説明

蓄光型碍子並びに蓄光型端末

【課題】夜間に識別が可能であり電線の位置や電線、相、回線等の視認性を向上できる蓄光型碍子並びに蓄光型端末を提供する。
【解決手段】畜光型碍子並びに蓄光型端末は、少なくとも有機材料からなるひだを有し、受光エネルギーを利用した光を発する蓄光体部を備え、蓄光型碍子並びに蓄光型端末によって識別を可能とし、例えば、電線の位置や、相、回線等を判別することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光型碍子並びに蓄光型端末に関し、特に電線や鉄塔(鉄構)に対して取り付けることにより夜間識別するための蓄光型碍子並びに蓄光型端末に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線には、飛行機や野鳥が衝突するおそれがあるので、この衝突を防ぐために、送電線には様々な標識が取り付けられることにより、送電線の存在を認識させることが考えられる。しかし、標識は昼間や周囲が明るい場合には識別可能であるが、薄暗くなった時には標識の認識は難しい場合がある。また、夜間に電線の位置や、相、回線等を判別することが難しい場合がある。
【0003】
このような問題に対して、蓄光電線リングは、略円柱型のリングであり、電線把持部に対して回転可能に設けられている。この蓄光電線リングは、軸方向に送電線を把持するための貫通穴を有し、高輝度畜光顔料を含有した樹脂により形成されることが開示される(例えば、特許文献1参照)。また、強化プラスチック製のコアの外周にゴム製の外被層を形成し、コアと外被層との間に、外被層と色の異なる赤色のゴム製の表示層を設け、碍子の長期間の使用に伴い、外被層が浸食されると、その外被層とは色の異なる表示層が外部に露出して、碍子の劣化状態が明確に表示されるノンセラミック碍子が開示される。また、その他の例として、紫外線で発光する発光剤を混入して、夜間に紫外線ライトを照射して、碍子の劣化を検出できるように構成してもよいことが開示される(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−14103号公報
【特許文献2】特開平6−96633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に開示されている蓄光電線リングを使用すると次のような問題がある。
送電線の点検時に作業者が電線に宙乗りする際に、使用する宙乗り機が電線を通過する時に通過の支障にならないようにするため、蓄光電線リングは形状を大きくすることができない。このため、蓄光電線リングの視認できる面積が十分確保できずに小さくなってしまい、発光しても視認が困難である。
【0005】
また、蓄光電線リングの視認できる面積が小さいことを補うために、数多くの蓄光電線リングを送電線に取り付けた場合には、送電線の受風面積が大きくなり、鉄塔の強度に影響が生じるので、必要以上に多くの蓄光電線リングを取り付けることは望ましくない。
また、特許文献2に開示されているノンセラミック碍子は、外被層の浸食を色の異なるゴム製の表示層を設けることで劣化状態を表示させるものである。
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解消するために、夜間に識別が可能であり電線の位置や電線、相、回線等の視認性を向上できる蓄光型碍子並びに蓄光型端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解消するために、本発明の蓄光型碍子は、少なくとも有機材料からなるひだを有する碍子であって、
前記碍子は、受光エネルギーを利用した光を発する蓄光体部を有することを特徴とする。
【0008】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだの表面の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を塗布または貼り付けして前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0009】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだの所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0010】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだの所定部分には、下層を自然色の有機材料で成型し、上層を前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合してなる有機材料で成型して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0011】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだの所定部分を半透明あるいは透明な有機材料で成型し、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を配して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0012】
また、蓄光型碍子は、前記蓄光材の蓄光する部分の色および/または蓄光しない部分との組み合わせにより、前記蓄光型碍子又は/及び鉄塔又は/及び電線の識別を可能としたことを特徴とする。
【0013】
また、蓄光型碍子は、異常電流(電圧)が発生時に、自身に前記異常電流(電圧)が印加されるような機能を有し、架空送電線の故障を防止することを特徴とする。
