説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】小型軽量化を図ることができるとともに、通気抵抗の上昇を抑制しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータは、扁平状冷媒流通管13と、冷媒流通管13の片面にろう付された扁平状蓄冷材容器14とを備えている。冷媒流通管13および蓄冷材容器14よりなる複数の組15を間隔をおいて配置し、隣り合うものどうしの間の部分を通風間隙16とし、通風間隙にフィン17を配置して冷媒流通管13および蓄冷材容器14にろう付する。蓄冷材容器14およびフィン17の前側部分を冷媒流通管13よりも前方に突出させ、蓄冷材容器14の前方への突出部に、容器高さが容器本体部21の容器高さよりも高くなった内容積増大部22を設ける。蓄冷材容器14の内容積増大部22の両面にフィン17をろう付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、通風方向下流側(図1〜図4に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
ところで、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を利用して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
蓄冷機能付きエバポレータとして、互いに間隔をおいて配置された1対の冷媒用ヘッダ部と、両冷媒用ヘッダ部間に、幅方向を前後方向に向けるとともに冷媒用ヘッダ部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両冷媒用ヘッダ部に通じさせられた複数の扁平状冷媒流通管と、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに冷媒流通管の片面に固定状に設けられ、かつ内部に蓄冷材が封入された中空状の蓄冷材容器とを備えており、蓄冷材容器の厚み方向の寸法が全体に等しくなされ、冷媒流通管および蓄冷材容器よりなる複数の組が間隔をおいて配置され、冷媒流通管および蓄冷材容器よりなる組の隣り合うものどうしの間の部分が通風間隙となされ、通風間隙にフィンが配置されて冷媒流通管および蓄冷材容器に接合されているものが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、冷媒流通管を流れる低温の冷媒により蓄冷材容器内の蓄冷材に冷熱が蓄えられるようになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいては、蓄冷性能を向上させる目的で蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くしようとすると、蓄冷材容器および冷媒流通管の長さを長くするとともに、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くする必要がある。しかしながら、蓄冷材容器および冷媒流通管部の長さを長くすると、エバポレータの熱交換コア部が大型化し、重量が大きくなったり、省スペース性が損なわれたりするという問題がある。また、熱交換コア部の寸法を変えないで蓄冷材容器全体の容器高さを全体に高くすると、通風間隙の空気の通過面積が小さくなり、通気抵抗が上昇するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第4043776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比べて小型軽量化を図ることができるとともに、通気抵抗の上昇を抑制しうる蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)幅方向を前後方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された扁平状冷媒流通管部と、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに冷媒流通管部の片面に接触させられた扁平状蓄冷材容器とを備えた蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器の前後両側部分のうちのいずれか一方に、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さが他の部分の容器高さよりも高くなった内容積増大部が設けられている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
2)冷媒流通管部および蓄冷材容器よりなる複数の組が間隔をおいて配置されており、冷媒流通管部および蓄冷材容器よりなる組の隣り合うものどうしの間の部分が通風間隙となされ、通風間隙にフィンが配置されて冷媒流通管部および蓄冷材容器に接合されている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
3)蓄冷材容器およびフィンの前後両側部分のうちのいずれか一方が、冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にフィンが接合されている上記2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
4)蓄冷材容器の内部どうしが内容積増大部において連通させられている上記3)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
5)蓄冷材容器およびフィンの前側部分が冷媒流通管部よりも前方に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前方に突出した部分に内容積増大部が設けられている上記3)または4)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
6)複数の冷媒流通管部が前後方向に並んで配置され、少なくとも前端に配置された冷媒流通管部の厚み方向の寸法である管部高さが他の冷媒流通管部の管部高さよりも低くなっており、蓄冷材容器における管部高さの低い冷媒流通管部と接触する部分に内容積増大部が設けられている上記1)または2)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0018】
