説明

蒸気タービン

【課題】復水損失を低減して、湿り損失の低減を図ることができる蒸気タービンを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る蒸気タービンでは、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にある第3段落における段落圧力比(段落入口圧力(P3in)/段落出口圧力(P3out))あるいは断熱熱落差(Δha3)が、第3段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落圧力比あるいは断熱熱落差よりも小さくなるように設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿り損失を低減可能な蒸気タービンに係り、特に湿り損失のうちの復水損失を低減可能な蒸気タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンの更なる性能向上を実現するためには、蒸気タービン特有の湿り損失を低減する必要がある。この湿り損失は、復水損失(微小水滴が発生する際の熱力学的損失)、制動損失(水滴が動翼に衝突することによる損失)、加速損失(蒸気が水滴を加速する際の摩擦損失)の大きく3つの損失に分類することができる。
【0003】
従来の湿り損失の低減方法は、主に水分を除去することを目的としている。従来においては、例えば、動翼の遠心力によって外周壁面に飛ばされた水滴を効果的に分離して除去するドレンキャッチャ、ノズル内部を中空にしてノズル翼面と壁面に形成される水膜を吸引して粗大な水滴の発生を抑制するスリットやドレンセパレータなどを用いて湿り損失の低減を抑制していた(例えば、非特許文献1参照。)。
【非特許文献1】ターボ機械協会編「蒸気タービン」179頁〜180頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の湿り損失の低減方法では、水分を分離して除去するため、湿り損失の中の制動損失や加速損失の低減には寄与するが、水滴が発生する際に生じる復水損失を低減する効果は得られなかった。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、復水損失を低減して、湿り損失の低減を図ることができる蒸気タービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落における、段落熱落差および段落圧力比の少なくとも一方が、当該タービン段落よりも上流側に位置するタービン段落および当該タービン段落よりも下流側に位置するタービン段落における段落熱落差あるいは段落圧力比よりも小さいことを特徴とする蒸気タービンが提供される。
【0007】
また、本発明の一態様によれば、静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落で、静翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、当該静翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあり、かつ当該静翼の翼列における翼列圧力比が1.5以下であることを特徴とする蒸気タービンが提供される。
【0008】
さらに、本発明の一態様によれば、静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落で、動翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、当該動翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあり、かつ当該動翼の翼列における翼列圧力比が1.5以下であることを特徴とする蒸気タービンが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蒸気タービンによれば、復水損失を低減して、湿り損失の低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を図を参照して説明する。
【0011】
(第1の実施の形態)
図1は、ウィルスン線と圧力変化の関係を、エンタルピ−エントロピ線図(以下、h−s線図という)上において示す図である。図2は、(a)過飽和現象のない場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(c)大きな過飽和現象のある場合のそれぞれについて膨張線をh−s線図上において示す図である。図3は、図2に示した、(a)過飽和現象のない場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(c)大きな過飽和現象のある場合について、湿り度と湿り損失との関係を示す図である。
【0012】
まず、復水損失について説明する。
【0013】
一般に、蒸気タービンにおいて、乾き蒸気が膨張してh−s線図上の飽和蒸気線を越えて湿り域に到達しても、直ぐには蒸気の復水は生じない。なお、図1において、乾き域とは、飽和蒸気線よりも上方の領域をいい、湿り域とは、飽和蒸気線よりも下方の領域をいう。また、乾き蒸気が湿り域に到達しても直ぐには蒸気の復水は生じないのは、表面張力の影響に基づくもので、このような状態の蒸気を過飽和蒸気という。この過飽和蒸気の状態から蒸気の復水が始まる点をh−s線図上で結んだ線をウィルスン線と呼び、ほぼ等湿り度線と平行である。
【0014】
ウィルスン線は、蒸気の圧力変化の大きさに影響され、図1に示すように、圧力変化(ΔP)が大きいほど過飽和状態は継続する。そのため、圧力変化(ΔP)が大きいほどウィルスン線は、湿り度の範囲が広い領域、すなわち、湿り域の飽和蒸気線から離れた領域に位置する。一方、圧力変化(ΔP)が小さい場合は、過飽和状態の範囲は狭くなるため、ウィルスン線は、湿り度の範囲が狭い領域、すなわち、湿り域の飽和蒸気線に近い領域に位置する。ここで、圧力変化(ΔP)は、次の式(1)で表わされる。
【0015】
ΔP = −1/P×(dP/dt) …式(1)
【0016】
ここで、dP/dtは、単位時間当たりの圧力の変化であり、Pは、タービン翼列の蒸気圧力である。
【0017】
このウィルスン線上の状態において過飽和蒸気から復水が生じるとき、新たに発生する水滴核から気相への熱移動が行われる。そのため、気相のエントロピが増加して熱力学的損失となる。これを復水損失と呼ぶ。
【0018】
