落射蛍光照明装置、及び、それを用いた蛍光顕微鏡
【課題】対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供する。
【解決手段】落射蛍光照明装置1は、照明光を射出する光源Sと、コレクタレンズCLと、フライアイレンズ光学系FLと、対物レンズOBと、フライアイレンズ光学系FLと対物レンズOBの間に配置されるリレー光学系RLを含む。フライアイレンズ光学系FLは、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面LS1及び第2のフライアイレンズ面LS2を含む。さらに、第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置CPと対物レンズの瞳位置PPとの距離をD0、対物レンズOBの同焦点距離をLobとするとき、落射蛍光照明装置1は、以下の条件式を満たす。
0.3≦D0/Lob≦0.75
また、蛍光顕微鏡100は、落射蛍光照明装置1を含む。
【解決手段】落射蛍光照明装置1は、照明光を射出する光源Sと、コレクタレンズCLと、フライアイレンズ光学系FLと、対物レンズOBと、フライアイレンズ光学系FLと対物レンズOBの間に配置されるリレー光学系RLを含む。フライアイレンズ光学系FLは、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面LS1及び第2のフライアイレンズ面LS2を含む。さらに、第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置CPと対物レンズの瞳位置PPとの距離をD0、対物レンズOBの同焦点距離をLobとするとき、落射蛍光照明装置1は、以下の条件式を満たす。
0.3≦D0/Lob≦0.75
また、蛍光顕微鏡100は、落射蛍光照明装置1を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落射蛍光照明装置、及び、それを用いた蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡の照明装置の分野では、従来から用いられているケーラー照明の構成に、フライアイレンズを取り入れた照明装置が提案されている。
【0003】
フライアイレンズは、従来のケーラー照明では抑制することが困難であった、光源から射出される光量の角度依存性(以降、配光角特性と記す。)に起因した照明の不均一を抑制することができるため、照明の均一性の向上に寄与する。
【0004】
フライアイレンズを用いた顕微鏡の照明装置は、例えば、特許文献1で開示されている。特許文献1に開示される照明装置は、落射蛍光照明装置であり、フライアイレンズ(集光レンズアレイ)により形成される複数の光源像を対物レンズの瞳位置にリレーしている。つまり、光源像の位置と対物レンズの瞳位置は光学的に共役な関係にあり、ケーラー照明が実現されている。これにより、テレセントリックな照明の実現とともに、フライアイレンズに用いた照明の均一性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、顕微鏡では、対物レンズの瞳位置は、対物レンズの交換などのさまざまな要因により変化する。従来の照明装置の場合、瞳位置の変化に伴って光源を移動させることで、光源像の位置と瞳位置の共役関係を維持することができる。
【0007】
一方、特許文献1に開示される照明装置の場合、光源とフライアイレンズの光学的な位置関係は変更することができないため、光源だけを移動させることはできず、光源からフライアイレンズまでの光学系全体を移動させる必要がある。また、フライアイレンズにより形成される光源像が対物レンズの瞳位置に投影される倍率は、フライアイレンズを用いない従来の落射蛍光照明系により光源が対物レンズの瞳位置に投影される倍率に比べて低いことを考慮すると、共役関係を維持するために必要な光学系の移動量は、従来の光源の移動量に比べて大きくなる。
このため、特許文献1で開示される照明装置では、光源像の位置の調整は非常に困難であり、光源像の位置と瞳位置の共役関係を維持することは容易ではない。
【0008】
さらに、対物レンズの瞳位置は、対物レンズの交換の他に、照明装置が用いられる顕微鏡の構成によっても変化する。顕微鏡の構成の違いによって生じる瞳位置の変化は、通常、対物レンズの交換によって生じる変化に比べて大きい。
【0009】
例えば、光軸方向にレボルバーが移動する顕微鏡(以降、レボルバー移動型顕微鏡と記す。)とステージが移動する顕微鏡(以降、ステージ移動型顕微鏡と記す。)とを比較すると、レボルバー移動型顕微鏡の方が、光源から対物レンズの瞳位置までの距離は長くなる。レボルバー移動型顕微鏡の場合、標本をステージに配置する際にレボルバーの移動によりステージと対物レンズとの間隔を十分に確保する必要があるため、レボルバーの光源
側にレボルバーを退避させる空間が必要となるからである。この空間の光軸方向の長さは、通常、同焦点距離の1倍から1.5倍程度必要であるので、レボルバー移動型顕微鏡とステージ移動型顕微鏡では、対物レンズの瞳位置が同焦点距離の1倍から1.5倍程度離れることになる。つまり、顕微鏡の構成の違いにより、同焦点距離の1倍から1.5倍程度の対物レンズの瞳位置の変化が生じうる。
【0010】
このため、光源像の位置の調整が困難である特許文献1で開示される照明装置は、一方の構成の顕微鏡で共役関係を維持すると、他方の構成の顕微鏡では光源像の位置と瞳位置が大きく離れてしまい、照明の均一性が維持できない。
【0011】
このように、フライアイレンズを用いた顕微鏡の照明装置は、光源像の位置と瞳位置との共役関係を維持することが困難であるため、共役関係を維持することにより照明の均一性を維持する構成では、対物レンズの瞳位置の変化に十分に対応することが難しい。
【0012】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、照明光を射出する光源と、光源からの照明光が入射するコレクタレンズと、コレクタレンズからの照明光が入射するフライアイレンズ光学系と、照明光を標本面に照射する対物レンズと、フライアイレンズ光学系と対物レンズの間に配置されるリレー光学系と、を含み、フライアイレンズ光学系は、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面及び第2のフライアイレンズ面を含み、リレー光学系を介して第2のフライアイレンズ面と共役な位置と対物レンズの瞳位置との距離をD0とし、対物レンズの同焦点距離をLobとするとき、以下の条件式
0.3≦D0/Lob≦0.75 ・・・(1)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、第1のフライレンズ面は、対物レンズの前側焦点位置と共役であり、第2のフライレンズ面はフライアイレンズ光学系の後側焦点位置にある落射蛍光照明装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の落射蛍光照明装置において、コレクタレンズは、照明光を略平行光に変換し、リレー光学系は、第2のフライアイレンズ面近傍に形成される光源の像を、第2のフライアイレンズ面と共役な位置近傍にリレーする落射蛍光照明装置を提供する。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、視野絞りを含み、リレー光学系は、光源側から順に、少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する、第1レンズ群と、負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有する第2レンズ群と、を含み、視野絞りは、第1レンズ群と第2レンズ群の間であって、標本面と共役な位置に配置され、第1レンズ群は、最も視野絞り側に、負のパワーを有するレンズを含む落射蛍光照明装置を提供する。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、対物レンズは、最大の瞳径を有する第1の対物レンズと、最小の瞳径を有する第2の対物レンズを含む、複数の対物レンズから選択され、第1の対物レンズの瞳径をDLとし、第2の対物レンズの瞳径をDSとし、第2のフライアイレンズ面のレンズ要素のピッチをPとし、第2のフライアイレンズの有効径をEとするとき、以下の条件式
0.6<E×β/DL<1.2 ・・・(2)
1<DS/(β×P)<3 ・・・(3)
2≦DL/DS≦5 ・・・(4)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、第2のフライアイレンズ面近傍に光源の像が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面近傍に光源の像が形成される第2の状態とを、切替えるための切替え手段を含む落射蛍光照明装置を提供する。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の落射蛍光照明装置において、切替え手段は、光源とコレクタレンズとの距離を変化させる落射蛍光照明装置を提供する。
【0020】
本発明の第8の態様は、第6の態様に記載の落射蛍光照明装置において、フライアイレンズ光学系は、光源側から順に、第1のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第1のフライアイレンズと、第2のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第2のフライアイレンズと、を含み、第2の状態における第1のフライアイレンズ面近傍に形成される光源の像の大きさをHとし、第1のフライアイレンズ面のレンズ要素のピッチをPとし、第1のフライアイレンズ面に入射する照明光の開口数をNA0とし、第2のフライアイレンズの焦点距離をF2とするとき、以下の条件式
1.5≦H/P≦5 ・・・(5)
0.5≦2×F2×NA0/P≦1 ・・・(6)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
本発明の第9の態様は、第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つに記載の落射蛍光照明装置を含む蛍光顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】実施例1に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図1B】実施例1に係る落射蛍光照明装置を含む、他の蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図2A】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の一例を説明する図である。
【図2B】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の他の一例を説明する図である。
【図2C】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態のさらに他の一例を説明する図である。
【図3A】実施例1に係る落射蛍光照明装置による標本面の照明状態の一例を説明する図である。
【図3B】実施例1に係る落射蛍光照明装置による標本面の照明状態の他の一例を説明する図である。
【図4】実施例1に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ面の投影像と対物レンズの瞳の関係を例示した図である。
【図5】実施例2に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図6】光源像がフライアイレンズのピッチに対して小さい場合の実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系の作用を説明するための図である。
【図7】光源像がフライアイレンズのピッチに対して大きい場合の実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系の作用を説明するための図である。
