説明

蒸留塔のバッフル

蒸留塔、特に石油常圧残油を分留するのに用いられる減圧蒸留塔で用いるための改良された飛沫同伴除去装置は、原料供給域の下およびフラッシュ域の頂部の塔部分に配置されるバッフルを含む。バッフルは、ストリッピング域の上の開口板の形態であり、その好ましい形態では、多数の放射状フィンまたはブレード(13)を含む。この放射状フィンまたはブレードは、フィンの間に開口を有する固定ファンに類似しており、塔の下部部分からの蒸気を、バッフルを通して、最小の圧力降下で上方向に進ませる。バッフルのフィンは、好ましくは、流入する原料から30゜〜60゜の角度で離れて配向され、そのために流入する原料ストリームは、フィン(13)の頂部端の上をすれすれに進む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を、異なる沸点の留分に分離するのに用いられる蒸留塔で用いるためのバッフルに関する。それは、特に、石油液体を分留するのに用いられる減圧蒸留塔に適用可能である。しかし、それはまた、流入する原料液体から分離される成分の飛沫同伴が問題となる他のタイプの塔および装置で、典型的には他の用途における常圧塔および分留装置で用いられてもよい。
【背景技術】
【0002】
分離装置(常圧蒸留装置、減圧蒸留装置、および生成物ストリッパーなど)は、石油製油所または石油化学プラントにおける主要な処理装置である。常圧および減圧蒸留装置は、原油を、下流の処理装置(特定の規格を満たす原料材を必要とする)のために、沸点に従って留分に分離するのに用いられる。原油の初期分留においては、より高い効率およびより低いコストが、原油の分離が二工程で達成される場合に達成される。即ち、第一には、全原油が、実質的な大気圧で分留され、第二には、高沸点炭化水素のボトムストリーム(常圧残油)が、常圧蒸留装置から、大気圧未満で作動する第二の蒸留装置(減圧蒸留塔と呼ばれる)へ供給される。減圧塔内の減圧は、装置が、常圧塔からのボトム留分をより低い温度で留分に分離して、原料の熱誘導分解が回避されることを可能にする。
【0003】
減圧蒸留装置は、典型的には、常圧装置から流入するボトムストリームを、種々のガス油ストリームに分離する。これは、製油所の要求に応じて、軽質減圧ガス油、重質減圧ガス油、または減圧留出油として類別されてもよい。蒸留不可の残油またはボトム留分は、減圧蒸留装置を、液体ボトムストリームとして出る。石油精製における蒸留の使用に関する更なる情報は、非特許文献1、並びに非特許文献2および多数の他の文献に見出されるはずである。
【0004】
常圧または減圧蒸留においては、より軽質の炭化水素は、気化され、比較的より重質の炭化水素から分離される。より重質の炭化水素は、気化しなくてよいものの、それらは、飛沫同伴のために、より軽質の炭化水素中に運ばれてもよい。これは、特に、減圧塔の多くの商業設計におけるケースである。ここで、塔への二相の原料ストリームが、一般に、乱流条件下にあって、そのために分離された残油液滴が、容易に、流入する原料ストリームからフラッシュされている蒸気内に飛沫同伴される。飛沫同伴は、望ましくない。何故なら、第一に、高沸点のまたは蒸留不可の留分の存在は、それらの物理的特性(例えば粘度)には、望ましくないからであり、第二に、飛沫同伴されたより重質の炭化水素は、典型的には、金属含有化合物(バナジウムまたはニッケル化合物など)で汚染され、これが、下流の処理で用いられる触媒を被毒することがあるからである。いくらかの金属汚染物質は、気化によってより軽質の留分に入るものの、飛沫同伴の低減は、金属汚染を低減するより効果的な方法である。何故なら、それは、これらの汚染物質が濃縮されるより重質の留分であるからである。この理由から、本発明は、塔の構造またはそれらの運転仕様が再飛沫同伴の問題をもたらしている場合には、運転圧力に係らず、分留または蒸留塔に適用されてもよい。即ち、それは、常圧塔、減圧塔、および高圧塔または再飛沫同伴の低減が望ましいいかなる装置にも適用されてもよい。
【0005】
蒸留塔は、しばしば、種々の接線入口装置を用いて、遠心力が、塔に入る二相原料へ付与される。原料供給域で捕捉されない液滴は、原料供給域の直ぐ下のフラッシュ域から上昇する蒸気と共に飛沫同伴され、原料供給域の上の洗浄域へ進む。ストリッパートレーが、フラッシュ域の底部に配置される場合には、渦運動する原料の渦は、残油を、頂部のストリッパートレーから飛沫同伴し、かつ液体飛沫同伴の程度を、幾分かはトレー上の液体プールの液体/泡表面に対する原料蒸気のせん断力によって、増大する傾向を有するであろう。