また、図2に示すように、(c)大きな過飽和現象のある場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(a)過飽和現象のない場合の順にエントロピが大きいことから、過飽和状態の領域が広い条件ほどエントロピが増加することがわかる。なお、図2に示した膨張線は、タービン各段落における蒸気の状態量を示すもので、飽和蒸気線より上方の乾き域では圧力と温度から、飽和蒸気線より下方の湿り域では圧力と湿り度から、膨張線の位置を特定することができる。
【0019】
また、図3に示すように、湿り損失は、(c)大きな過飽和現象のある場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(a)過飽和現象のない場合の順に高い。また、水滴が発生する際に生じる復水損失が大きな条件、すなわち湿り度が低い条件で湿り損失が高くなる条件ほど、全体の湿り損失も大きくなることがわかる。図3において、湿り損失の上昇が激しい、湿り度の小さな条件では、水滴が急激に発生している。図3の結果から、復水損失を低減することは、全体の湿り損失を低減することにつながり、蒸気タービンの性能向上を図ることができることがわかる。
【0020】
ここで、図3に示された湿り損失は、試験用蒸気タービンの入口温度を調整して蒸気の湿り度を変化させた場合のタービン効率を測定することで求めたものである。そして、湿り損失を生じない理論上のタービン効率と、実際に測定したタービン効率の差に基づいて湿り損失を求めることができる。ここで、タービン効率は、h−s線図の実際の熱落差と断熱熱落差との比で定義され、各点の圧力、温度、湿り度から求めることができる。
【0021】
次に、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンについて説明する。
【0022】
本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンは、上記した復水損失の発生因子等を考慮して構成されている。図4は、本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例をh−s線図上において示す図である。なお、ここでは、タービン段落が5段からなる蒸気タービンを例示している。ここで、図4に示されたP1in〜P5outの表示において、Pは圧力を、1〜5は第1段落〜第5段落を、inは段落入口を、outは段落出口をそれぞれ示す。また、所定のタービン段落における段落出口の圧力は、その直下流側のタービン段落における段落入口の圧力と同じである。具体的には、図4に示すように、例えば、P1outとP2inとは同じ圧力である。
【0023】
図4に示された膨張線において、飽和蒸気線よりも上方の領域が乾き域、飽和蒸気線よりも下方の領域が湿り域となる。図4に示されるように、本蒸気タービンにおいては、第1段落と第2段落の段落入口および段落出口、第3段落の段落入口の蒸気条件が乾き域であり、第3段落の段落出口、第4段落と第5段落の段落入口および段落出口の蒸気条件が湿り域にある。したがって、膨張線が飽和蒸気線を横切る第3段落に復水損失が発生する。なお、膨張線は、図2に示した膨張線を示す方法と同様の方法で示されている。
【0024】
第1の実施の形態の蒸気タービンでは、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にある第3段落における、段落入口圧力と段落出口圧力の比(段落入口圧力(P3in)/段落出口圧力(P3out))である段落圧力比が、第3段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落圧力比よりも小さくなるように設定されている。
【0025】
具体的には、この第3段落における段落圧力比は、通路部設計の連続性の観点から、第3段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落圧力比の50〜95%の範囲に設定されることが好ましい。
【0026】
このように、タービン段落の入口における蒸気条件が乾き域にあり、このービン段落の出口における蒸気条件が湿り域にある第3段落における段落圧力比を設定することで、第3段落で生じる過飽和状態の範囲が狭くなり、復水損失が相対的に小さくなる。
【0027】
なお、P3inとP2outは同じ圧力であり、P3outとP4inは同じ圧力であるため、「(P3in)/(P4in)」、「(P2out)/(P3out)」、または「(P2out)/(P4in)」が第3段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落圧力比よりも小さくなるように設定されてもよい。また、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落は、第3段落に限られるものではなく、他のタービン段落であってもよい。
【0028】
また、上記の実施の形態においては段落圧力比に注目しているが、各段落の断熱熱落差に注目しても同様である。すなわち、図4に示したように、各タービン段落の入口側におけるエンタルピと出口側におけるエンタルピとの差を段落熱落差Δhaと定義すると、第1段落から第5段落の段落熱落差ΔhaはそれぞれΔha1〜Δha5のようになる。
【0029】
すなわち、本実施の形態においては、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にある第3段落における断熱熱落差Δha3を、第3段落よりも上流側のタービン段落(第2段落)および下流側のタービン段落(第4段落)の断熱熱落差Δha2およびΔha4よりも小さくなるように設定することにより、第3段落で生じる過飽和状態の範囲が狭くなり、復水損失が相対的に小さくなる。
【0030】
なお、この第3段落における断熱熱落差Δha3は、通路部設計の連続性の観点から、第3段落よりも上流側のタービン段落(第2段落)および下流側のタービン段落(第4段落)の断熱熱落差Δha2およびΔha4の50〜95%の範囲に設定されることが好ましい。
【0031】
このように、本実施の形態では、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落における、段落熱落差あるいは段落圧力比が、このタービン段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落熱落差あるいは段落圧力比よりも小さくなるように設定されている。
