説明

蒙色部位画像表示方法、蒙色部位特定装置、及び蒙色部位治療装置

【課題】生体上の蒙色部位を正確に特定して、病気の診断・治療に役立てる。
【解決手段】生体10の皮膚を撮影し、当該撮影画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理により蒙色部20を際立たせる。蒙色部位が現れた撮影画像を見ながら、生体上の蒙色部位に相当する位置に印をし、この状態で再び撮影する。同一画像上に蒙色部位と印とが現れるため、実際の生体上における蒙色部位を高精度に特定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体の皮膚上に現れる内臓疾患及び疼痛等に相関した生体反射光微弱差異部(いわゆる「蒙色部位」)を画像上に特定して、病気の診断・治療に役立てるための蒙色部位画像表示方法、蒙色部位特定装置、及び蒙色部位治療装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
愁訴を訴える患者に対し、服薬、注射、点滴等によらないで治療を施す場合、一般に鍼灸、マッサージ、赤外線、レーザー等が用いられることが多い。服薬の場合、症状に対する薬の種類の選択が最も重要となる。しかし、鍼灸、赤外線、レーザー等は刺激の種類の選択よりも、むしろ何処を刺激するかという、その部位選定が最も重要な課題となる。
【0003】
上記刺激部位の選定は、近年まで、書籍等に表わされた古人の経験の積み重ねと、術者の個人的能力(経験や勘)に頼っていたため、習熟に年月を必要とすると共に個人の治療能力にも差異が出てしまう。
【0004】
しかし、ここ数十年前より、内臓−体壁反射生理反応によって出現する生体の皮膚良導点(別名、「皮電点」、「反応点」)を検出する方法が実用化され、経験の浅い術者であっても刺激部位を比較的容易に選定できるようになっている。なお、この良導点の検出方法は、検針を当てて、他の正常皮膚に対して電気抵抗等の電気的に差異のある部位を検出することによって行なう。しかしながら、上記検知装置は皮膚上を点接触して操作しなければならないという、その原理に伴う次のような欠点があった。
A.接触操作することによる電気刺激によって原症状が生理的に変化する可能性があり、この場合に治療点を見落とすことがある。
B.接触操作して探知するが、反応点(良導点)は内部疾患に対応して複数箇所あるのが一般であり、これらを同時に把握することができないため、探知した点が最有力治療点であるとの断定することが困難である。
C.原理的に接触したときの電気抵抗によって測定を行なうため、周囲ないし患者の皮膚上の湿度、あるいは検針に加える圧力によって検出感度が左右され、探知を誤る危険性がある。
D.点である検針を面である皮膚に当てるという方法であるため、探知速度とその精度が個人の資質に負うところが大きく、必要全部分を走査したという客観的確証が得られず、見落としの可能性を残したまま検診を終了することになり易い。
【0005】
従来の探知走査方法では、上記のように術者の経験、勘等の個人的能力の有無に多分に左右されるため、探知結果の科学的信憑性、信頼性という点に多分に疑問を残していた。
【0006】
斯かる治療点は、生体に疾患がある場合は、それに相関して必ず生体の皮膚に出現する。まず、説明の前提として、検出の対象となる皮膚表面上の特異点がどのようにして現れるのかを先に述べる。
【0007】
内臓疾患が皮膚上に差異を現出させることは、マッケンジーの原理(内臓皮膚反射)として知られている。これは、皮膚の自律神経と内臓の自律神経とは、それぞれ脊髄を反射中枢として相関関係にあり、内臓に機能疾患ないし器質疾患が起こると、その異常な病的興奮が、体表の相当部に異常興奮として顕れるというものである。
【0008】
図8は、小動脈の皮下終末5(皮膚表面の直下の端末)の状態変化を実証し、軽いものから重いものに順に配列したものである。なお、図8は、「内臓体壁反射」(1962年刊 金沢大学教授 石川太刀雄 著)から引用した。
【0009】
上記図8の皮下終末5の大小動脈によって支配される各領域は、数mm位と考えられ、この領域に血行不全が始まると、毛細血管が半窒息状態となり、さらに、この血行不全が進むと、次第に半壊死的所見が見られる。上記内臓疾患等による皮膚上の差異は、小さな部位の半窒息状態乃至半壊死的状況であり肉眼では捉え難い。
【0010】
例えば特許文献1には、生体の皮膚の撮影し、その撮影画像に蒙色部位を際立たせる画像処理することにより、蒙色部位を検出する方法が示されている。