【0006】
種々の工程が、以前には、減圧蒸留における飛沫同伴を減少するのに用いられるか、または提案されている。デミスターまたはワイヤメッシュパッドが、フラッシュ域および液体取出し点の間のどこかの点に設置されてもよい。デミスターまたはワイヤメッシュパッドは、しかし、完全には充分でない。何故なら、それらは、重質油および他の物質で閉塞する傾向を有するか、腐食し、孔が腐食からもたらされる傾向を有するか、または単純に、飛沫同伴を低減するのに効果的でないことがあるからである。
【0007】
デミスターパッド以外の方法はまた、多くの用途で、限定的な成功を収めているに過ぎない。フラッシュ域の上の従来のバブルキャップトレーは、蒸気を、バブルキャップトレーの上の液体を通過させてもよく、それにより蒸気が、圧力降下をもたらすことに加えて、液滴を再飛沫同伴することが可能にされる。これは、特に、減圧塔において、顕著であり得る。ここで、塔の全圧力降下(頂部〜ボトム)は、できるだけ低く保持されるべきである。
【0008】
多孔板に取付けられた多数のライザーを有し、バッフルが各ライザーの頂部に取付けられたチムニートレーがまた、用いられている。蒸気/液体の流れの二方向の変換を用いて、液体/蒸気の分離が改良されるチムニートレーが、利用可能であり、バブルキャップより低い圧力降下を有するが、それらは、依然として、飛沫同伴を減少するのに完全に効果的でないことがある。
【0009】
特許文献1(Silvey)および特許文献2(Ross)は、ライザーに基づいて、液体/蒸気の分離が改良された、減圧塔のための飛沫同伴除去トレーを記載する。種々の用途で用いられている他のタイプの飛沫同伴除去装置は、垂直の側部を有する円錐バッフルの形態をとっている。これは、減圧塔のストリッパー区域の頂部に配置される大直径のライザーの上に位置する。この装置は、効果的であったものの、それは、比較的大きく、かつ適切な垂直空間を有さない既存の装置に設置するのに適していないことがある。
【0010】
更なる問題は、石油を蒸留するのに用いられる減圧塔で起こり得る。常圧塔からのボトムストリームは、減圧塔のフラッシュ域中に進められ、そこでストリームの一部は、気化され、塔の上部部分の精留または洗浄区域中に、上方へ移動する。原料の液体(蒸発されない)部分は、塔の下部部分にあるストリッパー域のトレー上へ落下し、下部のストリッパー域から上昇する蒸気ストリームによって、並びに乱流の流入する原料ストリームによって、泡に撹拌されてもよい。即ち、泡の液体要素は、次いで、上昇する蒸気によって捕捉および飛沫同伴され、より軽質の留分と共に、塔の上部部分中に持上げられてもよい。
【0011】
【特許文献1】米国特許第4,698,138号明細書
【特許文献2】米国特許第5,972,171号明細書
【特許文献3】米国特許第4,770,747号明細書
【特許文献4】米国特許第4,315,815号明細書
【非特許文献1】Gary,J.H.およびHandwerk、G.E.「石油精製の技術および経済(Petroleum Refining Technology and Economics)」(第31〜51頁、Marcel Dekker,Inc.、1975年)(ISBN第0−8247−7150−8号)
【非特許文献2】Hobson「最新の石油技術(Modern Petroleum Technology)」(第4版、Applied Science Publishers、1973年)(ISBN第0−8533−4487−6号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、分離された液体を、蒸留塔またはカラム(特に、減圧および常圧蒸留カラム)の蒸気ストリーム中に、フラッシュ域とストリッパー域との間で再飛沫同伴する程度を減少する改良された装置を考案することが必要とされている。改良された装置は、同時に、減圧蒸留装置で用いるのに適切な最小の圧力降下をもたらすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、蒸留塔またはカラムのための改良された装置を提供する。これにより、分離された液体が、カラム内の蒸気ストリーム中に再飛沫同伴される程度が、効果的に減少される。