説明

蒸気加熱装置

【課題】電磁弁で経路切り替えを行っているため、異物が電磁弁内に入ると動作不良を起こし蒸気が止まらないという安全性の課題や、電磁弁は高価であり、またその制御装置が別途必要なため、コストがかかり、装置も複雑になること。
【解決手段】蒸気経路29に分岐して設けた分岐経路30と、分岐経路30内に空気取り入れ口7と、弾性体11と、弾性体取り付け台10とを設け、弾性体取り付け台10に設けた空気取り入れ口7との連通部13を、弾性体11の傘部15が覆設するように配し、弾性体11の傘部15は、蒸気圧がかかったときに空気取り入れ口7との連通部13を封止し、常時は連通部13を開放して経路を大気開放状態にすることにより、ミルクフォーミング生成工程において、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォームドミルクを生成する蒸気加熱装置のミルク吸い上げ防止機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蒸気加熱装置は、ミルクフォーミング生成工程において、蒸気吐出終了直後に経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止するため、電気的に経路を切り替えて、経路を大気開放している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7は、特許文献1に記載された従来の蒸気加熱装置の概略図を示すものである。図7に示すように、ボイラー1と、蒸気ノズル4と、蒸気経路29と、弁103と、空気取り入れ口107と、電磁式のアクチュエータ100と、閉鎖エレメント111とから構成されている。
【0004】
従来の蒸気加熱装置は、蒸気経路29を介して蒸気ノズル4に接続されたボイラー1を備えている。蒸気経路29内には、電磁式に作動可能な弁103が配置されており、この弁103の下流側には、空気取り入れ口107を備えている。
【0005】
空気取り入れ口107は、電磁式のアクチュエータ100によって閉鎖することができ、このアクチュエータ100には、空気取り入れ口107を開閉するために変位可能である閉鎖エレメント111が実際の閉鎖部として設けられている。
【0006】
閉鎖エレメント111は、アクチュエータ100の非作動状態では収縮休止位置に置かれ、空気取り入れ口107を開放し、アクチュエータ100が作動されている場合には延伸作動位置に置かれ、空気取り入れ口107は閉鎖されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−45463号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の構成では、電磁弁で経路切り替えを行っているため、異物が電磁弁内に入ると動作不良を起こし蒸気が止まらないという安全性の課題や、電磁弁は高価であり、またその制御装置が別途必要なため、コストがかかり、装置も複雑になるという課題を有していた。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、構造が簡単で、安全且つ安価なミルク吸い上げ防止機構を有する蒸気加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記従来の課題を解決するために、本発明の蒸気加熱装置は、蒸気経路に分岐して設けた分岐経路と、前記分岐経路内に空気取り入れ口と、弾性体と、弾性体取り付け台とを設け、前記弾性体取り付け台に設けた前記空気取り入れ口との連通部を、前記弾性体の傘部が覆設するように配し、前記弾性体の前記傘部は、蒸気圧がかかったときに前記空気取り入れ口との前記連通部を封止し、常時は前記連通部を開放して前記経路を大気開放状態にしたものである。
【0011】
これによって、ミルクフォーミング生成工程において、蒸気吐出中は蒸気吐出口から蒸気を吐出し、蒸気吐出終了後には、弾性体の傘部が連通部を開放して前記経路を大気開放状態にするので、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止する蒸気加熱装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の蒸気加熱装置は、構造が簡単で、安全且つ安価なミルク吸い上げ防止機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における蒸気加熱装置の概略構成図
【図2】本発明の実施の形態1における蒸気加熱装置の要部断面図
【図3】本発明の実施の形態1における蒸気加熱装置の弾性体取り付け台の(a)は蒸気吐出時の要部断面図(b)は蒸気吐出後の要部断面図
【図4】本発明の実施の形態1における弾性体取り付け台正面図
