説明

蒸散具

【課題】 含浸体から蒸散する液体の量が経時的に減少するのを抑制できる蒸散具を提供する。
【解決手段】 蒸散させるための液体が含浸される含浸体1と、含浸体1を覆うように配置される被覆手段2とを備える蒸散具であって、被覆手段2は、含浸体1が露出される領域を次第に拡大させるべく、気化するのに伴って容積が縮小する粒状の縮小体21,…を複数備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を蒸散させる蒸散具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤等の液体を蒸散させる蒸散具として、蒸散させるための液体が含浸される含浸体を備える蒸散具が知られている(例えば、特許文献1)。斯かる蒸散具によれば、含浸体の上部から液体が蒸散するのに伴って、毛管現象により、液体が含浸体の上部へと次々に供給されるため、含浸体の上部から液体が連続的に蒸散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3152167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、芳香剤等には、蒸散させる液体以外にも様々な物質が混入されているため、含浸体の上部から液体が蒸散するのに伴って、斯かる物質が含浸体の中に堆積する。これにより、特許文献1に係る蒸散具においては、毛管現象が生じ難くなるため、液体が含浸体の上部に供給され難くなり、液体の蒸散量が次第に減少するという問題が生じる。
【0005】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、含浸体から蒸散する液体の量が経時的に減少するのを抑制できる蒸散具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る蒸散具は、蒸散させるための液体が含浸される含浸体と、含浸体を覆うように配置される被覆手段とを備える蒸散具であって、被覆手段は、含浸体が露出される領域を次第に拡大させるべく、気化するのに伴って容積が縮小する粒状の縮小体を複数備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る蒸散具によれば、被覆手段が含浸体を覆うように配置されている。そして、複数の縮小体が気化(蒸発又は昇華)するのに伴って、各縮小体の容積が縮小するため、被覆手段に覆われる含浸体の領域が次第に縮小する。これにより、時間が経つのに伴って、露出される含浸体の領域、即ち、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することができる。
【0008】
さらに、各縮小体が粒状に形成されているため、液体が含浸されている含浸体を覆うように、各縮小体を容易に配置することができる。したがって、製造を簡素化できると共に、含浸体のさまざまな形状に対してフレキシブルに対応することができる。
【0009】
また、本発明に係る蒸散具においては、複数の縮小体は、含浸体を覆うように配置されてもよい。
【0010】
斯かる構成の蒸散具によれば、複数の縮小体が含浸体を覆うように配置されている。したがって、複数の縮小体が気化するのに伴って容積を縮小することにより、複数の縮小体に覆われる含浸体の領域が次第に縮小するため、露出される含浸体の領域、即ち、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することができる。
【0011】
また、本発明に係る蒸散具においては、液体及び縮小体のうち、一方は、油性の材質で形成されると共に、他方は、水性の材質で形成され、縮小体は、含浸体に接して配置されてもよい。
【0012】
斯かる構成の蒸散具によれば、液体及び縮小体のうち一方が油性の材質で形成されていると共に、液体及び縮小体のうち他方が水性の材質で形成されている。これにより、液体が縮小体に浸透しないため、縮小体が含浸体に接して配置されても、縮小体が経時的に気化して容積を縮小する。したがって、含浸体に対する縮小体の配置をフレキシブルに対応することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上の如く、本発明に係る蒸散具によれば、含浸体の毛管現象が生じ難くなるが、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することで、含浸体から蒸散する液体の量が経時的に減少するのを抑制できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る蒸散具の全体図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る蒸散具の全体分解斜視図を示す。
【図3】同実施形態に係る蒸散具の全体図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【図4】本発明の他の実施形態に係る蒸散具の全体図であって、(a)は斜視図、(b)は正面図を示す。
