説明

蓄光性積層体

【課題】屋内外の路面、階段、壁面等の凹凸面にも適用可能な柔軟性、追従性を有し、薄くて蓄光性能の優れた蓄光性積層体を提供する。
【解決手段】蓄光層102と、前記蓄光層に積層され、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系白色粘着剤層104とを含む蓄光性積層体100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄光性積層体に関する。詳しくは、蓄光層に、アクリル系白色粘着剤層を積層した蓄光性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄光性材料を用いたシートまたは床材が実用化されている。
このようなシートや床材は、蓄光性材料が吸収した光エネルギーが暗闇で発光する性質を利用して、防災や安全用の標示や、種々の案内標示に用いられている。蓄光性材料が発光する際、蓄光性材料の背面に光を隠蔽する層を設けると、より蓄光性能が向上するため、蓄光性材料を含む層の背面に隠蔽性のある層が設けられていることがある。この場合、このような隠蔽性のある層に、さらに粘着剤層が設けられている。
【0003】
特許文献1には、シリコーンゴムに蓄光性蛍光体を含有させた蓄光層、シリコーンゴムに白色顔料を含有させた反射層、および接着剤層を有する蓄光性シリコーンゴム製シートが記載されている。
【0004】
特許文献2には、裏打材、基体合成樹脂層、着色合成樹脂層、及び発光性顔料含有合成樹脂層が積層され一体化された発光性複合シートが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−118203号公報
【特許文献2】特開平10−114030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、屋内外の路面、階段、壁面等の凹凸面にも適用可能な柔軟性、追従性を有し、薄くて蓄光性能の優れた蓄光性積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、蓄光層と、前記蓄光層に積層され、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系白色粘着剤層とを含む蓄光性積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、凹凸面に適用可能な柔軟性、追従性を有し、薄くて蓄光性能に優れた蓄光性積層体を提供することができる。さらに、屋外の路面や壁面等水に濡れる場所であっても粘着性を維持できる蓄光性積層体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明の蓄光性積層体の一例を示す断面図である。本発明の蓄光性積層体100の一例の断面図を模式的に示したものである。蓄光性積層体100は、蓄光層102とアクリル系白色粘着剤層104とを積層したものである。
【0010】
蓄光層102は、蓄光性蛍光体を含む樹脂からなる。前記樹脂は、従来公知の樹脂を用いることができ特に限定されないが、例えば、透明で柔軟性のある、ポリウレタン、塩化ビニル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、シリコーン、フッ素系ポリマー、またはエポキシ系ポリマー等のいずれか1種、または2種以上の混合物を使用することが使用できる。さらに架橋剤を添加してこれらのポリマーを架橋しても良い。樹脂は、表面改質剤、硬化剤、界面活性剤、硬質ビーズ、難燃性付与剤、紫外線吸収剤、酸化安定剤、粘着付与樹脂、着色剤、抗菌剤等の添加剤を含むことができる。
【0011】
前記蓄光性蛍光体は、例えばアルミン酸塩蓄光性蛍光体、または硫化物系蛍光体等従来公知のものを適宜選択して用いることができ特に限定されない。具体的には例えば、GLL−300、G−300(根本特殊化学社製、ユウロピウム賦活−ジスプロシウム共賦活アルミン酸ストロンチウム( SrAlO4:Eu,Dy ))、GSS(根本特殊化学社製、銅賦活-硫化亜鉛(ZnS:Cu))等を使用することができる。
【0012】
本発明の蓄光層は、ペレット、ペースト、またはパウダー状の上記樹脂に、蓄光性蛍光体を添加し、カレンダー、押し出し成型、射出成型、または延伸等の従来公知の方法で成形することができる。
【0013】
前記蓄光層の厚さは特に限定されないが、約0.1mm〜約5mmとすることができる。
【0014】
アクリル系白色粘着剤層104は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含む。
【0015】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリルまたはメタクリル」を意味する。また、「カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー」を「カルボキシル基含有ポリマー」と、「芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー」を「アミノ基含有ポリマー」ということがある。
【0016】
前記アクリル系白色粘着剤は、カルボキシル基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるカルボキシル基含有ポリマーと、アミノ基を含有するモノマーを構成成分として重合したポリマーであるアミノ基含有ポリマーとを混合することにより、粘着剤中の白色顔料の分散性を向上し、粘着剤中に白色顔料を安定に保持することができる。そのため、より多くの顔料を含む白色粘着剤を提供することができる。
【0017】
前記アクリル系白色粘着剤において、(i)カルボキシル基含有(メタ)アクリル系粘着ポリマー、及び(ii)前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約25質量部〜約150質量部の白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーからなる着色剤を含んでいても良い。
