説明

荷電粒子線装置

【課題】低真空下における光を検出信号源とした検出方法と従来技術であるイオンを検出信号源とする検出方法それぞれの性能・機能を最大限に引き出し、検出部の最適構成を考案することで、得られる画像に付加価値を与えて、その観察画像を幅広い分野のユーザに提供すること。
【解決手段】低真空下における画像情報を持った光の性質を最大限に生かし、この検出器構成の最適化と従来検出方法との融合を図る。本発明の構成により、ガスシンチレーションによる光を使った画像の特徴と、従来技術のイオン電流検出法の画像の特徴を併せ持った検出器を構成し、同時に観察することを可能にする。さらに、高真空用検出器と併用可能となる最適な構成により、真空モードに捉われずに幅広いユーザに画像を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線やイオン線等の荷電粒子線を用いる荷電粒子線装置に係り、特に、少なくとも真空紫外光領域から可視光領域までの領域の光を検出する手段、及び光の検出とイオン電流検出の併用化が可能な荷電粒子線装置に係る。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡に代表される荷電粒子線装置では、細く集束された荷電粒子線を試料上で走査して試料から所望の情報(例えば試料像)を得る。
【0003】
このような荷電粒子線装置では、従来から低真空(1Pa〜3000Pa程度)領域における観察手法として、比較的エネルギーの高い反射電子を利用した観察が主であった。その理由は、低真空下に存在する多くのガス分子と画像信号を持った電子それぞれが衝突を繰り返すことで、この検出過程で、画像情報を持った電子のエネルギーは失われ、検出器まで行き着くことができないことから、よりエネルギーの高い電子、つまり反射電子を利用したものが容易に観察できる方法とされていたからである。得られる画像は、観察サンプルの材料の種類、詳しくは原子番号効果が顕著に現れ、特に材料分野での表面観察や、その表面の分析に現在も多く利用されている。さらには、高真空/低真空問わず、速い走査速度(TV−Scanなど)に十分対応しているため、主力検出器として利用されてきた理由のひとつでもある。
【0004】
しかし近年、電子の持つエネルギーが小さい二次電子を利用した検出手法が盛んに研究されている。例えば、特許文献1,2,3が存在する。その多くは、試料上方に予め電極を配置し、試料から発生した二次電子を加速させ、試料室内に存在するガス分子と衝突・増幅を繰り返すカスケード増幅を利用した手法である。
【0005】
この方法は大きく2種類の検出方法で知られている。一つは増幅した二次電子そのものを検出する電子電流検出法、もう一方は、二次電子とガス分子が衝突した際に生成されるプラスイオンを検出するイオン検出法である。
【0006】
従来技術の代表例として、電子電流法では特許文献1が、イオン電流法では特許文献2,3があげられる。
【0007】
得られる画像はどちらも、基本的な信号源が観察サンプルからの二次電子であることから、高真空二次電子画像に酷似しており、反射電子像とは異なる性質の画像、つまり観察サンプルの極表面の情報を持った画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】US 4785182
【特許文献2】特開2001−126655号公報
【特許文献3】特開2006−228586号公報
【特許文献4】特開2003−515907号公報
【特許文献5】特開2004−503062号公報
【特許文献6】US 6,781,124 B2
【特許文献7】US 7,193,222 B2
【特許文献8】US 6,979,822 B1
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Molecular Spectra and Molecular Structure D. Van Nostrand Company, Inc.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし一方で、高真空二次電子像や反射電子像とは異なり、速い走査速度での観察が困難という性能面での技術的な困難がある。理由として、電子とイオンのカスケード増幅過程において流動速度が比較的遅いイオンが、画像を形成する電子と媒介しているために、最終的に観察する画像と一次電子ビームの走査速度に違いが生じることが原因だと考えられる。つまり、物理的に検出速度の限界がある。
【0011】
近年は特に、低真空下における画像のニーズは、観察サンプルの極表面画像の取得であり、高真空の二次電子画像とも十分比較できる質の高い二次電子観察である。また、これら低真空下での二次電子観察が求められる分野は、生物・化学材料分野,地質学分野,半導体分野など多岐にわたる。
【0012】
そこで本発明は、低真空下におけるサンプルの極表面観察をするための方法として、これまで検出してきた電子やイオンではなく、光を信号源とした検出手段を検討してきた。
【0013】
この検出手段を利用した検出方法及び画像観察方法は、従来技術として特許文献4,5及びこれに類似した特許文献6,7,8などがある。
【0014】
放電(プラズマ状態を含む)状態中の電子やガス分子,イオンに高いエネルギーが与えられると基底状態から励起状態のエネルギー準位に遷移し、まもなく(数nsの間、励起状態を保ち、その後すぐに)基底状態へと戻る。この基底状態に戻る際に、遷移したときのエネルギーに相当する光子を放出する。この光は特にガスの種類、すなわち原子または分子固有のスペクトルを持った光である。この発光現象(ガスシンチレーション)を利用した検出方法の場合、当然のことながら光を検出しているため、早い走査速度への対応は十分な応答速度を有し、また得られる画像も高真空二次電子像に酷似している。
【0015】
