説明

蒸気用差圧流量計

【課題】蒸気に適した差圧流量計を提供する。
【解決手段】差圧流量計は、測定対象の蒸気が流れるダクト(100)に配置されるオリフィス板(12)と、差圧計(14)と、導圧管(16)と、均圧弁(20)と、補管(22)とを備える。導圧管(16)は、オリフィス板(12)に対して上流位置及び下流位置でダクト(100)に流体的に接続されかつ差圧計(14)に流体的に接続される。補管(22)は、導圧管(16)から実質的に独立して設けられ、ダクト(100)からのドレンが流れる。また、補管(22)は、オリフィス板(12)に対して上流位置及び下流位置でダクト(100)に流体的に接続されかつ均圧弁(20)に流体的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気用差圧流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流量を計測する装置として、オリフィス板を用いた差圧流量計が知られている(例えば、特許文献1参照)。こうした差圧流量計において、流体が流れるダクトに接続された上流側導圧管と下流側導圧管との間の差圧が測定され、その測定結果に基づき流量が算出される。また、差圧流量計において、管内の圧力差を一時的に解消するための均圧弁が設けられる場合がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−183213号公報
【特許文献2】特開2009−41924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象の流体が蒸気である場合、ダクトや導圧管内にドレン(液体)がたまりやすい。こうした管内のドレンは、計測精度の低下を招きやすい。
【0005】
本発明は、蒸気に適した差圧流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、測定対象の蒸気が流れるダクトに配置されるオリフィス板と、差圧計と、前記オリフィス板に対して上流位置及び下流位置で前記ダクトに流体的に接続されかつ前記差圧計に流体的に接続される導圧管と、前記差圧計の測定結果に基づき、前記蒸気の流量を算出する演算部と、均圧弁と、前記導圧管から実質的に独立して設けられ、前記ダクトからのドレンが流れる補管であって、前記オリフィス板に対して上流位置及び下流位置で前記ダクトに流体的に接続されかつ前記均圧弁に流体的に接続される、前記補管と、を備える、差圧流量計が提供される。
【0007】
この差圧流量計によれば、差圧計用の管が、均圧弁用の管に対して実質的に別ルートとなっているので、測定対象が湿り蒸気であっても、ドレンによる計測精度の低下が抑制され、流体の流量を安定的に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】一実施形態に係る差圧流量計を示す側面図である。
【図2】一実施形態に係る差圧流量計を示す平面図である。
【図3】一比較例に係る差圧流量計を模式的に示す図である。
【図4】図3に示す流量計から出力された差圧データの一例を示す図である。
【図5】図1及び図2に示す流量計から出力された差圧データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態にかかる流量計(差圧流量計)を示す側面図である。図2は、本実施形態にかかる差圧流量計を示す平面図である。
【0010】
図1に示すように、流量計10は、オリフィス板12と、差圧計(差圧トランスミッタ)14と、導圧管16と、演算部18と、均圧弁20と、補管22と、ドレン用の電磁弁24,25と、圧力計26と、制御装置70とを備える。
【0011】
オリフィス板12は、測定対象の蒸気が流れるダクト100に配置され、ダクト100の内径(D)に比べて小さい開口絞り(d)(オリフィス)102を有する。絞り径比(d/D)は、ダクト100の口径、使用圧力、使用温度、最大流量などのパラメータに基づき適宜に決定される。絞り径比を比較的小さく設定することにより、後述する貯溜ドレンの影響下にあっても、比較的大きな差圧の確保が可能となり、測定精度の安定化が図られる。
【0012】
差圧計(差圧トランスミッタ)14は、導圧管16を介して、オリフィス板12を間に挟んだ上流側と下流側との間のダクト100内の差圧を計測する。差圧計14としては、公知の様々なタイプが適用可能である。
【0013】
