説明

荷役車両の荷役装置

【課題】左右のフォーク間の間隔を調節する構成を簡素化でき、さらに各フォークのスライドを容易に同調でき、掛かるコストを低減できる荷役車両の荷役装置を提供することを目的とする。
【解決手段】昇降自在なキャリッジ8と、キャリッジ8に支持された左右一対のフォーク9とを備えたフォークリフト1のマスト装置3であって、フォーク9を連結するリンク機構10aと、リンク機構10aを駆動するシリンダ装置11aを設け、リンク機構10aが、シリンダ装置11aによりフォーク9間の中心から左右対称に駆動される構成とする。この構成により、フォーク9がキャリッジ8に沿ってスライドされ、フォーク9間の間隔を調節できるとともに、フォーク9間の中心が左右中心線上からずれないように、フォーク9のスライドを容易に同調でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフォークリフト等の荷役車両に装備される荷役装置であって、特にフォーク間の間隔を調節できるシリンダ装置を備えた荷役車両の荷役装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の荷役装置の一例が、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示される荷役車両の荷役装置は、車両の前部に設けられた左右一対のマストと、前記マストに沿って昇降される枠状のキャリッジと、前記キャリッジに沿って左右方向にスライド可能な左右一対のフォークとを備えたフォークリフトの荷役装置である。
【0003】
上記枠状のキャリッジの枠内には、長手方向が水平方向に沿って、かつキャリッジに沿って(左右方向に沿って)、基端が一方のフォークに連結されるとともに、他端が他方のフォークに連結された一方のシリンダ装置と、基端が前記キャリッジに固定されるとともに他端が一方のフォークに連結された他方のシリンダ装置とが備えられている。また、各シリンダ装置は、筒状のシリンダと前記シリンダから出退自在なロッドを有するとともに、各フォークを連結する一方のシリンダ装置は、他方のシリンダ装置と比較して、シリンダの直径が略半分に形成され、さらにロッドの長さが略2倍に形成されている。
【0004】
上記構成において、前記フォーク間の間隔を拡大するときは、単位時間毎に同量の圧油が各シリンダ装置のシリンダへ供給され、一方の前記シリンダの直径が他方の前記シリンダの略半分の直径に形成されているため、一方のシリンダから出動されるロッドが他方のシリンダから出動されるロッドの2倍のストロークで移動され、すなわち他方のシリンダ装置により一方のフォークがキャリッジに沿って一方へスライドされるとともに、一方のシリンダ装置により他方のフォークがキャリッジに沿って他方へスライドされ、フォーク間の間隔の中心が車両中心線上からずれることなく、各フォークのスライドが同調され、前記フォーク間の間隔が拡大される。なお、前記フォーク間の間隔を縮小するときは、上下の各シリンダ装置から単位時間毎に同量の圧油が排出され、前記フォーク間の間隔が縮小される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−257895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したフォークリフトの荷役装置は、左右のフォーク間の間隔を調節するため、上下2つのシリンダ装置を備えているが、シリンダ装置を荷役装置に複数設ける構成では、荷役装置に掛かるコストが増大する。
【0007】
さらに、シリンダ装置を荷役装置に複数設ける構成では、フォーク間の間隔を調節するとき、フォーク間の中心がフォークリフトの中心線上からずれないように、各シリンダ装置のロッドの出退を同調させるため、一方のシリンダ装置のシリンダに対して他方のシリンダ装置のシリンダを精度よく形成するとともに、これらのシリンダへ圧油を分配して供給しなければならず、フォーク間の間隔を調節する構成が複雑になり、荷役装置に掛かるコストが増大する。
【0008】
そこで本発明は、左右のフォーク間の間隔を調節する構成を簡素化でき、さらに各フォークのスライドを容易に同調でき、掛かるコストを低減できる荷役車両の荷役装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、車両前部に設けられた左右一対のマストと、前記マストに沿って昇降自在なキャリッジと、前記キャリッジに支持され、左右方向にスライドされて間隔が調節される左右一対のフォークとを備えた荷役車両の荷役装置であって、
