説明

菓子製品を製造する方法および装置

本発明は、少なくとも一つの液状乃至粘性原材料から任意に装飾された菓子を製造するための装置に係り、前記装置は、計量位置へ材料を計量して供給する計量ユニットと、計量ユニットと計量位置との間の相対的な位置決めを実行する位置決め手段と、計量位置に於ける計量された材料の送出をする輸送手段とを含む。本発明によれば、装置は、入力手段と表示手段とを有するデータ処理システムにして、記憶手段と、比較手段と、処理パラメータ算出手段とを有し、予め定められた又は算定可能なスキームに従って、入力手段にて入力された製造される菓子製品の製品パラメータに合わせて製造方法の処理パラメータ及び/又は前記装置の機械パラメータを設定することができるデータ処理システムと、アクチュエータを有する制御システムとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一つの液状乃至粘性の原材料から菓子製品を製造する方法及び装置に係る。
【0002】
少なくとも1つの原材料としては、典型的には、ダーク又はミルクチョコレートの如き、脂肪を基にした輸送可能な又は流動性を有する材料、或いは、砂糖がけ用の材料が含まれる。そのような原材料は、十分に温度を高くすることによって(脂肪材料、チョコレート)、又は、十分に水分量を多くすることによって(砂糖がけ用材料)、成形することができ、続いて、温度を低減するか或いは乾燥することによって凝固させることができる。
【背景技術】
【0003】
上記の如き菓子製品を製造するための装置は、通常、計量位置へ材料を計量して供給するための計量ユニットと、計量ユニットと計量位置との間の相対的な位置決めを実行する位置決め手段と、これに加えて、計量位置に計量された材料の送出入のための輸送手段とを有する。もし必要ならば、冷却ユニットも含まれていてよい。
【0004】
そのような装置を使用して、菓子製品を製造する方法を実行するに際して、製造されるべき菓子製品の所望の特性、即ち、製品パラメータに因り正確に装置を作動するために、即ち、装置の適切な処理パラメータ及び/又は機械パラメータを選択するためには、或る程度の経験を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、経験の少ないシステム操作者のために前記の装置の操作に於ける煩わしさを除去し、更に、経験を積んだシステム操作者が処理を最適化することを支援することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題は、請求項1に記載の装置及び請求項13に記載の方法により達成される。
【0007】
この課題のために、本発明による装置は:
計量位置へ材料を計量して供給するための計量ユニットと;
計量ユニットと計量位置との間の相対的な位置決めを実行する位置決め手段と;
必要であれば、計量位置に計量された材料の送出入のための輸送手段と;
入力手段及び表示手段を装備したデータ処理システムにして、記憶手段、比較手段及び処理パラメータ算出手段を有し、予め定められた又は予め算定されるスキームに従って、入力手段にて入力可能な製造する菓子製品の製品パラメータに合わせて製造工程に於ける処理パラメータ及び/又は装置の機械パラメータを設定することのできるデータ処理システムと、
アクチュエータを備えた制御装置と
を有する。
【0008】
本発明による装置の使用により少なくとも1つの液状乃至粘性の材料から菓子製品を製造するための本発明による方法においては、
まず、製造される菓子製品を画定する製品パラメータが制御装置の入力手段を介して入力され、;そして
予め定められたスキームに基づいて又は算出手段により実行される計算に従って、製品パラメータに合わせて菓子製造法の処理パラメータ又は製造に使用される装置の機械パラメータが設定される。
【0009】
このスキーム又は算出手段により実行される計算に基づいて、製造方法を制御するための処理パラメータ又は機械パラメータは、所望の製品パラメータに合わせて設定される。
【0010】
これらの処理パラメータ又は機械パラメータを用いて、本発明による装置の制御装置は、下記のものを制御する。:
計量ユニットによる計量された材料の計量位置への供給;
位置決め手段による計量ユニット及び計量位置との相対的な位置決め及び/又は移動;そして、もし必要ならば、
輸送手段による計量位置に計量された材料の外部への輸送。外部への輸送は、手動的に又は自動的に為されてよい。