導圧管16は、差圧計14とダクト100とを流体的に接続する。本実施形態において、導圧管16は、オリフィス板12に対して上流位置でダクト100に流体的に接続されかつ差圧計14に流体的に接続される第1導圧管16Aと、オリフィス板12に対して下流位置でダクト100に流体的に接続されかつ差圧計14に流体的に接続される第2導圧管16Bとを含む。
【0014】
本実施形態において、第1導圧管16Aは、縦管161と、横管162とを有する。縦管161は、差圧計14に接続され、垂直方向に実質的に沿って配置されている。横管162は、縦管161及びダクト100に接続され、水平方向又は傾斜方向に実質的に沿って配置されている。
【0015】
本実施形態においては、ダクト100において、オリフィス板12の設置箇所にフランジ(上流フランジ104A、下流フランジ104B)が設けられている。各フランジ104A,104Bには、導圧管16が接続されるポート(横ポート)110,111と、補管22が接続されるポート(下ポート)112,113とが設けられている。各ポート110−113は、ダクト100の内部空間に流体的につながっている。
【0016】
同様に、第2導圧管16Bは、縦管163と、横管164とを有する。縦管163は、差圧計14に接続され、垂直方向に実質的に沿って配置されている。横管164は、縦管163及びダクト100に接続され、水平方向又は傾斜方向に実質的に沿って配置されている。
【0017】
本実施形態において、ポート110は、上流フランジ104Aの横側に設けられ、ポート111は、下流フランジ104Bの横側に設けられる。また、ポート112は、上流フランジ104Aの下側に設けられ、ポート113は、下流フランジ104Bの下側に設けられる。第1導圧管16Aの横管162の一端がポート110に接続され、他端が縦管161に接続される。また、第2導圧管16Bの横管164の一端がポート111に接続され、他端が縦管163に接続される。本実施形態において、横管162,164は、斜めに配置される。横管162,164のダクト100の側の端部が比較的低く、縦管161,163側の端部が比較的高い。横管162,164が斜めに配置されていることにより、重力作用により、横管162,164内の液体がダクト100に向けて流れることが促される。
【0018】
演算部18は、差圧計14からの出力に基づき、蒸気流量データを出力する。次式は、同心オリフィスにおける流量計算式である。ここで、G:質量流量[kg/s]、α:流量係数、ε:気体の膨張係数、F:絞り穴の断面積[m2]、g:重力加速度[m/s2]、γ:オリフィス上流側における流体の比重、ΔP:差圧、d:オリフィス内径[m]である。
【0019】
【数1】

【0020】
均圧弁20は、メンテナンス時やドレン排出時における管内圧力差に基づく衝撃を緩和させるためのものである。本実施形態において、均圧弁20は、電磁弁である。均圧弁20が開となることにより、高圧側管と低圧側管とが流体的につながり、両者の圧力差がなくなる。均圧弁20の開閉のタイミングは、制御装置70によって制御される、あるいは手動制御される。
【0021】
補管22は、導圧管16から実質的に独立して設けられ、ダクト100からのドレンが流れる。また、補管22は、オリフィス板12に対して上流位置でダクト100に流体的に接続されかつ均圧弁20に流体的に接続される第1補管22Aと、オリフィス板12に対して下流位置でダクト100に流体的に接続されかつ均圧弁20に流体的に接続される第2補管22Bとを含む。均圧弁20を開とすることにより、少なくとも第1補管22Aと第2補管22Bとの間の圧力差が解消される。
【0022】
本実施形態において、第1補管22Aは、ダクト100の上流フランジ104Aのポート(下ポート)112に接続される第1端と、ドレン用の電磁弁24に接続される第2端と、均圧弁20に接続される第3端とを有する。同様に、第2補管22Bは、ダクト100の下流フランジ104Bのポート(下ポート)113に接続される第1端と、ドレン用の電磁弁24に接続される第2端と、均圧弁20に接続される第3端とを有する。第1補管22A及び第2補管22Bは、概ね、ダクト100に比べて低位置に配置される。本実施形態において、均圧弁20に接続される第3端が、第1端及び第2端に比べて高位置に配され、その結果、均圧弁20へのドレンの流入が抑制されている。
【0023】
本実施形態において、第1導圧管16Aの横管162と、第1補管22Aとの間がバイパス管166を介して流体的につながっている。また、第2導圧管16Bの横管164と、第2補管22Bとの間がバイパス管167を介して流体的につながっている。第1導圧管16Aの横管162内のドレンの少なくとも一部がバイパス管166を介して第1補管22Aに流れる。第2導圧管16Bの横管164内のドレンの少なくとも一部がバイパス管167を介して第2補管22Bに流れる。
