説明

荷電制御剤及びその製造方法、荷電制御樹脂粒子、並びに静電荷像現像用トナー

【課題】 耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能。
【解決手段】 下記で表され、且つCuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°、6.7±0.2°及び15.4±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を有効成分とする荷電制御剤。その荷電制御剤、着色剤及びトナー用バインダー樹脂を備えてなる静電荷像現像用トナー。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電潜像を現像するトナーの帯電量を制御し得る荷電制御剤及びその製造方法、並びにその荷電制御剤を含有する荷電制御樹脂粒子及び静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法を利用した複写機等においては、無機または有機光導電性物質を含有する感光層を備えた感光体上に形成された静電潜像を可視化するために、着色剤、定着用の樹脂等を有する種々の乾式或いは湿式トナーが用いられている。このようなトナーの帯電性は、静電潜像を現像するシステムにおいて最も重要な因子である。そこでトナーの帯電量を適切に制御するために、トナー中に、正電荷または負電荷付与性の荷電制御剤が加えられることが多い。
【0003】
従来実用化されている荷電制御剤として、トナーに正電荷を付与するものには、特公昭41−2427号公報等に開示されているニグロシン系染料などがある。またトナーに負電荷を付与するものとしては、特公昭41−20153号公報、特公昭43−17955号公報、特公昭45−26478号公報等に示されている含金属錯塩染料などがある。しかしながら、以上のような荷電制御剤の多くは、構造が複雑で安定性に乏しく、例えば機械的摩擦や衝撃、温度や湿度の条件の変化、電気的衝撃や光照射等により分解または変質し、荷電制御性が失われやすいものであった。また、こうした従来の荷電制御剤の多くは有色であり、フルカラートナーには不向きであった。
【0004】
このような問題点を解決する手段として、例えば、特開昭62−145255号公報にはサリチル酸及びその誘導体の金属塩を荷電制御剤として含有させることが開示されている。また、特開昭63−163374号公報にはトナー中に含有させるサリチル酸及びその誘導体の金属塩の結晶構造及び結晶径を特定する方法が提案されており、その中でも特に3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を記載されている。これらはカラートナー用として使用できる利点は有するが、熱安定性、樹脂に対する均一分散性、又は荷電制御性において、或いは、特に帯電の立ち上がり速度において不十分なものがあり、研究の余地があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術に存した上記のような課題に鑑み行われたものであって、その目的とするところは、耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高く、温度や湿度の変化に対する荷電制御の安定性(耐環境性)及び荷電制御特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能な荷電制御剤及びその製造方法、並びに、帯電の立ち上がり速度が高く、温度や湿度の変化に対する帯電安定性(耐環境性)及び帯電特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして使用可能な静電荷像現像用トナー及びそのトナーの製造に原材料として用いる荷電制御樹脂粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[A]上記課題を解決する本発明の荷電制御剤は、
アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基が導入されたアルキルサリチル酸誘導体が亜鉛化されたアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤である。
【0007】
この荷電制御剤は、耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能である。
【0008】
前記アルキルフェノール誘導体に対するカルボキシル基の導入はKolbe−Schmitt反応による行なうことができる。
【0009】
前記本発明の荷電制御剤として好ましいものとしては、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールにKolbe−Schmitt反応によりカルボキシル基が導入された3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が亜鉛化されてなる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤を挙げることができる。
【0010】
また前記本発明の荷電制御剤として好ましいものとして、前記のアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物が、下記一般式(1)で表される3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩であるものを挙げることができる。
【0011】
【化1】