この装置は、原料から分離された液体を含み、かつその飛沫同伴が、可能な程度へ減少されるべきである域の上に配置された原料入口を有する塔で用いるのに特に適切である。この装置は、特に、石油常圧残油を分留するのに用いられる減圧蒸留塔で用いるのに適用される。この用途では、それは、液体残油留分を蒸気ストリーム中に飛沫同伴するのを低減する能力を有し、一方同時に、知られたタイプの飛沫同伴除去装置に比較して、より小さな塔容積が占められる。構造のその簡単さはまた、建設および設置を経済的にし、同様に不具合のない運転に対する可能性が提供される。それは、原料供給装置のタイプに係らず、塔またはカラムに適用されてもよく、そのために下記される好ましい形態においては、それが接線原料入口に特に有用であるものの、接線および放射の両原料供給装置に適用されてもよい。
【0014】
本発明に従って、蒸留塔は、下部のストリッピング域、上部の精留域、並びにストリッピング域と精留域との間のフラッシュ域を有する。蒸留される原料の入口は、ストリッピング域と精留域との間に、一般にはフラッシュ域の内部およびその頂部近くに配置される。ストリッピング媒体(通常スチーム)の入口は、ストリッピング域の下部部分に配置され、そのためにストリッピング媒体は、ストリッピング域を通って上方へ進んで、より揮発性の成分が、その上のフラッシュ域からストリッピング域に入る高沸点残油物質から除去される。残油物質が、ストリッピング域から、フラッシュ域を通って精留域に上昇する蒸気ストリーム中に再飛沫同伴する程度を減少するためには、再飛沫同伴減少装置が、ストリッピング域の頂部に、バッフルの形態で提供される。このバッフルは、蒸気を、ストリッピング域から上方向に進ませるが、蒸気がフラッシュ域からストリッピング域中に下方向に流れることを防止する。このバッフルは、簡単な開口板の形態であってもよいか、またはそれは、上方向に方向付けられた蒸気の流路によって画定される上方向蒸気流の通路を有する組立バッフルの形態、例えば「卵クレート」バッフルの形態であってもよい。
【0015】
最も好ましい形態においては、再飛沫同伴減少装置は、原料供給域の下の塔部分に配置される放射状ルーバーバッフルの形態をとる。バッフルは、多数の放射状フィンまたはブレードの形態である。この放射状フィンまたはブレードは、フィンの間に開口を有する固定ファンに類似しており、塔の下部部分のストリッピング域からの蒸気を、バッフルを通して最小の圧力降下で上方向に進ませる。バッフルのフィンは、好ましくは、流入する原料ストリームが、フィンの頂部表面またはその端部をすれすれに進むように配向される。しかし、それらは、後述されるように、バッフルの面に関して、いかなる角度でも配向されてもよい。
【0016】
本発明の一態様は、原料供給域、フラッシュ域、および洗浄域を有する、蒸留塔内に配置するための飛沫同伴除去バッフルを提供することである。バッフルは、蒸気を、バッフルの下の塔部分から上方向に進ませるために、フィンの間に開口を有する複数の放射状フィンを含む。即ち、各フィンは、バッフルの中心軸を通過する面に関して角度をつけて傾斜され、そのためにフィンの上部端は、下部端に比較して、塔へ流入する原料の流れ方向に配置される。好ましくは、各フィンは、バッフルの中心軸を通過する面に関して角度をつけて傾斜され、そのためにフィンの上部端は、下部端に比較して、塔へ流入する原料の流れ方向に角度0゜〜180゜で配置される。より好ましくは、角度は、30゜〜60゜であり、各フィンのバッフルの中心軸に関する傾斜は、フィンの放射長さに沿って一定である。
【0017】
バッフルには、中央環状ハブ、および中央環状ハブから間隔を置いて配置される周辺環が含まれる。複数の放射状フィンは、中央ハブと周辺環との間に延在する。中央ハブは、液体がバッフルを通って下方向に進むための液体ダウンカマーになる開口環を含む。中央ハブには、直立する環状壁部材、および壁部材の頂部の上のカバーが含まれる。バッフルには、更に、中央環状ハブと周辺環との間に間隔を置いて配置される少なくとも一つの中間環が含まれてもよい。第一の組のフィンは、中央環状ハブと一つの中間環との間に延在し、第二の組のフィンは、中間環と周辺環との間に延在する。
【0018】
各飛沫同伴除去バッフルは、少なくとも一つの液体ダウンカマーを有して、液体を、バッフルを通して下方向に進ませる。ダウンカマーは、バッフルの中央部分に配置されてもよい。或いは、ダウンカマーは、バッフルの中心から偏らされてもよい。また、複数のダウンカマーが提供されてもよいことが考えられる。ダウンカマーは、互いに平行に延在してもよい。ダウンカマーは、互いに角度をつけて延在してもよい。