【図5】同実施形態に係る蒸散具の全体分解斜視図を示す。
【図6】同実施形態に係る蒸散具の図5のA領域における要部拡大図であって、(a)は図5のB−B線における断面図、(b)は図5のC−C線における断面図を示す。
【図7】同実施形態に係る蒸散具の要部図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面斜視図を示す。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る蒸散具の全体図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る蒸散具における第1の実施形態について、図1〜図3を参酌して説明する。
【0016】
本実施形態に係る蒸散具は、図1〜図3に示すように、芳香剤、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤等の液体を蒸散させるべく、液体が含浸される含浸体1と、含浸体1を覆うように配置される被覆手段2とを備える。また、蒸散具は、被覆手段2を保持する保持体3と、含浸体1と被覆手段2と保持体3とを収容するカップ状の容器7と、容器7の開口部71を覆う蓋体8とを備える。なお、本実施形態においては、液体が油性の材質で形成されている。
【0017】
含浸体1は、略円柱状に形成される本体部11と、本体部11よりも小径に形成され、本体部11の上面から上方に向けて突出する略円柱状の突出部12とを備える。そして、含浸体1は、毛細現象が生じる材質、例えば、浸透性(吸湿性、吸水性)を有する紙材や綿材等で形成されている。
【0018】
被覆手段2は、含浸体1が露出される領域を次第に拡大させるべく、気化(蒸発又は昇華)するのに伴って容積が縮小する複数の縮小体21,…を備える。例えば、縮小体21として、揮発成分を含有する固形物、具体的には、揮発成分からなる液体を、該液体が気化するのに伴って通過可能となる膜で収容(被覆)した収容体や、揮発成分からなる固体等が挙げられる。
【0019】
各縮小体21は、粒状に形成されている。具体的には、各縮小体21は、球状に形成されている。また、各縮小体21は、水性の材質で形成されている。そして、複数の縮小体21,…は、含浸体1を覆うように配置されている。具体的には、複数の縮小体21,…は、含浸体1の本体部11に載置されることで、本体部11の上面に接すると共に、突出部12の基端側に接しており、これにより、含浸体1における本体部11の上面と突出部12の基端側を覆うように配置されている。
【0020】
保持体3は、板状に形成されており、複数の縮小体21,…の上に載置されている。そして、保持体3は、含浸体1の突出部12に挿通される挿通孔31と、初期(まだ気化していない)の縮小体21,…が通過するのを防止すべく、初期の縮小体21,…よりも小さい開口に形成される複数の孔部32,…とを備える。
【0021】
本実施形態に係る蒸散具の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る蒸散具の製造方法及び使用方法について説明する。
【0022】
蒸散具を製造する際には、まず、容器7の内部に含浸体1を配置させた後、液体を容器7の内部に注ぎ込む。これにより、含浸体1に液体が含浸される。そして、含浸体1の本体部11の上に、複数の縮小体21,…を載置した後、含浸体1の突出部12が保持部3の挿通孔31の内部に挿入されるようにして、保持体3を複数の縮小体21,…の上に載置する。さらに、容器7の開口部71を塞ぐように、蓋体7で封止することで、蒸散具が完成する。
【0023】
次に、蒸散具を使用する際には、蓋体8を剥がした後、容器7を床等に載置することで、図3(a)に示すように、含浸体1における縮小体21,…で覆われていない領域、具体的には、突出部12の上方側から、液体が蒸散される。なお、含浸体1の上方や側方にファン(採番及び図示していない)を配設し、ファンが含浸体1に向けて送風することで、液体が蒸散されるのを促進させる構成を採用してもよい。
【0024】
このとき、各縮小体21も時間の経過と共に気化している。これにより、図3(b)に示すように、各縮小体21が徐々に縮小していくため、含浸体1における縮小体21,…で覆われる領域が次第に縮小する。したがって、時間が経つのに伴って、含浸体1の本体部11の上面や、突出部12の下方側が露出されることになるため、突出部12の上方側だけでなく、斯かる部位からも、液体が蒸散される。
【0025】
以上より、本実施形態に係る蒸散具によれば、被覆手段2が含浸体1を覆うように配置されている。そして、複数の縮小体21,…が気化するのに伴って、各縮小体21の容積が縮小するため、被覆手段2に覆われる含浸体1の領域が次第に縮小する。
【0026】
