説明

荷電粒子ビーム系用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系

本発明は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を提供する。この系は、x−z面内で集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)と、x−z面面内で集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)と、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と第2の要素の間に位置決めされた荷電粒子選択要素(116、116a、116b)と、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と第2の要素の間に位置決めされた集束要素(114、314、712、714)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、検査システム、試験システム、リソグラフィシステムなどに応用する荷電粒子ビーム装置に関する。本発明は、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法にも関する。本発明はさらに、荷電粒子選択系に関する。詳細には、本発明は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系、荷電粒子ビーム装置、ならびに荷電粒子ビームエネルギー幅低減系および荷電粒子ビーム装置を動作させる方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
荷電粒子ビーム機器は、いくつかの産業分野で用いられる多くの機能を有する。これらの産業分野には、製造中の半導体デバイスの検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置、および試験システムが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのため、マイクロメートルおよびナノメートルの尺度で試料を構築し検査することが強く求められている。
【0003】
マイクロメートルおよびナノメートルの尺度のプロセス制御、検査、または構築はしばしば、電子ビームなどの荷電粒子ビームによって行われる。これらの荷電粒子ビームは、電子顕微鏡または電子ビームパターン生成器などの荷電粒子ビーム装置内で生成され集束される。荷電粒子ビームでは、それらの波長が短いために、例えば光子ビームよりも優れた空間分解能が得られる。
【0004】
しかし、最新の低電圧電子顕微鏡では、収差により、実現可能な分解能が、1keVの電子エネルギーでは約3nmに制限される。したがって、特に低エネルギーの応用例では、色収差を低減することが望ましい。対物レンズのガウス像面内での色収差の収差ディスクの直径は、荷電粒子ビームの相対エネルギー幅ΔE/Eに比例する。
【0005】
電子ビームコラム内の電子は、放出プロセスおよびベルシュ(Boersch)効果、すなわち、確率的なクーロン相互作用によるエネルギー分布の広がりのために単色ではなく、そのため、相対エネルギー幅が広がる。上記を考慮すると、エネルギー幅ΔEは、ビーム電流に応じて約0.5〜1eVになる。
【0006】
例えば対物レンズの集束特性に基づいて色収差を最小限に抑える度合いをさらに高めることは難しい。この理由から、分解能をさらに向上させるために、モノクロメータを使用することが既に知られている。それによって、後で下流の電子−光学結像系によって処理する電子ビームのエネルギー幅ΔEを狭めることができる。
【0007】
荷電粒子用のモノクロメータとして、静電気双極子場と磁気双極子場を互いに直交させて重ね合わせるウィーンフィルタが知られている。
【0008】
例として、(Plies他の)米国特許公開第2002/0104966号は、光軸が画定され、伝播方向に互いに直列に配置された複数のウィーンフィルタを含むモノクロメータを記載している。このように4つのウィーンフィルタが互いに直列に配置されたモノクロメータの一部は、他のウィーンフィルタに対して相対的に光軸の周りで方位角方向に90°回転される。しかし、依然として、この構成をさらに簡略化することが求められている。
【0009】
別の例では、Mukai他の「「MIRAI」Analytical Electron Microscope−Performance of the Monochromater」、Conference Proceedings Microscopy&Microanalysis 2003(米国テキサス州サンアントニオ)では、2つの8重極型ウィーンフィルタおよびこれら2つのウィーンフィルタ間に位置決めされたスリットを含むモノクロメータが開示されている。第1のウィーンフィルタの長さは、第2のウィーンフィルタの長さの2倍である。このモノクロメータの特性が先行技術の他の系と比べて改善されているかどうかはさておき、分散を調整して変化させることは、記載されている系では実現するのが難しい。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、改良型荷電粒子系を提供する。それによって、系の分解能を改善することを意図している。本発明の態様によれば、独立請求項1および27に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系、請求項33に記載の荷電粒子ビーム装置、ならびに独立請求項35および43に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法が提供される。
【0011】
本発明の一態様によれば、荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。この系は、第1のウィーンフィルタ要素を備える。この第1のウィーンフィルタ要素は、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させ、荷電粒子をそのエネルギーに応じて偏向させる。この系は、第2のウィーンフィルタ要素を備える。第2のウィーンフィルタ要素は、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させ、荷電粒子をそのエネルギーに応じて偏向させる。さらに、この系は、荷電粒子選択要素および集束要素を備える。この荷電粒子選択要素および集束要素は、この系の光軸に沿って、第1のウィーンフィルタと第2のウィーンフィルタの間で位置決めされる。
【0012】
上記の系は、必要とされる構成要素の数が限られているので、位置合わせが容易である。1次荷電粒子ビームのエネルギー幅を狭めることができる。
【0013】
本願では、エネルギー幅低減要素をモノクロメータとしても示す。本願におけるモノクロメータという用語は、荷電粒子の単一のエネルギーを選択するものと理解すべきではなく、1次荷電粒子ビームをフィルタリングして、所望のエネルギー幅を得るものと理解すべきである。
【0014】
本願では、ウィーンフィルタ要素の代わりに、1つの面内で集束的かつ分散的に作用する他の要素も使用し得る。
【0015】
別の態様によれば、荷電粒子選択要素および集束要素は、この系の光軸(z位置)に沿って、本質的に第1のウィーンフィルタ要素と第2のウィーンフィルタ要素の間の中間で位置決めされる。この用語は、好ましくは、本質的に第1のウィーンフィルタ要素と第2のウィーンフィルタ要素の間でz方向に±5%の距離の公差を含むと理解されたい。好ましい態様によれば、第1のウィーンフィルタ要素のz位置はzであり、第2のウィーンフィルタ要素のz位置はzであり、荷電粒子選択要素および集束要素のz位置は、(z+z)/2である。この対称性には、本質的に実現すべきものであり、それによって非点収差も分散もない結像が得られ、そのため、収差が低減し得る。
【0016】
本願では、ウィーンフィルタ要素の位置は、フィールド領域の中心またはウィーンフィルタ要素の中心によって定義される。4極子要素の位置にも類似の定義を用いる。
【0017】
別の態様によれば、第1および第2のウィーンフィルタ要素は、この系の中央面に関して対称な機械的設計となっている。それによってさらに対称性が確立される。
【0018】
上記の対称な態様を考慮すると、この系を通過した後の荷電粒子の分散が相殺される。
【0019】
別の態様によれば、荷電粒子選択要素を備えた荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。この荷電粒子選択要素は、荷電粒子のエネルギーに応じて荷電粒子を選択する。これは、荷電粒子エネルギー依存性選択要素である。別の態様によれば、この荷電粒子選択要素はスリットである。
【0020】
そのため、この荷電粒子選択要素は、固定して取り付けることもできるし、移動可能とすることもできる。さらに、この荷電粒子選択要素の選択幅は、可変または固定とし得る。
【0021】
別の態様によれば、集束要素は、y−z面内での集束に適している。そのため、このy−z面内での非点なし集束およびウィーンフィルタ要素のx−z面内での結像により、非点なし結像が得られる。
【0022】
別の態様によれば、この集束要素は、減速モードの円筒レンズである。この系内での荷電粒子の減速ために、分散が増加する。そのため、エネルギー幅をさらに狭めることができる。
【0023】
別の態様によれば、この荷電粒子ビームエネルギー幅低減系はさらに、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させる第1の4極子要素と、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させる第2の4極子要素とを備える。別の態様によれば、第1の4極子要素は、第1の4極子要素の場が、本質的に第1のウィーンフィルタ要素の場と重なる(部分的に重なる)ように位置決めされ、第2の4極子要素は、第2の4極子要素の場が、本質的に第2のウィーンフィルタ要素の場と重なるように位置決めされる。
【0024】