【0014】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、前記碍子は、鉄塔又は/及び電線または付属品と連結される機能と、前記蓄光体部とを有することを特徴とする。
【0015】
また、蓄光型碍子は、架空送電線の相間に取りつけ、前記架空送電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能としたことを特徴とする。
【0016】
また、蓄光型碍子は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、前記心材が中空であって、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、前記蓄光体部により電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能としたことを特徴とする。
【0017】
また、蓄光型碍子は、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、電線や電気機器等と接続可能な機能を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の蓄光型端末は、少なくとも有機材料からなるひだを有する端末であって、
前記端末は、受光エネルギーを利用した光を発する蓄光体部を有することを特徴とする。
【0019】
また、蓄光型端末は、柔軟性を有する前記有機材料からなり、所定の部分に前記蓄光体部を有することを特徴とする。
【0020】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだの表面の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を塗布または貼り付けして前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0021】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだの所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0022】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだの所定部分には、下層を自然色の有機材料で成型し、上層を前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合してなる有機材料で成型して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0023】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだの所定部分を半透明あるいは透明な有機材料で成型し、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を配して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする。
【0024】
また、蓄光型端末は、前記蓄光材の蓄光する部分の色および/または蓄光しない部分との組み合わせにより、前記蓄光型端末又は/及び鉄塔又は/及び電線の識別を可能としたことを特徴とする。
【0025】
また、蓄光型端末は、異常電流(電圧)が発生時に、自身に前記異常電流(電圧)が印加されるような機能を有し、架空送電線の故障を防止することを特徴とする。
【0026】
また、蓄光型端末は、その内部に所定の部材を設けるとともに、少なくとも所定の段剥ぎをした電力ケーブルを挿入し、電線や電気機器等と接続可能とし、電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能とする前記蓄光体部を有することを特徴とする。
【0027】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、前記端末は、鉄塔又は/及び電線または付属品と連結される機能と、前記蓄光体部とを有することを特徴とする。
【0028】
また、蓄光型端末は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、前記心材が中空であって、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、電線や電気機器等と接続可能とし、電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能とする前記蓄光体部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、夜間に識別が可能であり電線の位置や電線、相、回線等の視認性を向上できる蓄光型碍子および蓄光型端末を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の好ましい実施形態の蓄光型碍子が装着されている例を示す斜視図である。
【0031】
図1に示すように、蓄光型碍子1は、架空送電線の相間に取り付けされる相間スペーサ碍子である。蓄光型碍子1は、複導体(2導体)の上側の2本の電線100と、下側の2本の電線101の間に配置されて、これらの上側の2本の電線100と下側の2本の電線101が、最小絶縁間隔より接近、あるいは、接触するのを防止するための間隔を保持する役割を果たしている。この蓄光型碍子1は、電線保護ロッド121と、把持金具122と、シールドリング123を有する構造であり、電線100と電線101の間隔を保持している。このように、本発明の実施形態の蓄光型碍子1は、鉄塔2または電線100と電線101に対して、直接又は間接的に連結する機能を有している。なお、導体の本数には、単導体、4導体、6導体等がある。
【0032】