【0032】
ここで、蒸気条件が乾き域または湿り域にあるかは、前述した方法で膨張線をh−s線図上に示し、飽和蒸気線の上下のどちらの領域に位置するかによって定められる。なお、蒸気条件を定める際、換言すれば膨張線を示す際に用いられる、例えば圧力、温度、エンタルピ、エントロピなどの蒸気の状態を示すためのパラメータは、半径方向および周方向に分布を有するため、ここでは、半径方向および周方向に分布を有するこれらのパラメータをそれぞれ平均した値を代表値として用いている。ここで、平均する方法として、例えば、半径方向および周方向の複数の点における各パラメータを算術平均する方法や、各パラメータに流量分布で重みを付加して平均する方法などが挙げられる。
【0033】
上記したように、第1の実施の形態の蒸気タービンによれば、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落における段落圧力比あるいは断熱熱落差を、このタービン段落よりも上流側のタービン段落および下流側のタービン段落の段落圧力比あるいは断熱熱落差よりも小さくなるように設定することで、この乾き域から湿り域となるタービン段落で生じる過飽和状態の範囲を狭くして復水損失を相対的に小さくすることができる。これによって、蒸気タービンにおいて、復水損失を低減して、湿り損失の低減を図ることができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
図5および図6は、本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例を、h−s線図上において示す図である。
【0035】
本発明に係る第2に実施の形態の蒸気タービンでは、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落であって、静翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この静翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にある場合において、この静翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力/翼列出口圧力)である翼列圧力比が1.5以下となるように設定されている。
【0036】
また、本発明に係る第2に実施の形態の蒸気タービンでは、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落であって、動翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この動翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にある場合において、この動翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力/翼列出口圧力)である翼列圧力比が1.5以下となるように設定されている。
【0037】
図5および図6に示した、本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例について説明する。ここで、図5に示された、PNinは静翼入口圧力であり、PNoutは静翼出口圧力であり、PBinは動翼入口圧力であり、PBoutは動翼出口圧力を示す。また、PNoutとPBinとは同じ圧力である。
【0038】
図5に示した蒸気タービンでは、膨張線は、所定のタービン段落における静翼流路内で飽和蒸気線を通過している。すなわち、蒸気条件が、この所定のタービン段落における静翼の翼列入口で乾き域にあり、静翼の翼列出口で湿り域にある。
【0039】
一方、図6に示した蒸気タービンでは、膨張線は、所定のタービン段落における動翼流路内で飽和蒸気線を通過している。すなわち、蒸気条件が、この所定のタービン段落における動翼の翼列入口で乾き域にあり、動翼の翼列出口で湿り域にある。
【0040】
すなわち、図5に示された蒸気タービンと、図6に示された蒸気タービンとでは、作動蒸気の蒸気条件が、乾き域から湿り域となる位置が異なる。
【0041】
ここで、図5に示した蒸気タービンでは、静翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この静翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあるため、この静翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力(PNin)/翼列出口圧力(PNout))である翼列圧力比が1.5以下となるように設定されている。なお、PNoutはPBinと同じ圧力であるため、静翼の翼列における翼列入口圧力と、この静翼の直下流側の動翼の翼列における翼列入口圧力との比(静翼の翼列入口圧力(PNin)/動翼の翼列入口圧力(PBin))が1.5以下となるように設定してもよい。
【0042】
また、図6に示した蒸気タービンでは、動翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この動翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあるため、この動翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力(PBin)/翼列出口圧力(PBout))である翼列圧力比が1.5以下となるように設定されている。なお、PNoutはPBinと同じ圧力であるため、この動翼の直上流側の静翼の翼列における翼列出口圧力と、この動翼の翼列における翼列出口圧力との比(静翼の翼列出口圧力(PNout)/動翼の翼列出口圧力(PBout))が1.5以下となるように設定してもよい。
【0043】
ここで、静翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力(PNin)/翼列出口圧力(PNout))である翼列圧力比を1.5以下に、または、動翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力(PBin)/翼列出口圧力(PBout))である翼列圧力比を1.5以下に設定することが好ましい理由を説明する。
【0044】
図7は、第2に実施の形態の蒸気タービンにおける翼列圧力比と復水損失との関係を示す図である。
【0045】
