説明

蒸留塔及びその組立方法

【課題】建設時及びメンテナンス時の工程を削減し、作業期間の短縮を図ることを目的とする。
【解決手段】内部に空洞部を有する塔本体の内部に、充填材及び棚段の少なくとも一方からなる充填材を配した蒸留塔において、塔本体の内部の上端部にコンデンサーを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、蒸留塔、さらに詳しくは、コンデンサー及びリボイラーを組み込んだ蒸留塔に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸留塔には、連続式や回分式があるが、それらの大部分は、コンデンサーやリボイラーは、蒸留塔の外部に設けられている(特許文献1等参照)。
【0003】
その例としては、図14や図15に示されるような蒸留塔があげられる。
これらの蒸留塔1は、内部に充填物3を充填した塔本体2を有し、この塔本体2の中央部に、蒸留対象の蒸留原料供給配管4が設けられ、ここから蒸留原料が供給される。塔本体2内に供給された蒸留原料は蒸留され、留出されたガスは塔本体2の塔頂に設けられた留出配管5から外部に出て、コンデンサー6に送られる。このコンデンサー6で、留出ガスは冷却、液化され、一部が還流配管7を経由して、塔本体2の頂部に戻されると共に、残部が次工程に送られる。なお、図15においては、コンデンサー6で冷却、液化された還流液が貯留タンク6aに一時的に溜められ、一部が還流配管7を経由して、塔本体2の頂部に戻されると共に、残部が次工程に送られる。
【0004】
また、上記塔本体2内で下方に流下した残留分は、蒸留塔の塔底に配された塔底配管8から外部に送られる。この塔底配管8に送られた残留分の大部分は、リボイラー9に送られて加熱され、液体と蒸気の混相流となり、塔底部に戻される。
【0005】
ところで、このような蒸留塔の組み立ては、各部材を蒸留塔の設置場所に持ち込み、まず、蒸留塔内に、充填材を充填し、次いで、リボイラー等の蒸留塔の底部周辺部の接続を行うと共に、コンデンサー等の蒸留塔の頂部周辺部の接続を行うことにより行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−226002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、コンデンサーやリボイラーを蒸留塔の外部に設ける場合、上記のように、設置場所における作業工程が多くあり、時間がかかって効率的でない。
【0008】
これに対し、蒸留塔内への充填材の充填等、蒸留塔内部の組み込みを工場等で前もって行い、設置場所に搬送することが考えられる。この場合、設置場所での作業は、蒸留塔の設置、コンデンサー及びリボイラーの組み入れのみとなり、現地での作業の省力化を図ることができる。
【0009】
しかし、この場合、内部の組み込みを行った蒸留塔は、搬送される際、搬送中の振動等によって、充填材同士の間に隙間ができる場合がある。この場合、所定の蒸留段数を得られなくなり、十分な蒸留が困難となることがある。
【0010】
そこで、この発明は、工場で、コンデンサー、リボイラー、充填材等の組み立て及び組み入れを行い、設置場所における蒸留塔設置の際の工程を削減し、作業期間の短縮を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、内部に空洞部を有する塔本体の内部に充填材を充填した蒸留塔において、この塔本体の内部の上端部にコンデンサーを設けると共に、塔本体の内部の下端部にリボイラーを設けることにより、上記課題を解決したのである。
【0012】
また、充填材について、その下部を塔本体に固定した格子状の充填材支持部材で支持し、かつ、その上部にリング状部材を載せ、このリング状部材を上方から押さえて固定させることができる。これにより、搬送時の振動等による充填材同士間に隙間ができるのを防止できるので、前もって、工場で充填材を塔本体へ組み入れても、所定の蒸留段数を得ることが可能となる。このため、設置場所における蒸留塔設置の際の工程を削減し、作業期間の短縮を図ることに寄与することができる。
【0013】