・・・・・(1)
[式(1)中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【0012】
本発明の荷電制御剤の例としては、前記一般式(1)で表され、且つCuKα特性X線(波長1.541Å)によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°、6.7±0.2°及び15.4±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を有効成分とする荷電制御剤を挙げることができる。
[B]上記本発明の荷電制御剤は、上記アルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物が、亜鉛付与剤を含む溶液中に上記アルキルサリチル酸誘導体の溶解および/または分散液が加えられて前記亜鉛付与剤とアルキルサリチル酸誘導体が反応することにより得られたものであることが好ましい。
【0013】
また、この場合のアルキルサリチル酸誘導体の溶解および/または分散液は、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルカリ溶液であることが好ましい。
【0014】
前記のアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物は、上記一般式(1)で表される3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩であることが好ましい。
【0015】
本発明の荷電制御剤の好ましい例としては、前記一般式(1)で表され、且つCuKα特性X線(波長1.541Å)によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける7.7±0.2°及び15.7±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を有効成分とする荷電制御剤を挙げることができる。
【0016】
この3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩は、CuKα特性X線(波長1.541Å)によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.2±0.2°、6.7±0.2°、7.7±0.2°及び15.7±0.2°に有するものであることが好ましい。
【0017】
これらの荷電制御剤における3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩の嵩密度は、2乃至5ml/gであることが望ましい。荷電制御剤の有効成分である3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩粒子は、嵩密度が適度に低いため、所定体積当りの質量を増大させて輸送することができて輸送コストを大幅に削減することが可能であると共に、トナーに用いる場合、トナー用樹脂等の樹脂に対する分散性が向上して樹脂中に均一に分散させ易くなり、トナーの帯電の立ち上がり速度を高め、トナーの耐環境性及び保存安定性を向上させることができる。
[C]本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくとも請求項1乃至11の何れかに記載された荷電制御剤並びに着色剤及び樹脂を備えてなるものである。
【0018】
本発明の静電荷像現像用トナーは、含有する荷電制御剤の耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、温度や湿度の変化に対する帯電安定性(耐環境性)及び帯電特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして使用可能である。
[D]本発明の荷電制御樹脂粒子は、少なくとも上記何れかの荷電制御剤と樹脂が混合した加熱混練物の固化粉砕粒子であることを特徴とする。
荷電制御剤と樹脂の重量混合比は、例えば1:9乃至9:1であるものとすることができる。
【0019】
また本発明の静電荷像現像用トナーは、前記荷電制御樹脂粒子並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を備えてなるものとすることができる。
【0020】
本発明の荷電制御樹脂粒子と、着色剤及びトナー用バインダー樹脂を用いて静電荷像現像用トナーを調製した場合、荷電制御樹脂粒子に含有された結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩が樹脂中に均一性高く分散し、その荷電制御性が向上する。特に、トナーの摩擦帯電の初期における逆帯電や経時的な帯電のばらつきの発生を防止することができる。
[E]本発明の荷電制御剤は、アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入する工程を経て得られた化合物が亜鉛化されてなるアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とするものであることが好ましい。このアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤は、アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入する工程を経て得られた化合物を亜鉛化することにより製造することができる。
【0021】
この荷電制御剤は、不純物が少なく高純度である。そのため、耐熱性及び電荷付与性が高く、電荷付与量のばらつきが小さく、耐環境性及び保存安定性に優れ、様々な有彩色又は無彩色のトナーに用いることができる。また、特に帯電性が高く、立ち上がりの速い帯電を実現することができるので、電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高い。
【0022】
また本発明の静電荷像現像用トナーは、少なくともこの荷電制御剤並びに着色剤及び樹脂を備えてなるものであることが好ましい。
【0023】
この静電荷像現像用トナーは、帯電性が高く、帯電量のばらつきが小さく、耐環境性及び保存安定性に優れ、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして用いることができる。また、特に帯電性が高く、帯電の立ち上がりが速いので、電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高い
【発明の効果】
【0024】
本発明の静電荷像現像用トナーは、含有する荷電制御剤の耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、温度や湿度の変化に対する帯電安定性(耐環境性)及び帯電特性の経時安定性(保存安定性)に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして使用可能である。
【0025】
本発明の荷電制御剤は、耐熱性並びに樹脂に対する親和性及び分散性が良好で、帯電の立ち上がり速度が高いため電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高く、耐環境性及び保存安定性に優れると共に、様々な有彩色又は無彩色のトナーに使用可能である。
【0026】
本発明の荷電制御樹脂粒子と、着色剤及びトナー用バインダー樹脂を用いて静電荷像現像用トナーを調製した場合、荷電制御樹脂粒子に含有された結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩が樹脂中に均一性高く分散し、その荷電制御性が向上する。特に、トナーの摩擦帯電の初期における逆帯電や経時的な帯電のばらつきの発生を防止することができる。
【0027】
請求項7乃至11記載の荷電制御剤の有効成分である3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩粒子は、嵩密度が適度に低いため、所定体積当りの質量を増大させて輸送することができて輸送コストを大幅に削減することが可能であると共に、トナーに用いる場合、トナー用樹脂等の樹脂に対する分散性が向上して樹脂中に均一に分散させ易くなり、トナーの帯電の立ち上がり速度を高め、トナーの耐環境性及び保存安定性を向上させることができる。
【0028】
請求項16の荷電制御剤は、請求項18の製造方法により製造することができるものであり、不純物が少なく高純度である。そのため、耐熱性及び電荷付与性が高く、電荷付与量のばらつきが小さく、耐環境性及び保存安定性に優れ、様々な有彩色又は無彩色のトナーに用いることができる。また、特に帯電性が高く、立ち上がりの速い帯電を実現することができるので、電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高い。
【0029】
請求項17の静電荷像現像用トナーは、帯電性が高く、帯電量のばらつきが小さく、耐環境性及び保存安定性に優れ、様々な有彩色又は無彩色のトナーとして用いることができる。また、特に帯電性が高く、帯電の立ち上がりが速いので、電子写真プロセス等の高速化及び初期画像の品質向上効果が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
荷電制御剤
アルキルサリチル酸誘導体の製造方法としては、下記(a)のようにサリチル酸誘導体をアルキル化することによってアルキルサリチル酸誘導体を合成する方法と、下記(b)のようにアルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入してアルキルサリチル酸誘導体を合成する方法(Kolbe-Schmitt反応)が知られている。
【0031】
(a)サリチル酸のアルキル化反応
例えば、AlClのようなルイス酸の存在下、ハロゲン化アルキルを用いてサリチル酸にアルキル基を導入することによりアルキルサリチル酸を得る。
【0032】
【化2】

