荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置
【課題】 駆動電力の増加を抑制しながら、殺菌効果または空気清浄化作用を有する高濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能な荷電粒子生成方法等を提供する。
【解決手段】 荷電粒子生成装置は、ダクト1内に放電部2を備えている。ダクト1の一方端の吸気口11には他のダクト3が接続されている。他のダクト3内には、プロペラファン型の送風機4が設けられている。送風機4によって生成された気流は、ダクト1の一方端の吸気口11からダクト1の内周面向かって斜め方向に送り込まれる。それにより、ダクト1内において、空気は、ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する。ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する空気は、放電部2の近傍を通過するときに、放電部2によって生成された荷電粒子を巻き込む。荷電粒子を巻き込んだ螺旋状に旋回する気流は、排気口10からダクト1の外部の空間に向かって放出される。
【解決手段】 荷電粒子生成装置は、ダクト1内に放電部2を備えている。ダクト1の一方端の吸気口11には他のダクト3が接続されている。他のダクト3内には、プロペラファン型の送風機4が設けられている。送風機4によって生成された気流は、ダクト1の一方端の吸気口11からダクト1の内周面向かって斜め方向に送り込まれる。それにより、ダクト1内において、空気は、ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する。ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する空気は、放電部2の近傍を通過するときに、放電部2によって生成された荷電粒子を巻き込む。荷電粒子を巻き込んだ螺旋状に旋回する気流は、排気口10からダクト1の外部の空間に向かって放出される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電によって荷電粒子を生成する荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、次に記載のような種々の空気を浄化するための技術が知られている。
【特許文献1】特開平4−309734号公報
【特許文献2】特開2002−130749号公報
【特許文献3】特開2001−317785号公報
【特許文献4】特開2002−22218号公報
【特許文献5】特開平11−342181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来より、空気の浄化を行う方法として、竜巻状に空気を旋回させ、目的とする空間を選択的に換気する技術が知られている。たとえば、特開平4−309734号公報(人工竜巻式局所排気装置)または特開2002−130749号公報(空気浄化装置および空気浄化システム)においては、人工的に竜巻を発生させることによって、必要最小限の空気量で、遠方の汚染物を含んだ空気を確実に吸引して浄化するかまたは外部に排出する技術が開示されている。しかしながら、前述の文献に開示された装置は、汚染された空気を、空気中で能動的に清浄化する機能を有していないため、空間を高度に清浄化することは困難であるという問題を有している。
【0004】
一方、特開2001−317785号公報においては、負イオンを空間へ螺旋状の旋回気流とともに放出することによって、エアカーテンを形成する機構を有する換気装置が開示されている。この文献に開示された技術によれば、エアカーテン内の換気領域内の空気の除電を効率良く行うことが可能である。しかしながら、この文献に開示された装置は、帯電を防止することを目的として発明されたものであるため、放出された空気が殺菌作用および有害物質の除去効果を有しているかどうかが確認されていない。また、この文献に開示された装置は、帯電した空気を生成するための特別な工夫がなされているわけでもなく、その装置を効果的な空気の浄化に用いることは想定されていない。
【0005】
また、特開2002−22218号公報に示される(負イオン発生装置および負イオン発生方法)によれば、螺旋状整流板を設けた装置において、ノズルから水を衝突板に向かって噴出させ、衝突板の複数の個所で微細水滴を発生させることにより、高濃度の負イオンを放出することが可能となっている。この文献に開示された装置は、レナード効果により負イオンを発生させるものであるが、排出される空気の湿度を上昇させてしまうという問題を有している。そのため、居住空間等で前述の文献に開示された装置を使用する場合には、湿度の値を適正な範囲内に維持することによって快適な空間を形成することが難しくなるという問題がある。
【0006】
また、図13は、特開平11−342181号公報(負イオン発生装置)に開示されている従来の負イオン発生装置を示す図である。図13に示すように、従来の負イオン発生装置は、電源装置51、放電電極12、ノズル型の接地電極13、ファン等の送風機14、ダクト15、ノズル16、放電面17、絶縁性吹き出しノズル18、空気の供給口19、通気路20、絶縁材21、および気体が負イオンに電離する電離空間22を備えている。
【0007】
図13に示す負イオン発生装置においては、送風機14によって生成された気流を構成する空気は、先細りのテーパ形状を有するノズル16で凝縮され、その速度が高くなった後、放電電極12とノズル型の接地電極13との間を通過し、ノズル18から高流速で吹き出される。このとき、放電電極12と接地電極13との間でコロナ放電が発生し、これにより電離した負イオンを含有した空気も同様に高い流速で接地電極13から吹き出される。つまり、ノズル18により送り出される空気の全体が加速される。その結果、発生した負イオンが接地電極13等に取り込まれることによって消滅する割合が小さくなるため、負イオンの発生効率が向上する。
【0008】
しかしながら、この負イオン発生装置においては、ノズルを用いて高い流速のイオンを含む空気を生成しているため、イオン化気体の圧力損失によって送風機14のファンの駆動電力が大きくなり易く、ノズル18における騒音が増大し易く、かつノズル18においてゴミ等が詰まり易いという問題がある。また、ノズル18から放出されたイオンを含む空気は、空間に等方的に放出されるため、目的とする位置に達するまでに拡散し、イオン濃度が低くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動電力の増加を抑制しながら、殺菌効果または空気清浄化作用を有する高濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能な荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の荷電粒子生成方法は、ダクト内に設けられた放電部の近傍を気流が旋回しながら進行する状態で、放電部に電圧を印加し、放電部の近傍に荷電粒子を生成するものである。この方法によれば、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることができる。
【0011】
また、前述の方法においては、荷電粒子は正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子の双方を含んでいる場合には、一般に、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子とは互いの衝突によって消滅し易いが、前述の方法を用いれば、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子とが生成される場合においても、荷電粒子の濃度が高い状態を維持し易くなる。
【0012】
本発明の一の局面の荷電粒子生成装置は、ダクトと、ダクト内に気流を生じさせる送風機と、ダクト内に設けられた放電部とを備えている。また、送風機は、ダクト内の放電部が設置された位置において、旋回しながら進行する気流を生じさせるように設けられている。この一の局面の装置によれば、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能になる。
【0013】
また、ダクトおよび送風機は、荷電粒子を含む空気が旋回しながら進行する気流となっている状態でダクト内の空間からダクト外の空間へ放出されるように構成されていることが望ましい。この装置によれば、高い濃度の荷電粒子をダクト外の遠方までより確実に到達させることができる。
【0014】
本発明の一の局面の荷電粒子生成装置は、ダクトと、ダクト内に気流を生じさせる送風機と、ダクト内に設けられた放電部とを備えている。また、その装置は、送風機によってダクト内に生じた気流がダクト内を旋回しながら進行するように、ダクト内面に溝部または突起部が設けられている。この他の局面の装置によっても、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能になる。
【0015】
また、一の局面および他の局面のそれぞれの装置は、ダクト内に送風機のファンが設けられ、ファンの回転中心軸とダクトの中心軸とが同軸であることが望ましい。これによれば、ダクト内において乱流を生じさせるおそれを低減することができる。
【0016】
なお、前述の装置は、ダクト内に気流中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えていることが望ましい。また、前述の装置は、ダクト内に気流の温度または湿度を制御する制御装置をさらに備えていることが望ましい。
【0017】
なお、本発明の空気清浄化装置は、前述の荷電粒子生成装置によって生成された荷電粒子を用いて空気清浄化を行うものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明の実施の形態の荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置およびそれが用いられた空気清浄化装置の概要を説明する。
【0019】
従来の空気中に発生させた荷電粒子を用いた空気浄化技術の一例として、特開2002−95731号公報に次の技術が開示されている。
【0020】
大気中での放電等による電離現象によって、正イオンとして、たとえば、H+(H2O)mを生成させ、負イオンとして、たとえば、O2-(H2O)nを生成させる。なお、mおよびnのそれぞれは、自然数を示している。それにより、前述の2つのイオンの化学反応によって活性種が生成される。この活性種により空気中の浮遊細菌を取り囲んで除去することが可能である。
【0021】
一方、本実施の形態の荷電粒子生成方法等は、前述されたイオンなどの荷電粒子を放電により大量に生成し、さらに目的とする空間に高濃度で荷電粒子を到達させ、殺菌、脱臭、および除電などを効果的に行わせることを目的とするものである。
【0022】
なお、本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、荷電粒子を大量に放出する方法として、放電部の近傍の気流の速度を大きくする方法が用られている。本実施の形態の荷電粒子生成装置によって得られる効果を実証するデータを図14および図15に示す。
【0023】
図14は、風洞中において送風しながら放電を起こし、発生した正イオンおよび負イオンの濃度を測定する実験装置の概略図である。
【0024】
図14は、断面が正方形の風洞501を送風方向に沿って切った実験装置の縦断面図である。風洞501内には放電電極502が設けられている。放電電極502は沿面放電電極である。なお、風洞501の横断面は一辺が17cmの正方形となっている。また、放電電極502は、セラミック誘電体を挟んでいる網状の外部電極と内部電極とを有している。セラミック誘電体は、幅が1.5cmであり、長さが3.0cm、厚さが0.2mmである。内部電極と外部電極とのそれぞれは高圧パルス回路503に接続されている。なお、高圧パルス回路503によって、周波数が20KHzでありかつピーク電圧が約2KVである、正電圧および負電圧からなる電圧パルスが、放電電極502に印加される。
【0025】
なお、矢印504は風洞501内の気流の方向を示しており、風洞501内には、風洞501の長手方向の軸に平行に進む気流を形成する送風手段(図示せず)が設置されている。
【0026】