【図5】本発明の実施の形態2における蒸気加熱装置の弾性体取り付けの蒸気吐出後の要部断面図
【図6】本発明の実施の形態3における蒸気加熱装置の弾性体取り付け台の斜視図
【図7】従来の蒸気加熱装置の概略図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、蒸気経路に分岐して設けた分岐経路と、前記分岐経路内に空気取り入れ口と、弾性体と、弾性体取り付け台とを設け、前記弾性体取り付け台に設けた前記空気取り入れ口との連通部を、前記弾性体の傘部が覆設するように配し、前記弾性体の前記傘部は、蒸気圧がかかったときに前記空気取り入れ口との前記連通部を封止し、常時は前記連通部を開放して前記経路を大気開放状態にすることにより、ミルクフォーミング生成工程において、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止する蒸気加熱装置を提供することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明の前記弾性体取り付け台は、前記弾性体の前記傘部側に突出部を設け、常時は前記連通部を開放するようにしたことにより、ミルクフォーミング生成工程において、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止する蒸気加熱装置を提供することができる。
【0016】
第3の発明は、特に、第1の発明の前記弾性体は、前記弾性体取り付け台側の前記弾性体の傘部が覆設し且つ前記空気取り入れ口との前記連通部を封止しない位置に突出部を設け、常時は前記連通部を開放するようにしたことにより、ミルクフォーミング生成工程において、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止する蒸気加熱装置を提供することができる。
【0017】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の前記弾性体取り付け台は、前記空気取り入れ口との連通部の一部または全部に、前記弾性体の前記傘部側に溝部を設けたことにより、ミルクフォーミング生成工程において、簡単な構造で、安全且つ安価に、経路内が負圧になりミルクを吸い上げるのを防止する蒸気加熱装置を提供することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における蒸気加熱装置の概略構成図、図2は、本発明の第1の実施の形態における蒸気加熱装置の要部断面図、図3は、本発明の第1の実施の形態における蒸気加熱装置の弾性体取り付け台の(a)は蒸気吐出時の要部断面図、(b)は蒸気吐出後(常時)の要部断面図、図4は、本発明の第1の実施の形態における弾性体取り付け台正面図を示すものである。
【0020】
図1〜4において、蒸気発生部であるボイラー1上面に蒸気導入パイプ2を備え、蒸気経路29を介して蒸気吐出口6を有する蒸気ノズル4と連通している。
【0021】
蒸気経路29途中に手動蒸気開閉装置3が配置され、手動蒸気開閉装置3が開くと、ボイラー1で発生した蒸気が蒸気経路29を介して蒸気ノズル4に送られ、蒸気吐出口6から吐出される。
【0022】
蒸気ノズル4は、蒸気取り入れ口5と蒸気吐出口6とを有し、蒸気取り入れ口5は蒸気経路29と連接している。また、空気取り入れノズル8の空気取り入れ口7とも連接し、これを介して蒸気経路29に分岐して設けた分岐経路30と連通している。
【0023】
空気取り入れノズル8は、分岐経路30を通じて、多数の通路より構成された凝縮器16と連設され、凝縮器16の出口17はトレイ18上に大気開放されている。
【0024】
蒸気ノズル4は空気取り入れノズル8に嵌着され、シールリングA9aでシールされている。また、空気取り入れノズル8内の蒸気ノズル4との連通部には、弾性体取り付け台10が収納され、シールリングB9bでシールされている。
【0025】
弾性体取り付け台10の中央部は弾性体11を挿入する取り付け穴12が設けられ、その周囲に設けられた複数の空気取り入れ穴13を開放するように突出している。弾性体11は、取り付け穴12と嵌合する一部に膨らみを設けた脚部14と、空気取り入れ口との連通部である空気取り入れ穴13を覆う傘部15とからなっている。
【0026】
以上のように構成された蒸気加熱装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0027】
手動蒸気開閉装置3を解放すると、蒸気ノズル4の蒸気取り入れ口5に蒸気が流れ込み、図3(a)に示すように、弾性体11の傘部15が蒸気圧により変形し、弾性体取り付け台10の空気取り入れ穴13を封止する。蒸気は蒸気吐出口6より吐出し、ミルクを撹拌加熱する。蒸気には空気も含まれているため泡立つことになる。