【0033】
(b)アルキルフェノールのKolbe-Schmitt反応
例えば、アルキルフェノールを水酸化ナトリウム水溶液と混合加熱し、減圧により水分を除き、アルキルフェノールのナトリウム塩を得る。このアルキルフェノールのナトリウム塩と二酸化炭素を加熱反応させてアルキルサリチル酸のナトリウム塩を得、これを塩酸又は硫酸水溶液中で処理することによりサリチル酸を析出させる。
【0034】
【化3】

【0035】
上記の2方法で製造されたアルキルサリチル酸誘導体(例えば、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸)をそれぞれ亜鉛付与剤と反応させてアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を合成し、両者を比較分析した。その結果、サリチル酸誘導体をアルキル化して合成したアルキルサリチル酸誘導体に含まれる不純物が、最終的に合成されたサリチル酸誘導体の亜鉛化合物中に少量存在し、この少量の不純物が荷電制御剤としての電荷付与性に悪影響を及ぼすことが見出された。
【0036】
本発明の荷電制御剤におけるアルキルサリチル酸誘導体としては、置換基としてアルキル基(例えば炭素数1乃至18)を有するベンゼン核又はナフタレン核のサリチル酸誘導体が好ましい。特に、2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを出発原料としてKolbe−Schmitt反応により製造された3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が好適である。
【0037】
本発明の荷電制御剤における有効成分としてのアルキルサリチル酸の亜鉛化合物としては、下記式(1)で表される3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩が好適である。
【0038】
【化4】