【0019】
本発明は、ここで、以下の図面と関連させて説明されるであろう。その際、同じ参照数字は、同じ要素を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、ここで、図面と関連させてより詳細に記載されるであろう。図1は、減圧塔20におけるバッフル10の位置を示し、簡単にするために塔の下部部分のみが示される。原料Fは、二つの放射状入口21、22を通って塔20に入る。これは、原料を、逆さ通路の形態で、接線入口ホーン23、24中に供給し、原料が、下方方向で、フラッシュ域25中に方向付けられる。そこでは、気化が、下から上昇する加熱された蒸気流内で始まる。二つの入口が示されるものの、本発明はそのように限定されるものではない。単一の入口または複数の入口が提供されてもよいことは予想される。入口ホーン23、24の形態は、流入する原料へ回転ベクトル運動を与え、そのためにその経路は、下方向のらせんとして考えられることができる。原料は、原料入口系によって付与される回転ベクトル運動を有して、塔の原料供給/フラッシュ域に入る。流入する原料の流れ方向(塔軸に関する)は、図2に示される矢印17によって示される。種々の他の入口ホーンの形態が、知られており、用いられてもよい。例えば、特許文献3および特許文献4に示される形態である。原料は、塔の原料供給およびフラッシュ域内で、その特徴的な回転流パターンを保持し、フラッシュ域25において、上昇する蒸気ストリームと混合する。原料からの液滴は、これらの域内の回転運動によって外方向にスピンされ、フラッシュ域の壁26上に集まる。液滴は、次いで凝集し、フラッシュ域25の傾斜する壁26と、ストリッパー域30の頂部に配置されるバッフル10の外側の周辺環11との間に形成される環状通路27に向かって下方向に進む。液体は、次いで、ダウンカマー16(図2に示されるように、バッフル10の外側環の間隙によって形成される)を通って、ストリッピング域の頂部ストリッパートレー31上へ下方に進み、次いで次のトレー32上へ、引き続いていずれかの更なるストリッパートレーへ進む。スチームストリッピング媒体の入口は、塔底部のリボイル区域33に提供される。ストリッパー域30中への液体の他の通路は、例えば、塔20の外部に形成される導管によって、またはより高い周辺環を有することによって、フィンのレベルの下にいくつかの開口を有するバッフルに提供されてもよい。フィンを通って、液体は、通路27からストリッパー域30へ進んでもよい。バッフルの下の領域から上がってくる蒸気は、流入する原料から気化された蒸気と合流し、塔の精留域中に移動する。
【0021】
上記されるように、バッフル10は、簡単な開口板の形態であってもよい。開口の全断面積は、蒸気(ストリッピング媒体、および原料からストリッピングされた蒸気を含む)を、ストリッピング域から上方向に進ませるのに十分であるべきである。平板は、平面または非平面であってもよい。例えば、開口のある広幅の円錐の形態である。ストリッピング域からの蒸気の上方向流れは、フラッシュ域の回転する流体質量が、開口を通ってストリッピング域中に下へ進むのを妨げる傾向があり、そのために頂部のストリッパートレー上の液体が、フラッシュ域の蒸気/液体の回転する質量に再飛沫同伴される程度を低減する働きをする。フラッシュ域における二相流体の所望の流れパターンを促進するために、フローベーンが、てもよい。これらのフローベーンは、単に、バッフルにU型の切れ目をあけ、金属タブを上方向に曲げて、縦方向の溝穴を有するフローベーンが形成されることによって、開口を通って進む蒸気のためのバッフル上に提供されて、蒸気を流れさせることができる。フローベーンは、同じか、または異なる方向に方向付けられてもよい、例えば、全て同じ様式か、または二つの対向する方向である。他の可能性は、フローベーンを、グループで形成することである。例えば、フラッシュ域に所望の流動パターンを提供するように方向付けられたベーンを有する反復する四角形である。
【0022】
或いは、溝が、平板の中央領域から外周に向けて外へ延在する放射状の溝として構成されてもよい。やはり、開口の全面積は、蒸気を、ストリッパー域から上方向に流れさせるのに十分であろう。即ち、放射状の溝の間の穴が開いていない領域は、蒸気が、頂部のストリッパートレー上へ下方向に流れるのを防止する働きをするであろう。この形態においては、バッフルは、次に記載される好ましい放射状ルーバーバッフルに類似する。