【図8】実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系FLに入射する照明光の開口数とレンズ要素のピッチPとの関係について説明するための図である。
【図9】実施例2に係る落射蛍光照明装置の変形例の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、各実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1Aは、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図1Bは、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、他の蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【0025】
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、図1Aに例示される蛍光顕微鏡100、図1Bに例示される蛍光顕微鏡200、及び本実施例に係る落射蛍光照明装置1の構成について説明する。
【0026】
蛍光顕微鏡100及び蛍光顕微鏡200の各々は、標本面SPを照明光で照明する落射蛍光照明装置1と、標本面SPで生じた蛍光を結像する結像レンズTLと、を含んでいる。蛍光顕微鏡100と蛍光顕微鏡200は、いずれも同一の落射蛍光照明装置1を含んでいるが、落射蛍光照明装置1に含まれる対物レンズOBの取り付け位置が異なっている。
【0027】
具体的には、蛍光顕微鏡100は、例えば、ステージ移動型顕微鏡であり、落射蛍光照明装置1に含まれる対物レンズOBは、同じく落射蛍光照明装置1に含まれるダイクロイックミラーDMから比較的近い位置に配置されている。一方、蛍光顕微鏡200は、例えば、レボルバー移動型顕微鏡であり、対物レンズOBは、ダイクロイックミラーDMから比較的離れた位置に配置されている。
【0028】
本実施例に係る落射蛍光照明装置1は、照明光を射出する光源Sと、光源Sからの照明光が入射するコレクタレンズCLと、レンズL1及びレンズL2と、コレクタレンズCLからの照明光が入射するフライアイレンズ光学系FLと、リレー光学系RLと、視野絞りFSと、蛍光物質の励起に必要な波長の照明光を透過させる励起フィルタEFと、励起光として機能する照明光を反射し蛍光を透過させるダイクロイックミラーDMと、蛍光を透過させるバリアフィルタBFと、照明光を標本面SPに照射する対物レンズOBと、を含んでいる。
光源Sは、例えば、LED光源である。また、光源Sとして、光ファイバ光源が用いられてもよい。
フライアイレンズ光学系FLは、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面LS1と第2のフライアイレンズ面LS2を含んでいる。
【0029】
より具体的には、フライアイレンズ光学系FLは、光源S側から順に、光源S側に第1のフライアイレンズ面LS1を、標本面SP側に平面を有し、正のパワーを有する第1のフライアイレンズL3と、光源S側に平面を、標本面SP側に第2のフライアイレンズ面LS2を有し、正のパワーを有する第2のフライアイレンズL4を含んでいる。
【0030】
なお、第1のフライアイレンズL3と第2のフライアイレンズL4は同一形状であり、第1のフライアイレンズ面LS1に含まれるレンズ要素と第2のフライアイレンズ面LS2に含まれるレンズ要素のピッチは等しいことが望ましい。
【0031】
リレー光学系RLは、フライアイレンズ光学系FLと対物レンズOBとの間に配置されている。また、リレー光学系RLは、光源S側から順に、レンズL5及びレンズL6からなる第1レンズ群と、レンズL7及びレンズL8からなる第2レンズ群を含んでいる。視野絞りFSは、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間に配置されている。
【0032】
なお、第1レンズ群LG1及び第2レンズ群LG2は、ここでは、それぞれ2つのレンズから構成されているが、特にこれに限られない。第1レンズ群LG1は、少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有し、且つ、最も視野絞りFS側のレンズが、負のパワーを有していることが望ましい。また、第2レンズ群LG2は、負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有していることが望ましい。
【0033】
上記構成を有するリレー光学系RLは、光源共役位置における軸外収差性能を示す非点収差、コマ収差を良好に補正することができる。このため、フライアイレンズの各要素により形成される複数の光源像は、共役位置に均等な明るさと大きさの光源共役像として、リレー光学系によりリレーされることになり、その結果、均一な照明性能を得ることが可能となる。より詳細には、第2レンズ群LG2に負のパワーを有するレンズを含むことで、標本面に投影される視野絞り像の球面収差、色収差を良好に補正することが可能となる。
また、第1レンズ群、第2レンズ群は、接合レンズを用いることなく構成されることが好ましい。これにより、接合レンズに使用する接着剤が光源からの紫外線によって劣化し、それによって、リレー光学系RLの透過率が低下することを防止するためである。
ダイクロイックミラーDMは、リレー光学系RLと対物レンズOBの間に配置されている。
【0034】
第1のフライアイレンズ面LS1は、対物レンズOBの前側(物体側)焦点位置、すなわち、標本面SPと共役である。また、視野絞りFSも、標本面SPと共役である。第2のフライアイレンズ面LS2は、フライアイレンズ光学系FLの後側(物体側)焦点位置にある。
次に、蛍光顕微鏡100、蛍光顕微鏡200、及び、落射蛍光照明装置1の作用について説明する。
【0035】
LED光源などの光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズCLにより略平行光に変換され、レンズL1及びレンズL2より光束径を調整された後、略平行光としてフライアイレンズ光学系FLに入射する。
【0036】
略平行光として入射した照明光は、第1のフライアイレンズ面LS1(第1のフライアイレンズL3)により入射したレンズ要素毎に分割され、分割された照明光の各々は、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に集光する。従って、複数の光源像S1が、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に形成される。
【0037】
なお、以降では、説明を簡略化するため、光源像S1が第2のフライアイレンズ面LS2上に形成される場合を例に説明するが、特にこれに限られない。光源像S1は、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に形成されればよい。
【0038】
光源像S1の各々は、光源Sから射出される照明光の一部で、且つ、光源Sからの射出角度がそれぞれ異なる範囲内にある照明光により形成されている。例えば、光軸AX上に形成される光源像S1は、光軸AXに対して小さな射出角度の照明光から形成されている。これに対して、光軸AXからずれた位置に形成される光源像S1は、光軸AXに対して大きな射出角度の照明光から形成されている。従って、光源Sの配光角特性は分割されて
、分割された配光角特性が光源像S1の各々に引き継がれることになる。
【0039】
このようにして形成された光源像S1の各々は、リレー光学系RLにより、光源像S2として第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置(以降、単に、共役位置と記す。)CPにリレーされる。そして、光源像S2の各々が標本面SPを照明する。つまり、分割された配光角特性を有する光源像S2の各々からの照明光が、対物レンズOBにより標本面SPに照射され、標本面SPで重なり合うことになる。その結果、光源Sの配光角特性に依存した照明の不均一は抑制される。
【0040】
なお、図1Aに例示される蛍光顕微鏡100では、ダイクロイックミラーDMから対物レンズOBまでの距離が比較的近いため、共役位置CPは、対物レンズの瞳位置PPに対して標本面SP側に位置している。一方、図1Bに例示される蛍光顕微鏡200では、ダイクロイックミラーDMから対物レンズOBまでの距離が比較的離れているため、共役位置CPは、対物レンズの瞳位置PPに対して光源S側に位置している。このように瞳位置PPと共役位置CPの間隔を予め所定距離だけ離して配置することにより、蛍光顕微鏡100及び蛍光顕微鏡200のいずれでも、高い照明の均一性を実現することができる。
【0041】
以降では、このように瞳位置PPと共役位置CPを所定距離だけ離して配置することにより、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、落射蛍光照明装置1、及び、落射蛍光照明装置1を備えた蛍光顕微鏡が、高い照明均一性を実現することができることについて説明する。
まず、本落射蛍光照明装置1の特徴を明確にするために、落射照明装置の一種である、従来の落射明視野照明装置による照明について簡単に説明する。
【0042】
図2A、図2B、及び図2Cは、従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の例を説明する図である。図2Aは、ケーラー照明が実現されている落射照明状態を例示し、図2B及び図2Cは、ケーラー照明が実現されていない照明状態を例示している。なお、落射明視野照明装置は、標本面で正反射された反射光により標本面を観察する明視野顕微鏡に用いられる照明装置である。
【0043】
図2Aで例示されるように、共役位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPとが一致している状態では、瞳位置PPを通過する照明光の主光線は、それぞれ対物レンズOBで屈折し、標本面SPに光軸AXと平行に入射する。このため、標本面SPを正反射した反射光は、照明光と同じ光路を通って不図示の観察光学系へ導かれる。これは、照明範囲を規定する最軸外の主光線LB1及びLB2でも同様であるため、図2Aのように構成された明視野照明装置では、照明範囲を良好に観察することができる。
【0044】
一方、図2B及び図2Cで例示されるように、共役位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPが一致しない場合には、標本面SP上の十分な範囲を観察することができない状態が生じえる。
【0045】
図2Bで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも標本面SP側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して外向きに屈折される。この場合、十分な照明範囲が確保できた場合であっても、反射光が対物レンズOBの有効径の外側に逸れてしまうことが原因で、照明範囲が十分に観察できない状態が生じえる。
【0046】
また、図2Cで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも光源側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、図2Bとは反対に、対物レンズOBで光軸AXに対して内向きに屈折される。このため、照明範囲自体が狭くなり、標本面SP上の十
分な範囲が観察できない状態が生じえる。また、反射光の光路が照明光の光路とは異なるため、反射光に対するビネッティングが原因で、照明範囲が十分に観察できない状態も生じえる。
【0047】
このように、落射明視野照明装置では、標本面SPで正反射された反射光により標本面SPを観察することを前提としているため、標本面SPを光軸AXと平行に照明するケーラー照明が望ましい。
【0048】
