説明

蒸気加熱装置

【課題】ランニングコストを低減するとともに、多様な蒸気加熱を実現すること。
【解決手段】被加熱物3を間接加熱するジャケット6を有する加熱槽4および攪拌機5を備える蒸気加熱装置であって、第一弁7および定圧弁8を備える第一減圧蒸気供給ライン9によりボイラ2と前記ジャケット6とを接続するとともに、攪拌機5の駆動を高圧蒸気により駆動されるスチームモータ10により行い、蒸気量を調整する第二弁14およびスチームモータ10を備える第二減圧蒸気供給ライン15によりボイラ2とジャケット6とを接続し、第一弁7および第二弁14を制御する制御器19を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ボイラの高圧蒸気を減圧した減圧蒸気により被加熱物を加熱する加熱槽および加熱槽内の被加熱物を攪拌する攪拌機を備える蒸気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の蒸気加熱装置は、特許文献1にて知られている。この特許文献1の蒸気加熱装置では、攪拌機を電動モータで駆動するので、電気使用によるランニングコストが高くなる。
【0003】
攪拌機を公知のスチームモータで駆動することも考えられるが、そうすると、加熱槽へ加熱に必要な量の蒸気を供給することができず、結果として多彩な蒸気加熱を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−8379号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明が解決しようとする課題は、ランニングコストを低減するとともに、多様な蒸気加熱を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ボイラの高圧蒸気を減圧した減圧蒸気により被加熱物を間接加熱するジャケットを有する加熱槽および前記加熱槽内の被加熱物を攪拌する攪拌機を備える蒸気加熱装置であって、第一弁および前記第一弁の下流側の蒸気圧力を所定圧とする定圧弁を備える第一減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記ジャケットとを接続するとともに、前記攪拌機の駆動を前記高圧蒸気により駆動されるスチームモータにより行い、蒸気量を調整する第二弁および前記スチームモータを備える第二減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記蒸気ジャケットとを接続し、前記第一弁および前記第二弁を制御する制御器を備えたことを特徴としている。この発明は、前記第一弁は、前記定圧弁の機能をもたせたものを含んでいる。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記攪拌機の駆動を前記高圧蒸気により駆動されるスチームモータにより行うように構成しているので、前記攪拌機の駆動に要するランニングコストを低減できる。また、前記第二弁により蒸気量を調整することにより、前記攪拌機の回転速度を調整できるとともに、前記定圧弁の機能により、前記蒸気ジャケット内の蒸気圧力を所定圧力に維持しながら必要な加熱量を確保することができる。その結果、多様な蒸気加熱を実現することができるという効果を奏する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、ランニングコストを低減するとともに、多様な蒸気加熱を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施例1の蒸気加熱調理装置の概略構成図である。
【図2】同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。
【図3】この発明の実施例2の蒸気加熱調理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、攪拌機付きジャケット釜などの蒸気加熱装置に実施される。
【0011】
この実施の形態の蒸気加熱装置は、ボイラの高圧蒸気を減圧した減圧蒸気により被加熱物を間接加熱する蒸気ジャケットを有する加熱槽および前記加熱槽内の被加熱物を攪拌する攪拌機を備えている。この蒸気加熱装置は、被加熱物を食品などの被調理物とする蒸気加熱調理装置だけでなく、被加熱物を食品以外のものとした蒸気加熱装置を含むものである。
【0012】
前記加熱槽は、蒸気ジャケットを備え、蒸気ジャケットへ減圧蒸気を供給して、被加熱物の蒸気による間接加熱を行う。
【0013】
この実施の形態の特徴部分は、第一弁および第一弁の下流側の蒸気圧力を所定圧とする定圧弁を備える第一減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記蒸気ジャケットとを接続するとともに、前記攪拌機の駆動を前記高圧蒸気により駆動されるスチームモータにより行い、蒸気量を調整する第二弁および前記スチームモータを備える第二減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記蒸気ジャケットとを接続し、前記第一弁および前記第二弁を制御する制御器を備えた構成にある。