【0011】
「蒙色部位」とは、生体に光を当てると皮膚上の治療すべき点に現れる反射光微弱差異部分であり、通常、肉眼で見極めることは困難である。従って、斯かる蒙色部位を見つけるためには、相当程度の経験が必要であったが、上記特許文献1の方法によれば、画像上に蒙色部位が現れるため、経験の浅いものでも簡単に蒙色部位を特定することができる。
【0012】
【特許文献1】特開2007−202978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、画像に表れた生体上の蒙色部位を見ながら実際の生体上の蒙色部位を特定することとなるため、画像上に現れた蒙色部位と実際の生体上で特定した点とが一致しているか否かを確認することはできず、おおよその位置を特定することしかできなかった。蒙色部位の位置が僅かでもずれると、治療効果が得られないことがあるため、蒙色部位の位置をより高い精度で特定する方法が求められていた。
【0014】
本発明の課題は、誰でも簡単に生体上の蒙色部位を高精度に特定することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するために、本発明は、生体の皮膚を撮影し、当該撮影画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理により蒙色部位を際立たせ、蒙色部位が現れた撮影画像を見ながら生体の蒙色部位に相当する位置に印をし、この状態で再び生体の皮膚を撮影し、当該撮影画像を画像処理して蒙色部位と印とを同一画像上に現す蒙色部位画像表示方法を提供する。
【0016】
このように、蒙色部位が現れた撮影画像を見ながら蒙色部位に相当する位置に印をし、この状態で再び撮影することで、同一画像上に蒙色部位と印とが現れるため、実際の生体上における蒙色部位を高精度に特定することができる。尚、「印」とは、ペン等で印をつける他、指を直接当てるなど、実際の皮膚上の一点を特定する手段のことを言う。
【0017】
また、前記課題を解決するために、本発明は、生体の皮膚を動画で撮影する撮影装置と、生体の皮膚に現れる蒙色部位が際立つように、撮影された画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理装置と、画像処理装置により調整された画像を映し出すモニターとを備えた蒙色部位特定装置を提供する。
【0018】
このように、撮影装置で生体の動画を撮影し、その撮影画像を順次処理してモニターに映し出すことで、リアルタイムで蒙色部位を特定することが可能となる。すなわち、動画を撮影し、モニターを観察しながら生体の蒙色部位に印をつけ、その画像をリアルタイムで処理することで、印の位置と蒙色部位とが一致しているか否かを確認することができる。
【0019】
また、生体の皮膚を動画で撮影する撮影装置と、生体の皮膚に現れる蒙色部位が際立つように、撮影された画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理装置と、治療補助装置を取り付けたアームと、画像処理装置による処理画像に現れた蒙色位置に基づいてアームを操作するアーム制御装置とを備えた蒙色部位治療装置により、確実に蒙色位置を治療することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明の蒙色部位画像表示方法、蒙色部位特定装置、及び蒙色部位治療装置によれば、蒙色部位を高精度に特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る一実施形態を図面に基づいて以下に説明する。
【0022】
図1に示す蒙色部位特定装置1は、生体10に向けて光を発する光源11と、生体10の皮膚を撮影する撮影装置12と、撮影装置12で撮影した画像をデジタル処理する画像処理装置13と、画像処理装置13で処理された画像を映し出すがモニター14とを有する。
【0023】
光源11は、生体10の皮膚表面を明るくするものであれば特に限定されず、例えば明るさが200ルクスから500ルクスの範囲の照明装置を用いるとよい。すなわち、通常の治療室で用いられる蛍光灯などを光源11として使用することができる。なお、明るさは、生体の皮膚の表面で測定するとよい。また、蒙色部位を撮影し易い明るさは、生体個々の皮膚の色や艶に個体差があり、それに応じて異なるため、光源11として上記範囲内で明るさを調整可能な照明装置を用いてもよい。
