説明

荷役装置

【課題】運航時に操舵室からの視界を遮らない荷役装置を提供する。
【解決手段】船上を前後方向に移動可能な台座21と、第一積載物Sを掴むグラブバケット22と、台座21に立設されるとともにグラブバケット22を支持する支持体23と、グラブバケット22の下方に設けられグラブバケット22から落下した第一積載物Sを下方に集めるホッパー24と、ホッパー24から落下した第一積載物Sを舷側に移送する横送りコンベア25を備える荷役装置20において、支持体23は、船尾側に屈曲した略く字状であって下側を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアーム23Aと二本のアーム23A同士を連結する連結体23Bとを備え、台座21を船尾側に移動させかつアーム23Aの前倒状態における支持体23の上端を、操舵室と船首とを結んだ線よりも下方に位置させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撒積貨物船にばら積みされた粉,砂,小石等の積載物を荷役するための荷役装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
撒積貨物船の船倉にばら積みされた粉(例えば粉体鉱石等も含む),砂,小石(例えば石炭等も含む)等の積載物を搬出するために、撒積貨物船には専用の荷役装置が設けられており、船倉内で積載物を掴むグラブバケットは一度に多くの積載物を掴めるように大容量のものが用いられる。
しかし、積載物を掴んだ大容量のグラブバケットは非常に重いので、積載物を掴んだ後に搬出するためにグラブバケットを右舷側又は左舷側に旋回させると船の重心が大きく移動し、船が揺動し易いという問題がある。
【0003】
そこで、図6及び7に示すような、船100が揺動し難い荷役装置10が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−331875号公報
【0005】
図6及び7の荷役装置10は、船上を前後方向に移動可能な台座11にグラブバケット12を支持する支持体13が立設されてなる。支持体13は四本の支柱13aを有する門型であって、支持体13にはグラブバケット12を昇降させる昇降機構が設けられている。
グラブバケット12の下方にはホッパー14と横送りコンベア15が設けられており、グラブバケット12を船倉101に下降させるときには、図7の実線で示すように、ホッパー14と横送りコンベア15を台座11上において船首F側に移動させる。
そして、船倉101内で積載物Sを掴んだグラブバケット12を上昇させた後には、図7の二点鎖線で示すように、ホッパー14と横送りコンベア15を台座11上においてグラブバケット12の真下まで移動させて、ホッパー14の真上でグラブバケット12を開放しホッパー14で積載物Sを集める。
その後、横送りコンベア15によって積載物Sを右舷まで移送し、船外に搬出する。
【0006】
この荷役装置10によると、横送りコンベア15を備えるので、グラブバケット12を旋回させなくても積載物Sを右舷又は左舷まで移送することができる。
また、ホッパー14と横送りコンベア15は前後方向に移動可能なので、グラブバケット12を船倉101まで下降させるときにはホッパー14と横送りコンベア15を船首F側に移動させ、グラブバケット12を開放して横送りコンベア15に積載物Sを上載するときにはホッパー14と横送りコンベア15を船尾B側に移動させてグラブバケット12の下方に配置すればよい。よって、重量物であるグラブバケット12を旋回させずに上下に昇降させるだけで荷役できるので、荷役中に船100の重心位置の変動が少なく船100が揺動し難い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、支持体13はグラブバケット12をホッパー14の上方まで引き上げなければならないので、支持体13の高さはある程度高くなってしまう。その結果、操舵室102からの視界が支持体13によって遮られるので、荷役装置10が運航の妨げになってしまうという問題がある。
また、グラブバケット12降下時にはホッパー14と横送りコンベア15を船首F側に移動させるので、その分だけ台座11が前後方向に長くなってしまい、この荷役装置10は小型船や中型船には大き過ぎて搭載できないという問題もある。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、運航時に操舵室からの視界を遮らない荷役装置を提供することにある。