上記文献を検討すると、ガスシンチレーションの発光現象で生じる光の種類についての記述がなく、さらなる性能向上や付加価値を見出す内容として応えるものではなかった。
【0016】
この現象を利用する場合、特に重要な点はどのような種類の光を取り扱っているかによって最適化のアプローチの仕方が異なる。
【0017】
真空内で起こっている発光のスペクトルは、導入するガスの種類に依存している。この種の光の波長は、通常SEMで使用しているシンチレータの発光(約420nm近傍)の波長とは異なり、さらに短い波長の真空紫外領域まで広がっていることを本発明者は発見した。
【0018】
光の波長が真空市外領域まで広がっているため、特許文献4,5で示されるような技術では効率的に検出することに限界があると考えられる。なぜならば、前記のように通常SEMで使用される光を使った検出器は、シンチレータの発光スペクトルにあわせてライトガイドの材質と光電子像倍管が選択されており、それ以外の波長に対しては少なくともライトガイドの透過率,光電子増倍管の光−光電子変換率は大きく低下しているからである(図4,図5参照)。
【0019】
本発明の一つの目的は、低真空下における光を検出信号源とした効率的な検出方法を提供することにある。
【0020】
さらに、上記の目的の他、光の検出と、イオン電流検出を併用することを検討した。
【0021】
そのアプローチとして、上記、光の性質を考慮した上で、従来検出方法、特にイオン電流検出は、構造そのものが比較的簡単であることから、画像情報を持った光を検出する方法とイオン電流検出を組み合わせる手段も十分考えることができる。
【0022】
実験により、従来検出方法のイオン電流検出による画質と、画像情報を持った光を検出した画質とで、像質の違いを確認することができた。共に非常に高真空二次電子画像に近い画像ではあるが、観察対象である試料の種類によってコントラストの違いが得られることから、非常に有用な像質の違いであり、さまざまなサンプルの観察に対応できることを示唆している。これは、従来技術でカバーしてきた分野のユーザに加えて、異なった幅広い分野のユーザにも有用であることを意味している。
【0023】
当然のことながら、画像情報を持った光を扱う場合、TV−Scanのような高速走査にも十分対応する反応速度を有している。
【0024】
そこで、本発明の更なる目的は、光を検出信号減とする検出方法と、イオンを検出信号源とする検出方法それぞれの性能・機能を最大限に引き出し、検出部の最適構成を考案することで、得られる画像に付加価値を与えて、その観察画像を幅広い分野のユーザに提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の基となった実験によると、発光している光の波長は可視域の光も存在するものの、やはり真空紫外域からの可視域の光を多く含んでいた。そこで、本発明では、扱う光の性質を十分考慮して、真空紫外域から可視域まで検出可能な構成にした。
【0026】
そこで、本発明では、光を検出する検出部は、少なくとも真空紫外光領域から可視光領域の光を透過率できる材質からなるライトガイド(光導波路)を有することとした。
【0027】
また、光の検出とイオン検出を併用するため、低真空(1Pa〜3000Pa)に制御された試料室を有し、
前記検出器が、少なくとも一つ以上の電極に+300〜+500Vが印加された陽電極を有し、この近傍に配置されたライトガイド(光導光路)で画像情報を持った光を検出し、ライトガイドに結合された光電子増倍管で光を光電子に変換・増幅後、画像を形成する制御部と、
前記電極とは電位が異なる別の電極から画像情報を持ったイオン電流を電流信号として検出し、画像を形成する制御部から成ることとした。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、低真空下における光を検出信号源とした検出方法と従来技術であるイオンを検出信号源とする検出方法それぞれの性能・機能を最大限に引き出し、検出部の最適構成を考案することで、得られる画像に付加価値を与えて、その観察画像を幅広い分野のユーザに提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略図。
【図2】本発明の一例である検出器とEverhart Thornley型検出器(高真空二次電子検出器)の拡大図。
【図3】空気の発光スペクトル分析結果図(非特許文献1より)。
【図4】アクリルと石英の光の透過率を示した図。
【図5】光電子増倍管の放射感度曲線図。
【図6】本発明の一例である検出器の電極構成例を示した概略図。
【図7】本発明の一例である検出器の電極構成例を示した概略図。
【図8】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図9】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図10】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図11】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図12】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図13】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図14】本発明の一例である検出器のライトガイドと電極構成例を示した概略図。
【図15】本発明の一例である検出器のライトガイド、及びセミイン型対物レンズを構成した概略図。
【図16】本発明の一例である検出器で取得した画像と従来方法で取得したSEM画像を示した図。
【図17】本発明の一例である検出器で取得した画像と従来方法で取得したSEM画像を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下では、本発明の代表的な一実施例について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0031】
