荷電粒子ビーム系用の2段式荷電粒子ビームエネルギー幅低減系
本発明は、例えば、光軸に沿ったz軸ならびに第1および第2の面を伴う荷電粒子ビーム用の荷電粒子ビームエネルギー幅低減系に関するものである。この系は、集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素110,112と、第1の4極子要素(動作時、この場と集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場が重なるように位置決めされる)410と、第2の4極子要素(動作時、この場と集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場が重なるように位置決めされる)412と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前で位置決めされた第1の荷電粒子選択要素618と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の後で位置決めされた第2の荷電粒子選択要素616、716とを備える。それによって、本来の分散制限なしに、仮想分散源とみなせる場所を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、検査システム、試験システム、リソグラフィシステムなどに応用する荷電粒子ビーム装置に関する。本発明は、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法にも関する。本発明はさらに、荷電粒子選択系に関する。詳細には、本発明は、荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を使用する方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
荷電粒子ビーム機器は、いくつかの産業分野で用いられる多くの機能を有する。これらの産業分野には、製造中の半導体デバイスの検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置、および試験システムが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのため、マイクロメートルおよびナノメートルの尺度で試料を構築し検査することが強く求められている。
【0003】
マイクロメートルおよびナノメートルの尺度のプロセス制御、検査、または構築はしばしば、電子ビームなどの荷電粒子ビームによって行われる。これらの荷電粒子ビームは、電子顕微鏡または電子ビームパターン生成器などの荷電粒子ビーム装置内で生成され集束される。荷電粒子ビームでは、それらの波長が短いために、例えば光子ビームよりも優れた空間分解能が得られる。
【0004】
しかし、最新の低電圧電子顕微鏡では、収差により、実現可能な分解能が、1keVの電子エネルギーでは約3nmに制限される。したがって、特に低エネルギーの応用例では、色収差を低減することが望ましい。対物レンズのガウス像面内での色収差の収差ディスクの直径は、荷電粒子ビームの相対エネルギー幅ΔE/Eに比例する。
【0005】
電子ビームコラム内の電子は、放出プロセスおよびベルシュ(Boersch)効果、すなわち、確率的なクーロン相互作用によるエネルギー分布の広がりのために単色ではなく、そのため、相対エネルギー幅が広がる。上記を考慮すると、エネルギー幅ΔEは、ビーム電流に応じて約0.5〜1eV、さらにはそれよりも大きくなる。
【0006】
例えば対物レンズの集束特性に基づいて色収差を最小限に抑える度合いをさらに高めることは難しい。この理由から、分解能をさらに向上させるために、モノクロメータを使用することが既に知られている。それによって、後で下流の電子−光学結像系によって処理される電子ビームのエネルギー幅ΔEを狭めることができる。
【0007】
荷電粒子用のモノクロメータとして、静電気双極子場と磁気双極子場を互いに直交させて重ね合わせるウィーンフィルタが知られている。
【0008】
例として、(Frosien他の)米国特許公開第6489621号は、粒子のエネルギーに応じて粒子ビームを分散させる第1および第2のウィーンフィルタによって粒子ビームのエネルギー幅を狭める装置と、エネルギー幅がある範囲に狭められた粒子を選択する開口とを示している。それによって、低分散値について、不利なクロスオーバを避けることができる。
【0009】
しかし、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の分散を大きくするのに適した系が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、改良型荷電粒子系を提供する。それによって、系の分解能を改善することを意図している。本発明の態様によれば、独立請求項1に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系、独立請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置、および独立請求項22に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる利点、特徴、態様、および細部は、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかになる。
【0012】
一態様によれば、光軸に沿ったz軸ならびに第1および第2の面を伴う荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。この系は、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と、集束的かつ分散的に作用する第2の要素と、第1の4極子要素であって、動作時に、この第1の4極子要素の場と集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場が部分的に重なる(完全に重なる)ように位置決めされた第1の4極子要素と、第2の4極子要素であって、動作時に、この第2の4極子要素の場と集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場が部分的に重なるように位置決めされた第2の4極子要素と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前で位置決めされた第1の荷電粒子選択要素と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の後で位置決めされた第2の荷電粒子選択要素とを備える。
【0013】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素が第1のウィーンフィルタ要素であり、集束的かつ分散的に作用する第2の要素が第2のウィーンフィルタ要素である荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。
【0014】
本願では、ウィーンフィルタ要素の代わりに、1つの面内で集束的かつ分散的に作用する他の要素も使用し得る。そのため、例として、湾曲した光軸を伴う要素を使用することができる。
【0015】
本願では、ここで開示するエネルギー幅低減要素をモノクロメータとしても示す。本願におけるモノクロメータという用語は、荷電粒子の単一のエネルギーを選択するものと理解すべきではなく、荷電粒子ビームをフィルタリングして、所望のエネルギー幅を得るものと理解すべきである。
【0016】
先に述べた態様により、改良型エネルギー幅低減系および改良型荷電粒子ビーム装置が提供される可能性が得られる。一方では、この系の分散を、現況技術の装置の制限よりも大きくすることができる。他方では、z軸に沿って仮想分散源を有利に位置決めすることができる。そのため、本質的に放出源とみなせる場所の位置に仮想分散源を位置決めすることができる。そのため、放出源とみなせる場所と仮想分散源は一致する。さらに、2つの4極子によって、放出源とみなせる場所をz軸に沿って位置決めすることができる。好ましくは、仮想分散源の位置決めをこれに従って行い、それによって、放出源とみなせる場所と仮想分散源を互いに一致させることができる。
【0017】
上記の態様によれば、異なるエネルギーを有する荷電粒子は、導入される分散のために分離する。しかし、より細部に立ち入ると、荷電粒子の速度に基づいて選択が行われることがわかる。この速度は、式(1)で与えられる。
(1) v=sqrt(2E/m)
【0018】
ただし、vは(絶対)速度であり、sqrtは平方根を示し、Eは荷電粒子のエネルギーであり、mは荷電粒子の質量である。あるいは、式(1)は、次のように記述し得る。
(2) v=sqrt(2qU/m)
【0019】
ただし、qは粒子の電荷であり、Uは加速電位である。ここで述べた態様は、例えば電子などの一定質量の粒子についてのエネルギー依存性選択に関係するものである。
【0020】
そうではあるが、本発明の一態様による機器は、荷電粒子の質量分析に使用することもできる。速度vが変化すると、異なる質量の異なる元素または1つの元素の異なる同位体が分離する。この変化は、例えば1keVのエネルギーでの、例えば1eVのエネルギー変化(これは、1e−3の相対エネルギー幅に相当する)を無視するのに十分に大きいものとする。
【0021】
上記を考慮すると、ここで説明するエネルギー幅の低減は一般に、速度分布幅の低減に適用し得る。式1によれば、速度分布幅の低減は、エネルギー幅の低減または質量分布幅の低減のいずれかである。質量分布は一般に離散値を有するので、質量分布幅の低減を質量の選択とみなすこともできる。
【0022】
質量の選択に関して、本発明の別の利点を説明することができる。例えばウィーンフィルタを利用する現況技術の質量分析計には、ウィーンフィルタの集束効果に基づいて、質量選択の後でビームが楕円形状になるという問題がある。本発明では、このビームフィルタの集束効果は補償されるか、またはほぼ補償される。そのため、質量選択の後に楕円ビームになるという欠点を回避し得る。
【0023】
上記で説明したように、速度分布幅の低減は、エネルギー幅の低減または質量の選択のいずれかとし得る。その結果、本発明の態様に関して、速度分布幅低減系は、エネルギー幅低減系または質量選択系のいずれかとし得る。さらに、速度依存性選択要素は、エネルギー依存性選択要素または質量依存性選択要素のいずれかとし得る。
【0024】
ある態様によれば、各荷電粒子が同じ質量を有する系を提供し得る。この荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用される。別の態様によれば、各荷電粒子が異なる質量を有する系を提供し得る。この荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビーム質量選択系として使用される。
【0025】
以下では、説明をより簡単にするために、エネルギー幅の低減を参照する。ただし、ここで説明する態様、細部、および実施形態は、荷電粒子の質量の選択に利用することもできる。そのため、ここで説明する態様、細部、および実施形態は一般に、速度分布幅の低減に利用することができる。
【0026】
別の態様によれば、荷電粒子が長さ10mm〜300mmの非集束領域を通過するように、集束的かつ分散的に作用する第1の要素および第1の4極子要素が、放出源とみなせる場所に関してある位置にある荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。
【0027】
そのため、典型的には、本発明の系を荷電粒子源の近くに設けることが可能である。
【0028】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と集束的かつ分散的に作用する第2の要素の間に第2の荷電粒子選択要素を位置決めするか、あるいは、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第2の要素の後で第2の荷電粒子選択要素を位置決めすることが可能である。
【0029】
そのため、第2の荷電粒子選択要素の位置は、関与する光学系の要件に応じて選択することができる。
【0030】
別の態様によれば、放出源とみなせる場所が荷電粒子源または仮想粒子源であるか、または、放出源とみなせる場所がクロスオーバであるか、あるいは、放出源とみなせる場所が荷電粒子源または仮想源の像である荷電粒子ビームエネルギー幅減少系が提供される。
【0031】
そのため、荷電粒子ビーム装置内の異なる位置で、エネルギー幅低減系を使用することができる。そうではあるが、仮想分散源をこのように有利に位置決めすることを、これらすべての可能性に適用し得る。
【0032】
別の態様によれば、先に述べた荷電粒子ビームエネルギー幅低減系は、荷電粒子ビーム装置に適用することができる。そのため、先に述べた特徴は、荷電粒子ビーム装置にも利用し得る。
【0033】
別の態様によれば、このエネルギー幅低減系は、電子源の直後に位置決めされるか、あるいは、例えば、抽出手段が荷電粒子銃コンポーネントの一部である場合には、荷電粒子銃コンポーネントの直後またはその中にさえ位置決めされる。
【0034】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法が提供される。この系は、光軸に沿ったz軸と、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と、集束的かつ分散的に作用する第2の要素と、第1の4極子要素および第2の4極子要素とを有する。この方法は、第1の荷電粒子選択要素によって荷電粒子ビームを整形するステップと、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場、第1の4極子要素の場、集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場、および第2の4極子要素の場を合成することによって、第1の面内で、荷電粒子が放出源とみなせる場所から発するように見えるように、集束的かつ分散的に作用する第1の要素および集束的かつ分散的に作用する第2の要素を励磁するステップと、第1の4極子要素の場および第2の4極子要素の場により、放出源とみなせる場所から実質的に発するように荷電粒子ビームが第2の面内で結像するように、第1および第2の4極子要素を励磁するステップと、第2の荷電粒子選択要素によってエネルギーに依存して荷電粒子を選択するステップとを含む。
【0035】
そのため、この系内で導入される分散のために放出源とみなせる場所が拡大しないようにすることができ、他方では、先行技術の系の分散の制限を克服することができる。
【0036】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素が第1のウィーンフィルタ要素であり、集束的かつ分散的に作用する第2の要素が第2のウィーンフィルタ要素である荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法が提供される。
【0037】
別の態様によれば、第1および第2の4極子要素ならびに集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素を、複数の離散値の1つに対して励磁する方法が提供される。
【0038】
さらに、上記で説明した機器の任意の細部を動作させ、実施し、また製作するのに必要とされる方法ステップを、先に述べた方法に用いることができる。
【0039】
方法および機器を説明する上記の態様に関して、z軸は一般に、湾曲していることがある光軸に沿って延びる。
【0040】
本発明は、ここで説明する各方法ステップを実施する機器部分を含めて、ここで開示する方法を実施する機器も対象とする。これらの方法ステップは、ハードウエアコンポーネント、適切なソフトウエアによってプログラムされたコンピュータ、これら2つの任意の組合せ、または他の任意のやり方によって実施し得る。
【0041】
以下の説明では、本発明の上記で示した態様および他のより詳細な態様の一部を説明し、図を参照して部分的に例示する。
【図面の詳細な説明】
【0042】