【0011】
従って、本発明は装置の操作を単純化する。本発明による装置は、機械について詳細に理解していなくても操作することができる。装置又は機械の操作者は、機械へのパラメータの入力に際して、製造する菓子製品を特定する製品パラメータに注意を注げばよく、装置又は機械パラメータを入力する必要はない。従って、本発明は、菓子製品を製造するための装置においてマン/マシン・インタフェースの改善に確実に寄与する。
【0012】
本発明による装置の計量ユニットは、好適には、噴出口、ピストン/シリンダ・ユニット及び弁を有し、ピストン/シリンダ・ユニットのシリンダ内部は、弁の位置に依存して、材料供給源若しくは材料容器か、噴出口のいずれかと流体的に連通する。
【0013】
ピストンは、シリンダに於いて2つの軸線方向位置の間で軸方向に移動可能な「容積変位ピストン」、或いは、シリンダに於いて2つの回転方向位置の間で、シリンダ内の円筒の方向の軸線の周りに回転可能な「回転ピストン」のいずれかである。更に、ピストンとして、容積変位ピストンと回転ピストンの組合せが、用いられてよい。他の容積配分又は重量配分によって分配する機構も同様に使用されてよい。
【0014】
特に好ましい計量ユニットの実施形態に於いて、計量は、弁と圧力生成の機能を合わせる往復動/回転ピストンによって為される。この往復動/回転ピストンは窪みを有し、これにより、往復動/回転するピストンが封鎖可能に且回転可能に装着されたシリンダチャンバとの間にて計量容積を画定する。この計量容積は、往復動/回転ピストンの吸入行程において増加され、これにより、計量容積内へ材料が吸い込まれることとなる。往復動/回転するピストンの回転により、材料供給源との接続が遮断され、その代わりに、噴出口との接続が確立する。続いて、最初の行程とは逆向きに進行する吐出行程に於いて、計量容積が低減され、これにより、計量容積内に在る材料が計量容積から噴出口を通して(例えば、鋳型に)押出される。
【0015】
本発明による装置は、液状乃至粘性材料の保存及び準備のために計量ユニットに流体的に接続された材料容器を備えていてもよい。
【0016】
好ましくは、計量位置として、予め定められた計量位置が使用される。特に、計量位置は、鋳型又は平坦な面であり、その中又はその上に、粘性材料が注入される。鋳型は、菓子のパッケージングの一部であってもよく、また、凹状鋳型若しくは冷間型押ユニットであってもよい。
【0017】
好適には、位置決め手段は、噴出口の移動のための手段と、もし必要であれば、計量位置の移動のための手段を有する。
【0018】
最も良い態様に於いて、位置決め手段の駆動装置は、一つのアクチュエータから成り、ピストン/シリンダ・ユニットのピストンの駆動装置は、別の第二のアクチュエータから成る。バルブの駆動装置は、好適には、また別のアクチュエータから成る。
【0019】
特に有利な実施形態に於いて、本発明による装置は、菓子製品スキャニング装置を有し、かかるスキャニング装置は、そこに置かれた菓子製品の形状を取得し、また、スキャニング装置は記憶手段と接続される。 このスキャニング装置は、所望の菓子製品の幾何的なデータ、即ち、具体的な形状の迅速な入力が可能である。特に、このことは、十分な形状安定性のある粘性材料の塊を個々に配置することにより形成される菓子製品にとって有用である。この目的のために、操作者は、手により前もって成形した所望の菓子製品の模型をスキャニング装置へ入力することができる。その後、本発明による装置のデータ処理システムは、その菓子製品の製造について必要な機械及び処理パラメータを決定する。
【0020】
本発明による方法のための製品パラメータとして、次の菓子製品用のパラメータのうちの少なくとも1つ又は組合せが入力される。:重量、スリーブ状材料/充填状態材料の重量比、密度、スリーブ状の原材料の密度、充填状態の原材料の密度、体積、長さ、幅、高さ、製品の幾何的形状、製品装飾の幾何的特徴、装飾用原材料の密度、スリーブ状の原材料の粘性、充填状態の原材料の粘性。製品と製品装飾の幾何的形状は、例えば、パターン又はレタリングにて、上記のスキャニング装置により有利に読み込まれる。従って、かかるスキャニング装置によって、製品又は製品装飾の形状の三次元的又は二次元的な情報の入力が為される。
【0021】
計量ユニット及び計量位置の相対的な位置決め及び/又は移動は、計量ユニットの噴出口が静止した計量位置に対して予め定められた経路に沿って移動されるよう実行されてよい。かくして、例えば、材料から成る帯状体、輪状体、プレッツェル状体などが、その経路に於いて成形される。