【0024】
電磁弁24,25が開のとき、ダクト100内のドレン、及び、第1補管22A及び第2補管22B内のドレンが外部に排出される。電磁弁24,25の開閉のタイミングは、制御装置70によって制御される、あるいは手動制御される。
【0025】
差圧計14による差圧測定の際には、均圧弁20が閉、ドレン用の電磁弁24,25も閉となる。ドレン排出の際には、まず、均圧弁20が開となり、その後、ドレン用の電磁弁24,25が開となる。また、ドレン排出後、まず、電磁弁24,25が閉となり、その後、均圧弁20が閉となる。
【0026】
以上説明したように、本実施形態において、差圧計14用の管(導圧管16)が、均圧弁20用の管(補管22)に対して実質的に別ルートとなっている。そのため、均圧弁20の開閉の影響が差圧計14に関するルートに及ぶのが軽減される。その結果、ドレン排出動作に伴って計測精度が低下することが抑制される。また、ドレン排出動作を任意のタイミングで繰り返し行うことにより、ドレン貯溜に伴う計測精度の低下が回避される。したがって、差圧計14の計測精度が安定的に維持される。
【0027】
また、本実施形態において、測定対象の流体は湿り蒸気(湿り飽和蒸気)であり、凝縮した蒸気はドレンとなる。差圧計14に直接的につながった導圧管16の縦管161,162内には、ドレン(液体、水)が貯溜される。このとき、縦管161,162内の貯溜液体の一部は、差圧計14に接する。貯溜液体の介在により、ダクト100を流れる高温蒸気が直接に差圧計14に接するのが防止され、蒸気の熱影響が差圧計14に及ぶのが防止される。追加的又は代替的に、運転前に、熱影響防止用の液体(水)を縦管161,162内に注入しておくことができる。他の実施形態において、流量計10は、湿り蒸気以外の蒸気の流量を計測することが可能である。
【0028】
また、本実施形態において、ダクト100に対する導圧管16の接続位置(ポート110,111)が、ダクト100の横側にある。そのため、ダクト100内にたまったドレンの水頭圧が差圧計14に影響するのが防止される。本実施形態において、導圧管16の横管162,164の軸が斜めに配置されているので、縦管161,163の容量を超えてドレン(液体)が導圧管16に溜まることが回避される。その結果、導圧管16(縦管161,163)内に溜まった液体の液面レベルが比較的一定に保たれる。また、2つの縦管161,163の間において、両者の液面レベルを実質的な同一レベルに保つことができる。これは、差圧を高精度に測定する上で有利である。
【0029】
このように、本実施形態によれば、測定対象が湿り蒸気であっても、貯溜されたドレンの影響による計測精度の低下が抑制され、したがって、流体の流量を安定的に測定することができる。
【0030】
図3は、1つの比較例における差圧流量計を模式的に示している。
図3に示す比較例において、差圧流量計210は、オリフィス板212と、差圧計(差圧トランスミッタ)214と、導圧管216と、不図示の演算部と、均圧弁220と、補管222と、ドレン用の電磁弁224,225と、圧力計226と、不図示の制御装置とを備える。
【0031】
差圧計214は、導圧管216を介して、オリフィス板212を間に挟んだ上流側と下流側との間のダクト100内の差圧を計測する。演算部は、差圧計214からの出力に基づき、流量データを出力することができる。
【0032】
導圧管216は、差圧計214とダクト100とを流体的に接続する。本例において、導圧管216は、オリフィス板212に対して上流位置でダクト100に流体的に接続されかつ差圧計214に流体的に接続される第1導圧管216Aと、オリフィス板212に対して下流位置でダクト100に流体的に接続されかつ差圧計214に流体的に接続される第2導圧管216Bとを含む。
【0033】
均圧弁220は、メンテナンス時やドレン排出時における管内圧力差に基づく衝撃を緩和させるためのものである。本例において、均圧弁220は、電磁弁である。均圧弁220が開となることにより、高圧側管と低圧側管とが流体的につながり、両者の圧力差がなくなる。均圧弁220の開閉のタイミングは、制御装置によって制御される、あるいは手動制御される。
【0034】
