説明

葉菜収穫機

【課題】畝上に栽培している葉菜(ホウレン草)の茎部を刈刃で切断してその葉部のみを収穫する場合に、茎部を切断した時点で各葉部が不安定になって各葉部をうまく収集できないとともに、特に畝の左右側面に垂れ下がっている葉菜の垂れ葉は収集できない。
【解決手段】走行装置1上に設置した機体フレーム2の前端位置に畝Aに栽培している葉菜Yの茎部Ybを切断する刈刃31を設け、機体フレーム2に刈刃31で切断した各葉部Yaを乗せて搬送するコンベアベルト41を設け、コンベアベルト前端部41aに刈刃31で切断した直後の各葉部Yaをコンベアベルト前端部上に載せる載せ上げ装置5を設けているとともに、機体フレーム2の左右各端部付近に、畝側面Abに垂れている葉菜の垂れ葉Ycを畝上面Aa側に掻き寄せるための掻き寄せ装置6,6を設けていることにより、茎部を切断した葉部を効率よく収集できるとともに上記垂れ葉もうまく収集できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、ホウレン草のような葉菜を収穫するためのものであって、特に葉菜の葉部のみを収穫するようにした葉菜収穫機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からホウレン草の収穫作業は、主として手作業で1本ずつ根部を引き抜いて収穫していたが、このような手作業による収穫作業では、長時間不自然な姿勢(中腰や足を屈めた姿勢)が続き、身体的に苛酷な作業となるとともに、作業能率が非常に悪かった。
【0003】
他方、従来から、例えば特開平9−308353号公報(特許文献1)に開示されるような葉菜収穫機が知られているが、この公知の葉菜収穫機は、自走式であって根切り刃により葉菜の根を1株ごと切断し、その根切り葉菜を圃場から引き抜いて搬送・収集し得るようにしたものである。
【0004】
ところが、この公知の葉菜収穫機では、収穫機を自走させながら葉菜を収穫できる(身体の疲労度が少ない)ものの、根切り刃(地中の表層部分に潜って根を切断する)が葉菜の根を1株ずつしか切断できず、従って収穫能率が悪いものであった。又、根きり刃は、地中を進行するので、比較的短期間できれにくくなり、刃物の耐久性が悪いという問題もあった。
【0005】
ところで、ホウレン草のような葉菜は、葉部を食用にするものであり、特に加工用に使用する場合は葉部のみを収穫すればよい。その場合は、圃場面から露出している茎部を切断して(各葉部がバラバラになる)、その各葉部のみを収穫すればよい。
【0006】
このように、葉菜の葉部のみを収穫し得るようにした葉菜収穫機として、本件出願人は特願2007−324539号(特許文献2)のものを既に特許出願している。
【0007】
この既出願の葉菜収穫機は、図8及び図9に示すように走行装置1上に左右の各支柱21,21と左右の各側板22,22からなる機体フレーム2を設け、該機体フレーム2の前端位置に圃場面(畝上面)から僅かに離間した位置において圃場に栽培している葉菜Yの茎部Ybを切断する刈刃31を設け、機体フレーム2に刈刃31で切断した各葉部Yaを乗せて機体フレーム後方側へ搬送するコンベアベルト41を設け、該コンベアベルト41の前端部に刈刃31で切断した直後の各葉部Yaをコンベアベルト前端部上に掻き上げる葉部掻き上げ用のブラシロール51を設けている。
【0008】
ところで、ホウレン草のような葉菜Yは、図9に示すように、1つの畝Aに左右に所定間隔をもって複数条(例えば5〜6条)植え付けられるが、圃場面(畝上面)から露出している葉菜茎部Ybを切断する場合は、刈刃31にさほど負担がかからないので、複数条(畝Aの全幅W)の葉菜Y,Y・・を同時に刈り取ることができる。
【0009】
そして、図8及び図9に示す既出願の葉菜収穫機では、走行装置1の左右のクローラ11,11が畝Aを跨いだ状態で刈刃31を畝上面に近接させ、該刈刃31とコンベアベルト41とブラシロール51とを作動させながら走行装置1(左右のクローラ11,11)により前進させると、刈刃31で畝幅方向に位置する複数の葉菜Y,Y・・の各茎部Ybを切断し、その切断した直後の各葉部Ya(バラバラになっている)をブラシロール51でコンベアベルト41の前端部上に掻き上げて、該各葉部Yaをコンベアベルト41により機体フレーム2の後端側に搬送することができる(各葉部Yaをコンベアベルト41の終端部から順次収集容器18内に収容できる)。従って、この既出願の葉菜収穫機を使用すると、畝上に栽培している葉菜を軽作業で且つ効率よく収穫できる。
【0010】
ところで、畝Aに複数条の葉菜Y,Y・・を植え付けた場合には、該葉菜Yが成長すると、畝Aの左右各端部に位置する葉菜Yの葉部Yaの一部(図8及び図9の符号Yc)が畝Aの端縁を超えて畝側面Abに垂れ下がることがある。尚、この畝側面Abに垂れ下がった各垂れ葉Ycも良品であって、収穫してよいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−308353号公報
【特許文献2】特願2007−324539号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところが、図8及び図9(既出願)に示す葉菜収穫機では、畝A上の葉菜Yを収穫する際に刈刃31で葉菜茎部Ybを切断すると、畝の左右各側面Ab,Abに垂れ下がっていた各垂れ葉Yc,Ycがブラシロール51で掻き上げられずにそのまま圃場に残ってしまい、収穫ロスが生じる(収量減になる)という問題があった。