本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素を、例えば、電子ビーム装置またはその構成要素と称する。この場合、電子ビームは、特に検査またはリソグラフィに利用することができる。本発明は、依然として、荷電粒子および/または他の2次および/または後方散乱による荷電粒子の他の放出源を使用して試料の像を取得する機器および構成要素に適用し得る。
【0043】
例えばx−z面またはy−z面に関係する本明細書でのすべての考察では、これらの面は本質的に互いに直交すると理解されることも当業者には理解されよう。本願での理論的な考察では数学的な意味での座標について言及するが、それぞれの構成要素は、x−z面とy−z面が、約80°〜100°、好ましくは87°〜93°、より好ましくは約89°〜91°の角度をなすように実際に相互に位置決めすることができる。
【0044】
さらに、本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビームを1次荷電粒子ビームと称する。本発明は、依然として2次荷電粒子および/または後方散乱荷電粒子に用いることができる。そのため、例えば、結像光学系内で荷電粒子のエネルギー分布を制御することができる。
【0045】
以下の図面の説明では、同じ参照数字は、同じ構成要素を指す。概ね、個々の実施形態に関する差異のみを説明する。
【0046】
次に図12および図13を参照して、ウィーンフィルタのいくつかの原理を説明する。図12aに、ウィーンフィルタ要素122と、このウィーンフィルタ要素が荷電粒子121に及ぼす影響とを示す。この双極子ウィーンフィルタは、静電界Eおよび磁界Bを含む。これらの電磁界は互いに直交している。矢印121で示す荷電粒子のエネルギーは公称値からずれている。公称エネルギーを有する荷電粒子だけが、ウィーンフィルタを真っ直ぐに通過することができる。そのため、非公称エネルギーの荷電粒子121は、光軸から偏向し、その結果、荷電粒子ビーム20になる。
【0047】
図12aに示すものに類似の図は多くの教科書で見ることができる。実際に適切には、ウィーンフィルタの励磁をさらに強くする。図12aおよび図12bに、そのための例を示す。励磁を強くし始めると、それによって、荷電粒子ビーム21で示すように偏向角が大きくなる。しかし、ウィーンフィルタ122の励磁をさらに強くすると、荷電粒子ビームは、制限偏向角に達する。励磁をさらに強くすると、偏向角は小さくなり(図12b参照)、荷電粒子は光軸に向かって偏向される。このように、励磁をさらに強くしても、偏向角はある種の制限よりも大きくならない。この偏向角は、エネルギー依存性荷電粒子選択に必要なものである。
【0048】
このことは、図13aを参照するとよりよく理解されよう。図13aには、光軸(z軸)に沿った長さがL1のウィーンフィルタ132を示す。入射荷電粒子131は、静電界および磁界のために結像される。ウィーンフィルタは、その分散特性に加えて、結像特性を有する。下の図に、偏向角とz位置の関係を示す。位置ziおよび位置ziiでは、角度はほぼ同じである。このように、全励磁を用いなくても、異なるエネルギーの荷電粒子間の分離を大きくすることができるはずである。
【0049】
励磁という用語は、図13aと図13bを比較するとよりよく理解されよう。図13bのウィーンフィルタの長さL2はより短い。しかし、ビーム経路32は、ビーム経路30に類似している。これは、ウィーンフィルタ134内の場の強さをより大きくすることによって実現される。このことを、場の記号をより大きくすることによって示す。この励磁は、ウィーンフィルタの長さと場の強さの積とみなし得る。
【0050】
このように、ウィーンフィルタの分散は本来、ウィーンフィルタの集束効果によって制限される。しかし、米国特許第6489621号を参照すると、励磁が小さい場合でも、米国特許第6489621号の図4および図5からわかるように、問題が生じ得る。米国特許第6489621号の場合と同様にウィーンフィルタ要素の集束効果を無視するのに十分に励磁を弱くすると、ウィーンフィルタの分散は、このフィルタの中心から発するように見える。すなわち、ウィーンフィルタの中心が、仮想分散点になる。そのため、追加の集束手段なしでは、荷電粒子が発する点源は、分散のためにサイズが大きくなったように見える。そのため、この系の分解能が減少する。
【0051】
上記を考慮すると、分散が本来制限されない分散要素であって、仮想分散点が分散要素の中心に位置しない分散要素を提供することが望ましい。x−z面およびy−z面の共通のz位置で追加のクロスオーバが生じなくなる。
【0052】
図1に、ウィーンフィルタ110のx−z面での図を示す。荷電粒子、例えば電子は、ウィーンフィルタ110にある角度で入射し、ビーム経路10をたどる。図2に、同じ系を示す。光軸に平行に、かつ光軸に対してあるオフセットでウィーンフィルタ110に入射する別の電子は、例えばビーム経路11をたどる。上記のビーム経路10および11はともに、ウィーンフィルタ110のx−z面での集束作用のために生じる。上記で説明したように、x−z面内でのこの集束作用により、励磁を増加させる場合の偏向角の上限が生じる。
【0053】
図3に、このウィーンフィルタの場と4極子要素310の場を重ねた系を示す。この4極子要素は、x−z面で非集束効果を示すように配置される。4極子要素310の励磁は、その非集束効果とウィーンフィルタ110の集束効果とが互いに相殺されるように選択する。こうすると、光学系110/310に入射する電子は、x−z面で集束作用を受けない。図3に示すように、粒子は、ビーム経路13aおよび13bで示すようにこの系を真っ直ぐに通過する。
【0054】
図4を参照して、ウィーンフィルタ−4極子要素の組合せ光学系のy−z面での効果を説明する。ウィーンフィルタ110aは点線で描いてある。この点線は、この双極子ウィーンフィルタがy−z面では電子に何の影響も及ぼさないことを示している。そのため、y−z面では、電子は4極子要素の影響しか受けない。x−z面で非集束効果を示す4極子要素310は、y−z面では集束作用を示す。図4では、ビーム経路の例13aおよび13bを見ることができる。
【0055】
上記で説明したように、ウィーンフィルタ110と4極子310の組合せは、組合せの結果、x−z面で集束効果がなくなるように配置し得る。そのため、例えば図13aに示すような結像様式が生じることなく、励磁をさらに強めることができる。そうではあるが、公称エネルギーからずれた電子については、ウィーンフィルタ要素110により分散が導入される。そのため、ウィーンフィルタの集束効果によってもたらされる制限を越えて励磁を強めることができる(図12a〜図13b参照)。
【0056】
次に、図5aおよび図5bを参照して、上記で説明した効果を利用する実施形態を説明する。図5aに、単段式電子エネルギー幅低減系をx−z面で示し、図5bに、同じ系をy−z面で示す。この系は、電子ビーム15を集束させる第1のレンズ510を備える。電子選択手段514は、電子ビームの一部を遮蔽する。こうすると、規定の形状の電子ビームが生成される。
【0057】
整形された電子ビームは、ウィーンフィルタ−4極子要素合成系500に入射する。結像上の理由から、系500は、この系の中心501が、本質的に電子ビーム15のクロスオーバのところに位置するように位置決めされる。ウィーンフィルタ−4極子要素の系500は、x方向には電子に結像効果をもたらさない。したがって、公称エネルギーEnを有する電子は、偏向されずにこの系を通過する。しかし、公称エネルギーEnからずれたエネルギーを有する電子は、ウィーンフィルタによって導入される分散の影響を受ける。これらの電子のエネルギーが公称エネルギーEnよりも小さいか、または大きいかに応じて、これらの電子は、ビーム15aまたは15bに従って偏向する。光学系500の下には、第2の電子選択手段516がある。この選択手段の開口は、公称エネルギーを有する電子またはエネルギーのずれが許容範囲である電子が、この電子選択手段によって遮蔽されず、それを通過することができるように形成される。公称エネルギーEnからずれたエネルギーを有する電子の一部(15aおよび15b参照)は、この電子選択手段によって遮蔽される。光学系500の後に配置された開口手段516は、Enからずれたエネルギーの電子を遮蔽することができるので、電子エネルギー依存性選択手段とみなし得る。電子エネルギー依存性選択手段516の開口を通過する電子は、レンズ512によって結像される。
【0058】
次に、y−z面内で光学系500を通過するビーム経路を説明する。第1のレンズ510、第1の電子選択要素514、ウィーンフィルタ−4極子要素合成系500、第2の電子選択要素516、および第2のレンズ512は、図5aに関して既に説明した。図5aと異なり、y−z面内の図(図5b参照)では、電子ビーム15は、4極子要素のy方向の集束作用のために結像される。ただし、実質的に集束効果がないようにy−z面で電子ビーム15を結像させる複数の規定励磁レベルが存在する。
【0059】
この電子ビームは、系500のx−y中央面501から発しているように見える。この電子ビームの仮想起点は、系500内に場が存在しない場合にレンズ510によって生成されるクロスオーバである。
【0060】
x−z面およびy−z面の共通のz位置でクロスオーバが生じないように、本発明は、改善された解決策を提供する。それによって、荷電粒子ビームのエネルギー幅を増加させるベルシュ(Boersch)効果を小さくすることができる。図6aおよび図6bに、一実施形態を示す。図6aには、電子幅低減系をx−z面で示す。電子は、円601で示す放出源から放出される。光軸(z軸)に沿って通過する電子により、発散電子ビームが形成される。この電子ビームはまず、第1の電子選択要素618を通過する。それによって、ビームが整形される。そのため、この第1の電子選択要素すなわち開口は、角度依存性選択要素である。その後で、この電子ビームは、ウィーンフィルタ要素110および4極子要素410を通過する。これらの中で、公称エネルギーからずれた電子は、ウィーンフィルタの分散のためにx−z面内で偏向する。ただし、このウィーンフィルタ要素の集束効果では、このウィーンフィルタ要素の励磁の制限および対応する分散の制限には至らない。これは、4極子要素410が、ウィーンフィルタ要素の集束効果を補償する、または少なくとも部分的に補償するからである。
【0061】
ウィーンフィルタ−4極子合成系を通過した後で、この電子ビームの一部は、電子選択要素616によって遮蔽される。電子選択要素616、すなわち開口手段は、偏向した電子を遮蔽して、これらの電子が電子選択手段616の開口を通過しないようにする。
【0062】
最後に、この電子ビームは、第2のウィーンフィルタ要素112および第2の4極子要素412を通過する。それによって、この場合も、公称エネルギーからのずれである分散に応じて電子が偏向される。そうではあるが、この場合も、このウィーンフィルタ要素の集束効果は、ウィーンフィルタ要素の励磁の制限および対応する分散の制限には至らない。というのは、4極子要素412が、ウィーンフィルタ要素の集束効果を補償する、または少なくとも部分的に補償するからである。
【0063】
ウィーンフィルタ要素110および410はともに、電子のエネルギーに応じて電子を偏向させる。いずれのウィーンフィルタ要素によっても分散が導入される。しかし、第1のウィーンフィルタ110内で光軸から離れるように偏向を受けるある種のエネルギーを有する荷電粒子は、第2のウィーンフィルタ112内で光軸に向かって偏向される。これら2つのウィーンフィルタによって導入される分散は、それぞれ反対の符号を有する。互いに反対方向に作用する2つのウィーンフィルタ要素のこの2種類の分散の態様は、特定の実施形態に無関係に本発明に適用し得る。
【0064】
次に、図6aに関して、x−z面で得られるビーム経路を説明する。図からわかるように、ビーム経路60、61、および62はすべて、ウィーンフィルタ要素110および4極子要素410を含む第1の系内で偏向を受ける。そのため、図6aに示すビーム経路はどれも、公称エネルギーからずれている。ビーム経路60は、このエネルギー幅低減系の光軸であるz軸に沿って出発する。第1のウィーンフィルタ要素の分散のために、電子は光軸から離れるように偏向される。第2のウィーンフィルタ要素112内で、電子ビーム60は光軸に向かって偏向される。そのため、第1のウィーンフィルタ要素の偏向および第2のウィーンフィルタ要素の偏向により、電子がビーム経路60’に沿って伝播してきたかのようなビーム経路方向になるように偏向量が調整される。そのため、ビーム経路60は、放出源601から発するように見える。
【0065】
ビーム60と比べると、ビーム61は、正のx方向ではなく、負のx方向に偏向される。そのため、ビーム60の電子のエネルギーが公称エネルギーよりも大きい場合、ビーム61の電子のエネルギーは、公称エネルギーよりも小さい。それとは無関係に、第2のウィーンフィルタ要素112は、ビーム61の電子が経路61’をたどるように見えるようにこれらの電子を偏向させる。
【0066】
別の可能なビーム経路を参照数字62で示す。第1のウィーンフィルタ要素110は、ビーム経路62の電子を、このビームが電子選択要素616によって遮蔽される大きさで偏向させる。このことを、破線(62)によって示す。電子がこの選択要素によって遮蔽されるかどうかは、一方では、第1のウィーンフィルタ要素110の分散依存性偏向によって決まり、他方では、選択要素618の開口のサイズによって決まる。このことを、図8bに関してより詳細に説明する。
【0067】
次に、図6bに関して、y−z面での可能なビーム経路のうち、ある経路を説明する。双極子ウィーンフィルタ110および112は、y−z面ではビームに影響を及ぼさない。このことを、図6bでは、それぞれのコンポーネントを点線にすることによって示す。しかし、4極子要素410および412は、荷電粒子をy−z面内で集束させる。これは、以下のように説明することができる。x−z面内では(図6a参照)、ウィーンフィルタ要素は、集束的かつ分散的に作用する。ウィーンフィルタ要素の集束効果は、x−z面内では、4極子要素の非集束性によって少なくとも部分的に補償される。その結果、x−z面内では、電子は分散の影響しか受けない。x−z面では非集束的である4極子要素は、y−z面では集束的である。図6bからわかるように、第1の4極子要素410および第2の4極子要素412は、電子源601から発するように見えるビーム経路60aまたは60bのいずれかが得られるように励磁される。したがって、x−z面の場合と同様に、あらゆるビーム経路について、放出源601の位置に仮想源がある。ビーム経路60aと60bの差は、追加の線状焦点が生成されることである。一般に、N個(Nは1以上)の追加の線状焦点が生じる。Nが大きいと、より強い励磁が存在する。4極子要素をより強く励磁しても、ウィーンフィルタ要素がより強く励磁され、その結果、分散が大きくなる。
【0068】
以下で説明するように、4極子要素およびウィーンフィルタ要素の励磁は、相関関係にあり、それによって複数の離散値を実現することができ、そのため、異なる分散レベルも利用し得る。
【0069】
例えば、図6bのビーム経路60aから開始して、第1の4極子要素410は、この電子ビームを光軸(z軸)に向かって集束させる。第2の4極子要素412の励磁を調整して、粒子ビームが実質的に放出源601から発するz軸に関する粒子ビームのオフセットおよび粒子ビームの傾きが得られるようにする。これを点線60a’で示す。y−z面での第1および第2の4極子要素の集束性は、x−z面では第1および第2の4極子要素の非集束性になる。しかし、x−z面では、第1のウィーンフィルタ要素110および第2のウィーンフィルタ要素112は、電子ビームに集束的に作用する。第1のウィーンフィルタ要素および第2のウィーンフィルタ要素を調整して、第2のウィーンフィルタ要素112を通過した後で、粒子が放出源601から発するかのように、荷電粒子ビームがz軸からオフセットし、z軸に関して傾くようにする。これを、点線60’、61’、および62’で示す。
【0070】
上記で説明したように、これらのコンポーネントを励磁すると、2つのウィーンフィルタ要素の分散が生じる。この電子の分散を利用して、エネルギーに応じて電子ビームの一部を遮蔽することができる。
【0071】