これにより、時間が経つのに伴って、露出される含浸体1の領域、即ち、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することができる。したがって、時間の経過に伴って、含浸体1の毛管現象が生じ難くなったとしても、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することで、含浸体1から蒸散する液体の量が経時的に減少するのを抑制できる。
【0027】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、各縮小体21が粒状に形成されているため、液体が含浸されている含浸体1を覆うように、各縮小体21を容易に配置することができる。したがって、製造を簡素化できると共に、含浸体1のさまざまな形状に対してフレキシブルに対応することができる。
【0028】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、複数の縮小体21,…が含浸体1を覆うように配置されている。したがって、複数の縮小体21,…が気化するのに伴って容積を縮小することにより、複数の縮小体21,…に覆われる含浸体1の領域が次第に縮小するため、露出される含浸体1の領域を次第に拡大することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、液体が油性の材質で形成されていると共に、各縮小体21が水性の材質で形成されている。これにより、各縮小体21が含浸体1に接して配置されているが、液体が各縮小体21に浸透しないため、各縮小体21が経時的に気化して容積を縮小できる。
【0030】
次に、本発明に係る蒸散具における第2の実施形態について、図4〜図7を参酌して説明する。なお、図4〜図7において、図1〜図3の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と同一の構成又は要素を表す。
【0031】
本実施形態に係る蒸散具は、図4〜図7に示すように、芳香剤、殺虫剤、忌避剤、殺菌剤等の液体を蒸散する蒸散部10と、蒸散部10で蒸散する液体を貯留し、蒸散部10に液体を供給する貯留部5とを備える。また、蒸散具は、蒸散部1及び貯留部5を収容する容器7と、容器7の開口部71を覆う蓋体8とを備える。
【0032】
蒸散部10は、蒸散させるための液体が含浸される帯状の含浸体1aと、含浸体1aの表面13,14同士間に介在される介在体4とを備える。また、蒸散部10は、含浸体1aを覆うように配置される被覆手段2aを備える。なお、本実施形態においては、液体が油性の材質で形成されている。
【0033】
含浸体1aは、表面13,14同士が重なるように配置されている。具体的には、含浸体1aは、帯状部材がロール状に巻かれることで形成されている。そして、含浸体1aは、幅方向の一端部が上端部となり且つ幅方向の他端部が下端部となるように、構成されている。なお、含浸体1aは、毛細現象が生じる材質、例えば、浸透性(吸湿性、吸水性)を有する紙材や綿材等で形成されている。
【0034】
介在体4は、筒状に形成される筒状部41,…を複数備える。また、介在体4は、複数の筒状部41,…が連続的に連結されることで、帯状に形成されている。そして、介在体4は、ロール状に巻かれることで、含浸体1aの表面13,14に沿って配置されている。具体的には、介在体4は、含浸体1aの下方側のみに配置されている。
【0035】
これにより、介在体4は、含浸体1aの表面13,14同士が離間するように、含浸体1aの表面13,14同士間に介在されるため、液体が含浸体1aの表面13,14を介して蒸散する際に流通するための流通路Xを含浸体1aの表面13,14に沿って形成する。具体的には、流通路Xは、含浸体1aの下方側においては、各筒状部41の外周部と含浸体1aの表面14との隙間や、各筒状部41の内部に形成されていると共に、含浸体1aの上方側においては、表面13,14同士間に形成されている。
【0036】
また、介在体4(各筒状部41)は、含浸体1aよりも剛性を有する。そして、介在体4(各筒状部41)は、含浸体1aから液体を浸透すべく浸透性を有する。具体的には、介在体4(各筒状部41)は、毛細現象が生じる材質、例えば、浸透性(吸湿性、吸水性)を有する紙材等で形成されている。
【0037】
各筒状部41は、筒状に形成されているため、内部が流通路Xとなるように機能する。そして、複数の筒状部41,…は、外周部が含浸体1aの表面13,14に接するように、含浸体1aの表面13,14に沿って並列されている。さらに、各筒状部41,…は、長手方向(軸線方向)が含浸体1aの表面13,14同士が重なる方向と直交する方向、即ち、上下方向、さらに換言すると、含浸体1aの幅方向に沿って配置されている。
【0038】
なお、本実施形態においては、介在体4は、平面状の平面部材42の一方側の表面に、凹凸状(波状)の凹凸部材43が連結されて構成されている。そして、介在体4は、平面部材42の他方側の表面が含浸体1aの一方側の表面13に接し且つ凹凸部材43の凸部が含浸体1aの他方側の表面14に接するようにして、配置されている。具体的には、帯状の含浸体1aと帯状の介在体4とは、積層されると共に、一体的にロール状に巻かれることで略円柱状の積層体に形成されている。