【0018】
前記着色剤を含むことにより、すなわち、あらかじめ白色顔料をポリマーに分散させることにより、より多くの白色顔料を粘着剤中に安定に分散させることができる。
【0019】
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にカルボキシル基を含有するモノエチレン性不飽和モノマー(カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマー)を含有するものである。前記モノエチレン性不飽和モノマーは、ポリマーの主成分となるものであって、一般には式CH2=CR1COOR2(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は直鎖、環状又は分岐状のアルキル基やフェニル基、アルコキシアルキル基、フェノキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、環状エーテル基である)で表される。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、またはドデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のフェノキシアルキル(メタ)アクリレート;メトキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシブチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等の環状エーテル含有(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。必要に応じ、1種又は2種以上のモノエチレン性不飽和モノマーを使用することができる。
【0020】
前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーとして、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、β−カルボキシエチルアクリレート、または2−(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸等を挙げることができる。
【0021】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを80〜99.5質量部と、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを0.5〜20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを90〜99質量部、前記カルボキシル基含有モノエチレン性不飽和モノマーを1〜10質量部とすることもできる。
【0022】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約100,000〜約2,000,000、あるいは約300,000〜約1,000,000とすることができる。
【0023】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマーは、前記アクリル系白色粘着剤の主成分として用いることができ、その配合量は、前記アクリル系白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約35質量部〜約80質量部とすることができる。
【0024】
芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー
前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとは、モノエチレン性不飽和モノマーを主成分とするポリマーであって、その一部にアミノ基含有不飽和モノマーを含有し、かつ芳香族ビニルモノマーをポリマーの構成成分として含まないものである。かかるモノエチレン性不飽和モノマーは、前記カルボキシル基含有(メタ)剤中アクリル系ポリマーの場合と同様であり、前記芳香族ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、ビニルアントラキノン、芳香族アミンの(メタ)アクリルアミド、または水酸基含有芳香族化合物の(メタ)アクリレート等を含む。前記芳香族アミンとしてはアニリン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アミノアントラセン、アミノアントラキノン又はこれらの誘導体が挙げられる。また前記水酸基含有芳香族化合物は前記芳香族アミンに対応する水酸基含有化合物が挙げられる。前記アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを得る方法として、モノエチレン性不飽和モノマーとアミノ基を含有する不飽和モノマーとを共重合することが挙げられる。
【0025】
前記アミノ基含有不飽和モノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)などのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどのジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジエチルアミノエチルビニルエーテルなどのジアルキルアミノアルキルビニルエーテル;またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0026】
前記アミノ基含有ポリマーは、例えば前記モノエチレン性不飽和モノマーを約80〜約99.5質量部と、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約0.5〜約20質量部の割合で共重合することにより得られる。あるいは、前記モノエチレン性不飽和モノマーを約90〜約99質量部、前記アミノ基含有不飽和モノマーを約1〜約10質量部とすることもできる。
