説明

蒸気ボイラ装置の運転方法

【目的】復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置において、ボイラ給水のMアルカリ度を所定値以上に維持する。
【構成】蒸気ボイラ20において、アルカリ成分を含む補給水を貯留する給水タンク12から供給されるボイラ給水を加熱して生成する蒸気は、負荷装置2において利用された後に凝縮して復水になる。この復水は、復水経路30を流れ、切替弁34の切替えにより、回収経路32または廃棄経路33へ流れる。回収経路32へ流れた復水は、給水タンク12へ回収されて補給水と混合され、ボイラ給水として再利用される。一方、廃棄経路33へ流れた復水は、回収されずに廃棄される。このため、給水タンク12に貯留された補給水は、アルカリ成分が復水により過剰に希釈されるのが回避されるので、ボイラ給水のMアルカリ度は所定値以上に維持され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気ボイラ装置の運転方法、特に、ボイラ給水を蒸気ボイラへ供給して加熱し、それにより発生する蒸気を利用すると共に、蒸気が凝縮して得られる復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気ボイラへボイラ給水を供給して加熱し、それにより発生する蒸気を負荷装置において利用すると共に、当該蒸気が凝縮して得られる復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置が知られている。このような蒸気ボイラ装置は、復水をボイラ給水の一部として再利用しているため、ボイラ給水として用いる補給水量を削減することができ、蒸気ボイラの経済的な運転が可能になる。
【0003】
ところで、上述の蒸気ボイラ装置における蒸気ボイラは、例えば貫流ボイラの場合、ボイラ給水を加熱して蒸気を生成するための多数の伝熱管を備えている。この伝熱管は、炭素鋼などの非不動態化金属を用いて形成されているため、ボイラ給水の影響により腐食が生じやすい。この腐食は、伝熱管の寿命を短縮し、蒸気ボイラ装置の継続的で安定な運転を妨げる原因となる。そこで、蒸気ボイラ装置の運転では、一般に、伝熱管の腐食を抑制するための薬剤をボイラ給水中へ注入し、腐食の進行を抑制している。
【0004】
これに対し、薬剤の使用による環境汚染を防止する観点から、ボイラ給水へ薬剤を注入せずに伝熱管の腐食を抑制しようとする試みがなされている。例えば、特許文献1は、蒸気ボイラ中のボイラ水のpHを伝熱管の腐食が進行しにくいpH範囲に維持するために、ボイラ給水のMアルカリ度(JIS B8223:1999における酸消費量(pH4.8))を所定値以上に維持することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−288219公報
【0006】
ところが、この方法においてMアルカリ度が所定値以上に維持されたボイラ給水は、復水の混入によりアルカリ成分濃度が低下し、これに伴ってMアルカリ度が低下してしまう。これは、蒸気ボイラにおいてボイラ水を加熱したときに、アルカリ成分が分解するため、復水中のアルカリ成分濃度が実質的にゼロレベルになってしまうためである。
【0007】
本発明の目的は、復水をボイラ給水と混合して再利用する蒸気ボイラ装置において、ボイラ給水のMアルカリ度を所定値以上に維持することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、当該給水タンクからボイラ給水を蒸気ボイラへ供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置において利用すると共に、蒸気が凝縮して得られる復水を給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置の運転方法に関するものである。この運転方法では、復水の一部を給水タンクへ回収し、残余を廃棄する。
【0009】
