蒸気タービン低圧車室
【課題】軸受箱が車室支持タイプであり、しかも、低圧蒸気タービンの定格回転数付近でコーン部が振動してロータ回転軸の振動が増大するという共振問題を回避することが可能な蒸気タービン低圧車室を提供する。
【解決手段】低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が水平に配置され、ロータ回転軸22の軸方向の両側にはコーン部23が形成されており、これらのコーン部23内に設けられた軸受箱24の軸受24aによってロータ回転軸22が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室21において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器25を、コーン部23に取り付けた構成とする。また、動吸振器25は、コーン部23内の底面23aに基端26aが固定されて水平に延びた板ばね26と、板ばね26の先端26bに固定された錘27と、錘27と床面31との間に介設されたダンパ28とを備えた構成とする。
【解決手段】低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が水平に配置され、ロータ回転軸22の軸方向の両側にはコーン部23が形成されており、これらのコーン部23内に設けられた軸受箱24の軸受24aによってロータ回転軸22が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室21において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器25を、コーン部23に取り付けた構成とする。また、動吸振器25は、コーン部23内の底面23aに基端26aが固定されて水平に延びた板ばね26と、板ばね26の先端26bに固定された錘27と、錘27と床面31との間に介設されたダンパ28とを備えた構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービン低圧車室に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示す従来の蒸気タービン低圧車室1は、軸受箱4を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図12に示すように、蒸気タービン低圧車室1には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸2が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸2の軸方向(図12の左右方向)の両側には、コーン部3が形成されている。これらのコーン部3は、蒸気タービン低圧車室1における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室1の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0003】
そして、軸受箱4は両側のコーン部3内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部3(即ち蒸気タービン低圧車室1)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱4内に設けられた軸受4aによってロータ回転軸2を回転可能に支持している。
【0004】
しかし、このような車室支持タイプの蒸気タービン低圧車室1の場合、低圧蒸気タービン(ロータ回転軸2)の定格回転数(例えば3000rpm)付近において、図13に示すようにコーン部3が振動(共振)するモードが存在し、このコーン部3の振動によって、ロータ回転軸2の振動が増大するという問題が発生するおそれがある。これは前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)付近にコーン部3の固有振動数が存在するためである。
【0005】
このような問題の対策として、図14に示すような軸受箱14を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室11が知られている。詳述すると、図14に示すように、蒸気タービン低圧車室11には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸12が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸12の軸方向(図14の左右方向)の両側には、コーン部13が形成されている。
【0006】
そして、軸受箱14は、コーン部13の外に配設されて基礎15に支持されており(基礎支持タイプ)、軸受箱14内に設けられた軸受14aによってロータ回転軸12を回転可能に支持している。この場合、蒸気タービン低圧車室11(コーン部13)と軸受箱14の縁が切られているため、コーン部13の振動によってロータ回転軸12の振動が増大するという問題が発生するおそれはない。
なお、軸受箱を基礎支持タイプとした蒸気タービン低圧車室が開示されている先行技術文献としては、下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3595438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように従来の蒸気タービン低圧車室11では軸受箱14を基礎支持タイプとしたが、この場合には図15に示すような問題がある。
【0009】
即ち、車室支持タイプの場合に比べて基礎支持タイプの場合には、軸受14aのスパンが長くなるというデメリットが存在し(S1)、ロータ回転軸12の危険速度が低下する危険性がある(S2)。従って、現状では、このような危険を回避するため、ロータ回転軸12を太くすることによってロータ回転軸12の危険速度が低下するのを防いでいる(S3)。しかし、それに伴って軸受14a(軸受箱14)も大きくなり(S3)、全体として蒸気タービン低圧車室11の製造コストが高くなる傾向にある(S4)。
【0010】
従って本発明は上記の事情に鑑み、軸受箱が車室支持タイプであり、しかも、低圧蒸気タービンの定格回転数付近でコーン部が振動してロータ回転軸の振動が増大するという共振問題を回避することが可能な蒸気タービン低圧車室を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する第1発明の蒸気タービン低圧車室は、低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、
前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、第2発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、
前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、
前記板ばねの先端に固定された錘と、
前記錘と支持部との間に介設されたダンパと、
を備えた構成であることを特徴とする。
【0013】
また、第3発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴とする。
【0014】
また、第4発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、
前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘と、