次に、図6bに示すビーム経路60bを参照して、第1の4極子要素410および第2の4極子要素412を、ビーム経路60aが得られる励磁よりも高いレベルに励磁する。それによって、これらの4極子要素内にクロスオーバが生じる。ただし、上記で説明したように、第2の4極子要素412の後で得られるビーム経路は、点線60b’で示すように、放出源601から発するように見える。
【0072】
4極子要素の励磁を強くすると、x−z面での4極子要素の非集束性も大きくなる。そのため、所望のビーム経路を得るための2つのウィーンフィルタ要素の励磁レベルも大きくなる。この所望のビーム経路は、第2のウィーンフィルタ112の後で放出源601から発するように見える荷電粒子ビームのビーム経路である。ウィーンフィルタ要素の励磁レベルをこのようにより強くすると、上記で説明した状況(ビーム経路60a)よりも分散が大きくなる。そのため、それぞれのコンポーネントの複数の離散励磁値が存在し、その結果、異なる分散レベルが得られる。そうではあるが、この励磁条件は、x−z面およびy−z面で、荷電粒子が放出源601から発するように見えるという点で共通である。
【0073】
すなわち、上記で説明した結像特性により、仮想分散源601が得られる。そのため、さらに、ウィーンフィルタ要素の分散が、本質的にウィーンフィルタ要素の集束効果によって制限されなくなる。というのは、4極子要素の非集束性が加えられるからである。
【0074】
次に、図7に関して本発明の別の実施形態を説明する。この図では、図6aに類似の状況を説明する。ただし、図6aで第1のウィーンフィルタ要素110と第2のウィーンフィルタ要素112の間で位置決めされた電子選択要素616に代わりに、第2のウィーンフィルタ要素112の後で電子選択要素716を使用する。この配置は、例えば、構造上の理由から、第1のウィーンフィルタ要素110と第2のウィーンフィルタ要素112の間に開口手段である電子選択要素を位置決めしないほうがよい場合に有利なことがある。ただし、構造上の制限を受けずに、これら2つのウィーンフィルタ要素間に電子選択要素を位置決めすることもできる。
【0075】
図6および図7を参照して、上記の実施形態では、電子源601に言及した。しかし、本願で説明する特定の実施形態に無関係に、この放出源とみなせる場所は、電子源、仮想電子源、クロスオーバ、あるいは、これら3つの可能性のいずれかの像、すなわち、電子源の像または仮想電子源の像のいずれかとし得る。
【0076】
以下、図8aおよび図8bに関して、電子ビームの分散に関するさらなる詳細を説明する。図8aには、公称エネルギーを有する電子ビーム80を示す。典型的には、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112、第1の4極子要素410、および第2の4極子要素412は、公称エネルギーを有する電子ビームがx−z面で偏向されないように励磁される。電子ビーム81および82のエネルギーは、公称エネルギーからずれている。そのため、これらのビームの一方のエネルギーは公称エネルギーよりも大きく、これらのビームのもう一方のエネルギーは公称エネルギーよりも小さい。電子ビーム81および82の放出源601から第1のウィーンフィルタ要素110までのビーム経路は、公称エネルギーを有する電子のビーム経路80と同じである。しかし、公称エネルギーからのずれのために、これらのビームの一方は正のx方向に偏向し、これらのビームのもう一方は負のx方向に偏向する。
【0077】
そのため、最初はビーム経路が同じである電子は、それらのエネルギーに応じて偏向する。第2のウィーンフィルタ要素112は、81および82のいずれの場合も、エネルギーに依存して電子が偏向され、そのため、第2のウィーンフィルタ要素112の後で得られる電子の経路が放出源601から発するように見えるように励磁される。
【0078】
図8bに、図8aに類似の状況を示す。この場合も、第1の電子選択要素618は電子をそのエネルギーに応じて選択する。そのため、特定の実施形態に無関係に、この第1の選択要素は、角度依存性選択要素とみなし得る。図8bでは、公称エネルギーのビーム経路80に加えて、公称エネルギーからのずれがより大きいエネルギーを有するビームの経路91、92、および93を示す。図からわかるように、ビーム91は、電子選択要素716によって電子が遮蔽される大きさまで公称エネルギーからずれている。ビーム91の反対側に偏向されるビーム経路92は、電子選択要素716によって遮蔽されない。この第2の選択要素によって遮蔽される電子ビームの別の例を93で示す。図からわかるように、電子選択要素716は、エネルギー依存性電子選択要素であるばかりでなく、エネルギーの選択は、光軸に関する電子ビームの角度にも依存する。そのため、第2の電子選択要素は、エネルギー依存性かつ角度依存性の選択要素である。
【0079】
角度依存性選択要素である第1の荷電粒子選択要素、またはエネルギーおよび角度に依存する選択要素である第2の荷電粒子選択要素、あるいはその両方を有するこれらの態様と、本願で示す任意の実施形態とを組み合わせることができる。
【0080】
図9aに、それぞれの方法の流れ図を示す。方法ステップ801は、荷電粒子の生成を指す。荷電粒子が放出され、公称エネルギーEnに加速される。ここで、電子ビームのエネルギー幅はΔEである。ステップ802で、光学コラムを通過する電子は、エネルギー幅低減系を通過し、第1の選択要素618によって整形される。方法ステップ803aによれば、これらの電子は、第1のウィーンフィルタ−4極子コンポーネント内で偏向される。偏向角は、電子のエネルギーα(E)の関数である。このエネルギー依存性の偏向は、例えば、正のx方向に行われる。さらに、方法ステップ803bによれば、これらの電子は、第2のウィーンフィルタ−4極子コンポーネント内で偏向される。偏向角は、電子のエネルギーβ(E)の関数である。このエネルギー依存性の偏向は、例えば、負のx方向に行われる。+−の符号および−+の符号で示すように、同じエネルギーEの粒子について、γ1に関係する荷電粒子にかかる偏向力と、γ2に関係する荷電粒子にかかる偏向力は、反対方向に作用する。
【0081】
ステップ804で、第2の(エネルギー依存性)選択手段によって電子が選択される。ここで説明する方法は、図6aに示すコンポーネントのアセンブリを参照している。図7に示すコンポーネントのアセンブリの場合には、ステップ803bの前にステップ804を実施する。
【0082】
図9aの点線の矢印で示すように、上記で説明した方法をさらに拡張することができる。第1の測定モードに対応する第1の偏向γ1(E)およびγ2(E)ならびに対応する荷電粒子選択の後で、偏向を改変することができる。この偏向の改変を利用して、荷電粒子ビーム電流またはエネルギー幅(それぞれの分解能)を制御することができる。このように、この装置を、第2の測定モード、または荷電粒子の偏向の改変によるさらに別の動作モードで動作させることができる。そのため、異なる分散を実現し、それによって異なるビーム電流を実現するために、荷電粒子選択要素を機械的に調整する必要がない。
【0083】
図9bで、この偏向を実現するために多極子を動作させる方法を説明する。方法ステップ803aおよび803bは、本質的に以下の2つのステップを含む。一方では、方法ステップ805によれば、ウィーンフィルタ要素を励磁する。他方では、方法ステップ806によれば、z軸に沿ってx方向およびy方向に仮想分散源が位置決めされるように4極子要素を励磁する。典型的には、この位置決めは、荷電粒子ビームの放出源とみなせる場所と仮想分散源が同じz位置で、または少なくとも互いに近接して得られるように行われる。さらに、2つの4極子要素を励磁することによって、放出源とみなせる場所をz軸に沿って位置決めすることができる。仮想分散源の位置決めもこれに従って行うことができる。
【0084】
上記の方法を用いて、集束特性を有するウィーンフィルタ要素と比べて、励磁をさらに強くし、それによって分散を大きくすることができる。さらに、x−z面内およびy−z面内の共通のz位置での追加のクロスオーバを避けることができる。さらに、分散の結果、放出源とみなせる場所が仮想的に大きくならないようにするか、または少なくともそれをかなり低減することができる。
【0085】
図10a〜図10eに、電子選択要素616、618、および716の実施形態の異なる例を示す。ここでは、第1の電子選択要素と第2の電子選択要素を同じものとして示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。好ましくは、電子角度依存性選択要素と電子エネルギー依存性選択要素では、少なくとも開口706、705、または704のサイズを異なるものとする。
【0086】
本発明を限定することなく、典型的な実施形態によれば、第1の電子選択要素および第2の電子選択要素は、円形開口を有する。
【0087】
本発明を限定することなく、第1の電子選択要素が円形開口を有し、第2の電子選択要素がスリット開口を有することがさらに可能である。あるいは、第1の電子選択要素は円形開口を有し、第2の電子選択要素は、図10dまたは図10eによる選択用エッジ、すなわちナイフエッジを備える。
【0088】
図10aに、円形開口706を有する円板要素703を示す。円板要素702に当たるビームの部分を遮蔽することによってビームが整形される。第2の電子選択要素に関して、x方向にエネルギーに依存して偏向される電子は、第2のエネルギー依存性選択要素の円板要素702によって部分的に遮蔽される。それによって、電子ビームのエネルギー幅を狭めることができる。
【0089】
図10bに、スリット開口704を有する円形円板要素702を示す。モノクロメータ内では、このスリットはy方向に延びることになる。そのため、公称エネルギーを有する電子は、光軸からのy方向変位と無関係に、このスリットの中心を通過することができる。公称エネルギーからずれた電子は、x方向に偏向され、そのため、円板要素702によって遮蔽されることになる。
【0090】
このスリット開口を使用して、例えば、スリットの汚染された領域を避けることができる。スリットのある領域が汚染されている場合、この電子選択要素をy方向にずらすことができる。それによって、スリット開口704の汚染されていない異なる領域を使用し得る。
【0091】
図10cに、円板要素702および短いスリット705を備えた電子選択要素514/516を示す。スリット705のy方向の長さはより短い。したがって、このスリットを通過する電子は、光軸からy方向にそれほどずれないはずである。
【0092】
図10dおよび図10eに関して別の実施形態を説明する。上記で説明した実施形態はすべて、少なくともxの正負の方向に電子を選択するものであった。しかし、公称ビーム経路からxの正または負の方向のいずれか一方にずれた電子のみを遮蔽する電子選択手段、すなわち選択用エッジを提供することも可能である。それによって、電子ビームを制限するエッジが1つだけ提供される。これらの要素はそれぞれ、中実部分708aまたは708bを有する。中実部分708aの右側を通過する電子はどれも遮蔽されず、中実部分708bの左側を通過する電子はどれも遮蔽されない。
【0093】
図10dおよび図10eのコンポーネントは様々な実施形態で使用し得る。これらのコンポーネントは別々に使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。次に、図10dまたは図10eのコンポーネントの一方を利用する第1の実施形態を説明する。いずれの側の電子エネルギースペクトルを遮蔽すべきかに応じて、図10dまたは図10eのいずれかの電子選択要素を使用し得る。電子選択用エッジは、電子エネルギースペクトルの低エネルギー部分または高エネルギー部分しか遮蔽し得ないが、以下で説明するように、これで十分なことがある。
【0094】
現況技術に関して説明したように、例えば、1次電子ビームのエネルギー幅を狭めることが望ましい。この場合、このエネルギー幅は、主に放出器特性の影響を受ける。そのため、所望のエネルギー選択は、放出器特性によって決まる。ショットキ型放出器または冷電界型放出器などの一部の放出器の放出スペクトルは非対称である。すなわち、放出される電子のエネルギースペクトルは、放出ピークの一方の側が急峻に変化し、このピークの他方の側では、スペクトルの形状はテール状に延びている。放出スペクトルの一方の側のテール状の形状により、エネルギー幅ΔEが左右される。そのため、このスペクトルのテール部を遮蔽すれば、エネルギー幅ΔEを十分に狭めることができる。上記を考慮すると、電子を選択するのにエッジのみを使用することで十分なことがある。
【0095】
次に、図10dおよび図10eの両方のコンポーネントを利用する第2の実施形態を説明する。これら2つの電子選択要素は、z方向に隣接するように位置決めされる。そのため、各要素を使用して、公称エネルギーからのずれに応じて電子を選択する。これら2つの要素を組み合わせることによって、スリット704と同等のスリットが形成される。しかし、維持するのがより簡単であり、汚染される傾向が小さいなどの理由から、2つの別々のコンポーネントを設けるほうを用いることになろう。
【0096】
次に、図10dおよび図10eの両方のコンポーネントを利用する第3の実施形態を説明する。上記で説明した第2の実施形態を、以下のように発展させることができる。2つの別々の電子選択用ナイフエッジを使用する場合、各要素を互いに独立に調整することができる。
【0097】
先に述べた電子エネルギー依存性選択要素の説明では、エネルギー幅ΔEの調整には触れなかった。図6a〜図8bに関して説明した系では、電子選択要素616、716の幅をx方向に調整することによって、電子エネルギー幅ΔEを調整する可能性が得られる。上記で説明した実施形態はすべて、開口幅変更手段を備えることができる。あるいは、それぞれ開口幅が固定の電子選択要素を、電子エネルギー幅を選択するために交換可能とし得る。
【0098】
あるいは、またはそれに加えて、(図示しない)別の実施形態によれば、電子選択要素を移動可能とし得る。
【0099】
図10dおよび図10eを参照して現在説明している実施形態では、電子選択要素のエッジをより容易に調整する可能性が得られる。さらに、互いに独立に選択要素を容易に調整する可能性が得られる。
【0100】
ただし、本発明により、各ウィーンフィルタ要素に異なる励磁を与える結果、系内で分散を調整することができ、さらに、x−z面での荷電粒子ビーム経路が変化しないので、エネルギー選択要素の調整は任意選択であり、多くの先行技術の系の場合のようにエネルギー幅の調整は不要である。
【0101】
以下、図11aおよび図11bに関して、上記で説明したエネルギー幅低減系を利用する荷電粒子ビーム装置の実施形態の例を説明する。図11aには、荷電粒子ビーム装置1を示す。この装置は、電子コラムおよび試料チャンバを備える。この電子コラムはハウジング3を有し、試料チャンバはハウジング4を有する。それぞれの区域は、(図示しない)真空ポンプによって排気することができる。
【0102】
この電子コラム内で、電子源6は、本質的に光軸5に沿って電子を放出する。これらの電子は、ビーム経路10に沿って系を通過し、対物レンズ9によって試料8上に集束する。例えば対物レンズの色収差を低減することによってこの系の分解能を向上させるために、放出された電子のエネルギー幅を狭める。したがって、開口手段618によってこの電子ビームを整形する。整形されたビームは、第1のウィーンフィルタ−4極子要素の系110/412に入射する。公称エネルギーを有する電子は、このウィーンフィルタ−4極子要素の系を本質的に真っ直ぐに通過する。公称エネルギーからずれたエネルギーを有する電子は、この第1の系の分散によって偏向される。そのため、ある種の制限よりも大きくずれた電子は、開口手段616、すなわち電子選択要素616によって遮蔽される。そうではあるが、公称エネルギーからのずれがある種の制限以内の一部の電子は、非公称エネルギーを有するにもかかわらず、電子選択要素616の開口を通過し得る。第1のウィーンフィルタ110および第1の4極子410によって導入された偏向を補正するために、第2の4極子要素412内の第2のウィーンフィルタ112によって、これらの電子が電子源6から発するように見えるようにこれらの電子を偏向させる。上記で説明したエネルギー選択を考慮すると、電子ビーム10のエネルギー幅が狭められる。そのため、この系の色収差が低減され、分解能が向上する。
【0103】