本実施例では、画像情報を持った光を検出する走査電子顕微鏡のうち、低真空(例えば、1Pa〜3000Pa)に制御された観察試料室内で起こるガスシンチレーションの発光現象によって得られる画像情報を持った光を検出する検出部と、電子とガス分子のカスケード増幅(ガス増幅)によって得られる画像情報を持ったイオン電流を検出する検出部を備え持つ検出器に関する実施例を示す。
【0032】
図1には、本発明の一例である検出器を配置した走査電子顕微鏡の外観構成を模式的に示した構成図を示した。
【0033】
図1に示す走査電子顕微鏡は、対物レンズ4を含む電子光学系,観察試料室8,ライトガイド20で検出された光を光電子に変換し増幅する光電子増倍管21と出力される画像信号を処理して画像を形成する制御部22、また同様に、検出された二次電子起因の正のイオン電流信号を信号処理して画像を形成する制御部22,制御部に接続された画像処理端末23等により構成される。画像処理端末23には、形成画像を表示するための表示手段や、当該表示手段に表示されるGUIに対して装置の操作に必要な情報を入力する情報入力手段等を備えている。なお、電子光学系の各構成要素、例えば一次電子ビームの加速電圧,各電極に印加する電流・電圧などは、自動もしくは、ユーザが画像処理端末23上で所望の値を入力し、観察条件制御部24により調整される。
【0034】
走査電子顕微鏡に備える電子源1は、一般的には0.3kV〜30kVの一次電子ビーム2を照射する。複数段のレンズ3は、観察に適した条件に制御されているものとし、一次電子ビームを収束する作用を持つ。対物レンズ4も同様に一次電子ビームを収束する作用を持ち、観察対象である試料5上に結像され、観察に適した焦点を結ぶ。偏向器25は、試料5上の一次電子ビームの照射位置を所望の観察視野範囲に従って走査させる。また偏向器25を制御する偏向信号制御部26によって、走査速度を可変することが可能であるものとする。一次電子ビームの照射に伴って試料からは二次電子6や反射電子7が放出される。
【0035】
観察試料室8の内部の真空度は、該観察試料室8への大気導入口27のニードルバルブ28の閉開によって制御する。本低真空SEMは低真空での観察モードの他に、高真空での観察モードを備えており、高真空での観察時には、ニードルバルブ28を閉じ、観察試料室8の内部を10-3Pa以下の高真空状態に保つ。このとき、試料5から発生した二次電子6は、高真空用の二次電子検出器で検出される。通常、高真空用二次電子検出器は、Everhart Thornley型検出器29と呼ばれるシンチレータ55と光電子増倍管からなる検出器で二次電子6を検出する。シンチレータ近傍は、+10kV43が印加されており、更に二次電子6の捕集効率を高めるため、典型的には+300Vを印加した二次電子コレクタ電極30によって観察試料室8内に電位勾配を供給する。
【0036】
反射電子7は、対物レンズ4直下に設置する反射電子検出器31によって検出する。反射電子検出器31には、半導体検出器もしくはマイクロチャンネルプレートを用いる。半導体検出器を用いた場合は、後述する低真空での観察モードでも反射電子検出を行える。以降では、反射電子検出器31が半導体検出器であるとする。
【0037】
検出された二次電子,反射電子起因の信号は電気的に増幅された後、制御部22でA/D変換され、一次電子ビーム2の走査と同期させて、画像処理端末23に表示する。これにより、観察視野範囲のSEM画像が得られる。
【0038】
低真空での観察時には、ニードルバルブ28の閉開によって、試料室8内を一定のガス圧力19に保つ。また、二次電子コレクタ電極30の電位が接地電位に切り替えられる。典型的な試料室内部のガス圧力19は、1〜300Paであるが、特別な場合、3000Paまで制御可能である。
【0039】
以下に、低真空での観察を目的として、ガスシンチレーションの発光現象及び電子とガス分子によるカスケード増幅(ガス増幅)を経て、画像を形成する過程を以下に示す。
(1)低真空雰囲気(1Pa〜3000Pa)に制御された試料室8おいて、一次電子ビ ーム2が照射された試料5から二次電子6が発生
(1)−1 一次電子と試料室中の中性ガス分子の衝突で、電子とプラスイオンを生成 (1)−2 試料5から二次電子6が発生
(2)試料5から発生した二次電子6は、試料上方に配置された第一電極9(+300V 〜+500V)に引き寄せられ、中性ガス分子と衝突を繰り返し、電子なだれによる カスケード増幅により電子とプラスイオンを生成。一方、反射電子は一次電子と同じ エネルギーを持っており、同じく中性ガス分子と衝突し、電子とプラスイオンを生成
(2)−1 試料からの二次電子の電子なだれにより、二次電子に起因する電子10と 、二次電子に起因するプラスイオン11が増幅
(2)−2 同様に反射電子に起因する電子12とプラスイオン13を生成
この段階の正のイオン電流つまり、二次電子に起因するプラスイオン11と反射電子に起因するプラスイオン13を検出し、画像を取得する方法をイオン電流検法と呼ぶ。さらに、ガスシンチレーションの発光現象については以下の過程を経て画像を取得することになる。
(3)試料上のプラス電極によって形成される電界により、プラズマ状態(放電)の大き なエネルギーから、電子と中性ガス分子にエネルギーが与えられ、基底状態14から 励起状態15に遷移
(3)−1 基底状態14(安定した原子/分子状態)から励起状態15(不安定な原 子/分子の状態)
(4)不安定な励起状態から基底状態に戻る際に、励起状態に遷移した遷移エネルギーに 相当する光エネルギーを持った光すなわち、画像情報を持った光(紫外光/可視光) 17が生成
(4)−1 観察試料室8内の中性ガス分子18の種類,ガス圧力19により発光波長ピ ークが異なる光が発生
