説明

蒸気発生方法、その装置及び蒸気処理装置並びに蒸気発生用記録媒体

【課題】 蒸気の生成時間の短縮が図れると共に、液分を含まない処理温度に適した温度の蒸気を安定かつ効率良く生成すること。
【解決手段】 液を含む流体例えばN2ガスに霧状のIPAを混合した流体を蒸気発生装置10の気化ユニット11に送って流体を蒸発させる気化工程と、蒸発された流体を昇温ユニット12に送って蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸気発生方法、その装置及び蒸気処理装置並びに蒸気発生用記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液体又は液的流体等の液を含む流体、例えば、窒素ガス(N2ガス)等の不活性ガス中に霧状のIPA(イソプロピルアルコール)を混合した混合流体を蒸発し、その蒸発ガスを被処理体(被乾燥体)に接触させて乾燥処理するIPA乾燥技術が知られている。そして、このIPA乾燥技術において、乾燥ガスを生成するために蒸気発生方法(装置)が使用されている。
【0003】
この蒸気発生方法(装置)においては、液を含む流体である霧状となったIPAを配管中に配設された1又は複数のヒータにより加熱することにより、IPAガス(蒸気)を生成することができる。
【特許文献1】特開平11−28349号公報(特許請求の範囲、段落番号0035〜0039,0042、図10,図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のこの種の蒸気発生方法(装置)においては、ヒータの加熱能力を流体の流れ方向に沿って複数段階に制御することで、ヒータの温度バランスを是正することができるが、流体の流れの過程において流体を蒸発するため、生成された蒸気中の液分を完全に除去するのは非常に困難であった。また、液分を完全に除去しようとすると、ヒータの温度を高めに設定する必要があり、その結果、所望の温度の蒸気が得られなかったり、また、ヒータの電力を過度に消費してしまうなどの問題があった。
【0005】
この発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、蒸気の生成時間の短縮が図れると共に、液分を含まない処理温度に適した温度の蒸気を安定かつ効率良く生成することができる蒸気発生方法及びその装置並びに蒸気処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1記載の蒸気発生方法は、液を含む流体を実質的に蒸発させる気化工程と、 蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程と、を有することを特徴とする。この場合、前記気化工程において、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱する方が好ましい(請求項2)。
【0007】
また、請求項3記載の蒸気発生方法は、請求項1又は2記載の蒸気発生方法において、前記気化工程によって蒸発した流体の温度を検出し、その検出温度に基づいて気化工程の加熱温度を制御すると共に、前記昇温工程によって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出温度に基づいて昇温工程の加熱温度を制御する、ことを特徴とする。
【0008】
また、請求項4記載の蒸気発生装置は、請求項1記載の蒸気発生方法を具現化するもので、 液を含む流体を加熱して実質的に蒸発させる第1の加熱ユニットと、 蒸発した流体を所定の温度まで加熱して昇温する第2の加熱ユニットと、を具備することを特徴とする。この場合、前記第1の加熱ユニットにおいて、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱可能に形成する方が好ましい(請求項5)。
【0009】
また、請求項6記載の蒸気発生装置は、請求項3記載の蒸気発生方法を具現化するもので、 請求項4又は5記載の蒸気発生装置において、 前記第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出する第1の温度検出手段と、 前記第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出する第2の温度検出手段と、 前記第1の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、前記第2の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第2の加熱ユニットの加熱温度を制御する制御手段と、を更に具備することを特徴とする。
【0010】
また、請求項7記載の蒸気処理装置は、請求項4記載の蒸気発生装置を包含するもので、 処理容器内に処理用蒸気を供給する蒸気供給手段と、 液を含む流体の生成手段と、