また、他の目的として、小型であって小型船から大型船まで搭載可能な荷役装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の荷役装置(20)は、船上を前後方向に移動可能な台座(21)と、船倉(101)にばら積みされた粉,砂,小石等の第一積載物(S)を掴むグラブバケット(22)と、前記台座(21)に立設されるとともに前記グラブバケット(22)を昇降させる昇降機構(34)が設けられ前記グラブバケット(22)を支持する支持体(23)と、前記グラブバケット(22)の下方に設けられ前記グラブバケット(22)から落下した前記第一積載物(S)を下方に集めるホッパー(24)と、前記ホッパー(24)の下方に設けられ前記ホッパー(24)から落下した前記第一積載物(S)を舷側に移送する横送りコンベア(25)を備える荷役装置(20)において、前記支持体(23)は、船尾(B)側に屈曲した略く字状であって下側を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアーム(23A)と前記二本のアーム(23A)同士を連結する連結体(23B)とを備え、前記台座(21)を船尾(B)側に移動させかつ前記アーム(23A)の前倒状態における前記支持体(23)の上端を、操舵室(102)と船首(F)とを結んだ線(L)よりも下方に位置させてなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の荷役装置(20)は、前記ホッパー(24)と前記横送りコンベア(25)は前記台座(21)に対して移動不能に固定されていることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の荷役装置(20)は、前記アーム(23A)の軸が設けられた位置より上方を船首(F)側から押圧して前記アーム(23A)を回動させる伸縮自在のシリンダ(26)を備えることを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の荷役装置(20)は、前記シリンダ(26)は油圧式であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の荷役装置(20)は、前記舷側に設けられ前記横送りコンベア(25)から移送された前記第一積載物(S)を船首(F)側に移送する縦送りコンベア(27)と、前記縦送りコンベア(27)の船首(F)側に設けられ前記縦送りコンベア(27)から移送された前記第一積載物(S)を船外に移送するブームコンベア(28)と、をさらに備え、前記横送りコンベア(25)、前記縦送りコンベア(27)、及び前記ブームコンベア(28)を正逆回転可能としたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の荷役装置(20)は、前記ブームコンベア(28)の先端の上方に、陸から船倉(101)に積み込む第二積載物が投入され集められた前記第二積載物を下方から前記ブームコンベア(28)に落下させる陸上ホッパー(29)が設けられることを特徴とする。
【0015】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に記載の荷役装置によれば、支持体は、下側を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアームと二本のアーム同士を連結する連結体とを備えるので、アームを前倒状態としてグラブバケットを船倉に下降させることができるとともに、アームを起立状態として下方のホッパーにグラブバケットから第一積載物を落下させることができる。
また、アームは船尾側に屈曲した略く字状であるので、前倒状態としたときに、一直線状のアームと比べてアームの重心が回動の軸近くに位置する。よって、前倒状態としてもアームはバランスを崩し難い。
また、ホッパーの下方に横送りコンベアを備えるので、グラブバケットを旋回させることなく第一積載物を舷側に移送することができる。
特に、台座を船尾側に移動させかつアームの前倒状態における支持体の上端を、操舵室と船首とを結んだ線よりも下方に位置させてなるので、運行時には台座を船尾側に移動させかつアームを前倒状態にしておくことで、支持体が操舵室からの視界を遮らず、安全に運航可能である。
【0017】