【0013】
そこで、本願発明は、ホウレン草のような葉菜において、茎部で切断(各葉部がバラバラになる)したものであっても各葉部を自動で収穫できるとともに、畝側面に垂れ下がっている垂れ葉も効率よく収穫できるようにした葉菜収穫機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、上記課題を解決するための手段として次の構成を有している。尚、本願発明は、ホウレン草のように各葉部が茎部で分離しているような葉菜を収穫するのに適した葉菜収穫機を対象にしている。
【0015】
本願発明の葉菜収穫機は、走行装置上に機体フレームを設け、該機体フレームの前端位置に圃場の畝のほぼ全幅に亘る長さを有し且つ畝上面から僅かに離間した位置において畝に栽培している葉菜の茎部を切断する刈刃を設け、機体フレームに刈刃で切断した各葉部を乗せて機体フレーム後方側へ搬送するコンベアベルトを設け、該コンベアベルトの前端部に刈刃で切断した直後の各葉部をコンベアベルト前端部上に載せる載せ上げ装置を設けているとともに、刈刃より僅かに前方位置で且つ機体フレームの左右各端部付近に畝の左右各側面に垂れている葉菜の垂れ葉をそれぞれ畝上面側に掻き寄せるための左右一対の掻き寄せ装置を設けていることを特徴としている。
【0016】
尚、以下に例示する各寸法は、本願の葉菜収穫機を理解し易くするためのものであって、それぞれ特に限定するものではなく、要件を満たす範囲で自由に設計変更できるものである。
【0017】
本願の葉菜収穫機は、走行装置により自走できるものであるが、走行装置の駆動源としてはモータやエンジンが使用できる。又、走行部には車輪やクローラ(それぞれ左右一対ある)が使用できる。左右の走行部(車輪やクローラ)の間隔は、圃場の畝(ホウレン草栽培用の畝幅は90〜110cm程度のものが多い)を跨ぎ得る程度(例えば120〜140cm)のものであり、各走行部が畝の左右にある各溝を走行するようになっている。尚、この走行装置による収穫作業時の走行スピードは、低速から例えば60m/分程度までの範囲で自由に調整できる(中でも20m〜40m/分程度の走行スピードが安定状態で運転できる)。
【0018】
機体フレームは、この葉菜収穫機の骨格を構成するもので、左右の各支柱に対して前後に長い左右2つの側板を傾動自在に枢支したものが採用できる。左右の側板は、刈刃(刈取装置)やコンベアベルト(搬送装置)や載せ上げ装置等の取付台となるものである。又、左右の側板は、適宜の高さ調節装置によって側板前端部の高さ(側板の傾斜角度)を調整できるようになっている。尚、この機体フレームには、操舵用のハンドルが設けられている。
【0019】
刈刃としては、それぞれ突起状刃先を左右に多数配置した上刃と下刃とを有するものが使用できる。又、この刈刃は、畝幅(90〜110cm程度)と同程度かそれよりやや長い左右長さのものを採用するとよい。この刈刃は、機体フレームの左右側板の前端部下面に左右向き姿勢で取付られている。又、この刈刃は、上記高さ調節装置で左右側板の前端部を高さ調節することによって、圃場面(畝上面)から僅かに(例えば1〜2cm程度)離間した位置に位置決めされる。そして、この刈刃は、モータによって上刃と下刃を相互に左右逆方向に振動させることで葉菜の茎部を剪断し得るようになっている。
【0020】
コンベアベルトは、圃場の畝幅よりやや広幅のものが好適である。例えば畝幅が90〜110cm程度であればコンベアベルトの幅を100〜120cm程度にするとよい。又、このコンベアベルトは、前低後高の傾斜姿勢で設置されるが、コンベアベルト前端部は刈刃の先端より僅かに(例えば2〜3cm程度)後退した位置で且つ該刈刃に可及的に近接する位置まで降下させておくとよい(切断した葉部がコンベアベルト前端部上に乗り上げ易くなる)。このコンベアベルトは、モータにより上面側が後方に走行するように駆動される。コンベアベルトの搬送スピードは、収穫機の走行スピードよりやや速い程度(例えば5〜10%速い程度)で駆動される。尚、コンベアベルトの後端部の下方には、葉菜収集用の容器が設置される。
【0021】
載せ上げ装置としては、例えば比較的大径のブラシロールが採用できる。この載せ上げ装置にブラシロールを採用したものでは、該ブラシロールとして外径が40〜50cm程度でコンベアベルト幅とほぼ同長さ(100〜120cm程度)のものを使用できる。尚、以下の説明では、この載せ上げ装置に使用されるブラシロールを大径ブラシロールということがある。
【0022】
この大径ブラシロールに使用されるブラシは、柔軟なもの(葉菜の葉部を掻き上げるときに該葉部を傷つけないもの)がよい。又、この大径ブラシロールは、その最下面がコンベアベルト前端部の上面に適度に近接する(又は接触させてもよい)ように設置されている。そして、この大径ブラシロールは、モータによってブラシロール下面側が後方に移動するように回転せしめられる。大径ブラシロールの駆動スピードは、その周速度がコンベアベルトの搬送スピードよりやや速い程度に設定される。この大径ブラシロール駆動用のモータは、コンベアベルト用のモータで共用することができるが、コンベアベルト用のモータとは別のモータを使用してもよい。尚、本願の葉菜収穫機に使用される載せ上げ装置は、切断直後の葉部をコンベアベルト前端部上に載せ上げ得るものであれば、上記大径ブラシロールに代えて適宜のもの(例えばエアー吸引式のもの)を採用できる。
【0023】
