説明

落下試験装置

【課題】落下試験を繰り返し連続的に行う際に、装置自体の破損や耐久性低下の心配がないのはもちろん、その吊上げ作業が短時間でできて試験効率を良くする。
【解決手段】着地面2を備えた基盤3と、この基盤3から立設した基枠および案内レール8と、基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤー5を案内する第1案内シーブ6を設け、案内レール8には吊上げワイヤー5の先端が固定された連結部材12と、この連結部材12に連結可能で連結解除時には下面に吊り下げられた被試験体とともに落下する落下部材15とを上下動可能に取付けると共に、基盤3には落下試験時における被試験体の着地面への衝突時に落下部材15が被試験体と衝突しないようにこの落下部材15のみを受け止める受け止め部材40を設け、落下部材15および受け止め部材40には、衝撃緩和部材とをそれぞれ設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落下試験装置に関し、特に、自動二輪車や自動車等の車両の落下試験を行う落下試験装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車や自動車等の車両は、その使用目的によって車両を、たとえば、1.5mや、10mと言った高所から繰り返し落下させ、耐久性を試験する落下耐久試験を行う場合がある。
【0003】
そして、この種の落下試験装置としては、種々の構造のものを例示でき、たとえば、自動二輪車の耐久試験装置としては、特許文献1に示すものを例示できる。
【0004】
この試験装置は、前輪を接地した状態で保持する前輪保持手段と、後輪が任意の設定高さ位置に達するまで車体後部を吊上げ、かつ、上記の吊上げ位置から車体後部を略自由落下速度をもって落下させる調整自在な車体の吊上げ落下手段と、吊上げ状態において任意の設定速度に達するまで上記の後輪を回転させる調整自在なスロットル弁開閉操作手段とを備えてなる。
【0005】
それゆえ、この試験装置によれば、ファイナルシャフトに加わる捻れトルクと等しい捻れトルクを発生させるよう後輪の吊上げ高さを設定し、同時に後輪を設定速度で回転させながら車体を落下させることで、メインスタンドを立てエンジンを始動させて急発進させる実際の発進法に近いシミュレーションを可能にし、ファイナルシャフトに均一な負荷を自動的に繰返し作用させて耐久試験を行える。
【0006】
しかしながら、この試験装置は、車体自体を落下させてその耐久試験を行うものではなく、車体自体を落下させる装置としては、特許文献2に示すものを例示できる。
【0007】
この試験装置は、試験サンプルを任意の高さに保持する機構と、試験サンプルの保持を解除して該試験サンプルを落下させる機構と、試験サンプルの上部に位置して試験サンプルと共に落下し、試験サンプルの落下中の姿勢を一定に保持する姿勢制御部材と、姿勢制御部材を保持する機構と、姿勢制御部材を試験サンプルが床面に衝突するより前に試験サンプルと分離させ、停止する機構とを備え、試験サンプルを床面に衝突させて落下衝撃試験を行う。
【0008】
それゆえ、この試験装置は、半導体装置を実装したプリント配線基板や携帯機器を落下させ、はんだ接続部や接着部の信頼性を評価するものではあるが、基本的構成は、上記した自動二輪車や自動車等の車両落下衝撃試験装置に応用が可能である。
【0009】
そして、この試験装置によれば、姿勢制御部材と同時に試験サンプルが落下することで、床面に衝突する直前まで試験サンプルの姿勢を安定に保て、これによって、試験結果のばらつきを小さくできる効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3‐211440公報(特許請求の範囲,図1参照)
【特許文献2】特開2002‐318181公報(明細書中の段落0038,図1,図3,図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のように構成された試験装置においては、試験サンプルと同時に姿勢制御部材を落下させるので、試験サンプルが床面に衝突する前に姿勢制御部材のみを確実に分離させる機構が必要となる。
【0012】
具体的には、支柱の床材よりも上方にストッパを設け、このストッパに上記姿勢制御部材のみが衝突するよう構成しているので、余分な機構が必要となって装置の複雑化や大型化、延いては、コストアップに繋がる。
【0013】