さらに、上記塔本体の内部に配された上記コンデンサーと上記充填材との間に、上記塔本体の内壁に沿った周縁部に設けられるドーナツ状の還流液溜め部、この還流液溜め部の内周壁で囲まれた開口部、及びこの開口部の上方に設けられる、上記コンデンサーから流下する還流液を上記還流液溜め部に送る屋根部から構成される還流分配部を設け、上記還流液溜め部の内周壁及び底壁の少なくとも1箇所に還流孔を設けること、すなわち、還流分配機能を塔内に組み込んだことにより、還流液溜め部の液レベルを計測し、この還流孔から出て、下方の充填材に戻る還流液の量を計算することにより、還流液量と外部への抜き出し量を調整し、蒸留分離で重要な還流を管理することができる。
【発明の効果】
【0014】
蒸留塔の塔本体の内部の上端部にコンデンサーを設けたので、設置場所における蒸留塔設置の際の工程を削減し、作業期間の短縮を図ることに寄与することができる。
また、充填材を固定することにより、前もって、工場で充填材を塔本体へ組み入れても、搬送時の振動等による蒸留段数の低下を抑制して、所定の蒸留段数を得ることが可能となり、設置場所における蒸留塔設置の際の工程を削減し、作業期間の短縮を図ることに寄与することができる。
さらに、塔本体の内部に配された上記コンデンサーと上記充填材との間に、所定の還流分配部及び所定の調整部を設けたので、還流液量と外部への抜き出し量を調整することができ、蒸留分離で重要な還流を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明にかかる蒸留塔の例を示すプロセス図
【図2】(a)集液再分散装置の例を示す正面断面図、(b)(a)の立面断面図、(c)(a)の平面断面図
【図3】集液再分散装置の蒸留液再分散部の例を示す斜視図
【図4】(a)充填材の固定機構の例を示す立面断面図、(b)(a)のB−B断面図、(c)(a)のC−C断面図
【図5】(a)(b)塔本体上端部のコンデンサーの例を示す模式図
【図6】(a)板状体組合せ型熱交換器に用いられる板状体の例を示す正面図、(b)(a)のa−a断面図
【図7】(a)板状体のA面とA面とを組み合わせる様子を示す模式図、(b)板状体のA面とA面とを組み合わせた状態を示す模式図、(c)板状体のB面とB面とを組み合わせる様子を示す模式図、(d)板状体のB面とB面とを組み合わせた状態を示す模式図、(e)複数の板状体を組み合わせた状態を示す模式図
【図8】(a)板状体の例を示す正面図、(b)(a)に示す板状体と凸部の形成角度の異なる板状体の例を示す正面図、(c)(a)と(b)とを重ね合わせたときの状態を示す正面図
【図9】(a)この発明の板状体組合せ型熱交換器の板状体収納筒に板状体を収納する様子を示す斜視図、(b)(a)の部分拡大正面図、(c)この発明の板状体組合せ型熱交換器の端面開口の部分の拡大断面図、(d)この発明の板状体組合せ型熱交換器の正面図
【図10】(a)還流分配部の平面断面図、(b)還流分配部の拡大立面断面図
【図11】還流液溜め部に設けられた縦孔及び横孔の例を示す断面図
【図12】還流分配部からの液を抜き出す配管の例を示すプロセス図
【図13】還流比を調整するためのフロー図
【図14】従来の蒸留塔の例を示すプロセス図
【図15】従来の他の蒸留塔の例を示すプロセス図
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明にかかる蒸留塔11は、図1に示すように、内部に空洞部を有する塔本体12の内部に、充填材13を充填した塔である。この塔本体12の中央部付近に、蒸留原料Aを供給する蒸留原料配管14が設けられ、ここから、蒸留原料Aは供給される。
【0017】
上記充填材13は、この蒸留原料配管14が挿入される箇所の上部と下部の少なくとも2箇所に分けて設けるのがよい。このとき、この蒸留原料配管14の出口を、後述する集液再分散装置17の蒸留液回収部18の中央部の回収部材18aの上方となる位置に配すると、蒸留原料配管14からの蒸留原料が、集液再分散装置を通って下部の充填材13に送られるので、蒸留の効率をより向上させることができる。
【0018】
[充填材]
上記充填材13としては、規則充填物があげられる。この規則充填物は、多数の孔を有するものであり、多数の孔を開けた平板体や網状体等を円柱状、塔の形状に加工したものがあげられる。この規則充填物は、その径や高さを上記塔本体の径や高さに合わせたものが使用される。この規則充填物を用いると、性能面及び圧損をより低減することができる。このような規則充填物としては、エムシーパック(マツイマシン(株)製)等があげられる。
【0019】
この充填材13は、塔本体12内部に充填した後に搬送した場合、搬送時の振動で充填材13同士の間に隙間が生じる場合がある。これを防ぐ手段として、充填した充填材を塔本体12内に固定することが考えられる。
