説明

蓄冷機能付きエバポレータ

【課題】蓄冷性能および放冷性能が向上した蓄冷機能付きエバポレータを提供する。
【解決手段】蓄冷機能付きエバポレータ1は、間隔をおいて配置された複数の扁平状冷媒流通管13と、内部にインナーフィン23が配置された複数の蓄冷材容器16とを有する。隣り合う冷媒流通管13どうしの間に形成された全通風間隙15のうち一部の通風間隙15に蓄冷材容器16を配置する。蓄冷材容器16の左右両側壁21aを両側の冷媒流通管13に沿わせる。蓄冷材容器16の両側壁21aに、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管13に接触した複数の凸部24を設ける。各凸部24は、蓄冷材容器16の側壁21aに一体に形成された1対の外方突出壁および両外方突出壁の先端どうしを連結する連結壁からなる。各凸部24の両外方突出壁間をろう材で満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンに用いられる蓄冷機能付きエバポレータに関する。
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、図1の上下、左右を左右というものとする。
【背景技術】
【0003】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0004】
しかしながら、通常のカーエアコンにおいては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とする圧縮機が停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0005】
そこで、このような問題を解決するために、エバポレータに蓄冷機能を付与し、エンジンが停止して圧縮機が停止した際に、エバポレータに蓄えられた冷熱を放冷して車室内を冷却することが考えられている。
【0006】
この種の蓄冷機能付きエバポレータとして、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた複数の扁平状冷媒流通管が、互いに間隔をおいて並列状に配置されており、隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材が封入された蓄冷材容器が配置されるとともに、残りの通風間隙にアウターフィンが配置され、アウターフィンが、蓄冷材容器が配置された通風間隙の両隣の通風間隙に配置され、蓄冷材容器の左右両側壁が、蓄冷材容器が配置された通風間隙を形成する両側の冷媒流通管に沿わされ、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置され、蓄冷材容器の左右両側壁に、外方に膨出した複数の膨出部が点在するように形成されるとともに膨出部の膨出頂壁が冷媒流通管に接触しており、各蓄冷材容器における一方の側壁の膨出部と他方の側壁の膨出部とが同一の形状および同一の大きさであるとともに、左右いずれか一方から見て同一位置に設けられ、インナーフィンが、蓄冷材容器の左右両側壁における膨出部が形成されていない部分に接合されている蓄冷機能付きエバポレータが提案されている(特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータによれば、圧縮機が作動している通常の冷房時には、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱が蓄冷材容器の膨出部の膨出頂壁を経て側壁全体に伝わり、側壁におけるインナーフィンへの接触部分からインナーフィンを経て蓄冷材容器内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられるようになっている。一方、圧縮機が停止した際には、蓄冷材容器内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、インナーフィンからインナーフィンへの接触部分を経て蓄冷材容器の両側壁に伝えられ、ついで膨出部の膨出頂壁を経て冷媒流通管に伝えられ、冷媒流通管を通って蓄冷材容器が配置された通風間隙の両隣の通風間隙に配置されたアウターフィンに伝えられ、アウターフィンから当該通風間隙を流れる空気に放冷されるようになっている。
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータにおいては、図7に示すように、各蓄冷材容器(60)における一方の側壁(60a)の膨出部(61)と他方の側壁(60a)の膨出部(61)とが同一の形状および同一の大きさであり、蓄冷材容器(60)の左右両側壁(60a)における膨出部(61)が形成されていない部分だけがインナーフィン(62)に接触し、膨出部(61)の膨出頂壁はインナーフィン(62)に接触していないので、蓄冷材容器(60)を左右いずれか一方から見た際の左右両側壁(60a)と冷媒流通管(63)とが重なる重なり部分において、蓄冷材容器(60)の左右両側壁(60a)におけるインナーフィン(62)への接触面積の前記重なり部分全体の面積に対する比率がかなり小さくなっている。したがって、蓄冷時および放冷時のいずれに場合においても、インナーフィン(62)を利用した蓄冷材容器(60)の左右両側壁(60a)と蓄冷材との間の熱伝達効率が十分ではなく、蓄冷性能および放冷性能が劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2011−12947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明の目的は、上記問題を解決し、蓄冷性能および放冷性能が向上した蓄冷機能付きエバポレータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0012】