また、上記の姿勢制御部材は、上記のストッパに直接衝突して引っ掛かることで停止するので、ストッパが何ら衝撃吸収構造を有していない場合には、落下試験を行う毎に、上記の姿勢制御部材に大きな衝撃が直接的に加わる。
【0014】
したがって、このような落下試験を繰り返し連続的に行う場合には、上記した衝撃による姿勢制御部材の破損や、耐久性の著しい低下が危惧され、さらには、姿勢制御部材と試験サンプルとの両方を任意の高さに吊上げて一体化させる作業がその都度、必要となるため、作業者にとっては、面倒な作業となるばかりでなく、準備のために長い作業時間を必要とし、試験効率が悪い。
【0015】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、落下試験を繰り返し連続的に行う際に、装置自体の破損や耐久性低下の心配がないのはもちろん、その吊上げ作業が短時間で簡単にできて試験効率を良くし、その汎用性の向上を期待するのに最適となる落下試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するために、この発明による落下試験装置の構成を、基本的には、着地面を備えた基盤と、この基盤から立設した基枠および案内レールと、基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤーを案内する第1案内シーブを設け、上記の案内レールには吊上げワイヤーの先端が固定された連結部材と、この連結部材に連結可能で連結解除時には下面に吊り下げられた被試験体と共に落下する落下部材とを上下動可能に取付ける一方で、上記の基盤には落下試験時における被試験体の着地面への衝突時に落下部材が被試験体と衝突しないようにこの落下部材のみを受け止める受け止め部材を設け、上記の落下部材および受け止め部材には、この受け止め部材で落下部材を受け止めたときの衝撃を緩和する落下側衝撃緩和部材と受け止め側衝撃緩和部材とをそれぞれ設けてなるとする。
【発明の効果】
【0017】
それゆえ、この発明によれば、落下試験時において、落下部材が受け止め部材に受け止められるときに発生する衝撃を、この受け止め部材に設けた落下側衝撃緩和部材と、落下部材自体に設けた落下側衝撃緩和部材とによって緩和できるため、落下部材の破損を未然に防止して、耐久性を著しく向上させる。
【0018】
また、連結部材と落下部材との連結を解除することによって被試験体を落下させるので、被試験体の落下時に吊上げワイヤーを下降させ、その先端に固定された連結部材を落下部材に連結すれば、吊上げ部材の作動によって落下部材および被試験体を連結部材と共に上方へ吊上げられる。
【0019】
したがって、この発明の落下試験装置を用いれば、装置自体の破損や耐久性低下の心配がないのはもちろん、被試験体を吊上げるための準備時間を短縮して試験効率の良い落下試験を行える。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施形態による落下耐久試験装置の一部破断正面図である。
【図2】図1における連結部材および落下部材の要部を拡大して示す正面図である。
【図3】図1において、連結部材と案内レールとの取付構造を示す一部破断平面図である。
【図4】同じく図1において、落下部材と案内レールとの取付構造を示す一部破断平面図である。
【図5】図1において、受け止め部材を拡大して示す一部破断正面図である。
【図6】図5において、受け止め部材で落下部材を受け止めた状態を示す一部破断正面図である。
【図7】図1において、受け止め部材と案内レールとを拡大して示す一部破断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、図示するところは、この発明による落下試験装置が被試験体たる自動車等の車両の落下耐久試験を行う落下耐久試験装置に具体化されてなる。
【0022】
すなわち、図1に示すように、図示する落下耐久試験装置1は、着地面2を備えた基盤3と、この基盤3から立設した基枠および案内レール8と、基枠の上部に設けた保持部材とを有してなる。
【0023】
そして、この保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤー5を案内する第1案内シーブ6を設け、上記の案内レール8には吊上げワイヤー5の先端が固定された連結部材12と、この連結部材12に連結可能で連結解除時には下面に吊り下げられた被試験体としての車両7と共に落下する落下部材15とを上下動可能に取り付ける。
