荷電粒子線装置
【課題】
本発明の目的は、上述のような画質の違いによる位置ずれ検出精度の低下を防ぎ、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化した場合においても、容易にかつ高精度に、光軸の自動調整を実現できる荷電粒子線装置の提供にある。
【解決手段】
光軸調整用のアライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に焦点評価、或いは調整を行うか、又はアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行う荷電粒子線装置を提案する。
本発明の目的は、上述のような画質の違いによる位置ずれ検出精度の低下を防ぎ、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化した場合においても、容易にかつ高精度に、光軸の自動調整を実現できる荷電粒子線装置の提供にある。
【解決手段】
光軸調整用のアライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に焦点評価、或いは調整を行うか、又はアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行う荷電粒子線装置を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置に係り、特に荷電粒子光学系の光軸のずれを高精度に補正して、高分解能像を安定に得るのに好適な荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く収束された荷電粒子線を試料上で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置では、レンズに対し光軸にずれがあるとレンズ収差が発生し試料像の解像度が低下するため、分解能の高い試料像を得るためには高精度な軸調整が必要である。この軸調整を自動で行うための技術として、特許文献1,2に開示されているような技術がある。
【0003】
一般的な軸調整は、対物レンズ等の光学素子の条件を変化させたときの試料像の移動量が小さくなるように、軸調整用の偏向器(アライナー)を調整する。これに対して、特許文献1,2に開示の技術によれば、アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させ、それぞれの条件下での試料像間のずれ量を算出し、そのずれ量を方程式に当てはめて、アライメント偏向器の動作条件を決定する手法が記載されている。この手法により、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化しても、容易に光軸の調整が可能となり、高精度に光軸調整の自動化を実現できる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−352758号公報
【特許文献2】特開2003−22771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されている手法においても、光軸調整の自動化は実現できるが、更なる高精度化の要求がある。アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させた場合、得られる試料像にボケ等の画質劣化が生じるため、位置ずれ量が正確に算出できない場合がある。
【0006】
アライメント条件のずれと画像ボケの関係に関して、図8を用いて説明する。801は、アライメント条件にずれがなく光軸が完全に調整されている状態で、焦点制御用の対物電流値を振った場合のビーム径変化である。ビーム径が最小になった状態が焦点合致の状態である。この場合に、対物電流値を焦点合致の状態から+ΔF,−ΔF振った状態では、ビーム径が両者ともAとなり、同じになるため、画像のボケもほぼ同じ状態になる。したがって、+ΔFで撮影した画像と−ΔFで撮影した画像の画質は、ほぼ同じ状態になり、2枚の画像間の位置ずれ検出も良好に行える。
【0007】
これに対して、802はアライメント条件がずれている状態である。この場合、+ΔFではB、−ΔFではCとビーム径が大きく異なる。つまり、2枚の画像のボケ状態が大きく異なり、画質に大きな違いが生じるため、2画像間の位置ずれ検出の精度が低下することになる。
【0008】
本発明の目的は、上述のような画質の違いによる位置ずれ検出精度の低下を防ぎ、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化した場合においても、容易にかつ高精度に、光軸の自動調整を実現できる荷電粒子線装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、光軸調整用のアライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に焦点評価、或いは調整を行うか、又はアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行う荷電粒子線装置を提案する。
【0010】
このような構成によれば、荷電粒子線の光学条件に関わらず、精度の高い軸調整を自動で実行することが可能となる。なお、本発明の他の構成については、発明の実施形態の欄にて詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したように本発明によれば、荷電粒子線装置の光学条件因らず精度の高い軸調整を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極1と第一陽極2の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流で一次電子線4が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され、陰極1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、第一収束レンズ制御電源21で制御された第一収束レンズ5で収束され、絞り板8で一次電子線の不要な領域が除去された後に、第二収束レンズ制御電源22で制御された第二収束レンズ6、および対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により試料10に微小スポットとして収束される。対物レンズ7は、インレンズ方式,アウトレンズ方式、およびシュノーケル方式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。また、試料に負の電圧を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式も可能である。さらに、各々のレンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。
【0014】
一次電子線4は、走査コイル9で試料10上を二次元的に走査される。一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次信号12は、対物レンズ7の上部に進行した後、二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器11により、一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。二次信号検出器13で検出された信号は、信号増幅器14で増幅された後、画像メモリ25に転送されて画像表示装置26に試料像として表示される。
【0015】
走査コイル9の近傍もしくは同じ位置に1段の偏向コイル51(対物レンズ用アライナー)が配置されており、対物レンズに対するアライナーとして動作する。また、対物レンズと絞り板との間には、XおよびY方向の非点を補正するための8極の非点補正コイル
52(非点補正器)が配置される。非点補正コイルの近傍、もしくは同じ位置には非点補正コイルの軸ずれを補正するアライナー53が配置される。
【0016】
画像表示装置26には、試料像のほかに電子光学系の設定や走査条件の設定を行う種々の操作ボタンの他、軸条件の確認や自動軸合わせの開始を指示するボタンを表示させることができる。
【0017】
一次電子線が対物レンズの中心からずれた位置を通過した状態(軸がずれた状態)でフォーカス調整を行うと、フォーカス調整に伴い視野の動きが生じる。オペレータが軸ずれに気が付いた場合、表示装置に表示された処理開始ボタンをマウスでクリックするなどの操作により軸合わせ処理の開始を指示することができる。オペレータから軸合わせの指令を受けると、コンピュータ40は、以下の実施例で説明するようなフローに沿って処理を開始する。
【0018】
なお、図1の説明は制御プロセッサ部が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次信号検出器13で検出される検出信号を制御プロセッサに伝達したり、制御プロセッサから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、画像メモリを有し走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0019】
試料10はステージ15にセットされる。コンピュータ40からの制御信号によってステージ15が移動することにより試料上またはステージ上の任意の位置に移動することができる。またステージ上にはビーム調整を行うための専用パターンである軸調整用パターン16を配置することができる。
【0020】
画像表示装置26と入力装置(マウスやキーボードなど)42によって予め自動運転の条件を設定することが可能である。自動運転の条件は記憶装置41にレシピファイルとして保存される。レシピファイルには自動軸調整を実行するための条件も含まれる。
【0021】
図2の処理フローについて、以下に詳細に説明する。
【0022】
第1ステップ:対物レンズ7の現在の条件、あるいは、現在の条件に基づいて決められる(例えば、現在のフォーカス条件からフォーカスを少しずらした条件)を条件1として対物レンズ7に設定する。次に、アライナー51の現在の条件、あるいは、予め決められた条件をアライナー51の条件1として設定する。この対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0023】
第2ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。
【0024】
第3ステップ,第4ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。そして、対物レンズの条件をステップ1とステップ2と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0025】
第5ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0026】
