説明

落石検知柵

【課題】簡単な構造で検知感度の高い落石検知柵を提供すること。
【解決手段】間隔をおいて立設された複数の支柱とこれらの支柱に亘って配置された網体12とを備え、変位検知器に接続された検知索を複数の支柱に亘って設けた落石検知柵において、曲げ剛性の高い支柱間に、その曲げ剛性の高い支柱よりも曲げ剛性の低い支柱が配置され、前記各支柱に亘って配置された前記網体支承用撚り線は、前記曲げ剛性の低い支柱に固定され、かつ前記網体支承用撚り線は曲げ剛性の高い支柱に対して網体支承用撚り線の長手方向にスライド移動可能に係合されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山間部等の線路または道路等に沿って設置される落石検知柵に関する。
【背景技術】
【0002】
山間部に設置される線路または道路等の側部に、落石防護柵に落石検知機能を付与した落石検知柵を設置することが知られている。
前記の落石検知柵により、落石を検知すると、例えば、その区間における列車等の運行を一次延期したり、あるいは一次、列車等の走行を停止させて、落石の撤去等を行うことになる。
【0003】
前記の落石検知柵としては、例えば、網体を省略した図17および図15(a)に示すように、各支柱45に亘ってワイヤーあるいはケーブル等の検知索46を配置すると共に各支柱45に固定し、落石があった場合に、図15(a)に検知柵47(およびこれを支持する基礎)が変形した場合の平面図を示すように、間隔をおいた多数の支柱45の上部に亘って設置された検知ワイヤーあるいはケーブル等の検知索46が、大きく撓むことにより、柵長手方向の索の長さ変化を生じさせて、端部支柱に設置された変位検知器内に延長された前記検知索46が、所定の余長代以上の長さ変化が生じた場合に、検知器により検知するようにしている。
【0004】
しかし、前記のような検知索46の設置の仕方では、間隔をおいた多数の曲げ剛性の同じ支柱45の上部に亘って検知索46が固定されている構造であるため、落石により柵が大きく撓んでも、検知索46の長さ変化が小さいために、前記の余長代で吸収されてしまい、検知感度(検知精度)が低いという問題がある。
【0005】
前記の検知感度を改善する検知柵として、図15(b)および図16に示すように、隣り合う一方の支柱45の基礎48の下流側に、受圧板49を地盤2に埋め込み固定して、受圧板付き基礎48と受圧板を備えていない基礎50とを交互に形成し、隣り合う支柱の基礎の水平耐力が交互に大小となるようにして、検知柵51が落石を受けた場合に、水平耐力の小さい基礎50部分の支柱45の変位を、水平耐力の大きい基礎部分の支柱45の変位より大きくすることで、検知索46の長さ変化を大きくして、検知感度を前記の場合よりも高めるようにした形態の検知柵51が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−13656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図15(b)の従来の場合は、隣り合う一方の支柱45の基礎48の下流側に、受圧板49を地盤に埋め込み固定する形態の検知柵では、受圧板49を設置した基礎48の水平耐力と、受圧板49を設置しない基礎50の水平耐力とを、正確に制御して施工することが困難であり、施工が容易でなく、受圧板49周りの地盤に影響されるため、検知感度も正確に高めることができないという問題がある。
本発明は、前記の問題を有利に解消した簡単な構造で検知感度の高い落石検知柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の落石検知柵においては、間隔をおいて立設された複数の支柱とこれらの支柱に亘って配置された金網とを備え、変位検知器に接続された検知索を複数の支柱に亘って設けた落石検知柵において、曲げ剛性の高い支柱間に、その曲げ剛性の高い支柱よりも曲げ剛性の低い支柱が配置され、前記各支柱に亘って配置された網体支承用撚り線は、前記曲げ剛性の低い支柱に固定され、かつ前記網体支承用撚り線は曲げ剛性の高い支柱に対して網体支承用撚り線の長手方向にスライド移動可能に係合されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の落石検知柵において、曲げ剛性の低い支柱の基礎は、曲げ剛性の高い支柱の基礎に比べて、支持力が等しいか、または支持力の小さな基礎とされていることを特徴とする。
