説明

落下試験装置

【課題】 落下試験を繰り返し連続的に行う際に、被試験体のスムーズな落下状態を実現でききるばかりでなく、その吊上げ作業が短時間で簡単にできて試験効率の良くする。
【解決手段】 落下試験装置1が着地面2を備えた基盤3と、この基盤3から立設された基枠4と、この基枠4の上部に設けた保持部材11とから構成され、保持部材11には巻取りモータ14によって吊上げられる吊上げワイヤー5を案内する第1案内シーブ6と、先端が常に車両7の上部に接続されてこの車両7とともに吊上げまたは落下する上側案内ワイヤー8を案内する上側案内シーブ9とを設け、基盤4には先端が常に車両7の下部に接続されてこの車両7とともに吊上げまたは落下する下側案内ワイヤー17を案内する下側案内シーブ22を設けて上側案内ワイヤー8の基端と、下側案内ワイヤー17の基端とを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落下試験装置に関し、特に、自動二輪車や自動車等の車両の落下試験を行うための落下試験装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車や自動車等の車両は、その使用目的によって、たとえば、1.5mや10mと言った高所から繰り返し落下させ、耐久性を試験する落下耐久試験を行う場合がある。
【0003】
この種の落下試験装置としては、種々の構造のものを例示できるが、たとえば、自動二輪車の耐久試験装置としては、特許文献1に示すものを例示できる。
【0004】
この試験装置は、前輪を接地した状態で保持する前輪保持手段と、後輪が任意の設定高さ位置に達するまで車体後部を吊上げ、かつ、上記の吊上げ位置から車体後部をほぼ自由落下速度をもって落下させる調整自在な車体の吊上げ落下手段と、吊上げ状態において任意の設定速度に達するまで上記の後輪を回転させる調整自在なスロットル弁開閉操作手段とを備えてなる。
【0005】
この試験装置によれば、ファイナルシャフトに加わるねじれトルクと等しいねじれトルクを発生させるよう後輪の吊上げ高さを設定し、同時に後輪を設定速度で回転させながら車体を落下させることで、メインスタンドを立てエンジンを始動させて急発進させる実際の発進法に近いシミュレーションを可能にし、ファイナルシャフトに均一な負荷を自動的に繰返し作用させて耐久試験を行える。
【0006】
しかしながら、この試験装置は、車体自体を落下させてその耐久試験を行うものではなく、車体自体を落下させる装置としては、特許文献2に示すものを例示できる。
【0007】
この試験装置は、試験サンプルを任意の高さに保持する機構と、試験サンプルの保持を解除して該試験サンプルを落下させる機構と、試験サンプルの上部に位置して試験サンプルと共に落下し、試験サンプルの落下中の姿勢を一定に保持する姿勢制御部材と、姿勢制御部材を保持する機構と、姿勢制御部材を試験サンプルが床面に衝突するより前に試験サンプルと分離させ、停止する機構とを備え、試験サンプルを床面に衝突させて落下衝撃試験を行う。
【0008】
この試験装置は、半導体装置を実装したプリント配線基板や携帯機器を落下させ、はんだ接続部や接着部の信頼性を評価するものではあるが、基本的構成は上記した自動二輪車や自動車等の車両落下衝撃試験装置に応用が可能である。
【0009】
そして、この試験装置によれば、姿勢制御部材と同時に試験サンプルが落下することで、床面に衝突する直前まで試験サンプルの姿勢を安定に保つことが可能になり、これによって、試験結果のばらつきを小さくできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平3‐211440号公報(特許請求の範囲,図1参照)
【特許文献2】特開平3−211440号公報(明細書中の段落0038,図1,図3,図4参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の試験装置においては、試験サンプルと同時に姿勢制御部材を落下させるので、試験サンプルが床面に衝突する前に姿勢部材のみを分離させる機構が必要となり、余分な機構が必要となって装置の複雑化や大型化、延いてはコストアップに繋がる。