【0022】
計量ユニット及び計量位置の相対的な位置決め及び/又は移動は、また、計量ユニットの噴出口が静止した菓子製品の表面に沿って予め定められた経路に於いて移動されるよう実行されてよい。この方法に於いては、既に形成された菓子製品が装飾される。
【0023】
もう一つの有利な実施形態に於いて、本発明の方法により、製品パラメータの組合せの入力後、処理パラメータ及び/又は機械パラメータを設定する前に、入力された製品パラメータの組合せは、本発明による装置の比較手段によって、記憶手段内に記憶された不可能な製品パラメータの組合せと比較され、操作者に、入力された製品パラメータの組合せが可能か不可能かが、表示手段に於いて表示される。これにより、操作者は、起こり得る問題を早期に気付くことができ、また、菓子製品のための製造方法を構成するに際し、意思決定援助を受けることとなる。
【0024】
好適には、不可能な製品パラメータの組合せの入力がなされた場合、少なくとも1つの記憶されている可能な別の製品パラメータの組合せであって、できるだけ少ないパラメータについて入力された不可能な組合せと相違するものが表示される。かくして、操作者に、製造方法の構成のための提案が与えられ、これにより、その最適化が簡単化される。好適には、不可能な製品パラメータの組合せと可能な製品パラメータの組合せとの互いに相違するパラメータに於いて、その相違するパラメータの間の各々の差は、できるだけ小さくされる。また、好適には、操作者により提示された不可能なパラメータの組合せからの、装置により提案される可能なパラメータの組合せの偏差は、不可能なパラメータのグループと可能なパラメータのグループの間の標準偏差を用いて定量化され、その後、最小化される。初めに所望された不可能な製品パラメータを、装置により提案される別の製品パラメータによって逸脱させたくない又は殆ど逸脱させたくない場合、それらのパラメータについては、標準偏差及びそのようなものを用いた統計的な評価に於いて、別のパラメータよりも大きく重み付けされてよい。
【0025】
重要なことは、操作者又はデータ処理システムが、入力された又は表示された別の製品パラメータの組合せが許容可能であるか否かを決定するということである。
【0026】
菓子製品の表面を装飾するためには、菓子製品の幾何的形状の入力が菓子製品スキャニング装置を介して為されてよく、そこに於いて、装飾する菓子製品がその幾何的なデータの取得のためにスキャニング装置に配置され、幾何的なデータが記憶手段に記憶され、記憶された幾何的データは、計量ユニットと計量位置との相対的な位置決め及び移動のための位置決め手段の作動に用いられる。
【0027】
本発明による装置に於いて使用される記憶手段、比較手段及び処理パラメータ算出手段を備えたデータ処理システムは、予め定められた又は予め算定されるスキームに基づいて入力手段を介して入力された可能な菓子製品の製品パラメータに合わせて製造方法のための処理パラメータ及び/又は装置用の機械パラメータを設定できるところ、好適には、あいまい論理(ファジー論理)を用いて又はニューラルネットを用いて構成される。また、別の例として、あいまい論理とニューラルネットの組合せが用いられてもよい。これらの態様に於いて、熟練した装置操作者又は製造技術者と同様に仕事をする学習可能なデータ処理システム、即ち、経験を積んだシステムが得られることとなる。
【0028】
本発明の更なる特徴、利点及び可能な用途は、図面に基づいて、以下の実施形態の説明から理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1に示されている「製品生成器」と称される操作者と本発明による装置との間の仲介を行うインターアクティブ(対話式)システムは、以下の如く作動する。:
【0030】
操作者は、製品生成器を作動開始すると、製品生成器により何等かのパラメータを入力するように促される。しかしながら、ここでは、操作者が全てのパラメータの入力をすることは絶対ではない。表示されたパラメータの一部のみ、操作者による入力が必要である。
【0031】
操作者により入力されたパラメータの組合せは、製品生成器により評価され、ここに於いて、例えば、不可能なパラメータの組合せ又は可能なパラメータの組合せとの比較が行われる。
【0032】