また、放電電極502よりもダクト長Lだけ下流側の風洞501内の開口部にイオンカウンタ505が設置されている。その開口部の面内の平均イオン濃度がイオンカウンタ505によって測定される。平均イオン濃度は、正イオンおよび負イオンのそれぞれに関して測定される。なお、前述のダクト長Lは、風洞501の長さを変更することによって適宜調整することが可能である。
【0027】
なお、前述の放電条件により放出される正イオンと負イオンとはほぼ等量であり、質量分析の結果、正イオンはH+(H2O)mが主成分であり、負イオンはO2-(H2O)nが主成分であることが確認されている。なお、ここで、mおよびnのそれぞれは、自然数を示している。
【0028】
前述の実験装置において、一定の高圧パルスを放電電極502に印加し、風洞501内に気流を送り込んだ場合に、測定された正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度のダクト長L依存性を示すデータが図15に示されている。図15に示すデータは、風洞501内の気流の速度が0.28m/秒および0.17m/秒のそれぞれの場合において、距離Lを50cmから5mまで変化させたときに前述のイオンカウンタ505により得られたデータである。
【0029】
図15から分かるように、放電電極502からイオンカウンタ505までの距離Lが大きくなるにしたがって、イオン濃度が低下している。また、図15から、風洞501内の気流の速度が0.28m/秒および0.17m/秒のそれぞれである場合において、正イオンおよび負イオンのそれぞれの寿命は約7.0秒であると推定される。この結果から、正イオンおよび負イオンのそれぞれの寿命は、ほぼ同じ値であり、イオン濃度に依存しないことが分かる。なお、ここで、イオンの寿命とは、イオン濃度が1/e(eは自然対数)となる時間を示すものである。
【0030】
また、図15のグラフに示される直線を延長することにより、放電部におけるイオン濃度が推定される。風洞501内の気流の速度が0.28m/秒である場合には、放電部におけるイオン濃度は、正イオンおよび負イオンの双方とも、3.1×105cm-3であると推定され、風洞501内の気流の速度が0.17m/秒である場合には、放電部におけるイオン濃度は、正イオンおよび負イオンの双方とも、2.2×105cm-3であると推定される。
【0031】
さらに、前述のイオン濃度の数値に風量の値を乗じることにより、放電部において生成されるイオンの風洞501からの放出速度が計算される。風洞501内の気流の速度が0.28m/秒である場合には、正イオンおよび負イオンの放出速度は、2.51×1010個/秒であり、風洞501内の気流の速度が0.17m/秒である場合には、正イオンおよび負イオンの放出速度は、1.08×1010個/秒である。
【0032】
以上の実験によれば、風洞501内の気流の速度を1.65倍にすることにより、放出される正イオンおよび負イオンの総量が2.32倍に増加するという結果が得られる。したがって、少なくとも前述の放電条件により正イオンおよび負イオンを風洞501内において生成する場合、風洞501内の気流の速度を増加させることにより、正イオンおよび負イオンの生成量を大きく増加させることが可能である。
【0033】
以上のような結果は、次に説明するような原理によって得られるものと推定される。
【0034】
まず、放電電極へ電圧が印加されることにより放電電極の近傍においてプラズマ領域が生成される。このプラズマ領域においては、空気中に存在する水素、酸素、および窒素等が電荷を帯びる。さらに、電荷を帯びた水素、酸素、および窒素等に水分子が複数結合した物質からなる荷電粒子が多数生成される。その荷電粒子は、空気中で他の物質に衝突し、電荷を失う。この荷電粒子が電荷を失う過程において、3つの現象が生じていると推定される。
【0035】
一つは、上記荷電粒子が空気中の水蒸気または車などから放出された燃焼ガスなどに起因する炭素化合物およびその他粉塵などに物理的に衝突し電荷を失う現象である。ただし、空気中の水蒸気分子および粉塵は、上記荷電粒子数と比較して多数存在すると推定されるため、荷電粒子と粉塵等との衝突の頻度は、前述した荷電粒子の濃度に大きく依存するものではないと考えられる。
【0036】
もう一つは、電極付近のプラズマ領域およびその近傍で生じる現象である。これは、クーロン力に起因して異なる極性を有する荷電粒子同士が衝突することによって荷電粒子が消滅する現象である。この現象は、荷電粒子同士の距離が比較的小さい場合に生じる。したがって、荷電粒子の濃度が高くなればなるほど、荷電粒子同士の間の平均距離が小さくなるため、荷電粒子同士の衝突の頻度が高くなる。その結果、荷電粒子の寿命が短くなる。この現象は、空気中に正の荷電粒子と負の荷電粒子とが多数存在する場合に、その発生の頻度が高くなる。
【0037】
さらにもう一つは、放電電極の近傍で生成された荷電粒子が放電電極へ取り込まれる現象である。この現象は、放電電極に高電圧が印加された場合に、荷電粒子が引力または斥力を受けることによって放電電極および誘電体に衝突して電荷を失うために生じるものである。この現象は、放電により生成された荷電粒子が、正の荷電粒子のみまたは負の荷電粒子のみからなっている場合であっても、正の荷電粒子および負の荷電粒子の両方を含んでいる場合であっても生じる現象である。
【0038】
以上のような現象が放電電極の近傍で生じていることを考慮すると、放電電極の近傍における気流の速度を大きくした場合、プラズマ領域で生成された荷電粒子は気流により急激に拡散される。その結果、荷電粒子同士の間の平均距離が急速に大きくなることによって、荷電粒子の消滅が抑制される。したがって、空間に高濃度で荷電粒子を放出することが可能となる。また、気流の速度を大きくすることによって、荷電粒子を高速で放電電極から引き離すことができるため、荷電粒子の放電電極等への衝突を抑制することが可能になる。
【0039】
以上の原理により、風洞内において放電を行うことによって荷電粒子を生成するときに、放電電極の近傍における気流の速度を大きくすることにより、荷電粒子の生成量を増加させることが可能であると考えられる。
【0040】
本発明は、以上の原理を効果的に応用したものであり、放電電極の近傍における気流の速度を大きくする方法として、放電電極が設けられたダクト内において気流を旋回させる方法が用いられている。この方法によれば、以上に述べられた原理が応用されているため、正に帯電した荷電粒子のみまたは負に帯電した荷電粒子のみが生成される場合においても、前述の効果を得ることができるが、特に、正の荷電粒子および負の荷電粒子の双方が生成される場合に、荷電粒子を大量に生成することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0041】
以下、図を用いて、本発明の実施の形態の荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置を詳細に説明する。
【0042】
(実施の形態1)
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態1の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。
【0043】
図1に示すように、本実施の形態の荷電粒子生成装置は、沿面放電を行う放電部2を備えている。放電部2は、ダクト1内に設置されている。また、ダクト1の一方端の吸気口11には他のダクト3が接続されている。他のダクト3内には、プロペラファン型の送風機4が設けられている。送風機4によって生成された気流は、ダクト1の一方端の吸気口11からダクト1の内周面向かって斜め方向に送り込まれる。それにより、ダクト1内において、空気は、ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する。ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する空気は、放電部2の近傍を通過するときに、放電部2によって生成された荷電粒子を巻き込む。荷電粒子を巻き込んだ螺旋状に旋回する気流は、排気口10からダクト1の外部の空間に放出される。
【0044】
また、ダクト1の他方端側のダクト1の中心軸の延長線上に、ダクト1の排気口10から送り出された空気に含まれるイオンの濃度を測定するイオン濃度測定位置6が存在する。なお、図1においては、気流が進行する軌跡が矢印5によって示されている。
【0045】
本実施の形態においては、放電部2はダクト1の内周面に取り付けられ、ダクト1は、その内径は5cmであり、その長さが30cmである。また、ダクト1内の送風量は毎秒5リットルである。また、放電部2はダクト1の空気を放出する他方端の排気口10から15cmの位置に設けられている。
【0046】
なお、放電部2の放電電極は、沿面放電を行うものであって、タングステンの薄膜電極2枚の間にセラミック板が挟まれており、かつ、片側電極のみが空間に露出している構造である。また、高圧パルス電源(図示せず)から放電電極に、最大値が4KVの正および負からなる電圧パルスのそれぞれが、30マイクロ秒の間かつ毎秒60回印加される。なお、放電部2の近傍における気流の速度は、実測値で約3.5m/秒である。
【0047】
上記の本実施の形態の荷電粒子生成装置を用いて、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度が120万個/cm3であった。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、360万個/cm3であった。
【0048】
なお、本明細書のイオン濃度の測定方法においては、移動度1cm2/V・sec以上の小イオンが検出される。イオンの濃度を測定する装置としては、(株)ダン科学製空気イオンカウンタ(型番83−1001B)またはそれと同等の測定方法を実行することが可能な装置が用いられている。したがって、実験データは、その測定装置によって得られたものである。
【0049】
なお、ここで比較のため、ダクト1内の気流が旋回しないで進行する荷電粒子生成装置を図5に示す。図5の荷電粒子生成装置においては、図1の荷電粒子生成装置と同じダクト構造および放電方法が用いられているが、送風機4としてはプロペラファンではなくターボファンが用いられている。図5に示す荷電粒子生成装置において、ダクト1内の送風量は毎秒5リットルであり、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約2.5m/秒である。
【0050】
なお、送風機4としてのターボファンが生成した気流は、円筒状のダクト1の内部において、ほぼ円筒状の筒の中心軸と平行に進行する。
【0051】
図5に示す荷電粒子生成装置を用いて、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は30万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、200万個/cm3である。
【0052】
前述の図1の荷電粒子生成装置と図5の荷電粒子生成装置とを比較すると、ダクト1の排気口10、ならびに、排気口10から外方に向かって100cmの位置における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、いずれも図1の荷電粒子生成装置のほうが大きな値を示すことが分かる。
【0053】
以上のように、送風量および放電方法が同じであるにもかかわらず、得られたイオン濃度が異なる理由としては、まず、図1に示すように、ダクト1内に生じる気流を、ダクト1の中心軸のまわりを旋回させながら進行させることによって、放電部2の近傍の気流の速度が大きくなるため、放電により生成されたイオンすなわち荷電粒子の量が増加したことが第1の理由であると考えられる。さらに、イオンを含んだ空気が螺旋状の気流言い換えれば竜巻状の気流になっているために、排気口10からイオン濃度測定位置6までの間でのイオンの拡散が抑制されていることが第2の理由であると考えられる。
【0054】
なお、図1のダクト1から放出される空気が排気口10に接続された別のダクト内に放出される荷電粒子生成装置であっても、本実施の形態の荷電粒子生成装置と同様に、高濃度のイオンを発生させることが可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、正イオンおよび負イオンの双方を均等に発生させているが、正イオンおよび負イオンのうちいずれか一方が主成分となるように放電条件を採用しても、荷電粒子の電極への衝突を抑制し、高濃度のイオンを発生させることができる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、図2を用いて、本発明の実施の形態2の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。なお、本実施の形態の図2に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。なお、図2において、矢印8は送風機4のファンが回転する方向を示している。