それによって、これらのウィーンフィルタ要素の集束および4極子要素の集束が合成される。そのため、4極子要素の励磁を増加させるときに、ウィーンフィルタ要素の励磁を減少させることができ、それによって、合成された集束効果が本質的にほぼ同じままになる。ウィーンフィルタ要素の励磁を減少させると、分散が減少する。それによって、エネルギー幅および/または荷電粒子ビーム電流を調整することができる。
【0025】
あるいは、別の態様によれば、第1の4極子要素は、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させず、第2の4極子要素は、x−z面内で荷電粒子ビームを集束させない。そのため、ウィーンフィルタ要素の集束効果をさらに大きくすることによって、合成された集束効果を所望のレベルで維持することができる。ウィーンフィルタ要素の集束効果を大きくすると、分散がさらに大きくなる。
【0026】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。この系は、x−z面内で集束的かつ分散的に作用し、かつ第1のz位置zにある第1のウィーンフィルタ要素と、x−z面内で集束的かつ分散的に作用し、かつ第2のz位置zにある第2のウィーンフィルタ要素と、本質的にzとzの中間のz位置にある荷電粒子選択要素と、x−z面内で非集束的に作用する第1の4極子要素と、x−z面内で非集束的に作用する第2の4極子要素とを備える。これら第1のウィーンフィルタ要素、第2のウィーンフィルタ要素、第1の4極子要素、第2の4極子要素、および荷電粒子選択要素は、通過する荷電粒子を非点収差も分散もなく結像し得るように位置決めされる。
【0027】
別の態様によれば、第1および第2のウィーンフィルタ要素、第1および第2の4極子要素、ならびに荷電粒子選択要素は、この系の中央面に関して本質的に対称に位置決めされる。
【0028】
別の態様によれば、それぞれのウィーンフィルタ要素とそれぞれの4極子要素を組み合わせて1つの多極子要素にすることができる。それによって、相互に位置合わせしなければならない構成要素の数を増やすことなく、上記で説明した系を実現し得る。
【0029】
別の態様によれば、検査、試験、パターン生成、またはリソグラフィ用の荷電粒子ビーム装置が提供される。この荷電粒子ビーム装置は、上記で説明した態様のいずれかに記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を備える。
【0030】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系は、拡大レンズにより、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が照明されるように、荷電粒子ビームコラム内で位置決めされる。
【0031】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。このエネルギー幅低減系は、x−z面内で集束的かつ分散的に作用し、第1のz位置zにある第1のウィーンフィルタ要素と、x−z面内で集束的かつ分散的に作用し、第2のz位置zにある第2のウィーンフィルタ要素と、zとzの間のz位置にある荷電粒子選択要素と、x−z面内で非集束的に作用する第1の4極子要素と、x−z面内で非集束的に作用する第2の4極子要素とを備える。これら第1のウィーンフィルタ要素、第2のウィーンフィルタ要素、第1の4極子要素、第2の4極子要素、および荷電粒子選択要素は、通過する荷電粒子を非点収差も分散もなく結像し得るように位置決めされる。
【0032】
別の態様によれば、エネルギー幅低減要素を動作させる方法が提供される。この方法は、x−z面内のz位置zで集束的かつ分散的に作用する第1のウィーンフィルタ要素を提供するステップと、x−z面内のz位置zで集束的かつ分散的に作用する第2のウィーンフィルタ要素を提供するステップと、本質的にzとzの中央のz位置にあるエネルギー選択要素を提供するステップとを含む。さらに、第1のウィーンフィルタ要素は、公称エネルギーを有する荷電粒子がエネルギー選択要素を通過するように励磁され、第2のウィーンフィルタ要素は、第1のウィーンフィルタ要素の場と第2のウィーンフィルタ要素の場の合成により、荷電粒子ビームが、本質的に非点収差がなく、本質的に対称に結像されるように励磁される。さらに、荷電粒子選択要素によって荷電粒子が選択される。
【0033】
別の態様によれば、以下のステップをさらに含む方法が提供される。すなわち、本質的にzとzの中央のz位置にある集束要素を提供するステップと、この集束要素を、荷電粒子ビームが本質的に非点収差なしで結像されるように励磁するステップである。
【0034】
別の態様によれば、第1のウィーンフィルタ要素は、公称エネルギーを有する荷電粒子がエネルギー選択要素を通過し、集束要素の中央のy軸を通過するように励磁される。
【0035】
別の態様によれば、エネルギー幅低減要素を動作させる方法が提供される。それによって、x−z面内で集束的かつ分散的に作用する第1および第2のウィーンフィルタ要素、第1のウィーンフィルタ要素と第2のウィーンフィルタ要素の間に位置決めされたエネルギー選択要素、および第1のウィーンフィルタ要素と第2のウィーンフィルタ要素の間に位置決めされた集束要素が提供される。第1のウィーンフィルタ要素は、公称エネルギーを有する荷電粒子が、エネルギー選択要素と、集束要素の中心とを通過するように励磁される。第2のウィーンフィルタ要素が励磁され、さらに、集束要素は、荷電粒子ビームが本質的に非点収差なしで結像されるように励磁される。その結果、荷電粒子選択要素によって荷電粒子を選択することができる。
【0036】
本願では、ビームの方向はz軸に対応する。特にことわらない限り、「場(領域)の長さ」または「構成要素の長さ」という用語は、z方向の寸法を記述するのに用いる。
【0037】
別の態様によれば、荷電粒子は、そのエネルギーに応じて選択される。
【0038】
別の態様によれば、第1および第2の4極子要素が提供される。これらの要素は、それぞれ、第1のウィーンフィルタ要素とともに合成集束効果が得られ、第2のウィーンフィルタ要素とともに合成集束効果が得られるように励磁される。さらに、集束要素は、この系の非点なし結像が維持されるように励磁される。
【0039】
合成集束効果を得るために、ウィーンフィルタ要素の集束効果の代わりに、4極子要素の集束を利用することができる。または、4極子要素の非集束性のためにウィーンフィルタ要素の追加の集束が必要になる。
【0040】
別の態様によれば、ある方法を適用して、4極子要素の励磁に関連するウィーンフィルタ要素の励磁に応じて分散を調整するか、あるいは、4極子要素の励磁に関連するウィーンフィルタ要素の励磁に応じてビーム電流を調整することができる。
【0041】
上記の態様を用いて、エネルギー選択要素の位置および/または選択幅を変更することなく、分散およびその結果得られる特性を調整することができる。
【0042】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系またはこの系を動作させる方法で使用する集束要素は、磁気円形レンズ、静電気円形レンズ、静電気−磁気複合円形レンズ、磁気円筒レンズ、静電気円筒レンズ、磁気4極子要素、静電気4極子要素、またはこれらすべての要素の任意の組合せからなる群から選択される一要素であり、特に、静電気−磁気複合4極子要素または静電気−磁気複合円筒レンズである。
【0043】
別の態様によれば、エネルギー幅低減系は、阻止電場型エネルギー幅低減系である。そのため、一代替形態によれば、ウィーンフィルタ要素は、集束要素としてより高い電位を有する。別の代替形態によれば、第1のウィーンフィルタ要素の前と、第2のウィーンフィルタ要素の後にそれぞれ液浸レンズを設けることができる。この液浸レンズを使用して、阻止電場型エネルギー幅低減系内で荷電粒子ビームを遅らせ、その後、この荷電粒子ビームを加速することができる。
【0044】
別の態様によれば、エネルギー幅低減系の集束要素は、2つのサブユニットを含み得る。別の態様によれば、これら2つのサブユニットは、対称に位置決めされ、この系のx−y中央面に関して設計される。これらのサブユニットにより、荷電粒子選択要素の取付けおよび維持が簡略化される。
【0045】
本発明は、ここで説明する各方法ステップを実施する機器部分を含めて、ここで開示する方法を実施する機器も対象とする。これらの方法ステップは、ハードウエアコンポーネント、適切なソフトウエアによってプログラムされたコンピュータ、これら2つの任意の組合せ、または他の任意のやり方によって実施し得る。さらに、本発明は、ここで説明する機器を動作または製作する方法も対象とする。本発明は、この機器のあらゆる機能を実施する方法ステップ、また、この機器のあらゆる特徴を製作する方法ステップを含む。
【0046】
以下の説明では、本発明の上記で示した態様および他のより詳細な態様の一部を説明し、図を参照して部分的に例示する。
【図面の詳細な説明】
【0047】
本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素を、例えば、電子ビーム装置またはその構成要素と称する。この場合、電子ビームは、特に検査またはリソグラフィに利用することができる。本発明は、依然として、荷電粒子および/または他の2次および/または後方散乱荷による電粒子の他の放出源を使用して試料の像を取得する機器および構成要素に適用し得る。さらに、本願で、あるハードウエアコンポーネントがあるやり方で作用すると称する場合、このハードウエアコンポーネントは、そのやり方で作用するのに適していると理解されたい。
【0048】
x−z面およびy−z面に関係する本明細書でのすべての考察では、これらの面は本質的に互いに直交すると理解されることも当業者には理解されよう。本願での理論的な考察では数学的な意味での座標について言及するが、それぞれの構成要素は、x−z面とy−z面が、約80°〜100°、好ましくは87°〜93°、より好ましくは約89°〜91°の角度をなすように実際に相互に位置決めすることができる。
【0049】