を備えた構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の蒸気タービン低圧車室によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴としているため、前記動吸振器によって、前記コーン部の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近で前記コーン部が振動して前記ロータ回転軸の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0016】
第2発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、前記板ばねの先端に固定された錘と、前記錘と支持部との間に介設されたダンパとを備えた構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られ、しかも、前記動吸振器の構成が簡易で製作が容易である。
【0017】
第3発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られる。しかも、前記動吸振器錘は錘を接着剤で接着するという非常に簡易な構成であるため、製作後の蒸気タービン低圧車室に取り付けることも可能である。このため、製作後の蒸気タービン低圧車室に共振問題が発生したとき、この共振問題を回避する手法として利用することもできる。
【0018】
第4発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘とを備えた構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られ、しかも、前記動吸振器の構成が簡易で製作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器の構成図である。
【図4】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器のモデル図である。
【図5】本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図6】図5のB部拡大図である。
【図7】図6のC−C線矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器のモデル図である。
【図9】本発明の実施の形態例3に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図10】図9のD部拡大図である。
【図11】図10のE−E線矢視図である。
【図12】軸受箱を車室支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図13】軸受箱を車室支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室におけるコーン部及びロータ回転軸の振動状態を示す図である。
【図14】軸受箱を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図15】軸受箱を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室における問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<実施の形態例1>
図1〜図4に基づき、本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0022】
図1に示す本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21は、軸受箱24を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図1に示すように、蒸気タービン低圧車室21には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸22の軸方向(図1の左右方向)の両側には、コーン部23が形成されている。これらのコーン部23は、蒸気タービン低圧車室21における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室21の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0023】
軸受箱24は両側のコーン部23内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部23(即ち蒸気タービン低圧車室21)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱24内に設けられた軸受24aによってロータ回転軸22を回転可能に支持している。
【0024】
そして、コーン部23には動吸振器25が取り付けられている。この動吸振器25は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器25の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0025】
図2〜図4に基づき、動吸振器25の構成について詳述する。なお、図2〜4には右側のコーン部23に取り付けた動吸振器25を示している。左側のコーン部23に取り付けた動吸振器25については、右側のコーン部23に取り付けた動吸振器25と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0026】
図2及び図3に示すように、動吸振器25は、板ばね26と錘27とダンパ28とを備えた構成のものである。
板ばね26は、溶接やボルトなどの固定手段により、基端26aがコーン部23内の底面23aに固定されて、水平(前記軸方向)に延びている。従って、板ばね26は、図中に矢印a2で示すように上下方向(鉛直方向)に振動可能である。
錘27は直方体状のものであり、溶接やボルトなどの固定手段により、板ばね26の先端26bに固定されている。なお、錘27は直方体状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘27としては、金属製のものやプラスチック製のものなどを用いることができる。
ダンパ28は、溶接やボルトなどの固定手段によって両端が錘27と床面31(支持部)とにそれぞれ固定されることにより、錘27と床面31(支持部)との間に介設されている。床面31はメンテナンス作業などのためにボルトなどの固定手段によって基礎32に固定されたものであり、コーン部23に繋がっていないため、コーン部23とともに振動することはない。なお、ダンパ28を取り付ける支持部としては、床面31に限定するものではなく、コーン部23とともに振動しない箇所であればよい。
【0027】
図4のモデル図において、Kは板ばね26のばね定数、Mは錘27の質量、Cはダンパ28の減衰係数である。動吸振器25は、板ばね26のばね定数Kの値と錘27の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、下記の[数1]式(固有振動数の式)で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【数1】
【0028】