図2は、蓄光型碍子1が鉄塔2の腕金の所定位置に取り付けして、1本の電線(単導体)100、電線101、電線102が、それぞれ蓄光型碍子1に把持された、懸垂型の鉄塔2の例を示している。また、鉄塔2は、その上方から、送電電流(電圧)を区分けして上相、中相、下相とも称され、これら3つの相を1つの回線として構成される。
【0033】
図3(A)は、耐張型の鉄塔2に設置された蓄光型碍子1によって電線100を引き留めして、ジャンパー線103により電気的に接続されている例を示している。また、図3(B)のように、ジャンパー線103の振動や横振れの防止のため、中間に蓄光型碍子1Cを入れた例である。このように、本発明の実施形態の蓄光型碍子1は、鉄塔2または電線100や電線103に対して、直接又は間接的に連結する機能を有している。
【0034】
また、図3(C)は、懸垂方式で電線100を把持する蓄光型碍子1dと、異常電流(電圧)が発生した場合に、電線100側を保護するため、例えば、図示しない中空の心材の内部に限流素子等を配置して、自身に異常電流(電圧)を通過させる機能を持たせた蓄光型避雷碍子(アレスター碍子ともいう)1eを設けた例である(例えば、特開2004−158225号公報、特開平6−209514号公報を参照)。
【0035】
図4は、蓄光型碍子1の構造例を示す一部断面を有する正面図である。
図4(A)に示す蓄光型碍子1は、ひだ10と心材11と端末金具14を有する碍子である。このひだ10は少なくとも有機材料からなる。蓄光型碍子1は、受光エネルギーを利用した光を発することで蓄光型碍子1の識別をするための蓄光体部13を有する。心材11は、例えばFRP(繊維強化プラスチック)製であり、ひだ10は、耐候性を有するゴムやプラスチック等である。
【0036】
図4(A)に示すひだ10は、比較的大きなひだ部分10Bと比較的小さなひだ部分10Cが、交互に間隔をおいて長手方向Lに沿って形成されている。端末金具14は、心材11に固定されている。また、図4(B)に示すように、端末金具14は円盤状のフランジ部14Bを有している。
【0037】
ひだ10は、電気絶縁性を有する材料、プラスチックまたはゴム等により形成されている。これらの材料としては、例えばシリコンゴム、EPDM(エチレン・プロピレンゴム)、フッ素ゴム、ブチルゴム、EVA(エチレンビニールアセテート)、エポキシ樹脂ポリプロピレン、ポリカーボネイト、アクリル樹脂、ABS樹脂等、またはこれらの材料の合成物を採用できる。
【0038】
図4(A)に示すように、蓄光体部13は、少なくともひだ10の表面の所定部分である長手方向Lに沿った領域Gにおいて、受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合することで設けられている。すなわち、図4の蓄光体部13は、ひだ10の外被部に対して蓄光材を混合した混ぜた上記ゴムまたはプラスチック等から構成されており、蓄光体部13は、心材10の外周面を被覆している。このようにすれば、ひだ10を成形することにより、蓄光型碍子1を得ることができる。さらに、任意の部分に蓄光材を塗布する、または、蓄光材を貼り付けしてよい。
【0039】
これにより、蓄光型碍子1の発光のボリュームが従来の蓄光電線リングよりも大きくでき、かつ電線間に渡って接続されているので、蓄光型碍子1の夜間における識別が可能であり、視認性が高くなる。また、夜間に電線の位置や、相、回線等を判別することが可能となる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態を示している。
図5に示す蓄光型碍子1Aの構成要素は、図4(A)に示す蓄光型碍子1の構成要素とほとんど同じであるが、蓄光体部13Aの形成の方式が異なる。
図5(A)に示す蓄光体部13Aは、少なくともひだ10の表面の所定部分である長手方向Lに沿った領域Gに、受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材13Hを、ゴムまたはプラスチック等からなる下地部材10Mの所定箇所に貼り付けるか塗布する、または、蓄光材を混合したゴムまたはプラスチック等で構成されている。
【0041】
すなわち、蓄光材13Hがひだ10の下地部材10Mの外周面に対して塗布されるか、または貼り付けられる、または、蓄光材を混合したゴムまたはプラスチック等で覆うことにより配置され、蓄光材13Hが下地部材10Mの外周面において蓄光型材料により被覆したようになっている。このため、ひだ10は、下地部材10Mと蓄光材13Hの多重構造になっている。
【0042】
なお、蓄光材13Hは、例えば図5(B)に示すように、ひだ10の軸方向Lに関して部分10Sが緑色系の蓄光であり、残りの部分10Tが黄色系の蓄光に発光する、つまり、複数の蓄光色を任意部分に設けてよい。また、図示しない、任意の部分を蓄光材の塗布や貼り付けをしない、または、蓄光材を混合したゴムまたはプラスチック等で覆わない部分、つまり、自然色のゴムまたはプラスチック等を用いて蓄光しない部分を設けてもよい。
【0043】
また、下地部材10Mのみの状態で、電気的な絶縁を保つような設計をしてよい。当然に、下地部材10Mの所定箇所に貼り付けるか塗布する、または、所定箇所を蓄光材を混合したゴムまたはプラスチック等で構成したうえで、電気的な絶縁を保つような設計をしてよい。
【0044】
これにより、蓄光型碍子1Aの発光のボリュームが従来の蓄光電線リングよりも大きくでき、かつ電線間に渡って接続されているので、蓄光型碍子1Aの夜間における識別が可能であり、視認性が高くなる。また、夜間に電線の位置や、相、回線等を判別することが可能となる。
【0045】
(第3実施形態)
図6は、本発明の第3実施形態を示している。