さらに、本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビームを1次荷電粒子ビームと称する。本発明は、依然として2次荷電粒子および/または後方散乱荷電粒子に用いることができる。そのため、例えば、結像光学系内で荷電粒子のエネルギー分布を制御することができる。
【0050】
以下の図面の説明では、同じ参照数字は、同じ構成要素を指す。概ね、個々の実施形態に関する差異のみを説明する。
【0051】
図1aおよび図1bに、一実施形態を2つの異なる見方で示す。この系の光軸をz軸で示す。図1aにx−z面内での図を示し、図1bにy−z面内での図を示す。この系は、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112、集束要素114、および電子選択要素116を備える。参照数字10は、公称エネルギーEを有する電子ビームの例のビーム経路を示す。図1aにはさらに、公称エネルギーから逸脱したエネルギーを有する2つのビームの経路10aおよび10bを示す。
【0052】
次に、公称エネルギーEを有するビーム10がx−z面内で受ける影響を説明する。ウィーンフィルタ要素110は、z軸(光軸)上から発する電子ビーム10を集束させる。ウィーンフィルタ要素110は、静電気双極子と、この静電気双極子に直交する磁気双極子とを有する。静電気双極子および磁気双極子のこの配置では、x−z面の電子ビームしか作用を受けないので、ウィーンフィルタ110を双極子ウィーンフィルタと称する。このような双極子ウィーンフィルタの特性は、他のところでより詳細に説明する。
【0053】
ウィーンフィルタ要素110の集束作用のために、電子ビームは光軸を横切る。フィルタ要素112は、z位置に関してウィーンフィルタ要素110に対称に置かれ、ウィーンフィルタ要素110に対して対称に励磁され、電子ビーム112を集束させ、光軸に向けて戻す。
【0054】
集束要素114および電子選択要素116は本質的に、電子ビーム10と光軸の交点に位置決めされる。ウィーンフィルタ要素110と112の対称性のために、この位置は本質的に、z位置に関してこれら2つのウィーンフィルタ要素の中央にある。そのため、電子選択要素116は、非点収差中間像のところに位置決めされ、したがって、電子エネルギー依存性選択要素とみなし得る。
【0055】
図1の実施形態では、集束要素114は、例えば円形レンズであり、電子選択要素116は、y−z面内をy方向に延びるスリットである。電子ビームは、y−z面内でレンズ114を通過するので、x方向の集束作用は全くまたはほとんどない。そのため、電子ビームは、x方向に集束されずに集束要素114を通過する。さらに、電子ビームは、スリット116を通過する。
【0056】
ウィーンフィルタ要素110は、集束効果に加えて分散効果を有する。ウィーンフィルタ110のこの分散効果により、公称エネルギーEと異なるエネルギーの電子が、公称エネルギーEを有する電子から局所的に分離する。図1aでは、これを電子ビーム10aおよび10bで示す。ビーム10aのエネルギーは公称エネルギーよりも低い。これに対して、ビーム10bのエネルギーは公称エネルギーよりも高い。異なるエネルギーの電子が局所的に分離することにより、電子選択要素116は、少なくともEから規定量ずれた電子を遮蔽することができる。そのため、電子ビームのエネルギー分布幅が狭くなる。エネルギー幅ΔEが狭くなる結果、エネルギー幅を狭めることを利用する荷電粒子ビーム装置の特性に関して、色収差が減少する。そのため、この系の分解能が向上し得る。
【0057】
上記で説明した光学系では電子エネルギー幅が狭くなるので、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112、集束要素114、および電子選択要素116を備える系は、モノクロメータとみなし得る。
【0058】
次に、図1bを参照して、y方向のモノクロメータの効果を説明する。上記で説明したように、ウィーンフィルタ要素110および112は、x方向に集束的かつ分散的に作用する双極子ウィーンフィルタ要素である。y方向には、ウィーンフィルタ要素110もウィーンフィルタ要素112も、電子ビーム10に影響を及ぼさない。電子ビーム10は、要素110および112を直線的に通過する。集束要素114は、電子ビーム10を集束させ、光軸(z軸)に向けて戻す。
【0059】
上記を考慮すると、x−z面内で結像が行われ(要素110および112参照)、y−z面内で結像が行われる(要素114参照)。要約すると、ビームは非点なし結像が行われる。集束効果に加えて、ウィーンフィルタ要素110、112によって導入されるx方向の分散がある。そのため、公称エネルギーEから少なくともある種の量ずれた電子をスリット116で遮蔽することができる。
【0060】
図1aおよび図1bを参照して上記で説明したことからわかるように、このモノクロメータは、直線的な視覚系である。そのため、光軸とz軸は一致する。本発明を特定の実施形態に限定することなく、本願で開示する系は、好ましくは、特定の実施形態とは無関係に、直線的な視覚系である。そうではあるが、本発明は、非直線的な視覚系にも利用し得る。
【0061】
非直線的な視覚系には、以下に示す1つの利点があり得る。例えば、イオン化分子の存在下では、これらのイオンは放出器の方向に加速され、放出器に衝突して放出器に損傷を与える恐れがある。非直線的な視覚系を使用すると、ビームの可能な曲がり方が、例えば電子とイオンで異なるので、これらのイオンが放出器に衝突しなくなる。図2a〜図3bに、電子(エネルギー依存性)選択要素116の実施形態の異なる例を示す。ウィーンフィルタ要素の集束効果はx−z面で生じるので、好ましくは、この電子選択要素の形態はスリットである。図2aおよび図2bにそれぞれの実施形態を示す。図2aに、スリット開口204を有する円板要素202を示す。モノクロメータ内では、このスリットはy方向に延びることになる。そのため、公称エネルギーを有する電子は、光軸からのy方向変位に無関係にこのスリットの中心を通過し得るはずである。エネルギーが公称値でない電子は、x方向に偏向され、そのため、円板要素202によって遮蔽されることになる。
【0062】
図2bでは、スリット204は図2aと比べて変わっていない。ただし、図2aの円板要素202の代わりに、中実矩形要素203を使用する。場合に応じて、これら2つの実施形態がそれぞれ、調整、取付け、製作その他の理由から好ましいことがある。
【0063】
スリット開口204を使用して、例えば、スリットの汚染された領域を避けることができる。スリットのある領域が汚染されている場合、電子選択要素をy方向にずらすことができる。それによって、スリット開口704の汚染されていない異なる領域を使用し得る。
【0064】
図2cに、円板要素202および短いスリット205を備えた電子選択要素116を示す。スリット205のx方向寸法は、スリット204と同じである。したがって、スリット205では、スリット204と類似のエネルギー選択が行われることになる。ただし、スリット205のy方向の長さはより短い。したがって、このスリットを通過する電子は、光軸からy方向にそれほどずれないはずである。上記を考慮すると、図2cの電子選択要素116は、電子エネルギー依存性かつ角度依存性の選択要素とみなし得る。開口手段116は、x方向にはエネルギーに依存し、y方向には角度に依存して電子を選択する。
【0065】
図2cの短いスリット205と同様に、図2dの開口206は、スリットの長さがさらに短く、円形開口になっている。この場合も、電子のエネルギー選択は、x方向の長さに対応して行われ、電子の角度選択は、y方向に対応して行われる。例えば、製作上の理由により、このような円形形状の開口が使用されることがある。
【0066】
図2eに、電子選択要素116の別の実施形態の例を示す。この場合も、開口207を伴う円板202がある。開口207は、湾曲スリットとして形成される。参照数字207aは、湾曲スリット207の中心線を示す。このスリットの曲率は、分散型ウィーンフィルタ要素の収差を考慮に入れたものである。ウィーンフィルタ要素の分散は、電子の光軸からのy方向距離に依存し得る。そのため、光軸からのy方向距離が異なる電子は、それらのエネルギーに応じて異なる方向に偏向される。そのため、公称エネルギーEに対応する中心線207の曲率は、光軸からのy方向距離によって決まる。それに従ってスリット207を湾曲させる。
【0067】
図3aおよび図3bに関して別の実施形態を説明する。上記で説明した実施形態はすべて、少なくともxの正負の方向に電子を選択するものであった。しかし、公称ビーム経路からxの正または負の方向のいずれか一方に逸脱した電子のみを遮蔽する電子選択手段、すなわちナイフエッジを提供することも可能である。それによって、電子ビームを制限するエッジが1つだけ提供される。要素116aおよび116bはその2つの例である。これらはそれぞれ、中実部分208aまたは208bを有する。中実部分208aの右側を通過する電子はどれも遮蔽されず、中実部分208bの左側を通過する電子はどれも遮蔽されない。
【0068】
図3aおよび図3bのコンポーネントは様々な実施形態で使用し得る。それによって、これらのコンポーネントは別々に使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。次に、図3aまたは図3bのコンポーネントの一方を利用する第1実施形態を説明する。いずれの側の電子エネルギースペクトルを遮蔽すべきかに応じて、電子選択要素116aまたは116bのいずれかを使用し得る。電子選択用エッジは、電子エネルギースペクトルの低エネルギー部分または高エネルギー部分しか遮蔽し得ないが、以下で説明するように、これで十分なことがある。
【0069】
現況技術に関して説明したように、例えば、1次電子ビームのエネルギー幅を狭めることが望ましい。この場合、このエネルギー幅は、主に放出器特性の影響を受ける。そのため、所望のエネルギー選択は、放出器特性によって決まる。ショットキ型放出器または冷電界型放出器などの一部の放出器の放出スペクトルは非対称である。すなわち、放出される電子のエネルギースペクトルは、放出ピークの一方の側が急峻に変化し、このピークの他方の側では、スペクトルの形状はテール状に延びている。放出スペクトルの一方の側のテール状の形状により、エネルギー幅ΔEが左右される。そのため、このスペクトルのテール部を遮蔽すれば、エネルギー幅ΔEを十分に狭めることができる。上記を考慮すると、電子を選択するのにエッジのみを使用することで十分なことがある。
