説明

荷電粒子線ビームの制御用電磁石及びこれを備えた照射治療装置

【課題】回転ガントリの小型化及び軽量化を可能とし、回転ガントリの高精度な回転制御、ターゲットの高精度な照射を可能にすること。
【解決手段】本発明では、照射治療装置の回転ガントリに格納され、荷電粒子線ビームの軌道を変える偏向磁場と、荷電粒子線ビームの軌道中心から遠ざかる発散成分を抑える集束磁場とを形成して、加速器で加速された荷電粒子線ビームをターゲットに導く荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、偏向磁場と集束磁場を合成磁場として同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定された超伝導コイル41:42を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療技術に係り、特に、放射線治療で用いる荷電粒子線ビームの制御用電磁石及びこれを備えた照射治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、主に癌患者を対象とする放射線治療において、高エネルギーに加速した陽子線や炭素イオンなどの重粒子線(荷電粒子線)の利用が注目されている。荷電粒子線を利用した放射線治療)では、X線、ガンマ線、電子線或いは中性子線等の粒子線を利用した放射線治療と比べ、体内における線量分布や線量ピークを調節しやすい。このため、体表面及び体内患部周囲の正常細胞の損傷を抑えつつターゲットとなる癌患部などを効果的に治療することが可能となる。
【0003】
初期の照射治療装置は、荷電粒子線ビームの照射部が固定され、ターゲットに対して一方向からの照射のみが可能となるものが主流であった。しかし、正常細胞の損傷を抑えつつ癌患部を効果的に治療するには、病巣部の形状やその体内深度に応じた最適な線量値及び線量分布を計画することが重要となる。そのため、荷電粒子線ビームの照射部を回転させることにより、ターゲットを多方向から照射する言わば“回転式”の照射治療装置が提案された(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−47287号公報
【特許文献2】特開平9−192244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転式の照射治療装置において、病巣部の形状やその体内深度に応じた最適な線量値及び線量分布にてターゲットを照射するためには、回転ガントリの高精度な回転制御が必要となる。しかしながら、回転ガントリの最外殻(最外径)が大きくなるほど、又、回転ガントリが重くなるほど、回転ガントリの高精度な回転制御は困難になってくる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、回転ガントリの小型化及び軽量化が可能となり、回転ガントリの高精度な回転制御、ターゲットの高精度な照射が可能となる荷電粒子線ビームの制御用電磁石及びこれを備えた照射治療装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するため、本発明に係る荷電粒子線ビームの制御用電磁石では、照射治療装置の回転ガントリに格納され、荷電粒子線ビームの軌道を変える偏向磁場と、荷電粒子線ビームの軌道中心から遠ざかる発散成分を抑える集束磁場とを形成して、加速器で加速された荷電粒子線ビームをターゲットに導く荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、偏向磁場と集束磁場を合成磁場として同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定された超伝導コイルを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る照射治療装置では、上述した荷電粒子線ビームの制御用電磁石を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、回転ガントリの小型化及び軽量化が可能となり、回転ガントリの高精度な回転制御、ターゲットの高精度な照射が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る照射治療装置の第1実施形態を示す要部縦断面図。
【図2】図1の複合型超伝導電磁石の分解斜視図。
【図3】本発明の経緯説明図であり、従来の照射治療装置の要部縦断面図。
【図4】本発明の経緯説明図であり、従来の荷電粒子線ビームの制御用電磁石を示す分解斜視図であり、(A)は常電導偏向電磁石を示す図、(B)は常電導集束電磁石を示す図。
【図5】本発明に係る照射治療装置の第2実施形態を示す図であり、複合型超伝導電磁石の縦断面図(図1のII−II線断面図)。
【図6】本発明に係る照射治療装置の第3実施形態を示す図であり、複合型超伝導電磁石の分解斜視図。