一方、本実施例に係る落射蛍光照明装置1の場合には、明視野照明装置とは異なり、必ずしもケーラー照明を必要としない。落射蛍光照明装置が用いられる蛍光顕微鏡は、標本面SPで反射された反射光ではなく、標本面SP上に存在する蛍光物質から生じる蛍光が観察されるからである。
【0049】
図3A及び図3Bは、本実施例に係る落射蛍光照明装置1による標本面の照明状態の例を説明する図であり、それぞれケーラー照明が実現されていない照明状態を例示している。
【0050】
図3Aで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも標本面SP側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して外向きに屈折される。標本面SPでは、照明光により蛍光物質が励起されて蛍光が生じるが、蛍光は照明光の入射角によらず、さまざまな方向に放出される。このため、入射角によらず、発生した蛍光のうち一定の割合の蛍光が、対物レンズOBの有効径内に入射する。その結果、照明範囲R0を良好に観察することができる。
【0051】
また、図3Bで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも光源S側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して内向きに屈折される。このため、照明範囲自体が狭くなり、標本面SP上の十分な範囲が観察できない状態が生じえる。そこで、本実施例に係る落射蛍光照明装置1では、予め照明光が共役位置CPに入射する際の開口数(以降、入射開口数と記す。)を所望の大きさの照明範囲R0に応じて設計する。より具体的には、落射蛍光照明装置1は、共役位置CPと瞳位置PPとが一致する場合(つまり、ケーラー照明状態)の入射開口数NA1よりも大きな入射開口数NA2を有するように設計される。これにより、照明範囲R0を良好に観察することができる。
【0052】
このように、落射蛍光照明装置では、明視野照明装置などの他の落射照明装置に比べて、ケーラー照明を実現しない場合に生じる照明性能の劣化は小さい。このため、必ずしも瞳位置PPと共役位置CPを一致させる必要性はない。
【0053】
しかしながら、瞳位置PPから共役位置CPがあまりにも離れすぎると、照明光に対してビネッティングが生じてしまうことが原因で、照明性能が劣化してしまう。
【0054】
このため、図1A及び図1Bに例示される落射蛍光照明装置1では、共役位置CPを、予め想定される瞳位置PPの変化に対して最適な位置に設定することで、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、高い照明の均一性を実現する。
【0055】
なお、想定される瞳位置PPの変化のうち、最も大きな変化は、落射蛍光照明装置1が使用される顕微鏡が、ステージ移動型顕微鏡からレボルバー移動型顕微鏡に(またはその反対に)変わった場合に生じうる。このため、落射蛍光照明装置1の共役位置CPは、ステージ移動型顕微鏡での瞳位置とレボルバー移動型顕微鏡での瞳位置のおよそ中間の位置に配置する。上記の顕微鏡の構成間で生じうる対物レンズの変動量は対物レンズの同焦点
距離の1倍から1.5倍程度であるので、落射蛍光照明装置1の共役位置CPは、任意の蛍光顕微鏡において、以下の条件式を満すように構成される。
0.3≦D0/Lob≦0.75 ・・・(1)
【0056】
ここで、D0は、リレー光学系RLを介して第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPとの距離であり、Lobは、対物レンズOBの同焦点距離である。距離D0は、ダイクロイックミラーDMから共役位置CPまでの距離をD2とし、ダイクロイックミラーDMから瞳位置PPまでの距離をD3とすると、D0=|D2−D3|で表される。なお、D2−D3は、ステージ移動型顕微鏡で正の値を示し、レボルバー移動型顕微鏡で負の値を示す。
【0057】
条件式(1)は、共役位置CPと瞳位置PPとの距離を規定した式であり、共役位置CP近傍に光源像S2がリレーされることを考慮すると、瞳位置PPと光源像S2との距離を規定した式でもある。条件式(1)を満たすことで、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、特に、顕微鏡がステージ移動型顕微鏡であるかレボルバー移動型顕微鏡であるかによらず、高い蛍光照明の均一性を実現することができる。
【0058】
条件式(1)の上限値を上回ると、瞳位置PPと共役位置CPが離れすぎてしまうため、対物レンズOBでビネッティングが生じ、観察に必要な照明範囲が保てなくなり照明の均一性が劣化する。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、現在使用されている顕微鏡(例えば、ステージ移動型顕微鏡)では、高い照明の均一性を実現できるが、異なる構成の顕微鏡(例えば、レボルバー移動型顕微鏡)では、瞳位置PPと共役位置CPが離れすぎてしまうため、ビネッティングが生じ照明の均一性を維持できない。
【0059】
このように、本実施例に係る落射蛍光照明装置1では、検出対象である蛍光が励起光の入射角度によらず全方向に放射されるという落射蛍光照明装置固有の特性を利用し、落射蛍光照明装置に特化した設計が行われている。これにより、対物レンズの瞳位置の変動に強く、且つ、照明の均一性に優れた照明装置を実現することができる。
【0060】
また、照明装置に用いられる対物レンズOBは、通常、必要な観察倍率に応じて複数の対物レンズから選択して使用されるが、落射蛍光照明装置1は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
0.6<E×β/DL<1.2 ・・・(2)
1<DS/(β×P)<3 ・・・(3)
2≦DL/DS≦5 ・・・(4)
【0061】
ここで、DLは、使用される複数の対物レンズのうち最大の瞳径を有する第1の対物レンズOB1の瞳径であり、DSは、複数の対物レンズのうち最小の瞳径を有する第2の対物レンズOB2の瞳径である。また、Pは、第2のフライアイレンズ面LS2(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチであり、Eは、第2のフライアイレンズL4(フライアイレンズ光学系FL)の有効径である。
【0062】
なお、図4では、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面が例示されている。第2のフライアイレンズ面LS2は共役位置CPにβ倍で投影されるため、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面LS2の有効径はE×βであり、また、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面LS2のレンズ要素のピッチはP×βとなる。
【0063】
条件式(2)は、対物レンズOBの最大瞳径DLに対する光源像S2全体の大きさの比率を規定した式である。なお、光源像S2全体の大きさは、共役位置CPに投影された第
2のフライアイレンズ面LS2の有効径として近似される。条件式(2)の上限値を上回ると、対物レンズOBの瞳の外側を励起光が通過することになるため、照明効率が低下する。一方、条件式(2)の下限値を下回ると、明るさが不足する。
【0064】
条件式(3)は、対物レンズOBの最小瞳径DS内に形成される第2のフライアイレンズ面LS2のレンズ要素の数を規定した式である。条件式(3)の上限値を上回ると、励起光に作用するレンズ要素の数が多いため、境界で生じる励起光の損失が大きくなり、照明の明るさが低下する。一方、条件式(3)の下限値を下回ると、フライアイレンズ光学系FLでの分割数が少ないため、光源Sの配光角特性に依存した照明の不均一が十分に抑制されない。
【0065】
条件式(4)は、対物レンズOBの最小瞳径DSに対する最大瞳径DLの比を規定した式である。条件式(4)の上限値を上回ると、高倍率の対物レンズの瞳径が相対的に小さくなり、倍率に対して開口数が小さくなる。このため、照明の明るさが低下する。また、十分な量の蛍光を取り込めないため、蛍光画像の明るさも低下する。一方、条件式(4)の下限値を下回ると、低倍率の対物レンズの瞳径が相対的に小さくなり、倍率に対して開口数が小さくなる。上限値および下限値を逸脱すると低倍から高倍での蛍光観察において効率良く蛍光観察することができなくなり好ましくない。
条件式(2)から条件式(4)を満たすことで、複数の対物レンズの倍率によらず、さらに、良好な照明性能を実現することができる。
【0066】
以上、本実施例によれば、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【0067】
なお、以上では、共役位置CPが固定され、対物レンズOBの瞳位置PPが変化する例を示したが、特にこれに限られない。落射蛍光照明装置は、例えば、複数の光源の各々から同一の対物レンズへ至る複数の照明経路を有し、且つ、その照明経路の各々にフライアイレンズ光学系を含んでもよい。この場合、各フライアイレンズ光学系の共役位置はそれぞれ異なるが、対物レンズの瞳位置に対して条件式(1)を満たすことで、落射蛍光照明装置1と同様に高い照明の均一性を実現し得る。
また、図4では、フライアイレンズ面のレンズ要素の形状が六角形である例を示したが、特にこれに限られない。レンズ要素は、その他の形状でもよく、例えば、矩形形状やその他の多角形形状として構成されてもよい。
【実施例2】
【0068】
図5は、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図5に例示される蛍光顕微鏡300は、標本面SPを照明光で照明する落射蛍光照明装置2と、標本面SPで生じ、対物レンズOBで取り込まれた蛍光を結像する結像レンズTLと、を含んでいる。なお、ここでは、蛍光顕微鏡300は、共役位置CPに対して瞳位置PPが光源S側に配置された構成が例示されているが、特にこれに限られない。共役位置CPに対して瞳位置PPが標本面SP側に配置されてもよい。
【0069】
本実施例に係る落射蛍光照明装置2は、コレクタレンズCLが光軸方向に移動することにより、光源SとコレクタレンズCLとの距離が変化する点を除き、実施例1に係る落射蛍光照明装置1と同様である。このため、落射蛍光照明装置1と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
落射蛍光照明装置2は、光源SとコレクタレンズCLとの距離を変化させる手段であるコレクタレンズCLが移動することで、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に光源像S
1が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に光源像Saが形成される第2の状態とを、切替えることができる。第1の状態では、落射蛍光照明装置2は、実施例1に係る落射蛍光照明装置1と同様に、高い照明の均一性を実現することができる。一方、第2の状態では、落射蛍光照明装置2は、第1の状態に比べて照明の均一性で劣るが、フライアイレンズ光学系を含まない従来のケーラー照明装置に比べて高い照明の均一性を実現しながら、第1の状態に比べて明るい照明を実現することができる。
【0071】
次に、図5を参照しながら、本実施例に係る落射蛍光照明装置2の第2の状態について説明する。なお、第1の状態は、実施例1に係る落射蛍光照明装置1が実現する状態と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
第2の状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズCLにより収束光に変換され、レンズL1及びレンズL2を介して、第1のフライアイレンズL3の第1のフライアイレンズ面LS1近傍に集光する。これにより、照明光が集光した第1のフライアイレンズ面LS1近傍には、単一の光源像Saが形成される。
【0073】