前記左右のフォークを連結するリンク機構と、前記リンク機構を駆動する駆動装置を設け、前記駆動装置により前記リンク機構を左右のフォーク間の中心から左右対称に駆動し、前記フォークを前記キャリッジに沿ってスライドさせ、前記フォーク間の間隔を調節することを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、左右のフォークを連結するリンク機構が、駆動装置により左右のフォーク間の中心から左右対称に駆動されることにより、フォークがキャリッジに沿ってスライドされ、前記フォーク間の間隔が調節されるとともに、フォーク間の中心が荷役車両の中心線上からずれないように、左右のフォークのスライドが容易に同調される。よって、左右のフォーク間の間隔を調節する構成が、リンク機構と駆動装置とから簡素に構成され、荷役装置に掛かるコストが低減される。
【0011】
また本発明の請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の発明であって、前記リンク機構を、左右一対のパンタグラフから構成し、前記駆動装置を、前記キャリッジの左右中心に基端が固定されたシリンダ部と、前記シリンダ部より上下方向へ出退されるロッドを有するシリンダ装置から構成し、前記各パンタグラフはそれぞれ、内方の上端が前記キャリッジの左右中心に揺動自在に連結され、内方の下端が前記ロッドの先端に揺動自在に連結されるとともに、外方の先端が外方のフォークに揺動自在に連結され、前記ロッドの出退に伴って前記左右のパンタグラフを左右対称に伸縮動し、前記フォークを前記キャリッジに沿ってスライドさせ、前記フォーク間の間隔を調節することを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、左右のフォークを連結する左右のパンタグラフが、シリンダ装置のロッドの出退に伴って伸縮動されることにより、左右のフォークがキャリッジに沿ってスライドされ、左右のフォーク間の間隔が調節されるとともに、フォーク間の中心が荷役車両の中心線上からずれないように、左右のフォークのスライドが容易に同調される。よって、左右のフォーク間の間隔を調節する構成が、左右のパンタグラフと1つのシリンダ装置とから簡素に構成され、荷役装置に掛かるコストが低減される。
【0013】
また本発明の請求項3に記載の発明は、上記請求項2に記載の発明であって、前記各フォークの後部に上下方向に沿って溝部を有する連結部を形成し、前記各パンタグラフの外方の先端はそれぞれ、前記連結部の溝部に沿って上下方向にスライド自在に連結されていることを特徴とするものである。
【0014】
上記構成によれば、パンタグラフの伸縮動に伴って、各パンタグラフの外方の先端がそれぞれ、連結部の溝部に沿って上下方向にスライド自在に連結されていることにより、各パンタグラフがスムーズに伸縮動される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、左右のフォークを連結するリンク機構が、駆動装置により左右対称に駆動され、フォークがキャリッジに沿ってスライドされて、前記フォーク間の間隔が調節されることにより、左右のフォーク間の間隔を調節する構成を、リンク機構と駆動装置とから簡素に構成でき、荷役装置に掛かるコストを低減できる。さらに、左右のフォークを連結するリンク機構が、駆動装置により左右対称に駆動されることにより、フォーク間の中心が荷役車両の中心線上からずれないように、左右のフォークのスライドを容易に同調できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態1におけるフォークリフトの正面斜視図である。
【図2】同フォークリフトのマスト装置の要部正面図である。
【図3】同フォークリフトのマスト装置の要部背面図であり、(a)はマスト装置のフォーク間の間隔が狭い状態を示し、(b)はマスト装置のフォーク間の間隔が広い状態を示す。
【図4】本発明の実施の形態2におけるフォークリフトのマスト装置の要部背面図であり、(a)はマスト装置のフォーク間の間隔が狭い状態を示し、(b)はマスト装置のフォーク間の間隔が広い状態を示す。