【0028】
手動蒸気開閉装置3を閉鎖すると、経路内が急冷され負圧となる。この時、図3(b)に示すように、弾性体11の傘部15が元の状態に戻り、空気取り入れ穴13より空気が流れ込む。
【0029】
以上のように、本実施の形態においては、手動蒸気開閉装置3を閉鎖した時、空気取り入れ穴13より空気が流れ込むため、経路がすぐ大気圧に戻るため、ミルクを吸い込むことはない。
【0030】
また、弾性体11の傘部15に異物が噛んでも蒸気吐出口6からの蒸気吐出量の方が圧倒的に多く、少量の蒸気は空気取り入れノズル8より凝縮器16に流れ込み、冷却されて出口17よりトレイ18に流出するため安全である。
【0031】
(実施の形態2)
図5は、本発明の第2の実施の形態における蒸気加熱装置の弾性体取り付けの蒸気吐出後(常時)の要部断面図を示すものである。
【0032】
図5において、弾性体取り付け台23の中央部は弾性体24を挿入する取り付け穴25が設けられ、その周囲に複数の空気取り入れ穴26が配置されている。弾性体24は中央部に凸部27が設けられ、傘部28と空気取り入れ穴26に隙をもたせている。
【0033】
蒸気発生時は、傘部28が弾性体取り付け台23に密着し、空気取り入れ穴26を封止し、蒸気吐出後(常時)は、弾性体24の傘部28が元の状態に戻り、空気取り入れ穴26より空気が流れ込む。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては、手動蒸気開閉装置3を閉鎖した時、空気取り入れ穴26より空気が流れ込むため、経路がすぐ大気圧に戻るため、ミルクを吸い込むことはない。
【0035】
(実施の形態3)
図6は、本発明の第3の実施の形態における蒸気加熱装置の弾性体取り付け台の斜視図を示すものである。
【0036】
弾性体取り付け台19の中央部は弾性体11を挿入する取り付け穴20が設けられ、その周囲に複数の空気取り入れ穴21が配置され、これに放射線状に溝22が設けられている。
【0037】
蒸気発生時は、溝22に弾性体11の傘部15が密着して空気取り入れ穴21と溝22を封止し、蒸気吐出後(常時)は、弾性体11の傘部15が元の状態に戻り、空気取り入れ穴21より空気が流れ込む。
【0038】
以上のように、本実施の形態においては、手動蒸気開閉装置3を閉鎖した時、空気取り入れ穴21より空気が流れ込むため、経路がすぐ大気圧に戻るため、ミルクを吸い込むことはない。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる蒸気加熱装置は、構造が簡単で、安全且つ安価なミルク吸い上げ防止機構を提供することができる上に、圧力逃がし弁として圧力開放後の外気取り入れ圧力がなく、外気開放応答性も優れているので、蒸気を利用する調理機器等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0040】
1 ボイラー
2 蒸気導入パイプ
3 手動蒸気開閉装置
4 蒸気ノズル
5 蒸気取り入れ口
6 蒸気吐出口
7 空気取り入れ口
8 空気取り入れノズル
9a シールリングA
9b シールリングB
10、19、23 弾性体取り付け台
11、24 弾性体
12、20、25 取り付け穴
13、21、26 空気取り入れ穴
14 脚部
15、28 傘部
16 凝縮器
17 出口
18 トレイ
22 溝
27 凸部
29 蒸気経路
30 分岐経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気経路に分岐して設けた分岐経路と、前記分岐経路内に空気取り入れ口と、弾性体と、弾性体取り付け台とを設け、前記弾性体取り付け台に設けた前記空気取り入れ口との連通部を、前記弾性体の傘部が覆設するように配し、前記弾性体の前記傘部は、蒸気圧がかかったときに前記空気取り入れ口との前記連通部を封止し、常時は前記連通部を開放して前記経路を大気開放状態にする蒸気加熱装置。
【請求項2】
前記弾性体取り付け台は、前記弾性体の前記傘部側に突出部を設け、常時は前記連通部を開放するようにした請求項1に記載の蒸気加熱装置。
【請求項3】
前記弾性体は、前記弾性体取り付け台側の前記弾性体の傘部が覆設し且つ前記空気取り入れ口との前記連通部を封止しない位置に突出部を設け、常時は前記連通部を開放するようにした請求項1に記載の蒸気加熱装置。
【請求項4】
前記弾性体取り付け台は、前記空気取り入れ口との連通部の一部または全部に、前記弾性体の前記傘部側に溝部を設けた請求項1〜3のいずれか1項に記載の蒸気加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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