図2及び図4に示すように、矢印a1の如くコーン部23が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印a2の如く動吸振器25の板ばね26、錘27及びダンパ28も上下方向に振動し、ダンパ28が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器25は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部23の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が水平に配置され、ロータ回転軸22の軸方向の両側にはコーン部23が形成されており、これらのコーン部23内に設けられた軸受箱24の軸受24aによってロータ回転軸22が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室21において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器25が、コーン部23に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器25によって、コーン部23の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱24が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部23が振動してロータ回転軸22の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0030】
しかも、本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21によれば、動吸振器25は、コーン部23内の底面23aに基端26aが固定されて水平に延びた板ばね26と、板ばね26の先端26bに固定された錘27と、錘27と床面31との間に介設されたダンパ28とを備えた構成であることを特徴としているため、動吸振器25の構成が簡易で製作が容易である。
【0031】
<実施の形態例2>
図5〜図8に基づき、本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0032】
図5に示す本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41は、軸受箱44を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図5に示すように、蒸気タービン低圧車室41には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸42が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸42の軸方向(図5の左右方向)の両側には、コーン部43が形成されている。これらのコーン部43は、蒸気タービン低圧車室41における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室41の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0033】
軸受箱44は両側のコーン部43内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部43(即ち蒸気タービン低圧車室41)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱44内に設けられた軸受44aによってロータ回転軸42を回転可能に支持している。
【0034】
そして、コーン部43には動吸振器45が取り付けられている。この動吸振器25は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器25の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0035】
図6〜図8に基づき、動吸振器45の構成について詳述する。なお、図6〜8には右側のコーン部43に取り付けた動吸振器45を示している。左側のコーン部43に取り付けた動吸振器45については、右側のコーン部43に取り付けた動吸振器45と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0036】
図6及び図7に示すように、動吸振器45は、コーン部43の内周面43aの上部43a−1に接着剤46で錘47を接着した構成のものである。錘47は、板状で且つコーン部43の内周面43aの周方向に沿った円弧状(図7)のものである。なお、錘47は円弧状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘47としては、金属板やプラスチック板などを用いることができる。
【0037】
図8のモデル図に示すように、接着剤46は、振動時にばね(弾性体)46aとダンパ46bが並列に接続された状態のものとして機能する。即ち、接着剤46としては、振動時にばね(弾性)及びダンパ(減衰)としての機能を発揮するものであればよく、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤などを用いることができる。
【0038】
図8のモデル図において、Kはばね46aとして機能する接着剤46のばね定数、Mは錘47の質量、Cはダンパ46bとして機能する接着剤46の減衰係数である。動吸振器45は、接着剤46(ばね46a)のばね定数Kの値と錘47の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、上記の[数1]式で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0039】
図6及び図8に示すように、矢印b1の如くコーン部43が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印b2の如く動吸振器45の接着剤46(ばね46a、ダンパ46b)及び錘27も上下方向に振動し、ダンパ46bとして機能する接着剤46が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器45は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部43の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸42が水平に配置され、ロータ回転軸42の軸方向の両側にはコーン部43が形成されており、これらのコーン部43内に設けられた軸受箱44の軸受44aによってロータ回転軸42が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室41において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器45が、コーン部43に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器45によって、コーン部43の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱44が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部43が振動してロータ回転軸42の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0041】
しかも、本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41によれば、動吸振器45は、コーン部43の内周面43aの上部43a−1に接着剤46で錘47を接着した構成であることを特徴としている。従って、動吸振器錘45は錘47を接着剤46で接着するという非常に簡易な構成であるため、製作後の蒸気タービン低圧車室41に取り付けることも可能である。このため、製作後の蒸気タービン低圧車室41に共振問題が発生したとき、この共振問題を回避する手法として利用することもできる。