もし入力されたパラメータの組合せが可能な場合又は入力データは妥当である場合、必要なサーボ駆動のための移動曲線が、算定されるか、或いは、記憶されている種々のパラメータの組合せに合わせて設定されている移動曲線から適切に選択される。
【0033】
もし入力されたパラメータの組合せが可能でない場合又は入力データが妥当でない場合、操作者は、再び、修正された何等かのパラメータの選択の入力をするように促される。この作動は、入力されたパラメータの組合せが可能となるまで、即ち、入力データが妥当になるまで繰り返されてよい。この試行過程は、システムの提案により支援されてよく(図1に示されていない)、その場合には、操作者に、潜在的に可能なパラメータの組合せが提示されることとなる。
【0034】
例えば、鋳型の送入出の駆動装置は、製品生成器を通じてではなく、別々に作動される。
【0035】
図2は、本発明による装置の模式図を示す。装置は、材料容器2、並進駆動装置(図示せず)、ピストン駆動装置6、ピストン装置8、基台(図示せず)、そして更に、架台12を有する。
【0036】
材料容器2は処理される材料の保存及び加熱に用いられる。 材料容器2は、材料の計量/分配、及び、架台12上に配列された鋳型84(図3を参照)への材料の注入に用いられるピストン装置8に接続される(図3参照)。並進駆動装置は、x方向、y方向及びz方向に於ける作動軸線に沿って鋳型84又は噴出口83の並進(精密な移動)に用いられる。ピストン駆動装置6は、容積変位(押し退け)ピストン81を作動するための容積変位駆動装置61と、回転ピストン82を作動するための回転駆動装置62とを有する(図3参照)。機械の並進駆動装置がz方向の作動軸線を有する場合には、架台12は、必ずしも必要ではない。
【0037】
作動中に、液状乃至粘性の材料が材料容器2へ供給される。そこから、ピストン装置8(図3を参照)により、材料が計量されて分配され、そして、所定の位置にて鋳型へ充填される。別の例として、台(例えば、ベルト)の上に小さな材料の塊を計量して噴出するようになっていてよい。
【0038】
噴出口83と鋳型84との間の相対位置決めは、x方向に作動する駆動装置により、もし必要であれば、y方向に及びz方向に作動する更なる並進駆動装置により行われる。
【0039】
各々の成形過程又は各々の塊の形成のための材料の分配/計量は、「計量ピストン」として機能する容積変位ピストン81の容積変位駆動装置61により為される。
【0040】
回転ピストン82が材料容器2と流体的に接続される回転ピストン82の第一の位置と、回転ピストン82が噴出口83と流体的に接続される回転ピストン82の第二の位置との切換は、回転ピストン82の回転駆動装置62により為され、回転ピストン82は、「切換弁」として機能する。
【0041】
かくして、図2に示された装置は次の駆動装置を有する。:
噴出口/鋳型の相対的な位置を決めるためのx方向の並進駆動装置
噴出口/鋳型の相対的な位置を決めるためのy方向の並進駆動装置
噴出口/鋳型の相対的な位置を決めるためのz方向の並進駆動装置
容積変位駆動装置(計量ピストン駆動装置)
回転駆動装置(切換弁駆動)
【0042】
図3は、回転ピストン82の回転駆動装置の回転軸に対して垂直な切断面に沿ったピストン装置8の詳細を示す。容積変位ピストン81及び回転ピストン82はピストンケーシング85に装着される。
【0043】
図3の左側に於いては、4つの容積変位ピストン(計量ピストン)81が、回転ピストン(切換弁)82に近接する位置にある。そして、同時に、回転ピストン82のうちの1つが、4つの容積変位ピストン81の各々のシリンダ容積を噴出口83と流体的に接続する位置にある。回転ピストン82は、4つの通路を有し、それらの各々は、この状態に於いて、それぞれの流体的な接続を確立する。
【0044】
図3の左側に示されたピストン装置8の状態は、計量ピストン81の計量ストロークが終了した状態に対応している。この状態において、鋳型84が材料で充填され、次いで、輸送手段による鋳型の送出入が実行できることとなる。
【0045】
図3の右側に於いては、4つの容積変位ピストン(計量ピストン)81が、回転ピストン(切換弁)82から離れた位置にある。そして、同時に、回転ピストン82が、4つの容積変位ピストン81の各々のシリンダ容積が材料容器2と流体的に接続する位置にある。
【0046】