【図7】図1の複合型超伝導電磁石の好ましい形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る照射治療装置の第1実施形態を示す要部縦断面図である。
【0013】
照射治療装置1は、荷電粒子線ビームの照射部がターゲット(例えば、患者の癌患部)の周囲で回転し、任意の回転位置からターゲットを照射する回転式の照射治療装置である。
【0014】
この照射治療装置1は、陽子や炭素イオンなどの荷電粒子線を数百MeVの高エネルギーまで加速し、ビーム状に集束・成型してターゲットに導くビーム輸送路を形成するように構成され、加速器としてのシンクロトロン(図示省略)、ビームパイプ2、回転ガントリ3及び複合型超伝導電磁石4(荷電粒子線ビームの制御用電磁石)を主要な構成としている。
【0015】
ビームパイプ2は、その内部が略真空に維持されており、シンクロトロンで加速された荷電粒子線をターゲットPへと導くビーム輸送路である。
【0016】
回転ガントリ3は、ビーム輸送路の終端となり荷電粒子線ビームの出口となる照射部5を保持しながら回転するように構成され、任意の回転位置からターゲットPに荷電粒子線ビームを照射する。
【0017】
複合型超伝導電磁石4は、回転ガントリ3の内部で間隔を置いて3体設けられている。この複合型超伝導電磁石4は、荷電粒子線ビームのビーム軌道を制御する磁場として、偏向磁場(2極磁場)と集束磁場(4極磁場)の2つの磁場を言わば重畳的な合成磁場として同時に形成する。
【0018】
複合型超伝導電磁石4の偏向磁場は、ビームパイプ2を通過する荷電粒子線ビームの軌道を強制的に変え、荷電粒子線ビームが回転ガントリ3に入射して照射部5から射出されるまでに、そのビーム軌道を円弧状に90℃向きを変えるように調節されている。かかる偏向磁場の調節は、複合型超伝導電磁石4の配置によっても行われている。
【0019】
また、偏向磁場とともに形成される集束磁場は、ビームパイプ2を通過する荷電粒子線ビームの軌道中心(ビーム進行方向)から遠ざかる発散成分を強制的に抑え、荷電粒子線ビームが回転ガントリ3に入射して照射部5から射出されるまでにその指向性が高まるように調節されている。
【0020】
図2は複合型超伝導電磁石4の分解斜視図である。
【0021】
複合型超伝導電磁石4は、互いに対峙する第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42を用いて構成され、ビームパイプ2の周囲を取り囲むように互いに近接して配置される。
【0022】
第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42は、多層で構成されており、ビームに近い側に主コイル、ビームから遠い側にアクティブシールドコイルが配置構成され、主コイルに同じ方向の電流供給、アクティブシールドコイルには逆方向の電流供給を行い、中心に偏向、収束磁場を形成し、かつ外側には磁場を出さないよう構成される。
【0023】
第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42は、それぞれ荷電粒子線ビームの軌道に沿った祖と密の非対称構造とされ、この非対称構造によって2極磁場である偏向磁場とともに4極磁場である集束磁場を重畳的に形成するように構成される。
【0024】
更に、荷電粒子線ビームの軌道に沿って設定される第1超伝導コイル41の非対称構造と第2超伝導コイルの非対称構造についても非対称に配置され、このような非対称配置よって集束磁場(4極磁場)の符号(正/負)が反転するように構成される。
【0025】
次に、本発明に至った経緯ならびの本発明の効果を説明する。
【0026】
図3は従来の照射治療装置の要部縦断面図である。図4は従来の照射治療装置に設けられる荷電粒子線ビームの制御用電磁石を示す分解斜視図であり、(A)は常電導偏向電磁石を示す図、(B)は常電導集束電磁石を示す図である。
【0027】
従来の照射治療装置1aにあっては、図3に示すように、荷電粒子線ビームの制御用電磁石が常電導偏向電磁石10aと常電導集束磁場20aの2つの独立した電磁石を用いて構成されている。
【0028】
シンクロトロンで高エネルギーに加速された荷電粒子線ビームは、回転ガントリ3aに案内されて各々の常電導偏向電磁石10aの偏向磁場(2極磁場)で偏向され、そのビーム軌道が円弧を描いて90°向きを変える。そして、荷電粒子線ビームは、患者の周りで回転している回転ガントリ3aの照射部5aから射出され、多方向からターゲットPに向かって入射する。このとき、回転ガントリ3aに案内された荷電粒子線ビームは、常電導集束電磁石20aの各々の集束磁場(4極磁場)で集束され、軌道から遠ざかる発散成分が抑えられて指向性の高いビームに成形される。
【0029】