上記1)および2)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器の前後両側部分のうちのいずれか一方に、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さが他の部分の容器高さよりも高くなった内容積増大部が設けられているので、蓄冷材容器の容器高さが全体に同一の場合に比べて、蓄冷材容器および冷媒流通管部の長さを長くしたり、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くしたりすることなく、蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くすることができる。したがって、蓄冷機能付きエバポレータに比べて小型軽量化を図ることができる。しかも、上記3)の蓄冷機能付きエバポレータのように、蓄冷材容器およびフィンの前後両側部分のうちのいずれか一方が、冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられていると、内容積増大部を設けることに起因する通風間隙の面積の減少を抑制することができ、熱交換コア部の寸法を変えない場合であっても、通気抵抗の上昇を抑制することができる。また、上記6)の蓄冷機能付きエバポレータのように、蓄冷材容器における管部高さの低い冷媒流通管部と接触する部分に内容積増大部が設けられていると、内容積増大部を設けることに起因する通風間隙の面積の減少を抑制することができ、熱交換コア部の寸法を変えない場合であっても、通気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0019】
上記3)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器およびフィンの前後両側部分のうちのいずれか一方が、冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にフィンが接合されているので、蓄冷材容器の容器高さが全体に同一の場合に比べて、蓄冷材容器および冷媒流通管部の長さを長くしたり、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くしたりすることなく、蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くすることができる。したがって、蓄冷機能付きエバポレータに比べて小型軽量化を図ることができる。しかも、内容積増大部を設けることに起因する通風間隙の面積の減少を抑制することができ、熱交換コア部の寸法を変えない場合であっても、通気抵抗の上昇を抑制することができる。
【0020】
また、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、蓄冷材容器の内容積増大部内の蓄冷材の有する冷熱が、内容積増大部の両側面から内容積増大部の両側面にろう付されているフィンを介して通風間隙を通過する空気に伝えられるので、法令性能が向上する。
【0021】
上記4)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器の内部どうしが内容積増大部において連通させられているので、いずれか1つの蓄冷材容器の内容積増大部に蓄冷材充填口を形成するとともに、いずれか1つの蓄冷材容器の内容積増大部に空気抜き口を形成しておくことにより、内部どうしが連通させられている蓄冷材容器内への蓄冷材の封入作業が簡単になる。
【0022】
上記5)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、通風間隙を流れてくる空気の温度が低くなっている部分に、多くの蓄冷材が入れられている内容積増大部が存在することになるので、蓄冷材を効率良く冷却することができ、蓄冷性能が向上する。
【0023】
上記6)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、複数の冷媒流通管部が前後方向に並んで配置され、少なくとも前端に配置された冷媒流通管部の厚み方向の寸法である管部高さが他の冷媒流通管部の管部高さよりも低くなっており、蓄冷材容器における管部高さの低い冷媒流通管部と接触する部分に内容積増大部が設けられているので、蓄冷材容器の容器高さが全体に同一の場合に比べて、蓄冷材容器および冷媒流通管部の長さを長くしたり、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さを全体に高くしたりすることなく、蓄冷材容器に封入される蓄冷材の量を多くすることができる。したがって、蓄冷機能付きエバポレータに比べて小型軽量化を図ることができる。しかも、内容積増大部を設けることに起因する通風間隙の面積の減少を抑制することができ、熱交換コア部の寸法を変えない場合であっても、通気抵抗の上昇を抑制することができる。また、通風間隙を流れてくる空気の温度が低くなっている部分に、多くの蓄冷材が入れられている内容積増大部が存在することになるので、蓄冷材を効率良く冷却することができ、蓄冷性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1の一部を省略したA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線拡大断面図である。
【図4】図2のC−C線拡大断面図である。
【図5】一体化された蓄冷材容器を示す斜視図である。
【図6】1つの蓄冷材容器を示す分解斜視図である。
【図7】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの他の実施形態を示す図3相当の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0026】
以下の説明において、前方から後方を見た際の上下、左右、すなわち図1の上下、左右を上下、左右というものとする。
【0027】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0028】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図6はその要部の構成を示す。
【0029】
図1および図2において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0030】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(5)(冷媒用ヘッダ部)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(5)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(6)(冷媒用ヘッダ部)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(9)に一体化された第2中間ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の第1中間ヘッダ部(9)内と第2中間ヘッダ部(11)内とは、両中間ヘッダ部(9)(11)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(12)を介して通じさせられている。
【0031】