【0012】
また、落下試験を繰り返し連続的に行う場合には、姿勢制御部材と試験サンプルとの両方を任意の高さに吊上げて一体化させる作業がその都度、必要となるため、作業者にとっては、面倒な作業となるばかりでなく、準備のために長い作業時間を必要とし、試験効率が悪い。
【0013】
この発明は、上記した事情を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、落下試験を繰り返し連続的に行う際に、被試験体のスムーズな落下状態を実現できるばかりでなく、その吊上げ作業が短時間で簡単にできて試験効率の良くし、その汎用性の向上を期待するのに最適となる落下試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した目的を達成するために、この発明の落下試験装置の構成を、基本的には、着地面を備えた基盤と、この基盤から立設された基枠と、この基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤーを案内する第1案内シーブと、先端が常に被試験体の上部に接続されてこの被試験体とともに吊上げまたは落下する上側案内ワイヤーを案内する第2案内シーブとを設け、上記の基盤には先端が常に被試験体の下部に接続されてこの被試験体とともに吊上げまたは落下する下側案内ワイヤーを案内する下側案内シーブを設けて上記の上側案内ワイヤーの基端と、下側案内ワイヤーの基端とを接続する一方、上記の吊上げワイヤーには被試験体に取り付けた連結部材に着脱可能に連結されると共に上記の上側案内ワイヤーに沿って移動可能なクランプ部材を設け、このクランプ部材と連結部材との連結を解除した被試験体の落下試験時に、上記の着地面に落下した被試験体に対して上記の上側案内ワイヤーに沿ってクランプ部材を下降させ、クランプ部材が上記の連結部材と連結可能な位置に達したとき、互いの連結動作を行うとする。
【発明の効果】
【0015】
それゆえ、この発明によれば、落下試験時に着地面に落下した車両に対して上側案内ワイヤーに沿ってクランプ部材を下降させると、このクランプ部材が上記の連結部材と連結可能な位置に達したとき、互いの連結動作を行うので、たとえば、落下試験を繰り返し連続的に行う場合には、従来例で示したような作業者にとって面倒な吊上げのための準備作業を短時間で行える。
【0016】
特に、被試験体の上部に対して常に接続されている上側案内ワイヤーの基端を、被試験体の下部に対して常に接続されている下側案内ワイヤーの基端と接続し、いわゆる一本のエンドレスワイヤーとしたので、これら上側および下側案内ワイヤーが被試験体の落下時に抵抗となることはなく、スムーズな落下状態を実現できる
したがって、この発明の落下試験装置を用いれば、被試験体のスムーズな落下状態を実現できるばかりでなく、被試験体を吊上げるための準備時間を短縮して試験効率の良い落下試験を行える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の最良の実施形態を示す落下耐久試験装置の一部破断正面図である。
【図2】図1における保持部材の先端部分を拡大して示す正面図である。
【図3】図1における保持部材の先端部分を拡大して示す側面図である
【図4】図2において、クランプ部材の一対の挟持片が開いた状態を示す部分正面図である。
【図5】図2において、クランプ部材と連結ワイヤーとの接続状態を示す平面図である。
【図6】図1における保持部材の基端部分を拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明の落下試験装置は、図示するところでは、自動車等の車両の落下耐久試験を行う落下耐久試験装置に具体化される。
【0019】
