説明

蒸気タービンおよび蒸気タービンプラント

【課題】 ロータを冷却させることにより、耐熱性に優れた材料である耐熱材料を用いずに製作されたロータ、もしくは、耐熱材料で製作される部分を小さくしたロータにて、高温高圧の蒸気に対応できる蒸気タービンを提供する。
【解決手段】 本発明に係る蒸気タービンは、ロータ20と、ケーシング12と、前記ロータ20と前記ケーシング12の間に形成され、蒸気を通過させるタービン通路部14と、前記ロータ20の内部に設けられた蒸気通路孔17に蒸気を流入させて前記ロータ20を冷却させるロータ冷却手段とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータを冷却する手段を備えた蒸気タービンおよび蒸気タービンプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電システムにおいて、オイルショック以来、省エネルギ化が強力に推進されており、更に近年は、地球環境保護の観点からCO2の発生量を抑制する方向にあり、高効率化へのニーズが高まっている。
【0003】
従来の蒸気タービン発電システムでは、蒸気温度が最高で600℃程度であることから、蒸気タービンのタービンロータ、ケーシング等の主要部材には、フェライト系耐熱鋼が用いられている。上述した省エネルギ化や高効率化を達成するために、蒸気タービンシステムにおいては、蒸気タービンにおける蒸気温度を高温化し、発電効率を上げることが最も有効である。
【0004】
蒸気温度が600℃以下である蒸気タービンでは、ロータ材に12Cr鋼のようなフェライト鋼をそのまま用いることができた。しかし蒸気温度が650℃を超える蒸気タービンでは、従来の構造でフェライト鋼を用いることができない。650℃を超える温度域に使用する材料としてはNi基合金が考えられるが、大型鋼塊の製造が難しく、ロータを一体で製作することは極めて困難である。
【0005】
蒸気タービンの作動流体に高温蒸気を想定した蒸気タービンのロータの案としては、例えば特許文献1乃至特許文献4がある。特許文献1は高温用ロータを分割及び溶接し、溶接部の検査を容易にする為の穴や空間部を設けている。特許文献2は高温用ロータを高温部と低温部に分割して溶接、ボルトなどの方法で接合する工夫がなされている。特許文献3は高温用ロータを高温部と低温部に分割した場合の溶接方法を示している。特許文献4は高温用ロータを高温部と低温部に細かく分割し、高温材料の組成を示している。
【特許文献1】特開2000−64805号公報
【特許文献2】特開2001−50007号公報
【特許文献3】特開2003−49223号公報
【特許文献4】特開2004−36469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
火力発電システムとして今後建設される蒸気タービンは、高い発電効率を得るためにその蒸気温度が主蒸気、再熱蒸気ともにますます上昇する傾向にあると予想される。蒸気温度が650℃を超える蒸気タービンを実現するには、タービン各部位に従来と同じフェライト鋼をそのまま使用しては蒸気タービンが高温蒸気に耐えることができない。よって、蒸気タービンの部位にNi基合金などの耐熱材料を使用する方策が多く採られるが、Ni基合金は、フェライト鋼に比べて高価であるため蒸気タービンのコスト増の要因になる。また、ロータのような大型部品を製造すると偏析が起こりやすくなるため、製作が困難である。
【0007】
本発明の目的は、ロータを冷却させることにより、耐熱性に優れた材料である耐熱材料を用いずに製作されたロータ、もしくは、耐熱材料で製作される部分を小さくしたロータにて、高温高圧の蒸気に対応できる蒸気タービンを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明においては、ロータと、ケーシングと、前記ロータと前記ケーシングの間に形成され、蒸気を通過させるタービン通路部と、前記ロータの内部に設けられた蒸気通路孔に蒸気を流入させて前記ロータを冷却させるロータ冷却手段とを備えたことを特徴とする蒸気タービンを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータを冷却させたので、耐熱性に優れた材料である耐熱材料を用いずに製作されたロータ、もしくは、耐熱材料で製作される部分を小さくしたロータにて、高温高圧の蒸気に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの断面図である。