また、請求項2に記載の荷役装置によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加え、ホッパーと横送りコンベアは台座に対して移動不能に固定されているので、ホッパーと横送りコンベアを台座上において船首側に移動可能とした従来の荷役装置に比べて、台座の前後方向の寸法が小さくて済む。よって、荷役装置全体として小型になるので、小型船や中型船にも搭載可能である。一方、大型船には左右両舷に搭載可能である。
このようにホッパーと横送りコンベアを台座に対して移動不能としても、支持体が起立状態から前倒状態まで回動可能であるので、グラブバケットをホッパーに干渉させることなく昇降させることができる。
【0018】
また、請求項3に記載の荷役装置によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加え、アームの軸が設けられた位置より上方を船首側から押圧してアームを回動させる伸縮自在のシリンダを備えるので、アームを回動させる機構が単純で済み、安価でしかも故障も発生し難い。
【0019】
また、請求項4に記載の荷役装置によれば、請求項3に記載の発明の作用効果に加え、シリンダは油圧式であるので、シリンダの作動油自体に防錆・潤滑効果があり、シリンダを反復的に駆動させても摩擦による昇温はわずかである。よって、荷役作業中に第一積載物の粉塵が舞っても、シリンダが粉塵爆発の着火元とはならないので、粉塵爆発を防止でき安全である。
【0020】
また、請求項5に記載の荷役装置によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加え、舷側に設けられ横送りコンベアから移送された第一積載物を船首側に移送する縦送りコンベアと、縦送りコンベアの船首側に設けられ縦送りコンベアから移送された第一積載物を船外に移送するブームコンベアと、をさらに備え、横送りコンベア、縦送りコンベア、及びブームコンベアを正逆回転可能としたので、横送りコンベア、縦送りコンベア、及びブームコンベアを正回転させて第一積載物を船倉から船外に搬出できるだけでなく、それらを逆回転させて船外から船倉に搬入することもできる。
【0021】
また、請求項6に記載の荷役装置によれば、請求項5に記載の発明の作用効果に加え、ブームコンベアの先端の上方に、陸から船倉に積み込む第二積載物が投入され集められた第二積載物を下方からブームコンベアに落下させる陸上ホッパーが設けられるので、第二積載物を効率よく船倉に積み込むことができる。
【0022】
なお、本発明の荷役装置のように、支持体が、船尾側に屈曲した略く字状であって下側を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアームと二本のアーム同士を連結する連結体とを備え、台座を船尾側に移動させかつアームの前倒状態における支持体の上端を、操舵室と船首とを結んだ線よりも下方に位置させてなる点は、上述した特許文献1には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る荷役装置が配置された撒積貨物船を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る荷役装置を示す側面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る荷役装置を示す、図1におけるA−A線拡大断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る荷役装置におけるアームの起立状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る荷役装置におけるアームを前倒状態としたときの、操舵室からの視界を示す側面図である。
【図6】従来例に係る撒積貨物船の荷役装置が配置された撒積貨物船を示す斜視図である。
【図7】図6に示す撒積貨物船における荷役装置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1乃至図5を参照して、本発明の実施形態に係る荷役装置20を説明する。
この荷役装置20は、撒積貨物船100の船倉101にばら積みされた粉(例えば粉体鉱石も含む),砂,小石(例えば石炭等も含む)等の第一積載物Sを搬出入するためのものであって、台座21と、グラブバケット22と、支持体23と、ホッパー24と、横送りコンベア25と、縦送りコンベア27と、ブームコンベア28と、を備える。