図1,図2および図3に示すように、この実施形態の落下耐久試験装置1は、着地面2を備えた基盤3と、この基盤3から立設された基枠と、この基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤー5を案内する第1案内シーブ6と、先端が常に被試験体としての車両7に接続されてこの車両7と共に吊上げまたは落下する上側案内ワイヤーを案内する上側案内シーブ9とを設け、上記基盤3には先端が常に車両7の下部に接続されてこの車両7とともに吊上げまたは落下する下側案内ワイヤーを案内する下側案内シーブ22を設けて上記の上側案内ワイヤーの基端と、下側案内ワイヤーの基端とを接続する一方、上記の吊上げワイヤー5には車両7に取り付けた連結部材10に着脱可能に連結されるとともに上記の上側案内ワイヤーに沿って移動可能なクランプ部材12を設け、このクランプ部材12と連結部材10との連結を解除した車両7の落下試験時に上記の着地面2に落下した車両7に対して上記の上側案内ワイヤーに沿ってクランプ部材12を下降させ、クランプ部材12が上記の連結部材10と連結可能な位置に達したとき、互いの連結動作を行うとしている。
【0020】
以下、さらに詳述すると、上記の基枠は、基盤3から立設した4本の支柱(図1に2本のみ図示する)4から構成されるとともに、この基枠の上部内側には上記保持部材を設けている。
【0021】
保持部材は、上部枠11aおよび下部枠11bと、これら両枠11a,11bを連結する連結枠11cとから構成され、上部枠11aの上部基端(図1における左側を言う)には上記吊上げ部材としての巻取りモータ14が載置される。
【0022】
巻取りモータ14にはワイヤードラム(図示せず)が連結され、このワイヤードラムには上記吊上げワイヤー5が巻き回され、この吊上げワイヤー5は、図3に示すように、独立した2本のワイヤー5から構成されており、先端部は、上部枠11aの上部先端(図1における右側を言う)に設けた第1案内シーブ6を介して上記クランプ部材12に結合されている。
【0023】
クランプ部材12は、図2,図3,図4および図5に示すように、円筒状の本体12aと、本体12aの下面に設けられたクランプ部12bとを備えた電磁クランプであって、本体12aの上面には上記の吊上げワイヤー5を結合する円弧状の結合部13を設けている。
【0024】
上記のクランプ部12bは、電気信号により基端の回転軸12cを中心として先端が開閉する一対の半円弧状をなす挟持片16で構成され、このクランプ部12bの開閉動作により後述するループ状に形成されたナイロンスリングのアイ内に挟持片16の先端が挿入され、互いの連結または解除がなされる。
【0025】
上部枠11aの下部先端側には上側案内シーブ9が設けられるとともに、この上側案内シーブ9には上記の上側案内ワイヤーとしての上側メッセンジャーワイヤー8が案内されている。
【0026】
上記の上側案内シーブ9は、図3に示すように、上部枠11aの下部先端側において上記の第1案内シーブ6を挟んだ両側にそれぞれ設けられており、2組の上側案内シーブ9に対してそれぞれ上記の上側メッセンジャーワイヤー8が案内されるとともに、各上側メッセンジャーワイヤー8は、上記吊上げワイヤー5に比較して細くて軽い材質で形成される。
【0027】
また、2本の上側メッセンジャーワイヤー8は、後述するワイヤー緊張装置を介することで上記の支柱4に沿って上下動可能に配置され、先端は、上側案内シーブ9および上記の電磁クランプの本体12a両側に突設した2組の管状のガイド部材12d内を通ってそれぞれ車両7に接続される。
【0028】
上記の上側メッセンジャーワイヤー8の先端には、上記の車両7と接続するための連結具20が設けられており、この実施形態では、上下一対の連結片をボルト等(符示せず)で連結することで、車両7に対して連結される。
【0029】
また、2本ある上側メッセンジャーワイヤー8うちの一方の上側メッセンジャーワイヤー8の先端近傍には、マグネット21が取り付けられており、上記の電磁クランプの本体12a下面に設けられたリードスイッチ12eと対向したときに、電磁クランプの一対の挟持片16を閉じるよう指示する閉信号を出力する。
【0030】
そして、上記のマグネット21のメッセンジャーワイヤー8に対する取付位置は、電磁クランプの挟持片16が上記のナイロンスリング18のアイ18aと対向したときに始めてリードスイッチ12eと対向する位置となっている。