図11bに、荷電粒子ビーム装置1の別の例を示す。ここでは、陽極レンズ7により、その後でクロスオーバが生成される。この場合も対物レンズによって試料8上に集束されるビーム経路10は、このクロスオーバの後で、エネルギー幅低減系を通過する。このクロスオーバは、上記で定義した放出源とみなせる場所に類似の働きをする。第1のウィーンフィルタ110と第1の4極子要素410は合わせて概ね分散的に作用し、すなわち、4極子要素の非集束性によってウィーンフィルタ要素の集束効果が概ね補償される。そのため、ウィーンフィルタ要素の励磁を、通常の双極子ウィーンフィルタの集束効果による荷電粒子についての分散の本来の制限よりも大きい量まで強めることができる。その結果、分散をさらに大きくすることができ、その結果、エネルギー幅がさらに狭められる。
【0104】
第2のウィーンフィルタ要素112および第2の4極子要素412により、電子が、陽極レンズによって生成されたクロスオーバから発するように見えるように偏向される。最後に、公称エネルギーからある種の制限よりもずれた電子は、電子選択要素716によって遮蔽される。
【0105】
図11bでは、一方では、電子ビームの放出源とみなせる場所は図11aに関して変化させ、他方では、エネルギー依存性選択要素は、2つのウィーンフィルタ要素の間から第2のウィーンフィルタ要素の後に移動させた。ただし、本発明のこれら2つの独立な細部は、上記で説明した任意の実施形態と独立に組み合わせることができる。
【0106】
図11aおよび図11bに示す1次荷電粒子ビームについて、あるいは、試料などから放出される2次荷電粒子ビームについて、上記で説明したエネルギー幅低減系を使用して、双極子ウィーンフィルタの集束効果を補償し、このエネルギー幅低減系のx−z面およびy−z面の共通のz位置でのクロスオーバをなくし、すなわち、この光学系内で追加のクロスオーバをなくすことによって、荷電粒子ビームのエネルギー幅を有利に狭めることができる。そのため、一方では、双極子ウィーンフィルタの本来の分散制限を克服することができ、荷電粒子源、仮想荷電粒子源、クロスオーバ、またはこれら3つのいずれかの像など、放出源とみなせる場所に仮想分散源を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ウィーンフィルタおよびこのウィーンフィルタに入射する電子ビームのビーム経路の例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図2】ウィーンフィルタおよびこのウィーンフィルタに入射する電子ビームのビーム経路の別の例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図3】ウィーンフィルタ要素および4極子要素ならびにこの系に入射する電子ビームのビーム経路の2つの例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図4】図3のy−z面に対応する概略側面図である。
【図5a】改良型ウィーンフィルタを備えた実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図5b】改良型ウィーンフィルタを備えた実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図6a】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図6b】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図7】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図8a】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図8b】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図9a】本発明による方法の流れ図である。
【図9b】本発明による方法の流れ図である。
【図10a】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10b】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10c】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10d】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10e】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図11a】本発明による荷電粒子ビーム装置の実施形態の概略側面図である。
【図11b】本発明による荷電粒子ビーム装置の実施形態の概略側面図である。
【図12a】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図12b】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図13a】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図13b】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【発明の分野】
【0001】
本発明は、検査システム、試験システム、リソグラフィシステムなどに応用する荷電粒子ビーム装置に関する。本発明は、荷電粒子ビーム装置を動作させる方法にも関する。本発明はさらに、荷電粒子選択系に関する。詳細には、本発明は、荷電粒子ビーム装置および荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を使用する方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
荷電粒子ビーム機器は、いくつかの産業分野で用いられる多くの機能を有する。これらの産業分野には、製造中の半導体デバイスの検査、リソグラフィ用の露光システム、検出装置、および試験システムが含まれるが、これらに限定されるものではない。そのため、マイクロメートルおよびナノメートルの尺度で試料を構築し検査することが強く求められている。
【0003】
マイクロメートルおよびナノメートルの尺度のプロセス制御、検査、または構築はしばしば、電子ビームなどの荷電粒子ビームによって行われる。これらの荷電粒子ビームは、電子顕微鏡または電子ビームパターン生成器などの荷電粒子ビーム装置内で生成され集束される。荷電粒子ビームでは、それらの波長が短いために、例えば光子ビームよりも優れた空間分解能が得られる。
【0004】
しかし、最新の低電圧電子顕微鏡では、収差により、実現可能な分解能が、1keVの電子エネルギーでは約3nmに制限される。したがって、特に低エネルギーの応用例では、色収差を低減することが望ましい。対物レンズのガウス像面内での色収差の収差ディスクの直径は、荷電粒子ビームの相対エネルギー幅ΔE/Eに比例する。
【0005】
電子ビームコラム内の電子は、放出プロセスおよびベルシュ(Boersch)効果、すなわち、確率的なクーロン相互作用によるエネルギー分布の広がりのために単色ではなく、そのため、相対エネルギー幅が広がる。上記を考慮すると、エネルギー幅ΔEは、ビーム電流に応じて約0.5〜1eV、さらにはそれよりも大きくなる。
【0006】
例えば対物レンズの集束特性に基づいて色収差を最小限に抑える度合いをさらに高めることは難しい。この理由から、分解能をさらに向上させるために、モノクロメータを使用することが既に知られている。それによって、後で下流の電子−光学結像系によって処理される電子ビームのエネルギー幅ΔEを狭めることができる。
【0007】
荷電粒子用のモノクロメータとして、静電気双極子場と磁気双極子場を互いに直交させて重ね合わせるウィーンフィルタが知られている。
【0008】
例として、(Frosien他の)米国特許公開第6489621号は、粒子のエネルギーに応じて粒子ビームを分散させる第1および第2のウィーンフィルタによって粒子ビームのエネルギー幅を狭める装置と、エネルギー幅がある範囲に狭められた粒子を選択する開口とを示している。それによって、低分散値について、不利なクロスオーバを避けることができる。
【0009】
しかし、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の分散を大きくするのに適した系が求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、改良型荷電粒子系を提供する。それによって、系の分解能を改善することを意図している。本発明の態様によれば、独立請求項1に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系、独立請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置、および独立請求項22に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法が提供される。
【0011】
本発明のさらなる利点、特徴、態様、および細部は、従属請求項、説明、および添付の図面から明らかになる。
【0012】
一態様によれば、光軸に沿ったz軸ならびに第1および第2の面を伴う荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。この系は、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と、集束的かつ分散的に作用する第2の要素と、第1の4極子要素であって、動作時に、この第1の4極子要素の場と集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場が部分的に重なる(完全に重なる)ように位置決めされた第1の4極子要素と、第2の4極子要素であって、動作時に、この第2の4極子要素の場と集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場が部分的に重なるように位置決めされた第2の4極子要素と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前で位置決めされた第1の荷電粒子選択要素と、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の後で位置決めされた第2の荷電粒子選択要素とを備える。
【0013】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素が第1のウィーンフィルタ要素であり、集束的かつ分散的に作用する第2の要素が第2のウィーンフィルタ要素である荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。
【0014】
本願では、ウィーンフィルタ要素の代わりに、1つの面内で集束的かつ分散的に作用する他の要素も使用し得る。そのため、例として、湾曲した光軸を伴う要素を使用することができる。
【0015】
本願では、ここで開示するエネルギー幅低減要素をモノクロメータとしても示す。本願におけるモノクロメータという用語は、荷電粒子の単一のエネルギーを選択するものと理解すべきではなく、荷電粒子ビームをフィルタリングして、所望のエネルギー幅を得るものと理解すべきである。
【0016】
先に述べた態様により、改良型エネルギー幅低減系および改良型荷電粒子ビーム装置が提供される可能性が得られる。一方では、この系の分散を、現況技術の装置の制限よりも大きくすることができる。他方では、z軸に沿って仮想分散源を有利に位置決めすることができる。そのため、本質的に放出源とみなせる場所の位置に仮想分散源を位置決めすることができる。そのため、放出源とみなせる場所と仮想分散源は一致する。さらに、2つの4極子によって、放出源とみなせる場所をz軸に沿って位置決めすることができる。好ましくは、仮想分散源の位置決めをこれに従って行い、それによって、放出源とみなせる場所と仮想分散源を互いに一致させることができる。
【0017】
上記の態様によれば、異なるエネルギーを有する荷電粒子は、導入される分散のために分離する。しかし、より細部に立ち入ると、荷電粒子の速度に基づいて選択が行われることがわかる。この速度は、式(1)で与えられる。
(1) v=sqrt(2E/m)
【0018】
ただし、vは(絶対)速度であり、sqrtは平方根を示し、Eは荷電粒子のエネルギーであり、mは荷電粒子の質量である。あるいは、式(1)は、次のように記述し得る。
(2) v=sqrt(2qU/m)
【0019】
ただし、qは粒子の電荷であり、Uは加速電位である。ここで述べた態様は、例えば電子などの一定質量の粒子についてのエネルギー依存性選択に関係するものである。
【0020】
そうではあるが、本発明の一態様による機器は、荷電粒子の質量分析に使用することもできる。速度vが変化すると、異なる質量の異なる元素または1つの元素の異なる同位体が分離する。この変化は、例えば1keVのエネルギーでの、例えば1eVのエネルギー変化(これは、1e−3の相対エネルギー幅に相当する)を無視するのに十分に大きいものとする。
【0021】
上記を考慮すると、ここで説明するエネルギー幅の低減は一般に、速度分布幅の低減に適用し得る。式1によれば、速度分布幅の低減は、エネルギー幅の低減または質量分布幅の低減のいずれかである。質量分布は一般に離散値を有するので、質量分布幅の低減を質量の選択とみなすこともできる。
【0022】
質量の選択に関して、本発明の別の利点を説明することができる。例えばウィーンフィルタを利用する現況技術の質量分析計には、ウィーンフィルタの集束効果に基づいて、質量選択の後でビームが楕円形状になるという問題がある。本発明では、このビームフィルタの集束効果は補償されるか、またはほぼ補償される。そのため、質量選択の後に楕円ビームになるという欠点を回避し得る。
【0023】
上記で説明したように、速度分布幅の低減は、エネルギー幅の低減または質量の選択のいずれかとし得る。その結果、本発明の態様に関して、速度分布幅低減系は、エネルギー幅低減系または質量選択系のいずれかとし得る。さらに、速度依存性選択要素は、エネルギー依存性選択要素または質量依存性選択要素のいずれかとし得る。
【0024】
ある態様によれば、各荷電粒子が同じ質量を有する系を提供し得る。この荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用される。別の態様によれば、各荷電粒子が異なる質量を有する系を提供し得る。この荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビーム質量選択系として使用される。
【0025】
以下では、説明をより簡単にするために、エネルギー幅の低減を参照する。ただし、ここで説明する態様、細部、および実施形態は、荷電粒子の質量の選択に利用することもできる。そのため、ここで説明する態様、細部、および実施形態は一般に、速度分布幅の低減に利用することができる。
【0026】
別の態様によれば、荷電粒子が長さ10mm〜300mmの非集束領域を通過するように、集束的かつ分散的に作用する第1の要素および第1の4極子要素が、放出源とみなせる場所に関してある位置にある荷電粒子ビームエネルギー幅低減系が提供される。
【0027】
そのため、典型的には、本発明の系を荷電粒子源の近くに設けることが可能である。
【0028】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と集束的かつ分散的に作用する第2の要素の間に第2の荷電粒子選択要素を位置決めするか、あるいは、ビーム方向に、集束的かつ分散的に作用する第2の要素の後で第2の荷電粒子選択要素を位置決めすることが可能である。
【0029】
そのため、第2の荷電粒子選択要素の位置は、関与する光学系の要件に応じて選択することができる。
【0030】
別の態様によれば、放出源とみなせる場所が荷電粒子源または仮想粒子源であるか、または、放出源とみなせる場所がクロスオーバであるか、あるいは、放出源とみなせる場所が荷電粒子源または仮想源の像である荷電粒子ビームエネルギー幅減少系が提供される。