第3発明では、第1発明または第2発明の落石検知柵において、網体が、クリンプ線材が網組みされた金網からなる網体または螺旋線材が網組みされた金網からなる網体のいずれかであることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明のいずれかの落石検知柵において、網体は、3本以上の支柱に固定され、かつ、曲げ剛性の低い支柱に強固に固定され、曲げ剛性の高い支柱には、緩く取り付けられていることを特徴とする。
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの落石検知柵において、検知索の端部が接続される変位検知器を備えていることを特徴とする。

【発明の効果】
【0009】
本発明によると、次のような効果が得られる。
第1発明によると、間隔をおいて立設された複数の支柱とこれらの支柱に亘って配置された金網とを備え、変位検知器に接続された検知索を複数の支柱に亘って設けた落石検知柵において、曲げ剛性の高い支柱間に、その曲げ剛性の高い支柱よりも曲げ剛性の低い支柱が配置され、前記各支柱に亘って配置された網体支承用撚り線は、前記曲げ剛性の低い支柱に固定され、かつ前記網体支承用撚り線は曲げ剛性の高い支柱に対して網体支承用撚り線の長手方向にスライド移動可能に係合されているので、曲げ剛性の小さい支柱および網体の領域に落石を受けた場合に、網体支承用撚り線を曲げ剛性の大きい支柱に対してスライド移動させて、網体支承用撚り線が網体および曲げ剛性の小さい支柱の変形を大きく拘束することなく許容することができ、曲げ剛性の大きい支柱に比べて、曲げ剛性の小さい支柱が落石下流側に大きく変形することで、その曲げ剛性の小さい支柱に固定されている検知索も大きく変形することで、落石を受けた領域の下流側への変形量を大きくすることができ、そのため、落石の検知感度を高めることができる等の効果が得られる。
また、本発明の場合は、曲げ剛性の大きい支柱とそれよりも格段に曲げ剛性の小さい支柱とを組み合わせ、これらに網体および網体支承用撚り線を設ける形態であるため、構造が簡単であり、機械的な設計を行うことができるため、期待する落石検知感度に制御された落石検知柵の設計が容易になる等の効果が得られる。
第2発明によると、曲げ剛性の低い支柱の基礎は、曲げ剛性の高い支柱の基礎に比べて、支持力が等しいか、または支持力の小さな基礎とされているので、曲げ剛性の低い支柱の基礎は、少なくとも曲げ剛性の大きい支柱の基礎と同等以下とすることができるため、基礎の施工が簡単で容易にすることができ、安価な基礎構造の落石検知柵とすることができる等の効果が得られる。
また、曲げ剛性の低い支柱の基礎を、曲げ剛性の大きい支柱の基礎より支持力を小さくすることにより、基礎の水平耐力に大小をつけ、落石を受けた場合に、曲げ剛性の低い支柱の落石下流側への変形をより大きくすることができる。
第3発明によると、網体が、クリンプ線材が網組みされた金網からなる網体または螺旋線材が網組みされた金網からなる網体のいずれかであるので、網体を平行四辺形に変形させて傾斜地の縦断勾配に容易に対応することができる落石検知柵とすることができる等の効果が得られる。また、網体に積雪が生じて積雪による沈降力が作用しても、網体自体で保持することもできる等の効果が得られる。
第4発明によると、網体は、3本以上の支柱に固定され、かつ、曲げ剛性の低い支柱に強固に固定され、曲げ剛性の高い支柱には、緩く取り付けられているので、曲げ剛性の小さい支柱付近の領域に落石を受けた場合に、曲げ剛性の大きい支柱部分の網体を、曲げ剛性の小さい支柱側に横移動させて、落石を受けた部分の網体の下流側への変形を容易にすることができる等の効果が得られる。
第5発明によると、検知索の端部が接続される変位検知器を備えているので、落石検知索により変位検知器を作動させて、落石を容易に検知することができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の落石検知柵の中間部を示す一部縦断正面図である。