前記蒸気供給手段と流体生成手段とを接続する管路と、 前記管路の途中に配設されて前記液を含む流体を加熱して実質的に蒸発させる第1の加熱ユニットと、 前記管路の途中に配設されて前記蒸発した流体を所定の温度まで昇温する第2の加熱ユニットと、を具備することを特徴とする。この場合、前記第1の加熱ユニットにおいて、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱可能に形成する方が好ましい(請求項8)。
【0011】
また、請求項9記載の蒸気処理装置は、請求項6記載の蒸気発生装置を包含するもので、 請求項7又は8記載の蒸気処理装置において、 前記第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出する第1の温度検出手段と、 前記第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出する第2の温度検出手段と、 前記第1の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、前記第2の温温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第2の加熱ユニットの加熱温度を制御する制御手段と、を更に具備することを特徴とする。
【0012】
また、請求項10記載の発明は、請求項1記載の蒸気発生方法及び請求項4記載の蒸気発生装置を実行させるもので、コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウエアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、 上記制御プログラムは、実行時に、液を含む流体を実質的に蒸発させる気化工程と、蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程とが実行されるように、コンピュータが蒸気発生装置を制御するものである、ことを特徴とする。
【0013】
請求項1,2,4,5,10記載の発明によれば、第1の加熱ユニットによる気化工程により、液を含む流体を加熱して実質的に蒸発させた後、第2の加熱ユニットによる昇温工程により、蒸発した流体を所定の温度まで昇温することができる。この際、第1の温度検出手段が第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出し、その検出温度を制御手段に伝達し、制御手段からの制御信号に基づいて第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、第2の温度検出手段が第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出信号を制御手段に伝達し、制御手段からの制御信号に基づいて第2の加熱ユニットの加熱温度を制御することができる(請求項3,6)。
【0014】
請求項7,8記載の発明によれば、流体生成手段によって生成されて管路内に流れる液を含む流体を、第1の加熱ユニットの気化工程により、加熱して実質的に蒸発した後、第2の加熱ユニットの昇温工程により、蒸発した流体を所定の処理温度まで昇温し、処理温度まで昇温された蒸気を蒸気供給手段によって処理容器内に供給することができる。この際、第1の温度検出手段が第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出し、その検出温度を制御手段に伝達し、制御手段からの制御信号に基づいて第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、第2の温度検出手段が第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出信号を制御手段に伝達し、制御手段からの制御信号に基づいて第2の加熱ユニットの加熱温度を制御することができる(請求項9)。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、上記のように構成されているので、以下のような優れた効果が得られる。
【0016】
(1)請求項1,2,4,5,10記載の発明によれば、液を含む流体を実質的に加熱して蒸発させた後、蒸発した流体を所定の温度まで昇温することができるので、蒸気生成時間の短縮が図れると共に、液分を含まない処理温度に適した温度の蒸気を安定かつ効率良く生成することができる。
【0017】
(2)請求項3,6記載の発明によれば、第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出すると共に、第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出温度に基づいて第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、第2の加熱ユニットの加熱温度を制御するので、前記(1)に加えて、更に蒸気を安定かつ効率良く生成することができ、また、装置の信頼性の向上が図れる。
【0018】