ところで、収穫すべき葉菜(例えばホウレン草)を畝上に栽培する場合は、前後左右に所定間隔(例えば15〜20cm程度の間隔)をもって複数列状に植え付けられる。又、畝の左右各端部寄りに植えられる葉菜は、畝側縁にかなり近い位置にある(例えば畝側縁から10cm内外の位置)。他方、ホウレン草が収穫可能状態まで生育すると、その茎部から葉部の先端までの長さがかなり長くなり(例えば20〜25cm前後まで長くなる)、畝端部寄りに植えられている葉菜(ホウレン草)の一部の葉部が畝側縁を超えて畝の側面に垂れ下がることがある。尚、以下の説明では、葉菜植え付け状態で畝側面に垂れ下がった葉部を垂れ葉という。
【0024】
本願の葉菜収穫機に使用されている左右の掻き寄せ装置は、上記のように畝の左右各側面に垂れ下がっている垂れ葉を刈刃による茎部切断の前にそれぞれ畝上面側に掻き寄せるためのものである。この各掻き寄せ装置としては、例えば直径が20〜30cm程度で長さが10cm程度のブラシロールを使用できる。このブラシロールに使用されるブラシも、柔軟なもの(葉菜の葉部を掻き寄せるときに該葉部を傷つけないもの)がよい。尚、以下の説明では、この掻き寄せ装置に使用されるブラシロールを小径ブラシロールということがある。
【0025】
この各掻き寄せ装置に小径ブラシロールを使用したものでは、該各小径ブラシロールを、刈刃より僅かに(例えば3〜5cm程度)前方位置で且つ機体フレームの左右各端部付近において該小径ブラシロールの回転軸が前方に向く姿勢で設置する。又、この各小径ブラシロールは、走行装置の左右走行部を畝の両側の各溝に接地させた状態で、畝の左右各側面の上部寄り位置において該各畝側面に近接する状態(例えば1〜2cm程度離間させた状態)で配置される。そして、この各小径ブラシロールは、適宜の駆動源によりブラシロール下面側がそれぞれ畝中央側に移動するように回転せしめられる。尚、各小径ブラシロールの駆動源は、例えばコンベアベルトの回転軸から取ってもよく、あるいは専用のモータを使用してもよい。
【0026】
この各小径ブラシロールは、直径の異なる数種類のもの(例えば直径が20〜30cm程度の範囲で2〜3cm刻みの複数種類)を用意しておき、畝幅に応じてブラシロール外周面が畝側面に近接するような大きさのものを使用できるようにするとよい。又、この各小径ブラシロールは、畝高さに応じて上下に高さ調節し得るようにしておくとよい。尚、圃場が畝のない平地の場合は、該各小径ブラシロールをその下面が圃場面に接触しない(圃場面に近接する)高さまで上動させておくことができる。
【0027】
そして、この葉菜収穫機では、畝上に跨がらせて走行させながら各掻き寄せ装置となる各小径ブラシロールを回転させると、畝の左右側面に垂れ下がっている葉菜の垂れ葉を畝上面側(畝側縁より内側)に掻き寄せることができる。
【0028】
本願発明の葉菜収穫機を使用するには、走行装置の左右走行部を畝の左右の各溝に配置し、刈刃とコンベアベルトと載せ上げ装置(大径ブラシロール)と左右の掻き寄せ装置(各小径ブラシロール)とをそれぞれ駆動させながら、この収穫機を前進走行させる。すると、まず左右の掻き寄せ装置(各小径ブラシロール)により、畝の左右各側縁を越えて畝側面から垂れ下がっている各垂れ葉が順次畝上面側に掻き寄せた後、畝上の各葉菜の茎部が順次刈刃で切断される。尚、各掻き寄せ装置(各小径ブラシロール)で上記垂れ葉を畝上に掻き寄せると一時的に該垂れ葉が立ち起こされ、その立ち起こし状態の垂れ葉を刈刃で切断するようになる。
【0029】
各葉菜の茎部が切断されると各葉部がバラバラに分離する(不安定に状態となる)が、このときコンベアベルトが駆動状態で前進しており且つ載せ上げ装置(大径ブラシロール)が掻き上げ方向に駆動されていることにより、分離した各葉部が直ちにコンベアベルトの前端部(掻き上げ方向に回転している)に接触するとともに載せ上げ装置(大径ブラシロール)でコンベアベルト前端部上に掻き上げられるようになる。従って、切断された各葉部は、その大部分がスムーズにコンベアベルト前端部上に掻き上げられ、順次コンベアベルト上を後送されてコンベアベルト後端部からその下方の収集容器内に落下・収容される。
【0030】
ところで、収穫時に畝側面から垂れ下がっている葉菜の各垂れ葉は良品であるが、該垂れ葉が畝側面から垂れ下がったままであると低い位置にあるので、刈刃で葉菜茎部を切断した後の各垂れ葉に載せ上げ装置(大径ブラシロール)の下面が届かず(接触せず)、分離した垂れ葉(良品)をコンベアベルト上に載せ上げる(収穫する)ことができない。この場合は、良品である垂れ葉が収穫できないので、その分が収量減となる。
【0031】
ところが、本願のように、上記各垂れ葉を、刈刃による茎部切断の直前に各掻き寄せ装置(各小径ブラシロール)で畝上に掻き寄せておくと、該垂れ葉が高位置に立ち起こされて正常に収穫できるようになる。尚、切断された各葉部の一部(特に小さい葉)は、コンベアベルト上に乗せられずに圃場に残ることがあるが、その収穫できない残量はごく少量となる。
【0032】
このように、本願の葉菜収穫機を使用すると、走行装置による走行スピードで畝上の各葉菜(葉部のみ)を刈り取ることができ、しかも上記した垂れ葉も確実に収穫できる。尚、この葉菜収穫機で収穫された葉部は、主として加工用(混ぜ物)として使用するのに適したものである。
【発明の効果】
【0033】
本願の葉菜収穫機には、次のような効果がある。
【0034】
