説明

落石分散システム

【課題】 いつ生じるかわからない落石を常時監視することなく、落石の落下による事故を防止する落石分散システムを提供する。
【解決手段】 落石分散システムにおいて、崩れる危険性の高い岩石3に、カプセル4で覆われた通常の状態では作用しない発破装置5を取付け、前記岩石3の落下に基づいて前記発破装置5を起動させることにより、前記岩石3を粉砕し分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石を分散させて落石による被害を防ぐための落石分散システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、落石防護工として、落石をネットやコンクリート構造物などで捕捉し、被害を防ぐ対策が取られている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−203681号公報
【特許文献2】特開2009−144472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、落石はその安定度の定量的な評価ができないことから、いつ落下するかわからず、落下した場合には大きな被害が生じる恐れがある。そのために、大がかりな待ちうけ式の防護工や24時間体制の計測など非常に大がかりな対策が必要となっている。
本発明は、上記状況に鑑みて、いつ生じるかわからない落石を常時監視することなく、岩石の落下による事故を防止することができる落石分散システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕落石分散システムにおいて、崩れる危険性の高い岩石に、カプセルで覆われた通常の状態では作用しない発破装置を取付け、前記岩石の落下に基づいて前記発破装置を起動させることにより、前記岩石を粉砕し分散させることを特徴とする。
〔2〕上記〔1〕記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下の衝撃によって起動する反応式の火薬であることを特徴とする。
【0006】
〔3〕上記〔1〕記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下の衝撃によって起動する反応式の化学薬品であることを特徴とする。
〔4〕上記〔1〕記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下過程で充電され、電磁誘導によって起爆される電気式の発破装置であることを特徴とする。
【0007】
〔5〕上記〔4〕記載の落石分散システムにおいて、前記岩石の落下過程に設定した一定周波数の電磁波発生領域を通ることにより、前記岩石に設置した受信器に内蔵された発火用のコンデンサーが充電され、遠隔制御発破装置によって起爆されて、前記岩石を発破するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、いつ生じるかわからない落石を常時監視することなく、落石の落下による事故を防止することが可能となり、監視にかかるコストの軽減および落石の落下防止による列車などの安全運行に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す落石分散システムの模式図である。
【図2】本発明の第1実施例を示す発破装置の説明図である。
【図3】本発明の第2実施例を示す発破装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の落石分散システムは、崩れる危険性の高い岩石にカプセルで覆われた通常の状態では作用しない発破装置を取付け、前記岩石の落下に基づいて前記発破装置を起動させることにより前記岩石を粉砕し分散させる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す落石分散システムの模式図である。
この図において、崖1の下方には盛土2が構築されている。その崖1の上方には崩れる危険性の高い岩石3がある。この岩石3には、あらかじめカプセル4中に発破装置(例えば、火薬や化学薬品等の爆薬や電磁波の受電によって発破する装置)5をセットしておく。そこで、岩石3の落下が発生すると、その衝撃又は電磁波の受電によって岩石3に設置した発破装置5が起動し、岩石3を粉砕し分散させる。したがって、発破の衝撃で岩石3は粉々の石6に分散されるので、落下エネルギーが減少し、岩石3の直撃による落下先での事故を防ぐことができる。よって、崖1の下方に列車の線路があるような場合には、列車の安全運行に資することができる。
【0012】
以下、爆薬の起爆システムについて詳細に説明する。
爆薬を起爆するシステムには、大別して電気式と非電気式とがある。電気式の起爆システムに使用する雷管には、電気雷管、電磁誘導を利用したもの、ICタイマーを内蔵した電子雷管等がある。
電気式には、電磁誘導発破システム(M.B.S)、遠隔制御発破装置などがあり、非電気式には、導火管付き雷管(ノネル、エクセル等)がある。
【0013】
電気式には、電磁誘導発破システム(M.B.S)、遠隔制御発破装置などがある。
本発明では、崩れる危険性の高い岩石に、あらかじめ頑丈なカプセルで覆い、通常の状態では作用しない構造とした起爆システムをセットする。
図2は本発明の第1実施例を示す発破装置の説明図である。
この図において、崖11の下方には盛土12が構築されている。その崖11の上方には崩れる危険性の高い岩石13がある。この岩石13には、あらかじめカプセル14中に非電気式の発破装置(例えば、火薬や化学薬品の爆薬)15をセットしておく。そこで、岩石13の落下が発生すると、その衝撃によって岩石13に設置した発破装置15が起動し、岩石13を粉砕し分散させる。したがって、発破の衝撃で岩石13は粉々の石16に分散されるので、落下エネルギーが減少し、岩石13の直撃による落下先での事故を防ぐことができる。
【0014】
図3は本発明の第2実施例を示す発破装置の説明図である。
この図において、崖21の下方には盛土22が構築され、その上には例えば線路23が敷設され、列車24が走行できるようになっている。その崖21の上方には、崩れる危険性の高い岩石25がある。この岩石25にはあらかじめカプセル26中に電気式の発破装置(受信器とその内部の発火用のコンデンサーを内蔵)27をセットしておく。そこで、岩石25の落下が発生すると、その落下の過程に設定した一定周波数の電磁波発生領域28を通ることにより、岩石25に設置した電気式の発破装置27としての受信器がその一定周波数の電磁波を受信して、受信器内部の発火用のコンデンサーが充電され、電磁誘導によって遠隔制御発破装置により起爆される。したがって、発破の衝撃で岩石25は粉々の石29に分散されるので、落下エネルギーが減少し、岩石25の直撃による落下先での列車24の事故を防ぐことができる。
【0015】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の落石分散システムは、いつ生じるかわからない落石を常時監視することなく、岩石の落下による事故を防止する落石分散システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0017】
1,11,21 崖
2,12,22 盛土
3,13,25 崩れる危険性の高い岩石
4,14,26 カプセル
5 発破装置
6,16,29 粉々の石
15 非電気式の発破装置
23 線路
24 列車
27 電気式の発破装置
28 一定周波数の電磁波発生領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
崩れる危険性の高い岩石に、カプセルで覆われた通常の状態では作用しない発破装置を取付け、前記岩石の落下に基づいて前記発破装置を起動させることにより、前記岩石を粉砕し分散させることを特徴とする落石分散システム。
【請求項2】
請求項1記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下の衝撃によって起動する反応式の火薬であることを特徴とする落石分散システム。
【請求項3】
請求項1記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下の衝撃によって起動する反応式の化学薬品であることを特徴とする落石分散システム。
【請求項4】
請求項1記載の落石分散システムにおいて、前記発破装置は、前記岩石の落下過程で充電され、電磁誘導によって起爆される電気式の発破装置であることを特徴とする落石分散システム。
【請求項5】
請求項4記載の落石分散システムにおいて、前記岩石の落下過程に設定した一定周波数の電磁波発生領域を通ることにより、前記岩石に設置した受信器に内蔵された発火用のコンデンサーが充電され、遠隔制御発破装置によって起爆されて、前記岩石を発破するようにしたことを特徴とする落石分散システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−144515(P2011−144515A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4102(P2010−4102)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【Fターム(参考)】