説明

落石防護柵及び落石防護網

【課題】安全で、労力を軽減でき施工性が良好になるばかりでなく、錆や腐食に強くライフサイクルコストを大幅に削減でき、網自体のリサイクルも可能である落石防護用柵及び落石防護網を提供する。
【解決手段】道路等に近接して落石Sのおそれがある斜面1の麓に複数の支柱2を垂設し、これらの支柱2間に横架された複数の横筋3を介してポリエステルモノフィラメントを素材とした網体4を複数枚積層し、壁面状に張設して落石防護柵を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落石防護柵及び落石防護網に関し、特に道路等に近接して落石の恐れがある斜面等に構築して好適な落石防護柵及び落石防護網の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から切土斜面の表層土砂が雨等の自然現象によって流出したり、落石や雪崩等によって斜面が崩壊することを防止するため、種々の斜面安定工法が採用されている。特に道路等に近接して落石の恐れがある斜面部に吊りロープ等により防護柵や防護網等を取付け、落石や雪崩を受け止めて防護する手段が一般に講じられている。
【0003】
従来の落石防護網は、柵式とポケット式と覆式とに大別される。覆式の落石防護ネットは、広い面積の金網に多数の縦ロープと複数の横ロープを相互間隔をおいて組み込み、各縦ロープと横ロープの端部を斜面にアンカー止めして、このロープ付き金網を斜面になじむように敷設することによって、浮石等を支持して跳石や落石を防止する構造である。一方、ポケット式の落石防護ネットは、沢状部の両側に3メートル〜4メートルの間隔毎に多数のポケット形成用の支柱を上下方向傾動可能に建て込み、各支柱の上部にそれぞれ縦ロープを連結して垂下し、両端がアンカーにより支持された複数の横ロープを斜面に一定の上下間隔で配置して、この縦横ロープに金網を張設して防護網とし、吊りロープで緩衝して支持された支柱で防護網の上部を支柱の高さに吊持して、各支柱によりロープ付き金網をカーテン状に垂設し、ロープ付き金網の全幅に開口されたポケット部を形成し、落石等を収納することにより落石エネルギーを緩衝して吸収する構造になっている。
【0004】
そして、例えば特許文献1には、金網に多数の縦・横補強ロープとともに左・右縦ロープと上端部横ロープ及び複数の下半部横ロープを組み込み補強して、沢状部等の両側斜面に設けたアンカーに左右の支柱をヒンジ連結して沢状部等の上下方向の傾動を可能に建て込み、両側斜面にアンカーした吊ロープ及びサイドロープの端部を各支柱の上部に連結して支保し、左・右縦ロープの上端部を各支柱の上部に連結するとともに、両側斜面に両端部をアンカーした上端部横ロープを各支柱の上部でスライド可能に支持し、各下半部横ロープの各両端部を両側斜面にアンカーして、金網の上半部分を落石エネルギーを緩衝して吸収するポケット部に構成し、金網の下半部分を沢状部等の地上に敷設して落石等を受け止める敷設部に構成して構築するようにした落石防護ネットの工法が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2916633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、一般的に防護ネットは金属製で重量があり、これを斜面へ運搬して張り巡らせるのは、危険が伴うとともに作業が極めて困難であり施工性が悪い。また、亜鉛メッキを施し耐久性を向上させてはいるが、錆や腐食には弱く、海岸地帯や火山地帯、工業地帯では頻繁に更新が必要とされライフサイクルコストが嵩む。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の落石防護柵及び落石防護網は、網体を複数枚積層してなることを第1の特徴とする。また、網体を段落し状に積層してなることを第2の特徴とする。さらに、網の端縁部同士を突き合わせて連結したことを第3の特徴とする。
【0008】
さらにまた、本発明で使用する網体は、下記の特性を有するポリエステルモノフィラメントを素材とし、撚り合わせ部分に溶着または接着を伴うことなく織成してなる多角形の網目を有する合成樹脂製網状体であることが好ましい。