【0042】
<実施の形態例3>
図9〜図11に基づき、本発明の実施の形態例3に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0043】
図9に示す本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51は、軸受箱54を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図9に示すように、蒸気タービン低圧車室51には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸52が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸52の軸方向(図9の左右方向)の両側には、コーン部53が形成されている。これらのコーン部53は、蒸気タービン低圧車室51における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室51の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0044】
軸受箱54は両側のコーン部53内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部53(即ち蒸気タービン低圧車室51)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱54内に設けられた軸受54aによってロータ回転軸52を回転可能に支持している。
【0045】
そして、コーン部53には動吸振器55が取り付けられている。この動吸振器55は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器55の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0046】
図10及び図11に基づき、動吸振器55の構成について詳述する。なお、図10には右側のコーン部53に取り付けた動吸振器55を示している。左側のコーン部53に取り付けた動吸振器55については、右側のコーン部53に取り付けた動吸振器55と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0047】
図10及び図11に示すように、動吸振器55は、コイルばね56と錘57とダンパ58とを備えた構成のものである。
コイルばね56は、溶接やボルトなどの固定手段により、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端56aが固定されている。
ダンパ58は、溶接やボルトなどの固定手段により、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端58aが固定されている。即ち、コイルばね56とダンパ58は、並列に接続した状態となっている。
錘57は直方体状のものであり、溶接やボルトなどの固定手段により、コイルばね56の下端56b及びダンパ58の下端58bに固定されている。なお、錘57は直方体状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘57としては、金属製のものやプラスチック製のものなどを用いることができる。
【0048】
図11において、Kはコイルばね56のばね定数、Mは錘57の質量、Cはダンパ58の減衰係数である。動吸振器55は、コイルばね56のばね定数Kの値と錘57の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、上記の[数1]式で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0049】
図10及び図11に示すように、矢印c1の如くコーン部53が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印c2の如く動吸振器55のコイルばね56、錘57及びダンパ58も上下方向に振動し、ダンパ58が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器55は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部53の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸52が水平に配置され、ロータ回転軸52の軸方向の両側にはコーン部53が形成されており、これらのコーン部53内に設けられた軸受箱54の軸受54aによってロータ回転軸52が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室51において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器55が、コーン部53に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器55によって、コーン部53の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱54が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部53が振動してロータ回転軸52の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0051】
しかも、本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51によれば、動吸振器55は、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端56aが固定されて上下方向に伸縮可能なコイルばね56と、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端58aが固定されたダンパ58と、コイルばね56の下端56b及びダンパ58の下端58aに固定された錘57とを備えた構成であることを特徴としているため、動吸振器55の構成が簡易で製作が容易である。
【0052】
なお、上記では弾性体の一例としてコイルばね56を用いているが、これに限定するものではなく、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は蒸気タービン低圧車室に関するものであり、軸受箱が車室支持タイプの蒸気タービン低圧車室に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0054】
21 蒸気タービン低圧車室
22 ロータ回転軸
23 コーン部
23a 底面
24 軸受箱
24a 軸受
25 動吸振器
26 板ばね
26a 基端
26b 先端
27 錘
28 ダンパ
31 床面
32 基礎
41 蒸気タービン低圧車室
42 ロータ回転軸
43 コーン部
43a 内周面
43a−1 上部
44 軸受箱
44a 軸受
45 動吸振器
46 接着剤
46a ばね
46b ダンパ
47 錘
51 蒸気タービン低圧車室
52 ロータ回転軸
53 コーン部
53a 内周面
53a−1 上部
54 軸受箱
54a 軸受
55 動吸振器
56 コイルばね
56a 上端
56b 下端
57 錘
58 ダンパ
58a 上端
58b 下端
【技術分野】
【0001】
本発明は蒸気タービン低圧車室に関する。
【背景技術】
【0002】