(1) この葉菜収穫機を使用すると、圃場(畝)に栽培されている葉菜(例えばホウレン草)の葉部を作業員が立ったままで収穫でき、手作業による収穫作業に比して疲労度が大幅に軽減できる。
【0035】
(2) 走行装置による走行スピード(最高で60m/分程度が可能であるが20m/分〜40m/分程度が安定状態で運転できる)で葉菜(葉部)を収穫できるので、収穫時間を飛躍的に短縮できる。
【0036】
(3) 刈刃は、地上に露出している茎部を切断するようにしているので、一度に左右広幅範囲を刈り取ることができ、1回当たりの進行で広い面積の葉菜(葉部)を収穫できる。
【0037】
(4) 葉菜の茎部を切断した直後の各葉部はバラバラになっていて不安定な状態であるが、茎部切断直後の各葉部を載せ上げ装置(大径ブラシロール)でコンベアベルト前端部上にスムーズに載せ上げることができ、葉部のみを収穫する場合であっても各葉部を効率よく収穫することができる(歩留まりの良好な収穫作業が行える)。
【0038】
(5) 畝上の葉菜の茎部を刈刃で切断する前に、畝側面に垂れ下がっている垂れ葉を掻き寄せ装置(小径ブラシロール)で畝上に掻き寄せることができる(垂れ葉を立ち起こすことができる)ので、収穫が困難であった上記垂れ葉も確実に収穫できる(歩留まりが一層良好になる)。
【0039】
(6) 葉菜の各葉部のみを収穫できるので、葉部を加工用(例えば混ぜ物)に使用する場合に、根付き葉菜のように根切り作業が不要になり、後の処理工程が簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本願実施例の葉菜収穫機の側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】図1の左側面図である。
【図4】図1の葉菜収穫機における収穫時の機能説明図である。
【図5】図1の一部(掻き寄せ装置部分)拡大側面図である。
【図6】図2の一部(掻き寄せ装置部分)拡大平面図である。
【図7】図1の葉菜収穫機を平地栽培された葉菜の収穫に適用した場合の側面図である。
【図8】本出願人の既出願(特許文献2)にかかる葉菜収穫機の側面図である。
【図9】図8の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0041】
図1〜図7を参照して本願実施例の葉菜収穫機を説明すると、図1〜図6には、畝A上に栽培している葉菜(ホウレン草)Yを収穫する場合の使用例を示し、図7には、平地栽培している葉菜(ホウレン草)Yを収穫する場合の使用例を示している。
【0042】
尚、図2に示すように、以下の説明で、前後とはこの葉菜収穫機の進行方向の前後のことであり、左右とは進行方向の前側から見ての左右のことである。又、以下に例示する各寸法は、本願の葉菜収穫機を理解し易くするためのものであって、それぞれ特に限定するものではなく、要件を満たす範囲で自由に設計変更できるものである。
【0043】
図1〜図6に示す葉菜収穫機は、走行装置1と、該走行装置1上に設置された機体フレーム2と、圃場(畝)Aに栽培している葉菜(ホウレン草)Yの各葉部Yaを茎部Ybで切断する刈取装置3と、切断した各葉部Yaを後送する搬送装置4と、切断した各葉部Yaを搬送装置のコンベアベルト前端部41a上に載せ上げる載せ上げ装置5と、後述するように畝Aの左右各側面Ab,Abに垂れ下がっている各垂れ葉Ycを畝A上に掻き寄せる左右一対の掻き寄せ装置6,6とを基本構成にしている。
【0044】
走行装置1は、この葉菜収穫機を自走させるものであり、この実施例では、走行部に左右一対のクローラ11,11を採用している。この左右のクローラ11,11間の間隔は、図2及び図3に示すように、圃場の畝Aを跨いで両側の畝溝B,Bを走行し得るように設定している。尚、ホウレン草栽培用の畝幅Wは、一般的に90〜110cm程度のものが多く、この実施例では畝幅Wを100cmとしたもので説明する。その場合(畝幅Wを100cmとした場合)には、左右のクローラ11,11の内幅間隔を畝幅Wより例えば30cm程度広い130cm程度に設定するのが適当である。尚、他の実施例では、走行装置1の走行部としてクローラに代えて前後・左右の車輪(4輪)を使用することができる。
【0045】
機体フレーム2は、左右一対の支柱21,21と、該支柱21,21に対して上下に傾動自在に枢支された左右一対の側板22,22とを有している。
【0046】
左右の各支柱21,21は、畝幅Wよりやや広い間隔をもって配置されている。各支柱21,21の下端部は、それぞれクローラ11,11の駆動輪11a,11aの各軸12,12で支持されている。尚、この実施例では、各支柱21,21は、図1に示すようにやや前傾姿勢で設置している。
【0047】
この葉菜収穫機には、各種駆動源(モータ)の電源となるバッテリー10が搭載されている。又、この葉菜収穫機の後部には、収集容器18を載置するための置き台17が設けられている。さらに、この葉菜収穫機の右側後部には、操舵用のハンドル9が取付けられている。尚、バッテリー10、置き台17、及びハンドル9は、それぞれ支柱21に取付けられている。
【0048】
右側の支柱21の上部には、走行装置1の動力源となるモータ13が設置されている。このモータ13からの動力は、各プーリ(又はスプロケット)や各ベルト(又はチエン)等からなる動力伝達部材14を介して各クローラ11,11の駆動輪11a,11aを駆動するようになっている。この走行装置1による収穫作業時の走行スピードは、低速から例えば60m/分程度までの範囲で自由に調整できる(中でも20m/分〜40m/分程度の走行スピードが安定状態で運転できる)。尚、他の実施例では、走行装置1の駆動源てしてエンジンを使用することもできる。