【0057】
本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、図2に示すように、送風機4としてのファンがダクト1の内部に設けられているとともに、ダクト1内部に螺旋状の突起7が2箇所に設けられている。螺旋状の突起7は、ダクト1内において送風機4が生成した気流を螺旋状に旋回させながら進行させる。つまり、送風機4が生成した気流は、円筒状のダクト1の内部において、螺旋状の突起7により進行方向が規制されることにより螺旋状に軌跡を描くように導かれる。
【0058】
本実施の形態において、放電部2の放電方法ならびにダクト1の寸法および送風量は、実施の形態1と同等である。なお、放電部2の近傍の気流の速度は、実測値で約4.0m/秒である。また、螺旋状の突起7の厚さは1cmである。
【0059】
本実施の形態の荷電粒子生成装置において、L=100cmであるイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度が180万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、440万個/cm3である。
【0060】
本実施の形態の荷電粒子生成装置によれば、実施の形態1の荷電粒子生成装置よりも大きなイオン濃度を得ることができる。このような結果が得られた理由としては、図2に示すように、ダクト1内周面に螺旋状の突起7を設けたことにより、ダクト1内の気流が螺旋状に進行することが考えられる。つまり、ダクト1内において乱流が発生し難くなることによって、放電部2の近傍の気流の速度を安定化させながら、気流を高速化することができたことが主な要因と考えられる。また、ダクト1から放出された空気は安定した螺旋状の気流を形成することによって、排気口10からイオン濃度測定位置6までの間においてイオンの拡散が抑制されているため、イオン濃度測定位置6に多量のイオンが到達したことがさらなる要因として考えられる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、螺旋状の突起7を用いて螺旋状の気流が生成されているが、ダクト1の内周面に形成された螺旋状の溝を用いて螺旋状の気流を生成してもよい。また、螺旋状の突起および螺旋状の溝は、1箇所に設けられていても、複数箇所に設けられていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、図2のダクト1の末端は開放されている必要はなく、ダクト1の排気口10に別のダクトが接続されており、ダクト1の排気口10から別のダクトに空気が送り込まれてもよい。その場合、本実施の形態の荷電粒子生成装置と同様に、高濃度のイオンを発生させることができる。
【0063】
また、本実施の形態のダクト1の内周面に螺旋状の突起もしくは螺旋状の溝を設け、ダクト1内の空気を螺旋状に旋回させながら進行させる機構と、実施の形態1のダクト1内において空気が螺旋状に旋回しながら進行するように、ダクト1に空気を送り込む機構との双方を用いて、高濃度のイオンもしくは荷電粒子を得ることも可能である。
【0064】
(実施の形態3)
次に、図3を用いて、本発明の実施の形態3の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。本実施の形態の図3に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0065】
本実施の形態の荷電粒子生成装置は、円筒状のダクト1の中心軸と、送風機4としてのファンの回転中心軸とが同一軸になるように設けられている。ファンは、その回転により周辺の空気を、図3に白抜き矢印で示す方向に沿って、矢印8で示すファンの回転方向と同じ方向に旋回する螺旋状の軌跡を描くように送り出す。本実施の形態の荷電粒子生成装置において、放電部2の放電方法およびダクト1の寸法、および送風量は、実施の形態1および2の荷電粒子生成装置と同様である。なお、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約2.7m/秒である。
【0066】
以上の構成において、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は40万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は230万個/cm3である。
【0067】
本実施の形態の荷電粒子生成装置によれば、図5に示す荷電粒子生成装置よりも高いイオン濃度の気流を生成することができる。この結果は、実施の形態1および実施の形態2の説明で述べたように、放電用のダクト1内に生じる気流が、螺旋状に旋回しながら進行するからである。ただし、本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、実施の形態2において説明したような円筒状のダクト1内に螺旋状の突起が設けられていないため、ダクト1内の空気の旋回の度合いは比較的小さい。
【0068】
(実施の形態4)
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態2の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。なお、本実施の形態の図4に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0069】
本実施の形態の荷電粒子生成装置においても、実施の形態3の荷電粒子生成装置と同様に、円筒状のダクト1の中心軸と、送風機4としてのターボファン(遠心ファン)の回転中心軸とが同一軸に設けられている。ターボファンは、その回転により周辺の空気を、図4に矢印5で示す方向に、矢印8で示すターボファンの回転方向と同じ回転方向に旋回する螺旋状の軌跡を描くように送り出す。本実施の形態の荷電粒子生成装置において、放電部2の放電方法およびダクト1の寸法、および送風量は、実施の形態1〜3の荷電粒子生成装置と同様である。なお、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約3.3m/秒である。
【0070】
以上の構成において、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、100万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、330万個/cm3である。
【0071】
本実施の形態の荷電粒子生成装置は、実施の形態3の荷電粒子生成装置と比較して、イオン濃度の測定値が高くなっている。これはファンの構造の相違に起因するものである。本実施の形態の送風機4としてのターボファンは、その回転中心軸と直行する方向から回転中心軸に向かって空気を吸い込んでいる。そのため、空気が、ターボファンの回転方向と同じ方向に旋回しながら、ターボファンと同一の中心軸を有する円筒状のダクト1内に導入され、その後も引き続き、旋回しながら進行する。
【0072】
一方、実施の形態3の荷電粒子生成装置の送風機4は、プロペラファンが用いられている。そのため、プロペラファンに対して吸い込まれてプロペラファンを通過する空気には、進行方向(ダクト1の中心軸が延びる方向)に慣性力が作用する。その結果、旋回の度合いが比較的小さくなっている。
【0073】
(実施の形態5)
次に、図6を用いて、本発明の実施の形態5の荷電粒子生成装置が搭載された空気清浄化装置を説明する。
【0074】
図6に示すように、空気清浄化装置は、本体101、沿面放電を行う放電部103、ターボファン型の送風機102、断面が丸みを帯びた四角状のダクト104、および空気を取り入れるための開口105を備えている。なお、図6において、気流の軌跡は矢印106および107によって示されている。
【0075】
本実施の形態においては、ダクト104の中心軸と送風機102のファンの回転中心軸が同一軸である。送風機102は、ファンの回転により、ファンの回転中心軸に直行する方向から周辺の空気を取り込む。それにより、空気はダクト104の中心軸と同じ軸を回転中心軸として旋回しながら上方向へ進行する。また、旋回しながら進行する空気は、放電部103において活性な正イオンおよび負イオン含んだ状態となり、空気放出部としての開口109から空気清浄化装置の本体101の外部へ放出される。なお、開口109は、危険防止のため、網が設置されている。
【0076】
本実施の形態の空気清浄化装置において、矢印106で示す方向に吸い込まれた空気は、放電部103によって生成された高密度のイオンを含む空気となった後、上方向に送り出される。つまり、高い密度のイオンを含む空気が空気清浄化装置の本体101の開口109から遠方まで送り出される。
【0077】
なお、正イオンと負イオンとにより、空間の微生物の殺菌を効率的に行うことができるという技術が、特開2002−95731号公報に開示されている。本実施の形態の空気清浄化装置は、前述の殺菌技術を実現するために適しており、高濃度の正イオンおよび負イオンを目的とする空間に到達させることが可能である。
【0078】
また、本実施の形態においては、ダクト104は、断面が丸みを帯びた四角状の形状となっており、内面がなめらかな面を形成している。このため、内部を空気が旋回し易くなっている。
【0079】
また、本実施の形態の空気清浄化装置は、空気吸い込み口としての開口105を本体101の全周面に沿って設けることが容易な構造であるため、安定した吸気を行なうことができる。
【0080】
なお、開口105にフィルタなどが設けられていれば、除塵した空気を用いて放電を行うことにより、放電部103の汚れおよび劣化を抑制することができる。その結果、本実施の形態の空気清浄化装置によれば、放電を良好に行えることが可能である。
【0081】
また、開口105にフィルタなどが設けられていれば、空気中に含まれる粉塵数を減少させられるので、発生した荷電粒子と粉塵との衝突による荷電粒子の消滅確率を低減させるとともに、高濃度の荷電粒子を得ることが可能になる。
【0082】
(実施の形態6)
次に、図7を用いて、本発明の実施の形態6の空気清浄化装置を説明する。なお、本実施の形態の図7に示す空気清浄化装置は、図6に示す実施の形態5の空気清浄化装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては図6に示す実施の形態5の空気清浄化装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0083】
本実施の形態の空気清浄化装置は、図7に示す構造に加えて、ダクト104の内周面に気流調整用の螺旋状の突起108が設けられている。したがって、本実施の形態の空気清浄化装置においては、螺旋状の突起108によって、ダクト104内の空気の旋回が促進され、乱流の発生が抑制される。その結果、放電部103の近傍の空気の流速が大きくなるため、螺旋状に旋回する気流内に含まれるイオンの濃度が高くなる。
【0084】
(実施の形態7)
次に、図8を用いて、本発明の実施の形態6の空気清浄化装置を説明する。なお、本実施の形態の図8に示す空気清浄化装置は、図7に示す実施の形態6の空気清浄化装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては図7に示す実施の形態6の空気清浄化装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0085】
本実施の形態の空気清浄化装置と実施の形態6の空気清浄化装置とは、図7と図8とを比較すれば分かるように、送風機102のファンが回転する方向、ならびに、矢印106および107によって示される気流の方向が逆向きであることのみが異なる。
【0086】
本実施の形態の空気清浄化装置は、空気取り入れ口としての開口109から吸い込まれた空気は、ダクト104内を矢印107で示す方向に流れた後、空気放出口としての開口105から矢印106で示す方向に向かって排出される。なお、ダクト104内を下降する空気は、気流調整用の螺旋状の突起108に沿って旋回する。そのため、放電部103の近傍を流れる気流の速度が大きくなるため、螺旋状に旋回する気流内に含まれるイオンの濃度が高くなる。