なお、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0025】
台座21は、前後方向に長く設けられた船倉101の各部分の第一積載物Sを荷揚げできるように、前後方向に移動可能となっており、船上に設けられた軌道31に沿って移動する。この前後方向とは、船首F側を前、船尾B側を後ろとしたときの、前後方向のことをいう。軌道31内を円滑に移動できるように、台座21の下部には車輪36が設けられている。
また、台座21の形状は船首F側中央部が凹んだ平面視略凹状で、グラブバケット22を昇降させる際に台座21とグラブバケット22が干渉しないようになっている(図2の破線参照)。
また、台座21の左右方向の幅は船倉101の左右方向の幅よりも広くなっており、台座21は船倉101の一部を覆う蓋となっている。また、台座21の前後方向の長さは支持体23を上載可能なだけ長ければよい。
【0026】
グラブバケット22は、ワイヤ32で吊るされた一対のバケット22aからなり、グラブバケット22が閉じることで船倉101にばら積みされた粉(例えば粉体鉱石も含む),砂,小石(例えば石炭等も含む)等の第一積載物Sを掴む。
また、グラブバケット22は左右に延び、その左右の長さは船倉101の底面の左右の長さより若干短い。つまり、グラブバケット22を左右方向に動かすことなく前後方向に順次移動させるだけで、船倉101内のほぼ全ての第一積載物Sを荷揚げすることができる。
【0027】
支持体23は、台座21に立設された二本のアーム23Aと、二本のアーム23Aの先端同士を連結する連結体23Bとを備え、グラブバケット22を支持する。
二本のアーム23Aは、船尾B側に屈曲した略く字状であって、下端を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能となっている。詳しくは、アーム23A毎に設けられた伸縮自在の油圧式シリンダ26によって、アーム23Aの軸が設けられた位置(下端)より上方でかつアーム23Aの屈曲点23Aaよりも下方の位置を、船首F側から押圧してアーム23Aを回動させる。この二本のアーム23Aは同時に同じ角度だけ回動する。
また、図2に示すように前倒状態において、アーム23Aの先端23Abは台座21の船首F側端面21aよりも船首F側に位置し、また、図4に示すように起立状態においては、アーム23Aの先端23Abはホッパー24の真上に位置する。
連結体23Bには、ワイヤ32を巻き取る巻取部33とモータ(図示しない)を有する昇降機構34が設けられおり、昇降機構34を作動させることでグラブバケット22が昇降する。
【0028】
ホッパー24は、グラブバケット22の下方に設けられ、開放されたグラブバケット22から落下する第一積載物Sを受けて下方に集めるものである。
ホッパー24の上方開口部24aの前後方向の開口量は、グラブバケット22を開放したときの前後方向の開口量よりも大きい。そして、ホッパー24の船首F側及び船尾B側の側面が傾斜しており、ホッパー24の下方開口部24bは上方開口部24aよりも小さい。
また図3に示すように、ホッパー24は左右方向に延び、その左右方向の長さは、グラブバケット22からの第一積載物Sをこぼすことなく全て受けられるようにグラブバケット22の左右方向の長さよりも若干長くなっている。
さらに、ホッパー24は台座21に対して移動不能に固定されている。
【0029】
横送りコンベア25は、ホッパー24の下方にホッパー24に対して平行に延びるように設けられ、ホッパー24から落下した第一積載物Sを受けて、第一積載物Sを右舷にある縦送りコンベア27まで移送する。
この横送りコンベア25もホッパー24と同様に、台座21に対して移動不能に固定されている。
また、横送りコンベア25は正逆回転可能である。なお、正回転とは船倉101から船外へ搬出するときの回転をいう。
さらに、横送りコンベア25を逆回転したときに陸から船倉101へ積み込む第二積載物を横送りコンベア25から船倉101に落とし込めるように、横送りコンベア25には落し込み機構(図示しない)が設けられている。なお、ここでは便宜上、搬出する積載物Sを第一積載物、搬入する積載物Sを第二積載物としたが、これらは同じ種類の積載物Sであってもよい。
【0030】
縦送りコンベア27は、右舷に設けられ、横送りコンベア25から移送された第一積載物Sを船首F側にあるブームコンベア28まで移送する。