【0020】
この固定方法として、図4(a)〜(c)に示すように、塔本体12に充填材支持部材13aを固定し、その上に上記充填材13を載せ、そして、その上部にリング状部材13bを載せ、このリング状部材13bを上方から押さえる方法を採用することができる。
【0021】
上記充填材支持部材13aは、図4(b)に示すように、粗い格子状の形状を有しており、蒸留液や蒸留ガスは滞留させずに移動するが、充填材13は、その下部をこの充填材支持部材13aによって支持される。
【0022】
また、上記リング状部材13bは、図4(a)(c)に示すように、上記充填材13の上に載せられた部材である。そして、このリング状部材13bの上方の塔本体12内部に、係止部材13cを固定するための固定部材13dが形成される。この係止部材13cを、リング状部材13bを上方から押さえた状態で固定部材13dに固定することにより、充填材13を固定する。
【0023】
この係止部材13cの具体例としては、ボルト等があげられる。また固定部材13dの例としては、係止部材13cとしてボルトを用いる場合、このボルトと合うねじ穴をもつ、塔本体12に固定された板状体をあげることができる。
【0024】
[集液再分散装置]
上記充填材13を複数段設ける場合、1つの充填材13と次の充填材13との間に、図1や図2(a)〜(c)に示す集液再分散装置17を設けてもよい。この集液再分散装置17は、図2(a)〜(c)に示すように、上段部に設けられた蒸留液回収部18、及び、連絡路19を介して、下段部に設けられた蒸留液再分散部20から構成される。
【0025】
上記蒸留液回収部18は、上方からの蒸留液を回収する装置であり、横断面が上方に開口したV字状の回収部材18a、18bと、これら回収部材18a、18bで回収した蒸留液を連絡路19に送るための回収路18cから構成される。この回収部材18a、18bは、2枚の板状体をV字状に組み合わせた形状を有する。
【0026】
上記回収部材18aは、図2(a)に示すように、蒸留液回収部18のほぼ中央部に、塔本体12の軸方向と直角方向に配され、回収部材18bは、回収部材18aの長さ方向と回収部材18bの長さ方向が平行となるように、隣接して、複数個配される。この回収部材18bの中央部側のV字の一辺、すなわち、中央部側のV字を構成する板状体は、他の一辺(他方の板状体)より短く設けられる。これは、回収部材18bと、隣接する回収部材18a又は18bとの間に隙間が生じ、上方からの蒸留液が蒸留液回収部18から外れて漏れ落ちるのを防止するためである。
【0027】
上記の回収部材18a及び18bの底部には、それぞれ開口18dが形成され、この全ての開口18dの下方には、上記回収路18cが配される。この回収路18cには、回収部材18a及び18bで集められた蒸留液が、各開口18dを介して送られる。そして、この集められた蒸留液は、回収路18cに連結された連絡路19に送られ、次いで、連絡路19に連結された蒸留液再分散部20に送られる。
【0028】
上記蒸留液再分散部20は、連絡路19に連結された再分散主管20a、再分散主管20aに連結された再分散副管20bから構成される。この再分散主管20aは、塔本体12の軸方向と直角方向に配されると共に、上記再分散副管20bは、再分散主管20aの側面から塔本体12の軸方向と直角方向に突き出すように、1本又は複数本が配される。
【0029】
上記再分散副管20bの上部には、図3に示すように、1つ又は複数の孔20cが設けられる。また、この再分散副管20bの側周面には、その側周面の上半分の面から、再分散副管20bから離れた下方に向けて、蒸留液分散シート20dが配される。上記再分散副管20bに送られた蒸留液は、上記孔20cから溢れるようにして出る。そして、この蒸留液分散シート20dに沿って、その下端縁から充填材13に、蒸留液が移動する。この蒸留液分散シート20dは、再分散副管20bの長手方向の全体に設けられるので、上記孔20cから溢れた蒸留液が直接、充填材13に滴下されるのを防止できる。
【0030】
上記蒸留液分散シート20dは、充填材13のより広範囲に蒸留液を送ることができ、充填材13内での蒸留操作をより効率よく行うことを可能とすることができる。
【0031】
この蒸留液分散シート20dの上端縁は、上記再分散副管20bの側周面に取り付けられるが、その取付位置は、側周面の上半分の面であればよく、上記孔20cを覆う形としてもよい。ただし、孔20cを覆う場合、孔20cは塞がれないように、隙間が設けられる。
