説明

蒸気タービンのための流入段

【課題】蒸気タービンを改良すること。
【解決手段】蒸気タービンのための流入段、特に調整段であって、当該流入段はロータに蒸気を当てるためのノズル・リング(2;3;4)を備え、当該ノズル・リングは円周方向に隣接して設けられるノズル(2.1,2.2,2.3,2.4;3.1,3.2,3.3,3.4)を有し、当該ノズルはノズル・ボックスに設けられている流入段において、前記ノズル・リングは前記ノズルを通過する蒸気の質量速度が前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービンのための流入段、特に調整段に関する。当該流入段は、ロータに蒸気を当てるためのノズル・リングを備え、当該ノズル・リングは、円周方向に隣接して設けられるノズルを有し、当該ノズルは、ノズル・ボックスに設けられている。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1から、請求項1のおいて書き部に記載の複数の流入段を備える蒸気タービンが知られている。このような蒸気タービンの調整段にとって典型的な方法で、ノズル・リングは、複数のリング部分またはノズル・セグメントを有しており、当該リング部分またはノズル・セグメントは、弁を介して選択的に制御可能であり、それにより一つまたは複数のリング部分を遮断することによってタービンを制御し、このように目標を定めて部分負荷動作領域においても運転を行う。
【0003】
特許文献1において概略的にのみ示されている部分リングは、それぞれノズル・ボックスを有しており、当該ノズル・ボックス内には、複数のノズルが円周方向に隣接して設けられている。図1(a)には、社内の実践から知られているように、複数のノズルもしくはノズル部分1.1から1.4を有して成る左上のノズル・ボックス1が示されている。蒸気は、当該ノズル・ボックス内にほぼ垂直に流入し、当該ノズル・ボックスの内部輪郭を介して個々のノズルにガイドされ、当該ノズルを介して軸方向に流出し、それによってノズル・リングの背面において調整ホイールに当たる。円周にわたって配分されて設けられている4個のノズル・ボックスのそれぞれを目標を定めて遮断することによって、調整ホイールには、四分円ごとに蒸気が当てられる。
【0004】
このとき円周方向における水力直径は、特許文献1および図1(a)から分かるように、蒸気の入り口の外側の領域において一定である。個々のノズルの大きさと個々のノズル同士の距離も、円周にわたって一定である。
【0005】
このような従来のノズル・リングでは、特に摩擦損失および転向損失ならびに蒸気の死角および蒸気の逆流によって、円周にわたって質量速度が非常に不均一なものとなる。従って、特許文献1のノズル・セグメントと同様に、図1(a)に示されているリング部分においても、蒸気の入り口から最も遠く離れているノズルに到達する蒸気は少なくなり、それによって不利なことに、ノズルおよび当該ノズルの背面側に設けられているロータの負荷が不均一となり、蒸気タービンの効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2006/024597号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、蒸気タービンを改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1のおいて書き部に記載の流入段は、当該請求項1に記載の特徴によって改良されている。請求項10は、少なくとも一つの上述のような流入段を備える蒸気タービンについて保護を請求している。従属請求項は、有利なさらなる構成に関する。
【0009】
蒸気タービンのための流入段は、単独または複数の部分から成ると共に、貫流方向において当該ノズル・リングの後段に設けられているロータに対して、円周方向に隣接して設けられた複数のノズルによって蒸気を当てるノズル・リングを有しており、当該ノズルは、ノズル・ボックスに設けられている。個々のノズルは、同じようにノズル・ボックスと一体的に形成可能またはノズル・ボックスに着脱自在または着脱不能に固定されており、特にガイド翼によって画定され得る。
【0010】
本発明におけるノズル・リングは、平面図において、以下のように構成されている。すなわちノズルを通過する蒸気の質量速度が円周にわたってほぼ一定であるように構成されるのである。これにより、蒸気タービンの効率は、改善され、ロータとノズルとの負荷は、円周にわたってより均一に配分される。
【0011】
質量速度は、例えば蒸気ボイラーのノズル・リングに供給される蒸気の密度と、蒸気の流速、特に当該流速の経線方向成分と、個々のノズルの配分および形成と、に依存している。従って、当業者は、本発明に係る一定の蒸気の質量速度を、特にこれらのパラメータの一つまたは複数を相応に構成することによって実現することができる。
【0012】
例えば本発明の好適な実施の形態において、ノズル・リングのノズルの大きさおよび/または距離は、当該ノズル・リングの円周にわたって互いに異なっており、それにより、蒸気の質量速度は、ほぼ一定になっている。
【0013】
このためにノズル・リングのノズルの経線方向の大きさ、すなわち水力直径は、ノズル・リング内への蒸気の入り口に向かって好適には単調に、特に狭義単調減少していてもよい。何故ならば、通常、当該蒸気の入り口付近ではノズル・リングにおける蒸気の質量速度が最高になる一方、当該蒸気の質量速度は上記のような流動損失のために上記の入り口からより離れているノズルに向かって減少するからである。この点は、これらのより離れているノズルがより大きな水力直径を有することによって補償され、それにより、損失によって蒸気の速度が少なくなったとき、より大きな水力直径との乗算において、通過面と当該通過面に対して垂直な流速との積として、再び同一の蒸気の質量速度が得られる。