【0031】
そのため、荷電粒子ビーム装置内の異なる位置で、エネルギー幅低減系を使用することができる。そうではあるが、仮想分散源をこのように有利に位置決めすることを、これらすべての可能性に適用し得る。
【0032】
別の態様によれば、先に述べた荷電粒子ビームエネルギー幅低減系は、荷電粒子ビーム装置に適用することができる。そのため、先に述べた特徴は、荷電粒子ビーム装置にも利用し得る。
【0033】
別の態様によれば、このエネルギー幅低減系は、電子源の直後に位置決めされるか、あるいは、例えば、抽出手段が荷電粒子銃コンポーネントの一部である場合には、荷電粒子銃コンポーネントの直後またはその中にさえ位置決めされる。
【0034】
別の態様によれば、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法が提供される。この系は、光軸に沿ったz軸と、集束的かつ分散的に作用する第1の要素と、集束的かつ分散的に作用する第2の要素と、第1の4極子要素および第2の4極子要素とを有する。この方法は、第1の荷電粒子選択要素によって荷電粒子ビームを整形するステップと、集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場、第1の4極子要素の場、集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場、および第2の4極子要素の場を合成することによって、第1の面内で、荷電粒子が放出源とみなせる場所から発するように見えるように、集束的かつ分散的に作用する第1の要素および集束的かつ分散的に作用する第2の要素を励磁するステップと、第1の4極子要素の場および第2の4極子要素の場により、放出源とみなせる場所から実質的に発するように荷電粒子ビームが第2の面内で結像するように、第1および第2の4極子要素を励磁するステップと、第2の荷電粒子選択要素によってエネルギーに依存して荷電粒子を選択するステップとを含む。
【0035】
そのため、この系内で導入される分散のために放出源とみなせる場所が拡大しないようにすることができ、他方では、先行技術の系の分散の制限を克服することができる。
【0036】
別の態様によれば、集束的かつ分散的に作用する第1の要素が第1のウィーンフィルタ要素であり、集束的かつ分散的に作用する第2の要素が第2のウィーンフィルタ要素である荷電粒子ビームエネルギー幅低減系を動作させる方法が提供される。
【0037】
別の態様によれば、第1および第2の4極子要素ならびに集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素を、複数の離散値の1つに対して励磁する方法が提供される。
【0038】
さらに、上記で説明した機器の任意の細部を動作させ、実施し、また製作するのに必要とされる方法ステップを、先に述べた方法に用いることができる。
【0039】
方法および機器を説明する上記の態様に関して、z軸は一般に、湾曲していることがある光軸に沿って延びる。
【0040】
本発明は、ここで説明する各方法ステップを実施する機器部分を含めて、ここで開示する方法を実施する機器も対象とする。これらの方法ステップは、ハードウエアコンポーネント、適切なソフトウエアによってプログラムされたコンピュータ、これら2つの任意の組合せ、または他の任意のやり方によって実施し得る。
【0041】
以下の説明では、本発明の上記で示した態様および他のより詳細な態様の一部を説明し、図を参照して部分的に例示する。
【図面の詳細な説明】
【0042】
本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビーム装置またはその構成要素を、例えば、電子ビーム装置またはその構成要素と称する。この場合、電子ビームは、特に検査またはリソグラフィに利用することができる。本発明は、依然として、荷電粒子および/または他の2次および/または後方散乱による荷電粒子の他の放出源を使用して試料の像を取得する機器および構成要素に適用し得る。
【0043】
例えばx−z面またはy−z面に関係する本明細書でのすべての考察では、これらの面は本質的に互いに直交すると理解されることも当業者には理解されよう。本願での理論的な考察では数学的な意味での座標について言及するが、それぞれの構成要素は、x−z面とy−z面が、約80°〜100°、好ましくは87°〜93°、より好ましくは約89°〜91°の角度をなすように実際に相互に位置決めすることができる。
【0044】
さらに、本願の保護範囲を限定することなく、以下では、荷電粒子ビームを1次荷電粒子ビームと称する。本発明は、依然として2次荷電粒子および/または後方散乱荷電粒子に用いることができる。そのため、例えば、結像光学系内で荷電粒子のエネルギー分布を制御することができる。
【0045】
以下の図面の説明では、同じ参照数字は、同じ構成要素を指す。概ね、個々の実施形態に関する差異のみを説明する。
【0046】
次に図12および図13を参照して、ウィーンフィルタのいくつかの原理を説明する。図12aに、ウィーンフィルタ要素122と、このウィーンフィルタ要素が荷電粒子121に及ぼす影響とを示す。この双極子ウィーンフィルタは、静電界Eおよび磁界Bを含む。これらの電磁界は互いに直交している。矢印121で示す荷電粒子のエネルギーは公称値からずれている。公称エネルギーを有する荷電粒子だけが、ウィーンフィルタを真っ直ぐに通過することができる。そのため、非公称エネルギーの荷電粒子121は、光軸から偏向し、その結果、荷電粒子ビーム20になる。
【0047】
図12aに示すものに類似の図は多くの教科書で見ることができる。実際に適切には、ウィーンフィルタの励磁をさらに強くする。図12aおよび図12bに、そのための例を示す。励磁を強くし始めると、それによって、荷電粒子ビーム21で示すように偏向角が大きくなる。しかし、ウィーンフィルタ122の励磁をさらに強くすると、荷電粒子ビームは、制限偏向角に達する。励磁をさらに強くすると、偏向角は小さくなり(図12b参照)、荷電粒子は光軸に向かって偏向される。このように、励磁をさらに強くしても、偏向角はある種の制限よりも大きくならない。この偏向角は、エネルギー依存性荷電粒子選択に必要なものである。
【0048】
このことは、図13aを参照するとよりよく理解されよう。図13aには、光軸(z軸)に沿った長さがL1のウィーンフィルタ132を示す。入射荷電粒子131は、静電界および磁界のために結像される。ウィーンフィルタは、その分散特性に加えて、結像特性を有する。下の図に、偏向角とz位置の関係を示す。位置ziおよび位置ziiでは、角度はほぼ同じである。このように、全励磁を用いなくても、異なるエネルギーの荷電粒子間の分離を大きくすることができるはずである。
【0049】
励磁という用語は、図13aと図13bを比較するとよりよく理解されよう。図13bのウィーンフィルタの長さL2はより短い。しかし、ビーム経路32は、ビーム経路30に類似している。これは、ウィーンフィルタ134内の場の強さをより大きくすることによって実現される。このことを、場の記号をより大きくすることによって示す。この励磁は、ウィーンフィルタの長さと場の強さの積とみなし得る。
【0050】
このように、ウィーンフィルタの分散は本来、ウィーンフィルタの集束効果によって制限される。しかし、米国特許第6489621号を参照すると、励磁が小さい場合でも、米国特許第6489621号の図4および図5からわかるように、問題が生じ得る。米国特許第6489621号の場合と同様にウィーンフィルタ要素の集束効果を無視するのに十分に励磁を弱くすると、ウィーンフィルタの分散は、このフィルタの中心から発するように見える。すなわち、ウィーンフィルタの中心が、仮想分散点になる。そのため、追加の集束手段なしでは、荷電粒子が発する点源は、分散のためにサイズが大きくなったように見える。そのため、この系の分解能が減少する。
【0051】
上記を考慮すると、分散が本来制限されない分散要素であって、仮想分散点が分散要素の中心に位置しない分散要素を提供することが望ましい。x−z面およびy−z面の共通のz位置で追加のクロスオーバが生じなくなる。
【0052】
図1に、ウィーンフィルタ110のx−z面での図を示す。荷電粒子、例えば電子は、ウィーンフィルタ110にある角度で入射し、ビーム経路10をたどる。図2に、同じ系を示す。光軸に平行に、かつ光軸に対してあるオフセットでウィーンフィルタ110に入射する別の電子は、例えばビーム経路11をたどる。上記のビーム経路10および11はともに、ウィーンフィルタ110のx−z面での集束作用のために生じる。上記で説明したように、x−z面内でのこの集束作用により、励磁を増加させる場合の偏向角の上限が生じる。
【0053】
図3に、このウィーンフィルタの場と4極子要素310の場を重ねた系を示す。この4極子要素は、x−z面で非集束効果を示すように配置される。4極子要素310の励磁は、その非集束効果とウィーンフィルタ110の集束効果とが互いに相殺されるように選択する。こうすると、光学系110/310に入射する電子は、x−z面で集束作用を受けない。図3に示すように、粒子は、ビーム経路13aおよび13bで示すようにこの系を真っ直ぐに通過する。
【0054】
図4を参照して、ウィーンフィルタ−4極子要素の組合せ光学系のy−z面での効果を説明する。ウィーンフィルタ110aは点線で描いてある。この点線は、この双極子ウィーンフィルタがy−z面では電子に何の影響も及ぼさないことを示している。そのため、y−z面では、電子は4極子要素の影響しか受けない。x−z面で非集束効果を示す4極子要素310は、y−z面では集束作用を示す。図4では、ビーム経路の例13aおよび13bを見ることができる。
【0055】
上記で説明したように、ウィーンフィルタ110と4極子310の組合せは、組合せの結果、x−z面で集束効果がなくなるように配置し得る。そのため、例えば図13aに示すような結像様式が生じることなく、励磁をさらに強めることができる。そうではあるが、公称エネルギーからずれた電子については、ウィーンフィルタ要素110により分散が導入される。そのため、ウィーンフィルタの集束効果によってもたらされる制限を越えて励磁を強めることができる(図12a〜図13b参照)。
【0056】
次に、図5aおよび図5bを参照して、上記で説明した効果を利用する実施形態を説明する。図5aに、単段式電子エネルギー幅低減系をx−z面で示し、図5bに、同じ系をy−z面で示す。この系は、電子ビーム15を集束させる第1のレンズ510を備える。電子選択手段514は、電子ビームの一部を遮蔽する。こうすると、規定の形状の電子ビームが生成される。
【0057】
整形された電子ビームは、ウィーンフィルタ−4極子要素合成系500に入射する。結像上の理由から、系500は、この系の中心501が、本質的に電子ビーム15のクロスオーバのところに位置するように位置決めされる。ウィーンフィルタ−4極子要素の系500は、x方向には電子に結像効果をもたらさない。したがって、公称エネルギーEnを有する電子は、偏向されずにこの系を通過する。しかし、公称エネルギーEnからずれたエネルギーを有する電子は、ウィーンフィルタによって導入される分散の影響を受ける。これらの電子のエネルギーが公称エネルギーEnよりも小さいか、または大きいかに応じて、これらの電子は、ビーム15aまたは15bに従って偏向する。光学系500の下には、第2の電子選択手段516がある。この選択手段の開口は、公称エネルギーを有する電子またはエネルギーのずれが許容範囲である電子が、この電子選択手段によって遮蔽されず、それを通過することができるように形成される。公称エネルギーEnからずれたエネルギーを有する電子の一部(15aおよび15b参照)は、この電子選択手段によって遮蔽される。光学系500の後に配置された開口手段516は、Enからずれたエネルギーの電子を遮蔽することができるので、電子エネルギー依存性選択手段とみなし得る。電子エネルギー依存性選択手段516の開口を通過する電子は、レンズ512によって結像される。
【0058】
次に、y−z面内で光学系500を通過するビーム経路を説明する。第1のレンズ510、第1の電子選択要素514、ウィーンフィルタ−4極子要素合成系500、第2の電子選択要素516、および第2のレンズ512は、図5aに関して既に説明した。図5aと異なり、y−z面内の図(図5b参照)では、電子ビーム15は、4極子要素のy方向の集束作用のために結像される。ただし、実質的に集束効果がないようにy−z面で電子ビーム15を結像させる複数の規定励磁レベルが存在する。
【0059】
この電子ビームは、系500のx−y中央面501から発しているように見える。この電子ビームの仮想起点は、系500内に場が存在しない場合にレンズ510によって生成されるクロスオーバである。
【0060】
x−z面およびy−z面の共通のz位置でクロスオーバが生じないように、本発明は、改善された解決策を提供する。それによって、荷電粒子ビームのエネルギー幅を増加させるベルシュ(Boersch)効果を小さくすることができる。図6aおよび図6bに、一実施形態を示す。図6aには、電子幅低減系をx−z面で示す。電子は、円601で示す放出源から放出される。光軸(z軸)に沿って通過する電子により、発散電子ビームが形成される。この電子ビームはまず、第1の電子選択要素618を通過する。それによって、ビームが整形される。そのため、この第1の電子選択要素すなわち開口は、角度依存性選択要素である。その後で、この電子ビームは、ウィーンフィルタ要素110および4極子要素410を通過する。これらの中で、公称エネルギーからずれた電子は、ウィーンフィルタの分散のためにx−z面内で偏向する。ただし、このウィーンフィルタ要素の集束効果では、このウィーンフィルタ要素の励磁の制限および対応する分散の制限には至らない。これは、4極子要素410が、ウィーンフィルタ要素の集束効果を補償する、または少なくとも部分的に補償するからである。
【0061】
ウィーンフィルタ−4極子合成系を通過した後で、この電子ビームの一部は、電子選択要素616によって遮蔽される。電子選択要素616、すなわち開口手段は、偏向した電子を遮蔽して、これらの電子が電子選択手段616の開口を通過しないようにする。
【0062】
最後に、この電子ビームは、第2のウィーンフィルタ要素112および第2の4極子要素412を通過する。それによって、この場合も、公称エネルギーからのずれである分散に応じて電子が偏向される。そうではあるが、この場合も、このウィーンフィルタ要素の集束効果は、ウィーンフィルタ要素の励磁の制限および対応する分散の制限には至らない。というのは、4極子要素412が、ウィーンフィルタ要素の集束効果を補償する、または少なくとも部分的に補償するからである。
【0063】
ウィーンフィルタ要素110および410はともに、電子のエネルギーに応じて電子を偏向させる。いずれのウィーンフィルタ要素によっても分散が導入される。しかし、第1のウィーンフィルタ110内で光軸から離れるように偏向を受けるある種のエネルギーを有する荷電粒子は、第2のウィーンフィルタ112内で光軸に向かって偏向される。これら2つのウィーンフィルタによって導入される分散は、それぞれ反対の符号を有する。互いに反対方向に作用する2つのウィーンフィルタ要素のこの2種類の分散の態様は、特定の実施形態に無関係に本発明に適用し得る。
【0064】
次に、図6aに関して、x−z面で得られるビーム経路を説明する。図からわかるように、ビーム経路60、61、および62はすべて、ウィーンフィルタ要素110および4極子要素410を含む第1の系内で偏向を受ける。そのため、図6aに示すビーム経路はどれも、公称エネルギーからずれている。ビーム経路60は、このエネルギー幅低減系の光軸であるz軸に沿って出発する。第1のウィーンフィルタ要素の分散のために、電子は光軸から離れるように偏向される。第2のウィーンフィルタ要素112内で、電子ビーム60は光軸に向かって偏向される。そのため、第1のウィーンフィルタ要素の偏向および第2のウィーンフィルタ要素の偏向により、電子がビーム経路60’に沿って伝播してきたかのようなビーム経路方向になるように偏向量が調整される。そのため、ビーム経路60は、放出源601から発するように見える。
【0065】