【0087】
(実施の形態8)
本発明の荷電粒子生成装置の構造が放電素子に用いられた例を図9に示す。
【0088】
図9において、本実施の形態の放電素子は、円筒状のダクト201、放電針からなる放電部202、ターボファン型の送風機203、およびダクトの側面に設けられた空気取り入れ口としての開口204を備えている。なお、図9において、矢印205および206は、気流が流れる軌跡を示している。
【0089】
本実施の形態においては、針電極に負電圧を印加して針電極での放電によって生成された負イオンが上方に高濃度で放出される。本実施の形態の放電素子は、ダクト201と送風機203とが一体化されている。そのため、放電素子全体を薄型化および小型化することが可能である。たとえば、前述の放電素子を携帯電話および電子手帳などの電子機器、健康器具、および各種装置に搭載することが可能であり、本実施の形態の放電素子を用いることにより、強い放電を行うことができかつ小型の装置を製造することができる。
【0090】
なお、本実施の形態の放電素子においては、負イオンを発生させているが、これは正イオン、または、正イオンと負イオンとの混合物でも本実施の形態の放電素子により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(実施の形態9)
本発明の荷電粒子生成装置の構造が放電素子に用いられた他の例を図10に示す。
【0092】
図10に示す本実施の形態の放電素子は、図9に示す実施の形態8の放電素子の構造のうち放電部202が放電針から沿面放電電極に変更されるとともに、図9に示す実施の形態8の放電素子の構造にさらに電源用電極端子207が設置されていること以外は、実施の形態8の放電素子と全く同様の構造を有している。
【0093】
放電部202には電源回路(図示せず)から尖頭値2KVの正および負からなる電圧パルスが印加され、放電部202から正イオンおよび負イオンが放出される。
【0094】
なお、本実施の形態の放電素子は、H+(H2O)m(mは任意の自然数)から成る正イオンと、O2-(H2O)n(nは任意の自然数)から成る負イオンとを発生させる。それによって、イオンに空気中に浮遊する浮遊細菌に付着させて、浮遊細菌を除去することができる。さらに、H+(H2O)mとO2-(H2O)nとが反応してH2O2(過酸化水素)またはOH(水酸基ラジカル)が生成されるため、浮遊細菌を殺菌することができる。
【0095】
本実施の形態の放電素子は、プリント基板等に半田付けすることが容易であるため、様々な電気機器へ搭載され得るものである。
【0096】
(実施の形態10)
本発明の荷電粒子生成装置の構造がエアコンディショナに用いられた例を図11に示す。
【0097】
図11に示すように、本実施の形態のエアコンディショナは、壁309に取り付けられており、本体301、吸気口302、ダクト303,313、放電部305および315、ならびに、気流制御用の螺旋状の突起306および316を備えている。
【0098】
本実施の形態のエアコンディショナにおいて、吸気口302から導入された空気は、熱交換機(図示せず)によって温度および湿度の調整が行われ、本体301内部のクロスフローファン(図示せず)によりダクト303および313を通って壁309によって囲まれた室内に送り出される。上記の本実施の形態のエアコンディショナの構造によれば、温度および湿度が制御された空気中で放電が行われることにより、放電の安定化を図ることが可能になる。
【0099】
なお、本実施の形態においては、放電部305はダクト303の内周面に設置されており、ダクト303内部では、気流制御用の螺旋状の突起306によって空気が旋回しながら進行するため、放電部305の電極は高速の気流に曝される。以上の本実施の形態のエアーコンディショナによれば、放電部305の近傍において高濃度のイオンを生成することが可能となる。
【0100】
さらに、矢印304で示されるように、ダクト303からイオンを含む空気が旋回しながら室内に放出されるため、ダクト303の中心軸の延長線上の位置に高濃度のイオンを含む空気を放出することが可能となっている。
【0101】
また、本実施の形態のエアコンディショナにおいては、放電部315はダクト313の風上側の位置に設けられている。この放電部315によって生成されたイオンを含む空気は、気流制御用の螺旋状の突起316に沿って旋回しながらダクト313の中を進行する。そのため、矢印314で示されるように、イオンを含む空気が旋回しながら室内に放出されることにより、ダクト313の延長上の位置に高濃度のイオンを含む空気を送り出すことが可能となっている。
【0102】
なお、本実施例では、ダクト303および313は、その横断面が六角形(正六角形であることが望ましい)となっている。ダクト303および313の横断面の形状は、六角形に限定されるものではなく、円形に近い形状であることが望ましいが、三角形、四角形、五角形、およびその他の多角形であってもよく、ダクト303および313のそれぞれ内において空気が旋回する構造であれば、前述の各実施の形態の荷電粒子生成装置により得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0103】
(実施の形態11)
図12は、図10に示す実施の形態9の放電素子が搭載された携帯電話機の一部破断図である。
【0104】
図12に示す携帯電話機は、本体401、内部の電子回路基板402、および図10に示す実施の形態9の荷電粒子生成装置403を備えている。なお、図12において、正および負のイオンを含んだ空気が旋回しながら進行する軌跡は、矢印404によって示されている。
【0105】
本実施の形態の携帯電話機においては、小型の荷電粒子生成装置403により高濃度のイオンが生成され、携帯電話機に設けられた排気用の穴(図示せず)から前述のイオンを外部に放出することが可能である。そのため、携帯電話機に備えられた本荷電粒子生成装置を使用すれば、携帯電話機から放出される荷電粒子によって、空気中の有害な微生物を除去することができる。
【0106】
なお、前述の実施の形態のそれぞれの発明においては、荷電粒子の放電方式は特に限定されるものではなく、たとえば、ワイヤに高電圧を印加する放電方式、および、金属に紫外線等を照射する放電方式が用いられても、前述の各実施の形態に記載の発明によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0107】
さらに、放電方式は、空気中で放電が行われる方式に限定されず、空気以外の特定のガス中で放電が行われる放電方式であって、さらに、液体等を反応させながら放電が行われる放電方式であっても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、さらに、放電部を備えたダクトは厳密な円筒でなくとも、空気等を旋回させながら進行させることが可能なダクトであれば、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。たとえば、断面が楕円状のダクト、内面が丸みを帯びたくぼみを有する三角柱状のダクトなどであっても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、前述の各実施の形態の荷電粒子生成装置は、空気清浄化装置のための用途のみならず、コピー機、除電装置、およびプラズマを用いたディスプレイなど、プラズマまたはイオン等の荷電粒子を用いた様々な機器に適用され得る。
【0110】
さらに、前述の各実施の形態の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を、車両、建築物、または様々な機器に搭載し、殺菌、脱臭、および有害物質の除去などの作用を利用することが可能である。
【0111】
なお、前述の各実施の形態において、荷電粒子としては、H+(H2O)mおよびO2-(H2O)nが用いられる例が挙げられているが、荷電粒子はこれらに限るものではない。放電条件を調整することにより、たとえば、H+、N2+、O2+、O2-、O3-、CO3-、NO2-およびNO3-等の荷電粒子が用いられてもよい。
【0112】
さらに、前述の荷電粒子が水分子等と結合し、比較的大きな分子量を形成する場合においても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0113】
また、前述の技術を、送風する空気中にアルゴンなどの不活性ガスまたは揮発性のガスを混合するなどの手法によって様々な物質に電荷を帯びさせて荷電粒子を大量に生成する技術として応用することも可能である。
【0114】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれていることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施の形態1の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図2】実施の形態2の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図3】実施の形態3の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図4】実施の形態4の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図5】比較例の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図6】実施の形態5の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図7】実施の形態6の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図8】実施の形態7の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図9】実施の形態8の放電素子を説明するための図である。
【図10】実施の形態9の放電素子を説明するための図である。
【図11】実施の形態10のエアコンディショナを説明するための図である。
【図12】実施の形態11の携帯電話機を説明するための図である。
【図13】従来の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図14】実施の形態のイオン濃度の測定を行う実験装置を説明するための図である。
【図15】実施の形態の実験装置によって得られたイオン濃度と放電部からの距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0116】
1,104,201,303,313 ダクト、2,103,202,305,315 放電部、3 他のダクト、4,102,203 送風機、5,106,107,205,206,304,314,404 気流の軌跡を示す矢印、6 イオン濃度測定位置、7,108,306,316 螺旋状の突起、8 送風機の回転方向を示す矢印、10 排気口、11 吸気口、105,109,204,302 開口、101,301,401 本体、207 電源用電極端子、309 壁、402 電子回路基板、403 荷電粒子生成装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電によって荷電粒子を生成する荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、次に記載のような種々の空気を浄化するための技術が知られている。
【特許文献1】特開平4−309734号公報
【特許文献2】特開2002−130749号公報
【特許文献3】特開2001−317785号公報
【特許文献4】特開2002−22218号公報
【特許文献5】特開平11−342181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来より、空気の浄化を行う方法として、竜巻状に空気を旋回させ、目的とする空間を選択的に換気する技術が知られている。たとえば、特開平4−309734号公報(人工竜巻式局所排気装置)または特開2002−130749号公報(空気浄化装置および空気浄化システム)においては、人工的に竜巻を発生させることによって、必要最小限の空気量で、遠方の汚染物を含んだ空気を確実に吸引して浄化するかまたは外部に排出する技術が開示されている。しかしながら、前述の文献に開示された装置は、汚染された空気を、空気中で能動的に清浄化する機能を有していないため、空間を高度に清浄化することは困難であるという問題を有している。