【図2】図1における曲げ剛性の低い支柱の上部付近を拡大して示す正面図である。
【図3】(a)は図2における曲げ剛性の低い支柱付近を拡大して示す平面図、(b)は(a)の縦断側面図である。
【図4】(a)は曲げ剛性の低い支柱に対して金網からなる網体を固定している部分を示す平面図、(b)はその正面図である。
【図5】図1における曲げ剛性の高い支柱の上部付近を拡大して示す正面図である。
【図6】(a)は図5における曲げ剛性の高い支柱付近を拡大して示す平面図、(b)は(a)の縦断側面図である。
【図7】上部の網体支承用撚り線と金網と金具との関係を示すものであって、(a)は正面図、(b)(c)は断面図である。
【図8】(a)は図1に示す落石検知柵下部の結合コイル付近を拡大して示す正面図、(b)は結合コイルの正面図、(c)は結合コイルの側面図である。
【図9】曲げ剛性の高い支柱と、それよりも曲げ剛性の低い支柱との平面形態およびそれらの基礎の平面形態を示す概略平面図である。
【図10】(a)および(b)は、金網からなる網体および網体支承用撚り線と端部支柱との関係を示す平面図である。
【図11】本発明の落石検知柵の概略正面図である。
【図12】検知索の配置状態を示す概略平面図である。
【図13】本発明において用いる金網からなる網体の一形態を示す正面図である。
【図14】図13に示す網体を示す一部切り欠き側面図である。
【図15】(a)は従来の落石検知柵に落石が作用した場合の変形形態を示す概略平面図、(b)は基礎に受圧板を設けた従来の落石検知柵に落石が作用した場合の変形形態を示す概略平面図である。
【図16】図15(b)における基礎と受圧板との関係を拡大して示す平面図である。
【図17】(a)および(b)は従来の落石検知柵の縦断側面図で、(a)は受圧板を設けない基礎に支柱を設置した図、(b)は落石により基礎が塑性変形した形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1〜図12には、本発明の一実施形態の落石検知柵1が示されている。本発明の落石検知柵1では、柵長手方向の両端部の支柱を除いて、支持力の大きい独立基礎5に設置された曲げ剛性の大きい支柱3と、前記支持力の大きい独立基礎5よりも支持力が格段に小さい独立基礎7に埋め込み固定され、かつ前記曲げ剛性の大きい支柱3よりも格段に曲げ剛性の小さい支柱6とを、間隔をおいて配置している。
また、曲げ剛性の小さい支柱6に、網体12およびその網体12を支承する網体支承用撚り線18を固定していると共に、網体12の上部に沿って配置された落石検知索13も前記曲げ剛性の小さい支柱6に固定している。
さらに、曲げ剛性の大きい支柱3に対しては、前記の網体12における横線材19と、網体支承用撚り線18と、落石検知索13を、それらの長手方向に相対的にスライド移動可能(横方向に移動可能)に設けられている(図6参照)。以下、本発明の落石検知柵1の各部の構造について説明する。
【0013】
図1,図9,図11に示すように、本発明の落石検知柵1の長手方向の中間部では、落石検知柵1の長手方向に間隔をおいて直列に地盤2に、曲げ剛性の大きい支柱3の下部をコンクリート4等で埋め込み固定した平面外径の大きい独立基礎5と、前記曲げ剛性の大きい支柱3よりも曲げ剛性の小さい支柱6の下部をコンクリート4で埋め込み固定した平面外径の小さい独立基礎7とが、設けられている。なお、落石検知柵1の長手方向両端部では、曲げ剛性の大きい端部の支柱3が配置され、その端部の支柱3の外側に、変位検知器10を設置するための支柱11が設けられている(図11参照)。
【0014】
平面外径が大きく支持力の大きい独立基礎5と、それよりも平面外径が小さく支持力の小さい独立基礎7とが、落石検知柵1の長手方向に間隔をおいて構築されている。
【0015】
平面外径の大きく支持力の大きい独立基礎5には、地盤2に埋め込み固定された鋼製等のコルゲートパイプ8内に、鋼製角パイプからなる曲げ剛性の大きい支柱3の下部が配置されてコンクリート4により埋め込み固定されている。
また、平面外径の小さく支持力の小さい独立基礎7には、地盤2に埋め込み固定された鋼製等の小径パイプ9内に、断面ハット形の鋼製部材からなる曲げ剛性の小さい支柱6の下部が配置されてコンクリート4により埋め込み固定されている。
【0016】
