説明

菌採取用具

【課題】 検査対象の場所に付着した菌以外の菌が混入するのが抑制されて検査の正確さが確保される簡便な菌採取用具を提供する。
【解決手段】 この菌採取用具1は、装着部21aの先端に菌採取部材22が装着された棒状の用具本体2と、用具本体2を収納する収納部材3と、を有するものにおいて、用具本体2はプラスチック材により成型されたものであり、用具本体2の把持部21bをカットするための溝23が形成され、溝23に隣接して表面が平坦で外郭形状が円弧状を成しているカット補助部24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌を採取するための菌採取用具に関する。
【背景技術】
【0002】
食品が取り扱われる工場、倉庫、調理場などの場所に対しては、菌による汚染を抑制する必要性から、定期的に所定の菌(例えば、大腸菌、黄色ブドウ球菌など)の検査が行われるのが一般的である。この検査方法としては、検査対象の場所に付着した菌を拭き取りにより採取して検査する拭き取り検査方法が広く採用されている。このため、検査対象の場所から適正に菌を採取するための菌採取用具が必要とされる。
【0003】
一般的に、菌採取用具は、一方側を菌採取部材が装着される装着部とし、他方側を把持部とする棒状の用具本体と、用具本体を収納する収納部材と、を有する。この菌採取部材は、綿球やガーゼなどである。菌採取用具は、これまでに種々の改良提案がなされている。例えば、特許文献1には、キャップ付きの剛体の収納容器(収納部材)と、把持部の後端がキャップの内側に固着されている棒状の用具本体と、を備える菌採取用具が記載されている。この菌採取用具は、キャップを指でつかんだまま、菌を採取したりその後に収納容器に収納したりすることができるので、検査対象の場所に付着した菌以外の菌が混入するのを抑制して正確に検査をすることができる。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3000661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、菌の検査が定期的に頻繁に行われる場所では、コストがさほどかからない簡便な菌採取用具が望まれる。その場合でも、検査の正確さは確保する必要がある。
【0006】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、検査対象の場所に付着した菌以外の菌が混入するのが抑制されて検査の正確さが確保される簡便な菌採取用具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の菌採取用具は、一方側を菌採取部材が装着される装着部とし他方側を把持部とする棒状の用具本体と、用具本体を収納する収納部材と、を有する菌採取用具において、前記用具本体は、プラスチック材により成型されるとともに、その中間付近に把持部をカット可能とする溝が形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の菌採取用具は、請求項1に記載された菌採取用具において、前記用具本体は、前記溝に隣接して装着部側に装着部の外郭から突出するカット補助部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の菌採取用具は、請求項2に記載された菌採取用具において、前記カット補助部は、その外方表面が平坦であることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の菌採取用具は、請求項2又は3のいずれかに記載された菌採取用具において、前記カット補助部は、その外郭形状が円弧状を成していることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の菌採取用具は、請求項1乃至4のいずれかに記載された菌採取用具において、前記用具本体は、ポリスチレン樹脂により成型されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の菌採取用具は、請求項1乃至5のいずれかに記載された菌採取用具において、前記菌採取部材は、片面に粘着層が設けられたスポンジであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の菌採取用具によれば、指が触れる用具本体の把持部が溝の箇所でカットされて収納部材に収納されるので、検査対象の場所に付着した菌以外の菌が混入するのを抑制することができる。また、溝に隣接したカット補助部を設けると、より容易にカットすることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の望ましい実施形態に係る菌採取用具1を示すものである。菌採取用具1は、所要長さを有する棒状の用具本体2と、用具本体2を収納する収納部材3と、を有する。用具本体体2は、軸方向の一方側を装着部21a、軸方向の他方側を把持部21bとし、装着部21aの先端に菌採取部材22を装着している。
【0015】
用具本体2は、プラスチック材により成型されたものであり、例えば、直径が約4mm、長さが約18cmの略円柱形である。また、用具本体2には、その中間付近に、指が触れる部分である把持部21bをカットする(折り取る)ための、すなわち、把持部21bをカット可能とする溝23が形成されている。この実施形態では、把持部21bの後端から溝23までの距離(すなわち把持部21bの長さ)は、例えば、約5cmとし、溝23の深さは、例えば、約0.3mm〜0.4mmとしている。なお、これらの数値は適宜に変更してもよく、装着部21aと把持部21bの直径を変えてもよい。
【0016】
用具本体2には、更に、溝23に隣接して装着部21a側に、装着部21aの外郭から突出するカット補助部24が形成されている。このカット補助部24の形状を詳しく説明するために、図2(a)、(b)に用具本体2の正面図と側面図をそれぞれ示す。カット補助部24は、その外方表面が平坦にしてある。そして、その装着部21aの外郭から突出する外郭形状は、円弧状、例えば、略円形状又は略楕円形状を成している。この実施形態では、カット補助部24の直径は約5mmである。また、カット補助部24は、図2(b)の側面図に示すように、装着部21aの正面側の実質的片半分のみに形成されている。
【0017】