【0023】
他の形態のバッフルは、互いに交差して、ストリッピング域からの蒸気のための、一連の上方向に方向付けられた流路を形成する、二つのグループの細長いストリップまたは平坦な平板からなる「卵クレート」タイプのバッフルである。平板は、囲包する環に固定されて、それらが適所に固定され、それらがバッフルの面に対して正しい角度で保持されてもよい。交差する平板は、容易に、蒸気を、ストリッピング域から上方向に流れさせ、一方頂部のストリッパートレー上の液体が、フラッシュ域の回転する蒸気/液体質量によって捕捉および飛沫同伴されることを防止する。
【0024】
これらのバッフルは、再飛沫同伴を低減するのに適切ではあるものの、好ましい構造が、ここで、図面と関連させて記載されるであろう。本発明の実施形態について、バッフル10の基本的な構造要素は、放射状ルーバーバッフルと呼ばれるが、これは、図2に示される。完全なバッフル10は、回転しないものであるものの、ファンに類似する。それは、バッフル10が用いられるべき塔20の内部に適合するように寸法付けられた周辺環11を含む。中央の内部環12は、中央ハブを形成する。いくつかの放射状フィン13は、ファンのブレードに類似するが、これは、中央環12と外側の周辺環11との間に延在する。ただ一つのフィン13が、図1に示される。フィン13はそれぞれ、類似の構造を有する。各フィン13は、図2〜5に示されるように、略平面様の構造を有する。本発明は、しかし、平面構造に限定されるものではない。即ち、むしろ、図6に示される波形構造を含む他の形態が、本発明の範囲内で適切と予想され、かつそのように考えられる。フィン113の波形または曲りは、フィンの安定性を向上させ、飛沫同伴される成分の収集を高める働きをすることができる。フィン13または113は、内部環12から外方向に延在する。フィンの最上部分は、環12の頂部端の下に、しかし周辺環11の最上部端の上に配置されることが好ましい。
【0025】
図2に示されるように、一組の平行板18、19は、バッフル10を横切って、一方の側から他方へ、フィン13および中央環12のレベルより下で延在して、中央に配置された放射状の液体ダウンカマー16(各端部に、放射状に対向された液体入口を有する)が形成され、液体を、フラッシュ域25の環状通路27から、バッフル10の下のストリッパートレー31へ流れさせる。周辺環11は、それが平板18、19に合流する領域で遮断されて、液体を、そこを通して通路27から進入させる。中央環12は、図2〜6に示されるように、開口したままで、蒸気が、バッフルの下の領域から上方向に進むための更なる通路が提供されるか、或いは、それは、バッフルの開口領域が、さもなければ、必要とされる蒸気流の能力に適切である場合には、環状平板によって密閉されてもよい。
【0026】
中央環12が、蒸気流のために開口されたままである場合には、それは、開口または溝が形成された平板またはキャップで覆われてもよい。これは、蒸気を、そこを通って流れさせ、かついかなる液滴(例えば、噴霧の形態である)も、ストリッパー域中に下方に進むことを妨げる。カバーは、図8に示されるように、ロッドまたは支柱301によって、環12の頂部端で支持される平坦な環状平板300によって提供されてもよく、これにより、蒸気流を、環12の頂部端とカバー300との間を進ませる。平板300には、開口が含まれて、蒸気を、そこを通して進ませる。カバーは、ロッドまたは平坦な支柱201によって環12の頂部端の上に支持されるドーム状または円錐状のキャップまたはハット200によって提供されてもよく、これにより、図7に示されるように、蒸気流を、環の頂部端とカバーの低部周辺端部との間を進ませる。カバーまたはハットには、溝または開口302が形成され、更なる蒸気を、そこを通して進ませることができる。
【0027】