【0049】
各クローラ11,11のそれぞれ外側には、動力伝達部材14の一部をカバーするカバー体15,15が各支柱21,21と平行姿勢で設けられている。この各カバー体15,15は、両支柱21,21の補強部材としての機能も有している。
【0050】
機体フレーム2の左右各側板22,22は、比較的細幅で前後にかなりの長さ(例えば全長が120〜130cm程度)を有している。この両側板22,22には、それぞれ後述する刈取装置3と搬送装置4と載せ上げ装置5と掻き寄せ装置6,6と高さ調節装置7とが取付けられていて、それらの各装置(3,4,5,6,7)と両側板22,22とで収穫ユニットUを構成している。
【0051】
この収穫ユニットUの詳細構成は後述するが、この収穫ユニットUは、その全体の重心位置から後側に離れた位置を左右の支柱21,21の中間高さ位置に一本の軸24で枢支している。従って、この収穫ユニットUは、軸24を中心にして上下に揺動自在となっており、且つ自然状態では収穫ユニットUの自重により軸24を中心にして収穫ユニットUの前側が下方に傾動するようになっている。尚、以下の説明では、収穫ユニットUを上下揺動自在に枢支している軸24を上下揺動軸ということがある。
【0052】
収穫ユニットUの各側板22,22は、畝幅Wの間隔(100cm)よりやや広い間隔(内面間隔が例えば115cm程度)を有している。この両側板22,22間には、搬送装置4のコンベアベルト41が側板22の全長に亘って設置されている。このコンベアベルト41は、両側板22,22間の間隔より僅かに狭い程度の広幅(例えば110cm幅)のものが採用されている。そして、このコンベアベルト41は、左側の側板22に取付けたモータ42で上面側が後方(図4の矢印方向)に走行するように駆動される。コンベアベルト41の搬送スピードは、走行装置1による走行スピードよりやや速く(例えば5〜10%程度高速に)設定されている。
【0053】
刈取装置3は、刈刃31をモータ32で駆動すようにしたものである。刈刃31は、図2に示すように、それぞれ突起状刃先を左右に多数配置した上刃と下刃とを有するものが使用されている。この刈刃31は、畝幅W(100cm)よりやや長い左右長さ(例えば110cm)のものが採用されている。
【0054】
この刈刃31は、左右側板22,22の前端部下面に左右向き姿勢で且つ刃先がコンベアベルト41の前端部41aより僅かに(例えば2〜3cm程度)突出するように取付けられている。そして、この刈刃31は、モータ32によって上刃と下刃を相互に左右逆方向に高速振動(例えば1000〜2000回/分)させることで葉菜Yの茎部Ybを剪断し得るようになっている。
【0055】
載せ上げ装置5には、ブラシロール51が採用されている。このブラシロール51は、外径が40〜50cm程度でコンベアベルト41の幅とほぼ同等の長さ(約110cm)を有している。このブラシロール51に使用されるブラシは、比較的柔軟なもの(葉菜の葉部Yaを傷つけないもの)を使用している。尚、以下の説明では、載せ上げ装置5のブラシロール51を大径ブラシロールという。
【0056】
そして、この大径ブラシロール51は、左右の支持アーム52,52により、ブラシロールの最下面がコンベアベルト41の前端部41aの上面に近接するように設置されている。即ち、各支持アーム52,52の基端部は各側板22,22に1本の軸53で枢支されているとともに、各支持アーム52,52の先端部間に大径ブラシロール51を回転自在に支持している。又、各支持アーム52,52には、図1に示すように高さ調節機構(長穴)付きの支えフレーム54で各側板22,22に支持されていて、各支えフレーム54の固定高さを調節することにより、大径ブラシロール51の最下面とコンベアベルト前端部41aの上面との間隔を調節し得るようになっている。
【0057】
大径ブラシロール51は、モータ55により動力伝達部材(プーリ及びベルト)56を介してブラシロール下面側が後方(図4の矢印方向)に移動するように回転せしめられる。大径ブラシロール51の駆動スピードは、その周速度がコンベアベルト41の搬送スピードよりやや速い程度に設定される。尚、この大径ブラシロール駆動用のモータ55は、コンベアベルト用のモータ42で共用することができる。
【0058】
この収穫ユニットUには、刈刃31を圃場面(図1〜図4の場合は畝Aの上面Aa)から僅かに(例えば1〜2cm程度)離間させた状態で使用するための高さ調節装置7が用いられている。
【0059】
この実施例で使用されている高さ調節装置7は、左右に所定長さ(例えば80〜90cm程度)を有する接地ローラ71と、該接地ローラ71を両側板22,22の前部寄り下面において高さ調節するための操作装置75とを有している。
【0060】