この運転方法では、復水の一部を給水タンクへ回収し、残余を廃棄しているため、給水タンクに貯留されたボイラ給水は、過剰の復水によりアルカリ成分濃度が大幅に低下するのが回避され、Mアルカリ度が所定値以上に維持され得る。
【0010】
この運転方法では、例えば、廃棄する復水との熱交換により、蒸気ボイラへ供給するボイラ給水を予め加熱する。この場合、予め加熱されたボイラ給水が蒸気ボイラへ供給されるため、蒸気ボイラにおけるボイラ給水の加熱負担が軽減され、蒸気ボイラ装置を経済的に運転することができる。
【0011】
本発明の第一の観点に係る蒸気ボイラ装置は、負荷装置へ蒸気を供給するものであり、アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として貯留するための給水タンクを有する給水装置と、給水装置からのボイラ給水を加熱して蒸気を生成する蒸気ボイラと、負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を流通させる復水経路とを備えている。復水経路は、復水を給水タンクへ回収するための回収経路と、復水を廃棄するための廃棄経路とに分岐しており、回収経路および廃棄経路のいずれか一方に切替え可能に設定されている。
【0012】
この蒸気ボイラ装置において、復水経路を回収経路に切替えると、復水は、回収経路を通じて給水タンクへ回収される。給水タンクへ回収された復水は、給水タンクに貯留された補給水と混合され、ボイラ給水として蒸気ボイラへ供給される。一方、復水経路を廃棄経路に切替えると、復水は、廃棄経路を通じて廃棄される。このため、復水経路は、適時、回収経路または廃棄経路を選択して切替えると、復水の一部を給水タンクへ回収し、残余を廃棄することができる。したがって、給水タンクに貯留された補給水は、過剰の復水の混入によりアルカリ成分濃度が大幅に低下するのが回避され、Mアルカリ度が所定値以上に維持されたボイラ給水として蒸気ボイラへ供給され得る。
【0013】
この蒸気ボイラ装置は、例えば、給水タンクに貯留されたボイラ給水が循環可能な熱交換器をさらに備えている。この熱交換器は、廃棄経路を通過して廃棄される復水により、循環するボイラ給水を加熱可能に設定されている。この場合、予め加熱されたボイラ給水が蒸気ボイラへ供給されるため、蒸気ボイラにおけるボイラ給水の加熱負担が軽減され、蒸気ボイラ装置を経済的に運転することができる。
【0014】
本発明の他の観点に係る蒸気ボイラ装置は、同じく、負荷装置へ蒸気を供給するものであり、アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として貯留するための給水タンクを有する給水装置と、給水装置からのボイラ給水を加熱して蒸気を生成する蒸気ボイラと、負荷装置において利用された蒸気が凝縮して得られる復水を流通させる復水経路とを備えている。復水経路は、復水を給水タンクへ回収するための回収経路と、復水を廃棄するための廃棄経路とに分岐しており、回収経路および廃棄経路の両方に復水を同時に流通可能に設定されている。
【0015】
この蒸気ボイラ装置において、復水は、復水経路の回収経路および廃棄経路の両方に分かれて流通する。このため、復水の一部は、回収経路を通じて給水タンクへ回収され、そこに貯留された補給水と混合されてボイラ給水として蒸気ボイラへ供給される。一方、復水の残余は、廃棄経路を通じて廃棄される。したがって、給水タンクに貯留された補給水は、過剰の復水の混入によりアルカリ成分濃度が大幅に低下するのが回避され、Mアルカリ度が所定値以上に維持されたボイラ給水として蒸気ボイラへ供給され得る。
【0016】
この蒸気ボイラ装置は、例えば、給水タンクに貯留されたボイラ給水が循環可能な熱交換器をさらに備えている。この熱交換器は、廃棄経路を通過して廃棄される復水により、循環するボイラ給水を加熱可能に設定されている。この場合、予め加熱されたボイラ給水が蒸気ボイラへ供給されるため、蒸気ボイラにおけるボイラ給水の加熱負担が軽減され、蒸気ボイラ装置を経済的に運転することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る蒸気ボイラ装置の運転方法は、復水の一部を給水タンクへ回収し、残余を廃棄しているため、給水タンクから蒸気ボイラへ供給するボイラ給水のMアルカリ度を所定値以上に維持することができる。