図12に示す従来の蒸気タービン低圧車室1は、軸受箱4を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図12に示すように、蒸気タービン低圧車室1には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸2が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸2の軸方向(図12の左右方向)の両側には、コーン部3が形成されている。これらのコーン部3は、蒸気タービン低圧車室1における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室1の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0003】
そして、軸受箱4は両側のコーン部3内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部3(即ち蒸気タービン低圧車室1)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱4内に設けられた軸受4aによってロータ回転軸2を回転可能に支持している。
【0004】
しかし、このような車室支持タイプの蒸気タービン低圧車室1の場合、低圧蒸気タービン(ロータ回転軸2)の定格回転数(例えば3000rpm)付近において、図13に示すようにコーン部3が振動(共振)するモードが存在し、このコーン部3の振動によって、ロータ回転軸2の振動が増大するという問題が発生するおそれがある。これは前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)付近にコーン部3の固有振動数が存在するためである。
【0005】
このような問題の対策として、図14に示すような軸受箱14を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室11が知られている。詳述すると、図14に示すように、蒸気タービン低圧車室11には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸12が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸12の軸方向(図14の左右方向)の両側には、コーン部13が形成されている。
【0006】
そして、軸受箱14は、コーン部13の外に配設されて基礎15に支持されており(基礎支持タイプ)、軸受箱14内に設けられた軸受14aによってロータ回転軸12を回転可能に支持している。この場合、蒸気タービン低圧車室11(コーン部13)と軸受箱14の縁が切られているため、コーン部13の振動によってロータ回転軸12の振動が増大するという問題が発生するおそれはない。
なお、軸受箱を基礎支持タイプとした蒸気タービン低圧車室が開示されている先行技術文献としては、下記の特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3595438号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように従来の蒸気タービン低圧車室11では軸受箱14を基礎支持タイプとしたが、この場合には図15に示すような問題がある。
【0009】
即ち、車室支持タイプの場合に比べて基礎支持タイプの場合には、軸受14aのスパンが長くなるというデメリットが存在し(S1)、ロータ回転軸12の危険速度が低下する危険性がある(S2)。従って、現状では、このような危険を回避するため、ロータ回転軸12を太くすることによってロータ回転軸12の危険速度が低下するのを防いでいる(S3)。しかし、それに伴って軸受14a(軸受箱14)も大きくなり(S3)、全体として蒸気タービン低圧車室11の製造コストが高くなる傾向にある(S4)。
【0010】
従って本発明は上記の事情に鑑み、軸受箱が車室支持タイプであり、しかも、低圧蒸気タービンの定格回転数付近でコーン部が振動してロータ回転軸の振動が増大するという共振問題を回避することが可能な蒸気タービン低圧車室を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する第1発明の蒸気タービン低圧車室は、低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、
前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
また、第2発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、
前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、
前記板ばねの先端に固定された錘と、
前記錘と支持部との間に介設されたダンパと、
を備えた構成であることを特徴とする。
【0013】
また、第3発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴とする。
【0014】
また、第4発明の蒸気タービン低圧車室は、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、
前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘と、
を備えた構成であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
第1発明の蒸気タービン低圧車室によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴としているため、前記動吸振器によって、前記コーン部の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近で前記コーン部が振動して前記ロータ回転軸の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0016】
第2発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、前記板ばねの先端に固定された錘と、前記錘と支持部との間に介設されたダンパとを備えた構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られ、しかも、前記動吸振器の構成が簡易で製作が容易である。
【0017】
第3発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られる。しかも、前記動吸振器錘は錘を接着剤で接着するという非常に簡易な構成であるため、製作後の蒸気タービン低圧車室に取り付けることも可能である。このため、製作後の蒸気タービン低圧車室に共振問題が発生したとき、この共振問題を回避する手法として利用することもできる。
【0018】
第4発明の蒸気タービン低圧車室によれば、第1発明の蒸気タービン低圧車室において、前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘とを備えた構成であることを特徴としているため、前記動吸振器によって上記第1発明と同様の作用効果が得られ、しかも、前記動吸振器の構成が簡易で製作が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器の構成図である。
【図4】本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器のモデル図である。
【図5】本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図6】図5のB部拡大図である。