前記の曲げ剛性の高い支柱3として、矩形断面以外にも、H形断面、I形断面、円形あるいは溝形断面、ハット形断面等の支柱を用いるようにしてもよい。また、前記曲げ剛性の高い支柱3に比べて、曲げ剛性の小さい支柱6の断面形態としては、H形断面、I形断面、矩形断面、円形断面、溝形断面等の支柱を使用するようにしてもよい。例えば、角鋼管、丸鋼管、溝形鋼、ハット形鋼、H形鋼等の鋼材を用いてもよい。
【0017】
前記の各支柱3,6は、衝撃を吸収でき、破断しない形態の支柱であればよい。例えば、塑性変形可能な、鋼製あるいはアルミ合金製等の金属製支柱で、コンクリート製等の衝撃を吸収できないで脆性破壊する形態の支柱は望ましくない。
曲げ剛性の大きい支柱3と、曲げ剛性の小さい支柱6との剛性比は、設計により設定される。本発明では、落石検知柵1であることから、網体12等が落石を受けた時に、曲げ剛性の小さい支柱6が確実に下流側に曲げ変形して、下流側に曲げ変形された曲げ剛性の小さい支柱6に亘って配置されて固定されている検知索13を駆動して、変位検知器10を確実に作動するように設定される。
【0018】
前記の曲げ剛性の大きい支柱3(Aとする)と、それよりも曲げ剛性の小さい支柱6(Bとする)とは、ABABと交互に間隔をおいて構築されてもよく、AABAABAAの配列を構成するように構築されていてもよく、あるいは、BBABBABBAの配列、AABBAABB等の配列を構築するように形成されていてもよい。
前記の構築された支持力の大きい独立基礎5に応じて、曲げ剛性の大きい支柱3が設けられ、また、前記独立基礎5の支持力と同等か、それよりも支持力の小さい独立基礎7には、曲げ剛性の小さい支柱6が設けられている。
前記の曲げ剛性の小さい支柱6の基礎の支持力は、曲げ剛性の大きい支柱3の基礎の支持力と同等か、それよりも小さい支持力であればよい。
なお、曲げ剛性の大きい支柱3の基礎と、それよりも曲げ剛性の小さい支柱の基礎とは、連続基礎とするよりは、図示のように、曲げ剛性の小さい支柱が変形しやすいように独立基礎がよい。
【0019】
次に、本発明においては、曲げ剛性の大きい支柱3に比べて曲げ剛性の小さい支柱6に固定される網体12の配置形態の一例について、図13を参照して説明する。なお、曲げ剛性の小さい支柱6は、鋼製で、中央部の接続フランジの両側部に拡開するように傾斜したウェブを備えていると共に、そのウェブに接続する端部フランジを前記接続フランジに平行に備えている断面ハット形の支柱6である。
図13に示すように、金網(フェンス本体)からなる網体12は、曲げ剛性の大きい支柱3と、曲げ剛性の小さい支柱6とに亘って配置されている共に、少なくとも3本以上の支柱に亘って配置される。曲げ剛性の小さい支柱6部分において、左右方向に隣り合う網体12の端部は、曲げ剛性の小さい支柱6の部分で重ね合されて、上下方向に間隔をおいた複数の取り付け金具14により、曲げ剛性の小さい支柱6に固定されている(図4参照)。
前記の網体12としては、クリンプ線材により網組みされたクリンプ金網あるいは螺旋線材により網組みされた金網、ワイヤーロープを網組みしたワイヤーロープ製網体、ワイヤーまたは合成樹脂製帯材あるいは芯材入り合成樹脂製帯材を網組みした網体、紐等を網組みした網体等を用いることもできる。網体12の一例の詳細については、後記する。
【0020】
次に、図2および図4を参照して、クリンプ金網からなる網体12の左右方向の端部を曲げ剛性の小さい支柱6に取り付けるための前記取り付け金具14Aについて説明すると、曲げ剛性の小さい支柱6の上流側(落石側)に、鋼製で、中央部の接続フランジの両側部に拡開するように傾斜したウェブを備えていると共に、そのウェブに接続する端部フランジを前記接続フランジに平行に備えている断面ハット形の支承金具14が曲げ剛性の小さい支柱6の上下方向に間隔をおいて、支柱6に重合するように嵌合配置され、その支承金具14に、左右のクリンプ金網からなる網体12の端部の複数の縦線材15が重ね合わされ、また押さえ金具16が配置されて、前記支承金具14と押さえ金具16とが接近するようにボルト・ナット17により締め込まれて、各網体12は、曲げ剛性の小さい支柱6に固定されている。なお、前記の押さえ金具16には、縦線材15に係合する突起21が設けられている。このように突起21を設けることで、落石エネルギーを受けた際に、網体12が支柱から外れることを防止していると共に、縦線材15が横線材19から抜け出ることを防止している。