用具本体2は、前述のように、プラスチック材により成型されたものであるが、プラスチック材は微粒子や菌が付着し難い。また、木材や紙材のようにそれ自体から粉体を発生する場合もないので衛生的である。プラスチック材としては、透明性及び剛性が高いもの、例えばポリスチレン樹脂が望ましく、透明性が高いと汚れなどが発見され易いという利点があり、剛性が高いと拭き取りによる菌の採取やその後の把持部21bのカットが容易である。
【0018】
菌採取部材22には、吸水性に優れている部材が用いられるが、具体的には、スポンジ(例えば、三和化工社製「オプセル」)が用いられる。このスポンジは、片面に粘着層が設けられ、装着部21aを一周するように巻かれることにより、装着部21aの先端近傍への装着が行われる。粘着層が設けられたスポンジは、プラスチック材の成型品である用具本体2の装着部21aに容易に装着できる。スポンジは、綿球やガーゼのようには、ささくれないので菌の採取などにおいて取り扱い易い。
【0019】
収納部材3は、透明性の高いプラスチックフィルムの袋である。上部付近にはそれより下部を密閉にするための密閉手段であるジッパ31が設けてある。
【0020】
次に、菌採取用具1の使用方法の具体例について説明する。使用前では、図1に示すように、用具本体2は収納部材3に収められ、滅菌された状態にある。次に、把持部21bを親指と他の1本の指の間に挟んで用具本体2を収納部材3から取り出し、適量の希釈液(例えば、生理食塩水、リン酸緩衝液)4を収納部材3の中に注入する。用具本体2の菌採取部材22をその希釈液4に浸して湿らせる。次に、検査対象の場所に付着した菌を菌採取部材22により拭き取ってそれに採取する。次に、把持部21bを溝23でカットし、図3に示すように、菌採取部材22が装着される用具本体2の残りを収納部材3に再収納して密閉する。これにより、菌採取部材22の菌は希釈液4中に拡散する。希釈液4に含まれる菌は、インキュベータにより培養され、その後に所定の菌の数を調べる試験が行われる。
【0021】
ここで、把持部21bの溝23でのカットは、用具本体2の装着部21aを収納部材3に入れ、カット補助部24を収納部材3の開いたジッパ31を介して、あるいはジッパ31付近のプラスチックフィルムを介して親指と他の1本の指の間に挟み固定してから行う。こうすると、菌の採取時に指に触れた把持部21bが収納部材3に入ることがないので、目的外の菌が指を介して混入するのを抑制することができる。
【0022】
カット補助部24は、その表面が平坦であり面積が比較的広いので、そこに親指の腹を置くことで、棒状体2を固定し易い。また、用具本体2が透明であると、溝23の位置はそのままでは分かり難いが、カット補助部24は判別し易いのでそれに隣接する溝23の位置も分かり易い。また、カット補助部24は、その外郭形状が円弧状を成しているので、突出していても引っかかることなく、用具本体2を収納部材3に入れることができる。
【0023】
次に、用具本体2の製造方法について簡単に説明する。合わさった固定側の金型と可動側の金型の間の用具本体2の型に溶融したプラスチック材が注入されて硬化した後、固定側の金型から可動側の金型が離される。このとき、可動側の金型にカット補助部24の型があって固定側の金型にそれがなければ、可動側の金型と成型品である用具本体2の接着度が高いので、用具本体2は固定側の金型に残ることなく、確実に固定側の金型から離れる(離型する)。従って、カット補助部24があるため、用具本体2の製造過程において生産効率が落ちるのが防止される。
【0024】
このように、この菌採取用具1は、コストがさほどかからない簡便な構成となる。また、指が触れる把持部21bが溝23の箇所でカットされて収納部材3に収納できるので、検査対象の場所に付着した菌以外の菌が混入するのを抑制することができ、検査の正確さが確保される。更に、溝23に隣接したカット補助部24により容易にカットされることが可能になると共に、生産効率が落ちるのが防止される。
【0025】
以上、本発明の望ましい実施形態に係る菌採取用具について説明したが、本発明は、実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。例えば、カット補助部24の外郭形状は、引っかからないことでは円弧状の方が望ましいが、多角形にすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の望ましい実施形態に係る菌採取用具を示す正面図である。
【図2】同上の菌採取用具の用具本体を示すもので、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図3】同上の再収納後の菌採取用具を示す正面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 菌採取用具
2 用具本体
21a 装着部
21b 把持部
22 菌採取部材
23 溝
24 カット補助部
3 収納部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側を菌採取部材が装着される装着部とし他方側を把持部とする棒状の用具本体と、用具本体を収納する収納部材と、を有する菌採取用具において、
前記用具本体は、プラスチック材により成型されるとともに、その中間付近に把持部をカット可能とする溝が形成されていることを特徴とする菌採取用具。
【請求項2】
請求項1に記載された菌採取用具において、
前記用具本体は、前記溝に隣接して装着部側に装着部の外郭から突出するカット補助部が形成されていることを特徴とする菌採取用具。
【請求項3】
請求項2に記載された菌採取用具において、
前記カット補助部は、その外方表面が平坦であることを特徴とする菌採取用具。
【請求項4】
請求項2又は3のいずれかに記載された菌採取用具において、
前記カット補助部は、その外郭形状が円弧状を成していることを特徴とする菌採取用具。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された菌採取用具において、
前記用具本体は、ポリスチレン樹脂により成型されたものであることを特徴とする菌採取用具。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載された菌採取用具において、
前記菌採取部材は、片面に粘着層が設けられたスポンジであることを特徴とする菌採取用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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