説明

荷重変動検出装置付きシート

【課題】 トーションバーを用いて荷重変動を簡易な構造で感度良く検知する。
【解決手段】 荷重変動によってねじり角度が変化するトーションバー112,113と、荷重変動によって歪まない参照バー120とを備え、トーションバー112,113及び参照バー120をまとめてそれらの周囲に巻回される励磁コイル121により励磁し、トーションバー112,113の周囲に巻回される第1のピックアップコイル112aから出力される電圧値と、参照バー120の周囲に巻回される第2のピックアップコイル120aから出力される電圧値との差分を出力する構造である。トーションバー112,113と参照バー120とを備えた荷重変動検出装置をシートクッション部の前端付近と後端付近の2箇所に配置しており、各荷重変動検出装置から得られる荷重値を加算すれば、シートクッション部に支持されている人の荷重を、着座姿勢に拘わらず、正確に測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重変動によってねじり角度が変化するトーションバーを用いた荷重変動検出装置付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、エアバックの作動制御を自動で切り換えるために、シートに着座した乗員が大人であるか、子供であるかを自動で区別して、エアバックの作動制御部にフィードバックする技術として、人の体重を自動検知する機構を備えたシートが知られている。通常は、クッション材としてウレタンフォームを用いているため、かかるウレタンフォームを支持し、車体フロアに鉛直方向に配置されたコイルスプリングの変位量を測定し、変位量の大小によって重量を検知することが行われている。一方、本出願人は、特許文献1として、シートクッション部に設けられるクッション材を、シートクッション部に配設したトーションバーにより弾性的に支持すると共に、該トーションバーに荷重変動検出装置を組み込んだ技術を開示している。具体的には、上記トーションバーにピックアップコイルを巻き付けると共に、荷重変動によって歪まない参照バー(磁性棒部材)を設け、該参照バーにもピックアップコイルを巻き付け、2つのコイルから得られる誘起電圧の差分を算出して荷重変動を検出する技術である。
【特許文献1】特開2005−345257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1では、荷重変動検出装置をシートクッション部の後端寄りに設けているだけである。このため、人の着座位置によって、荷重が変化してしまい、正確な荷重検知の点で課題があった。
【0004】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、測定精度をより向上させた荷重変動検出装置付きシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、シートクッション部の前端付近及び後端付近にそれぞれ幅方向に沿って配設され、荷重変動によってねじり角度が変化するトーションバーを備えると共に、
各トーションバーに対応して、前記荷重変動によっては歪まない磁性体からなる参照バーが配設され、
前端付近又は後端付近に配設される一対の前記トーションバー及び参照バーの組毎に、それらの周囲に巻回される励磁コイルと、トーションバーの周囲に巻回される第1のピックアップコイルと、参照バーの周囲に巻回される第2のピックアップコイルとを有し、
前端付近又は後端付近に配設される前記第1のピックアップコイルと第2のピックアップコイルとの各出力値の差分を出力する差分出力手段とを備えることを特徴とする荷重変動検出装置付きシートを提供する。
請求項2記載の本発明では、前記前端付近に配設されるトーションバーの各端部には、該トーションバーの配設位置よりも斜め上前方に突出するように、第1のアーム部材が設けられ、この第1のアーム部材間に、前端部支持フレームが掛け渡されていると共に、
前記後端付近に配設されるトーションバーの各端部には、該トーションバーの配設位置よりも斜め下後方に突出するように、第2のアーム部材が設けられ、この第2のアーム部材間に、後端部支持フレームが掛け渡され、
前記前端部支持フレームと後端部支持フレームとに、クッション材が張設されていることを特徴とする請求項1記載の荷重変動検出装置付きシートを提供する。