【0021】
次に、図11を参照して、前記の左右方向の各網体12を支承する網体支承用撚り線18の配置形態について説明すると、図示の形態では、鋼製等の網体支承用撚り線18は、落石検知柵1における上部の一組の横線材19に沿って、左右方向に延長するように上部の網体支承用撚り線18が配設され、また、下部の一組の横線材19に沿って左右方向に延長するように、下部の網体支承用撚り線18が設置され、網体支承用撚り線18は、網体12の上下に1本づつ、計2本設置されている。
前記各網体支承用撚り線18の両端部は、それぞれ、図10に示すように、落石検知柵1における左右方向の両端部に位置する曲げ剛性の大きい支柱3にねじ込み固定されているアイボルト20に連結固定されている。各網体支承用撚り線18の中間部は、曲げ剛性の大きい支柱3に対して、網体支承用撚り線18の長手方向にスライド可能に緩く係合している。なお、端部の曲げ剛性の大きい支柱3に対して、網体12の端部は折り曲げられて、端部押さえ金具42と、曲げ剛性の大きい支柱3とで、網体12の端部を挟むと共に、ボルト43およびナットにより締め込まれて圧着固定されている。また、前記ボルト43は、縦線材15間に配置されている。
【0022】
上部(または下部)の網体支承用撚り線18の中間部の状態について、さらに説明すると、図1およびその一部を拡大している図2、図5あるいは図7に示すように、網体12における縦線材15の上端部が曲げ加工されて上端部に上部環状部20が設けられ、網体12の各上部環状部20内に亘って、上部の網体支承用撚り線18が挿通配置されて、落石による落石荷重を網体12が受けて変形した時に、網体12の縦線材15の上端部から上部の網体支承用撚り線18に引っ張り応力が伝達可能にされ、網体支承用撚り線18に張力が作用するようにしている。前記の上部環状部20は、網体支承用撚り線18を配置しながら、曲げ加工により形成するようにしてもよい。
また、網体12における横線材19から前記の縦線材15を介して、上部の網体支承用撚り線18に張力が作用するようにしている。
【0023】
次に、図6を参照して、上部(または下部)の網体支承用撚り線18と曲げ剛性の大きい支柱3との関係について説明すると、網体支承用撚り線18と、網体12における一対の横線材19は、フックボルト22のフック部23の溝24に遊嵌状態で嵌合されていると共に、前記フックボルト22の基端部は、曲げ剛性の大きい支柱3の前面板の貫通孔から背面板の貫通孔に亘って貫通配置されて、背面板の外側に配置のナット25により固定されている。
前記フックボルト22の先端部は、前記曲げ剛性の大きい支柱3における前面板の貫通孔26に貫入されて支柱内側に位置し、網体支承用撚り線18及び横線材19の外れ止め機能をしている。前記のように網体支承用撚り線18および網体12における横線材19が、フック部23の溝24に遊嵌状態で嵌合または緩く係合されていることから、網体支承用撚り線18および網体12の横線材19は、網体支承用撚り線18の長手方向に、スライド移動可能にされている。
また、図示の形態では、フック部23の溝24の落石下流側に、隙間27を設けていることから、網体支承用撚り線18および一対の横線材19が、落石下流側に移動してフック溝底部に係合した後、フックボルト22を介して、曲げ剛性の大きい支柱3に曲げ力が作用するようにされている。
【0024】
また、前記上部の網体支承用撚り線18は、図3に示すように、曲げ剛性の小さい支柱6における端部フランジに亘って、網体12よりも落石下流側に配置された鋼製の支承板28に当接するように、網体12における2本1組の横線材19と共に配置されると共にUボルト29の溝内に配置されて、前記Uボルト29の両脚部30が支承板28および断面ハット形の曲げ剛性の小さい支柱6におけるウェブの挿通孔に挿通されて、ナット31により締め込まれることで、前記網体支承用撚り線18は、網体12における2本1組の横線材19と共に、曲げ剛性の小さい支柱6に固定されている。