なお、以降では、説明を簡略化するため、光源像Saが第1のフライアイレンズ面LS1上に形成される場合を例に説明するが、特にこれに限られない。光源像Saは、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成されればよい。
【0074】
光源像Saは、フライアイレンズ光学系FL及びリレー光学系RLの第1レンズ群LG1(レンズL3、レンズL4)により、視野絞りFS上に光源像Sbとしてリレーされる。さらに、光源像Sbは、リレー光学系の第2レンズ群LG2(レンズL5、レンズL6)及び対物レンズOBにより、光源像Scとして標本面SPにリレーされる。そして、光源像Scが標本面SPを照明する。このように、落射蛍光照明装置2の第2の状態は、標本面SP上に光源像が形成されるクリティカル照明状態であるため、第1の状態の落射蛍光照明装置2に比べて、明るい照明を実現できる。
【0075】
次に、第2の状態でのフライアイレンズ光学系FLの作用について説明する。図6は、光源像Saの大きさが第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより小さい場合のフライアイレンズ光学系FLの作用を説明するための図である。図7は光源像Saの大きさが第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより大きい場合のフライアイレンズ光学系FLの作用を説明するための図である。図8は、フライアイレンズ光学系FLに入射する照明光の開口数とレンズ要素のピッチPの関係について説明するための図である。
【0076】
図6(a)に例示されるように、光源像Saが小さく、1つのレンズ要素内に投影されている場合、光源像Saから射出される照明光は1つのレンズ要素内に入射する。そして、照明光はフライアイレンズ光学系FLにより分割されることなく標本面SPまで到達する。このため、図6(b)に例示されるように、光源像Saの輝度分布がそのまま標本面SP上の投影されるため、照明の均一性は良好でない。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしていないため、視野の周辺部分には照明光は照射されず、視野の周辺部分が暗くなる。
【0077】
一方、図7(a)に例示されるように、第1のフライアイレンズ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素のピッチPに比べて大きい場合、光源像Saから射出される照明光は複数のレンズ要素に入射する。このため、照明光はフライアイレンズ光学系FLにより分割されて、分割された照明光の各々が標本面SPに到達する。なお、照明光が分割されるとき、光源Sの輝度分布も分割され、分割された輝度分布が照明光の各々に引き継がれることになる。このため、図7(b)に例示されるように、標本面SP上の
照明範囲A1の輝度分布は、分割された輝度分布を重ねた輝度分布となり、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善される。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしているため、視野全体に照明光が照射されることになる。
【0078】
以上、第1のフライアイレンズ面LS1上に光源像Saが形成される第2の状態では、落射蛍光照明装置2は、光源像Saの大きさを第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより大きくすることで、従来のクリティカル照明より均一性の高い照明を実現できる。
従って、落射蛍光照明装置2は、第2の状態において、以下の条件式を満たすことが望ましい。
1.5≦H/P≦5 ・・・(5)
0.5≦2×F2×NA0/P≦1 ・・・(6)
【0079】
ここで、Hは、第2の状態における第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成される光源像Saの大きさであり、Pは、第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチであり、NA0は、第1のフライアイレンズ面LS1に入射する照明光の開口数であり、F2は、第2のフライアイレンズの焦点距離をF2である。
【0080】
条件式(5)は、第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPに対する第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成される光源像Saの大きさHの比を規定した式である。条件式(5)の上限値を上回ると、ピッチPが小さくなるため、フライアイレンズの境界での損失が大きくなる。その結果、明るさが低下する。一方、条件式(5)の下限値を下回ると、フライアイレンズ光学系FLでの照明光の分割数が小さいため、光源の輝度分布が十分に分割されず、照明の均一性が十分に改善されない。
【0081】
条件式(6)は、フライアイレンズ光学系FLのレンズ要素のピッチPに対する各レンズ要素から射出される照明光の光束径の比を規定した式である。なお、図8を参照して理解されるように、条件式(6)の上限値を上回ると、第1のフライアイレンズL3のレンズ要素から射出された照明光の一部が第2のフライアイレンズL4の対応するレンズ要素に入射できず、光量の損失が生じるため、照明強度が低下する。一方、図8を参照して理解されるように、条件式(6)の下限値を下回ると、第2のフライアイレンズL4の各レンズ要素から射出される照明光の光束径がピッチPに対して小さくなる。このため、レンズ要素内の領域を十分に利用できず、照明性能が低下する。
【0082】
条件式(5)及び条件式(6)を満たすことで、第2の状態において、第1の状態に比べた照明の均一性の低下を最小限に抑え、且つ、第1の状態に比べて明るい照明を実現することができる。
【0083】
以上、本実施例によれば、実施例1と同様に、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。また、本実施例では、コレクタレンズCLの移動により第1の状態と第2の状態を切り換えることで、必要とされる照明性能に応じて、照明の均一性と照明の明るさのバランスを調整することができる。
なお、本実施例においても、フライアイレンズのレンズ要素の形状は、特に限定されない。図6及び図7で例示される六角形形状の他に、例えば、矩形形状やその他の多角形形状で構成されてもよい。
【0084】
図9は、本実施例に係る落射蛍光照明装置の変形例の構成を例示する図である。図9に
例示される落射蛍光照明装置3は、光源Sが光軸方向に移動することにより、光源SとコレクタレンズCLとの距離が変化する点を除き、実施例2に係る落射蛍光照明装置2と同様である。
【0085】
落射蛍光照明装置3は、光源SとコレクタレンズCLとの距離を変化させる手段である光源Sが移動することで、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に光源像S1が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に光源像Saが形成される第2の状態とを、切替えることができる。
【0086】
以上、本変形例によっても、実施例2と同様の効果を得ることができる。つまり、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。また、光源Sの移動により第1の状態と第2の状態を切り換えることで、必要とされる照明性能に応じて、照明の均一性と照明の明るさのバランスを調整することができる。
【符号の説明】
【0087】
1、2、3・・・落射蛍光照明装置、100、200、300・・・蛍光顕微鏡、S、S1、S2、Sa、Sb・・・光源、L1、L2、L5、L6、L7、L8・・・レンズ、L3・・・第1のフライアイレンズ、L4・・・第2のフライアイレンズ、CL・・・コレクタレンズ、FL・・・フライアイレンズ光学系、RL・・・リレー光学系、OB、OB1、OB2・・・対物レンズ、TL・・・結像レンズ、AX・・・光軸、LS1・・・第1のフライアイレンズ面、LS2・・・第2のフライアイレンズ面、FS・・・視野絞り、EF・・・励起フィルタ、BF・・・バリアフィルタ、DM・・・ダイクロイックミラー、PP・・・瞳位置、CP・・・共役位置、SP・・・標本面、LB1、LB2・・・光線、LG1・・・第1レンズ群、LG2・・・第2レンズ群
【技術分野】
【0001】
本発明は、落射蛍光照明装置、及び、それを用いた蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、顕微鏡の照明装置の分野では、従来から用いられているケーラー照明の構成に、フライアイレンズを取り入れた照明装置が提案されている。
【0003】
フライアイレンズは、従来のケーラー照明では抑制することが困難であった、光源から射出される光量の角度依存性(以降、配光角特性と記す。)に起因した照明の不均一を抑制することができるため、照明の均一性の向上に寄与する。
【0004】
フライアイレンズを用いた顕微鏡の照明装置は、例えば、特許文献1で開示されている。特許文献1に開示される照明装置は、落射蛍光照明装置であり、フライアイレンズ(集光レンズアレイ)により形成される複数の光源像を対物レンズの瞳位置にリレーしている。つまり、光源像の位置と対物レンズの瞳位置は光学的に共役な関係にあり、ケーラー照明が実現されている。これにより、テレセントリックな照明の実現とともに、フライアイレンズに用いた照明の均一性の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−283879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、顕微鏡では、対物レンズの瞳位置は、対物レンズの交換などのさまざまな要因により変化する。従来の照明装置の場合、瞳位置の変化に伴って光源を移動させることで、光源像の位置と瞳位置の共役関係を維持することができる。
【0007】
一方、特許文献1に開示される照明装置の場合、光源とフライアイレンズの光学的な位置関係は変更することができないため、光源だけを移動させることはできず、光源からフライアイレンズまでの光学系全体を移動させる必要がある。また、フライアイレンズにより形成される光源像が対物レンズの瞳位置に投影される倍率は、フライアイレンズを用いない従来の落射蛍光照明系により光源が対物レンズの瞳位置に投影される倍率に比べて低いことを考慮すると、共役関係を維持するために必要な光学系の移動量は、従来の光源の移動量に比べて大きくなる。
このため、特許文献1で開示される照明装置では、光源像の位置の調整は非常に困難であり、光源像の位置と瞳位置の共役関係を維持することは容易ではない。
【0008】
さらに、対物レンズの瞳位置は、対物レンズの交換の他に、照明装置が用いられる顕微鏡の構成によっても変化する。顕微鏡の構成の違いによって生じる瞳位置の変化は、通常、対物レンズの交換によって生じる変化に比べて大きい。
【0009】
例えば、光軸方向にレボルバーが移動する顕微鏡(以降、レボルバー移動型顕微鏡と記す。)とステージが移動する顕微鏡(以降、ステージ移動型顕微鏡と記す。)とを比較すると、レボルバー移動型顕微鏡の方が、光源から対物レンズの瞳位置までの距離は長くなる。レボルバー移動型顕微鏡の場合、標本をステージに配置する際にレボルバーの移動によりステージと対物レンズとの間隔を十分に確保する必要があるため、レボルバーの光源
側にレボルバーを退避させる空間が必要となるからである。この空間の光軸方向の長さは、通常、同焦点距離の1倍から1.5倍程度必要であるので、レボルバー移動型顕微鏡とステージ移動型顕微鏡では、対物レンズの瞳位置が同焦点距離の1倍から1.5倍程度離れることになる。つまり、顕微鏡の構成の違いにより、同焦点距離の1倍から1.5倍程度の対物レンズの瞳位置の変化が生じうる。
【0010】
このため、光源像の位置の調整が困難である特許文献1で開示される照明装置は、一方の構成の顕微鏡で共役関係を維持すると、他方の構成の顕微鏡では光源像の位置と瞳位置が大きく離れてしまい、照明の均一性が維持できない。
【0011】