図3の右側に示されたピストン装置8の状態は、材料容器2から計量ピストン81のシリンダ容積内へ材料を吸い込む状態を示している。鋳型84は、この状態では、まだ、材料で満たされていない。材料容器2との間の流体的接続を確立する位置から噴出口83との間の流体的接続を確立する位置への回転ピストン82の移動と、鋳型に材料を注入するための計量ピストン81の計量行程とが、直前に迫った状態にある。
【0047】
本発明による装置は、次の作動形式を行うことができる。:
静止又は移動中の鋳型に於ける点状成形
静止又は移動中の鋳型に於ける帯状成形
静止又は移動中の鋳型に於けるワン・ショットの点状成形
静止又は移動中の鋳型に於けるワン・ショットの帯状成形
静止又は移動中の鋳型に於ける点状成形中の充填/覆い付け
静止又は移動中の鋳型に於ける帯状成形中の充填/覆い付け
装飾
盛り付け
【0048】
図4A及び4Bは、図3に対する別の計量ユニットの実施形態を示す。 計量ユニットは、二組の実施形態に於いて、材料容器2、ピストンケーシング85’、往復動ピストンと回転弁との組合せである往復動/回転ピストン9を含んでいる。往復動/回転ピストン9は、ピストンケーシング85’内にて移動可能に且容積変位軸線周りに回転可能に装備されている。更に、往復動/回転ピストン9は、ピストンケーシング85’と往復動/回転ピストンとの間で計量容積が画定されるよう窪み9aを有している。
【0049】
図4Aは、吸込行程の開始を示し、そこに於いて、往復動/回転ピストン9がピストンケーシング85’内で移動されることにより、窪み9aとピストンケーシング85’との間の空間が拡大される。
【0050】
図4Bは、計量行程の開始を示し、そこに於いて、往復動/回転ピストン9がピストンケーシング85’内で吸込行程とは逆に移動されることにより、窪み9aとピストンケーシング85’との間の空間が縮小される。
【0051】
吸込行程の終了(図示せず)に於いて、往復動/回転ピストン9は、その長軸又は回転軸周りに180°回転され、これにより、図4Bに於いて示されている状態に至る。
【0052】
計量行程中に噴出口(図示せず)へ送り出す材料の体積は、吸込行程の初めの最小の空間容積(図4A参照)と、吸込行程の終わり又は計量行程の始めの最大の空間容積(図4B参照)との間の差に対応する。吸込行程の終わりと計量行程の始めとの間に実行される往復動/回転ピストン9の回転は、図示された例に於いて、空間容積を変化するのではなく、材料容器2と空間容積との間の流体的接続から材料容器2と噴出口との間の流体的接続への切換を行うよう機能する。
【0053】
ワン・ショットの実行に於いて、単一の計量動作に於いて充填された製品が調製される。このために、特別な噴射口と特別な鋳型が用いられる。噴射口は、充填状態材料のための同心通路とスリーブ状材料のための同心通路を囲む輪状通路とを有する。一回の単一の噴射により、同時に充填状態材料とスリーブ状材料がその噴射口を通って特別に構成された鋳型に滴下される。従って、噴射口と鋳型のジオメトリ及び滴下のダイナミックスは、(ワン・ショット・点状成形に際して)スリーブ状材料が完全に充填状態材料の周りを取り囲むように配置され、これにより一つの充填された製品が形成されるように、互いに調整される。
【0054】
静止した鋳型に於ける点状成形の実行に際し、操作者は、製造する菓子製品のための予め画定された幾何的形状の鋳型を選択する。そして、製品パラメータとして、半径、半軸線等が、操作者によって入力手段から入力される。密度、粘度などのその他の製品パラメータが入力されてもよい。
【0055】
上記のものから、算出手段は、適切な処理パラメータ、例えば、少なくとも1つの容積変位ピストン81を通る計量される量、計量速度など、及び、垂直方向、即ち、Z軸に沿った鋳型84の移動を算定するか、或いは、予め定められた種々の製品パラメータと処理パラメータとの間の関係から、処理パラメータの可能な組合せの一つを選択的に決定する。
【0056】
静止した鋳型に於ける帯状成形の実行に際し、同様に、操作者は、製造する菓子製品のための予め画定された幾何的形状の鋳型を選択する。そして、製品パラメータとして、同時に、正方形、円筒形或いは楕円筒形の棒状体のための長さ、幅、高さ、或いは、長さと半径、或いは、長さ及び半軸が選択される。また、密度、粘度などのその他の製品パラメータが入力されてもよい。
【0057】