【0032】
この上記蒸留液分散シート20dの下端縁は、充填材13への蒸留液の移動を容易ならしめるため、図3に示すように、ヒダ状としてもよい。ヒダ状以外に、この下端部は、凸凹状、ジグザグ状等の形としてもよい。
【0033】
また、この蒸留液分散シート20dは、蒸留液がこのシート全面に行き渡らせるため、凸凹状、孔を開けたシート状、金網状のいずれの形態を採用してもよい。
【0034】
上記蒸留液再分散部20は、上記したリング状部材13bに取り付けられる。このため、このリング状部材13bは、充填材13を上から押さえる役目と、蒸留液再分散部20を保持する役目の両方を担うこととなる。なお、図2(a)(b)には、上記した係止部材13c及び固定部材13dを図示していない。
【0035】
ところで、この蒸留液回収部18の上方の塔本体12内周面には、図2(a)〜(c)に示すように、下端縁が内向きの傾斜を有する蒸留液誘導筒18eが取り付けられる。これにより、塔本体12内周面を伝った蒸留液は、この蒸留液誘導筒18eによって、塔本体12の内周面より少し内側に誘導され、回収部材18a又は18b上に落下する。このため、塔本体12内周面を伝って、充填材13の中に入らない蒸留液が生じるのを防止することができる。
【0036】
[コンデンサー]
上記塔本体12の内部の上端部には、コンデンサー15が設けられる。図1に示すように、コンデンサー15が塔本体12内部に設けられるので、蒸留塔自体がコンパクトになると共に、塔本体12とコンデンサー15とを接続する連結管がなくなり、保温処置等が不要となる。
【0037】
このコンデンサー15としては、図1に示すように、多数の管を何重にも配した多管式熱交換器15aの軸方向を、塔本体12の軸方向に沿わせて配したものをあげることができる。この場合、多管式熱交換器15aを塔本体12の内部に完全に収納することができる。
【0038】
また、図5(a)に示すように、この多管式熱交換器15aの軸方向を、塔本体12の軸方向に対して直角方向に配した多管式熱交換器15bを用いてもよい。
【0039】
[板状体組合せ型熱交換器]
さらに、他のコンデンサーとして、図5(b)に示すような、凹凸を有する板状体の組み合わせから形成される板状体組合せ型熱交換器15cを、塔本体12の内部の上端部に配してもよい。
【0040】
この板状体組合せ型熱交換器15cは、凹凸を有する板状体21を複数枚、組み合わせて形成したものである。この板状体21としては、図6(a)(b)に示される円盤体21aをあげることができる。
【0041】
この板状体21は、多数の並行した筋状の凸部22aが形成されると共に、周縁部に近い箇所に2箇所、孔部23が設けられたものである。この凸部22aの裏側は凹部22bを形成しており、また、孔部23の周縁は、凹部22bの底部と同じ位置(高さ)で孔部周縁平面部23aを形成する。
【0042】
この板状体21は、上記孔部23を重ね合わせて使用される。この板状体21の凸部22aが出た面(以下、「A面」と称することがある。)と他の板状体21のA面とを重ね合わせると、図7(a)(b)に示すように、一方の板状体21の凸部22aの頂部と、他方の板状体21の凸部22aの頂部が当たって重ね合わされる。そして、板状体21の凹部22bは、両隣の凸部22aの間に挟まれて、隙間部24aを形成する。また、板状体21の周縁部は、外部と連結した隙間部である開放部25が形成される。
【0043】
また、この板状体21の凸部22aが出た面と反対の面(凹部22bのある側の面、以下、「B面」と称することがある。)と他の板状体21のB面とを重ね合わせると、図7(c)(d)に示すように、2つの板状体21の周縁部同士及び凹部22bの部分が、ぴったり重なり合う。そして、板状体の凸部22aは、両隣の凹部22bの間に挟まれて、隙間部24bを形成する。
【0044】
一方、孔部周縁平面部23aは、凹部22bの底部と同じ位置(高さ)に形成されているので、隙間部24cが形成される。この隙間部24cは、孔部23と繋っている。
【0045】