請求項3記載の本発明では、前記クッション材が、三次元立体編物であることを特徴とする請求項2記載の荷重変動検出装置付きシートを提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、荷重変動によってねじり角度が変化するトーションバーと、荷重変動によって歪まない参照バーとを備え、トーションバー及び参照バーをまとめてそれらの周囲に巻回される励磁コイルにより励磁し、トーションバーの周囲に巻回される第1のピックアップコイルから出力される電圧値と、参照バーの周囲に巻回される第2のピックアップコイルから出力される電圧値との差分を出力する構造である。従って、トーションバーの僅かなねじり角度の変動を感度良く検出できる。この際、本発明では、トーションバーと参照バーとを備えた荷重変動検出装置をシートクッション部の前端付近と後端付近の2箇所に配置しており、各荷重変動検出装置から得られる荷重値を加算すれば、シートクッション部に支持されている人の荷重を、着座姿勢に拘わらず、より正確に測定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1〜図3は、本発明の一の実施形態に係る乗物用のシート100を示す図である。
【0008】
シート100は、クッションフレーム110とバックフレーム150とを有している。クッションフレーム110は、サイドフレーム111,111を備え、その前端付近と後端付近には、荷重変動検出装置を構成するトーションバー112,113がそれぞれ幅方向に沿って設けられている。前端寄りに配置された一方のトーションバー112の各端部には、該一方のトーションバー112の配設位置よりも斜め上前方に突出するように、第1のアーム部材114,115が設けられ、この第1のアーム部材114,115間に、前端部支持フレーム116が掛け渡されている。
【0009】
サイドフレーム111,111の後端寄りに配置された他方のトーションバー113の各端部には、該他方のトーションバー113の配設位置よりも斜め下後方に突出するように、第2のアーム部材117,118が設けられており、第2のアーム部材117,118間に、後端部支持フレーム119が掛け渡されている。
【0010】
そして、前端部支持フレーム116と後端部支持フレーム119との間に、二次元の布材又は三次元立体編物等からなるベースネット材140が張設されている。ベースネット材140の上方には、三次元立体編物等のクッション材が、サイドフレーム111,111に掛け渡され、該ベースネット材140全体を覆うように配置される。このようにして配置される前端部支持フレーム116及び後端部支持フレーム119は、外部振動が入力されると、両方とも前後に揺動するため、効率よく外部振動を除振できる。また、シートクッション部110の前部に位置する前端部支持フレーム116が、一方のトーションバー112を支点として前方へ回動可能であるため、ペダル操作時には、膝の運動方向と一致し、ペダル操作時などにおける前縁部の当たり感が軽減され、掛け心地、座り心地が向上する。
【0011】
荷重変動検出装置1は、本実施形態では、前端付近と後端付近の2箇所に配置される。荷重変動検出装置1は、図4〜図6に示したように、上記した一方のトーションバー112(又は他方のトーションバー113)と、該トーションバー112(又は他方のトーションバー113)に並列して設けられる参照バー120とを備えて構成される。一方のトーションバー112及び他方のトーションバー113は、上記したように着座時や外部振動が入力された場合、あるいは、呼吸等により体動が生じた場合など、荷重変動が生じた場合に、ベースネット材140、前端部支持フレーム116及び後端部支持フレーム119を介して、ねじり角度が変化する。これに対し、参照バー120は、このような荷重変動が生じてもねじられない、すなわち歪まないように配置される。なお、参照バー120は荷重変動によって歪まない限り、一方のトーションバー112(又は他方のトーションバー113)に対して並列配置されていなくてもよく、それによっても後述のような出力値の差を得ることはできるが、図に示したように並列配置することにより、省スペース化に資する。参照バー120は、機能上、トーションバー112,113よりも短い長さでよく、参照バー120及びトーションバー112,113の一部が収納ケース130内に収容されて配設されている。
【0012】
具体的には、トーションバー112,113の周囲には、図5及び図6に示したように、第1のピックアップコイル112aが一方向に巻回されて設けられ、参照バー120の周囲にはこの第1のピックアップコイル112aとは逆方向となるように巻回される第2のピックアップコイル120aが設けられる。そして、これらの周囲に励磁コイル121が巻回される。
【0013】