【0004】
一方、特開2001−317785号公報においては、負イオンを空間へ螺旋状の旋回気流とともに放出することによって、エアカーテンを形成する機構を有する換気装置が開示されている。この文献に開示された技術によれば、エアカーテン内の換気領域内の空気の除電を効率良く行うことが可能である。しかしながら、この文献に開示された装置は、帯電を防止することを目的として発明されたものであるため、放出された空気が殺菌作用および有害物質の除去効果を有しているかどうかが確認されていない。また、この文献に開示された装置は、帯電した空気を生成するための特別な工夫がなされているわけでもなく、その装置を効果的な空気の浄化に用いることは想定されていない。
【0005】
また、特開2002−22218号公報に示される(負イオン発生装置および負イオン発生方法)によれば、螺旋状整流板を設けた装置において、ノズルから水を衝突板に向かって噴出させ、衝突板の複数の個所で微細水滴を発生させることにより、高濃度の負イオンを放出することが可能となっている。この文献に開示された装置は、レナード効果により負イオンを発生させるものであるが、排出される空気の湿度を上昇させてしまうという問題を有している。そのため、居住空間等で前述の文献に開示された装置を使用する場合には、湿度の値を適正な範囲内に維持することによって快適な空間を形成することが難しくなるという問題がある。
【0006】
また、図13は、特開平11−342181号公報(負イオン発生装置)に開示されている従来の負イオン発生装置を示す図である。図13に示すように、従来の負イオン発生装置は、電源装置51、放電電極12、ノズル型の接地電極13、ファン等の送風機14、ダクト15、ノズル16、放電面17、絶縁性吹き出しノズル18、空気の供給口19、通気路20、絶縁材21、および気体が負イオンに電離する電離空間22を備えている。
【0007】
図13に示す負イオン発生装置においては、送風機14によって生成された気流を構成する空気は、先細りのテーパ形状を有するノズル16で凝縮され、その速度が高くなった後、放電電極12とノズル型の接地電極13との間を通過し、ノズル18から高流速で吹き出される。このとき、放電電極12と接地電極13との間でコロナ放電が発生し、これにより電離した負イオンを含有した空気も同様に高い流速で接地電極13から吹き出される。つまり、ノズル18により送り出される空気の全体が加速される。その結果、発生した負イオンが接地電極13等に取り込まれることによって消滅する割合が小さくなるため、負イオンの発生効率が向上する。
【0008】
しかしながら、この負イオン発生装置においては、ノズルを用いて高い流速のイオンを含む空気を生成しているため、イオン化気体の圧力損失によって送風機14のファンの駆動電力が大きくなり易く、ノズル18における騒音が増大し易く、かつノズル18においてゴミ等が詰まり易いという問題がある。また、ノズル18から放出されたイオンを含む空気は、空間に等方的に放出されるため、目的とする位置に達するまでに拡散し、イオン濃度が低くなるという問題がある。
【0009】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動電力の増加を抑制しながら、殺菌効果または空気清浄化作用を有する高濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能な荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の荷電粒子生成方法は、ダクト内に設けられた放電部の近傍を気流が旋回しながら進行する状態で、放電部に電圧を印加し、放電部の近傍に荷電粒子を生成するものである。この方法によれば、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることができる。
【0011】
また、前述の方法においては、荷電粒子は正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子の双方を含んでいる場合には、一般に、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子とは互いの衝突によって消滅し易いが、前述の方法を用いれば、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子とが生成される場合においても、荷電粒子の濃度が高い状態を維持し易くなる。
【0012】
本発明の一の局面の荷電粒子生成装置は、ダクトと、ダクト内に気流を生じさせる送風機と、ダクト内に設けられた放電部とを備えている。また、送風機は、ダクト内の放電部が設置された位置において、旋回しながら進行する気流を生じさせるように設けられている。この一の局面の装置によれば、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能になる。
【0013】
また、ダクトおよび送風機は、荷電粒子を含む空気が旋回しながら進行する気流となっている状態でダクト内の空間からダクト外の空間へ放出されるように構成されていることが望ましい。この装置によれば、高い濃度の荷電粒子をダクト外の遠方までより確実に到達させることができる。
【0014】
本発明の一の局面の荷電粒子生成装置は、ダクトと、ダクト内に気流を生じさせる送風機と、ダクト内に設けられた放電部とを備えている。また、その装置は、送風機によってダクト内に生じた気流がダクト内を旋回しながら進行するように、ダクト内面に溝部または突起部が設けられている。この他の局面の装置によっても、高い濃度の荷電粒子を遠方まで到達させることが可能になる。
【0015】
また、一の局面および他の局面のそれぞれの装置は、ダクト内に送風機のファンが設けられ、ファンの回転中心軸とダクトの中心軸とが同軸であることが望ましい。これによれば、ダクト内において乱流を生じさせるおそれを低減することができる。
【0016】
なお、前述の装置は、ダクト内に気流中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えていることが望ましい。また、前述の装置は、ダクト内に気流の温度または湿度を制御する制御装置をさらに備えていることが望ましい。
【0017】
なお、本発明の空気清浄化装置は、前述の荷電粒子生成装置によって生成された荷電粒子を用いて空気清浄化を行うものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
まず、本発明の実施の形態の荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置およびそれが用いられた空気清浄化装置の概要を説明する。
【0019】
従来の空気中に発生させた荷電粒子を用いた空気浄化技術の一例として、特開2002−95731号公報に次の技術が開示されている。
【0020】
大気中での放電等による電離現象によって、正イオンとして、たとえば、H+(H2O)mを生成させ、負イオンとして、たとえば、O2-(H2O)nを生成させる。なお、mおよびnのそれぞれは、自然数を示している。それにより、前述の2つのイオンの化学反応によって活性種が生成される。この活性種により空気中の浮遊細菌を取り囲んで除去することが可能である。
【0021】
一方、本実施の形態の荷電粒子生成方法等は、前述されたイオンなどの荷電粒子を放電により大量に生成し、さらに目的とする空間に高濃度で荷電粒子を到達させ、殺菌、脱臭、および除電などを効果的に行わせることを目的とするものである。
【0022】
なお、本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、荷電粒子を大量に放出する方法として、放電部の近傍の気流の速度を大きくする方法が用られている。本実施の形態の荷電粒子生成装置によって得られる効果を実証するデータを図14および図15に示す。
【0023】
図14は、風洞中において送風しながら放電を起こし、発生した正イオンおよび負イオンの濃度を測定する実験装置の概略図である。
【0024】
図14は、断面が正方形の風洞501を送風方向に沿って切った実験装置の縦断面図である。風洞501内には放電電極502が設けられている。放電電極502は沿面放電電極である。なお、風洞501の横断面は一辺が17cmの正方形となっている。また、放電電極502は、セラミック誘電体を挟んでいる網状の外部電極と内部電極とを有している。セラミック誘電体は、幅が1.5cmであり、長さが3.0cm、厚さが0.2mmである。内部電極と外部電極とのそれぞれは高圧パルス回路503に接続されている。なお、高圧パルス回路503によって、周波数が20KHzでありかつピーク電圧が約2KVである、正電圧および負電圧からなる電圧パルスが、放電電極502に印加される。
【0025】
なお、矢印504は風洞501内の気流の方向を示しており、風洞501内には、風洞501の長手方向の軸に平行に進む気流を形成する送風手段(図示せず)が設置されている。
【0026】
また、放電電極502よりもダクト長Lだけ下流側の風洞501内の開口部にイオンカウンタ505が設置されている。その開口部の面内の平均イオン濃度がイオンカウンタ505によって測定される。平均イオン濃度は、正イオンおよび負イオンのそれぞれに関して測定される。なお、前述のダクト長Lは、風洞501の長さを変更することによって適宜調整することが可能である。
【0027】
なお、前述の放電条件により放出される正イオンと負イオンとはほぼ等量であり、質量分析の結果、正イオンはH+(H2O)mが主成分であり、負イオンはO2-(H2O)nが主成分であることが確認されている。なお、ここで、mおよびnのそれぞれは、自然数を示している。
【0028】
前述の実験装置において、一定の高圧パルスを放電電極502に印加し、風洞501内に気流を送り込んだ場合に、測定された正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度のダクト長L依存性を示すデータが図15に示されている。図15に示すデータは、風洞501内の気流の速度が0.28m/秒および0.17m/秒のそれぞれの場合において、距離Lを50cmから5mまで変化させたときに前述のイオンカウンタ505により得られたデータである。
【0029】
図15から分かるように、放電電極502からイオンカウンタ505までの距離Lが大きくなるにしたがって、イオン濃度が低下している。また、図15から、風洞501内の気流の速度が0.28m/秒および0.17m/秒のそれぞれである場合において、正イオンおよび負イオンのそれぞれの寿命は約7.0秒であると推定される。この結果から、正イオンおよび負イオンのそれぞれの寿命は、ほぼ同じ値であり、イオン濃度に依存しないことが分かる。なお、ここで、イオンの寿命とは、イオン濃度が1/e(eは自然対数)となる時間を示すものである。
【0030】
また、図15のグラフに示される直線を延長することにより、放電部におけるイオン濃度が推定される。風洞501内の気流の速度が0.28m/秒である場合には、放電部におけるイオン濃度は、正イオンおよび負イオンの双方とも、3.1×105cm-3であると推定され、風洞501内の気流の速度が0.17m/秒である場合には、放電部におけるイオン濃度は、正イオンおよび負イオンの双方とも、2.2×105cm-3であると推定される。
【0031】
さらに、前述のイオン濃度の数値に風量の値を乗じることにより、放電部において生成されるイオンの風洞501からの放出速度が計算される。風洞501内の気流の速度が0.28m/秒である場合には、正イオンおよび負イオンの放出速度は、2.51×1010個/秒であり、風洞501内の気流の速度が0.17m/秒である場合には、正イオンおよび負イオンの放出速度は、1.08×1010個/秒である。
【0032】
以上の実験によれば、風洞501内の気流の速度を1.65倍にすることにより、放出される正イオンおよび負イオンの総量が2.32倍に増加するという結果が得られる。したがって、少なくとも前述の放電条件により正イオンおよび負イオンを風洞501内において生成する場合、風洞501内の気流の速度を増加させることにより、正イオンおよび負イオンの生成量を大きく増加させることが可能である。
【0033】