(5)(4)で発光した光をライトガイド20表面で直接検出し、光電子増倍管(PMT )21で光を電子に変換/増幅後、画像を形成制御部22を介して観察
ここで、図2に本発明の検出器41の拡大図を示す。
【0040】
ライトガイド20の近傍に設置された第一電極9には+300V〜+500Vの正の電圧が印加され、観察試料室内に電位勾配を供給される。この電位勾配によって、前記(2)の電子なだれによるカスケード増幅と同時に前記(3)(4)のガスシンチレーションを発生させる。前記(2)による画像情報を持った正のイオン電流つまり二次電子に起因するプラスイオン11と反射電子に起因するプラスイオン13は、第一電極9とは異なる電位の別の第二電極32で検出され、電気的な増幅回路を経て制御部22で観察画像として構築される。
【0041】
一方、前記(3)(4)による画像情報を持った光17は、ライトガイド20で直接検出、ライトガイド内を透過し、ライトガイドに結合された光電子増倍管21に入射。その後、光は光電子に変換・増幅されのち、所望の利得で電気的な増幅回路42で増幅後、同様に制御部22で観察画像として構築される。
【0042】
図2に示すライトガイドは、真空紫外域から可視域までの光を十分透過できるものを備えるものとする。また、光電子増倍管も真空紫外域から可視域まで光を光電子に変換,増幅できる性能を備えるものとする。
【0043】
図3を用いて、以下に、この種の光を検出するために、真空紫外域から可視域までの光に対応する必要性について説明する。図3は、非特許文献1の空気の発光スペクトル分析結果44である。同図が示すように、空気に含まれる主な構成分子は窒素であり、得られた発光スペクトルも窒素分子に起因したもの真空紫外域から可視域にわたり観測されている。前記に示したように、通常低真空SEMはニードルバルブ28の閉開によって、観察試料室8内を一定のガス圧力19に保つ仕組みを備えており、一般的には大気(空気)を導入している。したがって、画像情報を持った光のスペクトルはほぼ窒素のスペクトルと同等であることが考えられる。
【0044】
さて、この真空紫外域から可視域の光を検出するためには、この範囲の光を十分透過するライトガイド(光導波路)であることと、光電子増倍管で光から光電子に変換・増幅が可能であることが必要となる。以下の式を用いて、真空紫外域から可視域までの光を検出するときの効果について示す。
【0045】
図4は、ライトガイドの材質例として、アクリルの光の透過率45と、石英の光の透過率46を示している。石英は同図が示すように、アクリルに比べて真空紫外域から可視域の光を十分透過している。
【0046】
また、図5は、光電子増倍管の放射感度曲線の比較であり、通常SEMで使用する光電子増倍管の放射感度曲線47と、本発明で使用する光電子増倍管の放射感度曲線48を示している。
【0047】
ライトガイドに入射する光の光子の数をN,λを波長、hをプランク定数(6.626×10-34Js)、cを真空中の光の速さ(2.998×108m/s)、光電子増倍管での増幅率をG、ライトガイドの光の透過率における影響をL(λ)、光電子増倍管の対応波長範囲に関する放射感度をP(λ)、ライトガイドに入射する光の最大波長λmaxから最小波長λminとすると、光電子増倍管から画像信号として取り出される検出信号量Iは、

で表現される。したがって、式(1)より、検出信号量が大きくなる条件は、
a.光電子増倍管の増幅率Gが大きいこと
b.ライトガイドに入射する光の光子数Nが大きいこと
c.ライトガイドの透過率と光電子増倍管の放射感度に関する右辺

が大きいこと
これらのうち、ライトガイドの材質と光電子増倍管の種類によるものはa.とc.である。一般的に、光電子増倍管の光電子の増幅率は105〜106であるため、入射波長に関連する項目はc.であると考えられる。ここで、ライトガイドに入射する光の波長が、可視光域で最大波長λmax=600nmから真空紫外域で最小波長λmin=200nmであると仮定する。また、ライトガイドと光電子増倍管を通常標準SEMでの仕様に対し、本請求項記載の仕様のものを採用した場合とで

の値を比較してみる。
【0048】
・通常SEMで使用されている構成(400nm近傍から600nm)の場合

・紫外域(200nmから600nm)まで十分対応した構成の場合

と、約2.18倍の効果が見込める。
【0049】
以上、ガスシンチレーションの発光現象における光のスペクトルの考察と、画像信号として取り出される検出信号量を考察することで、上記発明の重要性を確認することができた。
【0050】
これらの結果より、最適構成を備えた低真空走査電子顕微鏡によって、画像情報を持った光を用いた検出手法の性能を引き出すことが可能となる。
【0051】
なお、ライトガイド20の形状は、できるだけ検出面積が広い方が望ましく、さらには、表面積を大きくするために、ライトガイド表面に凸凹を形成しても良い。
【0052】
一方、画像情報を持ったイオン電流の検出は、構造的に比較的簡単に配置することが可能である。電子なだれ(カスケードガス増幅現象)は、正に印加された第一電極9近傍で最も活発に生じていることから、図2に示すような位置に、第一電極9とは異なる電位で別の第二電極32を設け、これでイオン電流、つまり二次電子に起因するプラスイオン11と反射電子に起因するプラスイオン13を検出する。
【0053】
このようにして得られた画像信号電流は、図1または前記のように制御部22で信号処理され観察することが可能となる。
【0054】
このように、ライトガイド近傍に電極を配置することでカスケード増幅現象が起こっているところで発生する光(特に真空紫外光)も効率的に検出できるという点で非常に有効である。上記の実施例では、ライトガイドの周囲に電極を配置する構成としたが、近傍であれば同様の効果が期待できる。
【実施例2】
【0055】
第一電極9及び第二電極32の形状について説明をする。
【0056】