【0024】
その一方で、上記の基盤3には落下試験時における車両7の着地面への衝突時に落下部材15が車両7と衝突しないようにこの落下部材15のみを受け止める受け止め部材40を設ける。
【0025】
そして、上記の落下部材15および受け止め部材40には、この受け止め部材40で落下部材15を受け止めたときの衝撃を緩和する落下側衝撃緩和部材と受け止め側衝撃緩和部材とをそれぞれ設ける。
【0026】
以下、さらに詳述すると、上記の基枠は、基盤3の四隅から立設した4本の支柱4(図1参照)で構成され、この支柱4の内側には左右一対の上記案内レール8が立設されると共に、この支柱4の上面内側には上記の保持部材が設けられる。
【0027】
この保持部材は、上部枠11aおよび下部枠11bと、これら両枠11a,11bを連結する連結枠11cとからなり、上部枠11aの図1中で左端となる基端には上記の吊上げ部材としての巻取りモータ14が載置される。
【0028】
この巻取りモータ14にはワイヤードラム(図示せず)が連結され、このワイヤードラムには上記の吊上げワイヤー5が巻き回され、この吊上げワイヤー5は、独立した2本(図示せず)のワイヤー5からなり、先端部は、上部枠11aの図中で右端部となる先端部に設けた第1案内シーブ6を介して上記の連結部材12に固定される。
【0029】
この連結部材12は、図1および図2に示すように、中央部に設けられた円筒状の電磁石12aと、この電磁石12aから左右に延設された連結フレーム12bと、これら連結フレーム12bの先端に取付けられた連結側案内部材25とからなる。
【0030】
上記の電磁石12aは、図示しないコイルへの通電により磁化し、上記の落下部材15を吸引して連結すると共に、上記の通電を停止することで連結解除を行う。
【0031】
また、図2に示すように、上記の電磁石12aの上面中央部には上記の吊上げワイヤー5を固定する固定具12cが設けられており、この固定具12cの側部には電磁石12aへの電源を供給する電源ケーブル(一部のみ図示する)12dが接続される。
【0032】
上記の連結側案内部材25は、図3に示すように、左側腕部27a、右側腕部27bおよび下側腕部27cを上下にそれぞれ突出形成した本体部27と、これら左右側腕部27a,27bおよび下側腕部27cにナット28によって回動可能に固定された左側、右側および下側ローラ29a,29b,29cとから構成され、これら左右および下側ローラ29a,29b,29cで上記の案内レール8から延設されたレール部8aを挟持することで、上記の連結部材12がこの案内レール8から外れることなく上下動する。
【0033】
上記の落下部材15は、図2に示すように、長さの異なる4枚の板バネを重ねてなる上側重ね板バネ15aと、同じく長さの異なる4枚の板バネを重ねてなる下側重ね板バネ15bとを上下に配置すると共に、これらの中央において連結具16により固定され、上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ15bの両端部には落下側案内部材17が取付けられる。
【0034】
連結具16は、上側重ね板バネ15aの下面に緩衝材としてのウレタンゴム製のシート16aを介して当接する上側支持板16bと、下側重ね板バネ15bの上面に同じく緩衝材としてのウレタンゴム製のシート16aを介して当接する下側支持板16cと、これら上側および下側支持板16b,16cを連結する連結板16dとからなる。
【0035】
そして、上側支持板16bと上側重ね板バネ15aとは、ボルト18およびナット19によって固定され、下側支持板16cと下側重ね板バネ15bとは、コの字状のボルト20およびナット19によって固定される。
【0036】
また、上側重ね板バネ15aの上面にはウレタンゴム製のシート21を介して金属製の円盤状をなす吸着板22が上記のボルト18およびナット19を介して固定され、この吸着板22が上記連結部材12の電磁石12aに吸引されることで、上記の連結部材12と落下部材15とが連結される。
【0037】
上記の下側支持板16cと下側重ね板バネ15bとを固定するコの字状のボルト20には、所定長さの連結ワイヤー23の基端が固定され、この連結ワイヤー23の先端には上記車両7が吊り下げ固定される。
【0038】
連結ワイヤー23は、ナイロン等の軽くて強度のある材質で形成されると共に、落下試験時に受け止め部材40で落下部材15を受け止めたとき、車両7のみが着地面2へ衝突する長さに設定される。
【0039】