ビーム60と比べると、ビーム61は、正のx方向ではなく、負のx方向に偏向される。そのため、ビーム60の電子のエネルギーが公称エネルギーよりも大きい場合、ビーム61の電子のエネルギーは、公称エネルギーよりも小さい。それとは無関係に、第2のウィーンフィルタ要素112は、ビーム61の電子が経路61’をたどるように見えるようにこれらの電子を偏向させる。
【0066】
別の可能なビーム経路を参照数字62で示す。第1のウィーンフィルタ要素110は、ビーム経路62の電子を、このビームが電子選択要素616によって遮蔽される大きさで偏向させる。このことを、破線(62)によって示す。電子がこの選択要素によって遮蔽されるかどうかは、一方では、第1のウィーンフィルタ要素110の分散依存性偏向によって決まり、他方では、選択要素618の開口のサイズによって決まる。このことを、図8bに関してより詳細に説明する。
【0067】
次に、図6bに関して、y−z面での可能なビーム経路のうち、ある経路を説明する。双極子ウィーンフィルタ110および112は、y−z面ではビームに影響を及ぼさない。このことを、図6bでは、それぞれのコンポーネントを点線にすることによって示す。しかし、4極子要素410および412は、荷電粒子をy−z面内で集束させる。これは、以下のように説明することができる。x−z面内では(図6a参照)、ウィーンフィルタ要素は、集束的かつ分散的に作用する。ウィーンフィルタ要素の集束効果は、x−z面内では、4極子要素の非集束性によって少なくとも部分的に補償される。その結果、x−z面内では、電子は分散の影響しか受けない。x−z面では非集束的である4極子要素は、y−z面では集束的である。図6bからわかるように、第1の4極子要素410および第2の4極子要素412は、電子源601から発するように見えるビーム経路60aまたは60bのいずれかが得られるように励磁される。したがって、x−z面の場合と同様に、あらゆるビーム経路について、放出源601の位置に仮想源がある。ビーム経路60aと60bの差は、追加の線状焦点が生成されることである。一般に、N個(Nは1以上)の追加の線状焦点が生じる。Nが大きいと、より強い励磁が存在する。4極子要素をより強く励磁しても、ウィーンフィルタ要素がより強く励磁され、その結果、分散が大きくなる。
【0068】
以下で説明するように、4極子要素およびウィーンフィルタ要素の励磁は、相関関係にあり、それによって複数の離散値を実現することができ、そのため、異なる分散レベルも利用し得る。
【0069】
例えば、図6bのビーム経路60aから開始して、第1の4極子要素410は、この電子ビームを光軸(z軸)に向かって集束させる。第2の4極子要素412の励磁を調整して、粒子ビームが実質的に放出源601から発するz軸に関する粒子ビームのオフセットおよび粒子ビームの傾きが得られるようにする。これを点線60a’で示す。y−z面での第1および第2の4極子要素の集束性は、x−z面では第1および第2の4極子要素の非集束性になる。しかし、x−z面では、第1のウィーンフィルタ要素110および第2のウィーンフィルタ要素112は、電子ビームに集束的に作用する。第1のウィーンフィルタ要素および第2のウィーンフィルタ要素を調整して、第2のウィーンフィルタ要素112を通過した後で、粒子が放出源601から発するかのように、荷電粒子ビームがz軸からオフセットし、z軸に関して傾くようにする。これを、点線60’、61’、および62’で示す。
【0070】
上記で説明したように、これらのコンポーネントを励磁すると、2つのウィーンフィルタ要素の分散が生じる。この電子の分散を利用して、エネルギーに応じて電子ビームの一部を遮蔽することができる。
【0071】
次に、図6bに示すビーム経路60bを参照して、第1の4極子要素410および第2の4極子要素412を、ビーム経路60aが得られる励磁よりも高いレベルに励磁する。それによって、これらの4極子要素内にクロスオーバが生じる。ただし、上記で説明したように、第2の4極子要素412の後で得られるビーム経路は、点線60b’で示すように、放出源601から発するように見える。
【0072】
4極子要素の励磁を強くすると、x−z面での4極子要素の非集束性も大きくなる。そのため、所望のビーム経路を得るための2つのウィーンフィルタ要素の励磁レベルも大きくなる。この所望のビーム経路は、第2のウィーンフィルタ112の後で放出源601から発するように見える荷電粒子ビームのビーム経路である。ウィーンフィルタ要素の励磁レベルをこのようにより強くすると、上記で説明した状況(ビーム経路60a)よりも分散が大きくなる。そのため、それぞれのコンポーネントの複数の離散励磁値が存在し、その結果、異なる分散レベルが得られる。そうではあるが、この励磁条件は、x−z面およびy−z面で、荷電粒子が放出源601から発するように見えるという点で共通である。
【0073】
すなわち、上記で説明した結像特性により、仮想分散源601が得られる。そのため、さらに、ウィーンフィルタ要素の分散が、本質的にウィーンフィルタ要素の集束効果によって制限されなくなる。というのは、4極子要素の非集束性が加えられるからである。
【0074】
次に、図7に関して本発明の別の実施形態を説明する。この図では、図6aに類似の状況を説明する。ただし、図6aで第1のウィーンフィルタ要素110と第2のウィーンフィルタ要素112の間で位置決めされた電子選択要素616に代わりに、第2のウィーンフィルタ要素112の後で電子選択要素716を使用する。この配置は、例えば、構造上の理由から、第1のウィーンフィルタ要素110と第2のウィーンフィルタ要素112の間に開口手段である電子選択要素を位置決めしないほうがよい場合に有利なことがある。ただし、構造上の制限を受けずに、これら2つのウィーンフィルタ要素間に電子選択要素を位置決めすることもできる。
【0075】
図6および図7を参照して、上記の実施形態では、電子源601に言及した。しかし、本願で説明する特定の実施形態に無関係に、この放出源とみなせる場所は、電子源、仮想電子源、クロスオーバ、あるいは、これら3つの可能性のいずれかの像、すなわち、電子源の像または仮想電子源の像のいずれかとし得る。
【0076】
以下、図8aおよび図8bに関して、電子ビームの分散に関するさらなる詳細を説明する。図8aには、公称エネルギーを有する電子ビーム80を示す。典型的には、第1のウィーンフィルタ要素110、第2のウィーンフィルタ要素112、第1の4極子要素410、および第2の4極子要素412は、公称エネルギーを有する電子ビームがx−z面で偏向されないように励磁される。電子ビーム81および82のエネルギーは、公称エネルギーからずれている。そのため、これらのビームの一方のエネルギーは公称エネルギーよりも大きく、これらのビームのもう一方のエネルギーは公称エネルギーよりも小さい。電子ビーム81および82の放出源601から第1のウィーンフィルタ要素110までのビーム経路は、公称エネルギーを有する電子のビーム経路80と同じである。しかし、公称エネルギーからのずれのために、これらのビームの一方は正のx方向に偏向し、これらのビームのもう一方は負のx方向に偏向する。
【0077】
そのため、最初はビーム経路が同じである電子は、それらのエネルギーに応じて偏向する。第2のウィーンフィルタ要素112は、81および82のいずれの場合も、エネルギーに依存して電子が偏向され、そのため、第2のウィーンフィルタ要素112の後で得られる電子の経路が放出源601から発するように見えるように励磁される。
【0078】
図8bに、図8aに類似の状況を示す。この場合も、第1の電子選択要素618は電子をそのエネルギーに応じて選択する。そのため、特定の実施形態に無関係に、この第1の選択要素は、角度依存性選択要素とみなし得る。図8bでは、公称エネルギーのビーム経路80に加えて、公称エネルギーからのずれがより大きいエネルギーを有するビームの経路91、92、および93を示す。図からわかるように、ビーム91は、電子選択要素716によって電子が遮蔽される大きさまで公称エネルギーからずれている。ビーム91の反対側に偏向されるビーム経路92は、電子選択要素716によって遮蔽されない。この第2の選択要素によって遮蔽される電子ビームの別の例を93で示す。図からわかるように、電子選択要素716は、エネルギー依存性電子選択要素であるばかりでなく、エネルギーの選択は、光軸に関する電子ビームの角度にも依存する。そのため、第2の電子選択要素は、エネルギー依存性かつ角度依存性の選択要素である。
【0079】
角度依存性選択要素である第1の荷電粒子選択要素、またはエネルギーおよび角度に依存する選択要素である第2の荷電粒子選択要素、あるいはその両方を有するこれらの態様と、本願で示す任意の実施形態とを組み合わせることができる。
【0080】
図9aに、それぞれの方法の流れ図を示す。方法ステップ801は、荷電粒子の生成を指す。荷電粒子が放出され、公称エネルギーEnに加速される。ここで、電子ビームのエネルギー幅はΔEである。ステップ802で、光学コラムを通過する電子は、エネルギー幅低減系を通過し、第1の選択要素618によって整形される。方法ステップ803aによれば、これらの電子は、第1のウィーンフィルタ−4極子コンポーネント内で偏向される。偏向角は、電子のエネルギーα(E)の関数である。このエネルギー依存性の偏向は、例えば、正のx方向に行われる。さらに、方法ステップ803bによれば、これらの電子は、第2のウィーンフィルタ−4極子コンポーネント内で偏向される。偏向角は、電子のエネルギーβ(E)の関数である。このエネルギー依存性の偏向は、例えば、負のx方向に行われる。+−の符号および−+の符号で示すように、同じエネルギーEの粒子について、γ1に関係する荷電粒子にかかる偏向力と、γ2に関係する荷電粒子にかかる偏向力は、反対方向に作用する。
【0081】
ステップ804で、第2の(エネルギー依存性)選択手段によって電子が選択される。ここで説明する方法は、図6aに示すコンポーネントのアセンブリを参照している。図7に示すコンポーネントのアセンブリの場合には、ステップ803bの前にステップ804を実施する。
【0082】
図9aの点線の矢印で示すように、上記で説明した方法をさらに拡張することができる。第1の測定モードに対応する第1の偏向γ1(E)およびγ2(E)ならびに対応する荷電粒子選択の後で、偏向を改変することができる。この偏向の改変を利用して、荷電粒子ビーム電流またはエネルギー幅(それぞれの分解能)を制御することができる。このように、この装置を、第2の測定モード、または荷電粒子の偏向の改変によるさらに別の動作モードで動作させることができる。そのため、異なる分散を実現し、それによって異なるビーム電流を実現するために、荷電粒子選択要素を機械的に調整する必要がない。
【0083】
図9bで、この偏向を実現するために多極子を動作させる方法を説明する。方法ステップ803aおよび803bは、本質的に以下の2つのステップを含む。一方では、方法ステップ805によれば、ウィーンフィルタ要素を励磁する。他方では、方法ステップ806によれば、z軸に沿ってx方向およびy方向に仮想分散源が位置決めされるように4極子要素を励磁する。典型的には、この位置決めは、荷電粒子ビームの放出源とみなせる場所と仮想分散源が同じz位置で、または少なくとも互いに近接して得られるように行われる。さらに、2つの4極子要素を励磁することによって、放出源とみなせる場所をz軸に沿って位置決めすることができる。仮想分散源の位置決めもこれに従って行うことができる。
【0084】
上記の方法を用いて、集束特性を有するウィーンフィルタ要素と比べて、励磁をさらに強くし、それによって分散を大きくすることができる。さらに、x−z面内およびy−z面内の共通のz位置での追加のクロスオーバを避けることができる。さらに、分散の結果、放出源とみなせる場所が仮想的に大きくならないようにするか、または少なくともそれをかなり低減することができる。
【0085】
図10a〜図10eに、電子選択要素616、618、および716の実施形態の異なる例を示す。ここでは、第1の電子選択要素と第2の電子選択要素を同じものとして示す。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。好ましくは、電子角度依存性選択要素と電子エネルギー依存性選択要素では、少なくとも開口706、705、または704のサイズを異なるものとする。
【0086】
本発明を限定することなく、典型的な実施形態によれば、第1の電子選択要素および第2の電子選択要素は、円形開口を有する。
【0087】
本発明を限定することなく、第1の電子選択要素が円形開口を有し、第2の電子選択要素がスリット開口を有することがさらに可能である。あるいは、第1の電子選択要素は円形開口を有し、第2の電子選択要素は、図10dまたは図10eによる選択用エッジ、すなわちナイフエッジを備える。
【0088】
図10aに、円形開口706を有する円板要素703を示す。円板要素702に当たるビームの部分を遮蔽することによってビームが整形される。第2の電子選択要素に関して、x方向にエネルギーに依存して偏向される電子は、第2のエネルギー依存性選択要素の円板要素702によって部分的に遮蔽される。それによって、電子ビームのエネルギー幅を狭めることができる。
【0089】
図10bに、スリット開口704を有する円形円板要素702を示す。モノクロメータ内では、このスリットはy方向に延びることになる。そのため、公称エネルギーを有する電子は、光軸からのy方向変位と無関係に、このスリットの中心を通過することができる。公称エネルギーからずれた電子は、x方向に偏向され、そのため、円板要素702によって遮蔽されることになる。
【0090】
このスリット開口を使用して、例えば、スリットの汚染された領域を避けることができる。スリットのある領域が汚染されている場合、この電子選択要素をy方向にずらすことができる。それによって、スリット開口704の汚染されていない異なる領域を使用し得る。
【0091】
図10cに、円板要素702および短いスリット705を備えた電子選択要素514/516を示す。スリット705のy方向の長さはより短い。したがって、このスリットを通過する電子は、光軸からy方向にそれほどずれないはずである。
【0092】
図10dおよび図10eに関して別の実施形態を説明する。上記で説明した実施形態はすべて、少なくともxの正負の方向に電子を選択するものであった。しかし、公称ビーム経路からxの正または負の方向のいずれか一方にずれた電子のみを遮蔽する電子選択手段、すなわち選択用エッジを提供することも可能である。それによって、電子ビームを制限するエッジが1つだけ提供される。これらの要素はそれぞれ、中実部分708aまたは708bを有する。中実部分708aの右側を通過する電子はどれも遮蔽されず、中実部分708bの左側を通過する電子はどれも遮蔽されない。
【0093】
図10dおよび図10eのコンポーネントは様々な実施形態で使用し得る。これらのコンポーネントは別々に使用することもできるし、組み合わせて使用することもできる。次に、図10dまたは図10eのコンポーネントの一方を利用する第1の実施形態を説明する。いずれの側の電子エネルギースペクトルを遮蔽すべきかに応じて、図10dまたは図10eのいずれかの電子選択要素を使用し得る。電子選択用エッジは、電子エネルギースペクトルの低エネルギー部分または高エネルギー部分しか遮蔽し得ないが、以下で説明するように、これで十分なことがある。
【0094】
現況技術に関して説明したように、例えば、1次電子ビームのエネルギー幅を狭めることが望ましい。この場合、このエネルギー幅は、主に放出器特性の影響を受ける。そのため、所望のエネルギー選択は、放出器特性によって決まる。ショットキ型放出器または冷電界型放出器などの一部の放出器の放出スペクトルは非対称である。すなわち、放出される電子のエネルギースペクトルは、放出ピークの一方の側が急峻に変化し、このピークの他方の側では、スペクトルの形状はテール状に延びている。放出スペクトルの一方の側のテール状の形状により、エネルギー幅ΔEが左右される。そのため、このスペクトルのテール部を遮蔽すれば、エネルギー幅ΔEを十分に狭めることができる。上記を考慮すると、電子を選択するのにエッジのみを使用することで十分なことがある。
【0095】
次に、図10dおよび図10eの両方のコンポーネントを利用する第2の実施形態を説明する。これら2つの電子選択要素は、z方向に隣接するように位置決めされる。そのため、各要素を使用して、公称エネルギーからのずれに応じて電子を選択する。これら2つの要素を組み合わせることによって、スリット704と同等のスリットが形成される。しかし、維持するのがより簡単であり、汚染される傾向が小さいなどの理由から、2つの別々のコンポーネントを設けるほうを用いることになろう。