【0070】
次に、図3aおよび図3bの両方のコンポーネントを利用する第2の実施形態を説明する。これら2つの電子選択要素は、z方向に隣接するように位置決めされる。そのため、各要素を使用して、公称エネルギーからのずれに応じて電子を選択する。これら2つの要素を組み合わせることによって、スリット204と同等のスリットが形成される。しかし、維持するのがより簡単であり、汚染される傾向が小さいなどの理由から、2つの別々のコンポーネントを設けるほうを用いることになろう。
【0071】
次に、図3aおよび図3bの両方のコンポーネントを利用する第3の実施形態を説明する。上記で説明した第2実施形態を、さらに以下のように発展させることができる。2つの別々の電子選択要素116aおよび116bを使用する場合、各要素を互いに独立に調整することができる。
【0072】
先に述べた電子エネルギー依存性選択要素の説明では、エネルギー幅ΔEの調整には触れなかった。図1aおよび図1bに関して説明した系では、電子選択要素116の幅をx方向に調整することによって、電子エネルギー幅ΔEを調整する可能性が得られる。上記で説明した実施形態はすべて、開口幅変更手段を備えることができる。あるいは、それぞれ開口幅が固定の電子選択要素を、電子エネルギー幅を選択するために交換可能とし得る。
【0073】
あるいは、またはそれに加えて、(図示しない)別の実施形態によれば、電子選択要素を移動可能とし得る。
【0074】
図3aおよび図3bを参照して現在説明している実施形態では、電子選択要素のエッジをより容易に調整する可能性が得られる。さらに、互いに独立に選択要素を容易に調整する可能性が得られる。
【0075】
さらに、図3aおよび図3bに関係する(図示しない)別の実施形態によれば、スリット207の形状に類似して電子選択要素のエッジの形状を調整することもできるし、他の形状のエッジを使用することもできる。
【0076】
図4aに、別の実施形態を異なる2つの見方で示す。この系の光軸をz軸で示す。図4aにx−z面内での図を示し、図4bにy−z面内での図を示す。図1aおよび図1bと比較すると、この実施形態では、異なる集束要素314を使用する。ここで使用する集束要素は、非点集束要素である。例えば円形レンズのx方向の集束効果は、この集束要素の中心を通過する電子ビーム10に影響を及ぼさないので、x方向の集束効果も存在しないとし得る。このように、この実施形態では、非点集束要素314を使用する。非点集束要素314に本発明を限定することなく、図4aおよび図4bに記号化して示す4極子要素314を使用し得る。
【0077】
図1の実施形態と同様に、集束要素314は、x方向には電子ビームに影響を及ぼさない。ただし、y方向には集束作用があり、そのため、ウィーンフィルタ要素110および112のx方向の結像および4極子要素314のy方向の結像により、電子光学系の非点なし結像が行われる。
【0078】
次に、図5a〜図5dを参照して別の実施形態を説明する。図5a〜図5cに、x−z面内でのモノクロメータを示し、図5dに、y−z面内での図を示す。
【0079】
図5aは、図1aに類似の図である。この系は、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112、集束要素114、および電子選択要素116を備える。参照数字10は、公称エネルギーEを有する電子ビームの例のビーム経路を示す。図1aにはさらに、公称エネルギーから逸脱したエネルギーを有する2つのビームの経路10aおよび10bを示す。
【0080】
ウィーンフィルタ要素110は、z軸(光軸)上から発する電子ビーム10を集束させる。ウィーンフィルタ要素110は、静電気双極子と、この静電気双極子に直交する磁気双極子とを有する。
【0081】
図5bに、ウィーンフィルタ要素110および112の区域にそれぞれ追加の4極子410および412が設けられる実施形態を示す。先に述べたように、これらのウィーンフィルタ要素は、x方向に集束的かつ分散的に作用する。これに対して、4極子要素は、x方向に集束効果を有するが、分散作用はほとんどない。図5bの実施形態では、ウィーンフィルタ要素110および112の励磁は減少させる。集束作用の減少を補償するために、4極子要素410および412を励磁する。それによって、同じ集束効果が実現される。この4極子は(収差を除き)分散を導入しないので、ウィーンフィルタの励磁を減少させることによって減少した分散は補償されない。そのため、調整が容易であり、荷電粒子エネルギーの選択がより柔軟なコンポーネントが得られる。
【0082】
x方向には、公称エネルギーの電子のビーム経路11は、ビーム経路10と同じままである。しかし、公称エネルギーEから逸脱した電子は、Eビームの経路11からの偏向が小さくなる。図5cに、ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに減少させ、4極子要素の励磁をさらに増加させた状況を示す。この場合も、ウィーンフィルタ要素の集束作用の減少は補償されるが、ウィーンフィルタの分散の減少は補償されない。したがって、参照数字10eおよび10fに、公称ビーム12からの偏向がさらに小さいビームを示す。
【0083】
要約すると、図5a〜図5cに、ウィーンフィルタ要素の集束効果を4極子要素の集束効果で置き換えることによってx方向の分散が減少する状況を示す。それによって、2つの異なる効果を実現し得る。
【0084】
一方では、電子ビームのエネルギー幅を調整するのに、電子エネルギー依存性選択手段を調整する必要がない。モノクロメータの分散は調整することができるので、例えば、選択幅が一定で、位置が固定されたスリットを使用し得る。
【0085】
他方、モノクロメータの分散を大きくすると、多数の電子が遮蔽されることになる。それによって、電子ビーム電流が減少する。そのため、モノクロメータを利用すると、電子ビーム電流を減少させずに1次電子エネルギー幅を狭めることができない。応用例の中には、高ビーム電流が必要とされるものがあり得る。この場合、それに従って、ここで開示したウィーンフィルタ要素と4極子要素の組合せにより、分散およびビーム電流が調整される。こうすると、所望のとおりに、上記で説明した系を使用して柔軟に、分散を調整し、それによってビーム電流を調整することもできるし、ビーム電流を調整し、それによって分散を調整することもできる。
【0086】
図5dに、y方向のそれぞれのビーム経路10、11、および12を示す。4極子要素410および412には、y方向に非集束効果がある。そのため、y方向には、ビーム経路11および12は、電子が公称エネルギーEを有する場合でもビーム経路10からずれる。ただし、集束要素314はx方向には影響を及ぼさないので、x方向の結像を乱さずに調整を加えることができる。そのため、4極子要素410および412でy方向に導入された非集束性を集束要素314によって補償することができる。
【0087】
上記で説明した実施形態では、ウィーンフィルタ要素の集束効果の一部の代わりに、x−z面で集束的に作用する4極子要素を使用する。しかし、別の実施形態によれば、これらの4極子要素は、x−z面で非集束的に作用し得る。x−z面で所望の集束効果を得るには、ウィーンフィルタ要素によって4極重要素の非集束性を過剰に補償しなければならない。そのため、ウィーンフィルタ要素をさらに大きく励磁することが可能になる。こうすると、分散およびエネルギー幅がさらに大きく低減することになる。
【0088】
x−z面内の非集束性4極子の実施形態では、y−z面内で集束が生じる。そのため、y−z面内での集束要素の集束効果が減少することがある。y−z面内での4極子の集束により追加のクロスオーバが生じる場合、図5a〜図5dに示す実施形態よりも、y−z面内での集束要素の集束効果を増加させなければならない。代替形態としてのこのような実施形態に関して、y−z面内での4極子要素の集束効果を調整することが可能であり、それによって、エネルギー幅低減系の望ましい非点なし結像を得るのに集束要素が不要になる。図12に、それぞれの例を示す。
【0089】
これらの有利な特徴は、図13a〜図13hに関してよりよく理解することができる。これらの図に、先に述べた代替形態をまとめる。図13の各図では、第1のウィーンフィルタ要素110および第2のウィーンフィルタ要素112、ならびに第1の4極子要素410および第2の4極子要素412をy−z面の側面図で示す。本質的にこれらの要素の中央に、集束要素314を設ける。点線116は、光軸からx方向に変位した電子を選択する電子選択要素116を記号化したものである。
【0090】
この系の中心面に関して対称な機械的設計が得られるように、この系が配置され、コンポーネントが構築される。動作時には、上記で説明したコンポーネントを対称に励磁することによってこの対称性が維持される。
【0091】
図13a〜図13hでは、集束要素116は、特にことわらない限り、磁気円形レンズ、静電気円形レンズ、静電気−磁気複合円形レンズ、磁気円筒レンズ、静電気円筒レンズ、磁気4極子要素、静電気4極子要素、またはこれらすべての要素の任意の組合せからなる群から選択したいずれかの要素とし得るが、特に、静電気−磁気複合4極子要素または静電気−磁気複合円筒レンズとすることができる。
【0092】
図13a〜図13hのすべての図では、ビーム経路10を基準として示す。ビーム経路10は、4極子要素410および412が励磁されないか、または存在しない場合に実現されるものである。そのため、電子は、y方向に影響を受けずにウィーンフィルタ要素110および112を通過することになる。
【0093】
4極子要素410および412が設けられ励磁される場合、これらの4極子要素は、電子に対してx方向およびy方向に作用する。x方向の集束(図5a〜図5c参照)は、ウィーンフィルタ要素と4極子要素の組合せによって実現される。x方向の所望のビーム経路を実現するために、4極子要素をより大きく励磁することによって、ウィーンフィルタ要素の励磁の減少を補償することができる。しかし、4極子要素を励起すると、y方向にも結像されることになる。先に述べたように、図13a〜図13hに、可能な代替形態をまとめる。