【0014】
さらにまたはあるいは、ノズル・リングのノズルの距離は、ノズル・リング内への蒸気の入り口に向かって好適には単調に、特に狭義単調増加していてもよい。これにより、損失によって蒸気の流速が少なくなっている領域において、より多くのノズルが設けられ、当該ノズルを介してより多くの蒸気がより小さな速度で通過し、それによって再びほぼ同一の、円周にわたって一定の質量速度を有することができる。
【0015】
ノズル部分同士の距離を互いに相応に変化させることによって、有利な方法でノズル・リングからの流出および、それによってノズル・リングにおける蒸気の流速を円周にわたってほぼ一定に調整することができる。
【0016】
さらにまたはあるいは、ノズル・ボックスの内部輪郭は、蒸気の質量速度がノズル・ボックスの円周にわたってほぼ一定であるように形成されていてよい。例えばノズル・ボックスの水力内径は、円周方向において、特に当該ノズル・ボックスのほぼ円周全体にわたって、蒸気の入り口から好適には単調に、特に狭義単調減少していてもよい。このとき(狭義)単調減少するとは、当業者の間で通常の方法で、例えばノズルの大きさやノズルの距離や内部輪郭の直径などのパラメータを変化させることであり、当該変化において、当該パラメータは、円周方向において後ろの位置では円周方向において前の位置におけるよりも、常により小さい(狭義単調)、もしくは、より小さいか等しい(単調)。特に蒸気の入り口からより遠くのノズルに向かって細くなるように形成された内部輪郭を備えるこのようなノズル・ボックスにおいて、有利な方法で蒸気の経線方向の速度は、ノズル・リングにおいて当該ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定に調整され得る。
【0017】
本発明に係る流入段は、特に調整段として形成されていてもよく、当該調整段のノズル・リングは、少なくとも二つ、特に少なくとも四つの選択的に制御可能なリング部分を有している。そのとき好適には少なくとも一つのリング部分、好ましくは複数のリング部分、特に全てのリング部分は、蒸気の質量速度が当該リング部分の円周にわたってほぼ一定であるように形成されている。
【0018】
さらなる有利点および特徴は、従属請求項と実施の形態に記載されている。当該実施の形態に関して部分的に概略化して以下の通りに示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は、社内の実践による調整段の左上リング部分に対応する部分を示す横断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施の形態による調製段の左下リング部分を示す横断面図であり、(c)は、本発明の第2の実施の形態による調製段の右上リング部分を示す横断面図であり、(d)は、本発明の第3の実施の形態による調製段の右下リング部分を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図は全体として円周に沿って四つのリング部分またはノズル・ボックス1から4を示しており、これによって個々のリング部分を、ノズル・ボックス内への個々の蒸気の入り口に設けられている(図に示されていない)弁を介して、目標を定めて遮断することによって、部分負荷動作領域において調整された状態で蒸気タービンを運転することができる。本発明において、調整とは、測定値のフィードバックが行われない純粋な開ループ制御をいう。このとき個々の図は、より良い表示のために異なる実施の形態によるリング部分を共に示しており、個々の実施の形態においてその他の三つのリング部分は、当該個々の実施の形態のリング部分に置き換えて考えるべきものである。
【0021】
図1(a)は、前記の社内の実践から知られている調整段の左上リング部分1を示している。調整段は、すでに述べたように、同一構造の四つのリング部分を有しており、そのために図1(b)〜(d)の部分を、当該図1(b)〜(d)の部分に対応して反映させた図1(a)によって置き換えることによって、貫流方向における調整段全体が成立する。
【0022】
図1(a)には、四つのノズル、すなわちノズル部分1.1から1.4が示されており、t1.3=t1.4によって、円周方向における対応するノズル部分の大きさが示されている。a1.1=a1.2によって円周方向において蒸気の入り口の外側の二つの異なる箇所における水力による流れ直径が示されている。
【0023】
知られているリング部分1において、円周方向における全てのノズル部分の大きさと、蒸気の入り口の外側における水力による流れ直径は、一定であることがわかる。流動損失によって流速の配分は、著しく不均一になり、それによって質量速度の配分も不均一となる。当該質量速度は、単位時間あたりに個々のノズルを通過する蒸気量を表している。
【0024】
前記の理由により、本発明の第1の実施の形態では、同一構造の四つのリング部分2におけるノズルの大きさが異なっている。当該四つのリング部分のうち、左下リング部分は、図1(b)に示されている。図1(b)から分かるように、円周方向におけるノズルの大きさは、蒸気の入り口を起点として当該蒸気の入り口からより遠いノズルに向かって狭義単調増加し、それによって特にt2.4>t2.3が当てはまる。より大きなノズルは、以下のように実現することもできる。すなわち、これらのノズルの領域において同じ大きさの個々のノズルを他の領域におけるよりも多く設け、それによってノズル・リングのこれらのノズル同士の距離は、蒸気の入り口に向かって増大する。蒸気の入り口からより離れているリング部分2の領域には、より多くの、もしくはより大きなノズルが設けられているため、損失のためにより小さくなった流速は、当該境界領域において補償され、それによって、蒸気の質量流量は、円周にわたってほぼ一定となる。