縦送りコンベア27も正逆回転可能である。
また、横送りコンベア25と縦送りコンベア27との交差部分には、横送りコンベア25から縦送りコンベア27へ第一積載物Sを誘導するためのスクレーパー(図示しない)が設けられている。第一積載物Sの船倉101から船外への搬出時には、この交差部分においては縦送りコンベア27よりも横送りコンベア25のほうが高い位置にあり、スクレーパー(図示しない)を介して横送りコンベア25から縦送りコンベア27への第一積載物Sの移送は円滑に行われる。
【0031】
ブームコンベア28は、縦送りコンベア27の船首F側に設けられ、縦送りコンベア27から移送された第一積載物Sを船外に移送する。
また、ブームコンベア28は、縦送りコンベア27とブームコンベア28との交差部分にあるブームポスト35を軸に回動可能になっており、搬出時には図1に示すようにブームコンベア28の先端28aを陸上へ向け、船100の運航時にはブームコンベア28の先端28aを船首F側へ向ける。
さらに、ブームコンベア28も正逆回転可能である。
縦送りコンベア27とブームコンベア28との交差部分においては、ブームコンベア28よりも縦送りコンベア27のほうが高い位置にあり、この交差部分に設けられたスクレーパー(図示しない)を介して縦送りコンベア27からブームコンベア28への移送は円滑に行われる。
これらそれぞれのコンベア25,27,28には、弛み緩衝装置(図示しない)が設けられている。また、いずれかのコンベア25,27,28の途中に、金属感知装置(図示しない)と金属除去装置(図示しない)を設けてもよい。
【0032】
また、防爆対策として、荷役装置20における駆動装置を可能な限り油圧式とした。
そして、本実施形態に係る荷役装置20はコンピュータによる自動操縦が行われ、荷役装置20を操縦するための特殊免許(クレーン運転士等)を必要としない。
【0033】
次に、船倉101から船外への搬出時、船外から船倉101への搬入時、及び船100の運航時における荷役装置20の動きについて説明する。
【0034】
(1)搬出時
まず図2に示すように、アーム23Aを前倒状態としてグラブバケット22を船倉101に下降させる。
次に図3に示すように、船倉101においてグラブバケット22が第一積載物Sを掴んだら、グラブバケット22の位置が台座21よりも高くなるまでワイヤ32を巻き上げる。
【0035】
次に油圧シリンダ26を伸ばして、図4に示すように、アーム23Aを起立状態とする。
そして、グラブバケット22がホッパー24の真上まできたら、グラブバケット22を開放して中の第一積載物Sをホッパー24内に落下させる。
落下した第一積載物Sは横送りコンベア25に載り、横送りコンベア25が正回転することで右舷まで第一積載物Sは移送される。そして、正回転する縦送りコンベア27によって船首F側まで、さらに、正回転するブームコンベア28によって船外まで、第一積載物Sは順に送られる。
【0036】
(2)搬入時
まず、ブームコンベア28の先端28aの上方に陸上ホッパー29を設ける。
次に、陸上ホッパー29に、陸から船倉101に積み込む第二積載物を投入し、陸上ホッパー29で集められた第二積載物を下方からブームコンベア28に落下させる。
このときブームコンベア28は逆回転しており、ブームコンベア28と縦送りコンベア27の交差部分に設けられたスクレーパー(図示しない)を介して、第二積載物はブームコンベア28の上方に位置する縦送りコンベア27まで移送される。
次に、第二積載物は縦送りコンベア27と横送りコンベア25の交差部分に設けられたスクレーパー(図示しない)を介して、縦送りコンベア27からその上方に位置する横送りコンベア25まで送られ、横送りコンベア25に設けられた落し込み機構(図示しない)によって、第二積載物は船倉101に落とされる。
【0037】
(3)運航時
船100の運航時には、図5に示すように台座21を最も船尾B側に移動させ、この位置でアーム23Aを前倒状態として、アーム23Aの前倒状態における支持体23の上端23Abを操舵室102と船首Fとを結んだ線(仮想線)Lよりも下方に位置させる。
なお、支持体23(アーム23A)がこの位置において起立状態であると、図5に示すように、支持体23の上端23Abは操舵室102と船首Fとを結んだ線Lよりも上方になる。
【0038】