【0096】
次に、図10dおよび図10eの両方のコンポーネントを利用する第3の実施形態を説明する。上記で説明した第2の実施形態を、以下のように発展させることができる。2つの別々の電子選択用ナイフエッジを使用する場合、各要素を互いに独立に調整することができる。
【0097】
先に述べた電子エネルギー依存性選択要素の説明では、エネルギー幅ΔEの調整には触れなかった。図6a〜図8bに関して説明した系では、電子選択要素616、716の幅をx方向に調整することによって、電子エネルギー幅ΔEを調整する可能性が得られる。上記で説明した実施形態はすべて、開口幅変更手段を備えることができる。あるいは、それぞれ開口幅が固定の電子選択要素を、電子エネルギー幅を選択するために交換可能とし得る。
【0098】
あるいは、またはそれに加えて、(図示しない)別の実施形態によれば、電子選択要素を移動可能とし得る。
【0099】
図10dおよび図10eを参照して現在説明している実施形態では、電子選択要素のエッジをより容易に調整する可能性が得られる。さらに、互いに独立に選択要素を容易に調整する可能性が得られる。
【0100】
ただし、本発明により、各ウィーンフィルタ要素に異なる励磁を与える結果、系内で分散を調整することができ、さらに、x−z面での荷電粒子ビーム経路が変化しないので、エネルギー選択要素の調整は任意選択であり、多くの先行技術の系の場合のようにエネルギー幅の調整は不要である。
【0101】
以下、図11aおよび図11bに関して、上記で説明したエネルギー幅低減系を利用する荷電粒子ビーム装置の実施形態の例を説明する。図11aには、荷電粒子ビーム装置1を示す。この装置は、電子コラムおよび試料チャンバを備える。この電子コラムはハウジング3を有し、試料チャンバはハウジング4を有する。それぞれの区域は、(図示しない)真空ポンプによって排気することができる。
【0102】
この電子コラム内で、電子源6は、本質的に光軸5に沿って電子を放出する。これらの電子は、ビーム経路10に沿って系を通過し、対物レンズ9によって試料8上に集束する。例えば対物レンズの色収差を低減することによってこの系の分解能を向上させるために、放出された電子のエネルギー幅を狭める。したがって、開口手段618によってこの電子ビームを整形する。整形されたビームは、第1のウィーンフィルタ−4極子要素の系110/412に入射する。公称エネルギーを有する電子は、このウィーンフィルタ−4極子要素の系を本質的に真っ直ぐに通過する。公称エネルギーからずれたエネルギーを有する電子は、この第1の系の分散によって偏向される。そのため、ある種の制限よりも大きくずれた電子は、開口手段616、すなわち電子選択要素616によって遮蔽される。そうではあるが、公称エネルギーからのずれがある種の制限以内の一部の電子は、非公称エネルギーを有するにもかかわらず、電子選択要素616の開口を通過し得る。第1のウィーンフィルタ110および第1の4極子410によって導入された偏向を補正するために、第2の4極子要素412内の第2のウィーンフィルタ112によって、これらの電子が電子源6から発するように見えるようにこれらの電子を偏向させる。上記で説明したエネルギー選択を考慮すると、電子ビーム10のエネルギー幅が狭められる。そのため、この系の色収差が低減され、分解能が向上する。
【0103】
図11bに、荷電粒子ビーム装置1の別の例を示す。ここでは、陽極レンズ7により、その後でクロスオーバが生成される。この場合も対物レンズによって試料8上に集束されるビーム経路10は、このクロスオーバの後で、エネルギー幅低減系を通過する。このクロスオーバは、上記で定義した放出源とみなせる場所に類似の働きをする。第1のウィーンフィルタ110と第1の4極子要素410は合わせて概ね分散的に作用し、すなわち、4極子要素の非集束性によってウィーンフィルタ要素の集束効果が概ね補償される。そのため、ウィーンフィルタ要素の励磁を、通常の双極子ウィーンフィルタの集束効果による荷電粒子についての分散の本来の制限よりも大きい量まで強めることができる。その結果、分散をさらに大きくすることができ、その結果、エネルギー幅がさらに狭められる。
【0104】
第2のウィーンフィルタ要素112および第2の4極子要素412により、電子が、陽極レンズによって生成されたクロスオーバから発するように見えるように偏向される。最後に、公称エネルギーからある種の制限よりもずれた電子は、電子選択要素716によって遮蔽される。
【0105】
図11bでは、一方では、電子ビームの放出源とみなせる場所は図11aに関して変化させ、他方では、エネルギー依存性選択要素は、2つのウィーンフィルタ要素の間から第2のウィーンフィルタ要素の後に移動させた。ただし、本発明のこれら2つの独立な細部は、上記で説明した任意の実施形態と独立に組み合わせることができる。
【0106】
図11aおよび図11bに示す1次荷電粒子ビームについて、あるいは、試料などから放出される2次荷電粒子ビームについて、上記で説明したエネルギー幅低減系を使用して、双極子ウィーンフィルタの集束効果を補償し、このエネルギー幅低減系のx−z面およびy−z面の共通のz位置でのクロスオーバをなくし、すなわち、この光学系内で追加のクロスオーバをなくすことによって、荷電粒子ビームのエネルギー幅を有利に狭めることができる。そのため、一方では、双極子ウィーンフィルタの本来の分散制限を克服することができ、荷電粒子源、仮想荷電粒子源、クロスオーバ、またはこれら3つのいずれかの像など、放出源とみなせる場所に仮想分散源を移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】ウィーンフィルタおよびこのウィーンフィルタに入射する電子ビームのビーム経路の例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図2】ウィーンフィルタおよびこのウィーンフィルタに入射する電子ビームのビーム経路の別の例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図3】ウィーンフィルタ要素および4極子要素ならびにこの系に入射する電子ビームのビーム経路の2つの例をx−z面内で示す概略側面図である。
【図4】図3のy−z面に対応する概略側面図である。
【図5a】改良型ウィーンフィルタを備えた実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図5b】改良型ウィーンフィルタを備えた実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図6a】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図6b】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をy−z面内で示す概略側面図である。
【図7】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図8a】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図8b】本発明による荷電粒子ビームエネルギー幅低減系の実施形態をx−z面内で示す概略側面図である。
【図9a】本発明による方法の流れ図である。
【図9b】本発明による方法の流れ図である。
【図10a】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10b】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10c】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10d】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図10e】電子選択要素の実施形態の概略図である。
【図11a】本発明による荷電粒子ビーム装置の実施形態の概略側面図である。
【図11b】本発明による荷電粒子ビーム装置の実施形態の概略側面図である。
【図12a】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図12b】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図13a】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【図13b】ウィーンフィルタおよび励磁条件の概略側面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビーム用の第1および第2の面を伴う荷電粒子ビーム速度分布幅低減系であって、
集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)と、
集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)と、
第1の4極子要素(410)であり、動作時に、当該第1の4極子要素の場と前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場が重なるように位置決めされた、前記第1の4極子要素(410)と、
第2の4極子要素(412)であって、動作時に、当該第2の4極子要素の場と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場が重なるように位置決めされた、前記第2の4極子要素(412)と、
ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前で位置決めされた第1の荷電粒子選択要素(618)と、
ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の後で位置決めされた第2の荷電粒子選択要素(616、716)と
を備える、荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項2】
荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用される、請求項1に記載の系。
【請求項3】
荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は荷電粒子ビーム質量選択系として使用される、請求項1に記載の系。
【請求項4】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は第1のウィーンフィルタ要素(110)であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)は第2のウィーンフィルタ要素(112)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項5】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、分散力が本質的に反対方向に作用するように構築され、かつ/または制御ユニットに接続される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項6】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、
前記第2の要素選択要素は、前記第1の面内のクロスオーバが生じない位置で荷電粒子を選択するように位置決めされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項7】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、異なる絶対分散値が実現されるように構築され、かつ/または制御ユニットに接続される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項8】
前記第2の荷電粒子選択要素(616)は、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の間に位置決めされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項9】
前記第2の荷電粒子選択要素(716)は、ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の入射口の後に位置決めされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項10】
放出源とみなせる場所(601)は、荷電粒子源または仮想粒子源である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項11】
放出源とみなせる場所はクロスオーバである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項12】
放出源とみなせる場所は、荷電粒子源または仮想放出源の像である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項13】
前記第1の荷電粒子選択要素(618)は、角度依存性荷電粒子選択要素であり、前記第2の荷電粒子選択要素(616、716)は、速度依存性選択要素である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項14】
前記速度依存性選択要素は、エネルギー依存性選択要素として使用される、請求項13に記載の系。
【請求項15】
前記速度依存性選択要素は、質量依存性選択要素として使用される、請求項13に記載の系。
【請求項16】
前記第2の荷電粒子選択要素は、速度依存性かつ角度依存性の選択要素である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項17】
前記速度依存性かつ角度依存性の選択要素は、エネルギー依存性かつ角度依存性の選択要素として使用される、請求項16に記載の系。
【請求項18】
前記速度依存性かつ角度依存性の選択要素は、質量依存性かつ角度依存性の選択要素として使用される、請求項16に記載の系。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の速度分布幅低減系を備える荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は、荷電粒子源(6)を備える荷電粒子銃コンポーネントの直後にある、請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、前記荷電粒子源を備える銃コンポーネントに含まれる、請求項19または20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
光軸に沿ったz軸、集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)、集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)、第1の4極子要素(410)、および第2の4極子要素(412)を備える荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法であって、
第1の荷電粒子選択要素(618)によって前記荷電粒子ビームを整形するステップと、
前記第1の4極子要素の場および前記第2の4極子要素の場により、放出源とみなせる場所(601)から実質的に発するように前記荷電粒子ビームが第2の面内で結像するように、前記第1および前記第2の4極子要素を励磁するステップと、
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場、第1の4極子要素の場、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場、および第2の4極子要素の場を合成することによって、第1の面内で、前記荷電粒子が放出源とみなせる場所から発するように見えるように、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素を励磁するステップと、