・・・・・(1)
[式中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【0039】
本発明の荷電制御剤における有効成分としてのアルキルサリチル酸の亜鉛化合物の製造は、水系又は有機溶剤系の何れの反応をも用いることができるが、コスト及び安全性を考慮すると水系反応が好ましい。
【0040】
水系反応の場合、下記(1)乃至(4)の工程を用いてアルキルサリチル酸の亜鉛化合物を得ることができる。
(1)サリチル酸誘導体をアルカリ性水溶液に溶解させる工程。
(2)亜鉛付与剤を水に溶解させる工程。
(3)(1)によるサリチル酸誘導体水溶液を加熱しながらその水溶液に(2)による亜鉛付与剤の水溶液を加え、反応終了まで加熱撹拌する反応工程。
(4)(3)による反応混合液を濾過し、濾取物を洗浄して乾燥した後、粉砕する後処理工程。
【0041】
この方法により3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を製造すると、CuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°、6.7±0.2°及び15.4±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を得ることができる。
【0042】
一方、サリチル酸誘導体の亜鉛化合物の製造方法として、前記(3)の工程を
(3)’(2)による亜鉛付与剤の水溶液を加熱しながらその水溶液に(1)によるサリチル酸誘導体水溶液を加え、反応終了まで加熱撹拌する反応工程。
に代えた(1)、(2)、(3)’及び(4)の工程を用いると、サリチル酸誘導体の亜鉛化合物を高純度・高収率で、且つ短時間で得ることができる。このようにして得られる結晶性の亜鉛化合物は、良好な帯電制御性を示し荷電制御剤としてより適していることが見出された。
【0043】
サリチル酸誘導体として3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸を例として説明すると、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸のアルカリ溶液に亜鉛付与剤を含む溶液を滴下して反応させることにより、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を選択的に合成することができる。例えば、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸(2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを出発原料としてKolbe−Schmitt反応により製造されたもの)2molに十分なアルカリ性水溶液を加えて加熱溶解する。一方、亜鉛付与剤1molを仕込んだ水溶液を用意し、この水溶液を加熱しつつ、前記の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の水溶液を滴下し、加熱及びpH調整を行なって反応させ、反応終了後、反応混合液を濾過し、濾取物を水洗して乾燥する。亜鉛付与剤としては、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等を例示することができるがこの限りではない。
【0044】
この方法により3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を製造すると、CuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.2±0.2°、6.7±0.2°、7.7±0.2°、15.7±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を得ることができる。
本発明における3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩の粒径は特に限定されないが、平均粒径が20μm以下、好ましくは10μm以下であるものが、樹脂との分散性を向上させる上で好適である。
【0045】
(1)、(2)、(3)’及び(4)の工程により得られるアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物(特に3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)は、そのアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物の粒子の嵩密度が適度に低い(例えば2乃至5ml/g)ものとして得ることができる。そのため、トナー用樹脂等の樹脂に対する分散性が向上して樹脂中に均一に分散させ易くなり、所定体積当りの質量を増大させて輸送することができるため、輸送コストの大幅削減が可能である。
【0046】
荷電制御樹脂粒子
本発明の荷電制御樹脂粒子は、例えば、本発明の荷電制御剤と樹脂(例えばバインダー樹脂)を任意の割合で混合し、加熱、混練することにより得られる樹脂組成物を冷却固化して粉砕することにより得ることができる。
【0047】
なお、本発明の荷電制御樹脂粒子における荷電制御剤(例えば上記の結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)と樹脂(例えばバインダー樹脂)の重量混合比は、好ましくは1:9乃至9:1とすることができる。より好ましくは3:7乃至7:3である。
【0048】
本発明の荷電制御剤は、従来のサリチル酸金属塩に比し、樹脂に対する分散性が優れている。ところが、本発明の荷電制御剤を樹脂と混合して本発明の荷電制御樹脂粒子を調製し、この荷電制御樹脂粒子を着色剤及びトナー用バインダー樹脂と混合して静電荷像現像用トナーを調製した場合、本発明の荷電制御剤が樹脂に対して更に均一に分散し、その荷電制御性が向上する。特に、トナーの摩擦帯電の初期における逆帯電や経時的な帯電のばらつきの発生を防止することができる。
【0049】
本発明の荷電制御樹脂粒子における樹脂としては、例えば後記の公知のトナー用バインダー樹脂を使用することができる。荷電制御樹脂粒子に好ましく使用することができる樹脂は、数平均分子量(Mn)が2500乃至30000である樹脂、更に好ましくは、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2乃至20の範囲の樹脂である。荷電制御樹脂粒子における樹脂と、その荷電制御樹脂粒子を用いてトナーを調製する際に用いる樹脂は、同一であってもよく、異なるものを用いることもできる。
【0050】
本発明の荷電制御樹脂粒子は例えば次のように製造される。すなわち、少なくとも荷電制御剤と樹脂を、ヘンシルミキサー又はその他の混合機により十分混合した後、加熱ロール、ニーダ、エクストルーダ等の熱混練機を用いて常圧又は加圧下で溶融混練し、それを冷却固化させた後、粉砕することにより荷電制御樹脂粒子を得ることができる。
【0051】
本発明の荷電制御樹脂粒子の製造において用いる荷電制御剤は、例えば乾燥粉末状のものでもよく、乾燥させる前の水性プレスケーキの状態で用いることもできる。また、乾燥粉末状の荷電制御剤を使用する場合は、樹脂への分散性を向上させるために分散助剤又は添加剤を加えることができる。例えば、水又は各種有機溶剤を使用してもよい。すなわち、本発明の荷電制御剤と樹脂と水又は各種有機溶剤をヘンシルミキサー、その他の混合機により混合した後、加熱ロール、フラッシャー、ニーダ、エクストルーダ等に仕込んで混合する。或いはフラッシャーやニーダ等を用いる場合は最初から1段で荷電制御剤と樹脂と水又は各種有機溶剤を仕込んで混合することもできる。次いで加圧下又は常圧で加熱して溶融混練する。その後、残留している水又は溶剤を常圧又は減圧下で蒸発させることにより除去して乾燥させる。それを冷却固化した後、粉砕することにより荷電制御樹脂粒子を得ることができる。前記有機溶剤としては公知の有機溶剤を用いることができるが、好ましくはエタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトンなど、低沸点で揮発性の高い溶剤を挙げることができる。