また、網体12の上下方向の中間部と曲げ剛性の小さい支柱6との取り付け関係について、図3を利用して説明すると、網体支承用撚り線18がなくなり、ナット31によりさらに締め込まれて、網体12における横線材19が、Uボルト31とにより支承板28に圧着されて、曲げ剛性の小さい支柱6に固定される。
【0025】
したがって、網体12等が落石を受けたときに、網体12または網体支承用撚り線18を介して、曲げ剛性の小さい支柱6に応力等が伝達可能にされている。また、曲げ剛性の大きい支柱3に、網体12における横線材および網体支承用撚り線18が固定されずに、スライド移動可能であることから、1箇所の落石に対して、網体12と網体支承用撚り線18とで、複数の曲げ剛性の小さい支柱6に伝達することができる。また、網体支承用撚り線18に作用する張力を最初に曲げ剛性の小さい支柱6により受ける構造とされている。
【0026】
次に、図6,図11および特に図12を参照して、落石検知索13の配置状態について説明すると、曲げ剛性の大きい各支柱3の各側面板上部に貫通するように設けられた横孔32に、落石検知索13は挿通配置されていると共に、曲げ剛性の小さい各支柱6の背面側に亘って配置され、前記各曲げ剛性の小さい支柱6に固定金具33により固定されている。
前記の固定金具33としては、Uボルト等を利用することもでき、落石検知索13をUボルトにおける溝内に配置した状態で、Uボルト先端部を曲げ剛性の小さい支柱6に挿通して、曲げ剛性の小さい支柱6の前面側からボルト・ナットにより、検知索13を曲げ剛性の小さい支柱6に固定するようにすればよい。
【0027】
また、前記の上部の網体支承用撚り線18の中間部は、図7(a)(b)に示すように、縦線材15間において、網体支承用撚り線18と複数の横線材19とを抱き込むように鋼板製のU形金具34の溝内に配置され、前記U形金具34の各側板先端側のボルト孔に亘って挿通配置されたボルト・ナット35が装着されて、U形金具34が網体12あるいは網体支承用撚り線18から脱落するのを防止し、U形金具34と網体12側の連結を確実にしている。
【0028】
網体12あるいは曲げ剛性の小さい支柱6が落石を受けた場合、前記の網体支承用撚り線18が、曲げ剛性の小さい支柱6に固定されていることから、曲げ剛性の小さい支柱6が、曲げ剛性の大きい支柱3に比べて、大きく変形するようになる。このとき、上部の網体支承用撚り線18は、曲げ剛性の大きい支柱3に強固に固定されていないため、落石を受けた網体12側部分に、網体支承用撚り線18は、引き寄せられ、曲げ剛性の小さい支柱6の変形を拘束することなく、曲げ剛性の小さい支柱6の変形が、大きくなる。これに伴い、網体支承用撚り線18と同様に、曲げ剛性の小さい支柱6に固定された検知索13は、落石を受けた部分の網体12側に引き寄せられる共に下流側に突出するように変形し、落石検知索13の両端側が引き寄せされ、これに連結された変位検知器10内では、予め設定された余長以上に引き寄せられた場合に、落石検知索13により、またはこれを介した作動部材によりリミットスイッチが作動されて、変位検知器10がON状態にされる。
【0029】
また、前記のように、上部の網体支承用撚り線18の中間部は、前記U形金具34の先端部に亘って挿通配置されたボルト・ナット35が装着されていることで、落石が網体12に作用した時に、横線材19からU形金具34を介して網体支承用撚り線18に張力が伝達可能にされていると共にその網体支承用撚り線18から、曲げ剛性の小さい支柱6に曲げ力が作用するようにされている。また、同様に、縦線材15から網体支承用撚り線18を介して曲げ剛性の小さい支柱6に曲げ力が作用するようにされている。
【0030】
また、網体12の下部には、下部の一対の横線材19に亘って、下部の網体支承用撚り線18が配置され、また、前記下部の網体支承用撚り線18と一対の横線材19とは、図8に示すように、後付けの鋼製等の短尺の螺旋状の結合コイル36が縦線材15を抱き込むように間隔をおいて複数装着されることで結束されて、横線材19または縦線材15から結合コイル36を介して、下部の網体支承用撚り線18に張力等を伝達すると共に下部の網体支承用の撚り線18から曲げ剛性の小さい支柱6に応力が伝達されるようにされている。
【0031】