このように、フライアイレンズを用いた顕微鏡の照明装置は、光源像の位置と瞳位置との共役関係を維持することが困難であるため、共役関係を維持することにより照明の均一性を維持する構成では、対物レンズの瞳位置の変化に十分に対応することが難しい。
【0012】
以上のような実情を踏まえ、本発明では、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の態様は、照明光を射出する光源と、光源からの照明光が入射するコレクタレンズと、コレクタレンズからの照明光が入射するフライアイレンズ光学系と、照明光を標本面に照射する対物レンズと、フライアイレンズ光学系と対物レンズの間に配置されるリレー光学系と、を含み、フライアイレンズ光学系は、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面及び第2のフライアイレンズ面を含み、リレー光学系を介して第2のフライアイレンズ面と共役な位置と対物レンズの瞳位置との距離をD0とし、対物レンズの同焦点距離をLobとするとき、以下の条件式
0.3≦D0/Lob≦0.75 ・・・(1)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
【0014】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、第1のフライレンズ面は、対物レンズの前側焦点位置と共役であり、第2のフライレンズ面はフライアイレンズ光学系の後側焦点位置にある落射蛍光照明装置を提供する。
【0015】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の落射蛍光照明装置において、コレクタレンズは、照明光を略平行光に変換し、リレー光学系は、第2のフライアイレンズ面近傍に形成される光源の像を、第2のフライアイレンズ面と共役な位置近傍にリレーする落射蛍光照明装置を提供する。
【0016】
本発明の第4の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、視野絞りを含み、リレー光学系は、光源側から順に、少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する、第1レンズ群と、負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有する第2レンズ群と、を含み、視野絞りは、第1レンズ群と第2レンズ群の間であって、標本面と共役な位置に配置され、第1レンズ群は、最も視野絞り側に、負のパワーを有するレンズを含む落射蛍光照明装置を提供する。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、対物レンズは、最大の瞳径を有する第1の対物レンズと、最小の瞳径を有する第2の対物レンズを含む、複数の対物レンズから選択され、第1の対物レンズの瞳径をDLとし、第2の対物レンズの瞳径をDSとし、第2のフライアイレンズ面のレンズ要素のピッチをPとし、第2のフライアイレンズの有効径をEとするとき、以下の条件式
0.6<E×β/DL<1.2 ・・・(2)
1<DS/(β×P)<3 ・・・(3)
2≦DL/DS≦5 ・・・(4)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
【0018】
本発明の第6の態様は、第1の態様に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、第2のフライアイレンズ面近傍に光源の像が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面近傍に光源の像が形成される第2の状態とを、切替えるための切替え手段を含む落射蛍光照明装置を提供する。
【0019】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の落射蛍光照明装置において、切替え手段は、光源とコレクタレンズとの距離を変化させる落射蛍光照明装置を提供する。
【0020】
本発明の第8の態様は、第6の態様に記載の落射蛍光照明装置において、フライアイレンズ光学系は、光源側から順に、第1のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第1のフライアイレンズと、第2のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第2のフライアイレンズと、を含み、第2の状態における第1のフライアイレンズ面近傍に形成される光源の像の大きさをHとし、第1のフライアイレンズ面のレンズ要素のピッチをPとし、第1のフライアイレンズ面に入射する照明光の開口数をNA0とし、第2のフライアイレンズの焦点距離をF2とするとき、以下の条件式
1.5≦H/P≦5 ・・・(5)
0.5≦2×F2×NA0/P≦1 ・・・(6)
を満たす落射蛍光照明装置を提供する。
本発明の第9の態様は、第1の態様乃至第8の態様のいずれか1つに記載の落射蛍光照明装置を含む蛍光顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】実施例1に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図1B】実施例1に係る落射蛍光照明装置を含む、他の蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図2A】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の一例を説明する図である。
【図2B】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の他の一例を説明する図である。
【図2C】従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態のさらに他の一例を説明する図である。
【図3A】実施例1に係る落射蛍光照明装置による標本面の照明状態の一例を説明する図である。
【図3B】実施例1に係る落射蛍光照明装置による標本面の照明状態の他の一例を説明する図である。
【図4】実施例1に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ面の投影像と対物レンズの瞳の関係を例示した図である。
【図5】実施例2に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【図6】光源像がフライアイレンズのピッチに対して小さい場合の実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系の作用を説明するための図である。
【図7】光源像がフライアイレンズのピッチに対して大きい場合の実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系の作用を説明するための図である。
【図8】実施例2に係る落射蛍光照明装置に含まれるフライアイレンズ光学系FLに入射する照明光の開口数とレンズ要素のピッチPとの関係について説明するための図である。
【図9】実施例2に係る落射蛍光照明装置の変形例の構成を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、各実施例について説明する。
【実施例1】
【0024】
図1Aは、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図1Bは、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、他の蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。
【0025】
まず、図1A及び図1Bを参照しながら、図1Aに例示される蛍光顕微鏡100、図1Bに例示される蛍光顕微鏡200、及び本実施例に係る落射蛍光照明装置1の構成について説明する。
【0026】
蛍光顕微鏡100及び蛍光顕微鏡200の各々は、標本面SPを照明光で照明する落射蛍光照明装置1と、標本面SPで生じた蛍光を結像する結像レンズTLと、を含んでいる。蛍光顕微鏡100と蛍光顕微鏡200は、いずれも同一の落射蛍光照明装置1を含んでいるが、落射蛍光照明装置1に含まれる対物レンズOBの取り付け位置が異なっている。
【0027】
具体的には、蛍光顕微鏡100は、例えば、ステージ移動型顕微鏡であり、落射蛍光照明装置1に含まれる対物レンズOBは、同じく落射蛍光照明装置1に含まれるダイクロイックミラーDMから比較的近い位置に配置されている。一方、蛍光顕微鏡200は、例えば、レボルバー移動型顕微鏡であり、対物レンズOBは、ダイクロイックミラーDMから比較的離れた位置に配置されている。
【0028】
本実施例に係る落射蛍光照明装置1は、照明光を射出する光源Sと、光源Sからの照明光が入射するコレクタレンズCLと、レンズL1及びレンズL2と、コレクタレンズCLからの照明光が入射するフライアイレンズ光学系FLと、リレー光学系RLと、視野絞りFSと、蛍光物質の励起に必要な波長の照明光を透過させる励起フィルタEFと、励起光として機能する照明光を反射し蛍光を透過させるダイクロイックミラーDMと、蛍光を透過させるバリアフィルタBFと、照明光を標本面SPに照射する対物レンズOBと、を含んでいる。
光源Sは、例えば、LED光源である。また、光源Sとして、光ファイバ光源が用いられてもよい。
フライアイレンズ光学系FLは、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面LS1と第2のフライアイレンズ面LS2を含んでいる。
【0029】
より具体的には、フライアイレンズ光学系FLは、光源S側から順に、光源S側に第1のフライアイレンズ面LS1を、標本面SP側に平面を有し、正のパワーを有する第1のフライアイレンズL3と、光源S側に平面を、標本面SP側に第2のフライアイレンズ面LS2を有し、正のパワーを有する第2のフライアイレンズL4を含んでいる。
【0030】
なお、第1のフライアイレンズL3と第2のフライアイレンズL4は同一形状であり、第1のフライアイレンズ面LS1に含まれるレンズ要素と第2のフライアイレンズ面LS2に含まれるレンズ要素のピッチは等しいことが望ましい。
【0031】
リレー光学系RLは、フライアイレンズ光学系FLと対物レンズOBとの間に配置されている。また、リレー光学系RLは、光源S側から順に、レンズL5及びレンズL6からなる第1レンズ群と、レンズL7及びレンズL8からなる第2レンズ群を含んでいる。視野絞りFSは、第1レンズ群LG1と第2レンズ群LG2の間に配置されている。
【0032】
なお、第1レンズ群LG1及び第2レンズ群LG2は、ここでは、それぞれ2つのレンズから構成されているが、特にこれに限られない。第1レンズ群LG1は、少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有し、且つ、最も視野絞りFS側のレンズが、負のパワーを有していることが望ましい。また、第2レンズ群LG2は、負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有していることが望ましい。
【0033】
上記構成を有するリレー光学系RLは、光源共役位置における軸外収差性能を示す非点収差、コマ収差を良好に補正することができる。このため、フライアイレンズの各要素により形成される複数の光源像は、共役位置に均等な明るさと大きさの光源共役像として、リレー光学系によりリレーされることになり、その結果、均一な照明性能を得ることが可能となる。より詳細には、第2レンズ群LG2に負のパワーを有するレンズを含むことで、標本面に投影される視野絞り像の球面収差、色収差を良好に補正することが可能となる。
また、第1レンズ群、第2レンズ群は、接合レンズを用いることなく構成されることが好ましい。これにより、接合レンズに使用する接着剤が光源からの紫外線によって劣化し、それによって、リレー光学系RLの透過率が低下することを防止するためである。