図7に示すように、復水損失は、翼列圧力比の増加に伴って増加している。復水損失の増加の割合は、特に翼列圧力比が1.5を超える範囲で大きくなり、翼列圧力比が2以上で単調となる。この関係から、翼列圧力比を1.5以下にすることで復水損失を低いレベルに抑えることができることがわかる。そこで、本発明に係る蒸気タービンにおいて、上記した翼列圧力比を1.5以下とした。
【0046】
なお、翼列において作動流体がスムーズに流れるためには、翼列入口圧力は翼列出口圧力よりも高い必要があるため、翼列圧力比の下限値を1.05とすることが好ましい。
【0047】
ここで、図7に示された復水損失は、次のように測定される。
【0048】
翼列を二次元翼列で構成し、この二次元翼列に対する復水損失を風洞試験によって測定することができる(例えば、秋葉、川岸、「ガス混入地熱用タービンの流体特性および性能」、日本機械学会論文集(B編)、51巻469号、pp.2991−2998、1985参照)。
【0049】
試験に用いた蒸気風洞は、超音速流れの連続運転が可能で、タービン内の蒸気状態と等価な条件のもとで試験を行うことができる。ボイラから供給される蒸気は、入口圧力調整弁および減温器を通って二次元翼列を設置している試験部に導かれ、出口圧力調整弁を通って復水器に流出する。このため、試験部の上流および下流の蒸気条件を任意に設定することができる。
【0050】
上記したように、第2の実施の形態の蒸気タービンによれば、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落であって、静翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この静翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にある場合において、この静翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力/翼列出口圧力)である翼列圧力比を1.5以下に設定することで、復水損失を低いレベルに抑えることができる。これによって、湿り損失の低減を図ることができる。
【0051】
また、第2の実施の形態の蒸気タービンによれば、段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落であって、動翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、この動翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にある場合において、この動翼の翼列における翼列入口圧力と翼列出口圧力の比(翼列入口圧力/翼列出口圧力)である翼列圧力比を1.5以下に設定することで、復水損失を低いレベルに抑えることができる。これによって、湿り損失の低減を図ることができる。
【0052】
以上、本発明を一実施の形態により具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態にのみ限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】ウィルスン線と圧力変化の関係を、エンタルピ−エントロピ線図(h−s線図)上において示す図。
【図2】(a)過飽和現象のない場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(c)大きな過飽和現象のある場合のそれぞれについて膨張線をh−s線図上において示す図。
【図3】図2に示した、(a)過飽和現象のない場合、(b)小さな過飽和現象のある場合、(c)大きな過飽和現象のある場合について、湿り度と湿り損失との関係を示す図。
【図4】本発明に係る第1の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例をh−s線図上において示す図。
【図5】本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例を、h−s線図上において示す図。
【図6】本発明に係る第2の実施の形態の蒸気タービンにおける膨張線の一例を、h−s線図上において示す図。
【図7】第2に実施の形態の蒸気タービンにおける翼列圧力比と復水損失との関係を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、
段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落における、段落熱落差および段落圧力比の少なくとも一方が、当該タービン段落よりも上流側に位置するタービン段落および当該タービン段落よりも下流側に位置するタービン段落における段落熱落差あるいは段落圧力比よりも小さいことを特徴とする蒸気タービン。
【請求項2】
静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、
段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落で、静翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、当該静翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあり、かつ当該静翼の翼列における翼列圧力比が1.5以下であることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項3】
静翼および動翼の翼列で構成される複数のタービン段落を備えた蒸気タービンにおいて、
段落入口における蒸気条件が乾き域にあり、段落出口における蒸気条件が湿り域にあるタービン段落で、動翼の翼列入口における蒸気条件が乾き域にあり、当該動翼の翼列出口における蒸気条件が湿り域にあり、かつ当該動翼の翼列における翼列圧力比が1.5以下であることを特徴とする蒸気タービン。
【請求項4】
前記蒸気条件は、半径方向および周方向に分布を有する、前記蒸気条件を定めるための各種パラメータを、それぞれ平均して求めた代表値に基づいて定められることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の蒸気タービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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