なお、上記のコの字状のボルト20と連結ワイヤー23基端との固定構造や、連結ワイヤー23先端と車両7との固定構造については、図示する実施形態では詳細に説明はしないが、任意の構造を採用できる。
【0040】
上記の落下側案内部材17は、図4に示すように、左側腕部17a、右側腕部17bおよび下側腕部17cを上下にそれぞれ突出形成した本体部17dと、これら左右側腕部17a,17bおよび下側腕部17cにナット28によって回動可能に固定された左側、右側および下側ローラ31a,31b,31cとからなり、これら左右および下側ローラ31a,31b,31cで上記の案内レール8から延設されたレール部8aを挟持することで、上記の落下部材15がこの案内レール8から外れることなく上下動する。
【0041】
また、上記の本体部17dにおける内側(図4における下側を示す)は、左右一対の連結片32が突出形成されており、この連結片32間に上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ15bの先端がそれぞれ連結ピン(図4には一方のみ図示)よって回動可能に連結される。
【0042】
そして、これら上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ15bは、落下側案内部材17に対して平行リンク構造とすることで、案内レール8に沿って上記の車両7を真っ直ぐ落下させる。
【0043】
したがって、落下試験時に車両7と共に落下した落下部材15は、受け止め部材40に衝突すると、上記の上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ15bが弾性変形すると同時に、板バネ同士の板間摩擦によって減衰力を発生させて衝撃緩和を行い、落下部材15自体の破損防止や、耐久性の向上を図る。
【0044】
上記の受け止め部材40は、図5および図6に示すように、上記の案内レール8に隣接した基盤3上に設けられ、上記の落下部材15に直接当接する緩衝体41eを備えた受け止め部41と、基盤3上に載置された高さ調整部42材と、上記の受け止め部41と高さ調整部材42との間に設けられた受け止め側衝撃緩和部材としての油圧緩衝器43とからなる。
【0045】
上記の受け止め部41は、図7に示すように、2本の油圧緩衝器43をその上部においてボルト41c止めにより挟持する一対の右側挟持片41aと、同じく2本の油圧緩衝器43をその上部においてボルト止め41cにより挟持する一対の左側挟持片41bと、これら右側および左側挟持片41a,41b同士を接続する接続片41dと、右側および左側挟持片41a,41bの上面に固定されると共に、上面に落下部材15と直接当接するウレタンゴム製の上記緩衝体41eを備えたカバー体41fとを備えてなる。
【0046】
また、上記のカバー体41fおよび緩衝体41eには案内レール8側に上記レール部8aが間隔を置いて挿入される切込み部41gが形成されており、受け止め部材40が下方に移動する際、上記右側および左側挟持片41a,41bと相俟って受け止め部材40が案内レール8から外れるのを防止する。
【0047】
高さ調整部材42は、複数個のブロック片42aを積み重ねることで形成されており、このブロック片42aの個数を増減させることで、落下部材15を受け止める上下位置の調整が行える。
【0048】
また、最も上部のブロック片42aには取付部42bが一体形成され、この取付部42bには上記油圧緩衝器43の下部がピン(符示なし)により固定される。
【0049】
したがって、上記の受け止め部材40に落下部材15が衝突すると、図6に示すように、受け止め部41のウレタンゴム製の上記緩衝体41eを弾性変形させると同時に、4本の油圧緩衝器43を収縮させることで減衰力を発生させて衝撃緩和を行い、落下部材15の破損防止や耐久性の向上を図る。
【0050】
上記のように構成された落下耐久試験装置1の作用を説明すると、まず、落下耐久試験を行う車両7を着地面2に配置し、上記の落下部材15を下降させると共に、基端が上記コの字状ボルト20に固定された連結ワイヤー23の先端を上記車両7に固定する。
【0051】
その後、上記の巻取りモータ14を作動させて吊上げワイヤー5を下降させ、その先端に固定された連結部材12の電磁石12aを上記落下部材15の吸着板22に当接させると共に、図示しない制御装置により磁化信号をONさせることで、上記の電磁石12aに通電して磁化し、上記の吸着板22を吸引して連結部材12と落下部材15とを連結する。