【0018】
本発明の第一の観点に係る蒸気ボイラ装置は、復水経路が回収経路および廃棄経路のいずれか一方に切替え可能に設定されており、復水の一部を給水タンクに回収して残余を廃棄することができるので、給水タンクから蒸気ボイラへ供給するボイラ給水のMアルカリ度を所定値以上に維持することができる。
【0019】
本発明の他の観点に係る蒸気ボイラ装置は、復水経路が回収経路および廃棄経路の両方に復水を同時に流通可能に設定されており、復水の一部を給水タンクに回収して残余を廃棄することができるので、給水タンクから蒸気ボイラへ供給するボイラ給水のMアルカリ度を所定値以上に維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1を参照して、本発明の実施の一形態に係る蒸気ボイラ装置を説明する。図1において、蒸気ボイラ装置1は、熱交換器、蒸気釜、リボイラ若しくはオートクレーブ等の蒸気使用設備である負荷装置2に対して蒸気を供給するためのものであり、給水装置10、蒸気ボイラ20、復水経路30および給水加熱器40を主に備えている。
【0021】
給水装置10は、蒸気ボイラ20へボイラ給水を供給するためのものであり、注水路11、給水タンク12および給水路13を主に備えている。注水路11は、水道水、工業用水若しくは地下水等の水源から供給される原水が貯留されている原水タンク(図示せず)から給水タンク12へ補給水を供給するためのものであり、軟水化装置14および脱酸素装置15をこの順に有している。
【0022】
軟水化装置14は、原水タンクからの補給水をナトリウム型陽イオン交換樹脂により処理し、補給水に含まれる硬度分、すなわち、カルシウムイオンおよびマグネシウムイオンをナトリウムイオンに置換して軟化水へ変換するためのものである。脱酸素装置15は、軟水化装置14で得られた軟化水中に含まれる溶存酸素を除去するためのものであり、通常、分離膜を用いて溶存酸素を除去する形式のもの、軟化水を減圧環境下において溶存酸素を除去する形式のもの、若しくは、軟化水を加熱して溶存酸素を除去する形式のものなどの各種の形式のものが用いられる。
【0023】
給水タンク12は、注水路11からの補給水を蒸気ボイラ20へ供給するボイラ給水として貯留するためのものである。因みに、注水路11から給水タンク12へ供給される補給水は、原水中の塩類が軟水化装置14での軟水化によりナトリウム塩となったもの、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびけい酸ナトリウムなどのアルカリ成分を含んでいる。
【0024】
給水路13は、給水タンク12から延びかつ蒸気ボイラ20に連絡しており、給水タンク12内に貯留されたボイラ給水を蒸気ボイラ20へ送り出すための給水ポンプ16を有している。
【0025】
蒸気ボイラ20は、貫流ボイラであり、図2に示すように、給水路13から供給されるボイラ給水を貯留可能な環状の貯留部21、貯留部21から起立する多数の伝熱管22(図2では二本のみ示している)、伝熱管22の上端部に設けられた環状のヘッダ23、ヘッダ23から負荷装置2へ延びる蒸気供給路24およびバーナーなどの燃焼装置25を主に備えている。燃焼装置25は、ヘッダ23側から貯留部21方向へ燃焼ガスを放射し、伝熱管22を加熱可能である。
【0026】
伝熱管22は、非不動態化金属を用いて形成されている。非不動態化金属は、中性水溶液中において自然には不動態化しない金属をいい、通常はステンレス鋼、チタン、アルミニウム、クロム、ニッケルおよびジルコニウム等を除く金属である。具体的には、炭素鋼、鋳鉄、銅および銅合金等である。なお、炭素鋼は、中性水溶液中においても、高濃度のクロム酸イオンの存在下では不動態化する場合があるが、この不動態化はクロム酸イオンの影響によるものであって中性水溶液中での自然な不動態化とは言い難い。したがって、炭素鋼は、ここでの非不動態化金属の範疇に属する。また、銅および銅合金は、電気化学列(emf series)が貴な位置にあるため、通常は水分の影響による腐食が生じ難い金属と考えられているが、中性水溶液中において自然に不動態化するものではないので、非不動態化金属の範疇に属する。