【0031】
上記の基盤3には、図1に示すように、上記の下側案内ワイヤーとしての下側メッセンジャーワイヤー17を通過させるための案内孔36が設けられており、一端が上記支柱4に近接した部分に開口されると共に、他端が上記の着地面2に穿孔した貫通孔2aに連通される。
【0032】
上記の案内孔36には先端が車両7に連結された上記下側メッセンジャーワイヤー17を上記支柱4に沿った上方へ案内するための2個の上記の下側案内シーブ22が設けられると共に、下側メッセンジャーワイヤー17の基端が上側メッセンジャーワイヤー8の基端と接続(図示せず)して、これら上側および下側メッセンジャーワイヤー8,17をいわゆる一本のエンドレスワイヤーとする。
【0033】
また、下側メッセンジャーワイヤー17は、上記上側メッセンジャーワイヤー8と同様に吊上げワイヤー5に比較して細くて軽い材質で形成される。
【0034】
なお、上記の下側メッセンジャーワイヤー17の先端の車両7に対する接続構造や、下側メッセンジャーワイヤー17の基端と上側メッセンジャーワイヤー8の基端との接続構造については、この実施形態では図示はしないが、任意の方法を採用することができ、たとえば、下側メッセンジャーワイヤー17の先端の車両に対する接続構造としては、図3に示す上側メッセンジャーワイヤー8の先端部に用いた連結具20の構造を採用できる。
【0035】
上記の連結枠11cの基端側には、図1、図6に示すように、先端の装置側シーブ26に上記メッセンジャーワイヤー8が巻き回されたワイヤー緊張装置27が設けら、図示しない制御装置の指示によりそのシリンダを伸縮させて上側および下側メッセンジャーワイヤー8,17に緊張(図6における実線の装置側シーブ26を示す)または弛緩(図1のおける点鎖線の車両7および図6における2点鎖線の装置側シーブ26を示す)を与える。
【0036】
上記の下部枠11bの下部先端側には、図2,6に示すように、第4案内シーブ28が設けられると共に、下部基端側には第5案内シーブ30が設けられ、電磁クランプから伸びる給電ケーブル29がケーベルベアとしてこの第4および第5案内シーブ28,29を介して下方に向かって配置されることで、上下動可能とされる。
【0037】
上記の各支柱4の内側には、図1および図5に示すように、上下方向に延びるガイドワイヤー31が設けられており、これらのガイドワイヤー31には、基端が電磁クランプに固定された連結ワイヤー32の先端が、このガイドワイヤー31に沿って移動可能に連結される。
【0038】
この連結ワイヤー32は、その長さが車両7吊上げ時に弛まない程度の所定長さと緊張状態を保って設定されており、車両7が吊上げられる際には、このガイドワイヤー31に沿って移動する連結ワイヤー32により、上記車両7がふらつきながら上昇するのを防止する。
【0039】
ところで、車両7側に取り付けられる連結部材10は、図2および図3に示すように、上記の連結具20間に並んで配置されると共に、内側に半円弧状の取付面を備えた上下一対の連結片10a,10bと、上側の連結片10aにループ状に取り付けられたナイロンスリング18とから構成され、一対の連結片10a,10b間に車両7を構成する車両取付部34を挿入してボルト止め(符示せず)することで、この車両7に対して固定される。
【0040】
上記のナイロンスリング18は、合成樹脂で形成されると共に、内部にピヤノ線や、板バネ等の弾性と形状保持機能を持った材料が充填(図示なし)されており、常にナイロンスリング18がそのアイ18aを円形状に保持して内部に挟持片16の端部が挿入し易いようにしている。
【0041】
上記のように構成された落下耐久試験装置1の作用を説明すると、先ず、落下耐久試験を行う車両7の上部となる車両取付部34に上側メッセンジャーワイヤー8の先端に設けた一対の連結具20と、上記の連結部材10とを並べて取り付けるとともに、この車両7の下部に上記下側メッセンジャーワイヤー17の先端を接続する。
【0042】