【0039】
被覆手段2aは、含浸体1aが露出される領域を次第に拡大させるべく、気化(蒸発又は昇華)するのに伴って容積が縮小する縮小体21,…を複数備える。そして、各縮小体21は、粒状、具体的には、球状に形成されている。
【0040】
また、各縮小体21は、含浸体1aの表面13,14に接して配置されている。具体的には、複数の縮小体21,…は、含浸体1aの上方側の表面13,14を覆うように、含浸体1aの表面13,14同士間に配置されている。そして、複数の縮小体21,…は、上下方向で積み重ねられると共に、最下段の縮小体21は、筒状部41の上端の上に載置されている。また、各縮小体21は、水性の材質で形成されている。
【0041】
貯留部5は、円盤状に形成されている。そして、貯留部5は、含浸体1aと介在体4とで構成される積層体に載置される。即ち、貯留部5は、含浸体1a及び介在体4に液体を供給すべく、上面部が含浸体1aの下端部と介在体4(各筒状部41)の下端部とに接するように、配置されている。なお、貯留部5は、毛細現象が生じる材質、例えば、浸透性(吸湿性、吸水性)を有する紙材や綿材等で形成されている。
【0042】
本実施形態に係る蒸散具の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係る蒸散具の製造方法及び使用方法について説明する。
【0043】
蒸散具を製造する際には、まず、帯状の含浸体1aと帯状の介在体4とを積層させた後、一体的にしてロール状に巻く。そして、接着剤等により、含浸体1aと介在体4とを互いに固定させることで、略円柱状の積層体が形成される。そして、斯かる積層体(含浸体1a及び介在体4)における含浸体1aの表面13,14同士間に複数の縮小体21,…を挿入することで、蒸散部10が完成する。
【0044】
その後、容器7の底部に、貯留部5を配置させる。そして、貯留部5の上に、蒸散部10を載置した後、液体を容器7の内部に注ぎ込む。これにより、貯留部5、含浸体1a、及び介在体4に液体が含浸される。さらに、容器7の開口部71を塞ぐように、蓋体8で封止することで、蒸散具が完成する。
【0045】
次に、蒸散具を使用する際には、蓋体8を剥がした後、容器7を床等に載置する。なお、蒸散部10の上方や側方にファン(採番及び図示していない)を配設し、ファンが蒸散部10に向けて送風することで、液体が蒸散されるのを促進させる構成を採用してもよい。
【0046】
すると、初期の段階では、図7(a)に示すように、複数の縮小体21,…は、含浸体1aの表面13,14の上方側を覆っていると共に、介在体4の複数の筒状部41,…の上端を封止するように、筒状部41の上方を覆っている。したがって、初期の段階では、含浸体1aの上端部(上面)からのみ液体が蒸散される。
【0047】
そして、複数の縮小体21,…が経時的に気化するのに伴って、各縮小体21の容積が縮小する。これにより、図7(b)に示すように、複数の縮小体21,…に覆われる含浸体1aの表面13,14の領域が次第に縮小するため、露出される含浸体1aの領域、即ち、液体を蒸散可能な領域が次第に拡大する。
【0048】
しかも、各筒状部41の上端を封止していた各縮小体21が縮小するのに伴って、各筒状部41の上端が開放されることになる。これにより、筒状部41を介して、液体を蒸散可能な領域も次第に拡大することになる。したがって、含浸体1aの毛管現象が生じ難くなったとしても、液体を含浸する含浸体1aから液体を蒸散させることが持続できる。
【0049】
以上より、本実施形態に係る蒸散具によれば、被覆手段2aが含浸体1aを覆うように配置されている。そして、複数の縮小体21,…が気化するのに伴って、各縮小体21の容積が縮小するため、被覆手段2aに覆われる含浸体1aの領域が次第に縮小する。
【0050】
これにより、時間が経つのに伴って、露出される含浸体1aの領域、即ち、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することができる。したがって、時間の経過に伴って、含浸体1aの毛管現象が生じ難くなったとしても、液体を蒸散可能な領域を次第に拡大することで、含浸体1aから蒸散する液体の量が経時的に減少するのを抑制できる。
【0051】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、複数の縮小体21,…が含浸体1aを覆うように配置されている。したがって、複数の縮小体21,…が気化するのに伴って容積を縮小することにより、複数の縮小体21,…に覆われる含浸体1aの領域が次第に縮小するため、露出される含浸体1aの領域を次第に拡大することができる。
【0052】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、液体が油性の材質で形成されていると共に、各縮小体21が水性の材質で形成されている。これにより、各縮小体21が含浸体1aに接して配置されているが、液体が各縮小体21に浸透しないため、各縮小体21が経時的に気化して容積を縮小できる。