前記第2の荷電粒子選択要素(616、716)によって速度に依存して前記荷電粒子を選択するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用され、
前記第2の荷電粒子選択要素による前記選択ステップは、エネルギーに依存して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビーム質量選択系として使用され、
前記第2の荷電粒子選択要素による前記選択ステップは、質量に依存して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項26】
前記第1および第2の4極子要素(410、412)ならびに前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素は、複数の離散値の1つに対して励磁される、請求項22〜25のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項27】
前記第1および第2の4極子要素ならびに前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素は、前記放出源とみなせる場所のところに仮想分散位置を有するように励磁される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項28】
前記第1および前記第2の4極子要素は、前記z軸に沿って前記放出源とみなせる場所(601)を位置決めするように励磁される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項29】
前記z軸は前記光軸に沿って延び、
前記第1の面がx−z面になり、前記第2の面がy−z面になるように、前記第1の4極子要素は、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素に関して向きを合わせ、前記第2の4極子要素は、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素に関して向きがを合わせる、請求項22〜28のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項30】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、第1の分散が生じるように励磁され、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記第1の分散と絶対値が異なる第2の分散が生じるように励磁される、請求項22〜29のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項31】
第2の分散力が第1の分散力と本質的に反対方向に作用するように、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、前記第1の分散が生じるように励磁され、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記第2の分散が生じるように励磁される、請求項22〜30のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項1】
荷電粒子ビーム用の第1および第2の面を伴う荷電粒子ビーム速度分布幅低減系であって、
集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)と、
集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)と、
第1の4極子要素(410)であり、動作時に、当該第1の4極子要素の場と前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場が重なるように位置決めされた、前記第1の4極子要素(410)と、
第2の4極子要素(412)であって、動作時に、当該第2の4極子要素の場と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場が重なるように位置決めされた、前記第2の4極子要素(412)と、
ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の前で位置決めされた第1の荷電粒子選択要素(618)と、
ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の後で位置決めされた第2の荷電粒子選択要素(616、716)と
を備える、荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項2】
荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用される、請求項1に記載の系。
【請求項3】
荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は荷電粒子ビーム質量選択系として使用される、請求項1に記載の系。
【請求項4】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は第1のウィーンフィルタ要素(110)であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)は第2のウィーンフィルタ要素(112)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項5】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、分散力が本質的に反対方向に作用するように構築され、かつ/または制御ユニットに接続される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項6】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、第1の面内で集束的かつ分散的に作用し、
前記第2の要素選択要素は、前記第1の面内のクロスオーバが生じない位置で荷電粒子を選択するように位置決めされる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項7】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、異なる絶対分散値が実現されるように構築され、かつ/または制御ユニットに接続される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項8】
前記第2の荷電粒子選択要素(616)は、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素と前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の間に位置決めされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項9】
前記第2の荷電粒子選択要素(716)は、ビーム方向に、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の入射口の後に位置決めされる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項10】
放出源とみなせる場所(601)は、荷電粒子源または仮想粒子源である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項11】
放出源とみなせる場所はクロスオーバである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項12】
放出源とみなせる場所は、荷電粒子源または仮想放出源の像である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項13】
前記第1の荷電粒子選択要素(618)は、角度依存性荷電粒子選択要素であり、前記第2の荷電粒子選択要素(616、716)は、速度依存性選択要素である、請求項1〜12のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項14】
前記速度依存性選択要素は、エネルギー依存性選択要素として使用される、請求項13に記載の系。
【請求項15】
前記速度依存性選択要素は、質量依存性選択要素として使用される、請求項13に記載の系。
【請求項16】
前記第2の荷電粒子選択要素は、速度依存性かつ角度依存性の選択要素である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系。
【請求項17】
前記速度依存性かつ角度依存性の選択要素は、エネルギー依存性かつ角度依存性の選択要素として使用される、請求項16に記載の系。
【請求項18】
前記速度依存性かつ角度依存性の選択要素は、質量依存性かつ角度依存性の選択要素として使用される、請求項16に記載の系。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の速度分布幅低減系を備える荷電粒子ビーム装置。
【請求項20】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は、荷電粒子源(6)を備える荷電粒子銃コンポーネントの直後にある、請求項19に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項21】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、前記荷電粒子源を備える銃コンポーネントに含まれる、請求項19または20に記載の荷電粒子ビーム装置。
【請求項22】
光軸に沿ったz軸、集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)、集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)、第1の4極子要素(410)、および第2の4極子要素(412)を備える荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法であって、
第1の荷電粒子選択要素(618)によって前記荷電粒子ビームを整形するステップと、
前記第1の4極子要素の場および前記第2の4極子要素の場により、放出源とみなせる場所(601)から実質的に発するように前記荷電粒子ビームが第2の面内で結像するように、前記第1および前記第2の4極子要素を励磁するステップと、
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素の場、第1の4極子要素の場、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素の場、および第2の4極子要素の場を合成することによって、第1の面内で、前記荷電粒子が放出源とみなせる場所から発するように見えるように、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素および前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素を励磁するステップと、
前記第2の荷電粒子選択要素(616、716)によって速度に依存して前記荷電粒子を選択するステップと
を含む方法。
【請求項23】
前記荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビームエネルギー幅低減系として使用され、
前記第2の荷電粒子選択要素による前記選択ステップは、エネルギーに依存して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記荷電粒子ビーム速度分布幅低減系は、荷電粒子ビーム質量選択系として使用され、
前記第2の荷電粒子選択要素による前記選択ステップは、質量に依存して行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素(110)は第1のウィーンフィルタ要素であり、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素(112)は第2のウィーンフィルタ要素である、請求項22〜24のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項26】
前記第1および第2の4極子要素(410、412)ならびに前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素は、複数の離散値の1つに対して励磁される、請求項22〜25のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項27】
前記第1および第2の4極子要素ならびに前記集束的かつ分散的に作用する第1および第2の要素は、前記放出源とみなせる場所のところに仮想分散位置を有するように励磁される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項28】
前記第1および前記第2の4極子要素は、前記z軸に沿って前記放出源とみなせる場所(601)を位置決めするように励磁される、請求項22〜26のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項29】
前記z軸は前記光軸に沿って延び、
前記第1の面がx−z面になり、前記第2の面がy−z面になるように、前記第1の4極子要素は、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素に関して向きを合わせ、前記第2の4極子要素は、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素に関して向きがを合わせる、請求項22〜28のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項30】
前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、第1の分散が生じるように励磁され、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記第1の分散と絶対値が異なる第2の分散が生じるように励磁される、請求項22〜29のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【請求項31】
第2の分散力が第1の分散力と本質的に反対方向に作用するように、前記集束的かつ分散的に作用する第1の要素は、前記第1の分散が生じるように励磁され、前記集束的かつ分散的に作用する第2の要素は、前記第2の分散が生じるように励磁される、請求項22〜30のいずれか一項に記載の荷電粒子ビーム速度分布幅低減系を動作させる方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図10a】
【図10b】
【図10c】
【図10d】
【図10e】
【図11a】
【図11b】
【図12a】
【図12b】
【図13a】
【図13b】
【公表番号】特表2007−519179(P2007−519179A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525710(P2006−525710)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009801
【国際公開番号】WO2005/024888
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009801
【国際公開番号】WO2005/024888
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】
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