図6に示す蓄光型碍子1Bの構成要素は、図4(A)に示す蓄光型碍子1の構成要素とほとんど同じであるが、蓄光体部13Bの形成の方式が異なる。ひだ10の少なくとも所定部分である領域Gは、透光性を有する材料すなわち半透明あるいは透明の有機材料で成形されている。心材11の領域Gの範囲に対応する部分には、蓄光材13Hが配置されていることにより、心材11の領域Gには蓄光体部13Bが形成されている。
【0046】
これにより、蓄光型碍子1Bは、透光性を有するひだ10を通して外部に発光でき、蓄光型碍子1Bの発光のボリュームが従来の蓄光電線リングよりも大きくでき、かつ電線間に渡って接続されているので、蓄光型碍子1Bの夜間における識別が可能であり、視認性が高くなる。
【0047】
なお、蓄光体部13Bは、蓄光材を心材11に塗布や貼り付けたものでよい。また、粉体や流体の蓄光材を袋体に入れ心材11に貼り付けや巻き付けたものや、蓄光材をシート状としたものを貼り付けや巻き付けたものとしてよい。または、ひだ10側のゴムやプラスチック等に、粉体や流体の蓄光材を注入できる空洞を設けたものでよい。さらに、ひだ10を透光性の材料から選択して、任意の位置に中空部を設け、粉体や流体の蓄光材を注入して蓄光体部としてよい。また、中空部に、蓄光材を混合した樹脂を注入して、硬化させることにより蓄光体部としてよい。
【0048】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態を示している。
図7に示す蓄光型碍子1Cの構成要素は、図6に示す蓄光型碍子1の構成要素とほとんど同じであるが、蓄光体部13Bの形成の方式が異なる。蓄光体部13Cは、心材11の所定部分であるひだ10に対応する領域Gに、長手方向Lに沿って全体にあるいは一部に畜光材13Hを配置することで構成されている。心材11の領域Gに対応するひだ10の部分は、透光性を有する材料すなわち半透明あるいは透明の有機材料で成形されている。
【0049】
この場合には、畜光材13Hは、心材11の長手方向Lに沿って間隔をおいて形成されている。すなわち、心材11の長手方向Lに沿って畜光材13Hの畜光する部分の色13Mおよび/または畜光しない部分13Fとの組み合わせを構成している。この組み合わせを用いることにより、夜間における識別が可能になる。
【0050】
この蓄光材13Hが、固形材料やシート状の材料である場合には、心材11の外周面に貼り付けや巻き付けることで、畜光する色の部分13Mを配置する。また、蓄光材13Hが、粉体や流体の場合には、袋体に蓄光材13Hを入れた物を心材11の外周面に貼り付けや巻き付けることで、畜光する色の部分13Mを配置する。または、ひだ10側のゴムやプラスチック等に、粉体や流体の蓄光材を注入できる空洞を任意の部分に設けたものでよい。さらに、ひだ10を透光性の材料から選択して、任意の位置に中空部を設け、粉体や流体の蓄光材を注入して蓄光体部としてよい。また、中空部に、蓄光材を混合した樹脂を注入して、硬化させることにより蓄光体部としてよい。
【0051】
これにより、蓄光型碍子1Cはひだ10を通して外部に発光でき、蓄光型碍子1Cの発光のボリュームが従来の蓄光電線リングよりも大きくでき、かつ電線間に渡って接続されているので、蓄光型碍子1Cの夜間における識別が可能であり、視認性が高くなる。また、夜間に電線の位置や、相、回線等を判別することが可能となる。
【0052】
図8(A)は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、図4(A)に示す蓄光型碍子1の構成要素とほぼ同じであるが、端末金具14Rの形状が異なる。この端末金具14Rは、穴14Lを有する長手方向Lに突出して金具である。
また、図8(B)と図8(C)は、本発明のさらに別の実施形態を示しており、図8(C)は図8(B)におけるK―K’線における断面図である。この実施形態では、心材11は中空を有する円筒状である。例えば、両端にフランジを付けて碍管として用いられる(例えば、特開2001−126562号公報を参照)。
【0053】
さらに、図8(D)に示す蓄光型端末1Rは、心材を無くしたもの構造であり、つまり、全てがゴム又はプラスチック等で成形したものであり、所定の段剥ぎ等をした電力ケーブル30(外部引出導体31、ケーブル導体32、絶縁被覆33、外部半導電層34、被覆35)が挿入される。なお、内部に挿入する電力ケーブルの構造や電気的設計により、蓄光型端末1Rの大きさやひだ20の形状・個数等が任意に設計される。また、内部に所定の部材、電界緩和をするためのゴム又はプラスチック等からなる電界緩和部材21(ストレスリリーフコーン等)を設けてよい。
【0054】
これら、図8(B)に示す蓄光型碍子1Fや図8(D)に示す蓄光型端末1Rは、例えば、後述する図9(C)に示すように、電力ケーブルの端末部として、鉄構200に設置され、電線や電気機器等と接続するために用いられる(例えば、特開2008−027828号公報を参照)。
【0055】
図9(A)、図9(B)、図9(C)は、本発明のさらに別の実施形態を示している。
蓄光体部が同じ色を畜光をする場合には、各蓄光型碍子1では相互に畜光をする箇所を変えることにより、各蓄光型碍子1の識別が可能になる。
【0056】
図9(A)では、蓄光型碍子1の全体領域Gが畜光される部分であるものと、領域G6が畜光される部分である例を示している。
【0057】
図9(B)は、さらに別の実施形態を示している。図9(B)の例では、蓄光型碍子1の領域G1,G4,G5,G7が畜光される部分であるが、領域G2,G3,G6が畜光しない部分である。このように、畜光される部分と畜光しない部分の組み合わせを作ることにより、送電線の識別が可能になる。
【0058】
図1に示すように、蓄光型碍子1を相間に取り付けることにより、電線の位置や、相、回線等の識別が可能になる。なお、このように、畜光される部分と畜光しない部分の組み合わせは、本発明の各実施形態において適用することができる。
【0059】