(3)請求項7,8記載の発明によれば、流体生成手段によって生成されて管路内に流れる液を含む流体を加熱して実質的に蒸発した後、蒸発された流体を所定の処理温度まで昇温し、蒸気供給手段によって処理容器内に供給することができるので、蒸気生成時間の短縮が図れると共に、液分を含まない処理温度に適した温度の蒸気を安定かつ効率良く生成することができる。したがって、蒸気による処理効率の向上が図れる。
【0019】
(4)請求項9記載の発明によれば、第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出すると共に、第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出温度に基づいて第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、第2の加熱ユニットの加熱温度を制御するので、前記(3)に加えて、更に蒸気を安定かつ効率良く生成することができると共に、処理効率の向上が図れ、かつ、装置の信頼性の向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、この発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。ここでは、この発明に係る蒸気処理装置を半導体ウエハの洗浄・乾燥処理システムに適用した場合について説明する。
【0021】
図1は、前記洗浄・乾燥処理システムの全体を示す概略構成図、図2は、この発明に係る上記処理装置の要部を示す概略断面図である。
【0022】
上記洗浄・乾燥処理システムは、被処理体である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を収容する処理容器1と、この処理容器1内のウエハWに向かって乾燥用蒸気を供給(噴射)する蒸気供給手段である蒸気供給ノズル2と、IPA(イソプロピルアルコール)とN2ガスの混合流体の蒸気を生成するこの発明に係る蒸気発生装置10と、IPAとN2ガスの混合流体すなわちN2ガス中に霧状のIPAを混合した混合流体を生成する混合流体生成手段である2流体ノズル3と、IPA供給源に接続するIPA液を貯留するタンク4(以下にIPAタンク4という)と、N2ガス供給源5と、前記蒸気供給ノズル2,蒸気発生装置10,2流体ノズル3,IPAタンク4及びN2ガス供給源5を接続する蒸気供給管路21,混合流体供給管路22,N2ガス供給管路23及びIPA供給管路24等の配管と、で主に構成されている。
【0023】
前記蒸気発生装置10は、図2に示すように、2流体ノズル3の吐出口3cに混合流体供給管路22を介して接続され、2流体ノズル3によって生成されたIPAとN2ガスの混合流体を蒸発する第1の加熱ユニット11(以下に気化ユニット11という)と、気化ユニット11によって蒸発した流体を所定の処理温度(例えば150〜200℃)まで昇温する第2の加熱ユニット12(以下に昇温ユニット12という)を具備している。
【0024】
また、蒸気発生装置10は、気化ユニット11によって蒸発した混合流体の温度を検出する後述する第1の温度検出手段31b(以下に蒸発温度検出手段31bという)と、昇温ユニット12で昇温された蒸気の温度を検出する後述する第2の温度検出手段32c(以下に昇温温度検出手段32cという)と、蒸発温度検出手段31bが検出した温度に基づいて気化ユニット11を構成する加熱手段の加熱温度すなわち後述するハロゲンランプ13の電流を制御すると共に、昇温温度検出手段32cが検出した温度に基づいて昇温ユニット12を構成する加熱手段の加熱温度すなわち後述するハロゲンランプ13の電流を制御する制御手段40(以下にCPU40という)と、を具備している。
【0025】
この場合、気化ユニット11は2個の蒸気発生器15を具備し、昇温ユニット12は3個の蒸気発生器15を具備している。なお、気化ユニット11と昇温ユニット12における蒸気発生器15の数はこれに限定されるものではない。
【0026】
蒸気発生器15は、加熱源に光エネルギを用いており、この光エネルギを熱エネルギに変換して間接的に混合流体に熱を伝える構造となっている。すなわち、蒸気発生器15は、図3に示すように、内壁面に断熱材16を固定した密閉筒状の例えばステンレス製の容器本体17と、この容器本体17の中心軸部に架設される加熱手段であるハロゲンランプ13と、このハロゲンランプ13との間に隙間をおいてハロゲンランプ13を包囲すると共に隣接同士が互いに接触する螺旋状をなすスパイラル管14とで主に構成されている。なお、スパイラル管14の一端は容器本体17の一端側の側壁を貫通して流体の流入口14aを形成し、他端は容器本体17の他端側の側壁を貫通して流体の流出口14bを形成している。また、スパイラル管14は、ステンレス製のパイプ部材にて形成されており、その表面には輻射光吸収用の黒色塗料18が塗装されている(図4(b)参照)。このようにスパイラル管14の表面に輻射光吸収用の黒色塗料18を塗装することにより、ハロゲンランプ13から照射された光が黒色塗料18に吸収されて熱エネルギに変換されてスパイラル管14を介して間接的にスパイラル管14内を流れる流体に均一かつ効率良く伝熱することができる。