以上のような結果は、次に説明するような原理によって得られるものと推定される。
【0034】
まず、放電電極へ電圧が印加されることにより放電電極の近傍においてプラズマ領域が生成される。このプラズマ領域においては、空気中に存在する水素、酸素、および窒素等が電荷を帯びる。さらに、電荷を帯びた水素、酸素、および窒素等に水分子が複数結合した物質からなる荷電粒子が多数生成される。その荷電粒子は、空気中で他の物質に衝突し、電荷を失う。この荷電粒子が電荷を失う過程において、3つの現象が生じていると推定される。
【0035】
一つは、上記荷電粒子が空気中の水蒸気または車などから放出された燃焼ガスなどに起因する炭素化合物およびその他粉塵などに物理的に衝突し電荷を失う現象である。ただし、空気中の水蒸気分子および粉塵は、上記荷電粒子数と比較して多数存在すると推定されるため、荷電粒子と粉塵等との衝突の頻度は、前述した荷電粒子の濃度に大きく依存するものではないと考えられる。
【0036】
もう一つは、電極付近のプラズマ領域およびその近傍で生じる現象である。これは、クーロン力に起因して異なる極性を有する荷電粒子同士が衝突することによって荷電粒子が消滅する現象である。この現象は、荷電粒子同士の距離が比較的小さい場合に生じる。したがって、荷電粒子の濃度が高くなればなるほど、荷電粒子同士の間の平均距離が小さくなるため、荷電粒子同士の衝突の頻度が高くなる。その結果、荷電粒子の寿命が短くなる。この現象は、空気中に正の荷電粒子と負の荷電粒子とが多数存在する場合に、その発生の頻度が高くなる。
【0037】
さらにもう一つは、放電電極の近傍で生成された荷電粒子が放電電極へ取り込まれる現象である。この現象は、放電電極に高電圧が印加された場合に、荷電粒子が引力または斥力を受けることによって放電電極および誘電体に衝突して電荷を失うために生じるものである。この現象は、放電により生成された荷電粒子が、正の荷電粒子のみまたは負の荷電粒子のみからなっている場合であっても、正の荷電粒子および負の荷電粒子の両方を含んでいる場合であっても生じる現象である。
【0038】
以上のような現象が放電電極の近傍で生じていることを考慮すると、放電電極の近傍における気流の速度を大きくした場合、プラズマ領域で生成された荷電粒子は気流により急激に拡散される。その結果、荷電粒子同士の間の平均距離が急速に大きくなることによって、荷電粒子の消滅が抑制される。したがって、空間に高濃度で荷電粒子を放出することが可能となる。また、気流の速度を大きくすることによって、荷電粒子を高速で放電電極から引き離すことができるため、荷電粒子の放電電極等への衝突を抑制することが可能になる。
【0039】
以上の原理により、風洞内において放電を行うことによって荷電粒子を生成するときに、放電電極の近傍における気流の速度を大きくすることにより、荷電粒子の生成量を増加させることが可能であると考えられる。
【0040】
本発明は、以上の原理を効果的に応用したものであり、放電電極の近傍における気流の速度を大きくする方法として、放電電極が設けられたダクト内において気流を旋回させる方法が用いられている。この方法によれば、以上に述べられた原理が応用されているため、正に帯電した荷電粒子のみまたは負に帯電した荷電粒子のみが生成される場合においても、前述の効果を得ることができるが、特に、正の荷電粒子および負の荷電粒子の双方が生成される場合に、荷電粒子を大量に生成することができるという顕著な効果を得ることができる。
【0041】
以下、図を用いて、本発明の実施の形態の荷電粒子生成方法、荷電粒子生成装置、およびそれが用いられた空気清浄化装置を詳細に説明する。
【0042】
(実施の形態1)
まず、図1を用いて、本発明の実施の形態1の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。
【0043】
図1に示すように、本実施の形態の荷電粒子生成装置は、沿面放電を行う放電部2を備えている。放電部2は、ダクト1内に設置されている。また、ダクト1の一方端の吸気口11には他のダクト3が接続されている。他のダクト3内には、プロペラファン型の送風機4が設けられている。送風機4によって生成された気流は、ダクト1の一方端の吸気口11からダクト1の内周面向かって斜め方向に送り込まれる。それにより、ダクト1内において、空気は、ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する。ダクト1内を螺旋状に旋回しながら進行する空気は、放電部2の近傍を通過するときに、放電部2によって生成された荷電粒子を巻き込む。荷電粒子を巻き込んだ螺旋状に旋回する気流は、排気口10からダクト1の外部の空間に放出される。
【0044】
また、ダクト1の他方端側のダクト1の中心軸の延長線上に、ダクト1の排気口10から送り出された空気に含まれるイオンの濃度を測定するイオン濃度測定位置6が存在する。なお、図1においては、気流が進行する軌跡が矢印5によって示されている。
【0045】
本実施の形態においては、放電部2はダクト1の内周面に取り付けられ、ダクト1は、その内径は5cmであり、その長さが30cmである。また、ダクト1内の送風量は毎秒5リットルである。また、放電部2はダクト1の空気を放出する他方端の排気口10から15cmの位置に設けられている。
【0046】
なお、放電部2の放電電極は、沿面放電を行うものであって、タングステンの薄膜電極2枚の間にセラミック板が挟まれており、かつ、片側電極のみが空間に露出している構造である。また、高圧パルス電源(図示せず)から放電電極に、最大値が4KVの正および負からなる電圧パルスのそれぞれが、30マイクロ秒の間かつ毎秒60回印加される。なお、放電部2の近傍における気流の速度は、実測値で約3.5m/秒である。
【0047】
上記の本実施の形態の荷電粒子生成装置を用いて、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度が120万個/cm3であった。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、360万個/cm3であった。
【0048】
なお、本明細書のイオン濃度の測定方法においては、移動度1cm2/V・sec以上の小イオンが検出される。イオンの濃度を測定する装置としては、(株)ダン科学製空気イオンカウンタ(型番83−1001B)またはそれと同等の測定方法を実行することが可能な装置が用いられている。したがって、実験データは、その測定装置によって得られたものである。
【0049】
なお、ここで比較のため、ダクト1内の気流が旋回しないで進行する荷電粒子生成装置を図5に示す。図5の荷電粒子生成装置においては、図1の荷電粒子生成装置と同じダクト構造および放電方法が用いられているが、送風機4としてはプロペラファンではなくターボファンが用いられている。図5に示す荷電粒子生成装置において、ダクト1内の送風量は毎秒5リットルであり、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約2.5m/秒である。
【0050】
なお、送風機4としてのターボファンが生成した気流は、円筒状のダクト1の内部において、ほぼ円筒状の筒の中心軸と平行に進行する。
【0051】
図5に示す荷電粒子生成装置を用いて、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は30万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、200万個/cm3である。
【0052】
前述の図1の荷電粒子生成装置と図5の荷電粒子生成装置とを比較すると、ダクト1の排気口10、ならびに、排気口10から外方に向かって100cmの位置における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、いずれも図1の荷電粒子生成装置のほうが大きな値を示すことが分かる。
【0053】
以上のように、送風量および放電方法が同じであるにもかかわらず、得られたイオン濃度が異なる理由としては、まず、図1に示すように、ダクト1内に生じる気流を、ダクト1の中心軸のまわりを旋回させながら進行させることによって、放電部2の近傍の気流の速度が大きくなるため、放電により生成されたイオンすなわち荷電粒子の量が増加したことが第1の理由であると考えられる。さらに、イオンを含んだ空気が螺旋状の気流言い換えれば竜巻状の気流になっているために、排気口10からイオン濃度測定位置6までの間でのイオンの拡散が抑制されていることが第2の理由であると考えられる。
【0054】
なお、図1のダクト1から放出される空気が排気口10に接続された別のダクト内に放出される荷電粒子生成装置であっても、本実施の形態の荷電粒子生成装置と同様に、高濃度のイオンを発生させることが可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、正イオンおよび負イオンの双方を均等に発生させているが、正イオンおよび負イオンのうちいずれか一方が主成分となるように放電条件を採用しても、荷電粒子の電極への衝突を抑制し、高濃度のイオンを発生させることができる。
【0056】
(実施の形態2)
次に、図2を用いて、本発明の実施の形態2の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。なお、本実施の形態の図2に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。なお、図2において、矢印8は送風機4のファンが回転する方向を示している。
【0057】
本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、図2に示すように、送風機4としてのファンがダクト1の内部に設けられているとともに、ダクト1内部に螺旋状の突起7が2箇所に設けられている。螺旋状の突起7は、ダクト1内において送風機4が生成した気流を螺旋状に旋回させながら進行させる。つまり、送風機4が生成した気流は、円筒状のダクト1の内部において、螺旋状の突起7により進行方向が規制されることにより螺旋状に軌跡を描くように導かれる。
【0058】
本実施の形態において、放電部2の放電方法ならびにダクト1の寸法および送風量は、実施の形態1と同等である。なお、放電部2の近傍の気流の速度は、実測値で約4.0m/秒である。また、螺旋状の突起7の厚さは1cmである。
【0059】
本実施の形態の荷電粒子生成装置において、L=100cmであるイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度が180万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、440万個/cm3である。
【0060】
本実施の形態の荷電粒子生成装置によれば、実施の形態1の荷電粒子生成装置よりも大きなイオン濃度を得ることができる。このような結果が得られた理由としては、図2に示すように、ダクト1内周面に螺旋状の突起7を設けたことにより、ダクト1内の気流が螺旋状に進行することが考えられる。つまり、ダクト1内において乱流が発生し難くなることによって、放電部2の近傍の気流の速度を安定化させながら、気流を高速化することができたことが主な要因と考えられる。また、ダクト1から放出された空気は安定した螺旋状の気流を形成することによって、排気口10からイオン濃度測定位置6までの間においてイオンの拡散が抑制されているため、イオン濃度測定位置6に多量のイオンが到達したことがさらなる要因として考えられる。
【0061】
なお、本実施の形態においては、螺旋状の突起7を用いて螺旋状の気流が生成されているが、ダクト1の内周面に形成された螺旋状の溝を用いて螺旋状の気流を生成してもよい。また、螺旋状の突起および螺旋状の溝は、1箇所に設けられていても、複数箇所に設けられていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態において、図2のダクト1の末端は開放されている必要はなく、ダクト1の排気口10に別のダクトが接続されており、ダクト1の排気口10から別のダクトに空気が送り込まれてもよい。その場合、本実施の形態の荷電粒子生成装置と同様に、高濃度のイオンを発生させることができる。
【0063】
また、本実施の形態のダクト1の内周面に螺旋状の突起もしくは螺旋状の溝を設け、ダクト1内の空気を螺旋状に旋回させながら進行させる機構と、実施の形態1のダクト1内において空気が螺旋状に旋回しながら進行するように、ダクト1に空気を送り込む機構との双方を用いて、高濃度のイオンもしくは荷電粒子を得ることも可能である。