第6ステップ:画像1と画像2の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0027】
第7ステップ,第8ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0028】
図2の処理フローは、動作の理解が容易な手順で記載したが、画像の取り込み順番は処理に影響を与えない。実際の処理では、処理の高速化を図るために、例えば、対物レンズ条件7を条件1にして、画像1と画像3とを連続して取り込み、次に、対物レンズ条件7を条件2にして、画像2と画像4とを連続して取り込むことが可能である。電子顕微鏡の対物レンズは、通常磁界レンズで構成され、インダクタンスが大きいため、インダクタンスが小さく高速制御が可能なアライナーを連続制御する方法が実用上有効となる。
【0029】
図2の処理フローで対物レンズに対する軸ずれが補正(修正)される原理を、図3により説明する。軸がずれた状態において、アライナー51の位置(偏向面)でのビーム離軸量をWAL(複素変数:XAL+j・YAL,j:虚数単位)、この位置で光軸に対するビームの傾きをWAL′(複素変数)とすると、電子光学理論(近軸理論)に基づく軌道計算が可能である。磁界形対物レンズの場合、レンズ電流値をI1からI2へとΔI(=I1−I2)だけ変化させたときに生じる像ずれ量(視差)をΔWi(複素変数:ΔXi+j・ΔYi)とすると、軌道計算により、ΔWiは次のように表すことができる。
(数1)
ΔWi=K・ΔI・(WAL・A+WAL′・B) (1)
ここで、K,A,Bは、測定の際の軸ずれ状態と、対物レンズの動作条件(加速電圧や対物レンズの焦点距離、あるいは対物レンズの物点位置など)で決まるパラメータ(複素数)である。対物レンズに対して軸がずれた状態とは、式(1)においてΔWiが0以外の値を持つことを意味する。したがって、従来は、対物レンズの電流をΔIだけ周期的に変化させて、このときの像ずれΔWiをオペレータが認識し、像ずれを無くすようにアライナーの条件を調整していた。すなわち、軸ずれが補正されるアライナーの最適値とは、式(1)の右辺がΔIによらず0となる条件を指している。この条件を書き出すと、
(数2)
(WAL・A+WAL′・B)=0 (2)
となり、この条件を満たすアライナーの動作条件が最適値となる。軸ずれがあるとアライナー偏向面では入射ビームの傾きも伴うため、これをWAL0′とし、アライナーによる偏向角(制御値)をWAL1′とすると
(数3)
WAL′=WAL0′+WAL1′ (3)
で表される。よって、式(2)を満たすアライナーの条件WAL1′(アライナーの最適値)を求めることが軸調整機能の目的となる。アライナーを電磁コイルで構成する場合には、偏向角WAL1′はアライナーのコイル電流に比例する。以上の関係から式(1)を書き直すと、
(数4)
ΔWi=ΔI・(A1+WAL1′・B1) (4)
が得られる。ここで、A1,B1は以下の項をまとめたものである。
(数5)
A1=K・(WAL・A+WAL0′・B) (5)
(数6)
B1=K・B (6)
式(4)より、アライナーの最適値WAL1′は
(数7)
WAL1′=−A1/B1 (7)
で与えられるため、A1とB1を求めることにより、アライナーの最適値を計算することができる。式(4)において、ΔIは対物レンズの電流変化量であるから、既知の値として予め決めることができる。したがって、アライナーを予め定めた任意の2条件に設定し、その各々においてΔIに対する視差ΔWiを画像処理により検出すると、式(4)より未知数A1,B1を求めるための方程式が得られる。この方程式からA1,B1を解くことができるため、アライナーの最適条件を式(7)から決定することができる。
【0030】
即ち、アライナーを予め定めた任意の2条件に設定したときに得られる視差ΔWiが小さくなる(理想的にはゼロとなる)ような条件でA,Bのような未知数のn次方程式を解くことによって、電子光学系の動作条件に依存しない条件を導き出すことができる。この条件に基づいてアライナー条件(アライナーの励磁条件)を導き出すことができる。
【0031】
なお、アライナー51は、少なくとも対物レンズ主面におけるビーム通過位置を二次元的に制御可能な配置、あるいは構造を有している。仮に、アライナーによるビームの偏向支点が対物レンズ主面近傍に存在すると、対物レンズに対する軸ずれの状態が制御できなくなるためである。即ち本発明実施例のように電磁コイルを用いたアライメント偏向器
(アライナー)の場合、光学条件によって変化するコイルへの励磁電流(偏向信号)を検出することが可能になる。
【0032】
例えば対物レンズの励磁条件の変化や、試料に印加するリターディング電圧の大きさによって、変化する励磁電流を、観察時の光学条件に基づいて検出することができるので、光学条件ごとに異なるパラメータを登録しておく必要がなくなり、また経時変化により、ビームの条件が変化したとしても、その変化した状態における適正なアライメントコイルへの励磁電流を検出することが可能になる。
【0033】
このように本発明実施例によれば、変化する軸ずれの状態や荷電粒子光学系の光学素子の動作条件(例えば、ビームエネルギーや焦点距離,光学倍率など)に対応が可能であり、軸調整の自動化を容易に実現することが可能になる。
【0034】
一方、非点補正器52についても、本実施例では自動軸調整が可能である。非点補正器では、光軸と直交する面内において、ビームを収束させる作用とビームを発散させる作用とが方向を異にして発生する。したがって、ビームが非点補正場の中心を通過していないと、非点補正場中心からのずれに対応した方向に偏向作用を受けることになる。このとき、非点収差の補正に連動して偏向作用も変化するため、非点収差の調整操作に連動して像が移動し、調整操作が困難になる。
【0035】
これを補正するために、従来は、非点補正器52の信号(Xstg,Ystg)に連動した信号を別のアライナー53に入力して、アライナー53で発生する像の動きでもって非点補正器による像の動きをキャンセルするようにしている。
【0036】
このとき、アライナー53に入力する信号(複素変数)をWs1とすると、Ws1は次の式で表される。
(数8)
Ws1=Ksx・Xstg+Ksy・Ystg (8)
ここで、Ksx,Ksyは複素変数で表される係数である。
【0037】
いま、非点補正器の信号(Xstg,Ystg)をそれぞれΔXstg,ΔYstgだけ別々に変化させたとすると、各々の変化に対応する観察像の動き(視差)ΔWix,
ΔWiyは、それぞれ次のようになる。
(数9)
ΔWix=ΔXstg・(Asx+Bx・Ksx) (9)
(数10)
ΔWiy=ΔYstg・(Asy+By・Ksy) (10)
ここで、Asx,Asyは、非点補正器に対するビームの軸ずれに対応してその値が決まる複素変数である。Ksx,Ksyは、装置で制御する軸調整パラメータ(複素変数)を表す。また、Bx,Byは、アライナーの位置や偏向感度,電子光学系の条件などで決まる複素変数である。従来は、非点補正器にそれぞれΔXstg,ΔYstgの変調信号を加えて、そのときの像の動き(ΔWix,ΔWiy)をオペレータが認識し、これを無くすようにパラメータKsx,Ksyの手動調整が行われていた。
【0038】
これが、非点補正器に対する軸調整操作である。すなわち、非点補正器に対して軸を合わせる操作は、式(9)、および式(10)において、ΔXstg,ΔYstgによらずΔWix,ΔWiyが0となる係数Ksx,Ksyを求めることに対応する。なお、
ΔWix,ΔWiyはゼロになることが理想であるが、それには限られずゼロに近くなるようにΔWを小さくするような条件で係数を求めるようにしても良い。式(9)および式(10)の形式は、先に示した式(4)と全く同じであり、対物レンズの電流値変化
(ΔI)を非点補正器の信号変化(ΔXstg,ΔYstg)に置き換えれば、視差検出とその演算処理によりアライナー53に対する最適制御パラメータ(Ksx,Ksy)を求めることができる。このための処理フローを図4に示す。非点補正器による視野ずれを補正するアライナーは、試料上におけるビームの位置を補正するためのものであるから、試料上での位置が制御できる位置に配置されなければならない。
【0039】
非点補正器に対する軸ずれの大きさは、非点補正器の信号にΔXstg,ΔYstgの変化を与えたときの像ずれ(視差)により定量化できる。そのため、本実施例では、先に示した対物レンズに対する軸ずれの場合と同様、光軸の状態が変化する可能性のある操作(加速電圧の変化や試料交換,フォーカス位置の変更など)を行ったときに、視差検出を行い、オペレータに軸ずれの状態を表示して知らせることができる。
【0040】
オペレータは、この表示に従い、必要となれば、画面上に表示した入力手段により、非点補正器の軸合わせ処理の実行を指示することができる。入力手段は、例えば、モニタに表示された専用のアイコンをマウスでクリックしたり、あるいは、メニュー画面から処理を指定するなど、種々の形態をとることができる。
【0041】
なお、本実施例で説明した自動軸調が適正に行われているか否かを判定するために、
“視差検出に基づく補正”を行うのに供される少なくとも4枚の試料像を像表示画面にリアルタイムで表示するようにしても良い。また上記説明では対物レンズと非点補正器に対する軸調を行うことについて説明したが、これに限られることはなくアライメント偏向器を用いて光軸調整を行う必要のある荷電粒子線の光学素子全般に適用可能である。更に本発明は電子顕微鏡だけではなく、収束イオンビームや軸対称レンズシステムを用いて荷電粒子線を収束させる全ての荷電粒子線装置に適用が可能である。また、アライナー用偏向器として、静電偏向器を用いるようにしても良い。
【0042】
ここでアライメント偏向器の偏向条件を変化させる度に焦点調整を行うことで高精度に軸調整ができる理由に関して図9を用いて説明する。
【0043】
本発明に関する自動軸調整方法は、特開2002−352758号公報や特開2003−22771号公報に開示されているように、アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させ、それぞれの条件下での試料像間のずれ量を算出し、そのずれ量からアライメント偏向器の動作条件を算出する手法である。つまり、試料像間のずれ量を算出が軸調整の精度に影響してくる。
【0044】
図8で説明したようにアライメント条件がずれている状態で、対物値を+ΔF,−ΔFに振った場合は、2枚の画像間のボケ状態が大きく異なり、画質に大きな違いが生じるため、画像間の位置ずれ検出の精度が低下する。
【0045】
これに対して、図9の901は、アライメント条件がずれている状態で、焦点調整を行った状態である。この場合に、焦点合致の状態から対物値を+ΔF,−ΔF振った状態では、ビーム径が両者ともDと同じになり、画像のボケもほぼ同じ状態になる。したがって、+ΔFで撮影した画像と−ΔFで撮影した画像の画質はほぼ同じになり、2枚の画像間の位置ずれ検出も良好に行えることになる。
【0046】
このように、アライメント偏向器の偏向条件を変化させた場合は、その度に焦点調整を行うことで対物値の変化に対して画質がほぼ同じになるため高精度に軸調整が可能になる。