【0024】
撮影装置12には、例えば動画が撮影可能なデジタルビデオカメラが使用される。
画像処理装置13は、撮影装置12で撮影した画像データを取り込んで、この画像データをデジタル処理するものである。画像処理装置13は、例えば、撮影画像を記憶するキャプチャ13aを有し、所定のプログラムに従って所定の画像処理を行なう画像処理ソフト13bがインストールされたコンピュータで構成される。撮影装置12から取り込まれた画像は、画像処理ソフト13bにより、撮影画像の生体上の蒙色部位20が際立つように、RGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整することにより画像処理される。
斯かる画像処理におけるRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度の調整は、生体個々の皮膚の色や艶に個体差があるが、例えば、一般的な日本人成人男性では、RGBの調整において、Rを150%程度、Gを90%程度、Bを90%程度にする。明るさは80%程度にする。そして、コントラストを130%程度にし、色温度は生体個々により人種、性別、年齢等により最適に調整する。上記はあくまでも一般的な例であり、本質的には個体差に応じ、種々調整が必要な場合もある。これらのパラメータの標準的な値は、画像処理ソフト13bに組み込まれている。
【0025】
こうして画像処理装置13で処理された画像データがモニター14に出力され、モニター14の画面上で蒙色部位20が映し出される(図2参照)。検査者(施術者)は、この画像を見ながら、実際の生体の皮膚上における蒙色部位をおおよそ特定し、その部位に印をつける(例えば指を当てる)。この間も、撮影装置12による撮影が続けられ、撮影された画像データが画像処理装置13により順次処理される。これにより、生体に指を当てた状態の画像が処理され、その処理画像がモニター14に映し出される。モニター14の画面上には、図3に示すように、生体上の蒙色部位と指とが現れているため、指の位置と蒙色部位とが一致しているか否かを確認することができる。本実施形態では、撮影装置12としてのビデオカメラにより動画を撮影し、その撮影画像を順次処理しながらモニター14に映し出しているため、リアルタイムに蒙色部位を特定することができる。これにより、例えばモニター14に映し出された画像で指の位置と蒙色部位とがずれていれば、指の位置を動かして修正し、再びモニター14の画面上で確認することで、蒙色部位を正確に特定することができる。尚、印はペン等で生体上に直接書き込むものであってもよい。
【0026】
この蒙色部位の画像表示方法によれば、蒙色部位を正確に特定することができるため、治療効果の向上が期待できる。
【0027】
撮影は、生体を疾患に相関して、蒙色部位が出現しやすい所定の姿勢で撮影するとよい。例えば、背腰部位に蒙色部位が現出するような疾患では、ベッドに伏せた状態で撮影すればよい。また、
慢性腎臓病、痔または腰痛の患者では、図4に示すように、腰まわりから臀部にかけて蒙色部位が出現する傾向がある。あるいは、インフルエンザの患者では、図5に示すように、背骨を境界として、腰の中心部に各々左右に10ミリ前後の面状の蒙色部位が出現する傾向がある。さらに、小児麻痺、腰痛では、図6に示すように、背骨を境界として、腰の中心部にほとんど左右対称に蒙色部位が現れる傾向がある。上記の蒙色部位の検出方法により蒙色部位を正確に特定することで、診断及び治療効率が従来の方法より一段と向上する。
【0028】
さらに、この蒙色部位の画像表示方法を利用すれば、蒙色部位の位置を正確に特定し、その部位を適切な治療法で治療する治療装置を構成することができる。この蒙色部位治療装置40は、例えば図7に示すように、生体10に向けて光を発する光源11と、生体10の皮膚を撮影する撮影装置12と、撮影装置12で撮影した画像をデジタル処理する画像処理装置13とを備える。これらの構成は、上記実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0029】
この蒙色部位治療装置40には、治療補助装置41を取り付けたアーム42と、アーム42を操作するアーム制御装置43と、蒙色位置と治療装置の治療位置とが一致しているか否かを判別する判別手段15とを備える。治療補助装置41としては、例えば、ソフトレーザー光によるもの、遠(近)赤外線によるもの、低周波発振装置によるものなど、症状に応じた適切な刺激装置を採用することができる。判別手段15は、例えば画像処理装置13としてのコンピュータに組み込まれる。