【0094】
図13aに、ビーム経路13に対応する励磁よりも、ウィーンフィルタの励磁を減少させた実施形態を示す。こうすると、このウィーンフィルタ要素のx方向の集束作用およびこのウィーンフィルタ要素の分散も減少する。依然としてx−z面で所望のビーム経路が得られるように、4極子を励磁してx方向に集束させる。この場合、図13aのビーム経路13aでわかるように、4極子はy方向には集束させない。図13aに対応する励磁を用いると、この系の分散は、ビーム経路13に対応する励磁よりも減少する。同時に、ビーム電流が増加する。
【0095】
図13aから開始して、ウィーンフィルタ要素110および112の励磁を連続的に増加させることができる。それによって、モノクロメータの分散が増加し、この系のビーム電流が減少する。図13b〜図13hに、ウィーンフィルタ要素の励磁を増加させるときに得られるビーム経路を段階的に示す。
【0096】
まず、ウィーンフィルタの励起を増加させると、ビーム経路13に対応するビーム経路を実現することができる。ウィーンフィルタの励磁をさらに増加させると、図13bによる実施形態になる。図13bに、ビーム経路13に対応する励磁よりも、ウィーンフィルタの励磁を増加させた実施形態を示す。こうすると、このウィーンフィルタ要素のx方向の集束作用およびこのウィーンフィルタ要素の分散も増加する。依然としてx−z面で所望のビーム経路が得られるように、4極子を励磁してx方向には集束させないようにする。こうすると、図13bのビーム経路13bでわかるように、y方向に4極子の集束が生じる。図13bに対応する励磁を用いると、この系の分散は、ビーム経路13に対応する励磁よりも増加する。同時に、ビーム電流が減少する。
【0097】
ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに増加させると、図13cに対応する実施形態になる。図13cでは、4極子要素410によってビームはy方向に集束して光軸に平行になる。したがって、集束要素314の集束作用なしに、この系のx−y中央面に関して対称なビーム経路が実現される。したがって、この集束要素を点線で記号化する。これは、この集束要素が励磁されていないか、あるいは、この集束要素がこの系から削除されたと理解されたい。
【0098】
ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに増加させると、図13dに対応する実施形態になる。そのため、このウィーンフィルタ要素のx方向の集束作用およびこのウィーンフィルタ要素の分散も増加する。依然としてx−z面で所望のビーム経路が得られるように、4極子を励磁してx方向には集束させないようにする。こうすると、図13dのビーム経路13dでわかるように、y方向に4極子による集束が生じる。図13dに対応する励磁を用いると、この系の分散は、ビーム経路13cに対応する励磁よりもさらに増加する。同時に、ビーム電流が減少する。
【0099】
上記に示す実施形態と異なり、図13dの集束要素314は、電子ビームを集束させないようにする必要がある。そのため、図13dの実施形態で使用する集束要素314は、4極子要素とする必要がある。
【0100】
ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに増加させると、図13eに対応する実施形態になる。図13cの実施形態と同様に、図13eの励磁条件では、集束要素314が必要とされない。ただし、図13eの実施形態と異なり、図13eでは集束要素が有害になる。というのは、電子ビーム経路13eが、任意選択の集束要素の中心を通るからである。そのため、図13eでは、点線で描いた集束要素をオンに切り替えることもできるし、オフに切り替えることもできる。あるいは、この集束要素は、この系に存在する必要がない。
【0101】
詳細には立ち入らないが、ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに増加させると、図13fに示すビーム経路13fになる。そのため、本質的に対称なビーム経路とするには、y−z面内で集束が生じる任意の集束要素が必要とされる。
【0102】
図13gおよび図13hに、ウィーンフィルタ要素の励磁をさらに増加させた実施形態を示す。こうすると、ウィーンフィルタ要素110および112内で、高次のビーム経路が実現される。図に示すビーム経路は、ウィーンフィルタ要素の励磁を、13g1、13h1、13g2、13h2の順に増加させることに対応する。
【0103】
これらの高次のビーム経路は、以下のように説明することもできる。ウィーンフィルタ要素の励磁を増加させるにもかかわらず、ウィーンフィルタ要素と4極子要素の合成集束は一定に保たれる。そのため、分散は、この集束作用の悪影響を受けずに増加し得る。したがって、双極子ウィーンフィルタ本来の制限に打ち勝つことができる。これらの制限は、本願と合わせて出願された対応する特許出願の中でより詳細に説明されている。この対応する特許出願、特に、この対応する特許出願の中の図1〜図6bおよび図12a〜図13bに関連する詳細な説明の部分をここに参照により組み込む。
【0104】
集束要素314に関する細部は、図13a〜図13fに関して示した細部と同様である。
【0105】
図13a〜図13hに示す実施形態を要約すると、概ね、ウィーンフィルタの励磁を連続して増加させることができる。それによって、ウィーンフィルタの集束特性を条件とした本来の制限を受けずに、電子選択要素116を変化させずに分散を連続して増加させることができる。
【0106】
集束要素314を必要としない複数の離散的な励磁値が存在する。そのため、ウィーンフィルタ要素間で、光軸に平行なビーム経路、または本質的にこれらウィーンフィルタ要素の中央にクロスオーバを従うビーム経路が実現される場合には、集束要素314を使用しないモノクロメータによって、電子選択要素を変化させずに分散を有利に変化させることもできる。そのため、ウィーンフィルタ要素および4極子要素についての複数組の離散励磁値から選択した1組の励磁値を用いる。
【0107】
図6〜図9に、ウィーンフィルタ要素110、112、ならびにウィーンフィルタ要素および4極子要素410、412の異なる実施形態を示す。これらの図は、z軸方向から見たものである。図6では、静電極502および503がある。これらの極を使用してx方向に電界を生成する。一般にコイルによって励磁する磁極512および513を使用してy方向に磁界を生成する。これらの極502、503、512、および513により、双極子ウィーンフィルタ要素が形成される。
【0108】
図7の実施形態は、上記で説明したウィーンフィルタの要素を備える。さらに、静電極522および523が設けられる。静電極502および503と合わせて、これらの静電極522および523により、ウィーンフィルタ要素の集束作用を部分的に置き換える集束的かつ準非分散的な要素として使用し得る静電気4極子が形成される。図6の実施形態では、ウィーンフィルタ要素および4極子要素は極を共有する。そのため、これら2つの要素は、1つのコンポーネントとして提供される。
【0109】
(図示しない)代替実施形態では、ウィーンフィルタ要素の静電極と静電気4極子要素の静電極を分離することができる。このような場合、ウィーンフィルタ要素と静電気4極子要素は、2つの別々のコンポーネントとみなすことになる。ウィーンフィルタ要素の極と4極子要素の極を分離する可能なやり方は、図8を参照してより容易に理解されよう。
【0110】
図8に、双極子ウィーンフィルタ要素(502、503、512、513)および磁気4極子532〜535を備えた実施形態を示す。磁気4極子要素によってx方向では集束し、y方向では集束しないように、ウィーンフィルタ要素の極に対して磁気4極子の極を45°回転させる。図8の場合、ウィーンフィルタ要素および4極子要素を含む1つの多極子を設けるか、2つのコンポーネントを設けるかの2つの可能性があり得る。
【0111】
図9に、静電気−磁気組合せ型多極子の実施形態を示す。それによって、2つの静電極および2つの磁極により、双極子ウィーンフィルタが形成される。さらに、静電気および/または磁気による4極子場を生成し得る。さらに、荷電粒子ビームを試料に結像する際に導入される収差を補償するために、高次の多極子場を生成し得る。このビームを偏向させるために追加の双極子場を生成することができる。
【0112】
図1〜図9を参照して、異なる実施形態およびそれらの個々の細部を説明してきた。2つのウィーンフィルタ要素、1つの集束要素、および1つの電子選択要素を組み合わせることができることを示した。電子選択要素および集束要素の異なる実施形態の例を述べた。さらに、2つの別の4極子要素を含む代替実施形態を説明した。さらに、ウィーンフィルタ要素、4極子要素、これらの組合せ、および多極子要素の様々な実施形態を全体的に開示した。ここで説明した細部は、相反しない限り、特定の実施形態と無関係に相互に組み合わせることができる。
【0113】
先に述べた細部のいくつかの組合せの例を示すために、図10a〜図10fに、6つの実施形態を示す。これらの図はどれも、x−z面内での概略図である。これらの実施形態は、個々の細部を組み合わせることができる方法の例を示している。本発明は、これらの例に限定されるものではない。
【0114】
図10aに、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112を備える光学系701を示す。さらに、これら2つのウィーンフィルタ要素間に電子エネルギー依存性選択要素116が設けられる。電子選択要素116は、これら2つのウィーンフィルタ要素のそれぞれに対して本質的にz方向にほぼ等距離のところにある。この電子エネルギー依存性選択要素は、図2a〜図2eに示すいずれかの実施形態による開口、または電子を選択するのに適切な別の形状を有する。さらなる細部については、図2a〜図2eを参照されたい。集束要素114は、本質的に電子選択要素116と同じz位置に配置される。
【0115】