図1〜図4に示すように、熱交換コア部(4)には、幅方向を前後方向に向けるとともに、前後方向に間隔をおいて配置された複数、ここでは2つのアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(13)(冷媒流通管部)、および幅方向を前後方向に向けるとともに、前後両冷媒流通管(13)の片面、ここでは左側面に跨るように接触させられて両冷媒流通管(13)にろう付され、かつ内部に蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製扁平状蓄冷材容器(14)よりなる複数の組(15)が左右方向に間隔をおいて配置されている。前側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒入口ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は第1中間ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(13)の上端部は冷媒出口ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は第2中間ヘッダ部(11)に接続されている。冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(14)よりなる組(15)の隣り合うものどうしの間の間隙は通風間隙(16)となされ、通風間隙(16)にアルミニウム製コルゲートフィン(17)が配置されて冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(14)にろう付されている。また、冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(14)よりなる組(15)の左右両端に位置するものの外側にもアルミニウム製コルゲートフィン(17)が配置されており、右端のコルゲートフィン(17)は前後両冷媒流通管(13)に跨ってろう付され、左端のコルゲートフィン(17)は蓄冷材容器(14)にろう付されている。左右両端のコルゲートフィン(17)の外側にはアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてコルゲートフィン(17)にろう付されている。
【0032】
図3〜図5に示すように、蓄冷材容器(14)の前側部分は、前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出させられており、蓄冷材容器(14)における前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出した部分に、蓄冷材容器(14)の厚み方向(左右方向)の寸法である容器高さが、他の部分、すなわち前側の冷媒流通管(13)の前側縁よりも後方に位置する容器本体部(21)の容器高さよりも高くなった内容積増大部(22)が設けられている。内容積増大部(22)の容器高さは、冷媒流通管(13)の厚み方向の寸法である管高さ(管部高さ)に、蓄冷材容器(14)の容器本体部(21)の容器高さを加えた高さと等しくなっている。蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)の上下両端部は上下方向外側に突出しており、当該突出部に、左右方向外方に膨出した膨出状タンク形成部(23)が設けられている。隣り合う蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)のタンク形成部(23)どうしは相互にろう付されており、これによりすべての蓄冷材容器(14)が一体化されている。また、隣り合う蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)のタンク形成部(23)内どうしは、タンク形成部(23)の膨出端壁に形成された連通穴(24)を介して通じさせられている。そして、すべての蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)の上下のタンク形成部(23)によって上下両連通タンク(25)が形成されており、すべての蓄冷材容器(14)の内部が上下両連通タンク(25)において通じさせられている。図示は省略したが、上下両連通タンク(25)のうちのいずれか一方に蓄冷材充填口が形成されるとともに、同他方に空気抜き口が形成されており、蓄冷材充填口を通して全蓄冷材容器(14)内に蓄冷材が充填されるようになっている。蓄冷材充填口および空気抜き口は、蓄冷材容器(14)内への蓄冷材の充填後に適当な手段により塞がれている。蓄冷材容器(14)内へ充填される蓄冷材としては、たとえば水系、パラフィン系などの凝固点が3〜10℃程度に調整されたものが用いられる。また、蓄冷材容器(14)内への蓄冷材の充填量は、全蓄冷材容器(14)内を上端部まで満たすような量とするのがよい。
【0033】
図6に示すように、蓄冷材容器(14)は、周縁部どうしが互いにろう付された2枚の縦長方形状アルミニウム板(26)(27)よりなる。すべてのアルミニウム板(26)(27)は両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、左右両方から見た外形は同一となっている。蓄冷材容器(14)を構成する左側のアルミニウム板(26)は、前側部分を除いた大部分を占めるとともに、左方に膨出した容器本体部(21)形成用の第1膨出部(28)と、第1膨出部(28)の前側に連なるとともに左方に膨出し、かつ第1膨出部(28)と膨出高さの等しい内容積増大部(22)形成用の第2膨出部(29)と、第2膨出部(29)の上下両端部に設けられて左方に膨出し、かつ第2膨出部(29)よりも膨出高さの高いタンク形成部(23)形成用の第3膨出部(31)とを備えている。左端の蓄冷材容器(14)を除いた蓄冷材容器(14)を構成する左側アルミニウム板(26)における第3膨出部(31)の膨出端壁に連通穴(24)が形成されている。蓄冷材容器(14)を構成する右側のアルミニウム板(27)は、前側部分を除いた大部分を占める容器本体部(21)形成用の平坦部(32)と、平坦部(32)の前側に連なるとともに右方に膨出した内容積増大部(22)形成用の第1膨出部(33)と、第1膨出部(33)の上下両端部に設けられて右方に膨出し、かつ第1膨出部(33)よりも膨出高さの高いタンク形成部(23)形成用の第2膨出部(34)とを備えている。右端の蓄冷材容器(14)を除いた蓄冷材容器(14)を構成する右側アルミニウム板(27)における第2膨出部(34)の膨出端壁に連通穴(24)が形成されている。そして、2枚のアルミニウム板(26)(27)を、膨出部(28)(29)(31)(33)(34)の開口どうしが対向するように組み合わせてろう付することにより、蓄冷材容器(14)が形成されている。隣接する2つの蓄冷材容器(14)のタンク形成部(23)どうしは、第3膨出部(31)と第2膨出部(34)の連通穴(24)どうしが通じるように相互にろう付されている。
【0034】
コルゲートフィン(17)の前側部分は、前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出させられており、左右両端のコルゲートフィン(17)を除いたコルゲートフィン(17)における前側の冷媒流通管(13)よりも前方に突出した部分が、左右両側に位置する蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)の左右両側面にろう付されている。