【0027】
復水経路30は、負荷装置2から給水タンク12へ延びており、スチームトラップ31を有している。また、復水経路30は、スチームトラップ31の下流側において、給水タンク12へ連絡する回収経路32と、廃棄経路33とに分岐している。回収経路32と廃棄経路33との分岐点には切替弁34が設けられている。この切替弁34は、回収経路32および廃棄経路33のいずれか一方を選択するためのものである。
【0028】
給水加熱器40は、熱交換器であり、給水タンク12に貯留されたボイラ給水を循環するための循環経路41と廃棄経路33とが連絡している。循環経路41は、ボイラ給水を循環させるためのポンプ(図示せず)を有している。また、給水加熱器40は、廃棄経路33からの復水を排水するための排水路42を有している。
【0029】
次に、上述の蒸気ボイラ装置1の運転方法について説明する。
蒸気ボイラ装置1を運転する場合は、注水路11から給水タンク12へ補給水を供給し、この補給水をボイラ給水として給水タンク12に貯留する。因みに、給水タンク12に貯留される補給水は、原水が軟水化装置14および脱酸素装置15で処理されたもの、すなわち、脱酸素処理された軟化水であってアルカリ成分を含んでいる。
【0030】
次に、給水ポンプ16を作動させ、給水タンク12に貯留されたボイラ給水を給水路13を通じて蒸気ボイラ20へ供給する。蒸気ボイラ20へ供給されたボイラ給水は、貯留部21においてボイラ水として貯留される。このボイラ水は、各伝熱管22を通じて燃焼装置25により加熱されながら各伝熱管22内を上昇し、徐々に蒸気になる。そして、各伝熱管22内において生成した蒸気は、ヘッダ23において集められ、蒸気供給路24を通じて負荷装置2へ供給される。
【0031】
この際、ボイラ水は、ボイラ給水のアルカリ成分濃度、具体的にはMアルカリ度(JIS B8223:1999において規定された酸消費量(pH4.8))および蒸気ボイラ20の濃縮ブロー率に応じ、pHが11.0〜11.8の範囲に設定される。例えば、ボイラ給水のMアルカリ度が20mgCaCO/リットルであり、かつ、ボイラ水の濃縮ブロー率が10%のとき、ボイラ水のpHが11.0〜11.8の範囲に設定される。このように、ボイラ水は、JIS B8223:1999で規定された、伝熱管22等の蒸気ボイラ20内部を腐食しにくいpH範囲に設定されるため、蒸気ボイラ20は、腐食防止用の薬剤を添加しなくても、伝熱管22等の腐食が効果的に抑制される。また、このボイラ水は、脱酸素処理された軟化水であるため、伝熱管22等の腐食をより効果的に抑制することができるとともに、伝熱管22に対してスケールを付着させにくい。
【0032】
負荷装置2へ供給された蒸気は、負荷装置2を通過して復水経路30へ流れ、そこで潜熱を失って一部が凝縮水に変わり、スチームトラップ31において蒸気と水とが分離されて高温の復水になる。このようにして生成した復水は、切替弁34の切替えにより、回収経路32または廃棄経路33のいずれかへ流れる。ここで、切替弁34を回収経路32側へ切替えている場合、復水は、回収経路32を通じて給水タンク12へ回収され、給水タンク12に貯留された補給水と混合される。一方、切替弁34を廃棄経路33側へ切替えている場合、復水は、廃棄経路33から給水加熱器40へ流れ、排水路42を通じて廃棄される。
【0033】
そこで、この蒸気ボイラ装置1の運転中は、切替弁34を適時切替えることにより、復水の一部を回収経路32を通じて給水タンク12へ回収し、残余を廃棄経路33を通じて廃棄する。これにより、給水タンク12に貯留された補給水は、復水によりアルカリ成分が過剰に希釈されるのが回避され、Mアルカリ度が所定値以上に維持されたボイラ給水として蒸気ボイラ20へ供給され得る。
【0034】