上記のものから、算出手段は、適切な処理パラメータ、例えば、少なくとも1つの容積変位ピストン81を通る計量される量、計量速度など、及び、垂直方向、即ち、Z軸方向、及び、水平な長手方向、即ち、x軸及び/又はy軸方向に沿った鋳型84の移動を算定するか、或いは、予め定められた種々の製品パラメータと処理パラメータとの間の関係から、処理パラメータの可能な組合せの一つを選択的に決定する。
【0058】
静止した鋳型に於けるワン・ショット・点状成形の実行に際しても、同様に、操作者は、製造する充填された菓子製品のための予め画定された幾何的形状の鋳型を選択する。充填された球状体のために、例えば、球の半径、スリーブの厚さが入力される。また、スリーブ状材料と充填状態材料の密度、粘度などのその他の製品パラメータが入力されてもよい。
【0059】
上記のものから、算出手段は、適切な処理パラメータ、例えば、2つの容積変位ピストン81を通る計量される量、計量速度など、及び、垂直方向、即ち、Z軸に沿った鋳型84の移動を算定する。
【0060】
静止した鋳型に於けるワン・ショット・帯状成形の実行に際しても、同様に、操作者は、製造する充填された菓子製品のための予め画定された幾何的形状の鋳型を選択する。充填された棒状体のために、棒状体の長さ、幅及び高さと、スリーブの厚さが入力される。また、スリーブ状材料と充填状態材料の密度、粘度などのその他の製品パラメータが入力されてもよい。
【0061】
上記のものから、算出手段は、適切な処理パラメータ、例えば、2つの容積変位ピストン81を通る充填状態材料とスリーブ状材料の計量される量、充填状態材料とスリーブ状材料の各々の計量速度など、及び、垂直方向、即ち、Z軸方向、及び、水平な長手方向、即ち、x軸及び/又はy軸方向に沿った鋳型84の移動を算定する。
【0062】
移動する鋳型に於いて点成形、帯状成形、ワン・ショット・点状成形及びワン・ショット・帯状成形の実行に際しては、静止した鋳型に於ける対応する各々の注入形式に於ける処理パラメータが適用される。そして、水平の長手方向又はX軸に沿っての移動の時間経過(X軸について移動曲線)は、下流の制御システムにより予め与えられる。
【0063】
前記の注入成形の形式に於いて、幾何的な製品パラメータは、菓子製品スキャニング装置を介して入力されてもよく、かかる装置へ菓子製品の幾何的な模型が与えられ、その菓子製品の寸法がスキャンされ記憶される。
【0064】
装飾に際しては、予め定められたパターン及び/又はレタリングが入力されてよい。
【0065】
装飾に際して、菓子製品の平担な面上にレタリング及び/又はパターンを施すことを含んでいる場合には、その入力は、図表に於いて又はマウスを用いて為される。
【0066】
上記のものから、算出手段は、適切な処理パラメータ、例えば、少なくとも一つの容積変位ピストン81の各々を通る装飾用材料の計量された量、計量速度などと、垂直方向、即ち、Z軸方向、水平な長手方向、即ち、x軸、及び、水平な横方向、即ちy軸方向に沿った製品の移動を算定する。そして、まず、装飾曲線の距離が算定され、それから、計量ピストンの移動が算定される。
【0067】
装飾に際して、菓子製品の平担ではない面(例えば、サンタクロース又はイースターバーニー)上にレタリングを施すことを含んでいる場合には、装飾の垂直投影(x軸及びy軸)の入力が、同様に、図表に於いて又はマウスを用いて為される。更に、この投影の個々の点のために、その各々の高さ(Z座標)が、例えば、手動でを入力されなければならないであろう。
【0068】
前記の装飾の形式に於いて、パターン又はレタリングについての幾何的な製品パラメータも、スタイラス(ペン型入力器)を有する菓子スキャニング装置を介して入力することができ、スタイラスにより、組込まれるパターン及び/又はレタリングに沿って製品又は製品の模型の平坦でない表面が走査される。この方法に於いて、空間、即ち、製品の平坦でない表面上に曲線が入力される。そして、これらの幾何的曲線情報は、記憶手段に記憶される。
【0069】
上記のものから、算出手段は、再び、適切な処理パラメータ、例えば、少なくとも一つの容積変位ピストン81の各々を通る装飾用材料の計量された量、計量速度などと、垂直方向、即ちZ軸方向、水平な長手方向、即ちx軸、及び、水平な横方向、即ちy軸方向に沿った個々の製品又は噴出口の移動を算定する。そして、まず、装飾曲線の距離が算定され、それから、計量ピストンの移動が算定される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】図1は、本発明による菓子製品を製造するための方法の模式的なフローチャートを示す。