【0027】
前記アミノ基含有ポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、例えば、約1,000〜約500,000、約5,000〜約200,000、または約10,000〜約100,000とすることができる。
【0028】
前記アミノ基含有ポリマーの配合量は、前記アクリル系白色粘着剤全体を100質量部とした場合に、約5質量部〜約20質量部とすることができる。また、前記アクリル系白色粘着剤が着色剤を含有する場合は、当該着色剤の一成分として用いることができる。
【0029】
これらポリマーの共重合は、ラジカル重合により行なうことができる。この場合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、あるいは塊状重合等の公知の重合方法を用いることができる。開始剤としては過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、ビス(4−ターシャリーブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートのような有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビスー4−シアノバレリアン酸、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、アゾビス2,4−ジメチルバレロニトリル(AVN)等のアゾ系重合開始剤が用いられる。この開始剤の使用量としては、モノマー混合物100質量部あたり、0.05〜5質量部とすることができる。
【0030】
白色顔料
前記白色顔料として、従来公知の白色顔料、例えば、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、または酸化チタン(二酸化チタン)を挙げることができる。また、添加剤としてタルク、カオリン、炭酸カルシウムを含んでもよい。これら白色顔料は単体で、あるいは二種以上を混合して用いることができる。また、これらの白色顔料はいずれの形態でもよく、あるいは従来公知の方法によって各種の分散処理が施されたものであってもよい。
【0031】
前記白色顔料は、所望の隠蔽性に合わせてその含有量を適宜選択することができる。例えば、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、約25質量部〜約150質量部とすることができる。
【0032】
着色剤
前記着色剤は、白色顔料と芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーとを含有する。ここで、前記白色顔料、及び前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーはそれぞれ上述のとおりである。
【0033】
本明細書において、着色剤中の、芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを「着色剤のポリマー」と記載することがある。また、本発明のアクリル系白色粘着剤の主成分として用い、着色剤に由来しないポリマーを、「粘着剤のポリマー」と記載することがある。
【0034】
前記着色剤のポリマーは、長期安定性維持の観点から、前記粘着剤のポリマーと相溶することが好ましい。
【0035】
前記着色剤は、前記白色顔料と前記着色剤のポリマーとを、従来公知の方法で混合することにより得られる。例えば、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。このとき、必要に応じて、水系あるいは有機系の溶媒を加えることもできる。
【0036】
前記着色剤は、調製直後はもちろん、調製後長時間(例えば、約1ヶ月程度)経過後も、調製直後と同様、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した状態を維持することができる。このことは、例えば、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等の比較的混合力の強い機器を用いて調製した場合のみならず、ペイントシェイカー等の比較的混合力の弱い機器のみを用いて調製した場合も同様である。さらに、この比較的混合力の弱い機器を用いる場合、比較的短時間(例えば、約10分程度)の混合により、調製直後及び長時間経過後に、顔料粒子が凝集せず、かつ良好に分散した着色剤を得ることができる。
【0037】
架橋剤
前記アクリル系白色粘着剤は、架橋剤を含んでも良い。かかる架橋剤として、例えば、ビスアミド系架橋剤(例えば、1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン))、アジリジン系架橋剤(例えば、日本触媒製ケミタイトPZ33、アビシア製NeoCryl CX−100)、カルボジイミド系架橋剤(例えば、日清紡製カルボジライトV−03,V−05,V−07)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX,E−5XM,E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)、エポキシ系架橋剤(例えば綜研化学製E−AX、E−5XM、E5C)、イソシアネート系架橋剤(例えば、日本ポリウレタン製コロネートL、コロネートHK、バイエル社製デスモジュールH、デスモジュールW、デスモジュールI)等を用いることができる。
【0038】
前記架橋剤の添加量は、カルボキシル基を含有するポリマー中のカルボキシル基、あるいはアミノ基を含有するポリマー中のアミノ基に対して0.01から0.5当量とすることができる。
【0039】