【0014】
この実施の形態によれば、前記第二弁により蒸気量を調整することにより、前記攪拌機の回転速度を所定の回転数に調整できる。そして、前記定圧弁により、前記蒸気ジャケット内の蒸気圧力を所定圧力に維持しつつ前記第二弁により蒸気量を調整したことによる蒸気量の過不足を補い、必要な加熱量を確保することができる。
【0015】
この実施の形態においては、前記第一弁は、好ましくは、蒸気流量を調整する調整弁とするが、単に蒸気の流れをON−OFFする弁とすることができる。前記定圧弁は、二次側の圧力を設定圧力に調整する機能を有するもので、減圧弁と称することができる。
【0016】
また、この実施の形態においては、加熱量の調整を正確に制御するために、好ましくは、前記制御器は、前記蒸気ジャケット内圧力を検出する圧力センサの検出値が前記設定圧力となるように、前記第一弁の開度をフィードバック制御するように構成する。
【0017】
ここで、この実施の形態の蒸気加熱装置の構成要素を説明する。前記攪拌機は、被加熱物を攪拌できるものであれば、特定の構成のものに限定されない。前記蒸気ジャケットは、被加熱物を収容する槽状の内壁と、この内槽の外側に位置する外壁との間に形成される空間に蒸気を受け入れ、被加熱物を前記内壁で間接加熱するものであればよく、特定の構成、形状のものに限定されない。
【0018】
前記スチームモータは、高圧蒸気で駆動され、高圧蒸気を減圧する膨張機部と、この膨張機部により駆動され攪拌機の回転軸に連結されるギアなどを含む回転機構部とから構成される。この回転機構部は、省略することができる。
【0019】
供給蒸気量を調整する前記第一弁および前記第二弁は、好ましくは、所謂モータバルブと称される弁を用いるが、これに限定されるものではない。
【0020】
前記制御器は、予め記憶した制御手順により、前記第一弁と前記第二弁とを制御する。この制御手順には、前記第一弁を制御して前記加熱槽による加熱量を制御する加熱量制御
手順と、前記第二弁を制御して前記スチームモータおよび前記攪拌機の回転数を制御する回転数制御手順とを含んでいる。
【0021】
また、この制御手順には、準備工程と被調理物を加熱する調理工程とを含んでいる。準備工程は、加熱工程に入る前の工程で前記蒸気ジャケット内を所定温度まで加熱する処理などが含まれる。前記加熱工程においては、時間の経過とともに、加熱量と回転数を変化させることで、多彩な蒸気加熱を行うことができる。
【0022】
前記加熱量制御手順は、前記加熱槽における加熱量が所定の加熱量となるように前記第一弁を制御する手順である。この手順には、前記加熱槽における加熱圧力が設定圧力となるように制御する蒸気圧力制御と、蒸気量制御とを含ませることができる。前記蒸気量制御は、好ましくは、第一弁の開度を設定開度としてタイマにより開放時間を制御することにより行うが、蒸気流量計により所定蒸気流量の制御を行うことができる。
【0023】
また、前記回転数制御手順における設定回転数の制御は、好ましくは、前記スチームモータまたは前記攪拌機の回転数を検出する回転数センサを設けて、検出回転数が設定回転数となるように構成する。しかしながら、設定回転数の制御は、前記スチームモータの前後の差圧と蒸気流量とを検出して行うこともできる。
【実施例1】
【0024】
この発明の蒸気加熱装置としての実施例1の蒸気加熱調理装置1を図面に従い説明する。図1は、同実施例1の蒸気加熱調理装置1の概略構成図であり、図2は、同実施例1の制御手順を説明するフローチャート図である。図1の実線矢示,破線矢示は、それぞれ高圧蒸気の流れ,減圧蒸気の流れを示す。
【0025】
(実施例1の構成)
蒸気加熱調理装置1は、ボイラ2の高圧蒸気を減圧した設定蒸気圧の減圧蒸気により被加熱物としての被調理物3を加熱する加熱槽としての調理槽4と、調理槽4内の被調理物3を攪拌する攪拌機5を備えている。調理槽4は、蒸気ジャケット6を備え、これにより蒸気ジャケット6の内側の被調理物3を間接加熱するように構成している。蒸気ジャケット6には、凝縮したドレンを排出するドレン排出管(図示省略)を備えている。
【0026】
そして、蒸気加熱調理装置1は、流量調整機能を有する第一弁7および二次側圧力を前記設定蒸気圧に保持する定圧弁8を備える第一減圧蒸気供給ライン9によりボイラ2と調理槽4の蒸気ジャケット6とを接続している。攪拌機5の駆動は、高圧蒸気により駆動されるスチームモータ10により行うように構成している。
【0027】
スチームモータ10は、高圧蒸気を減圧するスクロール式などの膨張機部11と、この膨張機部11により駆動され攪拌機5の回転軸13に連結される回転機構部13とから構成している。
【0028】