【0035】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともにカーエアコンを構成する。当該カーエアコンにおいて、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の入口ヘッダ部(5)内に入り、前側の全冷媒流通管(13)を通って第1中間ヘッダ部(9)内に流入する。第1中間ヘッダ部(9)内に入った冷媒は、連通部材(12)を通って第2中間ヘッダ部(11)内に入った後、後側の全冷媒流通管(13)を通って出口ヘッダ部(6)内に流入し、冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(13)内を流れる間に、通風間隙(16)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0036】
このとき、両側の冷媒流通管(13)内を流れる冷媒によって蓄冷材容器(14)の容器本体部(21)内の蓄冷材が冷却されるとともに、通風間隙(16)を通って冷媒により冷やされた空気によって蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)内の蓄冷材が冷却され、その結果蓄冷材が凝固して冷熱が蓄えられる。
【0037】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(14)の容器本体部(21)内の蓄冷材の有する冷熱が、容器本体部(21)の左側面から蓄冷材容器(14)の左側面にろう付されているコルゲートフィン(17)を介して通風間隙(16)を通過する空気に伝えられるとともに、容器本体部(21)の右側面から冷媒流通管(13)および当該冷媒流通管(13)にろう付されているコルゲートフィン(17)を介して通風間隙(16)を通過する空気に伝えられる。また、蓄冷材容器(14)の内容積増大部(22)内の蓄冷材の有する冷熱は、内容積増大部(22)の左右両側面から内容積増大部(22)の左右両側面にろう付されているコルゲートフィン(17)を介して通風間隙(16)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0038】
図7はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの他の実施形態を示す。
【0039】
図7に示す蓄冷機能付きエバポレータの前後に並んだ複数、ここでは2つの冷媒流通管(13)(40)のうちの前側(前端)に配置された冷媒流通管(40)の厚み方向の寸法である管高さが後側の冷媒流通管(13)の管高さよりも低くなっている。また、蓄冷材容器(41)の前側部分は前側の冷媒流通管(40)の前端よりも前方に突出しておらず、当該冷媒流通管(40)における管高さの低い冷媒流通管(40)とろう付された部分に、蓄冷材容器(41)の厚み方向(左右方向)の寸法である容器高さが、他の部分、すなわち前側の冷媒流通管(40)の後側縁よりも後方に位置する容器本体部(42)の容器高さよりも高くなった内容積増大部(43)が設けられている。蓄冷材容器(41)の内容積増大部(43)の容器高さに前側冷媒流通管(40)の厚み方向の寸法である管高さを加えた厚さは、蓄冷材容器(41)の容器本体部(42)の容器高さに後側冷媒流通管(13)の厚み方向の寸法である管高さを加えた厚さと等しくなっている。また、コルゲートフィン(17)の前側部分も前側の冷媒流通管(40)の前端よりも前方に突出しておらず、冷媒流通管(13)(40)の右側面と、蓄冷材容器(41)の容器本体部(42)および内容積増大部(43)の左側面とにろう付されている。
【0040】
上記2つの実施形態において、蓄冷機能付きエバポレータの冷媒流通管部は、所謂積層型エバポレータの場合と同様に、2枚のアルミニウム板を対向させて周縁部どうしをろう付することにより形成された扁平中空体に設けられていてもよい。すなわち、扁平中空体を構成する両アルミニウム板間に膨出状に形成されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0042】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(13)(40):冷媒流通管(冷媒流通管部)
(14)(41):蓄冷材容器
(15):冷媒流通管および蓄冷材容器よりなる組
(16):通風間隙
(17):コルゲートフィン
(22)(43):内容積増大部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向を前後方向に向けるとともに互いに間隔をおいて配置された扁平状冷媒流通管部と、幅方向を前後方向に向けて配置されるとともに冷媒流通管部の片面に接触させられた扁平状蓄冷材容器とを備えた蓄冷機能付きエバポレータであって、
蓄冷材容器の前後両側部分のうちのいずれか一方に、蓄冷材容器の厚み方向の寸法である容器高さが他の部分の容器高さよりも高くなった内容積増大部が設けられている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
冷媒流通管部および蓄冷材容器よりなる複数の組が間隔をおいて配置されており、冷媒流通管部および蓄冷材容器よりなる組の隣り合うものどうしの間の部分が通風間隙となされ、通風間隙にフィンが配置されて冷媒流通管部および蓄冷材容器に接合されている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
蓄冷材容器およびフィンの前後両側部分のうちのいずれか一方が、冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前後方向外側に突出した部分に内容積増大部が設けられ、蓄冷材容器の内容積増大部の両面にフィンが接合されている請求項2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
蓄冷材容器の内部どうしが内容積増大部において連通させられている請求項3記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
蓄冷材容器およびフィンの前側部分が冷媒流通管部よりも前方に突出させられ、蓄冷材容器における冷媒流通管部よりも前方に突出した部分に内容積増大部が設けられている請求項3または4記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
複数の冷媒流通管部が前後方向に並んで配置され、少なくとも前端に配置された冷媒流通管部の厚み方向の寸法である管部高さが他の冷媒流通管部の管部高さよりも低くなっており、蓄冷材容器における管部高さの低い冷媒流通管部と接触する部分に内容積増大部が設けられている請求項1または2記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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