【0047】
図5は、本発明の実施例である対物レンズ用アライナーの調整処理フローである。第1ステップでアライナー51に条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで自動焦点調整を実行する。
【0048】
自動焦点調整は、対物レンズの焦点条件を自動的に最適値に設定する制御であり、その方法は、対物レンズの条件を変化させながら、複数枚のフレーム走査を行い得られた画像から焦点評価値を算出,評価し、最適値を対物レンズの条件に設定するものである。
【0049】
焦点評価には、微分フィルタと呼ばれる空間フィルタを画像に施し画素値の統計量で評価する方法を用いる。微分フィルタとしては、1次微分フィルタとしてのソーベルフィルタ,2次微分フィルタとしてのラプラシアンフィルタ等が知られているが、それらの空間フィルタもしくはその変形手法を用いることもできる。また、統計量としては、画素値総和,平均値,分散値,標準偏差値等を用いる。対物レンズの条件を変えながら撮影したフレーム毎に焦点評価値を計算し、その値が一番大きくなった時の対物レンズの条件を焦点が合った条件とする。
【0050】
第3ステップで対物レンズ7に条件1(ステップ2で求めた焦点合致の条件に基づいて決められる条件)を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0051】
第4ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。
【0052】
第5ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで自動焦点調整を実行する。
【0053】
そして、ステップ7,ステップ8で対物レンズの条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0054】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0055】
第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0056】
第11ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0057】
以上のように、レンズの条件を変化させて像ずれ量を検出する前に、自動焦点調整を行うことによって、高精度に像ずれ量を検出することが可能となる。そして自動焦点調整→光軸調整のステップを併せて行うようにすれば、経時変化に因らず、安定した光軸調整を行うことができる。
【0058】
なお、これまでアライナーを動作させる前に、自動焦点調整を行う例について説明したが、これに限られることはない。例えば、光軸調整前にフォーカス(焦点)条件を評価するステップを設け、その際にフォーカス条件が悪ければ、焦点調整行程に移行し、或る所定値以上のフォーカス評価値が見込めるようであれば、焦点調整を行うことなく、速やかに、アライナーを動作させ、像ずれ量を検出するステップに移行するようにしても良い。もともと焦点が合っている場合には、必ずしも調整を行う必要はない。
【0059】
なお、仮にアライナーを動作させた後であったとしても、アライナーの条件を元に戻して評価すれば、結果的に同じである。
【0060】
上述の例に限らず、先ずは焦点等の状態を評価して、精度の高い像ずれ量検出が可能かどうかを判断することが重要であって、調整自体は必要に応じて行われれば良い。但し、例えばアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量をテーブル化しておき、アライメント偏向器の偏向条件を変える度に、そのテーブルに従い焦点調整値を設定するようにしても良い。
【0061】
図6は、本発明の実施例である非点補正用アライナーの調整処理フローである。第1ステップでアライナーに条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで自動焦点調整を実行する。第3ステップで非点補正器の信号を条件1に設定し、非点補正信号:条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。第4ステップ:アライナーの条件をそのままにして、非点補正信号の条件のみを非点補正信号:条件1に対して予め決められた値だけずれた第2の非点補正信号条件2を設定して画像2を取得する。
【0062】
第5ステップ:アライナーの条件を予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナーに設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで自動焦点調整を実行する。
【0063】
そして、ステップ7,ステップ8で非点補正信号の条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0064】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し視差1として登録する。第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。第11ステップ:視差1と視差2からアライナーの最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0065】
図7は、本発明の実施例である全自動調整を説明するための図である。予め定められたタイミングでステージ15を駆動し、電子ビーム直下に軸調整用パターン16を位置付ける。701でパターン情報から倍率や撮像を設定した後、702で自動焦点調整を実行する。703で非点補正器用アライナー53のX方向を調節し、705でアライメント補正値が予め定めた閾値より大きい場合、リトライ処理を行い、再び704の調整を行う。
703の処理は図6の処理フローに示した内容である。
【0066】
次に706で非点補正器用アライナー53のY方向を調節し、707では705同様にリトライ処理の判定を行う。次に708で対物レンズ用アライナー51を調節する。708の処理は図5の処理フローに示した内容である。ここでも705,707同様に709でリトライ処理の判定を行う。次に710で非点補正の自動調整を行い、最後に711で、再度焦点調整を行う。自動非点調整に関しては、特開2003−22771号公報に開示されている手法を用いることが出来る。なお、非点補正器用アライナー53と対物レンズ用アライナー51の調整順序は、電子光学系内のレンズの配置によって決定される。
【0067】
図1に示すような電子光学系の場合、対物レンズ用アライナー51による調整を行った後、非点補正器用アライナー53で軸調整を行うと、対物レンズに対する光軸が再度ずれてしまう場合があるので、陰極から見てより近くに位置する光学素子から順に調整することが望ましい。逆に陰極から見て対物レンズ,非点補正器の順にレンズが配置されている電子光学系の場合は、対物レンズ用アライナー,非点補正器用アライナーの順で調整することが望ましい。
【0068】
図10は、本発明の実施例である位置合わせの相関値により焦点調整を行う場合の概略フローである。この図は、対物レンズ用アライナーの調整時の処理フローである。1001でアライナー51に条件1を設定する。1002で対物レンズ7に条件1を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。1003:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを第2の条件を設定して画像2を取得する。1004で画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。1005では、1004で行う位置ずれ量検出の際に同時に算出される2画像間の相関値を予め定めておいた閾値(Th0)と比較したその値より小さい場合に1006で焦点調整を実行する。その後は、1002〜1005の処理を再度繰り返す。
【0069】
但し、この繰り返しに関しても予め最大回数を定めておき、そのリトライ回数(retry) に達したら次のステップに進むようにする。次に1007でアライナー51の条件を条件2に設定する。そして、1008,1009で対物レンズの条件を1002と1003と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0070】
1010で画像3と画像4の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差2として登録する。1011では、1010で行う位置ずれ量検出の際に同時に算出される2画像間の相関値を予め定めておいた閾値(Th0)と比較したその値より小さい場合に1012で焦点調整を実行する。その後は、1008〜1011の処理を再度繰り返す。但し、この繰り返しに関しても予め最大回数を定めておき、そのリトライ回数(retry) に達したら次のステップに進むようにする。1013と1014で、視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。図10の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0071】
図11は、本発明の実施例である偏向条件と焦点調整量をテーブル化した場合の概略フローである。この図は、対物レンズ用アライナーの調整時の処理フローである。第1ステップでアライナー51に条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで予め用意されたテーブルから偏向条件に対応した分の焦点制御値を読み出して設定する。第3ステップで対物レンズ7に条件1を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0072】
第4ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。第5ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで予め用意されたテーブルから偏向条件に対応した分の焦点制御値を読み出して設定する。そして、ステップ7,ステップ8で対物レンズの条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0073】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0074】
第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0075】
第11ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。図11の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0076】
図10,図11のような処理フローを取ることにより、焦点制御にかかる処理時間を軽減もしくは削減できるので、軸調整にかかる処理時間を短縮することが可能になる。