【図2】図2は、本発明による装置の模式図を示す。
【図3】図3は、本発明による装置の部分の模式図を示す。
【図4】図4は、本発明による装置の部分の別の例の模式図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの液状乃至粘性の材料又は種々の成分が添加された材料から菓子製品を製造するための装置であって、
前記材料を計量して計量位置へ供給する計量ユニット(8)と、
前記材料を調製又は保管し計量ユニットに材料を供給するユニットと、
前記計量ユニットと前記計量位置との間の相対的な位置決めを行う位置決め手段(4)と、
前記計量位置に計量された前記材料を送出する輸送手段と
を含み、更に、
入力手段と表示手段とを有するデータ処理システムにして、記憶手段と、比較手段と、処理パラメータ算出手段とを含み、予め定められた又は算定可能なスキームに従って、前記製造される菓子製品の前記入力手段から入力された製品パラメータに合わせて製造処理パラメータ及び/又は前記装置の機械パラメータを設定することのできるデータ処理システムと、
アクチュエータを有する制御システムと
を有することを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置であって、前記計量ユニットが、噴出口(83)と、ピストン/シリンダユニット(81)と、弁(82)とを有し、前記ピストン/シリンダユニットのシリンダ内が前記弁の位置に依存して前記計量ユニット又は前記噴射口のいずれかに流体的に接続した状態となることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1又は2の装置であって、前記液状乃至粘性材料の保管及び準備のために前記計量ユニットと流体的に接続する材料容器を有していることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1又は3の装置であって、前記計量位置が予め定められた計量位置であることを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4の装置であって、前記計量位置が鋳型であることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項5の装置であって、前記鋳型が菓子製品のパッケージングの一部であることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1又は2の装置であって、計量位置が凹状鋳型/冷間型押ユニットであることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の装置であって、位置決め手段が噴出口を移動する手段及び/又は計量位置を移動する手段を有していることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1乃至8の装置であって、第一のアクチュエータが位置決め手段の駆動装置であることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2乃至9の装置であって、第二のアクチュエータが、ピストン/シリンダ・ユニットのピストンの駆動装置であることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項2乃至10の装置であって、1つのアクチュエータがバルブの駆動装置であることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項1乃至11の装置であって、配置された菓子製品の形状を取得し、前記記憶手段に接続された菓子製品スキャニング装置を有することを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項1乃至12による装置を使用して、少なくとも1つの液状乃至粘性の材料又は種々の成分が添加された材料から菓子製品を製造するための方法であって、
製造される菓子製品を画定する製品パラメータを前記装置の入力手段を介して入力する過程と、
予め定められた又は算定可能なスキームに従って又は前記算出手段により実行される演算によって、前記製造される菓子製品の前記入力手段から入力された製品パラメータに合わせて製造処理パラメータ及び/又は前記装置の機械パラメータを設定する過程と、
が実行され、