本発明は、図2に開示される配置に限定されるものではない。例えば図3〜6に開示される他のダウンカマーの配置は、本発明の範囲内で適切であると考えられる。図3は、例えば、図2(類似の要素の参照数字は、明確にするために省略される)のそれに類似の放射状ルーバーバッフルを示し、環11の周辺のある点に配置されるただ一つの弦状ダウンカマー40を有する。この場合には、平坦な平板41は、環11の周辺のある点から他の点へ、フィン13のレベルの下に弦状に延在して、液体がそこを通って進むことができるように、ダウンカマーが、平板41とカラムの内側湾曲表面との間に画定される。弦状配置は、図4(類似の要素の引用は、やはり省略される)に示されるバッフルの放射状に対向する側に繰返されてもよい。その際、平坦な平板42、43は、環11の周辺通路を横切って延在して、二つの弦状ダウンカマー44、45が、平板とカラムの内側湾曲表面との間に形成される。複数のダウンカマーを形成することは、本発明の範囲内で適切と考えられる。平坦な平板は、隣接する平坦な平板に関して、角度をつけて配置されてもよい。平板は、図4に示されるように平行であってもよい。平板は、図6に示されるように、互いに関して直角であってもよい。他の角度の配向が、本発明の範囲内で適切と予測され、かつそのように考えられる。
【0028】
放射状ルーバーバッフルのフィン13、113は、バッフルの面に比較して0°〜180°のいかなる角度にも方向付けられてもよい。即ち、それらは、バッフルの面内にあってもよい(その場合には、バッフルは、上記されるように、放射状に溝をつけたバッフルになる)か、或いはそれらは、フラッシュ域の二相の蒸気/液体系の回転方向に向くか、またはそれから離れて向くかのいずれかで、蒸気流が、上方向に進むように方向付けられてもよい。好ましい形態は、フィンが、フラッシュ域の回転と同じ方向で、ストリッパー域から上昇する蒸気に回転を与えるものである。この場合には、フィンは、角度を付けて配置され、そのために原料は、フラッシュ域におけるその回転運動の間、フィンの頂部を「すれすれに進む」。フィンは、二相の蒸気/液体系の回転方向に向かってもよいものの、それは、好ましくない。何故なら、回転流が、バッフルの下の室に入り、液体表面を撹乱して、更なる飛沫同伴がもたらされ得るからである。
【0029】
一般的な用語では、フィンの角度付け配置は、各フィンの面と、バッフルの中心軸(塔の垂直軸に一致する)を垂直に通過する放射状面との間の特性角度を引用することによって、記載されることができる。この角度は、−90°〜+90°で異なり、特性角度0°は垂直フィンを表し、角度90°はバッフルの面に平行なフィンを表す。これは、放射状溝付きバッフルに相当する。角度の向き(−または+値)は、フラッシュ域の蒸気/液体系の回転方向に比較して表わされることができる。フィンは、ストリッパーから上昇する蒸気の流路を画定し、これらの流路は、フラッシュ域における回転と同じ回転向きで、即ちフラッシュ域における二相系の流れの方向に、上昇する蒸気を方向付けることが好ましい。フィンの逆傾斜(フラッシュ域の回転と反対の蒸気流)は、一般に望ましくない。何故なら、これらの場合には、フィンは、流入する原料の下部層を「剥離し」、それを、頂部ストリッパートレー上に下方に方向付ける傾向があり得るからである。その際、それは、液体を撹拌し、再飛沫同伴を誘導するであろう。所望の方向に、例えば0°〜30°の低い特性角度は、良好な蒸気流を可能にするであろう。何故なら、フィンの軸方向または略軸方向の配置は、相応な間隔をフィン間に置くと仮定して、バッフルの下の領域からの良好な上方向の流れを可能にするであろうからである。通常、特性角度は、バッフルの中心垂直軸に比較して30°〜60°であり、45°値が最も好ましいであろう。この範囲内では、フィンは、原料ストリームが、バッフルを通って頂部のストリッパートレーの領域へ下方向に流れるのを妨げるか、または少なくともそれを遅らせ、一方同時に、蒸気が、下のストリッパーから上方向に流れるのに適切な領域が提供されるように機能するであろう。この好ましい角度配置はまた、蒸気を、エゼクター−タイプの効果によって、バッフルの下の領域から除去するのに効果的であろう。その際、原料は、角度付けられたバッフル上を吹流して、流入する蒸気が飛沫同伴される。しかし、原料蒸気が下方向に流れることは、フィンによって妨げられることから、ストリッパートレーからの残油液体の再飛沫同伴は、殆ど妨げられる。
【0030】
いかなる所定の運転においても、バッフルに最適な特性角度は、多数の変数による。原料の物理組成(一般の塔条件下での蒸気/液体比)、原料供給速度、原料供給速度に関するストリッピングガス(スチーム)の速度、塔直径、バッフルに対する入口ホーンの位置、頂部のストリッパートレーに対するバッフルの位置などである。これらの変数の間の関係は、非常に複雑である。殆どの場合においては、計算流体力学は、所定の場合に対する適切な特性角度(または角度範囲)を示すであろう。しかし、殆どの場合には、通常、角度を適切な結果のための好ましい範囲内で選択することが、十分であろう。