補管222は、均圧弁220とダクト100とを流体的に接続する。本例において、補管222は、導圧管216と実質的に一体的に設けられる。また、補管222は、第1導圧管216Aと実質的に一体的に設けられかつ均圧弁220に流体的に接続される第1補管222Aと、第2導圧管216Bと実質的に一体的に設けられかつ均圧弁220に流体的に接続される第2補管222Bとを含む。
【0035】
ドレン用の電磁弁224,225は、導圧管216から独立して設けられている。電磁弁224は、オリフィス板212に対して上流位置でダクト100に流体的に接続され、電磁弁225は、オリフィス板212に対して下流位置でダクト100に流体的に接続されている。電磁弁224,225が開のとき、ダクト100内のドレンが外部に排出される。電磁弁224,225の開閉のタイミングは、制御装置によって制御される、あるいは手動制御される。
【0036】
差圧計214による差圧測定の際には、均圧弁220が閉、ドレン用の電磁弁224,225も閉となる。ドレン排出の際には、まず、均圧弁220が開となり、その後、電磁弁224,225が開となる。また、ドレン排出後、まず、電磁弁224,225が閉となり、その後、均圧弁220が閉となる。
【0037】
図4は、図3に示す流量計210から出力された差圧データの一例を示している。図4に示すように、図3の流量計210において、計測される差圧がマイナス値となる場合がある。この原因の一つは、均圧弁220を開としたとき、導圧管216に溜まっていたドレンが下流方向に移動し、その後、均圧弁220を閉としたとき、ヘッド差に応じた逆圧が生じるためと考えられる。
【0038】
図5は、図1及び図2に示す実施形態にかかる差圧流量計10から出力された差圧データの一例を示している。図5に示すように、本実施形態において、長期にわたり安定して差圧が計測されており、したがって、差圧に基づく流体流量を安定的に測定することができることが確認された。
【0039】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。上記説明において使用した数値は一例であって、本発明はこれに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付の請求の範囲によってのみ限定される。
【符号の説明】
【0040】
10:流量計、12:オリフィス板、14:差圧計、16:導圧管、16A:第1導圧管、16B:第2導圧管、18:演算部、20:均圧弁、22:補管、22A:第1補管、22B:第2補管、24:電磁弁、26:圧力計、100:ダクト、102:開口絞り、104A:上流フランジ、104B:下流フランジ、110−113:ポート、161,163:縦管、162,164:横管、166,167:バイパス管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の蒸気が流れるダクトに配置されるオリフィス板と、
差圧計と、
前記オリフィス板に対して上流位置及び下流位置で前記ダクトに流体的に接続されかつ前記差圧計に流体的に接続される導圧管と、
前記差圧計の測定結果に基づき、前記蒸気の流量を算出する演算部と、
均圧弁と、
前記導圧管から実質的に独立して設けられ、前記ダクトからのドレンが流れる補管であって、前記オリフィス板に対して上流位置及び下流位置で前記ダクトに流体的に接続されかつ前記均圧弁に流体的に接続される、前記補管と、
を備える、ことを特徴とする差圧流量計。
【請求項2】
前記ダクトは、前記ダクトの横側に設けられた、前記導圧管が接続される横ポートと、前記ダクトの下側に設けられた、前記補管が接続される下ポートと、を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の差圧流量計。
【請求項3】
前記導圧管は、前記差圧計に接続され、垂直方向に実質的に沿った縦管と、前記縦管及び前記ダクトに接続され、水平方向又は傾斜方向に実質的に沿った横管と、を有し、
前記縦管と前記横管との接続位置は、前記横ポートに比べて同じ高さ又は実質的に高位置である、ことを特徴とする請求項2に記載の差圧流量計。
【請求項4】
前記蒸気は、湿り蒸気である、ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の差圧流量計。
【請求項5】
前記補管上に配置され、前記ドレンを排出するタイミングを制御する電磁弁をさらに備える、ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の差圧流量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate