のような弾性紐でもよいし、弾性のないテープ状又は円筒状の紐でもよい。その長さや強度は、予め実験的に測定して最適値を決定しておけばよい。パレットの寸法はJIS規格で定められているので、一度最適値を決定しておけば、そのまま使用することができる。
【0017】
本発明では、不使用時に収納するためのポケットをネット本体に設けておくことが好ましい。そうすることにより、不使用時には小さくたためるので保管に便利である。
【0018】
前記請求項1の発明では、紐リングは、上端及び下端にそれぞれ1本配置するほか、中間にも少なくとも1本、全体では2〜4本配置する。
【0019】
下端リングに設ける複数の係止部としては、例えば、下端リングをところどころで2個所ずつ縛ることにより形成される、複数の小リングが好ましい。下端リングとは別体の複数のフックを使用してもよいが、金属のフックはネットを傷つけやすいので好ましくない。
【0020】
これら複数の係止部のうちの2個を選択的にかつ着脱可能に連結する連結具としては、ワンタッチで着脱可能なものが好ましく、例えば、なす環(ナスカン)と呼ばれる連結具を使用することができる。なす環は楕円形状で、開閉可能な開口があり、ここを使って前記係止具と固定させることができる。その他、複数の係止部のうちの2個を選択的にかつ着脱可能に連結できるものであれば、どのようなものでもよく、場合によれば1本の短い紐で結ぶだけでもよい。
【0021】
好ましくは、下端リングだけでなく、中間リングに対しても、複数の係止部を設けると共に、これら複数の係止部のうちの2個を選択的に連結具で着脱可能に連結する。係止具及び連結具は下端リングに使用したものと同じものを使用することができる。
【0022】
上端リングはもともと小さなもので、パレットサイズとあまり関係ないので、通常であれば係止具及び連結具を設ける必要はないが、特に必要があれば設けてもよい。
【0023】
前記請求項3の発明では、紐リングは、上端及び下端にそれぞれ1本配置する。必要があれば中間にも設けてもよい。さらに、上端リング及び下端リングの双方に係止具及び連結具を設ける。
【実施例1】
【0024】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0025】
図1は、本発明第1実施例に係る荷崩れ防止ネット10の展開状態の斜視図である。図2はパレット11上の荷物12にこのネット10をかぶせた状態の斜視図である。(a)は比較的に大きなMサイズ(パレット1100mm×1100mm)に取り付けた状態で、(b)は比較的に小さなSサイズ(パレット1100mm×900mm)に取り付けた状態である。図3は図2(b)の部分拡大図である。
【0026】
荷崩れ防止ネット10は、全体がネット状であり、上端、中間、下端の3個所において、紐リング13、14、15を水平方向に設定している。ネットの上下は開口している。
【0027】
上端の紐リング13は、中間及び下端の紐リング14,15よりも直径が小さい。このようにすることにより、次のような効果がある。
(1)荷崩れ防止ネットを荷物にかぶせて下端部を下に引き下ろすだけでよく、ネットの後端を調節しながら絞り上げる煩雑な作業が必要なくなる。
(2)荷崩れ防止ネットの上下が分かりやすいので、間違えることがない。
【0028】
パレット上の荷物12にこのネット10をかぶせるには単に下部開口を広げ、荷物12の上からかぶせ、ネット下部を引き下ろすようにすればよい。紐リングには、後記する長さ調節具が設けられているので、適度な張力を持って荷物を押さえつけることができる。そのため、誰でも熟練を要することなく、荷物を覆うことができる。
【0029】
荷崩れ防止ネットの側部にはポケット18が設けられているので、不使用時にはその中に収納可能である。
【0030】
下端紐リング15及び中間紐リング14には、ところどころで2個所ずつ縛ることにより形成される、複数の小リング19,20がそれぞれ設けられている。
【0031】
図2(b)及び図3に示すように、これらの小リング19、20は、紐リングを小さく丸めて束ね、その結束部を金属のCリング23で緊縛することにより、形成されている。さらに、その結束部は「インシュロック」と呼ばれる封緘具24を使用してネット糸と結合されている。
【0032】
これらの小リング19,20のうちの2個を選択的に連結具21,22で着脱可能に連結することにより、紐リング15,14の長さを調節することができる。小リングの数を増やせば、きめ細かな長さ調節を行うことができる。
【0033】
ここで使用している連結具21,22は、なす環と呼ばれるものである。図3の拡大図に示したのは、中間リング14に取り付けたなす環22である。このなす環22は、2つのリング22a,22bを両端に有し、レバー22cによって開閉可能な開口22dがあり、ここを開放して係止具20と固定させた上で閉鎖することができる。連結を解除するには、なす環の開口22dを開放して係止具20を取り出せばよい。
【実施例2】
【0034】
図4は、本発明の第2実施例である。(a)は比較的に大きなMサイズ(パレット1100mm×1100mm)に取り付けた状態で、(b)は比較的に小さなSサイズ(パレット1100mm×900mm)に取り付けた状態である。図3は図2(b)の部分拡大図である。
【0035】
第1実施例との相違点は、中間紐リングよりも上部がないことである。荷物を人間に例えれば、第2実施例のネット10Aは「腹巻き」のようなものである。したがって、第1実施例で「中間リング14」と呼んでいた紐がここでは「上部リング14A」となる。その他の点は、第1実施例と同じであるので、第1実施例の符号に「A」を付けてその詳細な説明を省略する。
【0036】
このネット10Aの縦方向長さは、パレットや荷物の大きさにより何種類か用意しておくことが好ましい。例えば、300mm、500mm、700mm、1mの4種類くらいあれば、どのような用途にも応じられる。
【0037】
第2実施例の発明によれば、構造が簡単であって、ネット10Aの上下を考慮することなく、より簡易迅速にネットがけができる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明第1実施例に係る荷崩れ防止ネットの展開状態の斜視図である。
【図2】パレット上の荷物にこのネットをかぶせた状態の斜視図である。パレット11上の荷物12にこのネット10をかぶせた状態の斜視図である。(a)は比較的に大きなMサイズに取り付けた状態で、(b)は比較的に小さなSサイズに取り付けた状態である。
【図3】図2(b)の部分拡大図である。
【図4】本発明第2実施例係る荷崩れ防止ネットをパレット上の荷物にかぶせた状態の斜視図である。(a)は比較的に大きなMサイズに取り付けた状態で、(b)は比較的に小さなSサイズに取り付けた状態である。
【符号の説明】
【0039】
10,10A 荷崩れ防止ネット
1111A, パレット
12 荷物
13 ネット上端の紐リング
14 ネット中央の紐リング
15 ネット下端の紐リング
14A ネット上端の紐リング
15A ネット下端の紐リング
16 頂上布
17 連結紐
18 ポケット
19,20;19A,20A 小リング(係止具)
21,21;21A,22A なす環(連結具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所(13,15)及び中間に少なくとも1個所(14)、紐リングが水平方向に設定されており、しかも上端の紐リング(13)はその他の紐リング(14,15)よりも直径が小さいものである荷崩れ防止ネット(10)において、
少なくとも前記下端リング(15)に複数の係止部(19)を設けると共に、これら複数の係止部(19)のうちの2個を選択的に連結具(21)で着脱可能に連結することを特徴とする荷崩れ防止ネット。
【請求項2】
前記中間リング(14)に対しても複数の係止部(20)を設けると共に、これら複数の係止部(20)のうちの2個を選択的に連結具(22)で着脱可能に連結した請求項1記載の荷崩れ防止ネット。
【請求項3】
全体がネット状であり、上下端部は開口しており、上端と下端にそれぞれ1個所、紐リング(14A,15A)が水平方向に設定されている荷崩れ防止ネット(10A)において、
前記上端リング(14A)と下端リング(15A)に複数の係止部(19A,20A)を設けると共に、これら複数の係止部のうち水平位置にある2個を選択的に連結具(21A,22A)で着脱可能に連結することを特徴とする荷崩れ防止ネット。
【請求項4】
前記係止部(19,20;19A,20A)が、紐リング(14,15;14A,15A)をところどころで2個所ずつ緊縛することにより形成される複数の小リングである請求項1ないし3のいずれかに記載の荷崩れ防止ネット。
【請求項5】
前記連結具(21,22;21A,22A)が、なす環である請求項1ないし4のいずれかに記載の荷崩れ防止ネット。
【請求項6】
不使用時に全体を収納するポケット(18,18A)がネット本体に設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の荷崩れ防止ネット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−133021(P2008−133021A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321412(P2006−321412)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(504309151)有限会社マルエム (6)
【Fターム(参考)】