1)長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた状態で互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の扁平状冷媒流通管と、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた状態で配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを有し、蓄冷材容器の少なくとも一方の側壁が冷媒流通管に沿わされて冷媒流通管に熱的に接触させられ、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置され、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
蓄冷材容器における冷媒流通管に沿う側壁に、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管に接触した複数の凸部が点在するように設けられており、各凸部が、蓄冷材容器の側壁に一体に形成された1対の外方突出壁および両外方突出壁の先端どうしを連結する連結壁からなり、各凸部の両外方突出壁間がろう材で満たされている蓄冷機能付きエバポレータ。
【0013】
2)隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器の左右両側壁が、蓄冷材容器が配置された通風間隙を形成する両側の冷媒流通管に沿わされ、蓄冷材容器の両側壁に凸部が設けられている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0014】
3)各冷媒流通管の片面側のみに蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器の一方の側壁が冷媒流通管に沿わされるとともに当該側壁に凸部が設けられ、冷媒流通管および蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う前記組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされている上記1)記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0015】
4)各凸部の両外方突出壁間の間隔が0.2mm以下である上記1)〜3)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0016】
5)各凸部の長さ方向の寸法が幅方向の寸法に比較して大きくなっており、凸部の幅が、凸部が設けられた側壁の肉厚の2倍以上となっている上記1)〜4)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0017】
6)蓄冷材容器の側壁外面からの凸部の突出高さが0.5mm以上である上記1)〜5)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0018】
7)蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、凸部と冷媒流通管との接触面積が、前記重なり部分の面積の20%以上である上記1)〜6)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【0019】
8)蓄冷材容器が、両面にろう材層を有するブレージングシートからなる金属板を相互にろう付することにより形成されている上記1)〜7)のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【発明の効果】
【0020】
上記1)〜8)の蓄冷機能付きエバポレータによれば、蓄冷材容器における冷媒流通管に沿う側壁に、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管に接触した複数の凸部が点在するように設けられており、各凸部が、蓄冷材容器の側壁に一体に形成された1対の外方突出壁および両外方突出壁の先端どうしを連結する連結壁からなり、各凸部の両外方突出壁間がろう材で満たされているので、蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の蓄冷材容器における冷媒流通管に沿う側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、側壁とインナーフィンとの接触面積が、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比較して大きくなる。したがって、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比較して、蓄冷時および放冷時のいずれに場合においても、蓄冷材容器の側壁と蓄冷材との間のインナーフィンを介しての熱伝達性能が優れたものになり、特許文献1記載の蓄冷機能付きエバポレータに比較して、蓄冷性能および放冷性能が向上する。
【0021】
また、凸部の存在により冷媒流通管と蓄冷材容器との間に隙間が形成され、当該隙間を通って風が流れる。したがって、通気抵抗の上昇を抑制することができる。さらに、冷媒流通管の外側面に発生する凝縮水を、凸部の存在により冷媒流通管と蓄冷材容器との間に形成される隙間を通して排水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示す一部切り欠き斜視図である。
【図2】図1のA−A線拡大断面図である。
【図3】図2のB−B線断面図である。
【図4】図1の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器の右側面図である。
【図5】図1の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器の分解斜視図である。
【図6】この発明の蓄冷機能付きエバポレータの他の実施形態を示す図2相当の断面図である。
【図7】従来の蓄冷機能付きエバポレータの蓄冷材容器を示す図3相当の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0024】
以下の説明において、通風方向下流側(図面に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとする。
【0025】