前記白色顔料、及び前記芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを、従来公知の方法によって混合することにより得られる。
【0040】
例えば、各成分をほぼ同時に混合容器に入れ、ペイントシェイカー、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、または三本ロールミル等を用いて混合することにより得られる。この際、必要に応じて、前記架橋剤、または公知の水系あるいは有機系の溶媒を使用することができる。あるいは、前記白色顔料を水系あるいは有機系の溶媒に混合してから、他の成分と混合することもできる。
【0041】
また、前記アクリル系白色粘着剤が着色剤を含有する場合、前記カルボキシル基含有アクリル系ポリマー及び前記着色剤とを従来公知の方法で混合することにより得られる。
【0042】
本発明のアクリル系白色粘着剤層は、粘着性を有するのはもちろん、より多くの白色顔料を含むので十分な隠蔽性も備えている。かかる粘着剤層を、本発明の蓄光性積層体の蓄光層に積層することにより、隠蔽性を有する層と粘着剤層の二つの層を使用する必要がなくなる。さらに、前記白色粘着剤層の厚さが薄くても十分な隠蔽性を得ることができる。そのため、蓄光性積層体全体の厚さを抑えることができる。
【0043】
前記アクリル系白色粘着剤層の厚さは特に限定されない。例えば、約0.02mm〜約0.1mmとすることができる。
【0044】
蓄光層が発光する際、アクリル系白色粘着剤層によって反射されるため、発光効率が向上する。
【0045】
図2(a)は、本発明の蓄光性積層体一例を示す斜視図である。図2(b)は、図2(a)の蓄光性積層体を示す断面図である。
蓄光層202は、蓄光性蛍光体を含む樹脂からなる蓄光部203と、実質的に蓄光性蛍光体を含まない樹脂からなる支持部205とから構成することができる。図2に示される態様において、蓄光部203および支持部205に用いられる樹脂は、特に限定されない。例えば図1の説明に記載したような、透明で柔軟性を有する樹脂を使用できる。
【0046】
蓄光部203および支持部205の形状、蓄光部203と支持部205との面積比あるいは体積比は特に限定されず、種々の態様から適宜選択することができる。蓄光部203の発光効率の向上のために、蓄光部203とアクリル系白色粘着剤層204とが接していることが好ましい。
【0047】
図3は、本発明の蓄光性積層体の一例を示す断面図である。蓄光性積層体300は、蓄光層302、アクリル系白色粘着剤層304、および床面粘着剤層306から構成される。床面粘着剤層306は、蓄光性積層体300を、特に凹凸を有する表面に貼付する際、または主に屋外等の湿気が多い場所や雨や雪により水に濡れやすい場所に貼付する際に貼付後の接着力を維持するために有効である。
【0048】
前記床面粘着剤としては、従来公知の粘着剤を使用することができ特に限定されない。例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ゴム系粘着剤、またはウレタン系粘着剤などを使用することができる。耐水性、追従性の観点からはゴム系粘着剤(例えば、NBR等)を好ましいものとしてあげることができる。また、通常路面材は極性の低いものが多いため、シリコーン系粘着剤、またはゴム系粘着剤等極性の低い粘着剤を使用すると接着性が良くなるので好ましい。
【0049】
前記床面粘着剤層の厚さは特に限定されないが、例えば約0.01mm〜約0.5mm、または約0.03mm〜約0.2mmとすることができる。
【0050】
本発明の蓄光性積層体には、粘着剤層の保護のためライナーを設けることができる。
このようなライナーは、粘着テープなどの分野で一般的に使用されているものでよく、特定の部材に限定されるものではない。好適なライナーとしては、例えば、紙;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、または酢酸セルロース等のプラスチック材料;あるいはこのようなプラスチック材料で被覆又はそれを積層された紙やその他の材料などを挙げることができる。これらのライナーは、そのまま使用してもよいが、シリコーン処理あるいはその他の方法で処理して剥離特性を向上させた後に使用することができる。
【0051】
本発明の蓄光性積層体は、表面保護層やプライマー層など他の機能を有する層を有していても良い。また、前記蓄光性積層体を被着体に貼付する際に、被着体表面に通常用いられるプライマーを塗布してもよい。一般に、かかるプライマー処理により、蓄光性積層体と被着体との接着力が上がる。
【0052】
また、蓄光層の表面(一部または全部)に、半球状やピラミッド状の微小構造(小突起)を設けることもできる。このような微小構造を設けることにより、防滑効果や防汚効果を得ることができる。
【実施例】
【0053】
蓄光層
蓄光性蛍光体(根本特殊化学社製GLL−300M)を30質量部含むポリ塩化ビニル樹脂層(信越ポリマー社製TUJ−7854)を準備した。
【0054】
アクリル系白色粘着剤層の製造
アクリル樹脂1(メチルメタクリレート(MMA)/ブチルメタアクリレート(BMA)/ジメチルアミノエチルメタクリレート(Di−methyl−amino−ethyl−methacrylate、DEMAEMA)共重合体、組成比は60:34:6(質量比)、分子量(Mw)は68,000、Tgは63℃(計算値)、酢酸エチル溶液。固形分39%)が10質量部、顔料1(白色顔料、DuPont製TiPureR960、酸化チタン)が50質量部に対してメチルイソブチルケトン(MIBK)を40質量部添加しペイントシェイカー(株式会社シンキー(Thinky)製ARE250)で10分間攪拌し顔料プレミックス溶液を得た。
【0055】