前記の螺旋状の結合コイル36は、下部の網体支承用撚り線18を配置後、一端側が開放された螺旋状コイル36の開放端側のピッチ間の間隙に、横線材19および網体支承用撚り線18を配置するように結合コイル36を送り込むことで、また、縦線材15がある場合には、その縦線材15をも抱き込むように、螺旋状の結合コイル36を送りこむことで、装着できる。
【0032】
このように、結合コイル36を網体支承用撚り線18にセットすることで、結合コイル36の内径内に配置して、結合コイル36を介して網体12の横線材19と網体支承用撚り線18との一体化、あるいは縦線材15を含めた結合一体化を図ることができる。
結合コイル36の配置間隔は、上部の網体支承用撚り線18側との結合強度を勘案して設計により適宜設定される。前記の結合コイル36は、支柱間では連続した1本ものを使用してもよいが、図示のように、支柱間に間隔をおいて複数本設けるようにしてもよい。
【0033】
網体12における縦線材15の下端部には、係止溝37を備えた係止用フック部38が形成され、網体12が落石を受けて下部が上方に引き上がるように引っ張り力を受けたときに、下部の網体支承用撚り線18に前記係止用フック部38が引っ掛かって、係止されることでも、縦線材15を介して網体支承用撚り線18に応力が伝達されるように構成されている。前記の係止用フック部38の形態としては、U字型またはJ字型の形態でもよい。
図示の形態では、係止溝37を備えた係止用フック部38が地盤2に埋め込み固定された形態の金網からなる網体12であることから、網体12に付着し固化した積雪等の鉛直荷重は金網から地面に伝えることができる。
【0034】
前記のように構成することで、本発明の落石検知柵1では、特に、曲げ剛性の小さい支柱6の領域部分で落石によるエネルギーを受けるようにし、曲げ剛性の小さい支柱6部分を確実に大きく変形させて変位を大きくすると共に、その曲げ剛性の小さい支柱6の変形後に、曲げ剛性の大きい支柱3により支承させることで、落石により検知感度を高め、また、部材の剛性の大小を設定することにより、設計が容易で構造が簡単でしかも施工が容易な落石検知柵としている。なお、大きな落石を受けた場合には、曲げ剛性の小さい支柱6が傾斜変形することで、隙間27側に網体支承用撚り線18が移動し、Uボルト29を介して、曲げ剛性の大きい支柱3も支承機能を発揮して、落石荷重が大きい場合には、落石下流側に変位するようになる。
【0035】
次に、図13および図14を参照して、本発明の落石検知柵において使用する網体12の一形態について説明する。本発明の落石検知柵では、道路縦断勾配等の傾斜地に対応可能であることが望ましいので、クリンプ線材を使用したクリンプ金網あるいは螺旋線材を使用した金網からなる網体12が望ましい。図示の形態では、フェンス本体1としては、クリンプ線材を縦線材(縦線)19および横線材(横線)15として用い、平行四辺形に変形可能なクリンプ金網からなる網体12が用いられ、縦断勾配に対応可能な網体とされている。
クリンプされた線材を使用した金網からなる網体12は複数本の縦線19と横線15を格子状に編成して構成される。
縦線19と横線15の各線材は、凹部40と凸部41を交互に有する波状の線材であり、この線材で構成した縦線19と横線15を一定の目合に配列して編み上げた金網として構成されている。図13においては、両側端部の2本一組の縦線19が網体本体の両側部を構成し、最上部の2本一組の横線15と最下部の2本一組の横線15が網体本体の上部と下部を構成し、両側部の縦線2と最上部と最下部の横線3とで囲まれる長方形の枠の内側に、複数本の縦線19と2本一組の横線15を一定の目合に配列して編み上げた金網として構成されている。
さらに説明すると、上部および下部並びに各側縁部では、縦線19および横線15は、それぞれ2本で一組とされ、各縦線19および各横線15はそれぞれ半ピッチずれて編み組みされ、各横線15は各縦線19の波ピッチに対して半ピッチずれて編み組みされ、2本以上一組として網組みされた各横線15の波の凹凸部分により縦線19を表裏から抱き込むように編み組みされ、同様に、横線15を2本以上一組として網組みされた各縦線19の波の凹凸部分により横線15を表裏から抱き込むように編み組みされている。