以上のように構成された荷役装置20によれば、支持体23は、下端を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアーム23Aと二本のアーム23A同士を連結する連結体23Bとを備えるので、アーム23Aを前倒状態としてグラブバケット22を船倉101に下降させることができるとともに、アーム23Aを起立状態として下方のホッパー24にグラブバケット22から第一積載物Sを落下させることができる。
また、アーム23Aは船尾B側に屈曲した略く字状であるので、前倒状態としたときに、一直線状のアームと比べてアーム23Aの重心が回動の軸近くに位置する。よって、前倒状態としてもアーム23Aはバランスを崩し難い。
また、ホッパー24の下方に横送りコンベア25を備えるので、グラブバケット22を旋回させることなく第一積載物Sを右舷に移送することができる。
【0039】
特に、台座21を船尾B側に移動させかつアーム23Aの前倒状態における支持体23の上端23Abを、操舵室102と船首Fとを結んだ線Lよりも下方に位置させてなるので、運行時には台座21を船尾B側に移動させかつアーム23Aを前倒状態にしておくことで、支持体23が操舵室102からの視界を遮らず、安全に運航可能である。
また、このように支持体23を回動式にしてコンパクトにすることで、従来のそれ自身は動かない門型の支持体13に比べて、約三割程度重量を軽減することができる。
【0040】
また、ホッパー24と横送りコンベア25は台座21に対して移動不能に固定されているので、ホッパー14と横送りコンベア15を台座11上において船首F側に移動可能とした従来の荷役装置10に比べて、台座21の前後方向の寸法が小さくて済む。よって、荷役装置20全体として小型になるので、図1に示すような小型船や中型船にも搭載可能である。
このようにホッパー24と横送りコンベア25を台座21に対して移動不能としても、支持体23が起立状態から前倒状態まで回動可能であるので、グラブバケット22をホッパー24に干渉させることなく昇降させることができる。
【0041】
さらに、アーム23Aの軸が設けられた位置より上方を船首F側から押圧してアーム23Aを回動させる伸縮自在のシリンダ26を備えるので、アーム23Aを回動させる機構が単純で済み、安価でしかも故障も発生し難い。
また、シリンダ26は油圧式であるので、シリンダ26の作動油自体に防錆・潤滑効果があり、シリンダ26を反復的に駆動させても摩擦による昇温はわずかである。よって、荷役作業中に第一積載物Sの粉塵が舞っても、シリンダ26が粉塵爆発の着火元とはならないので、粉塵爆発を防止でき安全である。
【0042】
また、右舷に設けられ横送りコンベア25から移送された第一積載物Sを船首F側に移送する縦送りコンベア27と、縦送りコンベア27の船首F側に設けられ縦送りコンベア27から移送された第一積載物Sを船外に移送するブームコンベア28と、をさらに備え、横送りコンベア25、縦送りコンベア27、及びブームコンベア28を正逆回転可能としたので、横送りコンベア25、縦送りコンベア27、及びブームコンベア28を正回転させて第一積載物Sを船倉101から船外に搬出できるだけでなく、それらを逆回転させて船外から船倉101に搬入することもできる。
【0043】
また、ブームコンベア28の先端28aの上方に、陸から船倉101に積み込む第二積載物が投入され集められた第二積載物を下方からブームコンベア28に落下させる陸上ホッパー29が設けられるので、第二積載物を効率よく船倉101に積み込むことができる。
【0044】
さらに、コンピュータの自動操縦による荷役時間の短縮、荷役装置20の軽量化、安全性、及び船速の向上に伴って、運航経費等が安価になる。
【0045】
なお、ホッパー24と横送りコンベア25は台座21に対して移動不能に固定されているとしたが、これに限られるものではない。
【0046】
また、シリンダ26によってアーム23Aを回動させるとしたが、他の機構によってアーム23Aを回動させてもよい。
また、シリンダ26は油圧式としたが、これに限られるものではない。
【0047】
さらに、横送りコンベア25、前記縦送りコンベア27、及びブームコンベア28を正逆回転可能としたが、正回転のみ可能であってもよい。
また、ブームコンベア28の先端28aの上方に陸上ホッパー29を設けたが、これに限られるものではなく、他の方法によりブームコンベア28に第二積載物を載せてもよい。
【0048】
また、縦送りコンベア27を右舷に設けたが、左舷に設けてもよい。