この結果、蒸気ボイラ20では、ボイラ水が伝熱管22等を腐食させにくいpH範囲に維持され、伝熱管22等の腐食が抑制される。
【0035】
また、廃棄経路33を通じて廃棄される高温の復水は、給水加熱器40を通過する際に、循環経路41を循環するボイラ給水を加熱することになるため、給水タンク12に貯留されたボイラ給水の全体を加熱することができる。そして、このようにして予め加熱されたボイラ給水によるボイラ水は、蒸気ボイラ20において加熱負担が軽減される。したがって、この実施の形態では、蒸気ボイラ20においてボイラ水を加熱するためのエネルギーコストを削減することができ、蒸気ボイラ装置1の経済的な運転が可能になる。
【0036】
この実施の形態において、切替弁34は、給水タンク12に貯留されたボイラ給水のMアルカリ度に基づいて切替えるのが好ましい。すなわち、貯留されたボイラ給水のMアルカリ度が所定値を充分に上回るときは切替弁34により回収経路32を選択し、復水を給水タンク12へ回収するのが好ましく、逆に、貯留されたボイラ給水のMアルカリ度が所定値付近まで低下してきたときは切替弁34により廃棄経路33を選択し、復水を廃棄してボイラ給水のMアルカリ度を維持するのが好ましい。
【0037】
ここで、Mアルカリ度の「所定値」は、補給水のMアルカリ度を意味するのではなく、蒸気ボイラ20の濃縮ブロー率を考慮した場合において、補給水と復水とが混合されたボイラ給水がボイラ水のpHを上述の11.0〜11.8の範囲に維持するのに必要なMアルカリ度を意味する。したがって、この所定値は、通常、補給水のMアルカリ度よりも小さい値に設定することができる。
【0038】
また、給水タンク12に貯留されたボイラ給水のMアルカリ度は、公知の各種の方法により測定することができる。例えば、次の通りである。
(a)化学分析による測定方法。
(b)ボイラ給水の電気伝導度を測定し、その測定値から予測する方法。
(c)吸光光度法による測定。
(d)ボイラ給水の温度を測定し、その測定値から予測する方法。
(e)注水路11から給水タンク12へ供給される補給水量と給水タンク12から蒸気ボイラ20へ供給されるボイラ給水量とに基づいて復水の回収量を算出し、当該回収量から予測する方法。
【0039】
上述のようにして測定されるMアルカリ度に基づく切替弁34の操作は、手動で実行してもよいし、自動化してもよい。例えば、給水タンク12において、Mアルカリ度の自動測定装置若しくは測定センサーを配置した場合は、それらから伝達される測定情報を制御装置で処理し、その制御装置からの動作信号により切替弁34を自動制御することもできる。
【0040】
変形例
(1)上述の実施の形態では、蒸気ボイラ20として貫流ボイラを用いているが、蒸気ボイラ20として他の形態のものを用いた場合も本発明を同様に実施することができる。
【0041】
(2)図3を参照して、他の形態の蒸気ボイラ装置を説明する。この形態の蒸気ボイラ装置は、復水経路部分のみが変更されているため、図3において、復水経路以外の部位には図1と同じ符号を付している。復水経路50は、負荷装置2から延びており、スチームトラップ51を有している。また、復水経路50は、スチームトラップ51の下流側において、給水タンク12へ連絡する回収経路52と、給水加熱器40へ連絡する廃棄経路53とに分岐しており、復水を回収経路52および廃棄経路53の両方に同時に分流させることができるように設定されている。
【0042】
この復水経路50を備えた蒸気ボイラ装置1において、負荷装置2へ供給された蒸気は、負荷装置2を通過して復水経路50へ流れ、そこで潜熱を失って一部が凝縮水に変わり、スチームトラップ51において蒸気と水とが分離されて高温の復水になる。このようにして生成した復水は、回収経路52および廃棄経路53の両方へ分流し、一部が回収経路52を通じて給水タンク12へ回収され、残余が廃棄経路53から給水加熱器40を経由して廃棄される。これにより、給水タンク12に貯留された補給水は、復水によりアルカリ成分が過剰に希釈されるのが回避され、Mアルカリ度が所定値以上に維持されたボイラ給水として蒸気ボイラ20へ供給され得る。
【0043】