【0012】
ケーシング12は、12枚の静翼15が取り付けられており、ロータ20は、12枚の動翼16が植え込まれている。タービン通路部14は、ケーシング12とロータ20の間に形成され、1枚の静翼15と1枚の動翼16によって構成されたタービン段落が12段配置されている。
【0013】
ロータ20の内部に設けられた蒸気通路孔17は、蒸気入口18を第9段落後のタービン通路部14に面した箇所に設け、ロータ20の内部の上流部に向かって通路を形成し、上流部で折り返してタービン通路部14に面した第10段落後に設けられた蒸気出口19まで貫通する。
【0014】
650℃の高温高圧の作動蒸気11は、蒸気タービンに流入され、タービン通路部14を流れていく。動翼16は、静翼15によって加速された作動蒸気11を受ける。これにより、ロータ20は回転する。作動蒸気11は、1つの段落を通過する毎に温度と圧力が低下する。第9段落後に低温になった作動蒸気11の一部は、ロータ冷却用蒸気13として、蒸気入口18より蒸気通路孔17へ流入し、ロータ20の内部の上流部へ伸びている通路を通過する間にロータ20を冷却して、折り返している通路を通過して第10段落後の蒸気出口19より流出する。
【0015】
蒸気出口19は、蒸気入口18よりも後段の段落後に設けられているので、蒸気出口19付近の作動蒸気は蒸気入口18付近の作動蒸気よりも低温低圧となっている。このため、圧力の高い蒸気入口18から圧力の低い蒸気出口19まで自然に作動蒸気11が流れる。
このロータ冷却手段は、冷却媒体が作動蒸気であるため、外部から冷却媒体を供給する必要のない簡素な構造とすることができる。また、ロータ20は、ロータ冷却手段にて冷却されるので、耐熱性に優れた材料である耐熱材料、すなわち、Ni基合金などを用いずに、フェライト鋼などの材料で製作することができる。耐熱材料は、高価であり、大型部品の製造では偏析が起こりやすいので、耐熱材料によるロータの製作は困難であるが、本実施の形態においては、耐熱材料を用いないため、ロータの製造が容易となる。
【0016】
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンの断面図である。
【0017】
ロータは、低温部40と、この低温部40よりも上流側にあり、低温部40に用いられる材料よりも耐熱性に優れた材料である耐熱材料にて製作された高温部41とに分割されており、これらが接合されて一体のロータを形成している。低温部40の内部に設けられた蒸気通路孔17は、蒸気入口18を第9段落後のタービン通路部14に面した箇所に設け、低温部40の内部の上流部に向かって通路を形成し、高温部手前で折り返してタービン通路部14に面した第10段落後に設けられた蒸気出口19まで貫通する。ロータが低温部40と高温部41に分割されていること以外は、第1の実施の形態と同じであるので、図1と同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0018】
耐熱材料は、高価であり、大型部品の製造では偏析が起こりやすいので、耐熱材料によるロータ全体の製作は困難であるが、本実施の形態においては、耐熱材料で製作される部分が高温部41に限定できるので、ロータの製造が容易となる。
【0019】
図3は、本発明の第3の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概要図である。
【0020】
蒸気タービンプラントは、上流側から順に、高圧タービン51、中圧タービン52、低圧タービン53、発電機54が並んでいる。蒸気は、ボイラ56、主蒸気管57、高圧タービン51、低温再熱管58、ボイラ56、高温再熱管59、中圧タービン52、クロスオーバー管60、低圧タービン53、復水器55、給水ポンプ61、ボイラ56と循環する。
【0021】
ボイラ56にて過熱された蒸気は、主蒸気管57を通って高圧タービン51に送られる。高圧タービン51に流入した蒸気は膨張仕事を行った後、排気され、低温再熱管58を通ってボイラ56に戻されて、再熱される。再熱された蒸気は高温再熱管59を通って中圧タービン52に送られる。中圧タービン52に流入した蒸気は膨張仕事を行った後、排気され、クロスオーバー管60を通って低圧タービン53に送られる。低圧タービン53に流入した蒸気は、膨張仕事を行った後、復水器55で復水され、ボイラ給水ポンプ61で昇圧されてボイラ56に還流される。発電機54はそれぞれのタービンの膨張仕事によって回転駆動され、発電する。
【0022】