ところで、図8(a)(b)に示すように、板状体21の凸部22a(凹部22b)は、2つの孔部23の中心同士を結んだ線に対し、0°より大きく、90°より小さい角度(90°より大きく、180°より小さい角度)を付けて形成し、かつ、2枚の板状体21の凸部22aを形成する角度を変えることが考えられる。この場合、2枚の板状体21のA面同士を重ね合わると、図8(c)に示すように、1枚の板状体21の凸部22a(凹部22b)と、他の1枚の板状体21の凸部22a(凹部22b)とは、交差することとなる。このとき、凹部22bで形成される隙間部24aは、網目状に連結することとなり、1つの隙間部24aに入った流れは、交差部で他の隙間部24aに移行することが可能となる。このため、1つの隙間部24aに入った流れは、全ての隙間部24aに伝播し得ることとなる。
【0046】
また、2枚の板状体21のB面同士を重ね合わせた場合、図8(c)に示す場合と同様に、1枚の板状体21の凹部22b(凸部22a)と、他の1枚の板状体21の凹部22b(凸部22a)とは、交差することとなる。このとき、凸部22aで形成される隙間部24bは、網目状に連結することとなり、1つの隙間部24bに入った流れは、交差部で他の隙間部24bに移行することが可能となる。また、一部の隙間部24bは、孔部周縁平面部23aに形成される隙間部24cを介して、孔部23と繋がる。このため、孔部23から供給される流れは、隙間部24cを通って、隙間部24bに入り、交差部で他の隙間部24bに移行することが可能となる。このため、孔部23からの流れは、全ての隙間部24bに伝播し得ることとなる。
【0047】
上記板状体21の重ね合わせは、図7(e)に示すように、1枚目の板状体21のA面に2枚目の板状体21のA面を重ね合わせ、2枚目の板状体21のB面に3枚目の板状体21のB面を重ね合わせるという重ね合わせ方を繰り返していくことにより行われる。すなわち、1枚の板状体21を、[A:B]で表したとき、
……:A]−[A:B]−[B:A]−[A:B]−[B:……
となる。
【0048】
この重ね合わせた板状体21の群を、図9(a)(b)に示すように、板状体収納筒26に挿入することにより、板状体組合せ型熱交換器15cを形成することができる。この板状体組合せ型熱交換器15cは、板状体収納筒26内に板状体21を収納した熱交換器である。この板状体収納筒26には、側周面に側面開口26a及び26bが設けられると共に、端面に端面開口26c及び26dが設けられる。
【0049】
この板状体組合せ型熱交換器15cを使用する際に、上方に向けられる側面開口26aは、下方に向けられる側面開口26bより大きな穴で形成される。これは、下方に向けられる側面開口26bが大きいと、より下方からの蒸留ガスが板状体組合せ型熱交換器15c内部に入りやすくなり、板状体組合せ型熱交換器15c内部での熱交換機能に影響を与えるからである。
【0050】
また、図9(c)(d)に示すように、この板状体組合せ型熱交換器15cの内部の板状体21の一方の孔部23に繋がるように、板状体収納筒26の一方の端面に端面開口26cを設け、また、他方の孔部23に繋がるように、他方の端面に端面開口26dを設けたとき、一方の端面開口から流体を流入させると、板状体21のB面同士を重ね合わせたときに生じる隙間部24b及び隙間部24cを経由して、他方の端面開口26dから流体を流出させることができる。
【0051】
このようにして、側面開口又は端面開口のいずれか一方から板状体組合せ型熱交換器15cに、蒸留ガスを通し、他方の端面開口又は側面開口に冷媒を流すことにより、熱交換が可能となり、蒸留ガスを液化し、還流液とすることができる。また、リボイラーとして用いた場合は、蒸留液を蒸発させることができる。
【0052】
[還流分配部]
次に、上記のコンデンサー15を塔本体12の内部の上端部に設けた場合、冷却され、液化した蒸留物である還流液は、すべて流下し、還流液溜め部32に集液される。そして、一部を充填材13に流下させ、残りを還流液として取り出して次工程に送られる場合が多い。そのため、上記コンデンサー15と充填材13との間に、図1に示すような還流分配部31を設けることが考えられる。
【0053】
この還流分配部31は、詳細は図10(a)(b)に示すように、塔本体12の内壁に沿った周縁部に設けられるドーナツ状の還流液溜め部32、この還流液溜め部32の内周壁で囲まれた開口部33、この開口部33の上方に設けられる屋根部34から形成される。この屋根部34は、コンデンサー15から落下する還流液が、開口部33から、充填材13に直接、落下するのを防止し、還流液溜め部32に送る働きを有する。
【0054】
上記の還流液溜め部32の内周壁及び底壁の少なくとも1箇所には、図11に示すように、還流孔35を有する。還流液溜め部32にきた還流液は、この還流孔35から、受け部36及び充填材13上部に設けられた液分散装置受け部37を介して、液分散装置38から充填材13の上面に均等になるように送られ、蒸留に供与される。
