説明

蒸気使用量計測装置

【課題】 蒸気流量計を用いることなく、工場等に既設の各蒸気使用機器における蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができるようにする。
【解決手段】 蒸気ライン5を介してボイラ1に接続された蒸気使用機器6における蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置11であって、前記蒸気ライン5に設けられた蒸気弁7における上流側と下流側との間の差圧を検出する差圧検出手段13と、前記蒸気弁7の動作時間を測定する時間測定手段14と、予め設定された前記蒸気弁7の特性値,前記差圧検出手段13により検出された差圧および前記時間測定手段14により測定された動作時間に基づいて蒸気使用量を算出する算出手段15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気使用機器における蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場やビル等における熱源としては、一般的に蒸気が用いられ、その蒸気を生成する装置としてボイラが設置されている。このボイラは、通常、複数台設置されており、各ボイラで生成された蒸気は、蒸気ラインを介して工場等の各蒸気使用機器へ供給される。この蒸気ラインの途中には、バッファタンクとして機能するスチームヘッダが設けられており、前記各ボイラの運転(燃焼量)は、このスチームヘッダ内の蒸気圧力に基づいて制御される。
【0003】
前記工場等においては、省エネルギー診断として、蒸気使用量の計測が行われる。これは、放熱や漏れによる蒸気の損失を発見するためであり、また蒸気使用量の変動に応じて最適のボイラ台数制御パターンを設定するためである。蒸気使用量を計測する手段としては、蒸気流量計がある。しかし、この蒸気流量計は、設置されているとしても、前記蒸気ラインのうち主管のみである場合が多く、主管から分岐して前記各蒸気使用機器に接続された枝管においては、蒸気流量計が設けられていることは少ない。この枝管の先の前記各蒸気使用機器における蒸気使用量を把握できないと、実効性の高い省エネルギー診断を行うことは難しい。
【0004】
前記枝管に蒸気流量計を追加で取り付けるようにすると、余分な工事が必要となり、現実的ではない。また、蒸気流量計を使用することなく蒸気使用量を計測する装置として、特許文献1に記載のものがあるが、これは、前記各蒸気使用機器における蒸気使用量を個別に計測する機能まではなく、さらなる改良が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−119602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、蒸気流量計を用いることなく、工場等に既設の各蒸気使用機器における蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたものであり、請求項1に記載の発明は、蒸気ラインを介してボイラに接続された蒸気使用機器における蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置であって、前記蒸気ラインに設けられた差圧生成部材における上流側と下流側との間の差圧を検出する差圧検出手段と、前記差圧生成部材を蒸気が流れる時間を測定する時間測定手段と、予め設定された前記差圧生成部材の特性値,前記差圧検出手段により検出された差圧および前記時間測定手段により測定された時間に基づいて蒸気使用量を算出する算出手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、前記差圧生成部材の特性値,前記差圧生成部材の上流側と下流側との差圧および前記差圧生成部材を蒸気が流れる時間に基づいて、前記蒸気使用機器における蒸気使用量を算出することができ、蒸気流量計を用いることなく、既設の各蒸気使用機器における蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記差圧生成部材が蒸気弁であり、前記特性値がこの蒸気弁のCv値であり、前記時間がこの蒸気弁の動作時間であることを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、Cv値は市販の蒸気弁においては流量特性値として既知の数値であるので、複雑な計算を行うことなく容易に蒸気使用量を求めることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、蒸気流量計を用いることなく、工場等に既設の各蒸気使用機器における蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができる。したがって、実効性の高い省エネルギー診断を行うことができ、省エネルギーの実現に頗る効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の一実施例を示す説明図である。