【0052】
次いで、巻取りモータ14を作動させて吊上げワイヤー5を巻き取ると、落下部材15に吊り下げられた車両7は、連結部材12とともに所定の吊上げ位置、すなわち、落下試験開始位置へ吊上げられ、図1に示すように、落下試験の準備がなされる。
【0053】
この状態において、落下試験を行うには、上記の制御装置によって磁化信号をOFFとし、上記の電磁石12aへの通電を停止して連結解除を行う。
【0054】
すると、連結部材12と落下部材15との連結が解除されるので、車両7は、自由落下を開始すると共に、この車両7と共に落下する落下部材15は、上記の案内レール8に沿って下降する。
【0055】
着地面2に車両7が衝突すると、この車両7と共に案内レール8に沿って下降した落下部材15は、その落下側案内部材17が上記の受け止め部材40の受け止め部41に設けられた緩衝体41eに衝突する。
【0056】
このとき、落下部材15は、図6に示すように、その上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ15bが下方へ弾性変形すると同時に、板バネ同士の板間摩擦によって減衰力を発生させて衝撃緩和を行い、落下部材15の破損防止や、耐久性の向上を図る。
【0057】
同時に、受け止め部材40においては、その受け止め部41の上記の緩衝体41eを弾性変形させると同時に、4本の油圧緩衝器43を収縮させることで減衰力を発生させて衝撃緩和を行うので、上記の落下部材15の衝撃緩和作用と併せて、落下部材15の破損防止や、耐久性の向上が図られる。
【0058】
そして、この状態では、車両7が着地面2に衝突すると、落下部材15は、受け止め部材40で受け止められると共に、その上側および下側重ね板バネ15a,15bが弾性変形しても、上記の車両7には衝突しないように連結ワイヤー23の長さや上記高さ調整部材42の高さが調整されているので、上記の車両7に対しては何ら影響を与えない。
【0059】
その後、上記巻取りモータ14を作動させて再び吊上げワイヤー5を下降させ、その先端に固定された連結部材12の電磁石12aを上記の落下部材15の吸着板22に当接させると共に、図示しない制御装置により磁化信号をONさせることで、上記の電磁石12aに通電して磁化し、上記の吸着板22を吸引して連結部材12と落下部材15とを連結する。
【0060】
この状態で、上記の巻取りモータ14を作動させて吊上げワイヤー5を巻き取ると、車両7は、所定の吊上げ位置、すなわち、落下耐久試験開始位置へ吊上げられるので、上記の制御装置により磁化信号をOFFさせることで、直ちに2回目の落下耐久試験を開始できる。
【0061】
以上、詳述したように、この発明の落下耐久試験装置1によれば、落下耐久試験時において、落下部材15が受け止め部材40に受け止められるときに発生する衝撃を、この受け止め部材40に設けた落下側衝撃緩和部材と、落下部材15自体に設けた落下側衝撃緩和部材とによって緩和することができるため、落下部材15の破損を未然に防止して、耐久性を著しく向上できる。
【0062】
また、車両と共に落下する落下部材15と、連結部材12との連結を電磁石12aの利用で行うようにしたので、制御装置の磁化信号をON,OFFさせることで、上記の電磁石12aへの通電および非通電を容易に制御でき、このため、上記の連結部材12と落下部材15との連結作業を短時間で容易に行える。
【0063】
したがって、落下耐久試験を繰り返し連続的に行う場合には、従来例で示したような作業者にとって面倒な吊上げのための準備作業を短時間で行えるので、上記した準備時間を減らして試験効率を上げられる。
【0064】
また、上部枠11aの上部支柱側に巻取りモータ14を載置し、上部枠11aの上部先端側に第1案内シーブ6を設けたので、巻取り装置関係部分を一箇所にコンパクトに纏めて配置できる。
【0065】
また、上記の吊上げワイヤー5として独立した2本のワイヤーを用いたので、仮に、一方の吊上げワイヤー5が切れても、連結部材12がいきなり落下することはなく、安全性が高い。
【0066】
そして、落下側案内部材17と、連結側案内部材25とを同一構造としたので、部品点数を削減してコストダウンを可能にすると共に、案内レール8のレール部8aに対して左右および下方向からローラで支持する構造としたので、案内レール8から外れることなく安定して上下動できる。
【0067】