極限粘度=0.6以上 線径=1.5〜4.5mm 強度伸度積=750〜3000kg/mm・% 摩耗耐久性=5000回/mm以上。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全で、労力を軽減でき施工性が良好になるばかりでなく、錆や腐食に強くライフサイクルコストを大幅に削減できる。また、網自体のリサイクルも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明にかかる落石防護柵及び落石防護網の実施形態を説明する。図1は本発明に係る落石防護柵の構造を模式的に示す側面図、図2は本発明に係るポケット式落石防護網の構造を模式的に示す側面図、図3は本発明に係る覆式落石防護網の構造を模式的に示す側面図、図4及び図5は網体の連結方法を模式的に示す要部正面図である。
【実施例】
【0011】
図中、1は例えば、道路等に近接して落石Sのおそれがある斜面である。この斜面1の麓には複数の支柱2が垂設されており、これらの支柱2間に横架された複数の横筋3を介してポリエステルモノフィラメントを素材とした網体4を複数枚積層し、壁面状に張設されて落石防護柵が構築されている。
【0012】
また、図2及び図3に示すように、斜面1に突設されると共に、牽引ロープ6とアンカー7により固定支持された複数のポール5間で斜面1の幅方向に取付けられた懸吊ロープ8に網体4がカーテン状に張設されたポケット式落石防護網や覆式落石防護網では、落石S等が集中しやすい個所の網体4の積層枚数を変えて強度を高めることが可能である。すなわち、段落し状に網体4を積層して施工する。ここで、段落し状とは、複数の網体4を異なる長さに積層して強度を段階的に変化させて施工する方法を言う。
【0013】
尚、網体4同士の連結は、網体4の端縁部同士を突き合わせて連結されている。すなわち、図4又は図5に示すように、連結部分をコイル線9や鋼線10を用いて縫うように可動式又は固定式にする。これにより、従来は重ね合わせて連結されていた網体4の重なり分だけ材料を10%〜20%削減でき網体4の節約ができる。
【0014】
ここで、網体4は、下記の特性を有するポリエステルモノフィラメントを素材とし、撚り合わせ部分に溶着または接着を伴うことなく織成してなる多角形の網目を有する合成樹脂製網状体であることが望ましい。
極限粘度=0.6以上 線径=1.5〜4.5mm 強度伸度積=750〜3000kg/mm・% 摩耗耐久性=5000回/mm以上。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る落石防護柵の構造を模式的に示す側面図である。
【図2】本発明に係るポケット式落石防護網の構造を模式的に示す側面図である。
【図3】本発明に係る覆式落石防護網の構造を模式的に示す側面図である。
【図4】網体の連結方法を模式的に示す要部正面図である。
【図5】網体の連結方法を模式的に示す要部正面図である。
【符号の説明】
【0016】
1 斜面
2 支柱
3 横筋
4 網体
5 ポール
6 牽引ロープ
7 アンカー
8 懸吊ロープ
9 コイル線
10 鋼線
S 落石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルモノフィラメントを素材とした網体を複数枚積層してなることを特徴とする落石防護柵及び落石防護網。
【請求項2】
網体を段落し状に積層してなることを特徴とする請求項1記載の落石防護柵及び落石防護網。
【請求項3】
網体の端縁部同士を突き合わせて連結したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の落石防護柵及び落石防護網。
【請求項4】
網体が、下記の特性を有するポリエステルモノフィラメントを素材とし、撚り合わせ部分に溶着または接着を伴うことなく織成してなる多角形の網目を有する合成樹脂製網状体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の落石防護柵及び落石防護網。
極限粘度=0.6以上 線径=1.5〜4.5mm 強度伸度積=750〜3000kg/mm・% 摩耗耐久性=5000回/mm以上。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−19673(P2008−19673A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−194123(P2006−194123)
【出願日】平成18年7月14日(2006.7.14)
【出願人】(390032757)粕谷製網株式会社 (4)
【出願人】(506243297)株式会社コテガワ (1)
【出願人】(392030450)
【Fターム(参考)】