【0052】
静電荷像現像用トナー
本発明の静電荷像現像用トナーは、本発明の荷電制御剤又は本発明の荷電制御樹脂粒子、トナー用バインダー樹脂、及び着色剤を備えてなるものである。
【0053】
本発明の静電荷像現像用トナーにおける荷電制御剤の配合量は、トナー用バインダー樹脂(又はトナー用バインダー樹脂及び荷電制御樹脂粒子における樹脂の総量)100重量部に対して、0.1乃至10重量部、好ましくは0.5乃至5重量とすることができる。
【0054】
本発明のトナーに用いられる樹脂としては、トナー用バインダー樹脂として従来より使用されている樹脂を例示することができる。すなわち、ポリスチレン樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂、スチレン−マレイン樹脂、スチレン−ビニルメチルエーテル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等等の合成樹脂である。これらの樹脂は、単独で或いは数種をブレンドして用いることもできる。これらの樹脂のうち好ましいものは、ガラス転移温度が50乃至75℃、軟化点が80乃至150℃、数平均分子量が1000乃至30000の樹脂であり、更に好ましいのは、重量平均分子量/数平均分子量が2乃至50の樹脂である。
【0055】
トナー用バインダー樹脂や荷電制御樹脂粒子における樹脂が、減法混色によるフルカラー用トナー又はOHP(オーバーヘッドプロジェクタ)に用いられるトナー等に好適に使用されるためには、透明性を有すること、実質的に無色であること(トナー画像に色調障害を生じない程度の色であること)、用いる荷電制御剤との相溶性があること、適当な熱又は圧力下で流動性を有すること、微粒化が可能であることなどの特性が要求される。このような樹脂として、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−メタアクリル酸エステル共重合体、ポリエステル系樹脂等を好適に使用することができる。特に酸価1乃至50mgKOH/gを有するポリエステル系樹脂又はスチレン−アクリル樹脂が好ましい。
【0056】
本発明のトナーにおいては、着色剤として、公知の多数の染料、顔料を用いることができる。カラートナーに用い得るものの具体例は次の通りである。すなわち、カーボンブラック、キノフタロン、ハンザイエロー、ローダミン6Gレーキ、キナクリドン、ローズベンガル、銅フタロシアニンブルー及び銅フタロシアニングリーン等の有機顔料、アゾ系染料、キノフタロン系染料、アントラキノン系染料、キサンテン系染料、トリフェニルメタン系染料、フタロシアニン系染料等の各種の油溶性染料や分散染料のほか、染料や顔料が高級脂肪酸や合成樹脂等で加工されたものが挙げられる。
【0057】
本発明の静電荷像現像用トナーには、上記のような着色剤を、例えば単独で又は2種以上配合して使用することができる。フルカラー用の三原色トナーの調整に好適に使用し得るのは、分光特性が良好な染料、顔料である。また、有彩色のモノカラートナーには、着色剤として、同色系の顔料と染料、例えばローダミン系の顔料と染料、キノフタロン系の顔料と染料、フタロシアニン系の顔料と染料を、適宜配合して用いることができる。
【0058】
また、トナーの品質を向上させる上で、例えば、オフセット防止剤、流動性改良剤(例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン等の各種金属酸化物、又はフッ化マグネシウム等)、クリーニング助剤(例えば、ステアリン酸等の金属石鹸;フッ素系合成樹脂微粒子、シリコン系合成樹脂微粒子、スチレン−(メタ)アクリル系合成樹脂微粒子等の各種合成樹脂微粒子等)等の添加剤を、トナーに内添または外添させることができる。
【0059】
前記の定着性向上のために用いるオフセット防止剤(離型剤)としては、各種ワックス、特に平均分子量が500乃至15000であるワックスが好ましい。具体的には、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等のポリオレフィン型ワックス;カルナウバワックス、ライスワックス、モンタン型ワックス等の天然ワックス等を用いることができる。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーは、例えば次のように製造される。すなわち、上記のようなトナー用バインダー樹脂、着色剤、及び、荷電制御剤又は荷電制御樹脂粒子、並びに、必要に応じて磁性材料、流動化剤等を、ボールミルその他の混合機により十分混合した後、加熱ロール、ニーダ、エクストルーダ等の熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後、粉砕及び分級することにより、平均粒径5乃至20μmのトナーを得る。
【0061】
また、バインダー樹脂溶液中に材料を分散した後、噴霧乾燥することにより得る方法、バインダー樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナーを得る重合法トナー製造法(例えば、特開平1−260461号公報、特開平2−32365号公報記載の方法)等を応用することもできる。本発明のトナーを2成分現像剤として用いる場合には、本発明のトナーをキャリヤ粉と混合して用い、2成分磁気ブラシ現像法等により現像することができる。
【0062】
キャリヤとしては、公知のものが全て使用可能であり特に限定されない。例示するならば、粒径50乃至200μm程度の鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ等、並びに、これらの表面をアクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、フッ化エチレン系樹脂等でコーティングしたもの等が挙げられる。
【0063】
本発明のトナーを1成分現像剤として用いる場合には、上記のようにしてトナーを製造する際に、例えば鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉等の強磁性材料製の微粉体を添加分散させて用いることができる。この場合の現像法としては、例えば接触現像法、ジャンピング現像法等を挙げることができる。
【実施例】
【0064】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、勿論本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の記述においては、「重量部」を「部」と略す。
【0065】
実施例1及び2並びに比較例1は、荷電制御剤の製造についてのものである。
【0066】
実施例1
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸25.0g(2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを出発原料としてKolbe-Schmitt反応により得られたもの0.10mol)を2%NaOH水溶液200mlに溶解させて約70℃に昇温させた。一方、硫酸亜鉛七水和物14.4g(0.05mol)を水200mlに溶解させ、この硫酸亜鉛の水溶液を前記3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の水溶液に対し約30分間かけて滴下した。次いで70乃至80℃で2時間反応させた後、pHを7.0±0.5に調整し、反応を終了させた。