図9(C)は、本発明のさらに別の実施形態を示している。蓄光型端末の例として、鉄構200に、電力ケーブル201を電線や電気機器等と接続するための端末部203が配置されている。それら、畜光型端末部203が蓄光体部を有しており、受光エネルギーを利用して発光することにより電線の位置や、相、回線等の識別をすることができる。
【0060】
ところで、例えば図4に示す実施形態において、例えば、長手方向に異なる色の蓄光材を混合した材料を、分割して成形することにより、図9に示すような蓄光型碍子を得ることができる。なお、射出成形時に、対向する位置から、蓄光材を混合した材料を注入させて作ることができ、この場合、異なる色の界面付近では、異なる色の蓄光材を混合した材料が互いに混ざった状態で蓄光型碍子を製造してもよい。
【0061】
また、例えば図5に示す実施形態において、蓄光体部は、ひだ10の少なくとも所定部分が、上層及び下層を自然色または半透明あるいは透明な有機材料で成型し、心材の所定部分を受光エネルギーを利用して光を発するようにして、蓄光型碍子1の識別をするための蓄光体部を構成してもよい。
本発明の各実施形態の蓄光型碍子を、電線100や鉄鋼200に取りつけられることで、識別が可能になる。
【0062】
本発明の各実施形態における蓄光材の材質としては、受光エネルギーを利用した光を発することで蓄光型碍子の識別をするものであれば特に限定されない。蓄光材の材質としては、太陽光や照明の光等の受光エネルギーを蓄積して、暗所で発光する材質、例えば硫化亜鉛系、珪酸亜鉛系、硫化亜鉛カルシウム系、硫化ストロンチウム系等が挙げられる。蓄光材の材質としては、耐水性を有する畜光性を備える蛍光体を採用できる。
【0063】
本発明の各実施形態の蓄光型碍子並びに蓄光型端末は、蓄えた太陽光等の光エネルギーを光として放出することにより、夜間において電線が存在することが識別でき、例えば飛行機等を操縦する人間のみならず鳥獣にも認識できる。また、蓄光型碍子並びに蓄光型端末は、夜間に電線の位置や、相、回線等を判別することが可能となる。
【0064】
本発明の各実施形態の蓄光型碍子並びに蓄光型端末は、予め工場において少なくともひだに畜光機能を持たせたり、心材に対して畜光機能を持たせることができる。あるいは、現場で、蓄光材料を塗布したり、貼り付けや巻き付けたりしてよい。
【0065】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形例を採用できる。
本発明の各実施形態は、任意に組み合わせて構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の好ましい実施形態が装着されて上下の電線の接触防止をする役割を果たしている様子を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の蓄光型碍子が取り付けられた他の例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の蓄光型碍子が取り付けられた他の例を示す図である。
【図4】本発明の好ましい第1実施形態の蓄光型碍子を示す一部断面を有する正面図である。
【図5】本発明の好ましい第2実施形態の蓄光型碍子を示す一部断面を有する正面図である。
【図6】本発明の好ましい第3実施形態の蓄光型碍子を示す一部断面を有する正面図である。
【図7】本発明の好ましい第4実施形態の蓄光型碍子を示す一部断面を有する正面図である。
【図8】本発明の好ましい実施形態の蓄光型碍子を示す一部断面を有する正面図である。
【図9】本発明の好ましい実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 蓄光型碍子
1e 蓄光型避雷碍子
10 ひだ
10M 下地部材
11 心材
13 蓄光体部
13H 蓄光材
14 端末金具
100,101電線
G 領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも有機材料からなるひだを有する碍子であって、
前記碍子は、受光エネルギーを利用した光を発する蓄光体部を有することを特徴とする蓄光型碍子。
【請求項2】
少なくとも前記ひだの表面の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を塗布または貼り付けして前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の蓄光型碍子。
【請求項3】
少なくとも前記ひだの所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄光型碍子。
【請求項4】
少なくとも前記ひだの所定部分には、下層を自然色の有機材料で成型し、上層を前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合してなる有機材料で成型して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項5】
少なくとも前記ひだの所定部分を半透明あるいは透明な有機材料で成型し、
少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を配して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項6】
前記蓄光材の蓄光する部分の色および/または蓄光しない部分との組み合わせにより、前記蓄光型碍子又は/及び鉄塔又は/及び電線の識別を可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項7】
前記碍子は、異常電流(電圧)が発生時に、自身に前記異常電流(電圧)が印加されるような機能を有し、架空送電線の故障を防止することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項8】