【0030】
上記の蒙色部位治療装置40による治療は、例えば以下のようにして行われる。まず、撮影装置12で生体10を撮影し、画像処理装置13で撮影画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整することにより、生体の皮膚上の蒙色部位を特定する。その後、アーム制御装置43によりアーム42を操作し、画像処理装置13で特定された蒙色部位の近辺に治療補助装置41の先端部(治療位置)を配する。この状態で再び撮影し、撮影画像の処理データに基づいて、判別手段15が蒙色部位と治療補助装置41の先端部とが一致しているか否かを判別する。治療補助装置41の先端部が蒙色部位に正確に配されていれば治療を行い、正確に配されていなければ、アーム制御装置43によりアーム42を動かして、治療補助装置41の先端部の位置を修正し、再び撮影画像を処理して蒙色部位に正確に配されているか否かを確認する。上記操作を繰り返すことにより、治療補助装置41の先端部が蒙色部位に正確に配することができるため、蒙色部位に精度良くレーザー等を当てることができる。
【0031】
このように、上記の画像表示方法、あるいは蒙色部位治療装置によれば、蒙色部位に対する治療補助が容易になるばかりでなく、インターネットなどを通じ、遠隔地の患者に対しても蒙色部位の診断が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】蒙色部位特定装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】蒙色部位が現れた生体表面を映し出したモニター画面を示す図である。
【図3】蒙色部位に指を当てた状態でのモニターが面を示す図である。
【図4】他の部位に蒙色部位が現れた状態のモニター画面を示す図である。
【図5】他の部位に蒙色部位が現れた状態のモニター画面を示す図である。
【図6】他の部位に蒙色部位が現れた状態のモニター画面を示す図である。
【図7】蒙色部位治療装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】生体皮膚の反射光微弱差異(蒙色)の原因となる内蔵皮膚反射を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 蒙色部位特定装置
10 生体
11 光源
12 撮影装置
13 画像処理装置
13a キャプチャ
13b 画像処理ソフト
14 モニター
15 判別手段
20 蒙色部位
40 蒙色部位治療装置
41 治療補助装置
42 アーム
43 アーム制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の皮膚を撮影し、当該撮影画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理により蒙色部位を際立たせ、蒙色部位が現れた撮影画像を見ながら生体の蒙色部位に相当する位置に印をし、この状態で再び生体の皮膚を撮影し、当該撮影画像を画像処理して蒙色部位と印とを同一画像上に現す蒙色部位画像表示方法。
【請求項2】
生体の皮膚を動画で撮影する撮影装置と、生体の皮膚に現れる蒙色部位が際立つように、撮影された画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理装置と、画像処理装置により調整された画像を映し出すモニターとを備えた蒙色部位特定装置。
【請求項3】
生体の皮膚を動画で撮影する撮影装置と、生体の皮膚に現れる蒙色部位が際立つように、撮影された画像のRGB、明るさ、コントラスト、及び色温度を調整する画像処理装置と、治療補助装置を取り付けたアームと、画像処理装置による処理画像に現れた蒙色位置に基づいてアームを操作するアーム制御装置とを備えた蒙色部位治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−63541(P2010−63541A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−231211(P2008−231211)
【出願日】平成20年9月9日(2008.9.9)
【出願人】(507080329)目黒株式会社 (2)
【Fターム(参考)】