さらには、横送りコンベア25で第一積載物Sを舷側に移送したが、その後は縦送りコンベア27以外の方法により船外まで第一積載物Sを移送してもよい。
【0049】
また、台座21は平面視略凹状としたが、前倒状態においてグラブバケット22が台座21に干渉しなければ、台座21の船首F側の端面21aは一直線状であってもよい。
また、本実施形態に係る荷役装置20を小型又は中型の撒積貨物船100に搭載可能としたが、大型の撒積貨物船100には左右両舷へ搭載可能である。
【0050】
また、各コンベア25,27,28の回転を正回転から逆回転へ又は逆回転から正回転へ切り替えた場合に積載物Sを移送可能であれば、横送りコンベア25と縦送りコンベア27との接続の方法、及び縦送りコンベア27とブームコンベア28との接続の方法は、本実施形態に係るものに限られるものではない。
【符号の説明】
【0051】
10 荷役装置
11 台座
12 グラブバケット
13 支持体
13a 支柱
14 ホッパー
15 横送りコンベア
20 荷役装置
21 台座
21a 船首側端面
22 グラブバケット
22a バケット
23 支持体
23A アーム
23Aa 屈曲点
23Ab 先端(上端)
23B 連結体
24 ホッパー
24a 上方開口部
24b 下方開口部
25 横送りコンベア
26 シリンダ
27 縦送りコンベア
28 ブームコンベア
28a 先端
29 陸上ホッパー
31 軌道
32 ワイヤ
33 巻取部
34 昇降機構
35 ブームポスト
36 車輪
100 船(撒積貨物船)
101 船倉
102 操舵室
B 船尾
F 船首
L 操舵室と船首とを結んだ線
S 積載物(第一積載物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船上を前後方向に移動可能な台座と、
船倉にばら積みされた粉,砂,小石等の第一積載物を掴むグラブバケットと、
前記台座に立設されるとともに前記グラブバケットを昇降させる昇降機構が設けられ前記グラブバケットを支持する支持体と、
前記グラブバケットの下方に設けられ前記グラブバケットから落下した前記第一積載物を下方に集めるホッパーと、
前記ホッパーの下方に設けられ前記ホッパーから落下した前記第一積載物を舷側に移送する横送りコンベアを備える荷役装置において、
前記支持体は、船尾側に屈曲した略く字状であって下側を軸として起立状態から前倒状態まで回動可能な二本のアームと前記二本のアーム同士を連結する連結体とを備え、
前記台座を船尾側に移動させかつ前記アームの前倒状態における前記支持体の上端を、操舵室と船首とを結んだ線よりも下方に位置させてなることを特徴とする荷役装置。
【請求項2】
前記ホッパーと前記横送りコンベアは前記台座に対して移動不能に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の荷役装置。
【請求項3】
前記アームの軸が設けられた位置より上方を船首側から押圧して前記アームを回動させる伸縮自在のシリンダを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の荷役装置。
【請求項4】
前記シリンダは油圧式であることを特徴とする請求項3に記載の荷役装置。
【請求項5】
前記舷側に設けられ前記横送りコンベアから移送された前記第一積載物を船首側に移送する縦送りコンベアと、
前記縦送りコンベアの船首側に設けられ前記縦送りコンベアから移送された前記第一積載物を船外に移送するブームコンベアと、をさらに備え、
前記横送りコンベア、前記縦送りコンベア、及び前記ブームコンベアを正逆回転可能としたことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の荷役装置。
【請求項6】
前記ブームコンベアの先端の上方に、陸から船倉に積み込む第二積載物が投入され集められた前記第二積載物を下方から前記ブームコンベアに落下させる陸上ホッパーが設けられることを特徴とする請求項5に記載の荷役装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−56623(P2013−56623A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196102(P2011−196102)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(511219733)
【Fターム(参考)】