また、流量調整機能を有する第二弁14および膨張機部11を上流側からこの順に備える第二減圧蒸気供給ライン15により、第一弁7の下流側と調理槽4とを接続している。この第二減圧蒸気供給ライン15の膨張機部11下流側には、膨張機部11方向への蒸気の逆流を阻止する逆止弁16を備えている。
【0029】
さらに、蒸気加熱調理装置1には、回転機構部13において攪拌機5の回転数を検出する回転数センサ17と蒸気ジャケット6内の圧力を検出する圧力センサ18とからの信号を入力して、予め記憶した制御手順により、第一弁7および第二弁14を制御する制御器19を備えている。
【0030】
この制御手順には、図2に示すように、第一弁7を制御して調理槽4による加熱量を制御する加熱量制御手順と、第二弁14を制御して膨張機部11および攪拌機5の回転数を制御する回転数制御手順とを含んでいる。
【0031】
また、この制御手順には、図2に示すように、蒸気ジャケット6内の圧力を設定圧力P1とする準備工程(S1およびS2)と、蒸気ジャケット6の圧力Nが設定圧力P1として蒸気ジャケット6へ所定の蒸気量を供給するとともに攪拌機5の回転数Nを設定回転数N1として被調理物3を加熱する加熱工程(S3およびS4)とを含んでいる。
【0032】
この調理工程における設定回転数N1は、被調理物3の種類により、また調理の種類により可変設定できるように構成している。また、設定圧力P1は、この実施例1では固定であるが、前記定圧弁8の設定圧(設定圧力P1とほぼ等しい)を変えることで、調整可能に構成することができる。
【0033】
符号20は、第一減圧蒸気供給ライン9および第二減圧蒸気供給ライン15の合流後のラインに設けたセパレータであり、符号21は、セパレータ20で分離されたドレンを排出するドレン排出ラインである。
【0034】
(実施例1の動作)
つぎに、実施例1の動作を図1および図2に基づき説明する。今、ボイラ2が運転され、所定の高圧蒸気が供給可能な状態であるとする。調理槽4の蒸気ジャケット6の内側に被調理物3を入れておく。制御器19は、処理ステップS1(以下、処理ステップSNは、単にSNと称する。)において、第一弁7を開き、第二弁14を全閉とする。すると、定圧弁8にて所定圧に減圧された蒸気が蒸気ジャケット6内へ供給される。ついで、S2において、圧力センサ18の検出圧力Pが設定圧力P1以上で所定準備工程時間(第一設定時間)が経過するかどうかを判定する。S2でYESが判定されると、準備工程を終了する。この準備工程では、第二弁14は全閉に制御され、攪拌機5は、停止している。
【0035】
ついで、S3において、制御器19は、第一弁7の開度を圧力センサ18の検出圧力が設定圧力P1以上となるように制御するとともに、第二弁14の開度を回転数センサ17の検出値が設定回転数N1となるように制御する。S3により、被調理物3は、攪拌機5による攪拌を受けながら、蒸気ジャケット6に供給される設定圧力P1の蒸気により加熱調理される。S4において、所定調理工程時間(第二設定時間)が経過したかどうかが判定され、YESが判定されると、S5へ移行して、第一弁7を閉じ、第二弁14を全閉として調理工程を終了する。
【0036】
この実施例1によれば、第一弁7および定圧弁8により、調理槽4における必要蒸気量が確保され、その上で第二弁14の開度を調整して、攪拌機5の回転数を所定回転数N1に制御するように構成している。その結果、攪拌機5の回転数を変化させるべく第二弁14の開度を調整しても、調理槽4へ供給される蒸気量が確保される。
【実施例2】
【0037】
この発明は、前記実施例1に限定されるものではなく、図3に示す実施例2のように、第二減圧蒸気供給ライン15の一端を第一弁7の上流側に接続することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 蒸気加熱調理装置(蒸気加熱装置)
2 ボイラ
4 調理槽(加熱槽)
5 攪拌機
6 蒸気ジャケット
7 第一弁
8 定圧弁
9 第一減圧蒸気供給ライン
10 スチームモータ
14 第二弁
19 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの高圧蒸気を減圧した減圧蒸気により被加熱物を間接加熱するジャケットを有する加熱槽および前記加熱槽内の被加熱物を攪拌する攪拌機を備える蒸気加熱装置であって、
第一弁および前記第一弁の下流側の蒸気圧力を所定圧とする定圧弁を備える第一減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記ジャケットとを接続するとともに、
前記攪拌機の駆動を前記高圧蒸気により駆動されるスチームモータにより行い、
蒸気量を調整する第二弁および前記スチームモータを備える第二減圧蒸気供給ラインにより前記ボイラと前記ジャケットとを接続し、
前記第一弁および前記第二弁を制御する制御器を備えたことを特徴とする蒸気加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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