【図5】本発明の実施の形態3におけるフォークリフトのマスト装置の要部背面図であり、(a)はマスト装置のフォーク間の間隔が狭い状態を示し、(b)はマスト装置のフォーク間の間隔が広い状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
図1に示すように、1はフォークリフト(荷役車両の一例)であって、フォークリフト1は、操縦席に配設された各操作装置(図示せず)が操作され、前後左右に走行自在な車両2と、この車両2の前部に設けられ、荷を移載するマスト装置(荷役装置)3とを備えている。ここで、車両2の走行方向を前後方向Xとし、前記前後方向Xと直交する水平方向を左右方向Yとする。
【0018】
前記マスト装置3は、車両2の前部に設けられた左右一対の固定マスト5および固定マスト5に沿って昇降自在な左右一対の可動マスト6からなるマスト7と、可動マスト6に沿って昇降自在に設けられたキャリッジ8と、キャリッジ8へ側方から着脱自在に嵌め合わされてキャリッジ8に沿って左右方向Yにスライドされ、間隔が調節される左右一対のフォーク9とを備えている。また、マスト装置3には、キャリッジ8の左右方向Yの中心に固定され、左右のフォーク9を連結する伸縮自在なリンク機構10aと、キャリッジ8の左右方向Yの中心に固定され、リンク機構10aを伸縮動(駆動の一例)するシリンダ装置(駆動装置の一例)11aとが設けられている。
【0019】
上記キャリッジ8は、図1,図2に示すように、上下のフィンガーバー15,16と、フィンガーバー15,16の端部をそれぞれ、上下方向へ連結する一対の側部バー17,17により枠状に形成されている。また、キャリッジ8の後部には、可動マスト6に形成されたレール(図示せず)に沿って昇降される左右のリフトブラケット18が、上下のフィンガーバー15,16を連結するように設けられている。なお、上方のフィンガーバー15には、フィンガーバー15の上部へ左右方向Yの全長に渡ってレール部15aが形成され、下方のフィンガーバー16には、フィンガーバー16の下部へ左右方向Yの全長に渡ってレール部16aが形成されている。
【0020】
また、マスト装置3は、一端が各固定マスト5に固定され、可動マスト6の上部を介して他端がリフトブラケット18に固定される左右のリフトチェーン19,19を有している。前記構成により、図示しない昇降装置により可動マスト6が固定マスト5に沿って昇降されると、各リフトチェーン19により各リフトブラケット18が可動マスト6に沿って昇降され、リフトブラケット18とともにキャリッジ8が可動マスト6に沿って昇降される。
【0021】
上記各フォーク9の後面上部には、上方のフィンガーバー15のレール部15aに引掛けられ、各フォーク9をキャリッジ8に沿って左右方向Yへスライド可能にする上方掛部22が形成され、各フォーク9の後面下部には、下方のフィンガーバー16のレール部16aに引掛けられ、各フォーク9をキャリッジ8に沿って左右方向Yへスライド可能にする下方掛部23が形成されている。また各フォーク9の後部に、上方掛部22と下方掛部23との間で上下方向に沿って形成され、リンク機構10aの他端が連結される溝部24aを有する連結部24が設けられている。
【0022】
上記シリンダ装置11aは、基端がキャリッジ8の左右方向Yの中心に固定されたシリンダ部30aと、シリンダ部30aより上下方向へ出退されるロッド31aを備えている。詳しくは、シリンダ部30aの基端が、フィンガーバー15の左右方向Yの中心にブラケット28を介して垂設され、ロッド31aは、図示しない供給装置によりシリンダ部30aへ供給、またはシリンダ部30aより排出される圧油によりシリンダ部30aから上下方向へ出退動される。
【0023】
上記リンク機構10aは、図2に示すように、複数の矩形状のリンク26から形成される左右一対のパンタグラフ27により構成されている。前記パンタグラフ27はそれぞれ、一対の長形なリンク26a,26cと、リンク26a,26cの略半分の長さに形成された一対のリンク26b,26dを備えるとともに、リンク26aの中心とリンク26cの中心を揺動自在に連結し、リンク26bとリンク26dの一端を揺動自在に連結し、リンク26aの一端とリンク26bの他端、およびリンク26cの一端とリンク26dの他端を揺動自在に連結して構成されている。
【0024】