前記碍子は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、
前記碍子は、鉄塔又は/及び電線または付属品と連結される機能と、前記蓄光体部とを有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項9】
前記碍子が架空送電線の相間に取りつけ、前記架空送電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能としたことを特徴とする請求項7に記載の蓄光型碍子。
【請求項10】
前記碍子は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、
前記心材が中空であって、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、
前記蓄光体部により電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1つの項に記載の蓄光型碍子。
【請求項11】
前記蓄光型碍子は、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、電線や電気機器等と接続可能な機能を有することを特徴とする請求項10に記載の蓄光型碍子。
【請求項12】
少なくとも有機材料からなるひだを有する端末であって、
前記端末は、受光エネルギーを利用した光を発する蓄光体部を有することを特徴とする蓄光型端末。
【請求項13】
前記蓄光型端末は、柔軟性を有する前記有機材料からなり、所定の部分に前記蓄光体部を有することを特徴とする請求項12に記載の蓄光型端末。
【請求項14】
少なくとも前記ひだの表面の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を塗布または貼り付けして前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の蓄光型端末。
【請求項15】
少なくとも前記ひだの所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項12〜請求項14のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項16】
少なくとも前記ひだの所定部分には、下層を自然色の有機材料で成型し、上層を前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を混合してなる有機材料で成型して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項12〜請求項15のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項17】
少なくとも前記ひだの所定部分を半透明あるいは透明な有機材料で成型し、
少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材の所定部分に、前記受光エネルギーを使用した光を発する蓄光材を配して前記蓄光体部を設けたことを特徴とする請求項12〜請求項16のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項18】
前記蓄光材の蓄光する部分の色および/または蓄光しない部分との組み合わせにより、前記蓄光型端末又は/及び鉄塔又は/及び電線の識別を可能としたことを特徴とする請求項12〜請求項17のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項19】
前記端末は、異常電流(電圧)が発生時に、自身に前記異常電流(電圧)が印加されるような機能を有し、架空送電線の故障を防止することを特徴とする請求項12〜請求項18のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項20】
前記蓄光型端末は、その内部に所定の部材を設けるとともに、少なくとも所定の段剥ぎをした電力ケーブルを挿入し、電線や電気機器等と接続可能とし、電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能とする前記蓄光体部を有することを特徴とする請求項12〜請求項18のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項21】
前記端末は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、
前記端末は、鉄塔又は/及び電線または付属品と連結される機能と、前記蓄光体部とを有することを特徴とする請求項12〜請求項20のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。
【請求項22】
前記蓄光型端末は、少なくとも前記ひだが最外層に被覆される心材を有し、
前記心材が中空であって、中空の状態、もしくは、前記心材の内部に所定の部材を設け、電線や電気機器等と接続可能とし、電線又は/及び相又は/及び回線の識別を可能とする前記蓄光体部を有することを特徴とする請求項12〜請求項20のいずれか1つの項に記載の蓄光型端末。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−230878(P2009−230878A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71249(P2008−71249)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】