第一電極9の主とする働きは、所望のガス圧力に調整された観察試料室8内に電位勾配を形成することであるが、具体的には、ガスシンチレーションによる発光現象と電子なだれ(カスケードガス増幅現象)とを活発に起こさせる集中した電位勾配を形成することである。
【0057】
したがって、第一電極9の形状は、数μm〜数mm間隔のメッシュ状,プレート状,複数の棒状、または図6に示すようなリング状、が安価に現象の効果を得ることができる。特に複数の棒状の電極を作る場合、試料5方向に向いた側の先端部は、針のように尖った形状に成型しても良い。
【0058】
この第一電極9の形状で注意することは、光を検出するライトガイド20が近傍に配置されているため、ライトガイド20に入射してくる光を阻害しないようにする必要がある。また、第一電極9は前記のように画像に直接寄与する現象を制御していることになる。
【0059】
そこで、この第一電極9の電圧と、観察試料室のガス圧力とを制御することが可能とした。予め、各電圧,各ガス圧力,各ガスの種類に応じた最適条件テーブルを実験的に求め、GUI上でユーザの求める必要な情報を入力するだけで自動的に最適条件が選択されるシステムを構築しても良い。
【0060】
また、第二電極32の主とする働きは、電子なだれ(カスケードガス増幅現象)で増幅され、画像情報を持ったイオン11、及び13を検出することである。したがって、第二電極32は所望の利得で増幅する電気的な増幅回路42と接続され、検出した信号電流は直ちに電気増幅されなくてはいけない。また前記のように、正に印加された第一電極9の極近傍が最適位置であるため、第一電極9の形状で注意したように、ライトガイド20に入射してくる光を阻害しないようにする必要がある。
【0061】
したがって、この第二電極32の形状も同様に数μm〜数mm間隔のメッシュ状,プレート状,複数の棒状、または図6に示すようなリング状などが比較的安価に効果を得ることができる。配置に関しては、第一電極9よりも内側または外側、どちらに配置しても良い。
【実施例3】
【0062】
図8に請求項1の構成を備えた荷電粒子線装置において、別の実施例を示す。ライトガイドの形状以外は実施例1で示したもの同様である。本ライトガイド形状では、入射する光とライトガイドの形状を考慮することで他のものと異なる。
【0063】
本ライトガイドは、入射する光の方向の向かって尖ったテーパ状をしており、さまざまな方向から入射する光に対して可能な限り、面で受光するようにしている。この角度は、光を漏れなく伝達させるために、以下に示すようなライトガイドの屈折率n1と光の入射角θから計算される全反射臨界角ψを考慮した角度で成型しても良い。

入射角θが90度、つまりライトガイドの面に対して垂直に入射する場合、一般的なライトガイドの材料(アクリル PMMA樹脂)では屈折率nが1.49〜1.5付近であり、全反射臨界角ψは上式より約42度である。
【0064】
また、ライトガイドが円柱状の場合、円柱底面で受光した光は、その位置で立体角の半角に相当する約42度以内で放射された光のみが、ライトガイド内部の外周面で全反射し、もう一方の端の面まで伝達される。この全反射は、損失が少ない効率のよい伝達である。等方的に発生する光は、空気の屈折率n0=1とした場合、

の割合でライトガイド内に閉じこめられて進む。
【0065】
この式のように、光の伝達の割合を大きくする検討項目の一つとして、できるだけ屈折率が大きい材質を選択した方が良く、これは高真空二次電子検出器にも言えることである。
【実施例4】
【0066】
図9に請求項1の構成を備えた荷電粒子線装置において、別の実施例を示す。ライトガイドの形状以外は実施例1で示したもの同様である。本ライトガイド形状では、入射する光とライトガイドの形状を考慮することで他のものと異なる。
【0067】
このライトガイドの場合、細い線状の光ファイバー56を数本で構成し、それらをバンド51束ねる。束ねられた光ファイバーライトガイド50の検出受光面側は、ラッパ状に広がっており、さまざまな方向から検出器に向かってくる光を検出する。入射する光はライトガイドに向かって、画像信号源である試料5方向からほぼ放射的に入射してくるため、これを考慮し、ラッパ上のさまざま方向に向いた光ファイバーの先端部で検出する方法である。
【0068】
光は、束ねられた光ファイバーライトガイド50内のそれぞれのファイバー内で全反射して終端まで伝達される。その後、伝達された光は直ちに、結合された光電子増倍管へと導かれ、電気的な増幅回路42を介して画像が形成される。
【実施例5】
【0069】
図10に別の実施例を示す。ライトガイドの形状以外は実施例1で示したもの同様である。本ライトガイド形状では、画像情報を持った光を検出する方法に特化し、第二ライトガイド39を対物レンズ近傍まで伸ばし、観察対象である試料5のすぐ上に配置し、これと共に第一電極9に相当する第五電極40を構成することから、他のものと異なる。
【0070】
この実施例の目的は、試料5と検出部であるライトガイド間の距離を短くすることであり、観察作動距離(WD:ワーキングディスタンス)を可能な限り短くでき、より高効率に光を検出し高分解能観察が可能であるという特徴を持つ。
【0071】
図10に示すように、一次電子ビームが本実施例のライトガイド近傍を通過することから、この近傍には導電性を施す。試料5と第五電極40間で起こるガスシンチレーションの発光現象による光は、直ちに第二ライトガイド39で検出されることになる。配置する第二ライトガイド39は、図10のように、対物レンズ近傍でリング状に取り囲む形状でも良い。
【実施例6】
【0072】
図11に本発明の別の実施例を示す。ライトガイド20,第一電極9,第二電極32以外のものは実施例1で示したものと同様である。本実施例は、上記ライトガイド20,第一電極9,第二電極32以外の実施例1に、高真空用二次電子検出器を構成することで、他のものと異なり、これを実現するための実施例が図11に示してある。