【図2】図1の要部の構成を拡大して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、この発明を実施するための形態について説明する。この発明における蒸気使用量計測装置は、工場やビル等に既設の蒸気使用機器において、その蒸気使用量を計測するのに用いられる。
【0014】
前記蒸気使用機器は、蒸気ラインを介してボイラに接続されている。この蒸気ラインには、差圧生成部材が設けられている。この差圧生成部材は、蒸気弁や流量調整用のオリフィス部材等である。前記蒸気弁は、蒸気の供給を制御するものであり、電動弁や電磁弁が用いられ、電気的に制御される。そして、この発明における蒸気使用量計測装置は、差圧検出手段と時間測定手段と算出手段とを備えている。
【0015】
まず、前記差圧検出手段は、前記差圧生成部材における上流側と下流側との間の差圧を検出するものである。差圧を検出するにあたっては、前記蒸気ラインに既設の圧力センサがあれば、その圧力センサからの信号を取り込む。また、圧力センサを目視して得た圧力値を手入力するようにしてもよい。さらに、圧力センサがない場合は、一時的に前記蒸気ラインに差圧検出用の圧力センサを取り付けるようにしてもよい。蒸気流量計の取付けと比べると、圧力センサの取付けは比較的容易である。
【0016】
つぎに、前記時間測定手段は、前記差圧生成部材を蒸気が流れる時間を測定するものである。前記差圧生成部材が前記蒸気弁である場合は、前記蒸気弁の動作時間を測定する。すなわち、前記蒸気弁が開いている時間を測定する。時間を測定するにあたっては、前記蒸気弁への動作信号を取り込むようにする。動作信号の取込みは、直接取り込むようにしてもよいし、信号線に非接触で電流を測定する構成としてもよい。また、別途時間を測定して、データを手入力することもできる。
【0017】
さらに、前記算出手段は、予め設定された前記差圧生成部材の特性値と、前記差圧検出手段により検出された差圧と、前記時間測定手段により測定された時間とに基づいて、蒸気使用量を算出するものである。前記特性値としては、前記蒸気弁の場合は、その蒸気弁のCv値が用いられる。Cv値とは、60°F(15℃)の水を弁前後の差圧を1psi(6.9kPa)に保って流した場合の流量をgal/minで表した数値であり、市販の蒸気弁であれば、メーカーが公表している数値である。流量をQ[gal/min],比重をG,差圧をΔP[psi]とすると、Cv値は、Cv=Q×(G÷ΔP)1/2で表される。この式に基づき、単位換算を行ってから蒸気流量,すなわち蒸気使用量[kg/h]を求める。前記蒸気使用機器で使用された分だけ蒸気が供給されるので、前記蒸気ラインの蒸気流量は、前記蒸気使用機器における蒸気使用量に対応している。
【0018】
蒸気使用量としては、時間帯を所定の小区分(たとえば1分毎)に区切り、この小区分における流量と前記蒸気弁の動作時間とを乗じて、この小区分帯の蒸気使用量[kg/h]を求め、そのデータを保存する。横軸を時刻とし、縦軸を蒸気使用量としたグラフで表示すれば、蒸気使用量の変動がよくわかる。また、蒸気使用量を積算することにより、1日の積算蒸気使用量を求めることもできる。さらに、もし前記蒸気ラインを流れる蒸気流量がほぼ一定であれば、これに前記蒸気弁の動作時間を掛け合わせたものが、1日の蒸気使用量になる。
【0019】
以上のようにして、前記蒸気使用機器における蒸気使用量を求めることができるので、前記蒸気使用機器が複数ある場合でも、各蒸気使用機器について蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができる。したがって、実効性の高い省エネルギー診断を行うことができ、放熱や漏れによる蒸気の損失がないかどうか前記各蒸気使用機器について個別にかつ簡便に判定することができる。また、前記各蒸気使用機器における蒸気使用量の変動を正確に把握することができ、その変動に応じて最適のボイラ台数制御パターンを設定することができ(蒸気を無駄なくかつ効率よく生成)、省エネルギーの実現に頗る効果的である。
【実施例1】
【0020】
以下、この発明の一実施例について、図1および図2に基づいて説明する。図1においては、ボイラ1が3台設置され、ボイラ1の多缶設置システムが構成されている。前記各ボイラ1には、主蒸気弁2がそれぞれ設けられており、その各出口に主蒸気ライン3が接続されている。この主蒸気ライン3の下流端は、バッファタンクとして機能するスチームヘッダ4に接続されている。前記各ボイラ1の運転(燃焼量)は、前記スチームヘッダ4内の蒸気圧力に基づいて制御される。
【0021】
また、前記スチームヘッダ4には、複数の蒸気ライン5が接続されており、これらの各蒸気ライン5は、直接または分岐してその各下流端が複数の蒸気使用機器6にそれぞれ接続されている。そして、前記各蒸気ライン5には、前記各蒸気使用機器6への蒸気の供給を制御する蒸気弁7が、前記蒸気使用機器6の台数に対応してそれぞれ設けられている(この実施例では、蒸気弁7が差圧生成部材に相当する)。これらの蒸気弁7は、信号線(符号省略)を介して蒸気流量制御装置8にそれぞれ接続されており、この蒸気流量制御装置8は、前記各蒸気使用機器6の稼動状況に応じて、前記各蒸気弁7の開閉あるいは開度を制御する。また、前記各蒸気使用機器6おいては、スチームトラップ9を有するドレンライン10がそれぞれ接続されている。