【0067】
この反応溶液を熱時濾過し、濾取物を水洗後、乾燥させることにより、白色の微粉末27.8gを得た。この白色粉末の嵩密度は5.2ml/gであった。得られた白色粉末を粉末X線回折装置により分析したところ、CuKα特性X線[波長1.541Å]によるX線回折の主要なピークがブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°、6.7±0.2°、15.4±0.2°に検出された。X線回折チャートを図1に示し、液体クロマトグラフィー分析チャートを図2に示す。
【0068】
なお、本実施例並びに下記実施例及び比較例における結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩のX線回折分析は、下記装置を使用して下記条件により行った。
使用装置:X線回折装置 MXP−18(株式会社マックサイエンス社製)
線源(Target):Cu
波長(Wave Length):1.5405Å(CuKα1)
管電圧,管電流(Voltage,Current):40.0kV,200mA
発散スリット(Divergence Slit):1.0°
受光スリット(Receiving Slit):0.30mm
散乱スリット(Scatter Slit):1.0°
走査速度(Scanning Speed):4.0deg/min
【0069】
実施例2
硫酸亜鉛七水和物14.4g(0.05mol)を水200mlに溶解させた。一方、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸25.0g(2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを出発原料としてKolbe-Schmitt反応により得られたもの0.10mol)を2%NaOH水溶液200mlに溶解させて約70℃に昇温させ、この3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸水溶液を前記硫酸亜鉛の水溶液に約30分間かけて滴下した。次いで、70乃至80℃で2時間反応させた後、pHを7.0±0.5に調整し、反応を終了させた。
【0070】
この反応溶液を熱時濾過し、濾取物を水洗後、乾燥させることにより白色の微粉末27.9gを得た。この白色粉末の嵩密度は3.2ml/gであった。得られた白色粉末を粉末X線回折装置にて分析したところ、CuKα特性X線[波長1.541Å]によるX線回折の主要なピークがブラッグ角2θにおける5.2±0.2°、6.7±0.2°、7.7±0.2°及び15.7±0.2°に検出された。X線回折チャートを図3に示す。
【0071】
比較例1
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸25.0g(サリチル酸をブチル化することによって得られたもの0.10mol)を2%NaOH水溶液200mlに溶解させて約70℃に昇温させた。一方、硫酸亜鉛七水和物14.4g(0.05mol)を水200mlに溶解させ、この硫酸亜鉛の水溶液を前記3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の水溶液に対し約30分間かけて滴下した。次いで70乃至80℃で2時間反応させた後、pHを7.0±0.5に調整し、反応を終了させた。
【0072】
この反応溶液を熱時濾過し、濾取物を水洗後、乾燥させることにより、白色の微粉末27.3gを得た。この白色粉末の嵩密度は6.9ml/gであった。得られた白色粉末を粉末X線回折装置により分析したところ、CuKα特性X線[波長1.541Å]によるX線回折の主要なピークがブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°及び15.4±0.2°に検出された。X線回折チャートを図4に示し、液体クロマトグラフィー分析チャートを図5に示す。
【0073】
実施例3乃至6は、荷電制御樹脂粒子の製造についてのものである。
【0074】
実施例3
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・50部
荷電制御剤(実施例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・50部
メタノール・・・10部
【0075】
上記配合物をニーダに仕込んで15分間混合することによりポリエステル樹脂粉末及び荷電制御剤をメタノールで湿潤させた後、この混合物を徐々に加熱してメタノールを蒸発させながら溶融混錬した。これを一旦冷却した後、更に加熱2本ロールにより混錬を行い、これを冷却した後、振動ミルで粗砕することにより、荷電制御樹脂粒子1を調製した。
【0076】
実施例4
実施例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を、実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩に代える以外は、実施例3と同様に処理して荷電制御樹脂粒子2を調製した。
【0077】
実施例5
スチレン−アクリル共重合樹脂[アルマテックスCPR600B(商品名) 三井化学社製]・・・70部
荷電制御剤(実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・30部
【0078】
上記配合物をヘンシルミキサーで均一にプレミキシングし、その混合物をニーダで溶融混錬した。これを一旦冷却させた後、更に加熱2本ロールにより混錬を行い、これを冷却した後、振動ミルで粗砕することにより、荷電制御樹脂粒子3を調製した。
【0079】
実施例6
実施例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を、実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩に代える以外は、実施例5と同様に処理して荷電制御樹脂粒子4を調製した。
【0080】
実施例7乃至13並びに比較例2は静電荷像現像用トナーについてのものである。
【0081】
実施例7
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・100部
カーボンブラック[MA−100(商品名) 三菱化成社製]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
荷電制御剤(実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・1部
【0082】
上記配合物を高速ミキサーで均一にプレミキシングした。次いで、その混合物をエクストルーダで溶融混練し、冷却後、振動ミルで粗粉砕した。得られた粗砕物を分級機付きのエアージェットミルを用いて微粉砕することにより、粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナーを得た。得られたトナー5部に対し、鉄粉キャリヤ[TEFV200/300(商品名) パウダーテック社製]95部を混合して現像剤を調製した。
【0083】
本現像剤をポリ瓶中に計量し、標準条件(20℃−60%RH)でこのポリ瓶を回転数100rpmのボールミルで回転させて本現像剤を撹拌することによりこれを帯電させ、現像剤の経時帯電量を測定した。経時帯電量の測定結果を表1に示す。
【0084】
また、本現像剤をポリ瓶中に計量し、低温低湿(5℃−30%RH)及び高温高湿(35℃−90%RH)の各雰囲気中で前記ポリ瓶を回転数100rpmのボールミルで回転させて本現像剤を10分間撹拌することによりこれを帯電させ、それぞれの帯電量を測定した。帯電量の環境安定性についての測定結果を表2に示す。
【0085】
経時帯電量
【表1】