【図7】図6のC−C線矢視図である。
【図8】本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室に装備された動吸振器のモデル図である。
【図9】本発明の実施の形態例3に係る蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図10】図9のD部拡大図である。
【図11】図10のE−E線矢視図である。
【図12】軸受箱を車室支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図13】軸受箱を車室支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室におけるコーン部及びロータ回転軸の振動状態を示す図である。
【図14】軸受箱を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室の構成図である。
【図15】軸受箱を基礎支持タイプとした従来の蒸気タービン低圧車室における問題点を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<実施の形態例1>
図1〜図4に基づき、本発明の実施の形態例1に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0022】
図1に示す本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21は、軸受箱24を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図1に示すように、蒸気タービン低圧車室21には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸22の軸方向(図1の左右方向)の両側には、コーン部23が形成されている。これらのコーン部23は、蒸気タービン低圧車室21における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室21の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0023】
軸受箱24は両側のコーン部23内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部23(即ち蒸気タービン低圧車室21)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱24内に設けられた軸受24aによってロータ回転軸22を回転可能に支持している。
【0024】
そして、コーン部23には動吸振器25が取り付けられている。この動吸振器25は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器25の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0025】
図2〜図4に基づき、動吸振器25の構成について詳述する。なお、図2〜4には右側のコーン部23に取り付けた動吸振器25を示している。左側のコーン部23に取り付けた動吸振器25については、右側のコーン部23に取り付けた動吸振器25と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0026】
図2及び図3に示すように、動吸振器25は、板ばね26と錘27とダンパ28とを備えた構成のものである。
板ばね26は、溶接やボルトなどの固定手段により、基端26aがコーン部23内の底面23aに固定されて、水平(前記軸方向)に延びている。従って、板ばね26は、図中に矢印a2で示すように上下方向(鉛直方向)に振動可能である。
錘27は直方体状のものであり、溶接やボルトなどの固定手段により、板ばね26の先端26bに固定されている。なお、錘27は直方体状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘27としては、金属製のものやプラスチック製のものなどを用いることができる。
ダンパ28は、溶接やボルトなどの固定手段によって両端が錘27と床面31(支持部)とにそれぞれ固定されることにより、錘27と床面31(支持部)との間に介設されている。床面31はメンテナンス作業などのためにボルトなどの固定手段によって基礎32に固定されたものであり、コーン部23に繋がっていないため、コーン部23とともに振動することはない。なお、ダンパ28を取り付ける支持部としては、床面31に限定するものではなく、コーン部23とともに振動しない箇所であればよい。
【0027】
図4のモデル図において、Kは板ばね26のばね定数、Mは錘27の質量、Cはダンパ28の減衰係数である。動吸振器25は、板ばね26のばね定数Kの値と錘27の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、下記の[数1]式(固有振動数の式)で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【数1】
【0028】
図2及び図4に示すように、矢印a1の如くコーン部23が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印a2の如く動吸振器25の板ばね26、錘27及びダンパ28も上下方向に振動し、ダンパ28が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器25は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部23の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0029】
以上のように、本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸22が水平に配置され、ロータ回転軸22の軸方向の両側にはコーン部23が形成されており、これらのコーン部23内に設けられた軸受箱24の軸受24aによってロータ回転軸22が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室21において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器25が、コーン部23に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器25によって、コーン部23の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱24が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部23が振動してロータ回転軸22の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0030】
しかも、本実施の形態例1の蒸気タービン低圧車室21によれば、動吸振器25は、コーン部23内の底面23aに基端26aが固定されて水平に延びた板ばね26と、板ばね26の先端26bに固定された錘27と、錘27と床面31との間に介設されたダンパ28とを備えた構成であることを特徴としているため、動吸振器25の構成が簡易で製作が容易である。
【0031】
<実施の形態例2>
図5〜図8に基づき、本発明の実施の形態例2に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0032】