なお、図示する実施形態では、連結部材12と落下部材15との連結または連結解除に電磁石12aを用いたが、この構造に限定されるものではなく、油圧を用いた構造や、他の機械的構造を用いても良い。
【0068】
また、落下部材15に用いた上側重ね板バネ15aおよび下側重ね板バネ板15bを、長さの異なる4枚の板バネを重ねて形成したが、板バネの枚数は緩和する衝撃の大きさに合わせて任意に変更できる。
【0069】
そして、受け止め部材40に用いた4本の油圧緩衝器43も、緩和する衝撃の大きさに合わせて1本乃至3本、または、4本以上の任意の本数に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
自動車等の車両の落下耐久試験を行う落下耐久試験装置への利用に向く。
【符号の説明】
【0071】
1 落下耐久試験装置
2 着地面
3 基盤
4 木枠を構成する支柱
5 吊上げワイヤー
6 第1案内シーブ
7 被試験体たる車両
8 案内レール
11a 保持部材を構成する上部枠
11b 保持部材を構成する下部枠
11c 保持部材を構成する連結枠
12 連結部材
12a 電磁石
14 吊上げ部材たる巻取りモータ
15 落下部材
15a 上側重ね板バネ
15b 下側重ね板バネ
17 落下側案内部材
22 吸着板
23 連結ワイヤー
40 受け止め部材
41 受け止め部
41e 緩衝体
42 高調整部材
43 油圧緩衝器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着地面を備えた基盤と、この基盤から立設した基枠および案内レールと、基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤーを案内する第1案内シーブを設け、上記の案内レールには吊上げワイヤーの先端が固定された連結部材と、この連結部材に連結可能で連結解除時には下面に吊り下げられた被試験体とともに落下する落下部材とを上下動可能に取付けると共に、上記の基盤には落下試験時における被試験体の着地面への衝突時に落下部材が被試験体と衝突しないようにこの落下部材のみを受け止める受け止め部材を設け、上記の落下部材および受け止め部材には、この受け止め部材で落下部材を受け止めたときの衝撃を緩和する落下側衝撃緩和部材と受け止め側衝撃緩和部材とをそれぞれ設けたことを特徴とする落下試験装置。
【請求項2】
上記の保持部材が上部枠および下部枠と、これら両枠を連結する連結枠とからなると共に、上部枠の上部基端側には上記吊上げ部材としての巻取りモータが載置され、この巻取りモータのワイヤードラムに巻き回された上記の吊上げワイヤーの先端が上部枠の上部先端側に設けた上記の第1案内シーブを介して上記の連結部材に固定されてなる請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項3】
上記のワイヤードラムに巻き回された吊上げワイヤーが独立した2本のワイヤーからなり、それぞれが上記の連結部材に対して固定されてなる請求項2に記載の落下試験装置。
【請求項4】
上記の連結部材が中央に電磁石を備え、この電磁石の吸引力の有無によって上記の落下部材との連結および連結解除を行う請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項5】
上記の落下部材がその下面に所定長さの連結ワイヤーを備え、この連結ワイヤーを介して上記の被試験体が吊り下げられてなる請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項6】
上記の落下部材が上下一対となる上側重ね板バネおよび下側重ね板バネ同士を中央の連結具で連結した上記の落下側衝撃緩和部材と、上側重ね板バネの上面に設けられた上記の連結部材と連結するための吸着板と、上側および下側重ね板バネの両端を固定すると共に、上記の案内レールに沿って上下動可能に連結された落下側案内部材とからなる請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項7】
上記の受け止め部材が上記の落下部材に直接当接する緩衝体を備えた受け止め部と、基盤上に載置された高さ調整部材と、上記の受け止め部と高さ調整部材との間に設けられた受け止め側衝撃緩和部材としての油圧緩衝器とからなる請求項1に記載の落下試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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