【0077】
アライナー値を変更したときのボケの程度は、レンズの球面収差から計算できる。レンズの球面収差は、レンズと試料間の距離(ワーキングディスタンス)に依存するため、アライナー変化に対するボケの感度係数をワーキングディスタンスのテーブルとして持つことが出来る。この手法は、ワーキングディスタンスが大きく変化する荷電粒子線装置に有効である。
【0078】
図12は、本発明の実施例である焦点調整と非点調整を行う場合の概略フローである。この図は、位置合わせ時の相関値により対物レンズ用アライナーの調整を行う場合の処理フローである。1201〜1206までは図10の1001〜1006の処理と同様である。1206で焦点調整を行った後、1207で非点補正の自動調整を行う。自動非点補正は710で説明したものである。
【0079】
その後は、1202〜1205の処理を再度繰り返す。以下1208〜1216までの処理は、1213,1214で、自動焦点調整,自動非点補正を実施する過程を除き、図10の1007〜1014の処理と同様である。非点のずれは、焦点ずれと同様にボケ等の画質の低下を招くため、位置ずれ検出精度を向上させるには、アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に、焦点調整と同時に非点調整を実施することも可能である。また、焦点調整と非点補正の順番に関しては、焦点ずれによる画質劣化には単純なボケだけでなく画像の流れ等も生じる場合があるため、初めに焦点調整を行い、次に非点補正を行うことが望ましい。
【0080】
図12の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0081】
自動軸調整中の自動焦点調整では、アライナーを変化させて軸を傾けているために対物レンズなどを変化させると画像がシフトしてしまう課題が発生する。そこでこの課題を解決するために像シフトを補正しながら自動焦点調整を実施する例を説明する。図13,図14,図15は自動焦点調整の実施例であるが同様に自動非点調整にも使用できる。
【0082】
図13は、本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の概略フローである。自動焦点調整開始時の対物レンズ7の条件0を設定した後、ビームを走査して画像を取得し、画像を画像0として記憶する(1301)。
【0083】
次に対物レンズ7の条件1を設定し同様に画像1を記憶する(1302)。画像0と画像1の視差0(像ずれ量)を画像処理によって検出する(1303)。視差0を打ち消すようにイメージシフトコイル45を制御して画像0と同じ視野の画像1′を取得する
(1304)。画像1′の評価値を計算する(1305)。以上の処理を所定の回数繰返し評価プロファイルを作成する(1306)。得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して(1307)、対物レンズ7に設定する(1308)。
【0084】
図14は、本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される別の自動焦点調整の概略フローである。図13の実施例と同様に画像0と画像1の視差0を検出する(1401)〜(1403)。この視差0を用いてこれ以降発生する視野ずれを補正するようにイメージシフトコイル45を制御して画像を取得し、所定回数分評価値を計算する(1404)〜(1406)。得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して(1407)、対物レンズ7に設定する(1408)。本実施例では自動焦点調整開始時の対物レンズ7の条件0と条件1を使用した比較的ぼけの少ない画像で視差を検出するため、視差の精度が高い。
【0085】
図16は、本発明の実施例である図14で実施される自動焦点調整の別の概略フローである。図14の実施例と同様に画像0と画像1の視差0を検出する(1601)〜(1603)。所定の評価回数と視差0から最大の視差Smaxを計算し(1610)、Smaxが例えば画像サイズの半分以下の場合は(1611)、順に取得される画像iにおいて視差0に対応した部分の領域を切り取って評価値を計算する(1604)〜(1605)。画像サイズの半分より大きい場合は、これ以降の処理が図14の実施例と同じとなる。所定回数実施して得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して、対物レンズ7に設定する(1606)〜(1608)。以上のように処理することで視差補正後の画像を取得する必要がなくなり処理の高速化が計れる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一例である走査電子顕微鏡の構成概略図。
【図2】対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フロー。
【図3】対物レンズに対する軸ずれを補正する原理図。
【図4】非点補正器に対する軸ずれを補正するための概略処理フローチャート。
【図5】本発明の対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローチャート。
【図6】本発明の非点補正器に対する軸ずれを補正するための概略処理フローチャート。
【図7】本発明の全自動調整の概略処理フローチャート。
【図8】アライメント条件のずれと画像ボケの関係を示す図。
【図9】アライメント条件がずれている状態で焦点調整を行った状態を示す図。
【図10】本発明の実施例である位置合わせの相関値により焦点調整を行う場合の概略フローチャート。
【図11】本発明の実施例である偏向条件と焦点調整量をテーブル化した場合の概略フローチャート。
【図12】本発明の実施例である焦点調整と非点補正を行う場合の概略フローチャート。
【図13】本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の概略フローチャート。
【図14】本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の別の概略フローチャート。
【図15】本発明の実施例である図14の自動焦点調整の別の概略フローチャート。
【符号の説明】
【0087】
1…陰極、2…第一陽極、3…第二陽極、4…一次電子線、5…第一収束レンズ、6…第二収束レンズ、7…対物レンズ、8…絞り板、9…走査コイル、10…試料、11…二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器、12…二次信号、13…二次信号検出器、
14a…信号増幅器、15…ステージ、16…軸調整用パターン、20…高圧制御電源、21…第一収束レンズ制御電源、22…第二収束レンズ制御電源、23…対物レンズ制御電源、24…走査コイル制御電源、25…画像メモリ、26…画像表示装置、27…画像処理装置、31…対物レンズ用アライナー制御電源、32…非点補正器用制御電源、33…非点補正器用アライナー制御電源、40…コンピュータ、41…記憶装置、42…入力装置、44…イメージシフトコイル制御電源、45…イメージシフトコイル、51…対物レンズ用アライナー、52…非点補正器、53…非点補正器用アライナー。
【技術分野】
【0001】
本発明は荷電粒子線装置に係り、特に荷電粒子光学系の光軸のずれを高精度に補正して、高分解能像を安定に得るのに好適な荷電粒子線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く収束された荷電粒子線を試料上で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。このような荷電粒子線装置では、レンズに対し光軸にずれがあるとレンズ収差が発生し試料像の解像度が低下するため、分解能の高い試料像を得るためには高精度な軸調整が必要である。この軸調整を自動で行うための技術として、特許文献1,2に開示されているような技術がある。
【0003】
一般的な軸調整は、対物レンズ等の光学素子の条件を変化させたときの試料像の移動量が小さくなるように、軸調整用の偏向器(アライナー)を調整する。これに対して、特許文献1,2に開示の技術によれば、アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させ、それぞれの条件下での試料像間のずれ量を算出し、そのずれ量を方程式に当てはめて、アライメント偏向器の動作条件を決定する手法が記載されている。この手法により、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化しても、容易に光軸の調整が可能となり、高精度に光軸調整の自動化を実現できる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−352758号公報
【特許文献2】特開2003−22771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に開示されている手法においても、光軸調整の自動化は実現できるが、更なる高精度化の要求がある。アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させた場合、得られる試料像にボケ等の画質劣化が生じるため、位置ずれ量が正確に算出できない場合がある。
【0006】
アライメント条件のずれと画像ボケの関係に関して、図8を用いて説明する。801は、アライメント条件にずれがなく光軸が完全に調整されている状態で、焦点制御用の対物電流値を振った場合のビーム径変化である。ビーム径が最小になった状態が焦点合致の状態である。この場合に、対物電流値を焦点合致の状態から+ΔF,−ΔF振った状態では、ビーム径が両者ともAとなり、同じになるため、画像のボケもほぼ同じ状態になる。したがって、+ΔFで撮影した画像と−ΔFで撮影した画像の画質は、ほぼ同じ状態になり、2枚の画像間の位置ずれ検出も良好に行える。
【0007】
これに対して、802はアライメント条件がずれている状態である。この場合、+ΔFではB、−ΔFではCとビーム径が大きく異なる。つまり、2枚の画像のボケ状態が大きく異なり、画質に大きな違いが生じるため、2画像間の位置ずれ検出の精度が低下することになる。
【0008】
本発明の目的は、上述のような画質の違いによる位置ずれ検出精度の低下を防ぎ、光学条件を変更した場合や光軸の経時変化によって荷電粒子線の状態が変化した場合においても、容易にかつ高精度に、光軸の自動調整を実現できる荷電粒子線装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、光軸調整用のアライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に焦点評価、或いは調整を行うか、又はアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行う荷電粒子線装置を提案する。
【0010】