接地ローラ71は、左右両側板22,22間の前部寄り下面において、左右水平向きに設置されている。この接地ローラ71の両端部は、比較的小長さの左右各アーム72,72の先端部(下端部)に枢支しており、該各アーム72,72の基端部(上端部)を左右両側板22,22間の前部寄り下面に架設した横架材73(図2)に軸74で枢支して、該接地ローラ71が両アーム72,72とともに前後(及び上下)に揺動し得るように取付けられている。そして、図1に示すように、左右のアーム72が大きく前方傾動した状態(畝対応)では、接地ローラ71の下面高さがクローラ11の下面高さからかなり上方に離間し、他方、図7に示すように左右のアーム72がほぼ鉛直方向に向く姿勢まで後方揺動した状態(平地対応)では、接地ローラ71の下面高さがクローラ11の下面高さと同等になるように設定している。尚、この接地ローラ71は、図1又は図7の状態においてそれぞれ圃場面に接地して収穫ユニットUを支持するが、そのときクローラ11下面から接地ローラ71下面までの高差によって収穫ユニットUの傾斜角度が変わる。
【0061】
操作装置75は、アーム72を前後に揺動させ得るとともに該アーム72の姿勢を維持させるためのもので、中間部にネジ筒による伸縮部77を有した長尺の連結材76を使用している。この連結材76は、右側の側板22の後方寄り下面においてハンドル78を回転させることで伸縮部77を伸縮させることができるようになっており、該伸縮部77を伸縮させることによりアーム72を前後に揺動させ得るようになっている。即ち、伸縮部77を伸長させると、図1に示すようにアーム72が前方傾動して接地ローラ71が上動する一方、該伸縮部77を縮小させると、図7に示すようにアーム72がほぼ鉛直姿勢まで後方に揺動して接地ローラ71が下動するようになっている。尚、操作装置75は、接地ローラ71の高さを上下に調節し得るものであれば適宜の構成のものを採用できる。
【0062】
ところで、収穫すべき葉菜(例えばホウレン草)Yを畝A上に栽培する場合は、図1〜図3に示すように前後左右に所定間隔(例えば15〜20cm程度の間隔)をもって複数列状に植え付けられる。又、畝Aの左右各端部寄りに植えられる葉菜Y,Yは、畝側縁にかなり近い位置にある(例えば畝側縁から10cm内外の位置)。他方、ホウレン草が収穫可能状態まで生育すると、その茎部Ybから葉部Yaの先端までの長さがかなり長くなり(例えば20〜25cm前後まで長くなる)、畝端部寄りに植えられている葉菜(ホウレン草)Yの一部の葉部Ycが畝側縁を超えて畝の側面Ab,Abに垂れ下がることがある。尚、以下の説明では、葉菜植え付け状態で畝側面Abに垂れ下がった葉部を垂れ葉Ycという。
【0063】
この実施例の葉菜収穫機に使用されている左右の掻き寄せ装置6,6は、上記のように畝の左右各側面Ab,Abに垂れ下がっている垂れ葉Yc,Ycを刈刃31による茎部切断の前にそれぞれ畝上面Aa側に掻き寄せるためのものである。
【0064】
この実施例では、各掻き寄せ装置6,6として、直径が20〜30cm程度で長さが10cm程度のブラシロール61を使用している。このブラシロール61に使用されるブラシも、柔軟なもの(葉菜Yの葉部Yaを掻き寄せるときに該葉部Yaを傷つけないもの)がよい。尚、以下の説明では、この掻き寄せ装置6に使用されるブラシロール61を小径ブラシロールという。
【0065】
この各掻き寄せ装置6,6は、図1〜図6に示すように、それぞれの小径ブラシロール61,61を、刈刃31より僅かに(例えば3〜5cm程度)前方位置で且つ機体フレーム2の左右各側板22,22の前端部付近において該小径ブラシロール61の回転軸が前後に向く姿勢で設置している。又、この各小径ブラシロール61,61は、走行装置1の左右走行部(クローラ11,11)を畝Aの両側の各溝B,Bに接地させた状態で、畝の左右各側面Ab,Abの上部寄り位置において該畝側面Ab,Abに近接する状態(例えば1〜2cm程度離間させた状態)で配置されている。
【0066】
この各小径ブラシロール61,61の駆動源としては、この実施例では、コンベアベルト41の前端部41aにあるロールの回転軸43を利用している。即ち、図2及び図6に示すように、コンベアベルト前端部41aの回転軸43の左右両端部にそれぞれ傘歯車63,63を介して各小径ブラシロール61,61の回転軸62,62を前方に向けた姿勢で配置し、コンベアベルト前端部41aの回転軸43が回転することによって、左右の各ブラシロール61,61がそれぞれ図3の矢印方向(ブラシロール下面側がそれぞれ畝中央側に移動する方向)に回転するようにしている。
【0067】
左右の傘歯車63,63部分は、それぞれギヤケース64,64で被覆されている。この各ギヤケース64,64は、小径ブラシロール61の回転軸62とともにコンベアベルト前端部41aの回転軸43を中心にして所定角度範囲で回転できるようになっている。即ち、各ギヤケース64,64の基端部には取付板65が固定されており、該取付板65を機体フレーム2の各側板22,22の前端部外面に対してコンベアベルト前端部41aの回転軸43を中心にして鉛直面内で回転できるように設置しているとともに、取付板65に設けた円弧状の長穴66(図示例では内外2箇所ある)の範囲で該取付板65を回転できるようにしている。尚、円弧状の各長穴66にはボルト67が挿入されていて、該ボルト67で取付板65を任意の回転角度で側板22に固定できるようになっている。
【0068】
そして、この実施例では、各側の取付板65の固定姿勢を変更することにより、左右の各小径ブラシロール61を図5に実線図示する低位置と鎖線図示(符号61′)する高位置との間で変位させ得るようになっている。尚、図1〜図4に示す畝栽培の収穫時には、小径ブラシロール61の下端が畝上面Aaよりやや低くなる低位置姿勢に位置決めし、図7に示す平地栽培の収穫時には、小径ブラシロール61の下端が平地圃場面よりやや高位置姿勢となるように位置決めする。
【0069】