常電導偏向電磁石10aは、図4(A)に示すように、互いに対峙する第1常電導コイル11a及び第2常電導コイル12aにより構成されており、同じ方向に電流を流すことにより偏向磁場(2極磁場)が形成される構成となっている。一方、常電導集束電磁石20aは、回転対称にて90℃毎に配置される4つの超伝導コイル21a〜24aにより構成されており、隣り合う常電導コイルに逆向きの電流を流すことにより集束磁場(4極磁場)が形成される構成となっている。
【0030】
ここで、回転ガントリ3aに案内された荷電粒子線ビームがターゲットPに導かれるまでに描くビーム軌道半径は、偏向磁場の強度に大きく依存する。このため、偏向磁場が強ければ強いほど、小さいビーム軌道半径で荷電粒子線ビームを偏向させることができ、荷電粒子線ビームの偏向場である回転ガントリ3aの小型化や軽量化を図ることができるようになる。つまり、回転ガントリ3aの回転制御の高精度化が図られる。
【0031】
従来の照射治療装置1aは、常電導偏向電磁石10aを用いて荷電粒子線ビームを偏向させるものとなっており、荷電粒子線ビームのビーム軌道半径の縮小、即ち、回転ガントリ3aの小型化や軽量化に限界がある。また、回転ガントリ3aの大型化は、設置スペースにも影響し、低コスト化を図りにくくなる点も無視できない。
【0032】
加えて、従来の照射治療装置1aは、常電導集束電磁石20aを用いて荷電粒子線ビームを集束させるものとなっているところ、この常電導集束電磁石20aを用いることなく荷電粒子線ビームを集束できれば、回転ガントリ3aの更なる小型化や軽量化を実現できるようになる。
【0033】
そこで、回転ガントリの小型化及び軽量化が可能となり、回転ガントリの高精度な回転制御、ターゲットの高精度な照射が可能となる照射治療装置を実現すべく、以下の各手法が考えられた。
【0034】
(i)先ず、回転ガントリ内部のビーム輸送路に配置される常電導偏向電磁石を超伝導偏向電磁石に置き換える。超伝導偏向電磁石を用いると常電導電磁石に比べて強力な磁場を作り出せることから、ビーム軌道半径の縮小、即ち、回転ガントリの小型化や軽量化に有利となる。
【0035】
(ii)更に、荷電粒子ビームの偏向とともに、荷電粒子ビームの集束も行う言わば複合的な磁場を形成するように超伝導電磁石の構造を特殊化する。こうすることで、集束磁場(4極磁場)を形成するための集束電磁石ならびにその保持構造の配置スペースが不要となり、回転ガントリの一層の小型化や軽量化を望める。
【0036】
(iii)更に、複合磁場型超伝導電磁石は、鉄ヨークを用いない空芯タイプ(空心コイル)とする。空心タイプとすることにより、超伝導電磁石の重量軽減が図られる。
【0037】
本実施形態の照射治療装置1は、(i)〜(iii)に列挙した知見に基づいて為され、
(1)偏向磁場と集束磁場を合成磁場として同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定された第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42を有する複合型超伝導電磁石4(荷電粒子線ビームの制御用電磁石)を備える。即ち、偏向磁場用の電磁石と集束用の電磁石を別個に用意することなく荷電粒子線ビームの偏向と集束が可能となり、又、空心タイプとしても強力な磁場が得られる。従って、回転ガントリの小型化及び軽量化が可能となり、回転ガントリの高精度な回転制御、ターゲットの高精度な照射が可能となる。
【0038】
(2)また、複合型超伝導電磁石4の第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42は、多層で構成されており、ビームに近い側に主コイル、ビームから遠い側にアクティブシールドコイルが配置構成され、主コイルに同じ方向、アクティブシールドコイルに逆方向の電流供給が可能に構成される。このため、中心には偏向及び収束磁場を形成しつつ、外側の漏れ磁場を効果的に抑制できる。その結果、周囲の構造物との磁力的な相互作用が低減され、偏向及び集束の機能を良好に維持できる。
【0039】
(第2実施形態)
図5は本発明に係る照射治療装置の第2実施形態を示す図であり、複合型超伝導電磁石の縦断面図(図1のII−II線断面図)である。
【0040】
本実施形態は、第1実施形態の照射治療装置1における複合型超伝導電磁石に構成を追加した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号に「A」を付して説明する。
【0041】
本実施形態の複合型超伝導電磁石4Aは、第1実施形態の構成に加え、鉄ヨーク6A及び第二の複合型超伝導電磁石7Aを有する。
【0042】
鉄ヨーク6Aは、第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42の外側を覆うように設けられている。
【0043】
第二の複合型超伝導電磁石7Aは、互いに対峙する第3超伝導コイル71A及び第4超伝導コイル72Aにより構成される。
【0044】