この状態では、連結部材10の両側に配置された一対の連結具20によって車両7に対して上側メッセンジャーワイヤー8が接続されると共に、上記のワイヤー緊張装置27のシリンダを収縮させて上側メッセンジャーワイヤー8が弛緩される(図1の2点鎖線で示す車両7を参照)ので、上記のワイヤー緊張装置27のシリンダを伸張させて上側メッセンジャーワイヤー8を緊張させる。
【0043】
その後、上記の巻取りモータ14を駆動させて吊上げワイヤー5を下降させると、その先端に結合された電磁クランプがこの上側メッセンジャーワイヤー8に沿って下降する。
【0044】
電磁クランプが下降し、その本体12a下面に設けられたリードスイッチ12eが上記の上側メッセンジャーワイヤー8に設けられたマグネット21と対向すると、閉信号が出力され、予め開状態とされた電磁クランプの一対の挟持片16を閉じる。
【0045】
すると、このクランプ部12bの閉動作によりループ状に形成されたナイロンスリング18のアイ18a内に挟持片16の先端が挿入されて閉じられるので、互いの連結がなされる。
【0046】
次いで、巻取りモータ14を駆動させて吊上げワイヤー5を巻き取ると、車両7が上側メッセンジャーワイヤー8の基端を下降させながら所定の吊上げ位置へ吊上げられる(図1の実線で示す車両7を参照)。
【0047】
このとき、電磁クランプと、ガイドワイヤー31とを連結する連結ワイヤー32により、車両7を吊上げる際のふらつきが防止される。
【0048】
また、上記上側メッセンジャーワイヤー8および下側メッセンジャーワイヤー17は、上記吊上げワイヤー5に比較して細くて軽い材質で形成されるので、車両7を上方へ吊上げるときに両メッセンジャーワイヤー8,17がスムーズに移動し、巻取りモータ14への負荷を低減すると共に、この吊上げ動作を妨げない。
【0049】
その後、上記ワイヤー緊張装置27のシリンダを収縮させてメッセンジャーワイヤー8を弛緩させると、落下耐久試験の準備がなされる。
【0050】
そこで、図示しない制御装置から上記電磁クランプの一対の挟持片16を開かせる開信号を出力させると、車両7と電磁クランプとの連結が解除されるので、車両7は自由落下を始める。
【0051】
車両7が着地面2に落下する際には、車両7に取り付けた上側メッセンジャーワイヤー8を引っ張りながら落下するが、上側メッセンジャーワイヤー8は、その基端が下側メッセンジャーワイヤー17の基端と接続して、これら上側および下側メッセンジャーワイヤー8,17がいわゆる一本のエンドレスワイヤーとなるので、これら両メッセンジャーワイヤー8,17が車両7落下時の抵抗にならず、スムーズな落下状態を実現できる。
【0052】
そして、着地面2に落下した車両7は、上記と同様にワイヤー緊張装置27を作動させて上側メッセンジャーワイヤー8を緊張させた後、上記巻取りモータ14を駆動させて吊上げワイヤー5を上側メッセンジャーワイヤー8に沿って下降させる。
【0053】
吊上げワイヤー5の下降によってクランプ部材12が下降し、その本体12a下面に設けられたリードスイッチ12eが上記の上側メッセンジャーワイヤー8に設けられたマグネット21と対向すると、閉信号が出力されて電磁クランプの一対の挟持片16が閉じる。
【0054】
すると、ループ状に形成された上記ナイロンスリング18のアイ18a内に上記の一対の挟持片16の先端が挿入されて閉じられるので、互いの連結、すなわち、吊上げワイヤー5に車両7が連結される。
【0055】
したがって、この状態で上記の巻取りモータ14を駆動させて吊上げワイヤー5を巻き取ると、車両7が所定の吊上げ位置、すなわち、落下耐久試験開始位置へ吊上げられ、直ちに落下耐久試験を繰り返して行える。
【0056】
以上、詳述したように、この発明の落下耐久試験装置1によれば、落下耐久試験時に着地面2に落下した車両7に対して上記の上側メッセンジャーワイヤー8に沿ってクランプ部材12を下降させると、電磁クランプに設けられたリードスイッチ12eが上側メッセンジャーワイヤー8に設けられたマグネット21と対向したとき、閉信号が出力されて電磁クランプの一対の挟持片16を閉じるので、上側メッセンジャーワイヤー8と車両7とを自動的に連結することができる。
【0057】