ところで、圃場の畝幅Wは、栽培者によって90〜110cm程度の範囲で異なることがあり、この実施例では各小径ブラシロール61,61の回転軸62が左右方向の定位置に設置されている関係で、畝幅Wが異なると該各小径ブラシロール61,61の外周面が左右の各畝側面Ab,Abに対して適正近接位置に配置できないことがある。そこで、この実施例では、各小径ブラシロール61,61として直径の異なる数種類のもの(例えば直径が20〜30cm程度の範囲で2〜3cm刻みの複数種類)を用意しておき、畝幅Wに応じて各小径ブラシロール61,61の外周面がそれぞれ各畝側面Ab,Abの適正位置に近接するような大きさのものを使用するとよい。尚、畝側面Abに対する小径ブラシロール外周面の近接距離は、1〜2cm程度が適当である。
【0070】
他の実施例では、各小径ブラシロール61,61の駆動源としてそれぞれ専用のモータを使用することができる。又、各小径ブラシロール61,61を左右に位置調節し得るようにすると、畝幅Wが異なっても単一直径の小径ブラシロールのみで対応することができる。
【0071】
この実施例の葉菜収穫機は、収穫時において上記高さ調節装置7の接地ローラ71が畝幅方向に向いた状態で畝Aの上面Aaに接地した状態で転動するが、左右のクローラ11,11が走行する溝B,Bに凹凸があったり(収穫機が左右に傾く)、畝上面Aaが畝幅方向に傾斜していると、刈刃31が畝上面Aaに対して畝幅方向に角度をもった状態で左右の各葉菜Y,Y・・を刈り取るようになる。その場合には、左右の各葉菜Y,Y・・の刈り取り高さが異なってしまう。因に、畝上面Aaの畝幅方向と刈刃31の長さ方向とが例えば角度2°程度傾斜していると、畝Aの左右各側縁部において刈刃31による葉菜切断高さが3〜4cm程度差が生じ、左右に位置する各葉菜Yによって切断される葉部Yaの長さが異なってしまう。
【0072】
そこで、この実施例の葉菜収穫機では、畝上面Aaの畝幅方向の傾斜状態に応じて刈刃31を自動で畝傾斜と平行に追従させるための刈刃追従装置8を備えている。
【0073】
この刈刃追従装置8は、上記高さ調節装置7の接地ローラ71と、収穫ユニットU全体を左右に揺動自在に支持する揺動支持手段80とで構成されている。尚、接地ローラ71は、左右の側板22,22に対して上下に揺動し得るものの刈刃31と常時平行姿勢に維持されている。
【0074】
上記揺動支持手段80は、左右各側板22,22を上下揺動自在に枢支している上記の上下揺動軸24(両支柱21,21間に架設されている)に取付けたブラケット81と、左右各側板22,22間に架設した横架材82に固定したブラケット83とを、前後向きの1本の軸84で枢支して構成している。従って、収穫ユニットUは、上下揺動軸24に対して前後向きの軸84を中心にして左右に揺動し得るようになっている。尚、以下の説明では、この前後向きの軸84を左右揺動軸という。
【0075】
尚、上下揺動軸24は、上記したように収穫ユニットUを上下揺動自在に支持するものであるが、この上下揺動軸24を左右の各支柱21,21に対して回転自在に取付けた場合には、上下揺動軸24側のブラケット81を該上下揺動軸24に固定し、上下揺動軸24を左右の各支柱21,21に回転不能に取付けた場合には、上下揺動軸24側のブラケット81を該上下揺動軸24に対して揺動可能としておく。
【0076】
上記刈刃追従装置8は次のように機能する。尚、収穫時には左右のクローラ11,11が畝Aを跨いだ状態で葉菜収穫機を前進走行させるが、その際、接地ローラ71による収穫ユニット前端部の支持高さを、刈刃31が畝上面Aaからの所定近接高さ(1〜2cmの間隔)に位置するように設定しておく。
【0077】
この状態では、収穫ユニットUは、上下揺動軸24を中心にして上下揺動自在となっているとともに左右揺動軸84を中心にして左右揺動自在となっているので、走行装置1の左右傾き状態や畝上面Aaの畝幅方向傾斜状態に拘わらず、収穫ユニットUの自重により接地ローラ71の全長が畝上面Aaに接地するようになる。即ち、接地ローラ71の軸線が畝幅方向の畝上面Aaと平行状態で接地ローラ71が接地するようになり、該接地ローラ71と平行に設置されている刈刃31も畝上面Aaに対して平行になる。
【0078】
そして、収穫作業中(葉菜収穫機の前進走行中)に、クローラ11,11が走行する畝溝B,Bに凹凸があったり又は畝上面Aaが畝幅方向に傾斜した部分があっても、収穫ユニットU全体が左右揺動軸84を中心にして左右揺動自在であるので、接地ローラ71が畝幅方向の畝上面Aaに対して常に平行姿勢で接地するように追従し、刈刃31が畝上面Aaに対して平行姿勢を維持するようになる(左右に栽培されている各葉菜Y,Yの刈り取り高さが均一になる)。
【0079】
この実施例の葉菜収穫機で畝A上に栽培している葉菜Yを収穫するには、図1〜図3に示すように走行装置1の各クローラ11,11が畝Aを跨ぎ且つ畝Aと平行に向くように配置する(各クローラ11,11が左右の畝溝B,Bに位置する)。このとき、収穫ユニットUの前部は自重で下がり、接地ローラ71が畝上面Aaに接地するが、この状態で高さ調節装置7の操作装置75(ハンドル78)を操作して刈刃31が畝上面Aa所定間隔(1〜2cm)だけ離間するように高さ調節する。又、この状態では、左右の掻き寄せ装置6,6の各小径ブラシロール61,61の外周面が畝Aの左右各側面Ab,Abの上部寄り位置にそれぞれ近接している。
【0080】