【0053】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、帯状の含浸体1aの表面13,14同士が重なるように配置されているため、容積を小さくするように設計することができる。また、介在体4が含浸体1aの表面13,14同士間に介在されるため、流通路Xが含浸体1aの表面13,14に沿って形成される。
【0054】
そして、液体は、重なるように配置されている含浸体1aの各表面13,14から蒸散した後、流通路Xを流通することで、外部に放出される。したがって、液体が含浸体1aの上端部から蒸散されるだけでなく、液体が含浸体1aの表面13,14からも蒸散される。その結果、コンパクト化を図りつつも、液体の蒸散能力を向上させることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、浸透性を有する複数の筒状部41,…の外周部が含浸体1aの表面13,14に接するようにして、複数の筒状部41,…が含浸体1aの表面13,14に沿って並列されている。したがって、液体は、含浸体1aから各筒状部41に浸透した後、各筒状部41から蒸散し、その後、各筒状部41の内部に形成される流通路Xを流通することで、外部に放出される。
【0056】
また、本実施形態に係る蒸散具によれば、複数の筒状部41,…が連続的に連結されることで、介在体4が帯状に形成されている。そして、介在体4が含浸体1aの表面13,14に沿って配置されているため、各筒状部41が安定して含浸体1aの表面13,14に沿って配置される。
【0057】
なお、本発明に係る蒸散具は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく(1つの実施形態に係る各構成や各方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよく)、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0058】
例えば、上記第1実施形態に係る蒸散具においては、液体が含浸体1に含浸されている構成を説明し、そして、上記第2実施形態に係る蒸散具においては、液体が含浸体1a及び介在体4並びに貯留部5に含浸されている構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、容器7bの底部72に液体Yが貯留されると共に、含浸体1bの下端部が液体Yに浸漬されている構成でもよい。
【0059】
また、上記実施形態に係る蒸散具においては、複数の縮小体21,…が含浸体1,1aを直接的に覆うように配置される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図8に示すように、被覆手段2bは、含浸体1bを覆う被覆体22を備え、被覆体22は、複数の縮小体21,…が気化して縮小するのに伴って、含浸体1bの露出する領域を次第に拡大させる構成でもよい。
【0060】
また、上記実施形態に係る蒸散具においては、液体が油性の材質で形成されると共に、縮小体21が水性の材質で形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、液体が水性の材質で形成されると共に、縮小体が油性の材質で形成される構成でもよく、また、図8に示すように、液体Yが縮小体21に浸透するのを防止する構成とすることにより、液体Y及び縮小体21が同じ材質(水性又は油性の材質)でそれぞれ形成される構成でもよい。
【0061】
ここで、図8に係る蒸散具について、詳細を以下に説明する。なお、図8において、図1〜図3の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と同一の構成又は要素を表し、図4〜図7の符号と同一の符号を付した部分は、第2実施形態と同一の構成又は要素を表す。
【0062】
図8に係る蒸散具は、水性の材質で形成さている液体Yを蒸散させるべく、液体Yが含浸される含浸体1bと、含浸体1を覆うように配置される被覆手段2bとを備える。そして、蒸散具は、底部72に液体Yが貯留される容器7bを備える。なお、図8においては、蓋体(図8において図示していない)8が容器7bから剥がされた状態を図示している。
【0063】
含浸体1bは、柱状、より具体的には、略円柱状に形成されている。また、含浸体1bは、下端部(下面)が容器7bの底部72(底面)に当接するように配置されている。そして、含浸体1bは、毛細現象が生じる材質で形成されているため、液体Yに浸漬されている下端部から液体Yを吸い込み、液体Yを蒸散する上端部に向けて、連続的に液体Yを供給するように構成されている。
【0064】
被覆手段2は、気化するのに伴って容積が縮小する複数の縮小体21,…と、含浸体1bを覆うように配置される被覆体22とを備える。そして、被覆手段は、複数の縮小体21,…が気化して縮小するのに伴って被覆体22が変位することで、含浸体1bの露出する領域を次第に拡大するように構成されている。