【0086】
環境安定性
【表2】

【0087】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【0088】
比較例2
実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を、比較例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩(サリチル酸をブチル化した3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸より得られたもの)に代える以外は、実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表3及び表4に示す。
【0089】
経時帯電量
【表3】

【0090】
環境安定性
【表4】

【0091】
実施例8
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・100部
油溶性マゼンタ色染料[オイルピンク#312(商品名) オリエント化学工業]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
荷電制御剤(実施例1で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・1部
【0092】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性マゼンタ色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した結果を表5及び表6に示す。
【0093】
経時帯電量
【表5】

【0094】
環境安定性
【表6】

【0095】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明なマゼンタ色の画像が得られた。
【0096】
実施例9
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・100部
フタロシアニン系染料[バリファストブルー2606(商品名) オリエント化学工業]・・・ 6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
荷電制御剤(実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・1部
【0097】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性シアン色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した結果を表7及び表8に示す。
【0098】
経時帯電量
【表7】

【0099】
環境安定性
【表8】

【0100】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明なシアン色の画像が得られた。
【0101】
実施例10
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・100部
キノフタロン系染料[カセヤンイエロー E−3GL(商品名) 日本化薬社製]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
荷電制御剤(実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・1部
【0102】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性イエロー色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した結果を表9及び表10に示す。
【0103】
経時帯電量
【表9】

【0104】
環境安定性
【表10】

【0105】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性が良好で、而も分光特性に優れ、重ね合わせによる混色に適した透明性のある、鮮明なイエロー色の画像が得られた。
【0106】
実施例11
スチレン−アクリル共重合樹脂[アルマテックスCPR600B(商品名) 三井化学社製]・・・100部
カーボンブラック[MA−100(商品名) 三菱化学社製]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
荷電制御剤(実施例2で得られた3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩)・・・1部
【0107】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表11及び表12に示す。
【0108】
経時帯電量
【表11】

【0109】
環境安定性
【表12】

【0110】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【0111】
実施例12
ポリエステル樹脂[ダイアクロンER561(商品名) 三菱化学社製]・・・100部
カーボンブラック[MA−100(商品名) 三菱化成社製]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
実施例4で得られた荷電制御樹脂粒子2・・・2部
【0112】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表13及び表14に示す。
【0113】
経時帯電量
【表13】

【0114】
環境安定性
【表14】

【0115】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【0116】
実施例13
スチレン−アクリル共重合樹脂[アルマテックスCPR600B(商品名) 三井化学社製]・・・100部
カーボンブラック[MA−100(商品名) 三菱化成社製]・・・6部
低重合ポリプロピレン[ビスコール550−P(商品名) 三洋化成社製]・・・5部
実施例6で得られた荷電制御樹脂粒子4・・・3.5部
【0117】
上記配合物を実施例7と同様に処理して粒径10及至20μmの負帯電性黒色トナー及び現像剤を調整した。本現像剤を用いて実施例7と同様に経時帯電量及び帯電量の環境安定性について測定した。それぞれの測定結果を表15及び表16に示す。
【0118】
経時帯電量
【表15】