そして、刈取装置3と搬送装置4と載せ上げ装置5の各モータ(32,42,55)をそれぞれ駆動し(このとき左右の掻き寄せ装置6,6の各小径ブラシロール61,61も回転する)、走行装置1により収穫機を前進させる。すると、まず左右の掻き寄せ装置6,6の各小径ブラシロール61,61で畝の左右各側面Ab,Abに垂れ下がっている各垂れ葉Yc,Ycを畝上面Aa側に掻き寄せ(各垂れ葉Ycが畝側縁部付近において立ち起こされる)、その直後に図4に示すように刈刃31が畝Aの各葉菜Y,Y・・の茎部Ybを順次切断していく。各葉菜Yの茎部Ybが切断されると、各葉部Yaがバラバラに分離するが、このときコンベアベルト41が駆動状態で前進しており且つ載せ上げ装置5の大径ブラシロール51が掻き上げ方向に回転していることにより、分離した各葉部Ya,Ya・・が直ちにコンベアベルト前端部41aに接触するとともに大径ブラシロール51でコンベアベルト前端部41a上に掻き上げられるようになる。従って、切断された各葉部Ya,Ya・・は、その大部分(ほとんど)がコンベアベルト前端部41a上にスムーズに掻き上げられ、順次コンベアベルト41上を後送されてコンベアベルト後端部からその下方の収集容器18内に落下・収容される。
【0081】
このように、この葉菜収穫機を使用すると、自動で各葉部Yaのみを収集することができ、且つ走行装置1による走行スピードで刈り取り作業が行えるので、収集効率が手作業に比して掻く段に良好となる。又、葉菜Yの葉部Yaのみを収穫するようにしたものにおいて、刈刃31で切断した直後の各葉部Yaを順次大径ブラシロール51でコンベアベルト前端部41a上に掻き上げるようにすると、各葉部Yaが切断されて不安定な状態であっても高確率で収集できる。
【0082】
さらに、畝A上の葉菜Yの茎部Ybを刈刃31で切断する前に、左右の掻き寄せ装置6,6(小径ブラシロール61,61)で左右の畝側面Ab,Abから垂れ下がっている葉菜の各垂れ葉Ycを畝A上に掻き寄せることができる(垂れ葉Ycを立ち起こすことができる)ので、収穫が困難であった上記垂れ葉Ycも確実に収穫できる(歩留まりが一層良好になる)。尚、切断された各葉部Yaの一部(特に小さい葉)は、コンベアベルト41上に乗せられずに圃場に残ることがあるが、その収集できない残量はごく少量となる。
【0083】
又、この実施例の葉菜収穫機では、走行装置1のクローラ11,11が走行する畝溝B,Bに凹凸があったり又は畝上面Aaが畝幅方向に傾斜した部分があっても、刈刃追従装置8により刈刃31が畝上面Aaに対して常に平行姿勢を維持するようになり、畝幅全体に亘って栽培されている各葉菜Y,Y・・の刈り取り高さを均一にすることができる(刈り取り葉部の品質が良好となる)。
【0084】
図7には、上記の葉菜収穫機で平地栽培された葉菜Yを収穫する場合を示している。この図7の場合は、クローラ11の下面が葉菜Yの植え付け面(圃場面A)と同高さになるので、高さ調節装置7を調整して、刈刃31を植え付け面に近接する位置(葉菜の茎部Ybを切断する位置)まで降下させるとともに、左右の掻き寄せ装置6,6の各小径ブラシロール61,61をブラシロール下面が植え付け面から若干離間する高さまで上動させた位置で固定する。尚、その他の使用方法及び各装置の機能は、図1〜図6に示す実施例と同じであるので、その説明を援用する。
【符号の説明】
【0085】
1は走行装置、2は機体フレーム、3は刈取装置、4は搬送装置、5は載せ上げ装置、6は掻き寄せ装置、7は高さ調節装置、8は刈刃追従装置、11はクローラ、21は支柱、22は側板、24は軸(上下揺動軸)、31は刈刃、32は刈刃のモータ、41はコンベアベルト、41aはコンベアベルトの前端部、42はコンベアベルトのモータ、51は大径ブラシロール、55は大径ブラシロールのモータ、61は小径ブラシロール、71は接地ローラ、75は操作装置、Uは収穫ユニット、Aは畝、Aaは畝上面、Abは畝側面、Yは葉菜、Yaは葉部、Ybは茎部、Ycは垂れ葉である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(1)上に機体フレーム(2)を設け、該機体フレーム(2)の前端位置に圃場の畝(A)のほぼ全幅(W)に亘る長さを有し且つ畝上面(Aa)から僅かに離間した位置において畝(A)に栽培している葉菜(Y)の茎部(Yb)を切断する刈刃(31)を設け、前記機体フレーム(2)に前記刈刃(31)で切断した各葉部(Ya)を乗せて機体フレーム後方側へ搬送するコンベアベルト(41)を設け、該コンベアベルト(41)の前端部(41a)に前記刈刃(31)で切断した直後の各葉部(Ya)を前記コンベアベルト前端部(41a)上に載せる載せ上げ装置(5)を設けているとともに、
前記刈刃(31)より僅かに前方位置で且つ前記機体フレーム(2)の左右各端部付近に、畝(A)の左右各側面(Ab,Ab)に垂れている葉菜(Y)の垂れ葉(Yc)をそれぞれ畝上面(Aa)側に掻き寄せるための左右一対の掻き寄せ装置(6,6)を設けている、
ことを特徴とする葉菜収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−246436(P2010−246436A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−97541(P2009−97541)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【出願人】(391052127)株式会社ニシザワ (14)
【Fターム(参考)】