このような構成によれば、荷電粒子線の光学条件に関わらず、精度の高い軸調整を自動で実行することが可能となる。なお、本発明の他の構成については、発明の実施形態の欄にて詳細に説明する。
【発明の効果】
【0011】
以上詳述したように本発明によれば、荷電粒子線装置の光学条件因らず精度の高い軸調整を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。陰極1と第一陽極2の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により電圧が印加され、所定のエミッション電流で一次電子線4が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には、コンピュータ40で制御される高圧制御電源20により加速電圧が印加され、陰極1から放出された一次電子線4が加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、第一収束レンズ制御電源21で制御された第一収束レンズ5で収束され、絞り板8で一次電子線の不要な領域が除去された後に、第二収束レンズ制御電源22で制御された第二収束レンズ6、および対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により試料10に微小スポットとして収束される。対物レンズ7は、インレンズ方式,アウトレンズ方式、およびシュノーケル方式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。また、試料に負の電圧を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式も可能である。さらに、各々のレンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。
【0014】
一次電子線4は、走査コイル9で試料10上を二次元的に走査される。一次電子線の照射で試料10から発生した二次電子等の二次信号12は、対物レンズ7の上部に進行した後、二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器11により、一次電子と分離されて二次信号検出器13に検出される。二次信号検出器13で検出された信号は、信号増幅器14で増幅された後、画像メモリ25に転送されて画像表示装置26に試料像として表示される。
【0015】
走査コイル9の近傍もしくは同じ位置に1段の偏向コイル51(対物レンズ用アライナー)が配置されており、対物レンズに対するアライナーとして動作する。また、対物レンズと絞り板との間には、XおよびY方向の非点を補正するための8極の非点補正コイル
52(非点補正器)が配置される。非点補正コイルの近傍、もしくは同じ位置には非点補正コイルの軸ずれを補正するアライナー53が配置される。
【0016】
画像表示装置26には、試料像のほかに電子光学系の設定や走査条件の設定を行う種々の操作ボタンの他、軸条件の確認や自動軸合わせの開始を指示するボタンを表示させることができる。
【0017】
一次電子線が対物レンズの中心からずれた位置を通過した状態(軸がずれた状態)でフォーカス調整を行うと、フォーカス調整に伴い視野の動きが生じる。オペレータが軸ずれに気が付いた場合、表示装置に表示された処理開始ボタンをマウスでクリックするなどの操作により軸合わせ処理の開始を指示することができる。オペレータから軸合わせの指令を受けると、コンピュータ40は、以下の実施例で説明するようなフローに沿って処理を開始する。
【0018】
なお、図1の説明は制御プロセッサ部が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次信号検出器13で検出される検出信号を制御プロセッサに伝達したり、制御プロセッサから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、画像メモリを有し走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0019】
試料10はステージ15にセットされる。コンピュータ40からの制御信号によってステージ15が移動することにより試料上またはステージ上の任意の位置に移動することができる。またステージ上にはビーム調整を行うための専用パターンである軸調整用パターン16を配置することができる。
【0020】
画像表示装置26と入力装置(マウスやキーボードなど)42によって予め自動運転の条件を設定することが可能である。自動運転の条件は記憶装置41にレシピファイルとして保存される。レシピファイルには自動軸調整を実行するための条件も含まれる。
【0021】
図2の処理フローについて、以下に詳細に説明する。
【0022】
第1ステップ:対物レンズ7の現在の条件、あるいは、現在の条件に基づいて決められる(例えば、現在のフォーカス条件からフォーカスを少しずらした条件)を条件1として対物レンズ7に設定する。次に、アライナー51の現在の条件、あるいは、予め決められた条件をアライナー51の条件1として設定する。この対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0023】
第2ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。
【0024】
第3ステップ,第4ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。そして、対物レンズの条件をステップ1とステップ2と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0025】
第5ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0026】
第6ステップ:画像1と画像2の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0027】
第7ステップ,第8ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0028】
図2の処理フローは、動作の理解が容易な手順で記載したが、画像の取り込み順番は処理に影響を与えない。実際の処理では、処理の高速化を図るために、例えば、対物レンズ条件7を条件1にして、画像1と画像3とを連続して取り込み、次に、対物レンズ条件7を条件2にして、画像2と画像4とを連続して取り込むことが可能である。電子顕微鏡の対物レンズは、通常磁界レンズで構成され、インダクタンスが大きいため、インダクタンスが小さく高速制御が可能なアライナーを連続制御する方法が実用上有効となる。
【0029】
図2の処理フローで対物レンズに対する軸ずれが補正(修正)される原理を、図3により説明する。軸がずれた状態において、アライナー51の位置(偏向面)でのビーム離軸量をWAL(複素変数:XAL+j・YAL,j:虚数単位)、この位置で光軸に対するビームの傾きをWAL′(複素変数)とすると、電子光学理論(近軸理論)に基づく軌道計算が可能である。磁界形対物レンズの場合、レンズ電流値をI1からI2へとΔI(=I1−I2)だけ変化させたときに生じる像ずれ量(視差)をΔWi(複素変数:ΔXi+j・ΔYi)とすると、軌道計算により、ΔWiは次のように表すことができる。
(数1)
ΔWi=K・ΔI・(WAL・A+WAL′・B) (1)
ここで、K,A,Bは、測定の際の軸ずれ状態と、対物レンズの動作条件(加速電圧や対物レンズの焦点距離、あるいは対物レンズの物点位置など)で決まるパラメータ(複素数)である。対物レンズに対して軸がずれた状態とは、式(1)においてΔWiが0以外の値を持つことを意味する。したがって、従来は、対物レンズの電流をΔIだけ周期的に変化させて、このときの像ずれΔWiをオペレータが認識し、像ずれを無くすようにアライナーの条件を調整していた。すなわち、軸ずれが補正されるアライナーの最適値とは、式(1)の右辺がΔIによらず0となる条件を指している。この条件を書き出すと、
(数2)
(WAL・A+WAL′・B)=0 (2)
となり、この条件を満たすアライナーの動作条件が最適値となる。軸ずれがあるとアライナー偏向面では入射ビームの傾きも伴うため、これをWAL0′とし、アライナーによる偏向角(制御値)をWAL1′とすると
(数3)
WAL′=WAL0′+WAL1′ (3)
で表される。よって、式(2)を満たすアライナーの条件WAL1′(アライナーの最適値)を求めることが軸調整機能の目的となる。アライナーを電磁コイルで構成する場合には、偏向角WAL1′はアライナーのコイル電流に比例する。以上の関係から式(1)を書き直すと、
(数4)
ΔWi=ΔI・(A1+WAL1′・B1) (4)
が得られる。ここで、A1,B1は以下の項をまとめたものである。
(数5)
A1=K・(WAL・A+WAL0′・B) (5)
(数6)
B1=K・B (6)
式(4)より、アライナーの最適値WAL1′は
(数7)
WAL1′=−A1/B1 (7)
で与えられるため、A1とB1を求めることにより、アライナーの最適値を計算することができる。式(4)において、ΔIは対物レンズの電流変化量であるから、既知の値として予め決めることができる。したがって、アライナーを予め定めた任意の2条件に設定し、その各々においてΔIに対する視差ΔWiを画像処理により検出すると、式(4)より未知数A1,B1を求めるための方程式が得られる。この方程式からA1,B1を解くことができるため、アライナーの最適条件を式(7)から決定することができる。
【0030】
即ち、アライナーを予め定めた任意の2条件に設定したときに得られる視差ΔWiが小さくなる(理想的にはゼロとなる)ような条件でA,Bのような未知数のn次方程式を解くことによって、電子光学系の動作条件に依存しない条件を導き出すことができる。この条件に基づいてアライナー条件(アライナーの励磁条件)を導き出すことができる。
【0031】
なお、アライナー51は、少なくとも対物レンズ主面におけるビーム通過位置を二次元的に制御可能な配置、あるいは構造を有している。仮に、アライナーによるビームの偏向支点が対物レンズ主面近傍に存在すると、対物レンズに対する軸ずれの状態が制御できなくなるためである。即ち本発明実施例のように電磁コイルを用いたアライメント偏向器
(アライナー)の場合、光学条件によって変化するコイルへの励磁電流(偏向信号)を検出することが可能になる。
【0032】
例えば対物レンズの励磁条件の変化や、試料に印加するリターディング電圧の大きさによって、変化する励磁電流を、観察時の光学条件に基づいて検出することができるので、光学条件ごとに異なるパラメータを登録しておく必要がなくなり、また経時変化により、ビームの条件が変化したとしても、その変化した状態における適正なアライメントコイルへの励磁電流を検出することが可能になる。
【0033】
このように本発明実施例によれば、変化する軸ずれの状態や荷電粒子光学系の光学素子の動作条件(例えば、ビームエネルギーや焦点距離,光学倍率など)に対応が可能であり、軸調整の自動化を容易に実現することが可能になる。
【0034】
一方、非点補正器52についても、本実施例では自動軸調整が可能である。非点補正器では、光軸と直交する面内において、ビームを収束させる作用とビームを発散させる作用とが方向を異にして発生する。したがって、ビームが非点補正場の中心を通過していないと、非点補正場中心からのずれに対応した方向に偏向作用を受けることになる。このとき、非点収差の補正に連動して偏向作用も変化するため、非点収差の調整操作に連動して像が移動し、調整操作が困難になる。
【0035】
これを補正するために、従来は、非点補正器52の信号(Xstg,Ystg)に連動した信号を別のアライナー53に入力して、アライナー53で発生する像の動きでもって非点補正器による像の動きをキャンセルするようにしている。
【0036】
このとき、アライナー53に入力する信号(複素変数)をWs1とすると、Ws1は次の式で表される。
(数8)
Ws1=Ksx・Xstg+Ksy・Ystg (8)
ここで、Ksx,Ksyは複素変数で表される係数である。
【0037】
いま、非点補正器の信号(Xstg,Ystg)をそれぞれΔXstg,ΔYstgだけ別々に変化させたとすると、各々の変化に対応する観察像の動き(視差)ΔWix,
ΔWiyは、それぞれ次のようになる。
(数9)
ΔWix=ΔXstg・(Asx+Bx・Ksx) (9)
(数10)
ΔWiy=ΔYstg・(Asy+By・Ksy) (10)
ここで、Asx,Asyは、非点補正器に対するビームの軸ずれに対応してその値が決まる複素変数である。Ksx,Ksyは、装置で制御する軸調整パラメータ(複素変数)を表す。また、Bx,Byは、アライナーの位置や偏向感度,電子光学系の条件などで決まる複素変数である。従来は、非点補正器にそれぞれΔXstg,ΔYstgの変調信号を加えて、そのときの像の動き(ΔWix,ΔWiy)をオペレータが認識し、これを無くすようにパラメータKsx,Ksyの手動調整が行われていた。
【0038】
これが、非点補正器に対する軸調整操作である。すなわち、非点補正器に対して軸を合わせる操作は、式(9)、および式(10)において、ΔXstg,ΔYstgによらずΔWix,ΔWiyが0となる係数Ksx,Ksyを求めることに対応する。なお、
ΔWix,ΔWiyはゼロになることが理想であるが、それには限られずゼロに近くなるようにΔWを小さくするような条件で係数を求めるようにしても良い。式(9)および式(10)の形式は、先に示した式(4)と全く同じであり、対物レンズの電流値変化
(ΔI)を非点補正器の信号変化(ΔXstg,ΔYstg)に置き換えれば、視差検出とその演算処理によりアライナー53に対する最適制御パラメータ(Ksx,Ksy)を求めることができる。このための処理フローを図4に示す。非点補正器による視野ずれを補正するアライナーは、試料上におけるビームの位置を補正するためのものであるから、試料上での位置が制御できる位置に配置されなければならない。
【0039】
非点補正器に対する軸ずれの大きさは、非点補正器の信号にΔXstg,ΔYstgの変化を与えたときの像ずれ(視差)により定量化できる。そのため、本実施例では、先に示した対物レンズに対する軸ずれの場合と同様、光軸の状態が変化する可能性のある操作(加速電圧の変化や試料交換,フォーカス位置の変更など)を行ったときに、視差検出を行い、オペレータに軸ずれの状態を表示して知らせることができる。
【0040】
オペレータは、この表示に従い、必要となれば、画面上に表示した入力手段により、非点補正器の軸合わせ処理の実行を指示することができる。入力手段は、例えば、モニタに表示された専用のアイコンをマウスでクリックしたり、あるいは、メニュー画面から処理を指定するなど、種々の形態をとることができる。
【0041】
なお、本実施例で説明した自動軸調が適正に行われているか否かを判定するために、
“視差検出に基づく補正”を行うのに供される少なくとも4枚の試料像を像表示画面にリアルタイムで表示するようにしても良い。また上記説明では対物レンズと非点補正器に対する軸調を行うことについて説明したが、これに限られることはなくアライメント偏向器を用いて光軸調整を行う必要のある荷電粒子線の光学素子全般に適用可能である。更に本発明は電子顕微鏡だけではなく、収束イオンビームや軸対称レンズシステムを用いて荷電粒子線を収束させる全ての荷電粒子線装置に適用が可能である。また、アライナー用偏向器として、静電偏向器を用いるようにしても良い。
【0042】
ここでアライメント偏向器の偏向条件を変化させる度に焦点調整を行うことで高精度に軸調整ができる理由に関して図9を用いて説明する。
【0043】
本発明に関する自動軸調整方法は、特開2002−352758号公報や特開2003−22771号公報に開示されているように、アライメント偏向器の偏向条件と光学素子状態を変化させ、それぞれの条件下での試料像間のずれ量を算出し、そのずれ量からアライメント偏向器の動作条件を算出する手法である。つまり、試料像間のずれ量を算出が軸調整の精度に影響してくる。
【0044】
図8で説明したようにアライメント条件がずれている状態で、対物値を+ΔF,−ΔFに振った場合は、2枚の画像間のボケ状態が大きく異なり、画質に大きな違いが生じるため、画像間の位置ずれ検出の精度が低下する。
【0045】
これに対して、図9の901は、アライメント条件がずれている状態で、焦点調整を行った状態である。この場合に、焦点合致の状態から対物値を+ΔF,−ΔF振った状態では、ビーム径が両者ともDと同じになり、画像のボケもほぼ同じ状態になる。したがって、+ΔFで撮影した画像と−ΔFで撮影した画像の画質はほぼ同じになり、2枚の画像間の位置ずれ検出も良好に行えることになる。
【0046】
このように、アライメント偏向器の偏向条件を変化させた場合は、その度に焦点調整を行うことで対物値の変化に対して画質がほぼ同じになるため高精度に軸調整が可能になる。
【0047】
図5は、本発明の実施例である対物レンズ用アライナーの調整処理フローである。第1ステップでアライナー51に条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで自動焦点調整を実行する。
【0048】
自動焦点調整は、対物レンズの焦点条件を自動的に最適値に設定する制御であり、その方法は、対物レンズの条件を変化させながら、複数枚のフレーム走査を行い得られた画像から焦点評価値を算出,評価し、最適値を対物レンズの条件に設定するものである。
【0049】
焦点評価には、微分フィルタと呼ばれる空間フィルタを画像に施し画素値の統計量で評価する方法を用いる。微分フィルタとしては、1次微分フィルタとしてのソーベルフィルタ,2次微分フィルタとしてのラプラシアンフィルタ等が知られているが、それらの空間フィルタもしくはその変形手法を用いることもできる。また、統計量としては、画素値総和,平均値,分散値,標準偏差値等を用いる。対物レンズの条件を変えながら撮影したフレーム毎に焦点評価値を計算し、その値が一番大きくなった時の対物レンズの条件を焦点が合った条件とする。
【0050】
第3ステップで対物レンズ7に条件1(ステップ2で求めた焦点合致の条件に基づいて決められる条件)を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0051】
第4ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。
【0052】
第5ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで自動焦点調整を実行する。
【0053】
そして、ステップ7,ステップ8で対物レンズの条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0054】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0055】
第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0056】
第11ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0057】
以上のように、レンズの条件を変化させて像ずれ量を検出する前に、自動焦点調整を行うことによって、高精度に像ずれ量を検出することが可能となる。そして自動焦点調整→光軸調整のステップを併せて行うようにすれば、経時変化に因らず、安定した光軸調整を行うことができる。
【0058】
なお、これまでアライナーを動作させる前に、自動焦点調整を行う例について説明したが、これに限られることはない。例えば、光軸調整前にフォーカス(焦点)条件を評価するステップを設け、その際にフォーカス条件が悪ければ、焦点調整行程に移行し、或る所定値以上のフォーカス評価値が見込めるようであれば、焦点調整を行うことなく、速やかに、アライナーを動作させ、像ずれ量を検出するステップに移行するようにしても良い。もともと焦点が合っている場合には、必ずしも調整を行う必要はない。
【0059】
なお、仮にアライナーを動作させた後であったとしても、アライナーの条件を元に戻して評価すれば、結果的に同じである。
【0060】
上述の例に限らず、先ずは焦点等の状態を評価して、精度の高い像ずれ量検出が可能かどうかを判断することが重要であって、調整自体は必要に応じて行われれば良い。但し、例えばアライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量をテーブル化しておき、アライメント偏向器の偏向条件を変える度に、そのテーブルに従い焦点調整値を設定するようにしても良い。
【0061】
図6は、本発明の実施例である非点補正用アライナーの調整処理フローである。第1ステップでアライナーに条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで自動焦点調整を実行する。第3ステップで非点補正器の信号を条件1に設定し、非点補正信号:条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。第4ステップ:アライナーの条件をそのままにして、非点補正信号の条件のみを非点補正信号:条件1に対して予め決められた値だけずれた第2の非点補正信号条件2を設定して画像2を取得する。
【0062】
第5ステップ:アライナーの条件を予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナーに設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで自動焦点調整を実行する。
【0063】
そして、ステップ7,ステップ8で非点補正信号の条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0064】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し視差1として登録する。第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。第11ステップ:視差1と視差2からアライナーの最適値を計算して、アライナーに設定する。
【0065】
図7は、本発明の実施例である全自動調整を説明するための図である。予め定められたタイミングでステージ15を駆動し、電子ビーム直下に軸調整用パターン16を位置付ける。701でパターン情報から倍率や撮像を設定した後、702で自動焦点調整を実行する。703で非点補正器用アライナー53のX方向を調節し、705でアライメント補正値が予め定めた閾値より大きい場合、リトライ処理を行い、再び704の調整を行う。
703の処理は図6の処理フローに示した内容である。
【0066】
次に706で非点補正器用アライナー53のY方向を調節し、707では705同様にリトライ処理の判定を行う。次に708で対物レンズ用アライナー51を調節する。708の処理は図5の処理フローに示した内容である。ここでも705,707同様に709でリトライ処理の判定を行う。次に710で非点補正の自動調整を行い、最後に711で、再度焦点調整を行う。自動非点調整に関しては、特開2003−22771号公報に開示されている手法を用いることが出来る。なお、非点補正器用アライナー53と対物レンズ用アライナー51の調整順序は、電子光学系内のレンズの配置によって決定される。
【0067】
図1に示すような電子光学系の場合、対物レンズ用アライナー51による調整を行った後、非点補正器用アライナー53で軸調整を行うと、対物レンズに対する光軸が再度ずれてしまう場合があるので、陰極から見てより近くに位置する光学素子から順に調整することが望ましい。逆に陰極から見て対物レンズ,非点補正器の順にレンズが配置されている電子光学系の場合は、対物レンズ用アライナー,非点補正器用アライナーの順で調整することが望ましい。
【0068】
図10は、本発明の実施例である位置合わせの相関値により焦点調整を行う場合の概略フローである。この図は、対物レンズ用アライナーの調整時の処理フローである。1001でアライナー51に条件1を設定する。1002で対物レンズ7に条件1を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。1003:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを第2の条件を設定して画像2を取得する。1004で画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。1005では、1004で行う位置ずれ量検出の際に同時に算出される2画像間の相関値を予め定めておいた閾値(Th0)と比較したその値より小さい場合に1006で焦点調整を実行する。その後は、1002〜1005の処理を再度繰り返す。
【0069】
但し、この繰り返しに関しても予め最大回数を定めておき、そのリトライ回数(retry) に達したら次のステップに進むようにする。次に1007でアライナー51の条件を条件2に設定する。そして、1008,1009で対物レンズの条件を1002と1003と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0070】
1010で画像3と画像4の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差2として登録する。1011では、1010で行う位置ずれ量検出の際に同時に算出される2画像間の相関値を予め定めておいた閾値(Th0)と比較したその値より小さい場合に1012で焦点調整を実行する。その後は、1008〜1011の処理を再度繰り返す。但し、この繰り返しに関しても予め最大回数を定めておき、そのリトライ回数(retry) に達したら次のステップに進むようにする。1013と1014で、視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。図10の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0071】
図11は、本発明の実施例である偏向条件と焦点調整量をテーブル化した場合の概略フローである。この図は、対物レンズ用アライナーの調整時の処理フローである。第1ステップでアライナー51に条件1を設定する。ここで、偏向条件が変化したため、第2ステップで予め用意されたテーブルから偏向条件に対応した分の焦点制御値を読み出して設定する。第3ステップで対物レンズ7に条件1を設定し、対物レンズ条件1とアライナー条件1で画像1を取得する。
【0072】
第4ステップ:アライナー51の条件をそのままにして、対物レンズの条件のみを対物レンズ条件1に対して予め決められた値だけフォーカスのずれた第2のフォーカス条件を設定して画像2を取得する。第5ステップ:アライナー51の条件を条件1に対して予め決められた値だけずらした条件を条件2として、これをアライナー51に設定する。ここで、再び偏向条件が変化したため、第6ステップで予め用意されたテーブルから偏向条件に対応した分の焦点制御値を読み出して設定する。そして、ステップ7,ステップ8で対物レンズの条件をステップ3とステップ4と同様に条件1、および条件2として、それぞれの画像(画像3,画像4)を取得する。
【0073】
第9ステップ:画像1と画像2の視差(画像のずれ)を画像処理により検出し、これを視差1として登録する。画像間の視差は、例えば、画像1と画像2の画像を互いに画素単位でずらしながら画像相関を求め、画像相関値が最大になる画像のずらし量から検出することが可能である。その他、視差の検出が可能な画像処理ならば、本実施例に適用が可能である。
【0074】
第10ステップ:画像3と画像4の視差を画像処理により検出して、これを視差2として登録する。
【0075】
第11ステップ:視差1と視差2からアライナー51の最適値を計算して、アライナーに設定する。図11の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0076】
図10,図11のような処理フローを取ることにより、焦点制御にかかる処理時間を軽減もしくは削減できるので、軸調整にかかる処理時間を短縮することが可能になる。
【0077】
アライナー値を変更したときのボケの程度は、レンズの球面収差から計算できる。レンズの球面収差は、レンズと試料間の距離(ワーキングディスタンス)に依存するため、アライナー変化に対するボケの感度係数をワーキングディスタンスのテーブルとして持つことが出来る。この手法は、ワーキングディスタンスが大きく変化する荷電粒子線装置に有効である。
【0078】
図12は、本発明の実施例である焦点調整と非点調整を行う場合の概略フローである。この図は、位置合わせ時の相関値により対物レンズ用アライナーの調整を行う場合の処理フローである。1201〜1206までは図10の1001〜1006の処理と同様である。1206で焦点調整を行った後、1207で非点補正の自動調整を行う。自動非点補正は710で説明したものである。
【0079】
その後は、1202〜1205の処理を再度繰り返す。以下1208〜1216までの処理は、1213,1214で、自動焦点調整,自動非点補正を実施する過程を除き、図10の1007〜1014の処理と同様である。非点のずれは、焦点ずれと同様にボケ等の画質の低下を招くため、位置ずれ検出精度を向上させるには、アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に、焦点調整と同時に非点調整を実施することも可能である。また、焦点調整と非点補正の順番に関しては、焦点ずれによる画質劣化には単純なボケだけでなく画像の流れ等も生じる場合があるため、初めに焦点調整を行い、次に非点補正を行うことが望ましい。
【0080】
図12の処理フローは、対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローであるが、非点補正器に対する軸ずれを補正するための処理フローも同じように構成することが出来る。
【0081】
自動軸調整中の自動焦点調整では、アライナーを変化させて軸を傾けているために対物レンズなどを変化させると画像がシフトしてしまう課題が発生する。そこでこの課題を解決するために像シフトを補正しながら自動焦点調整を実施する例を説明する。図13,図14,図15は自動焦点調整の実施例であるが同様に自動非点調整にも使用できる。
【0082】
図13は、本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の概略フローである。自動焦点調整開始時の対物レンズ7の条件0を設定した後、ビームを走査して画像を取得し、画像を画像0として記憶する(1301)。
【0083】
次に対物レンズ7の条件1を設定し同様に画像1を記憶する(1302)。画像0と画像1の視差0(像ずれ量)を画像処理によって検出する(1303)。視差0を打ち消すようにイメージシフトコイル45を制御して画像0と同じ視野の画像1′を取得する
(1304)。画像1′の評価値を計算する(1305)。以上の処理を所定の回数繰返し評価プロファイルを作成する(1306)。得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して(1307)、対物レンズ7に設定する(1308)。
【0084】
図14は、本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される別の自動焦点調整の概略フローである。図13の実施例と同様に画像0と画像1の視差0を検出する(1401)〜(1403)。この視差0を用いてこれ以降発生する視野ずれを補正するようにイメージシフトコイル45を制御して画像を取得し、所定回数分評価値を計算する(1404)〜(1406)。得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して(1407)、対物レンズ7に設定する(1408)。本実施例では自動焦点調整開始時の対物レンズ7の条件0と条件1を使用した比較的ぼけの少ない画像で視差を検出するため、視差の精度が高い。
【0085】
図16は、本発明の実施例である図14で実施される自動焦点調整の別の概略フローである。図14の実施例と同様に画像0と画像1の視差0を検出する(1601)〜(1603)。所定の評価回数と視差0から最大の視差Smaxを計算し(1610)、Smaxが例えば画像サイズの半分以下の場合は(1611)、順に取得される画像iにおいて視差0に対応した部分の領域を切り取って評価値を計算する(1604)〜(1605)。画像サイズの半分より大きい場合は、これ以降の処理が図14の実施例と同じとなる。所定回数実施して得られた評価プロファイルから最適な対物レンズ条件Zを計算して、対物レンズ7に設定する(1606)〜(1608)。以上のように処理することで視差補正後の画像を取得する必要がなくなり処理の高速化が計れる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の一例である走査電子顕微鏡の構成概略図。
【図2】対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フロー。
【図3】対物レンズに対する軸ずれを補正する原理図。
【図4】非点補正器に対する軸ずれを補正するための概略処理フローチャート。
【図5】本発明の対物レンズに対する軸ずれを補正するための概略フローチャート。
【図6】本発明の非点補正器に対する軸ずれを補正するための概略処理フローチャート。
【図7】本発明の全自動調整の概略処理フローチャート。
【図8】アライメント条件のずれと画像ボケの関係を示す図。
【図9】アライメント条件がずれている状態で焦点調整を行った状態を示す図。
【図10】本発明の実施例である位置合わせの相関値により焦点調整を行う場合の概略フローチャート。
【図11】本発明の実施例である偏向条件と焦点調整量をテーブル化した場合の概略フローチャート。
【図12】本発明の実施例である焦点調整と非点補正を行う場合の概略フローチャート。
【図13】本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の概略フローチャート。
【図14】本発明の実施例である図10および図11,図12で実施される自動焦点調整の別の概略フローチャート。
【図15】本発明の実施例である図14の自動焦点調整の別の概略フローチャート。
【符号の説明】
【0087】
1…陰極、2…第一陽極、3…第二陽極、4…一次電子線、5…第一収束レンズ、6…第二収束レンズ、7…対物レンズ、8…絞り板、9…走査コイル、10…試料、11…二次信号分離用直交電磁界(EXB)発生器、12…二次信号、13…二次信号検出器、
14a…信号増幅器、15…ステージ、16…軸調整用パターン、20…高圧制御電源、21…第一収束レンズ制御電源、22…第二収束レンズ制御電源、23…対物レンズ制御電源、24…走査コイル制御電源、25…画像メモリ、26…画像表示装置、27…画像処理装置、31…対物レンズ用アライナー制御電源、32…非点補正器用制御電源、33…非点補正器用アライナー制御電源、40…コンピュータ、41…記憶装置、42…入力装置、44…イメージシフトコイル制御電源、45…イメージシフトコイル、51…対物レンズ用アライナー、52…非点補正器、53…非点補正器用アライナー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに得られる画像のずれを評価する制御装置を備え、
当該制御装置は、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に、前記荷電粒子線の焦点評価、或いは調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記荷電粒子線の焦点評価、或いは調整を、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、それぞれの条件で得られた試料像間のずれ量から前記アライメント偏向器の動作条件を決定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、得られた試料像間の位置ずれ量を算出する際に、試料像間の相関値が予め定められた値以下の場合に焦点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、前記テーブルはレンズと試料間の距離を変数のひとつとして備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器、及び/又は前記荷電粒子線の非点を調整する非点補正器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに得られる画像のずれを評価する制御装置を備え、
当該制御装置は、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に、前記荷電粒子線の焦点或いは非点の評価、又は調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記制御装置は、前記荷電粒子線の焦点或いは非点の評価、又は調整を、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記アライメント偏向器の偏向条件と光学素子の条件を変化させ、それぞれの条件で得られた試料像間の位置ずれ量から前記アライメント偏向器の動作条件を決定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項7において、
アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、得られた試料像間の位置ずれ量を算出する際に、試料像間の相関値が予め定められた値以下の場合に焦点調整と非点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項7において、
アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に、初めに焦点調整を行い、次に非点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項7において、
前記制御装置は、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量を別の補正器で補正しながら、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項7において、
前記制御装置は、焦点調整値または非点調整値を1回変化させ、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量を用いて調整時のすべての位置ずれ量を補正しながら、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項7において、
前記制御装置は、焦点調整値または非点調整値を1回変化させ、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量のうち、調整時に取得した画像に対応した部分を用いて、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項1】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに得られる画像のずれを評価する制御装置を備え、
当該制御装置は、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に、前記荷電粒子線の焦点評価、或いは調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、前記荷電粒子線の焦点評価、或いは調整を、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、それぞれの条件で得られた試料像間のずれ量から前記アライメント偏向器の動作条件を決定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、得られた試料像間の位置ずれ量を算出する際に、試料像間の相関値が予め定められた値以下の場合に焦点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件に応じた焦点調整量のテーブルを備え、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに、前記テーブルに従い、焦点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項5において、前記テーブルはレンズと試料間の距離を変数のひとつとして備えていることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
荷電粒子源から放出される荷電粒子線を調整する光学素子と当該光学素子に対して、軸調整を行うアライメント偏向器、及び/又は前記荷電粒子線の非点を調整する非点補正器を備えた荷電粒子線装置において、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させたときに得られる画像のずれを評価する制御装置を備え、
当該制御装置は、
前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる前に、前記荷電粒子線の焦点或いは非点の評価、又は調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記制御装置は、前記荷電粒子線の焦点或いは非点の評価、又は調整を、前記アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項7において、
前記アライメント偏向器の偏向条件と光学素子の条件を変化させ、それぞれの条件で得られた試料像間の位置ずれ量から前記アライメント偏向器の動作条件を決定することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項7において、
アライメント偏向器の偏向条件を変化させ、得られた試料像間の位置ずれ量を算出する際に、試料像間の相関値が予め定められた値以下の場合に焦点調整と非点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項7において、
アライメント偏向器の偏向条件を変化させる毎に、初めに焦点調整を行い、次に非点調整を行うことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項7において、
前記制御装置は、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量を別の補正器で補正しながら、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項7において、
前記制御装置は、焦点調整値または非点調整値を1回変化させ、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量を用いて調整時のすべての位置ずれ量を補正しながら、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項7において、
前記制御装置は、焦点調整値または非点調整値を1回変化させ、アライメント偏向器の偏向条件により発生する試料像間の位置ずれ量を算出し、その位置ずれ量のうち、調整時に取得した画像に対応した部分を用いて、焦点調整または非点調整を実施することを特徴とする荷電粒子線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−141632(P2007−141632A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−333511(P2005−333511)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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