第3超伝導コイル71A及び第4超伝導コイル72Aは、鉄ヨーク6の外側を覆うように設けられており、超伝導性のアクティブシールドコイルにより構成され且つ偏向磁場(2極磁場)とともに集束磁場(4極磁場)を重畳的に同時に形成するように構成される。即ち、第3超伝導コイル71A及び第4超伝導コイル72Aは、第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42と同様の構成を有している。
【0045】
次に、効果を説明する。
【0046】
本実施形態の照射治療装置にあっては、第1実施形態の(1)及び(2)の効果に加え、次の効果を得ることができる。
【0047】
(3)複合型超伝導電磁石4Aは、第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイルの外側を覆う鉄ヨーク6Aを有する。このため、ビームパイプ2の内部の磁場が高められることに加えて、磁気シールドの作用によって第1超伝導コイル41及び第2超伝導コイル42から染み出る漏れ磁場を低減でき、第1実施形態の(2)の効果を高めることができる。
【0048】
(4)また、複合型超伝導電磁石4Aは、鉄ヨーク6Aを覆うように設けられ、偏向磁場とともに集束磁場を合成磁場として重畳的に同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定され、且つ、アクティブシールドコイルとして構成された第二の複合型超伝導電磁石7Aを有する。このため、荷電粒子線ビームの偏向機能及び集束機能が増幅することに加え、鉄ヨーク6Aから染み出す漏れ磁場をも低減され、第1実施形態の(1)及び(2)の効果を一層高めることができる。
【0049】
(第3実施形態)
図6は本発明に係る照射治療装置の第3実施形態を示す図であり、複合型超伝導電磁石の分解斜視図である。
【0050】
本実施形態は、第1実施形態の照射治療装置1における複合型超伝導電磁石4の構成を変更した例である。なお、第1実施形態と同様の構成は同一符号を付して説明を省略し、第1実施形態の構成を変更し或いは新たに追加した構成は符号に「B」を付して説明する。
【0051】
本実施形態の照射治療装置4Bは、図6に示すように、二重構造となっており、内側を構成する超伝導偏向電磁石8Bと、外側を構成する2体以上の超伝導集束電磁石9Bとを用いて構成される。なお、超伝導偏向電磁石81B及び超伝導集束電磁石82Bは、互いに接近して重なり合うようにオーバーラップして配置される。
【0052】
超伝導偏向電磁石8Bは、荷電粒子線ビームのビーム軌道を強制的に変える偏向磁場(2極磁場)を形成するように構成される。
【0053】
超伝導集束電磁石9Bは、荷電粒子線ビームの軌道中心から遠ざかる発散成分を抑える集束磁場(4極磁場)を形成するように配置された4つの超伝導コイル91B〜94Bを有する。これら4つの超伝導コイル91B〜94Bは、回転対称となるように90℃毎に配置されるとともに、何れも超伝導偏向電磁石8Bの長手方向と重なり合うように配置される。
【0054】
2体の超伝導集束電磁石9Bは、荷電粒子線ビームの軌道に沿って間隔を置いて配置されており、独立して励磁電流の供給を受けるように構成されている。また、超伝導偏向電磁石8Bと超伝導集束電磁石9Bについても、独立して励磁電流の供給を受けるように構成されている。
【0055】
次に、効果を説明する。
【0056】
本実施形態の照射治療装置にあっては、第1実施形態の(1)及び(2)の効果に加えて、次の効果を得ることができる。
【0057】
(5)複合型超伝導電磁石4Bは、同心状の2重構造を有し、内側を構成して偏向磁場を形成する超伝導偏向電磁石8Bと、外側を構成して集束磁場を形成する超伝導集束電磁石9Bとを有し、この超伝導偏向電磁石8Bと超伝導集束電磁石9Bは独立して励磁電流の供給を受けるように構成されている。このため、偏向磁場と集束磁場を個別に設定できるので、荷電粒子線ビームの偏向制御と集束制御を高精度且つ容易に行えるようになる。
【0058】
(6)複合型超伝導電磁石4Bを構成する超伝導集束電磁石9Bは、荷電粒子線ビームの軌道に沿って複数設けられ、各超伝導集束電磁石9Bは独立して励磁電流の供給を受けるように構成されている。このため、集束磁場を精細に設定できるので、(5)の効果が高められる。
【0059】
以上、本発明に係る照射治療装置及びその荷電粒子線ビームの制御に用いる超伝導電磁石を第1実施形態〜第3実施形態に基づき説明してきたが、具体的な構成については、これらの実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載の発明の要旨を逸脱しない限り設計の変更や追加等は許容される。
【0060】
例えば、第1実施形態〜第3実施形態で例示した各種の複合型超伝導電磁石の形状は、荷電粒子線ビームの効果的な輸送の観点から、荷電粒子線ビームの軌道に沿った形状とするのがよい。なお、図7は、第1実施形態の複合型超伝導電磁石の好ましい形態であり、電粒子線ビームの軌道に沿った形状とした例を示す図である。
【0061】