本実施形態によれば、図示しない交流電源から励磁コイル121に誘導電流を流す。図3に示したように、人が着座した場合には、第1のアーム部材114,115及びこれに支持された前端部支持フレーム116、並びに、第2のアーム部材117,118及びこれに支持された後端部支持フレーム119は、それぞれ、実線位置から破線位置へと変位する。具体的には、第1のアーム部材114,115及びこれに支持された前端部支持フレーム116は、一方のトーションバー112を中心として、斜め上後方へ変位し、第2のアーム部材117,118及びこれに支持された後端部支持フレーム119は、他方のトーションバー113を中心として斜め前下方へ変位する。
【0014】
これにより、トーションバー112,113のねじり角度が変化し、各第1のピックアップコイル112aから所定の誘起電圧が出力される。制御回路からなる差分出力手段により、この出力値と各第2のピックアップコイル120aからの出力値との差が算出される。そして、例えば、電圧値と荷重との相関をとったテーブルやグラフに、上記出力電圧値の差を照らし合わせ、荷重を特定する。本実施形態では、シートクッション部110の前端寄りと後端寄りとの2箇所に荷重変動検出装置1を配設している。従って、出力電圧値は、2つの荷重変動検出装置1から得られる。このため、例えば、前端寄りに配置した荷重変動検出装置1から得られた荷重が5kg、後端寄りに配置した荷重変動検出装置1から得られた荷重が10kgとした場合、両者を合計した15kgの荷重がかかっていると判定し、その合計荷重に見合った各種の制御(エアバッグの作動制御等)に供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一の実施形態にかかる荷重変動検出装置を取り付けたシートの概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、上記実施形態にかかるシートの概略構成を示す側面図である。
【図3】図3は、上記実施形態にかかるシートの作用を説明するための側面図である。
【図4】図4は、上記実施形態において用いた荷重変動検出装置の外観を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は端面図である。
【図5】図5は、上記実施形態にかかる荷重変動検出装置の具体的構成を示す図である。
【図6】図6は、図5のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 荷重変動検出装置
100 シート
110 クッションフレーム
112 一方のトーションバー
113 他方のトーションバー
116 前端部支持フレーム
119 後端部支持フレーム
120 参照バー
112a 第1のピックアップコイル
120a 第2のピックアップコイル
121 励磁コイル
140 ベースネット
150 バックフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション部の前端付近及び後端付近にそれぞれ幅方向に沿って配設され、荷重変動によってねじり角度が変化するトーションバーを備えると共に、
各トーションバーに対応して、前記荷重変動によっては歪まない磁性体からなる参照バーが配設され、
前端付近又は後端付近に配設される一対の前記トーションバー及び参照バーの組毎に、それらの周囲に巻回される励磁コイルと、トーションバーの周囲に巻回される第1のピックアップコイルと、参照バーの周囲に巻回される第2のピックアップコイルとを有し、
前端付近又は後端付近に配設される前記第1のピックアップコイルと第2のピックアップコイルとの各出力値の差分を出力する差分出力手段とを備えることを特徴とする荷重変動検出装置付きシート。
【請求項2】
前記前端付近に配設されるトーションバーの各端部には、該トーションバーの配設位置よりも斜め上前方に突出するように、第1のアーム部材が設けられ、この第1のアーム部材間に、前端部支持フレームが掛け渡されていると共に、
前記後端付近に配設されるトーションバーの各端部には、該トーションバーの配設位置よりも斜め下後方に突出するように、第2のアーム部材が設けられ、この第2のアーム部材間に、後端部支持フレームが掛け渡され、
前記前端部支持フレームと後端部支持フレームとに、クッション材が張設されていることを特徴とする請求項1記載の荷重変動検出装置付きシート。
【請求項3】
前記クッション材が、三次元立体編物であることを特徴とする請求項2記載の荷重変動検出装置付きシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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