【0031】
特性角度は、フィンの放射長さに沿って一定である必要はなく、実際には、航空機のプロペラのように、「ねじれ」をフィンへ与え、特性角度がフィンの内部端から外部端まで異なることによって得られるべき利点があってもよい。特性角度は、やはり、塔の構造および運転上の変数によって、フィンの長さに沿って増大するか、または減少するかのいずれかであってもよい。計算流体力学または実験は、いかなる所定の場合においても、特性角度の放射変数の最適値を示すのに用いられてもよい。
【0032】
比較的大きな直径のカラムのためのバッフルで起こり得る一つの問題は、放射状フィンが、その長さに沿った支持を必要とすること、また、半径が増大するにつれて、各フィンの間の距離が対応して増大し、開口領域が、ストリッパー域からの蒸気流に必要な量を超えて増大し得ることである。これらの両問題に対処するバッフルの形態は、図5に示される。バッフルのこの変形は、中央環51と」外側の周辺環50との間に配置される中間フィン支持環60を有すること以外は、図2(類似の要素に対する参照数字は、明確にするために省略される)に示されるものに類似する。互いに類似するいくつかの内部放射状フィン52は、中央ハブと中間環60との間に延在し、各端部で、ハブおよび環に固定される。一つ以上の中間環60が提供されてもよいことが予測される。これは、フィンの複数の環をもたらすであろう。複数の中間環は、より大きな直径のバッフルに必要であることがあり、そのためにフィンは、必要な剛性を有する。いくつかの外側フィン63は、やはり互いに類似するが、これは、中間環60と周辺環50との間に延在し、それらの個々の端部で二つの環に固定される。外側フィンの数は、内部フィンの数と異なってもよい。その場合には、外側フィンの数は、通常、中間環および周辺環の間のより大きな領域を考慮して、より大きいであろう。同様に、外側フィンは、内側フィンに対して、異なって寸法付けまたは付形されてもよい。何故なら、より大きな外側領域は、より大きな横方向の寸法を有するフィンが、収納可能にするであろうからである。液体ダウンカマーは、図3に示されるものに類似する単一の弦状タイプのものである。平坦な平板64は、環50の周辺を横切って延在して、ダウンカマー入口が、平板64とカラムの内部の湾曲表面との間に形成される。
【0033】
計算流体力学は、塔の原料供給/フラッシュ域における軸方向の流速を、(典型的には、14m/秒から約2m/秒へ)低減するためのバッフルの能力を示し、塔の直径を横切る軸流の均一性が、改良される。
【0034】
程度の差はあるが、より簡単な開口板バッフルと共用される好ましい放射状ルーバーバッフルの利点には、以下のことが含まれる。
・低コストでの短期間設置:放射状ルーバーバッフルは、比較的小さく、複雑でない。即ち、それは、ハットタイプバッフルに必要とされる多大な溶接を必要としない。
・それは、サイズがより小さく、従って利用可能なフラッシュ域の容積をより少なく低減する。フラッシュ域の容積の低減という所望の特質は、原料液滴の捕捉効率に関して悪影響を及ぼし得る。
・外形が、円錐ハットより低い放射状ルーバーバッフルは、小さなフラッシュ域を有する塔に設置されることができる。即ち、また、その高い機械的コストを有する一つまたは二つのストリッピングトレーの除去、およびカットポイントの低減が不要である。
・放射状ルーバーバッフルは、円錐ハット構造に比較して、より低い再飛沫同伴の可能性を有する。これは、蒸気によってなされる「U−ターン」によるせん断力によって、液体を再飛沫同伴する可能性を有する。
・放射状ルーバーバッフルは、低い圧力降下、即ち減圧塔における非常に望ましい特性を有する。
【0035】
当業者には、種々の修正および/または変更が、本発明の範囲から逸脱することなく、なされ得ることが明らかであろう。従って、本発明は、本明細書の方法の修正および変更を、それらが、添付の特許請求の範囲およびそれらの等価物の範囲内にある限り、包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】減圧塔の概略断面図であり、減圧塔内の放射状ルーバーバッフルの位置を示す。
【図2】本発明の実施形態について、放射状ルーバーバッフルの等角投影概略図である。
【図3】本発明の他の実施形態について、修正液体ダウンカマーを有する放射状ルーバーバッフルの等角投影概略図である。