ダイクロイックミラーDMは、リレー光学系RLと対物レンズOBの間に配置されている。
【0034】
第1のフライアイレンズ面LS1は、対物レンズOBの前側(物体側)焦点位置、すなわち、標本面SPと共役である。また、視野絞りFSも、標本面SPと共役である。第2のフライアイレンズ面LS2は、フライアイレンズ光学系FLの後側(物体側)焦点位置にある。
次に、蛍光顕微鏡100、蛍光顕微鏡200、及び、落射蛍光照明装置1の作用について説明する。
【0035】
LED光源などの光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズCLにより略平行光に変換され、レンズL1及びレンズL2より光束径を調整された後、略平行光としてフライアイレンズ光学系FLに入射する。
【0036】
略平行光として入射した照明光は、第1のフライアイレンズ面LS1(第1のフライアイレンズL3)により入射したレンズ要素毎に分割され、分割された照明光の各々は、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に集光する。従って、複数の光源像S1が、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に形成される。
【0037】
なお、以降では、説明を簡略化するため、光源像S1が第2のフライアイレンズ面LS2上に形成される場合を例に説明するが、特にこれに限られない。光源像S1は、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に形成されればよい。
【0038】
光源像S1の各々は、光源Sから射出される照明光の一部で、且つ、光源Sからの射出角度がそれぞれ異なる範囲内にある照明光により形成されている。例えば、光軸AX上に形成される光源像S1は、光軸AXに対して小さな射出角度の照明光から形成されている。これに対して、光軸AXからずれた位置に形成される光源像S1は、光軸AXに対して大きな射出角度の照明光から形成されている。従って、光源Sの配光角特性は分割されて
、分割された配光角特性が光源像S1の各々に引き継がれることになる。
【0039】
このようにして形成された光源像S1の各々は、リレー光学系RLにより、光源像S2として第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置(以降、単に、共役位置と記す。)CPにリレーされる。そして、光源像S2の各々が標本面SPを照明する。つまり、分割された配光角特性を有する光源像S2の各々からの照明光が、対物レンズOBにより標本面SPに照射され、標本面SPで重なり合うことになる。その結果、光源Sの配光角特性に依存した照明の不均一は抑制される。
【0040】
なお、図1Aに例示される蛍光顕微鏡100では、ダイクロイックミラーDMから対物レンズOBまでの距離が比較的近いため、共役位置CPは、対物レンズの瞳位置PPに対して標本面SP側に位置している。一方、図1Bに例示される蛍光顕微鏡200では、ダイクロイックミラーDMから対物レンズOBまでの距離が比較的離れているため、共役位置CPは、対物レンズの瞳位置PPに対して光源S側に位置している。このように瞳位置PPと共役位置CPの間隔を予め所定距離だけ離して配置することにより、蛍光顕微鏡100及び蛍光顕微鏡200のいずれでも、高い照明の均一性を実現することができる。
【0041】
以降では、このように瞳位置PPと共役位置CPを所定距離だけ離して配置することにより、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、落射蛍光照明装置1、及び、落射蛍光照明装置1を備えた蛍光顕微鏡が、高い照明均一性を実現することができることについて説明する。
まず、本落射蛍光照明装置1の特徴を明確にするために、落射照明装置の一種である、従来の落射明視野照明装置による照明について簡単に説明する。
【0042】
図2A、図2B、及び図2Cは、従来の落射明視野照明装置による標本面の照明状態の例を説明する図である。図2Aは、ケーラー照明が実現されている落射照明状態を例示し、図2B及び図2Cは、ケーラー照明が実現されていない照明状態を例示している。なお、落射明視野照明装置は、標本面で正反射された反射光により標本面を観察する明視野顕微鏡に用いられる照明装置である。
【0043】
図2Aで例示されるように、共役位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPとが一致している状態では、瞳位置PPを通過する照明光の主光線は、それぞれ対物レンズOBで屈折し、標本面SPに光軸AXと平行に入射する。このため、標本面SPを正反射した反射光は、照明光と同じ光路を通って不図示の観察光学系へ導かれる。これは、照明範囲を規定する最軸外の主光線LB1及びLB2でも同様であるため、図2Aのように構成された明視野照明装置では、照明範囲を良好に観察することができる。
【0044】
一方、図2B及び図2Cで例示されるように、共役位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPが一致しない場合には、標本面SP上の十分な範囲を観察することができない状態が生じえる。
【0045】
図2Bで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも標本面SP側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して外向きに屈折される。この場合、十分な照明範囲が確保できた場合であっても、反射光が対物レンズOBの有効径の外側に逸れてしまうことが原因で、照明範囲が十分に観察できない状態が生じえる。
【0046】
また、図2Cで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも光源側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、図2Bとは反対に、対物レンズOBで光軸AXに対して内向きに屈折される。このため、照明範囲自体が狭くなり、標本面SP上の十
分な範囲が観察できない状態が生じえる。また、反射光の光路が照明光の光路とは異なるため、反射光に対するビネッティングが原因で、照明範囲が十分に観察できない状態も生じえる。
【0047】
このように、落射明視野照明装置では、標本面SPで正反射された反射光により標本面SPを観察することを前提としているため、標本面SPを光軸AXと平行に照明するケーラー照明が望ましい。
【0048】
一方、本実施例に係る落射蛍光照明装置1の場合には、明視野照明装置とは異なり、必ずしもケーラー照明を必要としない。落射蛍光照明装置が用いられる蛍光顕微鏡は、標本面SPで反射された反射光ではなく、標本面SP上に存在する蛍光物質から生じる蛍光が観察されるからである。
【0049】
図3A及び図3Bは、本実施例に係る落射蛍光照明装置1による標本面の照明状態の例を説明する図であり、それぞれケーラー照明が実現されていない照明状態を例示している。
【0050】
図3Aで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも標本面SP側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して外向きに屈折される。標本面SPでは、照明光により蛍光物質が励起されて蛍光が生じるが、蛍光は照明光の入射角によらず、さまざまな方向に放出される。このため、入射角によらず、発生した蛍光のうち一定の割合の蛍光が、対物レンズOBの有効径内に入射する。その結果、照明範囲R0を良好に観察することができる。
【0051】
また、図3Bで例示されるように、共役位置CPが瞳位置PPよりも光源S側にある場合には、最軸外の主光線LB1及びLB2は、対物レンズOBで光軸AXに対して内向きに屈折される。このため、照明範囲自体が狭くなり、標本面SP上の十分な範囲が観察できない状態が生じえる。そこで、本実施例に係る落射蛍光照明装置1では、予め照明光が共役位置CPに入射する際の開口数(以降、入射開口数と記す。)を所望の大きさの照明範囲R0に応じて設計する。より具体的には、落射蛍光照明装置1は、共役位置CPと瞳位置PPとが一致する場合(つまり、ケーラー照明状態)の入射開口数NA1よりも大きな入射開口数NA2を有するように設計される。これにより、照明範囲R0を良好に観察することができる。
【0052】
このように、落射蛍光照明装置では、明視野照明装置などの他の落射照明装置に比べて、ケーラー照明を実現しない場合に生じる照明性能の劣化は小さい。このため、必ずしも瞳位置PPと共役位置CPを一致させる必要性はない。
【0053】
しかしながら、瞳位置PPから共役位置CPがあまりにも離れすぎると、照明光に対してビネッティングが生じてしまうことが原因で、照明性能が劣化してしまう。
【0054】
このため、図1A及び図1Bに例示される落射蛍光照明装置1では、共役位置CPを、予め想定される瞳位置PPの変化に対して最適な位置に設定することで、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、高い照明の均一性を実現する。
【0055】
なお、想定される瞳位置PPの変化のうち、最も大きな変化は、落射蛍光照明装置1が使用される顕微鏡が、ステージ移動型顕微鏡からレボルバー移動型顕微鏡に(またはその反対に)変わった場合に生じうる。このため、落射蛍光照明装置1の共役位置CPは、ステージ移動型顕微鏡での瞳位置とレボルバー移動型顕微鏡での瞳位置のおよそ中間の位置に配置する。上記の顕微鏡の構成間で生じうる対物レンズの変動量は対物レンズの同焦点
距離の1倍から1.5倍程度であるので、落射蛍光照明装置1の共役位置CPは、任意の蛍光顕微鏡において、以下の条件式を満すように構成される。
0.3≦D0/Lob≦0.75 ・・・(1)
【0056】
ここで、D0は、リレー光学系RLを介して第2のフライアイレンズ面LS2と共役な位置CPと対物レンズOBの瞳位置PPとの距離であり、Lobは、対物レンズOBの同焦点距離である。距離D0は、ダイクロイックミラーDMから共役位置CPまでの距離をD2とし、ダイクロイックミラーDMから瞳位置PPまでの距離をD3とすると、D0=|D2−D3|で表される。なお、D2−D3は、ステージ移動型顕微鏡で正の値を示し、レボルバー移動型顕微鏡で負の値を示す。
【0057】
条件式(1)は、共役位置CPと瞳位置PPとの距離を規定した式であり、共役位置CP近傍に光源像S2がリレーされることを考慮すると、瞳位置PPと光源像S2との距離を規定した式でもある。条件式(1)を満たすことで、対物レンズOBの瞳位置PPによらず、特に、顕微鏡がステージ移動型顕微鏡であるかレボルバー移動型顕微鏡であるかによらず、高い蛍光照明の均一性を実現することができる。
【0058】
条件式(1)の上限値を上回ると、瞳位置PPと共役位置CPが離れすぎてしまうため、対物レンズOBでビネッティングが生じ、観察に必要な照明範囲が保てなくなり照明の均一性が劣化する。一方、条件式(1)の下限値を下回ると、現在使用されている顕微鏡(例えば、ステージ移動型顕微鏡)では、高い照明の均一性を実現できるが、異なる構成の顕微鏡(例えば、レボルバー移動型顕微鏡)では、瞳位置PPと共役位置CPが離れすぎてしまうため、ビネッティングが生じ照明の均一性を維持できない。
【0059】
このように、本実施例に係る落射蛍光照明装置1では、検出対象である蛍光が励起光の入射角度によらず全方向に放射されるという落射蛍光照明装置固有の特性を利用し、落射蛍光照明装置に特化した設計が行われている。これにより、対物レンズの瞳位置の変動に強く、且つ、照明の均一性に優れた照明装置を実現することができる。
【0060】
また、照明装置に用いられる対物レンズOBは、通常、必要な観察倍率に応じて複数の対物レンズから選択して使用されるが、落射蛍光照明装置1は、以下の条件式を満たすことが望ましい。
0.6<E×β/DL<1.2 ・・・(2)
1<DS/(β×P)<3 ・・・(3)
2≦DL/DS≦5 ・・・(4)
【0061】