上記のように構成されたパンタグラフ27は、リンク26aの他端(一端の上肢点の一例)がキャリッジ8の左右中心に揺動自在に連結され、リンク26cの他端(一端の下肢点の一例)がロッド31aの先端に揺動自在に連結されるとともに、リンク26bおよびリンク26dの一端が左右のフォーク9の連結部24に揺動自在に連結され、キャリッジ8へ左右一対に配設されている。また、各パンタグラフ27のリンク26bの他端およびリンク26dの他端は、フォーク9の連結部24の溝部24aに沿って上下方向へスライド自在に連結されている。
【0025】
上記構成により、図3に示すように、シリンダ装置11aのロッド31aの出退に伴ってリンク機構10aを伸縮動(駆動)させ、左右のフォーク9をキャリッジ8に沿ってスライドさせることにより、左右のフォーク9間の間隔が調節される。詳しくは、図3(a)に示すように、フォーク9間の間隔が狭い状態(シリンダ部30aに圧油が多い、あるいは満ちた状態)のとき、シリンダ装置11aのシリンダ部30aより圧油を排出し、ロッド31aが退動されると、パンタグラフ27が伸び、図3(b)に示すように、フォーク9間の間隔が広い状態(シリンダ部30aに圧油が少ない、あるいは空の状態)へと、フォーク9間の間隔が調節される。
【0026】
上記フォーク9間の間隔が調節される際のリンク機構10aの動作は、ロッド31aの退動によりリンク26cの他端が上方へ引かれると、リンク26aの他端が連結され、かつリンク26aとリンク26cとの中心が回転自在に連結されていることにより、リンク26aの他端とリンク26cとの他端との上下方向の間隔が狭くなるとともに、リンク26aの他端とリンク26cの一端(リンク26cの他端とリンク26aの一端)との左右方向Yの間隔が広くなる。これと同時に、リンク26aの一端とリンク26cの一端(リンク26bの他端とリンク26dの他端)との上下方向の間隔が狭くなるとともに、リンク26bおよびリンク26dの他端がキャリッジ8の外方へ移動される。よって、リンク26bおよびリンク26dの他端に連結されたフォーク9がキャリッジ8に沿って外方へスライドされ、フォーク9間の間隔が広い状態に調節される。
【0027】
またフォーク9間の間隔を狭く調節するときは、シリンダ装置11aのシリンダ部30aに圧油を供給し、ロッド31aがシリンダ部30aより出動されると、リンク26cの他端が下方へ押され、リンク機構10aは上述したロッド31aがシリンダ部30aに退動されるときの逆に動作し、リンク26bおよびリンク26dの他端に連結されたフォーク9がキャリッジ8に沿って内方へスライドされ、フォーク9間の間隔が狭い状態に調節される。
【0028】
またフォーク9間の間隔を調節するとき、リンク機構10aが伸縮されると、各パンタグラフ27のリンク26bおよびリンク26dの他端は、各フォーク9の連結部24の溝部24aに沿って上下動される。詳しくは、パンタグラフ27が伸縮されると、リンク26aの一端が固定されているため、パンタグラフ27の上肢点は、キャリッジ8に対して上下方向の変化なしに左右方向Yに伸縮されるが、リンク26cの他端が上下方向へ押引きされてパンタグラフ27が伸縮され、パンタグラフ27の下肢点は、キャリッジ8に対して上下方向に変化しながら左右方向Yに伸縮されるため、パンタグラフ27が伸びるとき、リンク26bおよび26dの一端が、フォーク9の溝部24aに沿って上方へスムーズに移動され、パンタグラフ27が縮むとき、リンク26bおよび26dの一端が、フォーク9の溝部24aに沿って下方へスムーズに移動される。
【0029】
以上のように本発明の実施の形態1によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10aが、シリンダ装置11aのロッド31aの出退に伴って左右対称に駆動され、フォーク9がキャリッジ8に沿ってスライドされて、フォーク9間の間隔が調節されることにより、左右のフォーク9間の間隔を調節する構成を、従来のように、シリンダ装置を2つ設ける複雑な構成を要さず、リンク機構10aと1つのシリンダ装置11aとから簡素に構成でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
【0030】