次に、粘着剤1(ブチルアクリレート(BA)/アクリロニトリル(AN)/アクリル酸(AA)共重合体、組成比が92:3:5(質量比)、アクリル系粘着剤、溶剤は酢酸エチル、重量平均分子量36万、Tgは−46℃(計算値))が100質量部に対して、顔料1が40質量部、アクリル樹脂1が8質量部になるように粘着剤と前記プレミックスを混合し白色粘着剤組成物溶液を準備した。粘着剤1が100質量部に対して架橋剤1(1,1’−イソフタロイル−ビス(2−メチルアジリジン)、固形分5%、トルエン溶液)を0.2質量部添加した。前記粘着剤組成物を、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが30μmになるように塗布し、90℃で5分間加熱し乾燥及び架橋した。
【0056】
床面粘着剤層
ゴム系粘着剤(GRN−13B、ビッグテクノス社製)とポリイソシアネート架橋剤(コロネートL−55E、日本ポリウレタン工業社製)を100:1(質量比)で混合し、溶剤はトルエンを用いて固形分約30%となるよう調整し、ナイフコートにより紙ベース両面ポリエチレンラミネート剥離紙上に乾燥後の厚さが50μmになるように塗布して90℃で5分間加熱、乾燥した。
【0057】
実施例
上記の様にして得られたアクリル系白色粘着剤層と床面粘着剤層とを貼り合せて粘着剤層の積層体を得た。上記で得られた蓄光層にプライマー(住友スリーエム社製N200)を塗布・乾燥し、前記粘着剤層の積層体のアクリル系白色粘着剤層をドライラミネートにより貼り合わせて蓄光性積層体を得た。
【0058】
比較例1
蓄光性蛍光体(根本特殊化学社製GLL−300M)を30質量部含むポリ塩化ビニル樹脂層(信越ポリマー社製TUJ−7854)の背面に、プライマー(住友スリーエム社製N−200)を塗布・乾燥後、床面粘着剤溶液(淡黄色ゴム系粘着剤(ビッグテクノス社製GRN−13B)とポリイソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製コロネートL−55E)とを100:1で混合した溶液)を、乾燥後厚みが80μmとなるようにナイフコートにより塗布・乾燥して蓄光性積層体を得た。
【0059】
比較例2
蓄光性蛍光体(根本特殊化学社製GLL−300M)を30質量部含むポリ塩化ビニル樹脂層(信越ポリマー社製TUJ−7854)の背面に、プライマー(住友スリーエム社製N−200)を塗布・乾燥後、白色顔料(住友スリーエム社製BW9310(アルキド白色顔料分散溶液))を50質量部含む床面粘着剤溶液(ゴム系粘着剤(ビッグテクノス社製GRN−13B)とポリイソシアネート架橋剤(日本ポリウレタン工業社製コロネートL−55E)とを100:1で混合した溶液)を、乾燥後厚みが80μmとなるようにナイフコートにより塗布・乾燥して蓄光性積層体を得た。
【0060】
比較実験1 蓄光性能の測定
黒色と白色が交互に印刷された隠蔽性試験用シート上に、実施例、比較例1〜2で得られた蓄光性積層体を貼り付け、JIS Z 9107 6.3.2に基づき、常用光源ランプD65を用いて200luxで20分間照射後暗転させた後の残光輝度を輝度測定システムにてそれぞれの黒色部、白色部の蓄光性能を測定した。残光輝度値を表1に、黒色部における輝度減衰率を図4にそれぞれ示した。また、蓄光層側からの外観の写真を撮影し図7に示した。
【0061】
【表1】

【0062】
比較実験2 接着性能
実施例、比較例1および比較例2で得た蓄光性積層体を25mm幅にカットし、モルタル板に貼付して24時間(一日)後および、耐湿試験機(65℃95%)にて一週間養生後の90度剥離接着力(N/25mm)をデジタルフォースゲージ(株式会社イマダ製)にて測定した。結果をそれぞれ図5及び図6に示した。値は接着力(N/25mm+標準偏差)である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の蓄光性積層体の一例を示す断面図である。
【図2】本発明の蓄光性積層体の一例を示す図であり、(a)は斜視図を、(b)は断面図を示す。
【図3】本発明の蓄光性積層体の一例を示す断面図である。
【図4】比較実験1で測定した黒色部における輝度減衰率を示すグラフである。
【図5】比較実験2で測定した24時間(一日)後の90度剥離接着力(N/25mm)を示すグラフである。
【図6】比較実験2で測定し一週間養生後の90度剥離接着力(N/25mm)を示すグラフである。
【図7】比較実験1で、隠蔽性試験用シート上に各サンプルを貼り付けて撮影した写真である。
【符号の説明】
【0064】
100、200、300 蓄光性積層体
102、202、302 蓄光層
104、204、304 アクリル系白色粘着剤層
203 蓄光部
205 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄光層と、
前記蓄光層に積層され、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー、白色顔料、及び芳香族ビニルモノマーを含まないアミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマーを含むアクリル系白色粘着剤層と
を含む蓄光性積層体。
【請求項2】
前記アクリル系白色粘着剤が、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、25〜150質量部の白色顔料を含む請求項1に記載の蓄光性積層体。
【請求項3】
前記アクリル系白色粘着剤層の厚さが、0.02mm〜0.1mmである請求項1または2に記載の蓄光性積層体。
【請求項4】
前記蓄光層が蓄光部と支持部とから構成される請求項1〜3のいずれか一項に記載の蓄光性積層体。
【請求項5】
前記蓄光性積層体のアクリル系白色粘着剤層に、さらに床面粘着剤層が積層されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の蓄光性積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−137470(P2010−137470A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317253(P2008−317253)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】