この結果、蒸気ボイラ20では、ボイラ水が伝熱管22等を腐食させにくいpH範囲に維持され、伝熱管22等の腐食が抑制される。
【0044】
この実施の形態における復水経路50は、回収経路52および廃棄経路53の流量を調節することで、給水タンク12へ回収する復水量と、廃棄する復水量とを制御することができる。例えば、回収経路52を廃棄経路53に比べて小径の管を用いて形成し、回収経路52の流量を廃棄経路53の流量の半分に設定しておくと、復水の総量の1/3を給水タンク12へ回収し、残余を廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の一形態に係る蒸気ボイラ装置の概略図。
【図2】前記蒸気ボイラ装置において用いられる蒸気ボイラの一部断面概略図。
【図3】他の形態に係る蒸気ボイラ装置の概略図。
【符号の説明】
【0046】
1 蒸気ボイラ装置
2 負荷装置
10 給水装置
12 給水タンク
20 蒸気ボイラ
30,50 復水経路
32,52 回収経路
33,53 廃棄経路
34 切替弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として給水タンクに貯留し、前記給水タンクから前記ボイラ給水を蒸気ボイラへ供給して加熱することにより発生する蒸気を負荷装置において利用すると共に、前記蒸気が凝縮して得られる復水を前記給水タンクへ回収して再利用する蒸気ボイラ装置の運転方法であって、
前記復水の一部を前記給水タンクへ回収し、残余を廃棄する、
蒸気ボイラ装置の運転方法。
【請求項2】
廃棄する前記復水との熱交換により、前記蒸気ボイラへ供給する前記ボイラ給水を予め加熱する、請求項1に記載の蒸気ボイラ装置の運転方法。
【請求項3】
負荷装置へ蒸気を供給する蒸気ボイラ装置であって、
アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として貯留するための給水タンクを有する給水装置と、
前記給水装置からの前記ボイラ給水を加熱して前記蒸気を生成する蒸気ボイラと、
前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を流通させる復水経路とを備え、
前記復水経路は、前記復水を前記給水タンクへ回収するための回収経路と、前記復水を廃棄するための廃棄経路とに分岐しており、前記回収経路および前記廃棄経路のいずれか一方に切替え可能に設定されている、
蒸気ボイラ装置。
【請求項4】
前記給水タンクに貯留された前記ボイラ給水が循環可能な熱交換器をさらに備え、前記熱交換器は、前記廃棄経路を通過して廃棄される前記復水により、循環する前記ボイラ給水を加熱可能に設定されている、請求項3に記載の蒸気ボイラ装置。
【請求項5】
負荷装置へ蒸気を供給する蒸気ボイラ装置であって、
アルカリ成分を含む補給水をボイラ給水として貯留するための給水タンクを有する給水装置と、
前記給水装置からの前記ボイラ給水を加熱して前記蒸気を生成する蒸気ボイラと、
前記負荷装置において利用された前記蒸気が凝縮して得られる復水を流通させる復水経路とを備え、
前記復水経路は、前記復水を前記給水タンクへ回収するための回収経路と、前記復水を廃棄するための廃棄経路とに分岐しており、前記回収経路および前記廃棄経路の両方に前記復水を同時に流通可能に設定されている、
蒸気ボイラ装置。
【請求項6】
前記給水タンクに貯留された前記ボイラ給水が循環可能な熱交換器をさらに備え、前記熱交換器は、前記廃棄経路を通過して廃棄される前記復水により、循環する前記ボイラ給水を加熱可能に設定されている、請求項5に記載の蒸気ボイラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−121942(P2008−121942A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−304606(P2006−304606)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)