【0027】
なお、容器本体17の一端側の側壁には、N2ガス供給口17aが設けられており、後述するN2ガス供給源5Aから供給されるN2ガスを容器本体17内に供給することにより、容器本体17内をN2ガスでパージすると共に、外部雰囲気例えばIPA雰囲気が容器本体17内に侵入するのを防止することができ、蒸気発生器15の安全性の向上が図られている。
【0028】
上記のように構成される蒸気発生器15によれば、流入口14aから流出口14bに流れるN2ガス中に霧状のIPAを混合した混合流体を、ハロゲンランプ13から照射された光エネルギを吸収する黒色塗料18とスパイラル管14を介して間接的に加熱し、気化ユニット11においては混合流体を蒸発し、昇温ユニット12においては蒸発された混合流体を所定の処理温度に加熱することができる。
【0029】
なお、気化ユニット11を構成する2個の蒸気発生器15のうち一次側に配置される蒸気発生器15の流入口14aは混合流体供給管路22を介して2流体ノズル3に接続され、流出口14bは、第1の接続管路19aを介して二次側に配置される蒸気発生器15の流入口14aに接続されている。
【0030】
また、気化ユニットの二次側に配置される蒸気発生器15の流出口14bと昇温ユニット12の一次側に配置される蒸気発生器15の流入口14aは第2の接続管路19bを介して接続され、昇温ユニット12の一次側の蒸気発生器15の流出口14bと中間部に配置される蒸気発生器15の流出口14bは第3の接続管路19cを介して接続され、中間部の蒸気発生器15の流出口14bと昇温ユニット12の二次側に配置される蒸気発生器15の流入口14aは第4の接続管路19dを介して接続されている。
【0031】
このように構成される蒸気発生装置10において、第2の接続管路19bには気化ユニット11における蒸気発生器15により蒸発した流体の温度を検出する蒸発温度検出手段である蒸発温度センサ31bが介設されている。
【0032】
また、昇温ユニット12の二次側に配置される蒸気発生器15の流出口14bに接続される蒸気供給管路21の蒸気発生器15側には、蒸気発生器15により昇温された蒸気の温度を検出する昇温温度検出手段である昇温温度センサ32cが介設されている。
【0033】
なお、第1の接続管路19a,第3の接続管路19c及び第4の接続管路19dには、それぞれモニタ用の温度センサ31a,32a及び32bが介設されている。
【0034】
前記蒸発温度センサ31bと昇温温度センサ32cは、CPU40に電気的に接続されており、検出された温度情報がCPU40に伝達され、CPU40からの制御信号に基づいて各蒸気発生器15のハロゲンランプ13に接続する電力調整器50A,50Bが作動することにより、気化工程及び昇温工程の温度が制御されるようになっている。すなわち、蒸発温度センサ31bによって検出された気化ユニット11における温度情報は、CPU40から電流調整器50Aに伝達されて気化ユニット11のハロゲンランプ13が制御される。また、昇温温度センサ32cによって検出された昇温ユニット12における温度情報は、CPU40から電流調整器50Bに伝達されて昇温ユニット12のハロゲンランプ13が制御される。この場合、気化ユニット11における蒸気発生器15のハロゲンランプ13は、蒸気媒体であるIPAの沸点(82.4℃)よりやや高い温度例えばIPAの沸点より+20℃以下、好ましくは+10℃以下に設定されている。また、昇温ユニット12における蒸気発生器15のハロゲンランプ13は、蒸発した蒸気を処理温度(150〜200℃)に昇温するように設定されている。なお、モニタ用温度センサ31a,32a,32bによって検出された温度情報はCPV40に伝達され、CPU40からの制御信号に基づいて図示しないモニタ等に表示されることにより、蒸気発生装置10における蒸気の状態が監視できるようになっている。
【0035】
上記CPU40には、コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウエアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(記録媒体)が備えられており、制御プログラムに基づいて、実行時に、液を含む流体を実質的に蒸発させる気化工程と、蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程とが実行されるように、コンピュータが蒸気発生装置10を制御するように形成されている。
【0036】
なお、蒸気供給管路21にはヒータ付きのメタルフィルタ25が介設されており、このメタルフィルタ25によって処理に供される蒸気中の不純物が除去されるようになっている。
【0037】
一方、2流体ノズル3は、液状のIPAをN2ガスの流速で霧状にして蒸気発生装置10に供給するように構成されている。この2流体ノズル3におけるN2ガス供給口3aは、N2ガス供給管路23を介してN2ガス供給源5に接続されている。この場合、N2ガス供給管路23には、N2ガス供給源5側から順に減圧弁6,開閉弁V1,マスフローコントローラMF及びフィルタF1が介設されている。また、N2ガス供給管路23と混合流体供給管路22とは分岐管路26を介して接続されており、この分岐管路26には2流体ノズル3と並列する開閉弁V2が介設されている。