【0025】
本発明の第2の実施の形態では、同一構造の四つのリング部分3のノズル・ボックスの内部輪郭は、蒸気の質量速度が当該リング部分の円周にわたってほぼ一定となるように形成されている。当該四つのリング部分のうち、右上リング部分が図1(c)に示されている。このために、ノズル・ボックスの水力内径は、円周方向において、当該ノズル・ボックスの円周全体にわたって蒸気の入り口から狭義単調減少し、それによって特にa3.1<a3.2が当てはまる。それにより、蒸気の入り口からより離れているリング部分3の領域において蒸気は、加速され、それにより、損失による流速の減少は、当該境界領域において補償され、蒸気の質量流量は、円周にわたってほぼ一定となる。
【0026】
本発明の第3の実施の形態では、第1の実施の形態と第2の実施の形態が組み合わされ、それによって右下リング部分が図1(d)に示されている同一構造の四つのリング部分4において、円周方向におけるノズルの大きさは蒸気の入り口を起点として当該蒸気の入り口からより遠いノズルに向かって増加し、それに対してノズル・ボックスの水力内径は減少する。
【符号の説明】
【0027】
1 リング部分
1.1,1.2,1.3,1.4 ノズル
2 リング部分
2.1,2.2,2.3,2.4 ノズル
3 リング部分
3.1,3.2,3.3,3.4 ノズル
4 リング部分
a1.1,a1.2
a3.1,a3.2 水力内径
t1.3,t1.4
t3.4,t3.4 ノズルの大きさ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気タービンのための流入段、特に調整段であって、
当該流入段は、ロータに蒸気を当てるためのノズル・リング(2;3;4)を備え、
当該ノズル・リングは、円周方向に隣接して設けられるノズル(2.1,2.2,2.3,2.4;3.1,3.2,3.3,3.4)を有し、
当該ノズルは、ノズル・ボックスに設けられている流入段において、
前記ノズル・リングは、前記ノズルを通過する蒸気の質量速度が前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であるように形成されていることを特徴とする流入段。
【請求項2】
前記ノズル・リング(2;4)の前記ノズルの大きさ(t2.3,t2.4)および/または距離は、当該ノズル・リングの円周にわたって互いに異なっており、
それにより、蒸気の質量速度は、前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であることを特徴とする請求項1に記載の流入段。
【請求項3】
前記ノズル・リング(2;4)の前記ノズルの大きさ(t2.3,t2.4)は、前記ノズル・リング内への蒸気の入口に向かって減少することを特徴とする請求項2に記載の流入段。
【請求項4】
前記ノズル・リングの前記ノズル同士の距離は、前記ノズル・リング内への蒸気の入口に向かって増加することを特徴とする請求項2または3に記載の流入段。
【請求項5】
前記ノズル・リングにおいて前記蒸気の流速は、前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の流入段。
【請求項6】
前記ノズル・ボックスの内部輪郭は、蒸気の質量速度が当該リング部分の円周にわたってほぼ一定となるように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の流入段。
【請求項7】
前記ノズル・ボックスの水力内径(a3.1,a3.2)は、円周方向において、特に当該ノズル・ボックスの円周全体にわたって蒸気の入り口から減少することを特徴とする請求項6に記載の流入段。
【請求項8】
前記ノズル・リングにおいて前記蒸気のメリディアン分速度は、前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の流入段。
【請求項9】
前記ノズル・リングは少なくとも二つ、特に少なくとも四つの選択的に制御可能なリング部分(2;3;4)を有しており、
少なくとも一つのリング部分は、蒸気の質量速度が当該リング部分の円周にわたってほぼ一定であるように形成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載の調整段。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の流入段を備える蒸気タービンであって、
当該蒸気タービンはロータと、調整ホイールに蒸気を当てるためのノズル・リングを有しており、
前記ノズル・リングは、蒸気の質量速度が前記ノズル・リングの円周にわたってほぼ一定であるように形成されている蒸気タービン。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−144717(P2010−144717A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275597(P2009−275597)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(501473888)マン ターボ アーゲー (21)
【氏名又は名称原語表記】MAN TURBO AG
【Fターム(参考)】