【0055】
ところで、上記還流液溜め部32に溜まった還流液は、上記還流液溜め部32の内周壁や底壁に設けられた孔から、図11の矢印に示されるような流れで流出する。すなわち、底壁に設けられた縦孔35aからは、還流液溜め部32に溜まる還流液の高さにしたがった流量でほぼ均一に流出する。一方、内周壁に設けられた横孔35bからは、横孔35bの設けられた位置(底壁からの高さ)によって、流出量は変わる。この横孔35bからの流量は、下記式(1)で示されるトリチェリの定理で算出することができる。
Q=C×a×(2×g×H)1/2 (1)
(なお、Qは流量(m/s)、Cは流量係数、aは孔の断面積(m)、gは重力加速度(m/s)、Hは液深(m)を示す。)
【0056】
これらから、上記還流液溜め部32に溜められる還流液の高さを所定値としたときの還流量、すなわち、上記還流液溜め部32の孔からの流出量は、計算できるので、目的の還流量にあわせて、設ける穴の位置、数及び大きさを調整することができる。
【0057】
ところで、上記還流液溜め部32に溜められる還流液の高さは、図10(b)に示すように、この還流液溜め部32に液面計39を差し込むことにより、測定することができる。この液面計39としては、上記還流液溜め部32に差し込むことができ、かつ、データの表示部分を塔本体12の外部に配置することのできる装置であればよい。そのような液面計の中でも、2線式ウェーブガイドレーダー式の液面計を用いるのがより好ましい。この液面計は、検出器の部分が一本の曲げることが可能な棒状であり、取扱いが容易であり、また、液の物性や液の流動に関わらず、正確な液レベルを表示できるという特徴を有する。
【0058】
また、図10(a)(b)、図12に示すように、上記還流液溜め部32の底部には、還流液を抜き出す抜き出し管40を有しており、この抜き出し管40を介して、塔本体12の外部に還流液を抜き出し、制御弁41、流量計42を介して、次工程に供給される。
【0059】
この発明にかかる蒸留塔11の還流比、すなわち、上記還流液溜め部32の還流孔35からの流出量と、抜き出し管40からの抜き出し量との比は、制御弁41を調整することにより設定することができる。具体的には、図13に示すように、流量計42により、流量(D)の測定を行う。また、このDの値と、液面計39による還流液溜め部32の液面高さの変化を測定し、還流量(R)を算出する。次いで、R及びDより還流比(R/D)を算出し、その値が設定値より大きい場合は、Dを増やすように制御弁41を開く方向に作動させ、一方、設定値より小さい場合は、Dを減らすように、制御弁41を閉める方向に作動させる。この調整を適宜行うことにより、還流比を所定の値に保つことができる。
【0060】
[リボイラー]
次に、上記塔本体12の内部の下端部には、図1に示すように、リボイラー16が設けられる。このリボイラー16としては、凹凸を有する板状体の組み合わせから形成されるもの、すなわち、上記した板状体組合せ型熱交換器15cと同様の板状体組合せ型熱交換器16aを用いることができる。これは、側面開口又は端面開口の一方(図1では端面開口)から熱媒体を供給し、側面開口又は端面開口の他方(図1では底面側の側面開口)に高沸分が入ることができるようにすることにより、高沸分の再加熱が可能となる。そして、この再加熱により気化したものは、上面に開口された部分(図1では、上面側の側面開口)より上昇して充填材13内に入り、再び蒸留にかけられる。一方、蒸発しない液状物は、蒸留残分として塔本体12の下端から抜き出され、次の工程に送られる。
【0061】
板状体組合せ型熱交換器16aを設ける数は、図1に記載のような2つに限られるものではなく、リボイラーとしての能力に合わせて任意に設置すればよい。また、この板状体組合せ型熱交換器16aの大きさは、塔本体12の大きさや、蒸留対象物等にあわせて、任意に選択することができる。
【0062】
上記の通り、図1において、リボイラー16を塔本体12の外部に設けた場合、リボイラー16と塔底部との接続配管の設置、及びリボイラーの取付架台等の関連設備の設置は蒸留塔の設置場所で行うことになるが、リボイラー16を塔本体12の内部の下端部に設ける場合は、リボイラー16と塔底部との接続配管、及びリボイラーの取付架台等の関連設備の設置は不要となり、設置場所での工事を短期間で済ませることが可能となる。