高圧タービン51のロータに、第1または第2の実施の形態のロータ冷却手段を設けることにより、ロータが冷却されるので、耐熱性に優れた材料である耐熱材料を用いずに製作されたロータ、もしくは、耐熱材料で製作される部分を小さくしたロータにて、高温高圧の蒸気に対応できる蒸気タービンを得ることができる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、ロータ冷却手段を高圧タービンのロータに設けているが、高圧、中圧、低圧タービンを備えた蒸気タービンプラントの高圧、中圧タービンの少なくともいずれかひとつのタービンのロータに設けることができる。
【0024】
さらに、このロータ冷却手段は、超高圧、高圧、中圧、低圧タービンを備えた蒸気タービンプラントの超高圧、高圧、中圧タービンの少なくともいずれかひとつのタービンのロータに設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る蒸気タービンの断面図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る蒸気タービンの断面図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係る蒸気タービンプラントの概要図。
【符号の説明】
【0026】
11…作動蒸気、12…ケーシング、13…ロータ冷却用蒸気、14…タービン通路部、15…静翼、16…動翼、17…蒸気通路孔、18…蒸気入口、19…蒸気出口、20…ロータ、40…低温部、41…高温部、51…高圧タービン、52…中圧タービン、53…低圧タービン、54…発電機、55…復水器、56…ボイラ、57…主蒸気管、58…低温再熱管、59…高温再熱管、60…クロスオーバー管、61…ボイラ給水ポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、
ケーシングと、
前記ロータと前記ケーシングの間に形成され、蒸気を通過させるタービン通路部と、
前記ロータの内部に設けられた蒸気通路孔に蒸気を流入させて前記ロータを冷却させるロータ冷却手段とを備えたことを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
前記蒸気通路孔は、タービン段落後の前記タービン通路部に面した箇所に蒸気を流入させる蒸気入口を設け、前記ロータの内部の上流部に向かって通路が形成され、上流部で折り返して、前記蒸気入口よりも後段のタービン段落後に蒸気を流出させる蒸気出口を設けることを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン。
【請求項3】
前記ロータは、低温部と、この低温部よりも上流側にあり、この低温部に用いられる材料よりも耐熱性に優れた材料である耐熱材料が用いられる高温部とを有し、前記蒸気通路孔は、前記低温部のタービン段落後の前記タービン通路部に面した箇所に蒸気を流入させる蒸気入口を設け、前記低温部の上流部に向かって通路が形成され、高温部手前で折り返して、前記蒸気入口よりも後段のタービン段落後に蒸気を流出させる蒸気出口を設けることを特徴とする請求項1または2記載の蒸気タービン。
【請求項4】
高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを備えた蒸気タービンプラントにおいて、前記ロータ冷却手段は、高圧タービン、中圧タービンのうち、少なくともいずれかひとつのタービンのロータに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蒸気タービンを備えた蒸気タービンプラント。
【請求項5】
超高圧タービンと高圧タービンと中圧タービンと低圧タービンとを備えた蒸気タービンプラントにおいて、前記ロータ冷却手段は、超高圧タービン、高圧タービン、中圧タービンのうち、少なくともいずれかひとつのタービンのロータに設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蒸気タービンを備えた蒸気タービンプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−315291(P2007−315291A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−145789(P2006−145789)
【出願日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】