【0073】
ライトガイド20は、兼用ライトガイド33として高真空二次電子検出器用と低真空化での光の検出用に二手に分かれた構造とする。一材料,一部品で構成しても良いし、真空紫外域から可視域まで透過可能で任意の形状に曲げることが可能である光ファイバーで構成しても良い。
【0074】
また第一電極9に相当する第三電極34は、例えば図11のように、高真空二次電子を軌道を阻害しない位置に配置する。前記実施例1と同様に、形状は、数μm〜数mm間隔のメッシュ状,リング状,プレート状,複数の棒状などが比較的安価に効果を得ることができる。
【0075】
また第二電極32に相当する第四電極38は、前記実施例1と同様に、第三電極34の内側ないし、外側に配置する。形状も同様に数μm〜数mm間隔のメッシュ状,リング状,プレート状,複数の棒状などが比較的安価に効果を得ることができる。
【0076】
実施例3で得られる効果は、真空モードを問わず画像を観察する目的において、統合化された検出器を備える荷電粒子線装置をユーザに提供できることである。
【0077】
現存の走査電子顕微鏡では通常、高真空下においては高真空二次電子観察専用検出器、低真空下においてはイオン電流検出による低真空二次電子観察専用検出で構成され、観察試料室8にはそれぞれを配置するためのポートが装備されている。
【0078】
しかし、本実施例で構成される場合、観察試料室に準備するべき検出器用のポートは、真空モードを問わず統合された検出器のポートのみで構成可能である。この効果は、多種多様な観察を要望するユーザが増えてきている近年のニーズに対して、各種分析装置(WDX:波長分散型X線分析装置、EDX:エネルギー分散型X線分析装置などX線を扱うその他装置、EBSP:結晶粒子解析装置、CL:カソードルミネッセンス分光装置、ラマン分光装置など)に加え、特別に設計された顧客要望の特別付属装置などを取り付ける拡張性のある走査電子顕微鏡を提供することが可能である。また、得られる像質の違いから、真空モードの概念を取り払い、特徴ある二次電子像を観察することで可能で、幅広いユーザが観察対象の試料の種類を気にすること無く、シームレスに表面観察を行えるという効果が見込める。
【実施例7】
【0079】
図12に別の実施例を示す。実施例1で示した構成と同様であるが、本実施例は、光電子増倍管を現存のもの、すなわち対応する波長域が可視域(特に420nm近傍)のまま使用する場合の実施例であることから、他のものと異なる。
【0080】
光を光電子に変換・増幅する光電子増倍管の対応波長域が可視域であることから、効率的に光電子に変換するために、真空紫外域の光が含まれる検出光の波長を何らかの手段で可視域の光に変換する必要がある。その手段として、例えば図12のように、ライトガイド20の表面に、真空紫外域の光に反応し、可視域の光を発光する蛍光体と塗布することで可能になる。この種の蛍光体は、BaMgAl1017:Euなどの成分からなり、近年のPDP(プラズマディスプレイ)などに使用されているものである。真空紫外域の光によって発光する蛍光体を使用する場合、直接ライトガイドで検出するよりも、若干の応答遅れ(数百μs)が予測されるが、通常SEMで言う高速走査速度は〜0.033s/frame(〜33ms/frame)であるため、問題にならない応答である。この実施例に使用する波長変換用ライトガイド35の表面は凸凹を形成し、蛍光体を塗布しやすい表面にしても良い。またこの凸凹は、実施例2のようにライトガイド材質による臨界反射角を考慮した形状に予め加工を施したものでも良い。
【実施例8】
【0081】
次に、実施例7と同様の発想で、入射する光の波長を変換することを考える。便宜として、図2の本発明の検出器41を使って説明する。
【0082】
図2に使用しているライトガイド20を、波長変換用ライトガイド35を使用するとし、このときの光電子増倍管を通常SEMで使用しているものそのもので構成する。
【0083】
波長変換ライトガイドは、紫外域の光を可視域の光に変換するものであり、変換効率に多少の問題を抱えているが、光電子増倍管を通常SEMで使用しているものが使えることで利点がある。この場合、実施例7に非常に類似手法であるが、蛍光体を塗布する手間を省き、単にライトガイドの材質を変更するだけでも十分効果が見込める。
【実施例9】
【0084】
図13に、別の実施例を示す。実施例1で示した構成と同様であるが、本実施例は、ライトガイド近傍の第一電極9に相当する電極に関し、画像情報を持った光を十分透過できる透明電極36をライトガイド表面に蒸着することから、他のものと異なる。
【0085】
近年PDP(プラズマディスプレイ)用として開発された技術が容易に利用することが可能となってきている。本実施例の透明電極もその一つであり、これを本発明に応用させる。扱う光の種類、すなわち真空紫外域の光と蛍光体の発光と透明電極からなるPDPの技術は、本実施例の検出器構造に十分応用できる。図13のように透明度及び透過性の高い複合ライトガイド37の表面にITO蒸着膜などの導電性を持った透明度の高い薄い膜を蒸着させる。この導電性を持った透明度の高い薄い膜は、直ちに第一電極9に相当する働きをさせることで、実施例1や実施例3に示したようなガスシンチレーションでの発光現象やカスケードガス増幅現象を発生させることが可能である。実施例1や実施例3と大きく異なるのは、第一電極9や第二電極32のような構造物を検出部であるライトガイド近傍に配置することで入射する光が阻害されることが全く無いことである。
【0086】
複合ライトガイド37の表面は、凸凹を形成することが望ましく、その突起は、実施例1で示した第一電極9と同様な効果が得られれば良い。
【0087】
この実施例では、単にライトガイド表面に透明電極を蒸着するだけでも良く、または、図13に示すように、この複合ライトガイド37を使った二重構造にし、一方に透明電極36を蒸着、もう一方には実施例5で示した蛍光体を塗布する形態にしても良い。