【0064】
(実施の形態3)
次に、図3を用いて、本発明の実施の形態3の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。本実施の形態の図3に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0065】
本実施の形態の荷電粒子生成装置は、円筒状のダクト1の中心軸と、送風機4としてのファンの回転中心軸とが同一軸になるように設けられている。ファンは、その回転により周辺の空気を、図3に白抜き矢印で示す方向に沿って、矢印8で示すファンの回転方向と同じ方向に旋回する螺旋状の軌跡を描くように送り出す。本実施の形態の荷電粒子生成装置において、放電部2の放電方法およびダクト1の寸法、および送風量は、実施の形態1および2の荷電粒子生成装置と同様である。なお、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約2.7m/秒である。
【0066】
以上の構成において、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は40万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は230万個/cm3である。
【0067】
本実施の形態の荷電粒子生成装置によれば、図5に示す荷電粒子生成装置よりも高いイオン濃度の気流を生成することができる。この結果は、実施の形態1および実施の形態2の説明で述べたように、放電用のダクト1内に生じる気流が、螺旋状に旋回しながら進行するからである。ただし、本実施の形態の荷電粒子生成装置においては、実施の形態2において説明したような円筒状のダクト1内に螺旋状の突起が設けられていないため、ダクト1内の空気の旋回の度合いは比較的小さい。
【0068】
(実施の形態4)
次に、図4を用いて、本発明の実施の形態2の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を説明する。なお、本実施の形態の図4に示す荷電粒子生成装置は、実施の形態1の荷電粒子生成装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては実施の形態1の荷電粒子生成装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0069】
本実施の形態の荷電粒子生成装置においても、実施の形態3の荷電粒子生成装置と同様に、円筒状のダクト1の中心軸と、送風機4としてのターボファン(遠心ファン)の回転中心軸とが同一軸に設けられている。ターボファンは、その回転により周辺の空気を、図4に矢印5で示す方向に、矢印8で示すターボファンの回転方向と同じ回転方向に旋回する螺旋状の軌跡を描くように送り出す。本実施の形態の荷電粒子生成装置において、放電部2の放電方法およびダクト1の寸法、および送風量は、実施の形態1〜3の荷電粒子生成装置と同様である。なお、放電部2の近傍を通過する気流の速度は、実測値で約3.3m/秒である。
【0070】
以上の構成において、L=100cmの位置のイオン濃度測定位置6におけるイオン濃度を測定したところ、正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、100万個/cm3である。また、ダクト1の排気口10における正イオンおよび負イオンのそれぞれの濃度は、330万個/cm3である。
【0071】
本実施の形態の荷電粒子生成装置は、実施の形態3の荷電粒子生成装置と比較して、イオン濃度の測定値が高くなっている。これはファンの構造の相違に起因するものである。本実施の形態の送風機4としてのターボファンは、その回転中心軸と直行する方向から回転中心軸に向かって空気を吸い込んでいる。そのため、空気が、ターボファンの回転方向と同じ方向に旋回しながら、ターボファンと同一の中心軸を有する円筒状のダクト1内に導入され、その後も引き続き、旋回しながら進行する。
【0072】
一方、実施の形態3の荷電粒子生成装置の送風機4は、プロペラファンが用いられている。そのため、プロペラファンに対して吸い込まれてプロペラファンを通過する空気には、進行方向(ダクト1の中心軸が延びる方向)に慣性力が作用する。その結果、旋回の度合いが比較的小さくなっている。
【0073】
(実施の形態5)
次に、図6を用いて、本発明の実施の形態5の荷電粒子生成装置が搭載された空気清浄化装置を説明する。
【0074】
図6に示すように、空気清浄化装置は、本体101、沿面放電を行う放電部103、ターボファン型の送風機102、断面が丸みを帯びた四角状のダクト104、および空気を取り入れるための開口105を備えている。なお、図6において、気流の軌跡は矢印106および107によって示されている。
【0075】
本実施の形態においては、ダクト104の中心軸と送風機102のファンの回転中心軸が同一軸である。送風機102は、ファンの回転により、ファンの回転中心軸に直行する方向から周辺の空気を取り込む。それにより、空気はダクト104の中心軸と同じ軸を回転中心軸として旋回しながら上方向へ進行する。また、旋回しながら進行する空気は、放電部103において活性な正イオンおよび負イオン含んだ状態となり、空気放出部としての開口109から空気清浄化装置の本体101の外部へ放出される。なお、開口109は、危険防止のため、網が設置されている。
【0076】
本実施の形態の空気清浄化装置において、矢印106で示す方向に吸い込まれた空気は、放電部103によって生成された高密度のイオンを含む空気となった後、上方向に送り出される。つまり、高い密度のイオンを含む空気が空気清浄化装置の本体101の開口109から遠方まで送り出される。
【0077】
なお、正イオンと負イオンとにより、空間の微生物の殺菌を効率的に行うことができるという技術が、特開2002−95731号公報に開示されている。本実施の形態の空気清浄化装置は、前述の殺菌技術を実現するために適しており、高濃度の正イオンおよび負イオンを目的とする空間に到達させることが可能である。
【0078】
また、本実施の形態においては、ダクト104は、断面が丸みを帯びた四角状の形状となっており、内面がなめらかな面を形成している。このため、内部を空気が旋回し易くなっている。
【0079】
また、本実施の形態の空気清浄化装置は、空気吸い込み口としての開口105を本体101の全周面に沿って設けることが容易な構造であるため、安定した吸気を行なうことができる。
【0080】
なお、開口105にフィルタなどが設けられていれば、除塵した空気を用いて放電を行うことにより、放電部103の汚れおよび劣化を抑制することができる。その結果、本実施の形態の空気清浄化装置によれば、放電を良好に行えることが可能である。
【0081】
また、開口105にフィルタなどが設けられていれば、空気中に含まれる粉塵数を減少させられるので、発生した荷電粒子と粉塵との衝突による荷電粒子の消滅確率を低減させるとともに、高濃度の荷電粒子を得ることが可能になる。
【0082】
(実施の形態6)
次に、図7を用いて、本発明の実施の形態6の空気清浄化装置を説明する。なお、本実施の形態の図7に示す空気清浄化装置は、図6に示す実施の形態5の空気清浄化装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては図6に示す実施の形態5の空気清浄化装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0083】
本実施の形態の空気清浄化装置は、図7に示す構造に加えて、ダクト104の内周面に気流調整用の螺旋状の突起108が設けられている。したがって、本実施の形態の空気清浄化装置においては、螺旋状の突起108によって、ダクト104内の空気の旋回が促進され、乱流の発生が抑制される。その結果、放電部103の近傍の空気の流速が大きくなるため、螺旋状に旋回する気流内に含まれるイオンの濃度が高くなる。
【0084】
(実施の形態7)
次に、図8を用いて、本発明の実施の形態6の空気清浄化装置を説明する。なお、本実施の形態の図8に示す空気清浄化装置は、図7に示す実施の形態6の空気清浄化装置と基本的構造は同様であるため、以下の説明においては図7に示す実施の形態6の空気清浄化装置と異なる部分のみの説明がなされる。
【0085】
本実施の形態の空気清浄化装置と実施の形態6の空気清浄化装置とは、図7と図8とを比較すれば分かるように、送風機102のファンが回転する方向、ならびに、矢印106および107によって示される気流の方向が逆向きであることのみが異なる。
【0086】
本実施の形態の空気清浄化装置は、空気取り入れ口としての開口109から吸い込まれた空気は、ダクト104内を矢印107で示す方向に流れた後、空気放出口としての開口105から矢印106で示す方向に向かって排出される。なお、ダクト104内を下降する空気は、気流調整用の螺旋状の突起108に沿って旋回する。そのため、放電部103の近傍を流れる気流の速度が大きくなるため、螺旋状に旋回する気流内に含まれるイオンの濃度が高くなる。
【0087】
(実施の形態8)
本発明の荷電粒子生成装置の構造が放電素子に用いられた例を図9に示す。
【0088】
図9において、本実施の形態の放電素子は、円筒状のダクト201、放電針からなる放電部202、ターボファン型の送風機203、およびダクトの側面に設けられた空気取り入れ口としての開口204を備えている。なお、図9において、矢印205および206は、気流が流れる軌跡を示している。
【0089】
本実施の形態においては、針電極に負電圧を印加して針電極での放電によって生成された負イオンが上方に高濃度で放出される。本実施の形態の放電素子は、ダクト201と送風機203とが一体化されている。そのため、放電素子全体を薄型化および小型化することが可能である。たとえば、前述の放電素子を携帯電話および電子手帳などの電子機器、健康器具、および各種装置に搭載することが可能であり、本実施の形態の放電素子を用いることにより、強い放電を行うことができかつ小型の装置を製造することができる。
【0090】
なお、本実施の形態の放電素子においては、負イオンを発生させているが、これは正イオン、または、正イオンと負イオンとの混合物でも本実施の形態の放電素子により得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0091】
(実施の形態9)
本発明の荷電粒子生成装置の構造が放電素子に用いられた他の例を図10に示す。
【0092】
図10に示す本実施の形態の放電素子は、図9に示す実施の形態8の放電素子の構造のうち放電部202が放電針から沿面放電電極に変更されるとともに、図9に示す実施の形態8の放電素子の構造にさらに電源用電極端子207が設置されていること以外は、実施の形態8の放電素子と全く同様の構造を有している。
【0093】
放電部202には電源回路(図示せず)から尖頭値2KVの正および負からなる電圧パルスが印加され、放電部202から正イオンおよび負イオンが放出される。
【0094】
なお、本実施の形態の放電素子は、H+(H2O)m(mは任意の自然数)から成る正イオンと、O2-(H2O)n(nは任意の自然数)から成る負イオンとを発生させる。それによって、イオンに空気中に浮遊する浮遊細菌に付着させて、浮遊細菌を除去することができる。さらに、H+(H2O)mとO2-(H2O)nとが反応してH2O2(過酸化水素)またはOH(水酸基ラジカル)が生成されるため、浮遊細菌を殺菌することができる。
【0095】
本実施の形態の放電素子は、プリント基板等に半田付けすることが容易であるため、様々な電気機器へ搭載され得るものである。
【0096】
(実施の形態10)
本発明の荷電粒子生成装置の構造がエアコンディショナに用いられた例を図11に示す。
【0097】
図11に示すように、本実施の形態のエアコンディショナは、壁309に取り付けられており、本体301、吸気口302、ダクト303,313、放電部305および315、ならびに、気流制御用の螺旋状の突起306および316を備えている。
【0098】
本実施の形態のエアコンディショナにおいて、吸気口302から導入された空気は、熱交換機(図示せず)によって温度および湿度の調整が行われ、本体301内部のクロスフローファン(図示せず)によりダクト303および313を通って壁309によって囲まれた室内に送り出される。上記の本実施の形態のエアコンディショナの構造によれば、温度および湿度が制御された空気中で放電が行われることにより、放電の安定化を図ることが可能になる。