製造処理の制御を実行するべく設定された前記処理パラメータ及び/又は機械パラメータを使用して、
前記計量ユニットにより前記計量位置へ前記材料を計量して供給する過程と、
前記位置決め手段により前記計量ユニットと前記計量位置との間の相対的な位置決め及び/又は移動を行う過程と、
前記輸送手段により前記計量位置への計量された材料を送出する過程と、
を実行することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、製品パラメータとして、前記菓子製品のための
重量、
スリーブ状部/充填部の重量比、
密度、
スリーブ状材料の密度、
充填状態材料の密度、
体積、
長さ、幅、高さ、
幾何的形状、
製品装飾の幾何的形状、
装飾材料の密度、
スリーブ状材料の粘度、
充填状態材料の粘度、
のうちの少なくとも一つ又は組合せが入力されることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13または14の方法であって、前記計量ユニットの噴出口が予め定められた経路(帯状、渦状、プレッツェル状等)に沿って静止した計量位置上にて移動されるよう前記計量ユニットと前記計量位置との相対的な位置決め及び/又は移動が実行されることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項13または14の方法であって、前記計量ユニットの噴出口が予め定められた経路(装飾)に於いて静止した菓子製品の表面上にて移動されるよう前記計量ユニットと前記計量位置との相対的な位置決め及び/又は移動が実行されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項13の方法であって、製品パラメータの組合せの入力後、処理パラメータ及び/又は機械パラメータの設定の前に、前記比較手段により前記入力された製品パラメータの組合せが、記憶手段において予め記憶された不可能な製品パラメータの組合せと比較され、前記入力された製品パラメータの組合せが可能か不可能かが前記表示手段に於いて操作者に示されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項13の方法であって、不可能な製品パラメータの組合せが入力された場合、できるだけ少数のパラメータについて前記入力された不可能な組合せと異なる少なくとも1つの記憶された別の可能な製品パラメータの組合せが表示されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項13の方法であって、不可能な製品パラメータの組合せと別の可能な製品パラメータの組合せとで互いに相違するパラメータに於いてそれぞれの前記相違するパラメータの間の偏差が最小であることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項13乃至19の方法であって、操作者又はデータ処理システムが、入力された製品パラメータの組合せ或いは表示された別の製品パラメータの組合せが許容可能か否かを決定することを特徴とする方法。
【請求項21】
菓子製品の表面を装飾するための請求項14乃至20の方法であって、菓子製品の幾何的形状の入力が菓子製品スキャニング装置を介して実行され、装飾される菓子製品の幾何的なデータの取得のために前記菓子製品を前記菓子製品スキャニング装置に配置し、取得された幾何的なデータを前記記憶手段に記憶し、前記記憶された幾何的データを前記計量ユニットと前記計量位置との相対的な位置決め及び/又は移動のために前記位置決め手段の作動のために用いることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−510482(P2008−510482A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−529058(P2007−529058)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【国際出願番号】PCT/IB2005/052637
【国際公開番号】WO2006/021905
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(507041700)ビューラー ビンドラー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】