図5に示す本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41は、軸受箱44を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図5に示すように、蒸気タービン低圧車室41には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸42が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸42の軸方向(図5の左右方向)の両側には、コーン部43が形成されている。これらのコーン部43は、蒸気タービン低圧車室41における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室41の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0033】
軸受箱44は両側のコーン部43内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部43(即ち蒸気タービン低圧車室41)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱44内に設けられた軸受44aによってロータ回転軸42を回転可能に支持している。
【0034】
そして、コーン部43には動吸振器45が取り付けられている。この動吸振器25は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器25の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0035】
図6〜図8に基づき、動吸振器45の構成について詳述する。なお、図6〜8には右側のコーン部43に取り付けた動吸振器45を示している。左側のコーン部43に取り付けた動吸振器45については、右側のコーン部43に取り付けた動吸振器45と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0036】
図6及び図7に示すように、動吸振器45は、コーン部43の内周面43aの上部43a−1に接着剤46で錘47を接着した構成のものである。錘47は、板状で且つコーン部43の内周面43aの周方向に沿った円弧状(図7)のものである。なお、錘47は円弧状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘47としては、金属板やプラスチック板などを用いることができる。
【0037】
図8のモデル図に示すように、接着剤46は、振動時にばね(弾性体)46aとダンパ46bが並列に接続された状態のものとして機能する。即ち、接着剤46としては、振動時にばね(弾性)及びダンパ(減衰)としての機能を発揮するものであればよく、エポキシ系接着剤やシリコン系接着剤などを用いることができる。
【0038】
図8のモデル図において、Kはばね46aとして機能する接着剤46のばね定数、Mは錘47の質量、Cはダンパ46bとして機能する接着剤46の減衰係数である。動吸振器45は、接着剤46(ばね46a)のばね定数Kの値と錘47の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、上記の[数1]式で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0039】
図6及び図8に示すように、矢印b1の如くコーン部43が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印b2の如く動吸振器45の接着剤46(ばね46a、ダンパ46b)及び錘27も上下方向に振動し、ダンパ46bとして機能する接着剤46が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器45は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部43の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0040】
以上のように、本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸42が水平に配置され、ロータ回転軸42の軸方向の両側にはコーン部43が形成されており、これらのコーン部43内に設けられた軸受箱44の軸受44aによってロータ回転軸42が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室41において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器45が、コーン部43に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器45によって、コーン部43の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱44が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部43が振動してロータ回転軸42の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0041】
しかも、本実施の形態例2の蒸気タービン低圧車室41によれば、動吸振器45は、コーン部43の内周面43aの上部43a−1に接着剤46で錘47を接着した構成であることを特徴としている。従って、動吸振器錘45は錘47を接着剤46で接着するという非常に簡易な構成であるため、製作後の蒸気タービン低圧車室41に取り付けることも可能である。このため、製作後の蒸気タービン低圧車室41に共振問題が発生したとき、この共振問題を回避する手法として利用することもできる。
【0042】
<実施の形態例3>
図9〜図11に基づき、本発明の実施の形態例3に係る蒸気タービン低圧車室の構成について説明する。
【0043】
図9に示す本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51は、軸受箱54を車室支持タイプとしたものである。詳述すると、図9に示すように、蒸気タービン低圧車室51には、低圧蒸気タービンのロータ回転軸52が、水平に配置されている(ロータ全体の構造などについては図示を省略している)。ロータ回転軸52の軸方向(図9の左右方向)の両側には、コーン部53が形成されている。これらのコーン部53は、蒸気タービン低圧車室51における前記軸方向の両側の端面を、蒸気タービン低圧車室51の内側(前記軸方向)に窪ませた形状の凹部である。
【0044】
軸受箱54は両側のコーン部53内にそれぞれ設けられて、これらのコーン部53(即ち蒸気タービン低圧車室51)に支持されており(車室支持タイプ)、軸受箱54内に設けられた軸受54aによってロータ回転軸52を回転可能に支持している。
【0045】
そして、コーン部53には動吸振器55が取り付けられている。この動吸振器55は、低圧蒸気タービンの定格回転数(例えば3000rpm)に合わせて固有振動数を調整したものである。即ち、動吸振器55の固有振動数が、前記定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0046】
図10及び図11に基づき、動吸振器55の構成について詳述する。なお、図10には右側のコーン部53に取り付けた動吸振器55を示している。左側のコーン部53に取り付けた動吸振器55については、右側のコーン部53に取り付けた動吸振器55と同様の構成であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0047】
図10及び図11に示すように、動吸振器55は、コイルばね56と錘57とダンパ58とを備えた構成のものである。