【0038】
このように、N2ガス供給管路23と混合流体供給管路22とを分岐管路26を介して接続すると共に、分岐管路26に2流体ノズル3と並列する開閉弁V2を介設することにより、IPA乾燥処理時には、開閉弁V2を閉じて2流体ノズル3からIPAとN2ガスの混合流体を流し、N2ガスにより乾燥処理時には、2流体ノズル3からN2ガスのみを流すと共に、開閉弁V2を開いて分岐管路26からもN2ガスを流すことによってN2ガスを大量に流すことができる。したがって、N2ガスによる乾燥処理を効率良く行うことができる。
【0039】
また、2流体ノズル3におけるIPA供給口3bは、IPA供給管路24を介してIPAタンク4の底部に設けられた吐出口4aに接続されている。この場合、吐出口4aは2個設けられており、一方の吐出口4aに接続されるIPA供給管路24に対して、他方の吐出口4aに接続されるIPA供給分岐管路24AがIPA供給管路24の途中に接続されている。そして、このIPA供給分岐管路24AとIPA供給管路24にそれぞれ互いに並列に往復駆動式のIPA供給ポンプPA,PBが介設されている。なお、IPA供給分岐管路24AとIPA供給管路24におけるIPA供給ポンプPA,PBの二次側(吐出側)にはそれぞれ逆止弁Vcが介設されており、IPA供給管路24におけるIPA供給分岐管路24Aとの接続部の二次側には圧力スイッチPSWとフィルタF3が介設されている。両IPA供給ポンプPA,PB及び圧力スイッチPSWは、CPU40に電気的に接続されており、CPU40からの制御信号に基づいて互いに位相差をもって作動するように構成されている。このように両IPA供給ポンプPA,PBに位相差をもたせて作動させることにより、IPAの供給時の脈動を抑制すると共に、IPAの供給量を正確にすることができる。この際、圧力スイッチPSWによってIPA供給ポンプPA,PBの圧力をモニタすることで流量が確認される。
【0040】
なお、IPAタンク4の上端と、IPAタンク4の底部に設けられたドレイン口4bに接続するタンクドレイン管路27にIPA量測定用の管路28が接続されている。この測定用管路28には、上方から順に、IPAタンク4内のIPAの上限量を検出する上限センサSa,IPAの適量を検出する適量センサSb,IPA供給ポンプPA,PBの動作をチェックするチェックセンサSc及び下限量を検出する下限センサSdが介設されている。これらセンサSa〜SdはCPU40に電気的に接続されており、センサSa〜Sdによって検出された信号がCPU40に伝達され、CPU40からの制御信号に基づいてIPA供給ポンプPA,PBの作動・停止やIPA供給源8とIPAタンク4とを接続する供給管路9に介設された開閉弁V0の開閉等が行われるようになっている。なおこの場合、チェックセンサScには、IPAの吐出開始から規定の通過点までの時間を吐出流量から計算し、確認するシーケンスが組み込まれている。
【0041】
また、IPAタンク4の上端には、オーバーフロー管路60が接続されており、このオーバーフロー管路60の途中に、N2ガス供給管路23のN2ガス供給源5側から分岐されたN2ガス分岐供給管路23Aが接続されている。なお、N2ガス分岐供給管路23Aには、N2ガス供給源5側から順に減圧弁6A,手動式の開閉弁Va,オリフィス7A及びフィルタF2が介設されると共に、オーバーフロー管路60の接続部の手前側(一次側)にはオリフィス29aが介設されている。
【0042】
このように構成することにより、オーバーフロー管路60を介してIPAタンク4内に常時N2ガスを供給(パージ)することができるので、IPAタンク4からIPAを吐出する時にオーバーフロー管路60から汚染された気体がIPAタンク4内に侵入するのを防止することができる。また、オーバーフロー管路60の途中にN2ガスをパージすることで、以下のような問題を解決することができる。すなわち、IPAタンク4に直接N2ガスをパージすると、IPAタンク4内のIPAの液面のガス空間のIPA雰囲気の濃度を下げて、IPAが揮発し易くなり、無駄が発生するが、オーバーフロー管路60の途中にN2ガスをパージすることで、かかる問題を解決することができる。
【0043】
また、IPA供給管路24における2流体ノズル3のIPA供給口3b側付近には開閉弁V3が介設されている。この場合、IPA供給管路24における開閉弁V3と2流体ノズル3との間には、N2ガス供給管路23から分岐された第2のN2ガス分岐管路23Bが接続されている。この第2のN2ガス分岐管路23Bには、2流体ノズル3側から順に開閉弁V4とオリフィス29bが介設されている。
【0044】
このように、IPA供給管路24における開閉弁V3と2流体ノズル3との間に、N2ガス供給管路23から分岐された第2のN2ガス分岐管路23Bを接続することにより、IPA供給ポンプPA,PBによるIPAの供給が終了した後、2流体ノズル3までのIPA供給管路24中に残留するIPAをN2ガスで2流体ノズル3に送り、IPA供給管路24中にIPAが残らないようにすることができる。したがって、N2ガスによる乾燥処理時にIPAが供給される虞がなくなる。