【0065】
被覆体22は、含浸体1bを覆う被覆部221と、縮小体21,…に下方側から支持される支持部222とを備える。そして、被覆体22は、剛性を有して形成されており、例えば、容器7bと同様に、浸透性(吸湿性、吸水性)を有していないプラスチック等の硬質樹脂で形成されている。
【0066】
被覆部221は、含浸体1bを内部に挿入することで、含浸体1bを覆うように円筒状に形成されている。そして、被覆部221は、自重により下降できるように、内周部が含浸体1bの外周部と離間している。即ち、被覆部221の内周部と含浸体1bの外周部との間には、隙間が形成されている。
【0067】
また、被覆部221は、各縮小体21が含浸体1bと接するのを防止すべく、含浸体1bと各縮小体21との間に配置されている。換言すると、複数の縮小体21,…は、被覆部221の外側で、軸線方向(上下方向)に沿って積み重ねられて並列されていると共に、周方向にも沿って並列されている。
【0068】
支持部222は、縮小体21,…に下方側から支持されるべく、被覆部221の上端部から径方向に突出して形成されている。即ち、支持部222は、縮小体21,…に載置できるように、被覆部221の上端部にフランジ状に形成されている。そして、支持部222は、下方側から支持する各縮小体21を気化させるべく、複数の孔部223,…を備える。
【0069】
容器7bは、開口部71bを有する上方側と底部72を有する下方側とを区画するように、径方向内方に突出する区画部73を備える。具体的には、容器7bは、上下方向における中途部が径方向内方に凹むように形成されることで、区画部73を形成している。
【0070】
区画部73は、内周部が含浸体1bと所定距離だけ離間するように形成されているため、上面に載置される縮小体21,…が含浸体1bとの間を通過するのを防止できる。さらに、区画部73は、上下方向で支持部222と重なるように、内径が支持部222の外径よりも小さくなるように形成されているため、自重で下降する被覆体22の支持部222を係止できる。
【0071】
以上のように、図8に係る蒸散具によれば、初期の段階では、図8(a)に示すように、複数の縮小体21,…に支持部222が支持されているため、被覆体22の被覆部221が含浸体1bの上方側を覆っている。そして、含浸体1bの下方側も、区画部73及び縮小体21,…並びに被覆体22より、外気とほぼ遮断されているため、初期の段階では、含浸体1aの上端部(上面)からのみ液体Yが蒸散される。
【0072】
そして、複数の縮小体21,…が経時的に気化するのに伴って、図8(b)に示すように、各縮小体21の容積が縮小するため、縮小体21,…に支持される被覆体22が下降することなる。これにより、被覆体22の被覆部221で覆われていた含浸体1bの上方側が次第に露出(開放)されるため、含浸体1bの上方側の外周部からも液体Yが蒸散できるようになる。
【0073】
なお、縮小体21が完全に気化して無くなると、被覆体22の支持部222は、容器7bの区画部73に載置することにより、区画部73に支持される。このとき、被覆体22の被覆部221の長さが所定長さに設定されているため、被覆体22の下端部が容器7bの底面と当接することなく離間している。
【0074】
また、上記実施形態に係る蒸散具においては、各縮小体21が球状に形成される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、各縮小体は、直方体状や、立方体状等に形成される構成でもよい。
【0075】
また、本発明に係る蒸散具は、液体に香りを有する例えば芳香具等である構成において、各縮小体21が香りを有する材質で形成される構成(例えば芳香剤)でもよい。斯かる構成によれば、縮小体21が気化する際には、縮小体21の有する香りと液体の有する香りとを混合させた香りとなり、縮小体21が完全に気化した後には、液体が有する香りだけとなるため、香りを変化させることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1,1a,1b…含浸体、2,2a,2b…被覆手段、7,7b…容器、8…蓋体、21…縮小体、Y…液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸散させるための液体が含浸される含浸体と、含浸体を覆うように配置される被覆手段とを備える蒸散具であって、
被覆手段は、含浸体が露出される領域を次第に拡大させるべく、気化するのに伴って容積が縮小する粒状の縮小体を複数備えることを特徴とする蒸散具。
【請求項2】
複数の縮小体は、含浸体を覆うように配置される請求項1に記載の蒸散具。
【請求項3】
液体及び縮小体のうち、一方は、油性の材質で形成されると共に、他方は、水性の材質で形成され、
縮小体は、含浸体に接して配置される請求項2に記載の蒸散具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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