コイルばね56は、溶接やボルトなどの固定手段により、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端56aが固定されている。
ダンパ58は、溶接やボルトなどの固定手段により、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端58aが固定されている。即ち、コイルばね56とダンパ58は、並列に接続した状態となっている。
錘57は直方体状のものであり、溶接やボルトなどの固定手段により、コイルばね56の下端56b及びダンパ58の下端58bに固定されている。なお、錘57は直方体状に限らず、適宜の形状とすることができる。また、錘57としては、金属製のものやプラスチック製のものなどを用いることができる。
【0048】
図11において、Kはコイルばね56のばね定数、Mは錘57の質量、Cはダンパ58の減衰係数である。動吸振器55は、コイルばね56のばね定数Kの値と錘57の質量Mの値の何れか又は両方が調整されることにより、上記の[数1]式で表される固有振動数Fが、低圧蒸気タービンの定格回転数における振動数(例えば50Hz)に等しくなるように調整されている。
【0049】
図10及び図11に示すように、矢印c1の如くコーン部53が上下方向(鉛直方向)に振動するとき、矢印c2の如く動吸振器55のコイルばね56、錘57及びダンパ58も上下方向に振動し、ダンパ58が前記振動のエネルギーを吸収して前記振動を減衰させる。即ち、動吸振器55は、その固有振動数Fが、前記定格回転数における振動数に等しくなるように調整されているため、コーン部53の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。
【0050】
以上のように、本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51によれば、低圧蒸気タービンのロータ回転軸52が水平に配置され、ロータ回転軸52の軸方向の両側にはコーン部53が形成されており、これらのコーン部53内に設けられた軸受箱54の軸受54aによってロータ回転軸52が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室51において、低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器55が、コーン部53に取り付けられていることを特徴としているため、この動吸振器55によって、コーン部53の前記定格回転数における振動を減衰させることができる。このため、軸受箱54が車室支持タイプであっても、前記定格回転数付近でコーン部53が振動してロータ回転軸52の振動が増大するという共振問題を回避することができる。
【0051】
しかも、本実施の形態例3の蒸気タービン低圧車室51によれば、動吸振器55は、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端56aが固定されて上下方向に伸縮可能なコイルばね56と、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端58aが固定されたダンパ58と、コイルばね56の下端56b及びダンパ58の下端58aに固定された錘57とを備えた構成であることを特徴としているため、動吸振器55の構成が簡易で製作が容易である。
【0052】
なお、上記では弾性体の一例としてコイルばね56を用いているが、これに限定するものではなく、コーン部53の内周面53aの上部53a−1に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は蒸気タービン低圧車室に関するものであり、軸受箱が車室支持タイプの蒸気タービン低圧車室に適用して有用なものである。
【符号の説明】
【0054】
21 蒸気タービン低圧車室
22 ロータ回転軸
23 コーン部
23a 底面
24 軸受箱
24a 軸受
25 動吸振器
26 板ばね
26a 基端
26b 先端
27 錘
28 ダンパ
31 床面
32 基礎
41 蒸気タービン低圧車室
42 ロータ回転軸
43 コーン部
43a 内周面
43a−1 上部
44 軸受箱
44a 軸受
45 動吸振器
46 接着剤
46a ばね
46b ダンパ
47 錘
51 蒸気タービン低圧車室
52 ロータ回転軸
53 コーン部
53a 内周面
53a−1 上部
54 軸受箱
54a 軸受
55 動吸振器
56 コイルばね
56a 上端
56b 下端
57 錘
58 ダンパ
58a 上端
58b 下端
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、
前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、
前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、
前記板ばねの先端に固定された錘と、
前記錘と支持部との間に介設されたダンパと、
を備えた構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、
前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘と、
を備えた構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項1】
低圧蒸気タービンのロータ回転軸が水平に配置され、前記ロータ回転軸の軸方向の両側にはコーン部が形成されており、これらのコーン部内に設けられた軸受箱の軸受によって前記ロータ回転軸が回転可能に支持されている構成の蒸気タービン低圧車室において、
前記低圧蒸気タービンの定格回転数に合わせて固有振動数が調整された動吸振器が、前記コーン部に取り付けられていることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項2】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、
前記コーン部内の底面に基端が固定されて水平に延びた板ばねと、
前記板ばねの先端に固定された錘と、
前記錘と支持部との間に介設されたダンパと、
を備えた構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項3】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、前記コーン部の内周面の上部に接着剤で錘を接着した構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【請求項4】
請求項1に記載の蒸気タービン低圧車室において、
前記動吸振器は、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されて上下方向に伸縮可能な弾性体と、
前記コーン部の内周面の上部に上端が固定されたダンパと、
前記弾性体の下端及び前記ダンパの下端に固定された錘と、
を備えた構成であることを特徴とする蒸気タービン低圧車室。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−104297(P2013−104297A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246143(P2011−246143)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
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