【0063】
上記の蒸留塔11において、コンデンサー、還流分配器、充填物、リボイラー等の組み込みを工場で行うことのできる大きさは、充填物の形状の制限から、塔径が850mmφ以下のものが好ましく、800mmφ以下のものがより好ましい。
【0064】
この発明にかかる蒸留塔の組み立ては、上記の通り、内部に空洞部を有する塔本体の内部に充填材を充填・固定すると共に、上記塔本体の内部の上端部にコンデンサーを設け、かつ、上記塔本体の内部の下端部にリボイラーを設けることにより、蒸留塔を組み上げる。これは、工場内で行うことができる。次いで、組み上げられた蒸留塔を、設置場所に運び、設置する。これにより、設置場所における工事を大幅に減らすことができ、設置場所における工事を省力化することが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
1 蒸留塔
2 塔本体
3 充填物
4 蒸留原料供給配管
5 留出配管
6 コンデンサー
6a 貯留タンク
7 還流配管
8 塔底配管
9 リボイラー
【0066】
11 蒸留塔
12 塔本体
13 充填材
13a 充填材支持部材
13b リング状部材
13c 係止部材
13d 固定部材
14 蒸留原料配管
15 コンデンサー
15a 多管式熱交換器
15b 多管式熱交換器
15c 板状体組合せ型熱交換器
16 リボイラー
17 集液再分散装置
18 蒸留液回収部
18a、18b 回収部材
18c 回収路
18d 開口
18e 蒸留液誘導筒
19 連絡路
20 蒸留液再分散部
20a 再分散主管
20b 再分散副管
20c 孔
20d 蒸留液分散シート
【0067】
21 板状体
21a 円盤体
22a 筋状の凸部
22b 筋状の凹部
23 孔部
23a 孔部周縁平面部
24a 隙間部
24b 隙間部
24c 隙間部
25 開放部
26 板状体収納筒
26a 側面開口
26b 側面開口
26c 端面開口
26d 端面開口
【0068】
31 還流分配部
32 還流液溜め部
33 開口部
34 屋根部
35 還流孔
35a 縦孔
35b 横孔
36 受け部
37 液分散装置受け部
38 液分散装置
39 液面計
40 抜き出し管
41 制御弁
42 流量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空洞部を有する塔本体の内部に充填材を充填した蒸留塔において、
上記塔本体の内部の上端部にコンデンサーを設けると共に、上記塔本体の内部の下端部にリボイラーを設けた蒸留塔。
【請求項2】
上記塔本体の内部に配された上記コンデンサーと上記充填材との間に、上記塔本体の内壁に沿った周縁部に設けられるドーナツ状の還流液溜め部、この還流液溜め部の内周壁で囲まれた開口部、及びこの開口部の上方に設けられる、上記コンデンサーから流下する還流液を上記還流液溜め部に送る屋根部から構成される還流分配部を設け、
上記還流液溜め部の内周壁及び底壁の少なくとも1箇所に還流孔を有する請求項1に記載の蒸留塔。
【請求項3】
上記コンデンサーは、多管式の熱交換器や、凹凸を有する板状体の組み合わせから形成される熱交換器である請求項1又は2に記載の蒸留塔。
【請求項4】
上記リボイラーは、凹凸を有する板状体の組み合わせから形成されるものである請求項1乃至3のいずれかに記載の蒸留塔。
【請求項5】
上記塔本体内部に充填される充填材は、その下部を塔本体に固定した格子状の充填材支持部材で支持し、かつ、その上部にリング状部材を載せ、このリング状部材を上方から押さえて固定されたものである請求項1乃至4のいずれかに記載の蒸留塔。
【請求項6】
内部に空洞部を有する塔本体の内部に充填材を充填・固定すると共に、
上記塔本体の内部の上端部にコンデンサーを、及び上記塔本体の内部の下端部にリボイラーを設けることにより、蒸留塔を組み上げ、
次いで、蒸留塔の設置場所に運び、設置する、蒸留塔の組立方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2012−110825(P2012−110825A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261507(P2010−261507)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(503266921)マツイマシン株式会社 (1)
【出願人】(510310406)
【Fターム(参考)】