【0045】
なお、IPA供給管路24における開閉弁V3の一次側付近には、開閉弁V5を介設したIPAドレイン管路80が接続されている。この場合、開閉弁V5に代えて安全弁をIPAドレイン管路80に介設してもよい。
【0046】
また、前記蒸気発生装置10,2流体ノズル3,IPAタンク4,IPA供給ポンプPA,PB及びこれらの配管類は、外気から遮断されたクリーンルーム70内に配設されており、クリーンルーム70内には、N2ガス供給源5Aに接続するN2ガス供給管路23Cを介して清浄化されたN2ガスが供給されるように構成されている(図1参照)。N2ガス供給管路23Cには、N2ガス供給源5A側から順に減圧弁6B,手動式の開閉弁Vb及びオリフィス7Bが介設されている。
【0047】
なお、前記開閉弁V0,V1〜V5,マスフローコントローラMF等の機器類はCPU40に伝達に電気的に接続されており、CPU40に伝達からの制御信号に基づいて作動するように構成されている。
【0048】
次に、蒸気処理装置の動作態様について説明する。まず、開閉弁V1を開いてN2ガス供給源5からN2ガスをN2ガス供給管路23内に充填する。この状態で、開閉弁V0を開いてIPA供給源8からIPAをIPAタンク4内に供給してIPAを貯留する。
【0049】
次に、処理容器1内にウエハWを投入して、リンス処理を行った後、蒸気発生装置10のハロゲンランプ13を通電すると共に、開閉弁V2を開いて、2流体ノズル3を流れる約100リットルのN2ガスと分岐管路26を流れる大量例えば200リットルのN2ガスを、気化ユニット11及び昇温ユニット12の蒸気発生器15を構成するスパイラル管14内を流しつつハロゲンランプ13からの光エネルギによって加熱し、加熱されたホットN2ガスを処理容器1内に供給して処理容器1内をN2雰囲気に置換する。その後、開閉弁V2を閉じて2流体ノズル3のみから約100リットルのN2ガスを供給する。
【0050】
次に、IPA供給管路24に介設された開閉弁V3を開くと共に、IPA供給ポンプPA,PBを駆動して2流体ノズル3にIPAを供給する。この際、チェックセンサScによってIPAが適量供給されているかが監視される。このようにしてIPAが供給されると、2流体ノズル3によって液状のIPAがN2ガスに混合されて混合流体が生成され、混合流体供給管路22を介して蒸気発生装置10の気化ユニット11に供給され、気化ユニット11の蒸気発生器15によってIPAの沸点(82.4℃)より高く、昇温温度より低い温度例えば83℃で混合流体が蒸発される。蒸発された混合流体は、ついで昇温ユニット12の蒸気発生器15に供給され、同様に、昇温ユニット12の蒸気発生器15によって処理温度例えば200℃まで昇温される。この際、蒸発温度センサ31bと昇温温度センサ32cによって気化ユニット11の蒸発温度が検出されると共に、蒸発した流体の温度が検出され、その検出情報がCPU40に伝達され、CPU40からの制御信号によって電流調整器50A,50Bが制御されることによって、蒸発温度及び昇温温度が適正温度に維持される。
【0051】
そして、蒸気発生装置10によって生成された蒸気は、蒸気供給管路21を介して蒸気供給ノズル2から処理容器1内のウエハWに向かって供給され、ウエハWのIPA乾燥が行われる。
【0052】
IPA乾燥を行った後、IPA供給ポンプPA,PBの駆動を停止し、その後、開閉弁V3を閉じる。次に、第2のN2ガス供給分岐管路23Bに介設された開閉弁V4を開くと共に、IPAドレイン管路80に介設された開閉弁V5を開き、IPA供給管路24における2流体ノズル3と開閉弁V3との間に残留するIPAをN2ガスによって押し出す。これにより、次の乾燥工程の始動時にIPAが処理容器1内に供給されるのを確実に防止することができる。
【0053】
次に、開閉弁V2を再び開いてN2ガスを分岐管路26及び2流体ノズル3の双方から大流量(約300リットル)流して、N2ガスによってウエハWに付着するIPAを除去する。
【0054】
N2ガスによる乾燥を行った後、蒸気発生装置10のハロゲンランプ13の電源を切ると共に、開閉弁V1を閉じて処理を終了する。
【0055】
なお、前記実施形態では、この発明に係る蒸気発生装置及び蒸気処理装置が、IPAとN2ガスの混合流体の蒸気によるウエハWの乾燥装置に適用される場合について説明したが、この発明は、ウエハW以外の被処理体例えばLCDガラス基板の乾燥装置に適用することができる。また、IPAとN2ガスの混合流体以外の液を含む混合流体の蒸気発生装置や蒸気処理装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明に係る蒸気発生装置を適用した洗浄・乾燥処理システムの概略構成図である。
【図2】この発明に係る蒸気発生装置を示す概略断面図である。
【図3】前記蒸気発生装置の要部を示す断面図(a)及び(a)のI−I線に沿う断面図(b)である。
【図4】この発明における蒸気発生器の要部を示す断面図(a)及び(a)のII部を示す拡大断面図(b)である。