【0022】
さらに、この発明における蒸気流量計測装置11が設けられており、この蒸気流量計測装置11には、信号線(符号省略)を介して圧力センサ12が接続されている。この圧力センサ12は、前記蒸気弁7の上流側および下流側にそれぞれ1つずつ設けられている。この圧力センサ12は、前記蒸気ライン5に既設のものを用いてもよいし、計測用に追加で取り付けるようにしてもよい。また、この圧力センサ12は、前記蒸気弁7における上流側と下流側との間の差圧を検出するものであれば、単一ものでもよい。また、前記蒸気流量計測装置11には、信号線(符号省略)を介して、前記蒸気弁7の動作信号が取り込まれるようになっている。この動作信号は、前記蒸気弁7へ制御信号を発する前記蒸気流量制御装置8から取り込むようにすることもできる。
【0023】
図2に図1の要部の構成を拡大して示すが、前記蒸気流量計測装置11は、差圧検出手段13,時間測定手段14および算出手段15を備えている。前記差圧検出手段13は、前記両圧力センサ12からの信号に基づき、前記蒸気弁7における上流側と下流側との間の差圧を検出する。また、前記時間測定手段14は、前記蒸気弁7から取り込んだ動作信号に基づき、前記蒸気弁7の動作時間(開時間)を測定する。さらに、前記算出手段15は、予め設定された前記蒸気弁7の特性値と、前記差圧検出手段13により検出された差圧と、前記時間測定手段14により測定された動作時間とに基づいて、蒸気使用量を算出する。
【0024】
前記特性値としては、前記蒸気弁7のCv値を用いる。Cv値は、前記蒸気弁7の口径,種類に応じたテーブルとして前記蒸気流量計測装置11に予め入力されており、そこから選択される。前記蒸気弁7が開度を調節するものである場合は、開度に応じてCv値も変わるが、前記テーブルに開度とCv値の対応関係のデータも保存しておき、それを用いる。この場合、前記蒸気弁7の開度情報も前記蒸気流量計測装置11へ取り込まれるようになっている。
【0025】
このようにして、前記各蒸気使用機器6における蒸気使用量をそれぞれ算出する。算出された蒸気使用量は、前記蒸気流量計測装置11にデータとして保存される。そして、このデータを適宜解析して省エネルギー診断を行う。たとえば、前記蒸気流量計測装置11で計測した蒸気使用量と、前記各蒸気使用機器6の稼動状態から算出される蒸気使用量とを比較し、放熱や漏れによる蒸気の損失がないかどうかを判定する。また、前記各蒸気使用機器6の異常検出に応用することも可能である。さらに、前記各蒸気使用機器6における蒸気使用量の時間的変動に応じて、最適のボイラ台数制御パターンを設定する。
【0026】
以上のような構成によれば、蒸気流量計を用いることなく、前記各蒸気使用機器6における蒸気使用量を個別にかつ簡便に計測することができ、実効性の高い省エネルギー診断を行うことができる。
【0027】
ところで、前記主蒸気ライン3にも前記蒸気弁7が設けられている場合は、上述の構成と同様にして、その蒸気弁7における上流側と下流側との間の差圧,動作時間およびCv値に基づいて、前記主蒸気ライン3の蒸気流量を求めるようにしてもよい。そうすることにより、前記各蒸気使用機器6の蒸気使用量の合計値の変動を計測することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 ボイラ
5 蒸気ライン
6 蒸気使用機器
7 蒸気弁
11 蒸気流量計測装置
13 差圧検出手段
14 時間測定手段
15 算出手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気ラインを介してボイラに接続された蒸気使用機器における蒸気使用量を計測する蒸気使用量計測装置であって、前記蒸気ラインに設けられた差圧生成部材における上流側と下流側との間の差圧を検出する差圧検出手段と、前記差圧生成部材を蒸気が流れる時間を測定する時間測定手段と、予め設定された前記差圧生成部材の特性値,前記差圧検出手段により検出された差圧および前記時間測定手段により測定された時間に基づいて蒸気使用量を算出する算出手段とを備えたことを特徴とする蒸気使用量計測装置。
【請求項2】
前記差圧生成部材が蒸気弁であり、前記特性値がこの蒸気弁のCv値であり、前記時間がこの蒸気弁の動作時間であることを特徴とする請求項1に記載の蒸気使用量計測装置。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−19736(P2013−19736A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152569(P2011−152569)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】