したがって、落下耐久試験を繰り返し連続的に行う場合には、従来例で示したような作業者にとって面倒な吊上げのための準備作業を短時間で行うことができるので、上記した準備時間を減らして試験効率を上げられる。
【0058】
また、上側メッセンジャーワイヤー8の基端が下側メッセンジャーワイヤー17の基端と接続して、これら上側および下側メッセンジャーワイヤー8,17がいわゆる一本のエンドレスワイヤーとなるので、これら上側および下側メッセンジャーワイヤー8,17が車両7落下時に抵抗とならず、スムーズな落下状態を実現できる。
【0059】
また、上部枠11aの上部支柱側に巻取りモータ14を載置し、上部枠11aの上部先端側に第1案内シーブ6を設けたので、巻取り装置関係部分を一箇所にコンパクトに纏めて配置できる。
【0060】
また、上記の吊上げワイヤー5として独立した2本のワイヤーを用いたので、仮に、一方の吊上げワイヤー5が切れても、車両7がいきなり落下せず、安全性が高い。
【0061】
また、上側メッセンジャーワイヤー8を2本使用し、その間をこれらの上側メッセンジャーワイヤー8に沿って電磁クランプが移動するようにしたので、この電磁クランプが一方の上側メッセンジャーワイヤー8側に回転したり、ずれたりせず、上記クランプ部12bをナイロンスリング18のアイ18aと対向する位置に確実に且つ繰り返し配置できる。
【0062】
また、上側メッセンジャーワイヤー8および下側メッセンジャーワイヤー17を吊上げワイヤー5に比較して細くて軽い材質で形成したので、常に車両7に接続されていても、たとえば、車両7を上方へ吊上げるときに両メッセンジャーワイヤー8,17がスムーズに移動し、したがって、巻取りモータ14への負荷が低減できると共に、この吊上げ動作を妨げない。
【0063】
また、上記のナイロンスリング18を使用すると共に、内部にピヤノ線や、板バネ等の弾性と形状保持機能を持った材料を充填したので、常にナイロンスリング18がそのアイ18aを円形状に維持でき、したがって、電磁クランプのクランプ部12bを構成する挟持片16を確実に上記アイ18a内に挿入でき、安心して落下耐久試験を繰り返し自動で行える。
【0064】
また、上記の各支柱4の内側に上下方向に延びるガイドワイヤー31を設けると共に、これらのガイドワイヤー31には、基端が電磁クランプに固定された連結ワイヤー32の先端をこのガイドワイヤー31に沿って移動可能で、しかも、ある程度緊張させた状態で連結したので、車両7が吊上げられる際にこの車両7がふらつきながら上昇するのを確実に防止できる。
【0065】
なお、図示した実施形態では、上側メッセンジャーワイヤー8に設けたマグネット21と、クランプ部材12に設けたリードスイッチ12eとで互いの位置関係を認識するようにしたが、この構成に限定されるものではなく、他のセンサ等を用いても良い。
【0066】
また、クランプ部材12も本実施の形態では、電磁クランプを用いたが、他の油圧を用いたクランプや、他の機械的構造を用いたクランプを採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0067】
自動車等の車両の落下耐久試験を行う落下耐久試験装置の具現化に向く。
【符号の説明】
【0068】
1 落下耐久試験装置
2 着地面
3 基盤
4 基枠たる支柱
5 吊上げワイヤー
6 第1案内シーブ
7 被試験体たる車両
8 上側案内ワイヤーたる上側メッセンジャーワイヤー
9 上側案内シーブ
10 連結部材
10a 上側の連結片
10b 下側の連結片
11a 保持部材たる上部枠
11b 保持部材たる下部枠
11c 保持部材たる連結枠
12a クランプ部材たる本体
12b クランプ部材たるクランプ部
12c 回転軸
12d ガイド部材
12e リードスイッチ
13 連結具
14 吊上げ部材たる巻取りモータ
16 挟持片
17 下側案内ワイヤーたる下側メッセンジャーワイヤー
18 ナイロンスリング
18a アイ
21 マグネット