また、上下方向の中間部では、上下方向に間隔をおいた横線15が2本以上で一組とされ、各横線15は縦線19の波ピッチに対して半ピッチずれて編み組みされ、2本以上一組として網組みされた各横線15の波の凹凸部分により縦線を表裏から抱き込むように編み組みされている。前記のような網体12では、落石を受けた場合に、横線材の張力によりねじれ変形(弾性及び塑性)することで落石エネルギーの一部を吸収することができる。また網体12の縦線材(または横線材)は、横線材(または縦線材)との交点で横線材(または縦線材)に張力を伝えることができる。
【0036】
前記のようなクリンプ線材を使用したクリンプ金網からなる網体12以外にも、螺旋線材を縦線材あるいは横線材として用いた金網からなる網体12を用いてもよい。また、縦断勾配がない平坦地に検知柵を設置する場合には、適宜の網体を使用するようにしてもよい。
【0037】
本発明を実施する場合、上部の網体支承用撚り線18と網体12の上端部の横線材19および縦線材15の結合に、U形金具34に代えて、結合コイル36を用いてもよい。
なお、本発明の落石検知柵では、曲げ剛性の小さい支柱6およびその部分の網体12が損傷した場合には、その部分の網体12および曲げ剛性の小さい支柱6を取り替えるだけで、落石検知柵を修復することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 落石検知柵
2 地盤
3 曲げ剛性の大きい支柱
4 コンクリート
5 平面外径の大きい独立基礎
6 曲げ剛性の小さい支柱
7 平面外径の小さい独立基礎
8 コルゲートパイプ
9 小径パイプ
10 変位検知器
11 支柱
12 網体
13 検知索
14A 取り付け金具
14 支承金具
15 縦線材
16 押さえ金具
17 ボルト・ナット
18 網体支承用撚り線
19 横線材
20 上部環状部
21 突起
22 フックボルト
23 フック部
24 溝
25 ナット
26 貫通孔
27 隙間
28 支承板
29 Uボルト
30 脚部
31 ナット
32 横孔
33 固定金具
34 U形金具
35 ボルト・ナット
36 結合コイル
37 係止溝
38 係止用フック部
40 凹部
41 凸部
42 端部押さえ金具
43 ボルト
45 支柱
46 検知索
47 検知柵
48 基礎
49 受圧板
50 基礎
51 検知柵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をおいて立設された複数の支柱とこれらの支柱に亘って配置された網体とを備え、変位検知器に接続された検知索を複数の支柱に亘って設けた落石検知柵において、曲げ剛性の高い支柱間に、その曲げ剛性の高い支柱よりも曲げ剛性の低い支柱が配置され、前記各支柱に亘って配置された網体支承用撚り線は、前記曲げ剛性の低い支柱に固定され、かつ前記網体支承用撚り線は曲げ剛性の高い支柱に対して網体支承用撚り線の長手方向にスライド移動可能に係合されていることを特徴とする落石検知柵。
【請求項2】
曲げ剛性の低い支柱の基礎は、曲げ剛性の高い支柱の基礎に比べて、支持力が等しいか、または支持力の小さな基礎とされていることを特徴とする請求項1に記載の落石検知柵。
【請求項3】
網体が、クリンプ線材が網組みされた金網からなる網体、または螺旋線材が網組みされた金網からなる網体であることを特徴とする請求項1または2に記載の落石検知柵。
【請求項4】
網体は、3本以上の支柱に固定され、かつ、曲げ剛性の低い支柱に強固に固定され、曲げ剛性の高い支柱には、緩く取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の落石検知柵。
【請求項5】
検知索の端部が接続される変位検知器を備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の落石検知柵。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−69159(P2011−69159A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222801(P2009−222801)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【出願人】(593211636)株式会社ニッケンフェンスアンドメタル (26)
【Fターム(参考)】