【実施例10】
【0088】
図14に、別の実施例を示す。本実施例は、光行路をライトガイド20と分岐ライトガイド(光ファイバー製)65を使って分岐し、高真空時はライトガイド、低真空時は光ファイバーからなる光行路を使用し、一つの光電子増倍管を使って検出、画像形成をする点において、他の実施例と異なる。
【0089】
アクリル又は石英など、広範囲の波長光を透過可能なライトガイドは、材質,製造上などの課題から光行路を分岐することは難しい。また試料室内で放射された光の方向は必ずしも一方向ではないため、光行路は自由に曲げることが可能で、最適な位置に自由に配置できることが望ましい。
【0090】
図14に示す構成においては、上記記載の課題,問題点を一度に解消することができる。この際、(実施例1)で説明のように、紫外領域から可視域まで動作可能な特性の光電子増倍管を備えることが望ましい。低真空での光検出で使用する光ファイバ先端検出部周辺(図14中、分岐ライトガイド65先端部及び第一電極9付近)には前記実施例で説明したような電極を備える。
【実施例11】
【0091】
図8に示す構成に関連し、光行路(ライトガイド)において、試料側に向いた面だけでなく、ライトガイドの側面からも検出を可能とすることができる。一般的なライトガイドの使用方法として、試料側に向いた平面から検出することが挙げられるが、発光する光を最大限に検出するために、ライトガイド側面からも検出できる。
【実施例12】
【0092】
図15に別の実施例を示す。セミイン型対物レンズ62を用いて高分解能化を図ると共に、真空作動排気用オリフィス66を有し、高真空と低真空両真空モードでの観察を可能とし、セミイン型対物レンズの発生する漏れ磁場の影響によって対物レンズ内に巻き上げられる二次電子64と、対物レンズ内に残留するガス分子と衝突するガス増幅作用を利用することで、その際に発光する光を検出,画像形成することから、他の実施例と異なる。
【0093】
低真空下でセミイン型対物レンズを用いる場合、一般的には最大磁場となるレンズ主面位置に真空作動排気用オリフィスを設置する。オリフィス穴径は約100μmから1000μm程度が選択され、試料から発生した二次電子は、セミイン型対物レンズの磁場の影響を受けて巻き上げられ、この穴を通過しレンズ内へ引き込まれる。この磁場による二次電子の巻き上げ作用を利用した荷電粒子線装置では、ExB(ウィーンフィルタ)にて一次電子ビームに影響を与えることなく、試料表面から巻き上げられた二次電子のみをほぼ100%に近い検出効率で二次電子を捕獲することが可能である。
【0094】
この作用を利用し、より多くの二次電子とセミイン型対物レンズの低収差により、光の高効率検出と高分解能を実現する点において、低真空での検出方法として他の実施例とは大きく異なる。
【0095】
最後に得られる画像の効果について、図16,図17に示す。
【0096】
画像情報を持った光とイオン電流それぞれを同時に検出し、同時に観察すると図16に示すような観察写真を撮影することができる。図16では、画像情報を持ったイオン電流像57と、画像情報を持った光を検出した像58を示した。図16に示すように、双方共に高真空二次電子画像と非常に酷似しているが、一部異なるコントラストを確認することができる。試料5の種類に応じて異なるコントラストを持つ画像を同時観察することは、生物・化学材料分野,地質学分野,半導体分野など要望するユーザは多いことが十分考えられる。
【0097】
また、図17では、画像情報を持ったイオン電流検出による高速走査時の画像59と、画像情報を持った光の検出による高速走査時の画像60を示した。この比較をすることにより、画像情報を持った光を検出した場合の特に特徴的な性能が示される。もともと光を用いた検出であり、このことにより、前記記載したように流動速度が比較的遅いイオンとは画像信号の応答性能と関係が絶たれ、またイオン電流検出方法のような電気的な増幅回路による増幅ではなく、光電子増倍管による増幅であるため、TV(〜0.033s/frame)のような高速走査速度に応じて、制御部22で観察画像を形成する信号も高速応答が可能である。
【符号の説明】
【0098】
1 電子源
2 一次電子ビーム
3 複数段レンズ
4 対物レンズ
5 試料
6 二次電子
7 反射電子
8 観察試料室
9 第一電極
10 二次電子に起因する電子
11 二次電子に起因するプラスイオン
12 反射電子に起因する電子
13 反射電子に起因するプラスイオン
14 基底状態
15 励起状態
16 遷移エネルギー
17 画像情報を持った光(紫外域/可視域)
18 ガス分子
19 ガス圧力
20 ライトガイド
21 光電子増倍管(PMT)
22 (画像形成)制御部
23 画像処理端末
24 観察条件制御部
25 偏向器
26 偏向信号制御部
27 大気導入口
28 ニードルバルブ
29 Everhart Thornley型検出器(高真空二次電子検出器)
30 二次電子コレクタ電極
31 反射電子検出器
32 第二電極
33 兼用ライトガイド
34 第三電極
35 波長変換用ライトガイド
36 透明電極
37 複合ライトガイド
38 第四電極
39 第二ライトガイド
40 第五電極
41 本発明の検出器
42 電気的な増幅回路
43 +10kV
44 空気の発光スペクトル分析結果
45 ライトガイド(アクリル)の光の透過率
46 石英の光の透過率
47 通常のSEMで使用される光電子増倍管の放射感度曲線
48 本発明で使用する光電子増倍管の放射感度曲線
49 テーパ状ライトガイド
50 束ねた光ファイバーライトガイド
51 バンド
52 紫外域の光に反応し発光する蛍光体
53 画像情報を持った可視域の光
54 SEM全体制御部
55 高真空二次電子検出器用シンチレータ
56 光ファイバー細線
57 イオン電流像
58 画像情報を持った光の像
59 イオン電流検出による高速走査時の画像
60 画像情報を持った光の検出による高速走査時の画像