ここで、DLは、使用される複数の対物レンズのうち最大の瞳径を有する第1の対物レンズOB1の瞳径であり、DSは、複数の対物レンズのうち最小の瞳径を有する第2の対物レンズOB2の瞳径である。また、Pは、第2のフライアイレンズ面LS2(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチであり、Eは、第2のフライアイレンズL4(フライアイレンズ光学系FL)の有効径である。
【0062】
なお、図4では、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面が例示されている。第2のフライアイレンズ面LS2は共役位置CPにβ倍で投影されるため、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面LS2の有効径はE×βであり、また、共役位置CPに投影された第2のフライアイレンズ面LS2のレンズ要素のピッチはP×βとなる。
【0063】
条件式(2)は、対物レンズOBの最大瞳径DLに対する光源像S2全体の大きさの比率を規定した式である。なお、光源像S2全体の大きさは、共役位置CPに投影された第
2のフライアイレンズ面LS2の有効径として近似される。条件式(2)の上限値を上回ると、対物レンズOBの瞳の外側を励起光が通過することになるため、照明効率が低下する。一方、条件式(2)の下限値を下回ると、明るさが不足する。
【0064】
条件式(3)は、対物レンズOBの最小瞳径DS内に形成される第2のフライアイレンズ面LS2のレンズ要素の数を規定した式である。条件式(3)の上限値を上回ると、励起光に作用するレンズ要素の数が多いため、境界で生じる励起光の損失が大きくなり、照明の明るさが低下する。一方、条件式(3)の下限値を下回ると、フライアイレンズ光学系FLでの分割数が少ないため、光源Sの配光角特性に依存した照明の不均一が十分に抑制されない。
【0065】
条件式(4)は、対物レンズOBの最小瞳径DSに対する最大瞳径DLの比を規定した式である。条件式(4)の上限値を上回ると、高倍率の対物レンズの瞳径が相対的に小さくなり、倍率に対して開口数が小さくなる。このため、照明の明るさが低下する。また、十分な量の蛍光を取り込めないため、蛍光画像の明るさも低下する。一方、条件式(4)の下限値を下回ると、低倍率の対物レンズの瞳径が相対的に小さくなり、倍率に対して開口数が小さくなる。上限値および下限値を逸脱すると低倍から高倍での蛍光観察において効率良く蛍光観察することができなくなり好ましくない。
条件式(2)から条件式(4)を満たすことで、複数の対物レンズの倍率によらず、さらに、良好な照明性能を実現することができる。
【0066】
以上、本実施例によれば、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。
【0067】
なお、以上では、共役位置CPが固定され、対物レンズOBの瞳位置PPが変化する例を示したが、特にこれに限られない。落射蛍光照明装置は、例えば、複数の光源の各々から同一の対物レンズへ至る複数の照明経路を有し、且つ、その照明経路の各々にフライアイレンズ光学系を含んでもよい。この場合、各フライアイレンズ光学系の共役位置はそれぞれ異なるが、対物レンズの瞳位置に対して条件式(1)を満たすことで、落射蛍光照明装置1と同様に高い照明の均一性を実現し得る。
また、図4では、フライアイレンズ面のレンズ要素の形状が六角形である例を示したが、特にこれに限られない。レンズ要素は、その他の形状でもよく、例えば、矩形形状やその他の多角形形状として構成されてもよい。
【実施例2】
【0068】
図5は、本実施例に係る落射蛍光照明装置を含む、蛍光顕微鏡の構成を例示する図である。図5に例示される蛍光顕微鏡300は、標本面SPを照明光で照明する落射蛍光照明装置2と、標本面SPで生じ、対物レンズOBで取り込まれた蛍光を結像する結像レンズTLと、を含んでいる。なお、ここでは、蛍光顕微鏡300は、共役位置CPに対して瞳位置PPが光源S側に配置された構成が例示されているが、特にこれに限られない。共役位置CPに対して瞳位置PPが標本面SP側に配置されてもよい。
【0069】
本実施例に係る落射蛍光照明装置2は、コレクタレンズCLが光軸方向に移動することにより、光源SとコレクタレンズCLとの距離が変化する点を除き、実施例1に係る落射蛍光照明装置1と同様である。このため、落射蛍光照明装置1と同一の要素には同一の符号を付して説明を省略する。
【0070】
落射蛍光照明装置2は、光源SとコレクタレンズCLとの距離を変化させる手段であるコレクタレンズCLが移動することで、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に光源像S
1が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に光源像Saが形成される第2の状態とを、切替えることができる。第1の状態では、落射蛍光照明装置2は、実施例1に係る落射蛍光照明装置1と同様に、高い照明の均一性を実現することができる。一方、第2の状態では、落射蛍光照明装置2は、第1の状態に比べて照明の均一性で劣るが、フライアイレンズ光学系を含まない従来のケーラー照明装置に比べて高い照明の均一性を実現しながら、第1の状態に比べて明るい照明を実現することができる。
【0071】
次に、図5を参照しながら、本実施例に係る落射蛍光照明装置2の第2の状態について説明する。なお、第1の状態は、実施例1に係る落射蛍光照明装置1が実現する状態と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
第2の状態では、光源Sから射出された照明光は、コレクタレンズCLにより収束光に変換され、レンズL1及びレンズL2を介して、第1のフライアイレンズL3の第1のフライアイレンズ面LS1近傍に集光する。これにより、照明光が集光した第1のフライアイレンズ面LS1近傍には、単一の光源像Saが形成される。
【0073】
なお、以降では、説明を簡略化するため、光源像Saが第1のフライアイレンズ面LS1上に形成される場合を例に説明するが、特にこれに限られない。光源像Saは、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成されればよい。
【0074】
光源像Saは、フライアイレンズ光学系FL及びリレー光学系RLの第1レンズ群LG1(レンズL3、レンズL4)により、視野絞りFS上に光源像Sbとしてリレーされる。さらに、光源像Sbは、リレー光学系の第2レンズ群LG2(レンズL5、レンズL6)及び対物レンズOBにより、光源像Scとして標本面SPにリレーされる。そして、光源像Scが標本面SPを照明する。このように、落射蛍光照明装置2の第2の状態は、標本面SP上に光源像が形成されるクリティカル照明状態であるため、第1の状態の落射蛍光照明装置2に比べて、明るい照明を実現できる。
【0075】
次に、第2の状態でのフライアイレンズ光学系FLの作用について説明する。図6は、光源像Saの大きさが第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより小さい場合のフライアイレンズ光学系FLの作用を説明するための図である。図7は光源像Saの大きさが第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより大きい場合のフライアイレンズ光学系FLの作用を説明するための図である。図8は、フライアイレンズ光学系FLに入射する照明光の開口数とレンズ要素のピッチPの関係について説明するための図である。
【0076】
図6(a)に例示されるように、光源像Saが小さく、1つのレンズ要素内に投影されている場合、光源像Saから射出される照明光は1つのレンズ要素内に入射する。そして、照明光はフライアイレンズ光学系FLにより分割されることなく標本面SPまで到達する。このため、図6(b)に例示されるように、光源像Saの輝度分布がそのまま標本面SP上の投影されるため、照明の均一性は良好でない。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしていないため、視野の周辺部分には照明光は照射されず、視野の周辺部分が暗くなる。
【0077】
一方、図7(a)に例示されるように、第1のフライアイレンズ面LS1上に形成される光源像Saの大きさがレンズ要素のピッチPに比べて大きい場合、光源像Saから射出される照明光は複数のレンズ要素に入射する。このため、照明光はフライアイレンズ光学系FLにより分割されて、分割された照明光の各々が標本面SPに到達する。なお、照明光が分割されるとき、光源Sの輝度分布も分割され、分割された輝度分布が照明光の各々に引き継がれることになる。このため、図7(b)に例示されるように、標本面SP上の
照明範囲A1の輝度分布は、分割された輝度分布を重ねた輝度分布となり、従来のクリティカル照明に比べて照明の均一性が改善される。また、この場合、照明範囲A1は視野範囲A2を満たしているため、視野全体に照明光が照射されることになる。
【0078】
以上、第1のフライアイレンズ面LS1上に光源像Saが形成される第2の状態では、落射蛍光照明装置2は、光源像Saの大きさを第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPより大きくすることで、従来のクリティカル照明より均一性の高い照明を実現できる。
従って、落射蛍光照明装置2は、第2の状態において、以下の条件式を満たすことが望ましい。
1.5≦H/P≦5 ・・・(5)
0.5≦2×F2×NA0/P≦1 ・・・(6)
【0079】
ここで、Hは、第2の状態における第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成される光源像Saの大きさであり、Pは、第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチであり、NA0は、第1のフライアイレンズ面LS1に入射する照明光の開口数であり、F2は、第2のフライアイレンズの焦点距離をF2である。
【0080】
条件式(5)は、第1のフライアイレンズ面LS1(フライアイレンズ光学系FL)のレンズ要素のピッチPに対する第1のフライアイレンズ面LS1近傍に形成される光源像Saの大きさHの比を規定した式である。条件式(5)の上限値を上回ると、ピッチPが小さくなるため、フライアイレンズの境界での損失が大きくなる。その結果、明るさが低下する。一方、条件式(5)の下限値を下回ると、フライアイレンズ光学系FLでの照明光の分割数が小さいため、光源の輝度分布が十分に分割されず、照明の均一性が十分に改善されない。
【0081】
条件式(6)は、フライアイレンズ光学系FLのレンズ要素のピッチPに対する各レンズ要素から射出される照明光の光束径の比を規定した式である。なお、図8を参照して理解されるように、条件式(6)の上限値を上回ると、第1のフライアイレンズL3のレンズ要素から射出された照明光の一部が第2のフライアイレンズL4の対応するレンズ要素に入射できず、光量の損失が生じるため、照明強度が低下する。一方、図8を参照して理解されるように、条件式(6)の下限値を下回ると、第2のフライアイレンズL4の各レンズ要素から射出される照明光の光束径がピッチPに対して小さくなる。このため、レンズ要素内の領域を十分に利用できず、照明性能が低下する。
【0082】
条件式(5)及び条件式(6)を満たすことで、第2の状態において、第1の状態に比べた照明の均一性の低下を最小限に抑え、且つ、第1の状態に比べて明るい照明を実現することができる。
【0083】
以上、本実施例によれば、実施例1と同様に、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。また、本実施例では、コレクタレンズCLの移動により第1の状態と第2の状態を切り換えることで、必要とされる照明性能に応じて、照明の均一性と照明の明るさのバランスを調整することができる。
なお、本実施例においても、フライアイレンズのレンズ要素の形状は、特に限定されない。図6及び図7で例示される六角形形状の他に、例えば、矩形形状やその他の多角形形状で構成されてもよい。
【0084】
図9は、本実施例に係る落射蛍光照明装置の変形例の構成を例示する図である。図9に