さらに本発明の実施の形態1によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10aが、シリンダ装置11aにより左右のフォーク9間の中心から左右対称に駆動されることにより、従来のように、各シリンダ装置のロッドの出退を同調させ各フォークのスライドを同調させる構成を要さず、フォーク9間の中心がフォークリフト1の左右中心線上からずれないように、左右のフォーク9のスライドを容易に同調でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
【0031】
また本発明の実施の形態1によれば、各パンタグラフ27の伸縮動に伴って、各パンタグラフ27の外方の先端がそれぞれ、連結部24の溝部24aに沿って上下方向にスライド自在に連結されていることにより、各パンタグラフ27を左右方向Yにスムーズに伸縮動できる。
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0032】
上記実施の形態1では、マスト装置3は、一対の長形なリンク26a,26cと、リンク26a,26cの略半分の長さに形成された一対のリンク26b,26dを備えるとともに、リンク26aの中心とリンク26cの中心を揺動自在に連結し、リンク26bとリンク26dの一端を揺動自在に連結し、リンク26aの一端とリンク26bの他端、およびリンク26cの一端とリンク26dの他端を揺動自在に連結して構成される左右一対のパンタグラフ27を有するリンク機構10aと、リンク10aを伸縮動(駆動)するシリンダ装置11aを備えているが、実施の形態2では、マスト装置3が、図4に示す、各フォーク9を連結し、左右対称に動作するリンク機構10bと、リンク機構10bを伸縮動(駆動)するシリンダ装置11bを備える。
【0033】
上記リンク機構10bは、図4に示すように、左右一対の矩形状に形成されたリンク33と、略V字状に形成されたリンク34を備え、リンク33にはそれぞれ一端側から中心部に渡って溝部33aが形成され、各リンク33の一端がそれぞれ、キャリッジ8のフィンガーバー16へブラケットを介して揺動自在に連結され、各リンク33の他端がそれぞれ、各フォーク9の連結部24の溝部24aへ揺動自在に、かつ上下動自在に連結され、リンク34の端部がそれぞれ、リンク33の溝部33aに揺動自在に、かつ溝部33aに沿ってスライド自在に連結されている。
【0034】
上記シリンダ装置11bは、基端がキャリッジ8のフィンガーバー16の左右方向Yの中心にブラケット28を介して固定されたシリンダ部30bと、シリンダ部30bより上下方向へ出退されるロッド31bを備えている。ロッド31bは、図示しない供給装置によりシリンダ部30bへ供給、またはシリンダ部30bより排出される圧油によりシリンダ部30bから上下方向へ出退動されるとともに、ロッド31bの先端には、下向きに配設された略V字状のリンク34の頂部が固定されている。
【0035】
上記構成により、図4に示すように、シリンダ装置11bのロッド31bの出退に伴ってリンク機構10bを駆動し、左右のフォーク9をキャリッジ8に沿ってスライドさせ、左右のフォーク9間の間隔が調節される。詳しくは、図4(a)に示すように、フォーク9間の間隔が狭い状態のとき、シリンダ装置10bのシリンダ部30bより圧油を排出し、ロッド31bが退動され、リンク34がリンク33の溝部33aに沿って下方へ下がると、各リンク33の他端が、リンク33の一端を回転中心として揺動され、各フォーク9の溝部24aに沿って下方へスライドされるとともに左右外方へ倒され、各フォーク9がキャリッジ8に沿って外方にスライドされる。よって図4(b)に示すように、フォーク9間の間隔が広い状態にフォーク9間の間隔が調節される。
【0036】
またフォーク9間の間隔を狭く調節するときは、シリンダ装置11bのシリンダ部30bに圧油が供給され、ロッド31bがシリンダ部30bより出動されると、リンク機構10bは上述したロッド31bがシリンダ部30bに退動されるときの逆に動作され、各フォーク9がキャリッジ8に沿って内方にスライドされ、フォーク9間の間隔が狭い状態にフォーク9間の間隔が調節される。
【0037】
以上のように本発明の実施の形態2によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10bが、シリンダ装置11bのロッド31bの出退に伴って左右対称に駆動され、フォーク9がキャリッジ8に沿ってスライドされて、フォーク9間の間隔が調節されることにより、左右のフォーク9間の間隔を調節する構成を、従来のように、シリンダ装置を2つ設ける複雑な構成を要さず、リンク機構10bと1つのシリンダ装置11bとから簡素に構成でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