【0099】
なお、本実施の形態においては、放電部305はダクト303の内周面に設置されており、ダクト303内部では、気流制御用の螺旋状の突起306によって空気が旋回しながら進行するため、放電部305の電極は高速の気流に曝される。以上の本実施の形態のエアーコンディショナによれば、放電部305の近傍において高濃度のイオンを生成することが可能となる。
【0100】
さらに、矢印304で示されるように、ダクト303からイオンを含む空気が旋回しながら室内に放出されるため、ダクト303の中心軸の延長線上の位置に高濃度のイオンを含む空気を放出することが可能となっている。
【0101】
また、本実施の形態のエアコンディショナにおいては、放電部315はダクト313の風上側の位置に設けられている。この放電部315によって生成されたイオンを含む空気は、気流制御用の螺旋状の突起316に沿って旋回しながらダクト313の中を進行する。そのため、矢印314で示されるように、イオンを含む空気が旋回しながら室内に放出されることにより、ダクト313の延長上の位置に高濃度のイオンを含む空気を送り出すことが可能となっている。
【0102】
なお、本実施例では、ダクト303および313は、その横断面が六角形(正六角形であることが望ましい)となっている。ダクト303および313の横断面の形状は、六角形に限定されるものではなく、円形に近い形状であることが望ましいが、三角形、四角形、五角形、およびその他の多角形であってもよく、ダクト303および313のそれぞれ内において空気が旋回する構造であれば、前述の各実施の形態の荷電粒子生成装置により得られる効果と同様の効果を得ることが可能である。
【0103】
(実施の形態11)
図12は、図10に示す実施の形態9の放電素子が搭載された携帯電話機の一部破断図である。
【0104】
図12に示す携帯電話機は、本体401、内部の電子回路基板402、および図10に示す実施の形態9の荷電粒子生成装置403を備えている。なお、図12において、正および負のイオンを含んだ空気が旋回しながら進行する軌跡は、矢印404によって示されている。
【0105】
本実施の形態の携帯電話機においては、小型の荷電粒子生成装置403により高濃度のイオンが生成され、携帯電話機に設けられた排気用の穴(図示せず)から前述のイオンを外部に放出することが可能である。そのため、携帯電話機に備えられた本荷電粒子生成装置を使用すれば、携帯電話機から放出される荷電粒子によって、空気中の有害な微生物を除去することができる。
【0106】
なお、前述の実施の形態のそれぞれの発明においては、荷電粒子の放電方式は特に限定されるものではなく、たとえば、ワイヤに高電圧を印加する放電方式、および、金属に紫外線等を照射する放電方式が用いられても、前述の各実施の形態に記載の発明によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0107】
さらに、放電方式は、空気中で放電が行われる方式に限定されず、空気以外の特定のガス中で放電が行われる放電方式であって、さらに、液体等を反応させながら放電が行われる放電方式であっても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0108】
また、さらに、放電部を備えたダクトは厳密な円筒でなくとも、空気等を旋回させながら進行させることが可能なダクトであれば、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。たとえば、断面が楕円状のダクト、内面が丸みを帯びたくぼみを有する三角柱状のダクトなどであっても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0109】
また、前述の各実施の形態の荷電粒子生成装置は、空気清浄化装置のための用途のみならず、コピー機、除電装置、およびプラズマを用いたディスプレイなど、プラズマまたはイオン等の荷電粒子を用いた様々な機器に適用され得る。
【0110】
さらに、前述の各実施の形態の荷電粒子生成方法および荷電粒子生成装置を、車両、建築物、または様々な機器に搭載し、殺菌、脱臭、および有害物質の除去などの作用を利用することが可能である。
【0111】
なお、前述の各実施の形態において、荷電粒子としては、H+(H2O)mおよびO2-(H2O)nが用いられる例が挙げられているが、荷電粒子はこれらに限るものではない。放電条件を調整することにより、たとえば、H+、N2+、O2+、O2-、O3-、CO3-、NO2-およびNO3-等の荷電粒子が用いられてもよい。
【0112】
さらに、前述の荷電粒子が水分子等と結合し、比較的大きな分子量を形成する場合においても、前述の各実施の形態に記載の荷電粒子生成装置によって得られる効果と同様の効果を得ることができる。
【0113】
また、前述の技術を、送風する空気中にアルゴンなどの不活性ガスまたは揮発性のガスを混合するなどの手法によって様々な物質に電荷を帯びさせて荷電粒子を大量に生成する技術として応用することも可能である。
【0114】
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれていることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】実施の形態1の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図2】実施の形態2の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図3】実施の形態3の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図4】実施の形態4の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図5】比較例の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図6】実施の形態5の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図7】実施の形態6の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図8】実施の形態7の空気清浄化装置を説明するための図である。
【図9】実施の形態8の放電素子を説明するための図である。
【図10】実施の形態9の放電素子を説明するための図である。
【図11】実施の形態10のエアコンディショナを説明するための図である。
【図12】実施の形態11の携帯電話機を説明するための図である。
【図13】従来の荷電粒子生成装置を説明するための図である。
【図14】実施の形態のイオン濃度の測定を行う実験装置を説明するための図である。
【図15】実施の形態の実験装置によって得られたイオン濃度と放電部からの距離との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0116】
1,104,201,303,313 ダクト、2,103,202,305,315 放電部、3 他のダクト、4,102,203 送風機、5,106,107,205,206,304,314,404 気流の軌跡を示す矢印、6 イオン濃度測定位置、7,108,306,316 螺旋状の突起、8 送風機の回転方向を示す矢印、10 排気口、11 吸気口、105,109,204,302 開口、101,301,401 本体、207 電源用電極端子、309 壁、402 電子回路基板、403 荷電粒子生成装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダクト内に設けられた放電部の近傍を気流が旋回しながら進行する状態で、前記放電部に電圧を印加し、前記放電部の近傍に荷電粒子を生成する、荷電粒子生成方法。
【請求項2】
前記荷電粒子が、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子の双方を含む、荷電粒子生成方法。
【請求項3】
ダクトと、
前記ダクト内に気流を生じさせる送風機と、
前記ダクト内に設けられた放電部とを備え、
前記送風機は、前記ダクト内の前記放電部が設置された位置において、旋回しながら進行する気流を生じさせるように設けられている、荷電粒子生成装置。
【請求項4】
前記ダクトおよび前記送風機は、前記荷電粒子を含む空気が、前記旋回しながら進行する気流となっている状態で、前記ダクト内の空間から前記ダクト外の空間へ放出されるように構成されている、請求項3に記載の荷電粒子生成装置。
【請求項5】
前記荷電粒子が、正に帯電した荷電粒子および負に帯電した荷電粒子の双方を含む、請求項3または4に記載の荷電粒子生成装置。
【請求項6】
ダクトと、
前記ダクト内に気流を生じさせる送風機と、
前記ダクト内に設けられた放電部とを備え、
前記送風機によって前記ダクト内に生じた気流が前記ダクト内を旋回しながら進行するように、前記ダクト内面に溝部または突起部が設けられた、荷電粒子生成装置。
【請求項7】
前記ダクト内に前記送風機のファンが設けられ、
前記ファンの回転中心軸と前記ダクトの中心軸とが同軸である、請求項3〜6のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項8】
前記ダクト内に前記気流中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えた、請求項3〜7のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項9】
前記ダクト内に前記気流の温度または湿度を制御する制御装置をさらに備えた、請求項3〜8のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかの荷電粒子生成装置によって生成された荷電粒子を用いて空気清浄化を行う、空気清浄化装置。
【請求項1】
ダクト内に設けられた放電部の近傍を気流が旋回しながら進行する状態で、前記放電部に電圧を印加し、前記放電部の近傍に荷電粒子を生成する、荷電粒子生成方法。
【請求項2】
前記荷電粒子が、正に帯電した荷電粒子と負に帯電した荷電粒子の双方を含む、荷電粒子生成方法。
【請求項3】
ダクトと、
前記ダクト内に気流を生じさせる送風機と、
前記ダクト内に設けられた放電部とを備え、
前記送風機は、前記ダクト内の前記放電部が設置された位置において、旋回しながら進行する気流を生じさせるように設けられている、荷電粒子生成装置。
【請求項4】
前記ダクトおよび前記送風機は、前記荷電粒子を含む空気が、前記旋回しながら進行する気流となっている状態で、前記ダクト内の空間から前記ダクト外の空間へ放出されるように構成されている、請求項3に記載の荷電粒子生成装置。
【請求項5】
前記荷電粒子が、正に帯電した荷電粒子および負に帯電した荷電粒子の双方を含む、請求項3または4に記載の荷電粒子生成装置。
【請求項6】
ダクトと、
前記ダクト内に気流を生じさせる送風機と、
前記ダクト内に設けられた放電部とを備え、
前記送風機によって前記ダクト内に生じた気流が前記ダクト内を旋回しながら進行するように、前記ダクト内面に溝部または突起部が設けられた、荷電粒子生成装置。
【請求項7】
前記ダクト内に前記送風機のファンが設けられ、
前記ファンの回転中心軸と前記ダクトの中心軸とが同軸である、請求項3〜6のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項8】
前記ダクト内に前記気流中の粉塵を除去するフィルタをさらに備えた、請求項3〜7のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項9】
前記ダクト内に前記気流の温度または湿度を制御する制御装置をさらに備えた、請求項3〜8のいずれかに記載の荷電粒子生成装置。
【請求項10】
請求項3〜9のいずれかの荷電粒子生成装置によって生成された荷電粒子を用いて空気清浄化を行う、空気清浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2006−183(P2006−183A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176932(P2004−176932)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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