例示される落射蛍光照明装置3は、光源Sが光軸方向に移動することにより、光源SとコレクタレンズCLとの距離が変化する点を除き、実施例2に係る落射蛍光照明装置2と同様である。
【0085】
落射蛍光照明装置3は、光源SとコレクタレンズCLとの距離を変化させる手段である光源Sが移動することで、第2のフライアイレンズ面LS2近傍に光源像S1が複数形成される第1の状態と、第1のフライアイレンズ面LS1近傍に光源像Saが形成される第2の状態とを、切替えることができる。
【0086】
以上、本変形例によっても、実施例2と同様の効果を得ることができる。つまり、対物レンズの瞳位置が変化しても高い照明の均一性を実現する、フライアイレンズ光学系を用いた落射蛍光照明装置、及び、それを備えた蛍光顕微鏡を提供することができる。また、光源Sの移動により第1の状態と第2の状態を切り換えることで、必要とされる照明性能に応じて、照明の均一性と照明の明るさのバランスを調整することができる。
【符号の説明】
【0087】
1、2、3・・・落射蛍光照明装置、100、200、300・・・蛍光顕微鏡、S、S1、S2、Sa、Sb・・・光源、L1、L2、L5、L6、L7、L8・・・レンズ、L3・・・第1のフライアイレンズ、L4・・・第2のフライアイレンズ、CL・・・コレクタレンズ、FL・・・フライアイレンズ光学系、RL・・・リレー光学系、OB、OB1、OB2・・・対物レンズ、TL・・・結像レンズ、AX・・・光軸、LS1・・・第1のフライアイレンズ面、LS2・・・第2のフライアイレンズ面、FS・・・視野絞り、EF・・・励起フィルタ、BF・・・バリアフィルタ、DM・・・ダイクロイックミラー、PP・・・瞳位置、CP・・・共役位置、SP・・・標本面、LB1、LB2・・・光線、LG1・・・第1レンズ群、LG2・・・第2レンズ群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する光源と、
前記光源からの前記照明光が入射するコレクタレンズと、
前記コレクタレンズからの前記照明光が入射するフライアイレンズ光学系と、
前記照明光を標本面に照射する対物レンズと、
前記フライアイレンズ光学系と前記対物レンズの間に配置されるリレー光学系と、を含み、
前記フライアイレンズ光学系は、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面及び第2のフライアイレンズ面を含み、
前記リレー光学系を介して前記第2のフライアイレンズ面と共役な位置と前記対物レンズの瞳位置との距離をD0とし、前記対物レンズの同焦点距離をLobとするとき、以下の条件式
0.3≦D0/Lob≦0.75
を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、
前記第1のフライレンズ面は、前記対物レンズの前側焦点位置と共役であり、
前記第2のフライレンズ面は、前記フライアイレンズ光学系の後側焦点位置にあることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の落射蛍光照明装置において、
前記コレクタレンズは、前記照明光を略平行光に変換し、
前記リレー光学系は、前記第2のフライアイレンズ面近傍に形成される前記光源の像を、前記第2のフライアイレンズ面と共役な位置近傍にリレーすることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、
視野絞りを含み、
前記リレー光学系は、前記光源側から順に、
少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する、第1レンズ群と、
負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有する第2レンズ群と、を含み、
前記視野絞りは、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間であって、前記標本面と共役な位置に配置され、
前記第1レンズ群は、最も前記視野絞り側に、負のパワーを有するレンズを含むことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項5】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、
前記対物レンズは、最大の瞳径を有する第1の対物レンズと、最小の瞳径を有する第2の対物レンズを含む、複数の対物レンズから選択され、
前記第1の対物レンズの瞳径をDLとし、前記第2の対物レンズの瞳径をDSとし、前記第2のフライアイレンズ面の前記レンズ要素のピッチをPとし、前記第2のフライアイレンズの有効径をEとするとき、以下の条件式
0.6<E×β/DL<1.2
1<DS/(β×P)<3
2≦DL/DS≦5
を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項6】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、
前記第2のフライアイレンズ面近傍に前記光源の像が複数形成される第1の状態と、前記第1のフライアイレンズ面近傍に前記光源の像が形成される第2の状態とを、切替えるための切替え手段を含むことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の落射蛍光照明装置において、
前記切替え手段は、前記光源と前記コレクタレンズとの距離を変化させることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項8】
請求項6に記載の落射蛍光照明装置において、
前記フライアイレンズ光学系は、前記光源側から順に、
前記第1のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第1のフライアイレンズと、
前記第2のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第2のフライアイレンズと、を含み、
前記第2の状態における前記第1のフライアイレンズ面近傍に形成される前記光源の像の大きさをHとし、前記第1のフライアイレンズ面の前記レンズ要素のピッチをPとし、前記第1のフライアイレンズ面に入射する前記照明光の開口数をNA0とし、前記第2のフライアイレンズの焦点距離をF2とするとき、以下の条件式
1.5≦H/P≦5
0.5≦2×F2×NA0/P≦1を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の落射蛍光照明装置を含むことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【請求項1】
照明光を射出する光源と、
前記光源からの前記照明光が入射するコレクタレンズと、
前記コレクタレンズからの前記照明光が入射するフライアイレンズ光学系と、
前記照明光を標本面に照射する対物レンズと、
前記フライアイレンズ光学系と前記対物レンズの間に配置されるリレー光学系と、を含み、
前記フライアイレンズ光学系は、各々複数のレンズ要素からなる第1のフライアイレンズ面及び第2のフライアイレンズ面を含み、
前記リレー光学系を介して前記第2のフライアイレンズ面と共役な位置と前記対物レンズの瞳位置との距離をD0とし、前記対物レンズの同焦点距離をLobとするとき、以下の条件式
0.3≦D0/Lob≦0.75
を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項2】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、
前記第1のフライレンズ面は、前記対物レンズの前側焦点位置と共役であり、
前記第2のフライレンズ面は、前記フライアイレンズ光学系の後側焦点位置にあることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項3】
請求項2に記載の落射蛍光照明装置において、
前記コレクタレンズは、前記照明光を略平行光に変換し、
前記リレー光学系は、前記第2のフライアイレンズ面近傍に形成される前記光源の像を、前記第2のフライアイレンズ面と共役な位置近傍にリレーすることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項4】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、
視野絞りを含み、
前記リレー光学系は、前記光源側から順に、
少なくとも1つのメニスカスレンズを含み、全体として正のパワーを有する、第1レンズ群と、
負のパワーを有するレンズを含み、全体として正のパワーを有する第2レンズ群と、を含み、
前記視野絞りは、前記第1レンズ群と前記第2レンズ群の間であって、前記標本面と共役な位置に配置され、
前記第1レンズ群は、最も前記視野絞り側に、負のパワーを有するレンズを含むことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項5】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、
前記対物レンズは、最大の瞳径を有する第1の対物レンズと、最小の瞳径を有する第2の対物レンズを含む、複数の対物レンズから選択され、
前記第1の対物レンズの瞳径をDLとし、前記第2の対物レンズの瞳径をDSとし、前記第2のフライアイレンズ面の前記レンズ要素のピッチをPとし、前記第2のフライアイレンズの有効径をEとするとき、以下の条件式
0.6<E×β/DL<1.2
1<DS/(β×P)<3
2≦DL/DS≦5
を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項6】
請求項1に記載の落射蛍光照明装置において、さらに、
前記第2のフライアイレンズ面近傍に前記光源の像が複数形成される第1の状態と、前記第1のフライアイレンズ面近傍に前記光源の像が形成される第2の状態とを、切替えるための切替え手段を含むことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項7】
請求項6に記載の落射蛍光照明装置において、
前記切替え手段は、前記光源と前記コレクタレンズとの距離を変化させることを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項8】
請求項6に記載の落射蛍光照明装置において、
前記フライアイレンズ光学系は、前記光源側から順に、
前記第1のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第1のフライアイレンズと、
前記第2のフライアイレンズ面を含み、正のパワーを有する第2のフライアイレンズと、を含み、
前記第2の状態における前記第1のフライアイレンズ面近傍に形成される前記光源の像の大きさをHとし、前記第1のフライアイレンズ面の前記レンズ要素のピッチをPとし、前記第1のフライアイレンズ面に入射する前記照明光の開口数をNA0とし、前記第2のフライアイレンズの焦点距離をF2とするとき、以下の条件式
1.5≦H/P≦5
0.5≦2×F2×NA0/P≦1を満たすことを特徴とする落射蛍光照明装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の落射蛍光照明装置を含むことを特徴とする蛍光顕微鏡。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図6】
【図7】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−209428(P2011−209428A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75603(P2010−75603)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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