22 下側案内シーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着地面を備えた基盤と、この基盤から立設された基枠と、この基枠の上部に設けた保持部材とから構成され、保持部材には吊上げ部材によって吊上げられる吊上げワイヤーを案内する第1案内シーブと、先端が常に被試験体の上部に接続されてこの被試験体とともに吊上げまたは落下する上側案内ワイヤーを案内する上側案内シーブとを設け、上記基盤には先端が常に被試験体の下部に接続されてこの被試験体と共に吊上げまたは落下する下側案内ワイヤーを案内する下側案内シーブを設けて上記上側案内ワイヤーの基端と、下側案内ワイヤーの基端とを接続する一方、上記吊上げワイヤーには被試験体に取り付けた連結部材に着脱可能に連結されると共に上記の上側案内ワイヤーに沿って移動可能なクランプ部材を設け、このクランプ部材と連結部材との連結を解除した被試験体の落下試験時に、上記着地面に落下した被試験体に対して上記の上側案内ワイヤーに沿ってクランプ部材を下降させ、クランプ部材が上記の連結部材と連結可能な位置に達したとき、互いの連結動作を行うようにしたことを特徴とする落下試験装置。
【請求項2】
上記の保持部材が上部枠および下部枠と、これら両枠を連結する連結枠とから構成され、上部枠の上部基端側には上記の吊上げ部材としての巻取りモータが載置され、この巻取りモータのワイヤードラムに巻き回された上記の吊上げワイヤーの先端が上部枠の上部先端側に設けた上記の第1案内シーブを介して上記のクランプ部材に結合されてなる請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項3】
上記のワイヤードラムに巻き回された吊上げワイヤーが独立した2本のワイヤーからなり、それぞれが上記のクランプ部材に対して結合されてなる請求項2に記載の落下試験装置。
【請求項4】
上記の上部枠の下部先端側には上記の上側案内シーブが設けられ、この上側案内シーブには上記上側案内ワイヤーが案内されるとともに、この上側案内ワイヤーの先端は上記クランプ部材に設けた管状のガイド部材内を通って被試験体に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の落下試験装置。
【請求項5】
上記の上側案内シーブが上部枠の下部先端側において上記第1案内シーブを挟んだ両側にそれぞれ設けられ、各上側案内シーブに対してそれぞれ上記の上側案内ワイヤーが巻き回されると共に、各上側案内ワイヤーの先端が上記のクランプ部材の両側に設けた管状のガイド部材内を通ってそれぞれ被試験体に接続されてな請求項4に記載の落下試験装置。
【請求項6】
上記のクランプ部材が円筒状の本体と、本体の下面に設けられたクランプ部とを備えた電磁クランプであって、本体の上面には上記吊上げワイヤーを結合する円弧状の結合部が設けられ、クランプ部は、電気信号により基端の回転軸を中心として先端側が開閉する一対の半円弧状をなす挟持片で構成されてなる請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項7】
上記の本体の下面端部にリードスイッチを設け、上側案内ワイヤーに沿ってクランプ部材が下降してこのクランプ部材が上記の連結部材に対して連結可能な位置に達したとき、互いの連結動作を行うよう指示する信号を出力するためのマグネットを上記の上側案内ワイヤーに設けてなる請求項6に記載の落下試験装置。
【請求項8】
上記の連結部材が被試験体に対する取付面を備えた上下一対の連結片と、上側の連結片にループ状に取り付けられたナイロンスリングとからなり、このナイロンスリングのアイ内に上記のクランプ部が着脱可能に連結される請求項1に記載の落下試験装置。
【請求項9】
上記のナイロンスリングが合成樹脂で形成されると共に、内部にピヤノ線や、板バネ等の弾性と形状保持機能を持った材料が充填されることで、常にナイロンスリングがそのアイを円形状に保持してなる請求項8に記載の落下試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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