図10bに、光学系702を示す。この場合も、2つのウィーンフィルタ要素110および112がある。集束要素114は、他のすべての実施形態と同様に、磁気円形レンズ、静電気円形レンズ、静電気−磁気複合円形レンズ、磁気円筒レンズ、静電気円筒レンズ、磁気4極子要素、静電気4極子要素、またはこれらすべての要素の任意の組合せからなる群の任意の要素とし得る。ただし、図10bで使用する要素114の形状は、円形レンズを記号化したものと理解されたい。図10bに、電子を選択する要素208aと208bの組合せを示す。要素208aおよび208bの使用法は、図3aおよび図3bを参照してより詳細に説明したものである。さらに、2つの開口または電子角度依存性選択要素742および744が設けられる。開口742は、入射する電子ビームの一部を遮蔽し、開口744は、出射する電子ビームの一部を遮蔽する。これらの開口を使用して光軸からの電子の距離を制限し、それによって、導入されることがある収差を制御することができる。
【0116】
図10cに、組合せウィーンフィルタ−4極子要素110/410を備えた実施形態702を示す。別の組合せ要素112/412を、集束要素712が(z軸に沿って)これら2つのウィーンフィルタ要素の中央に配置されるように位置決めする。この場合も、集束要素712と実質的に同じ位置で電子エネルギー依存性選択要素116を使用する。集束要素712は、円筒レンズを示す。好ましくは、レンズ712はy方向にのみ作用する。ただし、何らかの位置合わせ不良が避けられないことがある。円筒レンズ712は、磁気、静電気、または磁気−静電気の組合せのいずれかとし得る。ただし、レンズ712が、減速モードで作用する少なくとも静電コンポーネントを備えるとさらに好ましい。それによって、電子が減速し、分散が大きくなる。
【0117】
図10dに、開口742、ウィーンフィルタ要素110および112、4極子要素410および412、ならびに電子選択要素208aを含む光学系704を示す。図3aおよび図3bを参照して説明したように、電子選択エッジ208aは、1次電子ビームのエネルギースペクトルの一方の側の電子しか遮蔽しない。本質的にy方向に集束させる結像特性を有する集束要素として、4極子714を使用する。代替形態として、電子選択要素208aおよび集束要素714を、この系の中央のx−y面から変位させる。このような位置は、エネルギー幅低減系の対称性に悪影響を及ぼす。しかし、製作上の理由などから、このような配置は考慮すべきものである。電子選択要素208aおよび集束要素714のこの位置は、好ましくはないが、他の実施形態のいずれかと組み合わせることができる。
【0118】
図10eでは、図1で説明した光学系705と、図10cで説明した円筒レンズとを組み合わせる。好ましくは、レンズ712はy方向にのみ作用する。円筒レンズ712は、磁気、静電気、または磁気−静電気の組合せのいずれかとし得る。ただし、レンズ712が、減速モードで作用する少なくとも静電コンポーネントを備えるとさらに好ましい。
【0119】
図10fに、別の実施形態の例を示す。図10fには、光学系706を示す。この光学系は、集束要素114およびエネルギー選択要素116を備える。x方向の分散および集束は、それぞれ手段110/410および手段112/412によって実施される。要素110および112はウィーンフィルタであり、要素410および412は4極子要素である。
【0120】
ウィーンフィルタと4極子のそれぞれの対は、z方向に相互に変位させる。点線は、これらを1つのコンポーネントに組み合わせることもできるし、別々のコンポーネントとして実現することもできることを示す。
【0121】
本願で示す特定の実施形態に無関係に、ウィーンフィルタ要素の場とそれぞれの4極子要素の場を実質的に重ねることもできるし、異なる領域内で部分的に重ねることもできるし、あるいは作用することもできる。これらの場を部分的に重ねる場合、これらの場の一方をz方向により短くし、他方の場に対称に位置決めすることが可能である。ただし、これら2つの場を、本質的にz方向に同じ長さにし、z方向に変位させることができるはずである。そうではあるが、いずれの場合でも、集束要素(114、314、713、および714)の左側の要素と集束要素の右側の要素は、集束要素に関してz方向に対称に配置されることが好ましい。すなわち、モノクロメータの要素は一般に、系の中央のx−y面に関して本質的に対称に機械的に設計され配置される。
【0122】
以下に、1次電子ビームのエネルギー幅を狭める光学系を使用する一例を示す。図11に、電子ビームコラム1を示す。この電子ビームコラムは、コラムハウジング3および試料チャンバ4を備える。この試料チャンバ内に試料8を配置する。放出器ユニット6は、光軸5に沿って電子ビーム10を放出する。レンズ7は、モノクロメータ2を照明し、モノクロメータ2は、電子エネルギーに応じて電子を選択する。それによって、1次電子ビームのエネルギー幅を狭めることができる。そのため、対物レンズ9内で導入される色収差を小さくし、この系の分解能を高くすることができる。
【0123】
一般に、レンズ7は拡大レンズとして作用することが好ましい。像が拡大されると、電子の選択をより容易に行うことができる。
【0124】
図11にモノクロメータ2の例を示すが、上記で開示したモノクロメータの変形はすべて(例えば、図10a〜図10fなど)、電子ビームコラム1内で使用し得る。さらに、電子ビームコラム内でのモノクロメータの位置を変更することができる。一般に、放出器ユニット6の近くにモノクロメータを配置することが好ましいが、本発明はこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1a】電子ビームエネルギー幅低減系の第1実施形態をx−z面内で示す概略図である。
【図1b】図1aの実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図2a】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図2b】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図2c】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図2d】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図2e】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図3a】電子選択要素の別の実施形態の概略側面図である。
【図3b】電子選択要素の別の実施形態の概略側面図である。
【図4a】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の別の実施形態の概略側面図である。
【図4b】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の別の実施形態の概略側面図である。
【図5a】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の他の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図5b】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の他の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図5c】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の他の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図5d】図5a〜図5cの実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図6】本発明による多極子要素の実施形態の概略図である。
【図7】本発明による多極子要素の実施形態の概略図である。
【図8】本発明による多極子要素の実施形態の概略図である。
【図9】本発明による多極子要素の実施形態の概略図である。
【図10a】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図10b】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図10c】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図10d】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図10e】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図10f】本発明による電子ビームエネルギー幅低減系の実施形態の概略側面図である。
【図11】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を利用する電子ビーム装置の実施形態の概略側面図である。
【図12】別の実施形態の概略側面図である。
【図13a】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13b】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13c】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13d】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13e】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13f】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13g】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。
【図13h】ウィーンフィルタ要素の励磁が増加している本発明の一実施形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿ったz軸を伴う荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系であって、