【図4】本発明の更に他の実施形態について、修正液体ダウンカマーを有する放射状ルーバーバッフルの等角投影概略図である。
【図5】本発明について、中間フィン支持リングを有する放射状ルーバーバッフルの等角投影概略図である。
【図6】本発明の他の実施形態について、放射状ルーバーバッフルの等角投影概略図である。
【図7】本発明について、中央環の開口を覆う円錐キャップを有する放射状ルーバーバッフルの概略断面図である。
【図8】中央環の開口を覆う平板を有する図7の放射状ルーバーバッフルの変型の概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料供給域、フラッシュ域および洗浄域を有する、蒸留塔内に配置するための飛沫同伴除去バッフルであって、
複数の放射状フィンを含み、前記フィンの間に、前記塔の前記バッフルより下の部分から蒸気を上方向に進ませるための開口を有することを特徴とする飛沫同伴除去バッフル。
【請求項2】
前記各フィンは、前記バッフルの中心軸を通過する面に関して角度を持って傾斜し、そのために前記フィンの上端は、下端に対し、前記塔へ流入する原料の流れ方向に変位していることを特徴とする請求項1に記載のバッフル。
【請求項3】
前記各フィンは、前記バッフルの中心軸を通過する面に関して角度を持って傾斜し、そのために前記フィンの上端は、下端に対し、前記塔へ流入する原料の流れ方向に角度0゜〜180゜で変位していることを特徴とする請求項2に記載のバッフル。
【請求項4】
前記角度は、30゜〜60゜であることを特徴とする請求項3に記載のバッフル。
【請求項5】
前記バッフルの中心軸に対する前記各フィンの前記傾斜は、前記フィンの放射長さに沿って一定であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のバッフル。
【請求項6】
液体を、前記バッフルを通して下方向に進ませるために、少なくとも一つの液体ダウンカマーを更に含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバッフル。
【請求項7】
前記少なくとも一つの液体ダウンカマーは、前記バッフルの中央部分に配置されることを特徴とする請求項6に記載のバッフル。
【請求項8】
前記少なくとも一つの液体ダウンカマーは、前記バッフルの中心から偏っていることを特徴とする請求項6に記載のバッフル。
【請求項9】
前記少なくとも一つの液体ダウンカマーは、間隔を置いて配置される二つの液体通路を含むことを特徴とする請求項6に記載のバッフル。
【請求項10】
前記少なくとも一つの液体ダウンカマーは、少なくとも二つのダウンカマーを含み、そのうち一方のダウンカマーは、他方のダウンカマーに関して角度を付けて配置されることを特徴とする請求項6に記載のバッフル。
【請求項11】
中央環状ハブ;および
前記中央環状ハブから間隔を置いて配置される周辺環
を更に含み、
前記複数の放射状フィンは、前記中央ハブと前記周辺環の間に延在することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のバッフル。
【請求項12】
前記中央ハブは、液体がバッフルを通って下方向に進むための液体ダウンカマーになる開口環を含むことを特徴とする請求項11に記載のバッフル。
【請求項13】
前記中央ハブは、直立する環状壁部材および前記壁部材の頂部の上のカバーを含むことを特徴とする請求項11に記載のバッフル。
【請求項14】
原料供給域;
フラッシュ域;
前記フラッシュ域の下に配置される下部ストリッピング域;
前記フラッシュ域の上の精留域;および
請求項1〜13のいずれかに記載の飛沫同伴除去バッフル
を含むことを特徴とする蒸留塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2009−525177(P2009−525177A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553348(P2008−553348)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/002731
【国際公開番号】WO2007/089888
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】