【符号の説明】
【0057】
1 処理容器
2 蒸気供給ノズル
3 2流体ノズル(混合流体生成手段)
4 IPAタンク
5 N2ガス供給源
10 蒸気発生装置
11 気化ユニット(第1の加熱ユニット)
12 昇温ユニット(第2の加熱ユニット)
15 蒸気発生器
21 蒸気供給管路
22 混合流体供給管路
23 N2ガス供給管路
24 IPA供給管路
31b 蒸発温度センサ(第1の温度検出手段)
32c 昇温温度センサ(第2の温度検出手段)
40 CPU(制御手段)
50A,50B 電流調整器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
液を含む流体を実質的に蒸発させる気化工程と、
蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程と、を有することを特徴とする蒸気発生方法。
【請求項2】
請求項1記載の蒸気発生方法において、
前記気化工程において、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱することを特徴とする蒸気発生方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の蒸気発生方法において、
前記気化工程によって蒸発した流体の温度を検出し、その検出温度に基づいて気化工程の加熱温度を制御すると共に、前記昇温工程によって昇温された蒸気の温度を検出し、その検出温度に基づいて昇温工程の加熱温度を制御する、ことを特徴とする蒸気発生方法。
【請求項4】
液を含む流体を加熱して実質的に蒸発させる第1の加熱ユニットと、
蒸発した流体を所定の温度まで加熱して昇温する第2の加熱ユニットと、を具備することを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項5】
請求項4記載の蒸気発生装置において、
前記第1の加熱ユニットにおいて、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱可能に形成してなることを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項6】
請求項4又は5記載の蒸気発生装置において、
前記第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出する第2の温度検出手段と、
前記第1の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、前記第2の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第2の加熱ユニットの加熱温度を制御する制御手段と、を更に具備することを特徴とする蒸気発生装置。
【請求項7】
処理容器内に処理用蒸気を供給する蒸気供給手段と、
液を含む流体の生成手段と、
前記蒸気供給手段と流体生成手段とを接続する管路と、
前記管路の途中に配設されて前記液を含む流体を加熱して実質的に蒸発させる第1の加熱ユニットと、
前記管路の途中に配設されて前記蒸発した流体を所定の温度まで加熱して昇温する第2の加熱ユニットと、を具備することを特徴とする蒸気処理装置。
【請求項8】
請求項7記載の蒸気処理装置において、
前記第1の加熱ユニットにおいて、前記液を含む流体を前記液の沸点以上に加熱可能に形成してなることを特徴とする蒸気処理装置。
【請求項9】
請求項7又は8記載の蒸気処理装置において、
前記第1の加熱ユニットによって蒸発した流体の温度を検出する第1の温度検出手段と、
前記第2の加熱ユニットによって昇温された蒸気の温度を検出する第2の温度検出手段と、
前記第1の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第1の加熱ユニットの加熱温度を制御すると共に、前記第2の温度検出手段によって検出された温度に基づいて前記第2の加熱ユニットの加熱温度を制御する制御手段と、を更に具備することを特徴とする蒸気処理装置。
【請求項10】
コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウエアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記録媒体であって、
上記制御プログラムは、実行時に、液を含む流体を実質的に蒸発させる気化工程と、蒸発した流体を所定の温度まで昇温する昇温工程とが実行されるように、コンピュータが蒸気発生装置を制御するものである、ことを特徴とする蒸気発生用記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−17097(P2007−17097A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199898(P2005−199898)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】