61 アース電極
62 セミイン型対物レンズ
63 ExB(ウィーンフィルタ)
64 磁場で巻き上げられる二次電子
65 分岐ライトガイド(光ファイバ製)
66 真空作動排気用オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子源と、
レンズを含み荷電粒子源から放出される一次荷電粒子線を集束して試料上で走査する荷電粒子光学系と、
前記一次荷電粒子線の走査によって試料から発生する信号粒子を検出する検出器と、
前記レンズを制御する制御部と
を備え前記検出手段の信号を用いて試料像を取得する荷電粒子線装置において、
低真空(1Pa〜3000Pa)に制御された試料室を有し、
前記検出器が、少なくとも一つ以上の電極に+300〜+500Vが印加された陽電極を有し、この近傍に配置されたライトガイド(光導光路)で画像情報を持った光を検出し、ライトガイドに結合された光電子増倍管で光を光電子に変換・増幅後、画像を形成し観察を可能とする制御部と、
前記電極とは電位が異なる別の電極から画像情報を持ったイオン電流を電流信号として検出し、画像を形成する制御部から成ることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項2】
請求項1記載の荷電粒子装置において、前記画像情報を持った光を検出する検出部は、少なくとも真空紫外光領域から可視光領域の光を透過率できる材質からなるライトガイド(光導波路)を有することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項3】
請求項1及び請求項2記載の荷電粒子線装置において、ライトガイド(光導波路)と結合される光電子増倍管は、真空紫外光領域から可視光領域までの光を少なくとも量子効率20%〜30%で光電子に変換、そして増幅が可能であることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項4】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、観察試料室のガス圧力の調整と陽電極の電圧を調整し、画像情報を持った光の発光現象と、画像情報を持ったイオン電流増幅現象とを同時に制御可能とすることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項5】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、イオン電流を検出するための電極形状は、メッシュ状またはリング状またはプレート状または複数の棒状からなることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項6】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記ライトガイドをテーパ形状にすることを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項7】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記ライトガイド(光導波路)を複数の光ファイバーで構成し、前記光ファイバーの受光面を検出方向に向けたライトガイドを備えたことを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項8】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、前記ライトガイドを対物レンズ近傍まで伸ばし、観察対象である試料上すぐ上に配置し、前記ライトガイドと共に電極を構成することで画像を形成する光の検出効率を向上させることを目的とした荷電粒子線装置。
【請求項9】
請求項1記載の荷電粒子線装置において、高真空(1.0×10-4Pa〜1Pa)領域で、低真空領域と高真空領域とでそれぞれ画像を形成する光を同一の光電子増倍管を使用することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項10】
請求項1または請求項9からなる荷電粒子線装置において、画像情報を持った光に反応し、発光する蛍光体を前記ライトガイド表面に塗布し、少なくとも光の波長400nmから420nmに波長を変換することを特徴とした荷電粒子線装置。
【請求項11】
請求項1または請求項9及び請求項10からなる荷電粒子線装置において、ライトガイド(光導波路)近傍の陽電極は、前記ライトガイド表面に、画像を形成する光を十分透過する透明でかつ陽電極の機能を持つことを特徴とした荷電粒子線装置。
【請求項12】
請求項1から請求項9記載の荷電粒子線装置において、高真空と低真空を共用する検出器として、ライトガイドと光ファイバーを組合せ、光行路を高真空側と低真空側を分岐し、光電子増倍管は両真空モードにおいて共用する構成を特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項13】
請求項1から請求項9記載の荷電粒子線装置において、ライトガイド側面からの光の検出することを特徴とする荷電粒子線装置。
【請求項14】
請求項1から請求項9記載の荷電粒子線装置において、セミイン型対物レンズを用いて高分解能化を図ると共に、真空作動排気用オリフィスを有し、高真空と低真空両真空モードでの観察を可能とし、セミイン型対物レンズの発生する漏れ磁場の影響により対物レンズ内に巻き上げられる二次電子と、対物レンズ内に残留するガス分子と衝突するガス増幅作用により発光する光を検出、画像形成することを特徴とする荷電粒子線装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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