【0038】
さらに本発明の実施の形態2によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10bが、シリンダ装置11bにより左右のフォーク9間の中心から左右対称に駆動されることにより、従来のように、各シリンダ装置のロッドの出退を同調させ各フォークのスライドを同調させる構成を要さず、フォーク9間の中心がフォークリフト1の左右中心線上からずれないように、左右のフォーク9のスライドを容易に同調でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
[実施の形態3]
以下、本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0039】
上記実施の形態1,2では、マスト装置3は、リンク機構10a,10bと、リンク機構10a,10bを伸縮動するシリンダ装置11a,11bを備えているが、実施の形態3では、図5に示すように、左右のフォーク9を連結するリンク機構10cと、リンク機構10cを駆動するシリンダ装置11cを備え、シリンダ装置11cによりリンク機構10cを左右のフォーク9間の中心から左右対称に駆動し、フォーク9をキャリッジ8に沿ってスライドさせ、フォーク9間の間隔を調節する。
【0040】
図5に示すように、上記シリンダ装置11cは、基端がキャリッジ8のフィンガーバー15に沿って固定されたシリンダ部30cと、シリンダ部30cからキャリッジ8の左右方向Yの略半分の長さで出退されるロッド31cを有し、ロッド31cの先端が一方(または他方)のフォーク9に連結されている。
【0041】
上記リンク機構10cは、下部にラックが形成された矩形状のリンク35と、上部にラックが形成された矩形状のリンク36と、キャリッジ8のフィンガーバー16の左右中心からブラケット28を介して回転自在に設けられ、リンク35,36のラックと歯合する歯車37とを備えている。詳しくは、上記リンク35には、左右方向Yに沿って他端から所定の長さで溝部35aが形成され、リンク35は、一端が一方(または他方)のフォーク9に連結されるとともに、溝部35aがキャリッジ8のフィンガーバー16の左右中心付近からブラケット28を介して連結されている。また上記リンク36は、一端が他方(または一方)のフォーク9に連結され、下部がフィンガーバー16の上部に沿ってスライド自在に載置され、図5に示すように、上下一対に配設されたリンク35,36にて歯車37を上下から挟むようにリンク機構10cが構成されている。
【0042】
上記構成により、図5に示すように、シリンダ装置11cのロッド31cの出退に伴ってリンク機構10cを駆動し、左右のフォーク9をキャリッジ8に沿ってスライドさせ、左右のフォーク9間の間隔が調節される。詳しくは、図5(a)に示すように、フォーク9間の間隔が狭い状態のとき、シリンダ装置10cのシリンダ部30cへ圧油を供給し、ロッド31cが出動され、一方(または他方)のフォーク9が外方へスライドされると、リンク35が一方(または他方)にスライドされるとともに、歯車37を介してリンク36が他方(または一方)にスライドされ、他方(または一方)のフォーク9が外方へスライドされる。よって図5(b)に示すように、フォーク9間の間隔が広い状態にフォーク9間の間隔が調節される。
【0043】
またフォーク9間の間隔を狭く調節するときは、シリンダ装置11cのシリンダ部30cから圧油が排出され、ロッド31cがシリンダ部30cより退動されると、リンク機構10cは上述したロッド31cがシリンダ部30cから出動されるときの逆に動作され、各フォーク9がキャリッジ8に沿って内方にスライドされ、フォーク9間の間隔が狭い状態にフォーク9間の間隔が調節される。
【0044】
以上のように本発明の実施の形態3によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10cが、シリンダ装置11cのロッド31cの出退に伴って左右対称に駆動され、フォーク9がキャリッジ8に沿ってスライドされて、フォーク9間の間隔が調節されることにより、左右のフォーク9間の間隔を調節する構成を、従来のように、シリンダ装置を2つ設ける複雑な構成を要さず、リンク機構10cと1つのシリンダ装置11cとから簡素に構成でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