【0119】
環境安定性
【表16】

【0120】
本現像剤を用いて市販の複写機(セレンドラム使用のもの)にてトナーの画像を形成したところ、カブリがなく、細線再現性、帯電の安定性及び持続性が良好で、画像濃度低下のない良質な画像が得られた。オフセット現象も全く観測されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】実施例1の荷電制御剤のX線回折チャートである。
【図2】実施例1の荷電制御剤の液体クロマトグラフィー分析チャートである。
【図3】実施例2の荷電制御剤のX線回折チャートである。
【図4】比較例1の荷電制御剤のX線回折チャートである。
【図5】比較例1の荷電制御剤の液体クロマトグラフィー分析チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基が導入されたアルキルサリチル酸誘導体が亜鉛化されたアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤。
【請求項2】
上記アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入する反応がKolbe−Schmitt反応である請求項1記載の荷電制御剤。
【請求項3】
2,4−ジ−tert−ブチルフェノールにKolbe−Schmitt反応によりカルボキシル基が導入された3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸が亜鉛化されてなる3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛化合物を有効成分とする請求項1記載の荷電制御剤。
【請求項4】
上記のアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物が、下記一般式(1)で表される3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩である請求項1、2又は3記載の荷電制御剤。
【化1】

・・・・・(1)
[式(1)中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【請求項5】
下記一般式(1)で表され、且つCuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.7±0.2°、6.4±0.2°、6.7±0.2°及び15.4±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を有効成分とする荷電制御剤。
【化2】

・・・・・(1)
[式(1)中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【請求項6】
上記アルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物が、亜鉛付与剤を含む溶液中に上記アルキルサリチル酸誘導体の溶解および/または分散液が加えられて前記亜鉛付与剤とアルキルサリチル酸誘導体が反応することにより得られたものである請求項1、2又は3記載の荷電制御剤。
【請求項7】
上記アルキルサリチル酸誘導体の溶解および/または分散液が3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸のアルカリ溶液である請求項6記載の荷電制御剤。
【請求項8】
上記のアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物が、一般式(1)で表される3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩である請求項6又は7記載の荷電制御剤。
【化3】

・・・・・(1)
[式(1)中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【請求項9】
下記一般式(1)で表され、且つCuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける7.7±0.2°及び15.7±0.2°に有する結晶性の3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩を有効成分とする荷電制御剤。
【化4】

・・・・・(1)
[式(1)中、t−Buはtert−ブチル基を示す。]
【請求項10】
上記3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩が、CuKα特性X線によるX線回折の主要なピークを少なくともブラッグ角2θにおける5.2±0.2°、6.7±0.2°、7.7±0.2°及び15.7±0.2°に有するものである請求項9記載の荷電制御剤。
【請求項11】
上記3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛塩の嵩密度が2乃至5ml/gであることを特徴とする請求項7乃至10の何れかに記載の荷電制御剤。
【請求項12】
少なくとも請求項1乃至11の何れかに記載された荷電制御剤並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を備えてなる静電荷像現像用トナー。
【請求項13】
少なくとも請求項1乃至11の何れかに記載された荷電制御剤と樹脂が混合した加熱混練物の固化粉砕粒子であることを特徴とする荷電制御樹脂粒子。
【請求項14】
荷電制御剤と樹脂の重量混合比が1:9乃至9:1である請求項13記載の荷電制御樹脂粒子。
【請求項15】
請求項13又は14に記載された荷電制御樹脂粒子並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を備えてなる静電荷像現像用トナー。
【請求項16】
アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入する工程を経て得られた化合物が亜鉛化されてなるアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤。
【請求項17】
少なくとも請求項16記載の荷電制御剤並びに着色剤及びトナー用バインダー樹脂を備えてなる静電荷像現像用トナー。
【請求項18】
アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基を導入する工程を経て得られた化合物を亜鉛化することにより、アルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤を製造することを特徴とする荷電制御剤の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルフェノール誘導体にカルボキシル基が導入されたアルキルサリチル酸誘導体が亜鉛化されたアルキルサリチル酸誘導体の亜鉛化合物を有効成分とする荷電制御剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−221185(P2006−221185A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107778(P2006−107778)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【分割の表示】特願2001−380620(P2001−380620)の分割
【原出願日】平成13年12月13日(2001.12.13)
【出願人】(000103895)オリヱント化学工業株式会社 (59)
【Fターム(参考)】