第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、第1のz位置zにある第1の要素(110)と、
前記第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、第2のz位置zにある第2の要素(112)と、
とzの間のz位置にある荷電粒子選択要素(116、116a、116b)と、
とzの間のz位置にある集束要素(114、314、712、714)と
を備える、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項2】
前記第1の面はx−z面である、請求項1に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項3】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項1または2に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項4】
前記荷電粒子選択要素および前記集束要素の前記z位置は、本質的に前記z位置zとzの中央である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項5】
前記荷電粒子選択要素(116、116a、116b)は、荷電粒子エネルギー依存性選択要素である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項6】
前記荷電粒子選択要素はスリットである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項7】
前記荷電粒子選択要素は、選択幅が可変であり、かつ/または位置が可変である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項8】
前記荷電粒子選択要素は、選択幅が固定されており、かつ/または位置が固定されている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項9】
前記荷電粒子選択要素はナイフエッジを備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項10】
前記集束要素(114、314、712、714)は、前記第2の面内で集束させるのに適している、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項11】
前記第2の面はy−z面である、請求項10に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項12】
前記第2の面は、前記第1の面に実質的に直交する、請求項10または11に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項13】
前記集束要素は、非点収差型集束要素であり、前記第2の面内で集束させ、前記第1の面では非集束すなわち集束させないのに適している、請求項1〜12のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項14】
前記エネルギー選択要素(116)の前記スリット(204、205、207、208a、208b)は、本質的にy方向に延びる、請求項4〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項15】
前記集束要素は、減速モードの静電円筒レンズ(712)を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項16】
前記集束要素は、減速モードの静電気4極子(714)を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項17】
前記集束要素(114)は、非点収差なしで集束させるのに適しており、前記第1の面内での前記荷電粒子ビームの投影は、前記集束要素の中心で前記荷電粒子エネルギー幅低減系の前記光軸と交差する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項18】
前記集束要素は、減速モードの静電気円形レンズ(114)を含む、請求項1〜12または17のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項19】
第1の4極子要素(410)と、
第2の4極子要素(412)と
をさらに備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項20】
前記第1の4極子要素(410)は、前記第1の面内で集束的または非集束的に作用し、
前記第2の4極子要素(412)は、前記第1の面内で集束的または非集束的に作用する、請求項19に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項21】
前記第1の4極子要素(410)は、前記第1の4極子要素の場が、本質的に前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)の場と重なるように位置決めされ、
前記第2の4極子要素(412)は、前記第2の4極子要素の場が、本質的に前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)の場と重なるように位置決めされる、請求項19または20に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項22】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記第1の4極子要素は1つの多極子要素によって形成され、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素および前記第2の4極子要素は1つの多極子要素によって形成される、請求項19〜21のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項23】
前記多極子要素内で追加の偏向または収差補正用の要素を重ね合わせる、請求項22に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項24】
直線的な視覚系または非直線的な視覚系である、請求項1〜23のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項25】
1次荷電粒子ビーム用のエネルギー幅低減系である、請求項1〜24のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項26】
阻止電場型エネルギー幅低減系である、請求項1〜25のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項27】
光軸に沿ったz軸を伴う荷電粒子ビームエネルギー幅低減系であって、
第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、第1のz位置zにある第1の要素(110)と、
前記第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、第2のz位置zにある第2の要素(112)と、
本質的にzとzの中央のz位置にある荷電粒子選択要素(116、116a、116b)と、
前記第1の面内で非集束的に作用する第1の4極子要素(410)と、
前記第1の面内で非集束的に作用する第2の4極子要素(412)と
を備え、
前記第1の要素は集束的かつ分散的に作用し、前記第2の要素は集束的かつ分散的に作用し、前記第1の4極子要素、前記第2の4極子要素、および前記荷電粒子選択要素は、前記通過する荷電粒子を非点収差も分散もなく結像し得るように位置決めされる、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項28】
前記第1の面はx−z面である、請求項27に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項29】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項27または28に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項30】
前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素は、前記系の中央面に関して本質的に対称な位置を有し、前記第1および第2の4極子要素は、前記系の中央面に関して本質的に対称な位置にある、請求項27〜29のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項31】
とzの間のz位置にある集束要素(114、314、712、714)をさらに備え、
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素、前記第1の4極子要素、前記第2の4極子要素、前記荷電粒子選択要素、および前記集束要素は、前記通過する荷電粒子を非点収差も分散もなく結像し得るように位置決めされる、請求項27〜30のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項32】
請求項1〜26のいずれかに記載の特徴のいずれかをさらに備える、請求項27〜31のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系。
【請求項33】
請求項1〜32のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系のいずれかを利用する荷電粒子ビーム装置。
【請求項34】
拡大レンズ(7)により、前記荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が照明される、請求項33に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項35】