また、複合型超伝導電磁石は、集束磁場(4極磁場)の磁場成分が部分的に強弱変化を呈するような構成としてもよい。
【0062】
また、複合型超伝導電磁石は、集束磁場として4極磁場よりも高次の磁場(6極以上)を形成するようにしてもよい。
【0063】
また、複合型超伝導電磁石は、回転ガントリの内部に3体設ける例としたが、複合型超伝導電磁石の数に制限はない。
【0064】
なお、荷電粒子線を加速する加速器としては、シンクロトロンのほか、サイクロトロンや直線型加速器など、任意の加速手段を適用し或いは各種の加速器を組み合わせたものでもよい。
【符号の説明】
【0065】
P……ターゲット, 1……照射治療装置, 2……ビームパイプ, 3……回転ガントリ, 4、4A,4B……複合型超伝導電磁石, 41……第1超伝導コイル, 42……第2超伝導コイル, 5……照射部 6……鉄ヨーク, 71B……第3超伝導コイル, 72B……第4超伝導コイル, 8B……超伝導偏向電磁石, 9B……超伝導集束電磁石, 91B〜94B……超伝導コイル.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射治療装置の回転ガントリに格納され、荷電粒子線ビームの軌道を変える偏向磁場と、荷電粒子線ビームの軌道中心から遠ざかる発散成分を抑える集束磁場とを形成して、加速器で加速された荷電粒子線ビームをターゲットに導く荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
前記偏向磁場と集束磁場を合成磁場として同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定された超伝導コイルを有することを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項2】
請求項1に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
前記超伝導コイルは、アクティブシールドコイルとして構成されることを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
前記超伝導コイルの外側を覆う鉄ヨークを有することを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項4】
請求項3に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
前記鉄ヨークを覆うように設けられ、偏向磁場と集束磁場を合成磁場として同時に形成するとともに、荷電粒子線ビームの軌道に沿って磁場の向きが切り替わるように形状設定され、且つ、アクティブシールドコイルとして構成された超伝導コイルを有することを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項5】
請求項1に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
同心状の2重構造を有し、内側を構成して偏向磁場を形成する超伝導偏向電磁石と、外側を構成して集束磁場を形成する超伝導集束電磁石とを有し、この超伝導偏向電磁石と超伝導集束電磁石は互いに独立して励磁電流の供給を受けるように構成されることを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項6】
請求項5に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石において、
前記超伝導集束電磁石は、荷電粒子線ビームの軌道に沿って独立して複数設けられ、各超伝導集束電磁石は互いに独立して励磁電流の供給を受けるように構成されることを特徴とする荷電粒子線ビームの制御用電磁石。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6何れか1項に記載の荷電粒子線ビームの制御用電磁石を備えることを特徴とする照射治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−72717(P2011−72717A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229596(P2009−229596)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、産学共同シーズイノベーション化事業 顕在化ステージにおける研究課題「交流超伝導技術を用いた重粒子線がん治療装置の高性能・小型化」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504151365)大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構 (125)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】