【0045】
さらに本発明の実施の形態3によれば、左右のフォーク9を連結するリンク機構10cが、シリンダ装置11cの伸縮動により左右のフォーク9間の中心から左右対称に駆動されることにより、従来のように、各シリンダ装置のロッドの出退を同調させ各フォークのスライドを同調させる構成を要さず、フォーク9間の中心がフォークリフト1の左右中心線上からずれないように、左右のフォーク9のスライドを容易に同調でき、マスト装置3に掛かるコストを低減できる。
【0046】
また本発明の実施の形態3によれば、枠状に形成されたキャリッジ8のフィンガーバー15に沿ってシリンダ装置11cが設けられ、フィンガーバー16に沿ってリンク機構10cが設けられ、キャリッジ8の枠内に空間が広く形成されることにより、フォークリフト1を運転席から操縦する運転者の前方視界をより広く確保することができる。
【0047】
なお、本発明の実施の形態3では、シリンダ装置11cの伸縮動によりリンク機構10cを駆動しているが、シリンダ装置11cに限ることなく、歯車37を回転させる駆動装置を設ける構成であってもよい。例えば、電動機(モータ)の駆動軸に歯車を取り付け、この歯車を歯合させて歯車37を回転させる構成、あるいは歯車37の回転軸に前記電動機の駆動軸を連結して歯車37を回転させる構成とし、前記電動機を駆動することにより、左右のフォーク9を連結するリンク機構10cを左右のフォーク9間の中心から左右対称に駆動し、フォーク9をキャリッジ8に沿ってスライドし、フォーク9間の間隔を調節する。
【符号の説明】
【0048】
X 前後方向
Y 左右方向
1 フォークリフト
2 車両
3 マスト装置
7 マスト
8 キャリッジ
9 フォーク
10a〜10c リンク機構
11a〜11c シリンダ装置
24 連結部
24a 溝部
26a〜26d リンク
27 パンタグラフ
30a〜30c シリンダ部
31a〜31c ロッド
33 リンク
34 リンク
35 リンク
36 リンク
37 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられた左右一対のマストと、前記マストに沿って昇降自在なキャリッジと、前記キャリッジに支持され、左右方向にスライドされて間隔が調節される左右一対のフォークとを備えた荷役車両の荷役装置であって、
前記左右のフォークを連結するリンク機構と、
前記リンク機構を駆動する駆動装置
を設け、
前記駆動装置により前記リンク機構を左右のフォーク間の中心から左右対称に駆動し、前記フォークを前記キャリッジに沿ってスライドさせ、前記フォーク間の間隔を調節すること
を特徴とする荷役車両の荷役装置。
【請求項2】
前記リンク機構を、左右一対のパンタグラフから構成し、
前記駆動装置を、前記キャリッジの左右中心に基端が固定されたシリンダ部と、前記シリンダ部より上下方向へ出退されるロッドを有するシリンダ装置から構成し、
前記各パンタグラフはそれぞれ、内方の上端が前記キャリッジの左右中心に揺動自在に連結され、内方の下端が前記ロッドの先端に揺動自在に連結されるとともに、外方の先端が外方のフォークに揺動自在に連結され、
前記ロッドの出退に伴って前記左右のパンタグラフを左右対称に伸縮動し、前記フォークを前記キャリッジに沿ってスライドさせ、前記フォーク間の間隔を調節すること
を特徴とする請求項1に記載の荷役車両の荷役装置。
【請求項3】
前記各フォークの後部に上下方向に沿って溝部を有する連結部を形成し、
前記各パンタグラフの外方の先端はそれぞれ、前記連結部の溝部に沿って上下方向にスライド自在に連結されていること
を特徴とする請求項2に記載の荷役車両の荷役装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−180040(P2010−180040A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−26828(P2009−26828)
【出願日】平成21年2月9日(2009.2.9)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】