光軸に沿ったz軸を備える荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法であって、
第1の面内のz位置zで集束的かつ分散的に作用する第1の要素を提供するステップと、
前記第1の面内のz位置zで集束的かつ分散的に作用する第2の要素を提供するステップと、
とzの間のz位置にあるエネルギー選択要素を提供するステップと、
とzの間のz位置にある集束要素を提供するステップと、
公称エネルギーを有する荷電粒子が前記エネルギー選択要素および前記集束要素の中心を通過するように、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素を励磁するステップと、
前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素を励磁するステップと、
前記荷電粒子ビームが本質的に非点収差なしで結像されるように、前記集束要素を励磁するステップと、
前記荷電粒子選択要素によって荷電粒子を選択するステップと
を含む、方法。
【請求項36】
前記第1の面はx−z面である、請求項35に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項37】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項35または36に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項38】
前記荷電粒子は、エネルギーに応じて選択される、請求項35〜37のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項39】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前記集束効果の所望の一部を置き換えるように第1の4極子要素を励磁し、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の前記集束効果の所望の一部を置き換えるように第2の4極子要素を励磁するステップをさらに含む、請求項35〜38のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項40】
前記4極子要素の励磁に関連する前記集束的かつ分散的に作用する要素の励磁に応じて分散を調整するステップをさらに含む、請求項39に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項41】
前記4極子要素の励磁に関連する前記集束的かつ分散的に作用する要素の励磁に応じてビーム電流を調整するステップをさらに含む、請求項39または40に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項42】
前記エネルギー選択要素は、本質的にzとzの中央のz位置に設けられ、
前記集束要素は、本質的にzとzの中央のz位置に設けられ、
前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記第1の面内で本質的に対称な結像が得られるように励磁される、請求項35〜41のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項43】
光軸に沿ったz軸と、z位置zで集束的かつ分散的に作用する第1の要素と、z位置zで集束的かつ分散的に作用する第2の要素と、エネルギー選択要素と、第1の4極子要素と、第2の4極子要素とを備える荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法であって、
第1の面内で集束的かつ分散的に作用するように前記第1の要素を励磁して、公称エネルギーを有する荷電粒子が前記エネルギー選択要素を通過するようにするステップと、
前記第1の面内で集束的かつ分散的に作用するように前記第2の要素を励磁するステップと、
前記第1の面内で結像的に作用するように前記第1および第2の4極子要素を励磁するステップと、
本質的にzとzの中央で前記荷電粒子選択要素によって荷電粒子を選択するステップと
を含む、方法。
【請求項44】
前記第1の面はx−z面である、請求項43に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項45】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項43または44に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項46】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場の合成により、前記第1の面内で前記荷電粒子ビームが本質的に対称に結像されるように励磁され、
前記第1および第2の4極子要素は、前記第1の4極子要素の場と前記第2の4極子要素の場の合成により、第2の面内で前記荷電粒子ビームが本質的に対称に結像されるように励磁される、請求項43〜45のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項47】
前記第2の面はy−z面である、請求項46に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項48】
前記第2の面は前記第1の面にほぼ直交する、請求項46または47に記載の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項49】
前記荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の非点なし結像が得られるように、前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素ならびに前記第1および第2の4極子要素を励磁するステップをさらに含む、請求項43〜48のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項50】
前記荷電粒子ビームが本質的に非点収差なしで結像されるように、zとzの間に位置決めされた集束要素を励磁するステップをさらに含む、請求項43〜49のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項51】
第1の4極子要素による荷電粒子ビームの偏向と前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素による荷電粒子ビームの偏向を合成した所望の集束効果が得られるように前記第1の4極子要素を励磁し、第2の4極子要素による荷電粒子ビームの偏向と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素による荷電粒子ビームの偏向を合成した所望の集束効果が得られるように前記第2の4極子要素を励磁するステップをさらに含み、
前記所望の集束効果は、公称エネルギーを有する荷電粒子が前記エネルギー選択要素を通過するビーム経路によって定義される、請求項43〜50のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項52】
前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素ならびに前記第1および第2の4極子要素を、複数の離散値の1つに対して励磁する、請求項43〜51のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。
【請求項53】
請求項35〜42のいずれかに記載の特徴のいずれかをさらに含む、請求項43〜52のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図2e】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図10e】
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【図10f】
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【図11】
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【図12】
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【図13a】
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【図13b】
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【図13c】
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【図13d】
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【図13e】
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【図13f】
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【図13g】
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【図13h】
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【公表番号】特表2007−505453(P2007−505453A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525711(P2006−525711)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009802
【国際公開番号】WO2005/024890
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】