さらに、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0026】
図1はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの全体構成を示し、図2〜図5はその要部の構成を示す。
【0027】
図1において、蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(2)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(3)と、両ヘッダタンク(2)(3)間に設けられた熱交換コア部(4)とを備えている。
【0028】
第1ヘッダタンク(2)は、前側(通風方向下流側)に位置する風下側上ヘッダ部(5)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ風下側上ヘッダ部(5)に一体化された風上側上ヘッダ部(6)とを備えている。風下側上ヘッダ部(5)の右端部に冷媒入口(7)が設けられ、風上側上ヘッダ部(6)の右端部に冷媒出口(8)が設けられている。第2ヘッダタンク(3)は、前側に位置する風下側下ヘッダ部(9)と、後側に位置しかつ風下側下ヘッダ部(9)に一体化された風上側下ヘッダ部(11)とを備えている。第2ヘッダタンク(3)の風下側下ヘッダ部(9)内と風上側下ヘッダ部(11)内とは、両下ヘッダ部(9)(11)の右端部に跨って接合され、かつ内部が通路となった連通部材(12)を介して通じさせられている。
【0029】
図1および図2に示すように、熱交換コア部(4)には、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向(前後方向)を向いた複数のアルミニウム押出形材製扁平状冷媒流通管(13)が、左右方向に間隔をおいて並列状に配置されている。ここでは、前後方向に間隔をおいて配置された2つの冷媒流通管(13)からなる複数の組(14)が左右方向に間隔をおいて配置されており、前後の冷媒流通管(13)よりなる組(14)の隣り合うものどうしの間に通風間隙(15)が形成されている。前側の冷媒流通管(13)の上端部は風下側上ヘッダ部(5)に接続されるとともに、同下端部は風下側下ヘッダ部(9)に接続されている。また、後側の冷媒流通管(13)の上端部は風上側上ヘッダ部(6)に接続されるとともに、同下端部は風上側下ヘッダ部(11)に接続されている。
【0030】
熱交換コア部(4)における全通風間隙(15)のうち一部の複数の通風間隙(15)でかつ隣接していない通風間隙(15)に、内部に蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製扁平状蓄冷材容器(16)が、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が前後方向を向いた状態で前後両冷媒流通管(13)に跨るように配置されている。また、残りの通風間隙(15)に、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなり、かつ前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアウターフィン(17)が、前後両冷媒流通管(13)に跨るように配置されて通風間隙(15)を形成する左右両側の組(14)を構成する前後両冷媒流通管(13)にろう付されており、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両側の通風間隙(15)にそれぞれアウターフィン(17)が配置されている。また、左右両端の冷媒流通管(13)の組(14)の外側にも両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートからなるアウターフィン(17)が配置されて前後両冷媒流通管(13)にろう付され、さらに左右両端のアウターフィン(17)の外側にアルミニウム製サイドプレート(18)が配置されてアウターフィン(17)にろう付されている。左右両端のアウターフィン(17)とサイドプレート(18)との間も通風間隙となっている。
【0031】
図2〜図4に示すように、蓄冷材容器(16)は、前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後2つの冷媒流通管(13)にろう付された本体部(21)と、本体部(21)の前側縁部(風下側縁部)に連なるとともに前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも前方(通風方向外側)に張り出すように設けられた外方張り出し部(22)とを備えており、本体部(21)の左右両面がそれぞれ左右両側の冷媒流通管(13)の片面に沿わされている。蓄冷材容器(16)内に、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状のアルミニウム製インナーフィン(23)が、本体部(21)から外方張り出し部(22)に至るように配置されており、波底部および波頂部が蓄冷材容器(16)の本体部(21)の左右両側壁(21a)にろう付されている。蓄冷材容器(16)内へ充填される蓄冷材としては、凝固点が5〜10℃程度に調整されたパラフィン系潜熱蓄冷材が用いられる。具体的には、ペンタデカン、テトラデカンなどが用いられる。
【0032】
蓄冷材容器(16)の本体部(21)における左右の各側壁(21a)に、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管(13)に接触した状態でろう付された複数の凸部(24)が点在するように設けられている。凸部(24)の長さ方向の寸法は幅方向の寸法に比較して大きくなった直線状であるとともに、風上側(前側)から風下側(後側)に向かって下方に傾斜しており、蓄冷材容器(16)の本体部(21)における左右の各側壁(21a)の風下側部分および風上側部分に、それぞれ上下方向に間隔をおいて設けられている。各凸部(24)は本体部(21)の左右両側壁(21a)を外方に突出するように変形させることにより形成されており、各側壁(21a)に一体に形成された1対の外方突出壁(24a)および両外方突出壁(24a)の先端どうしを連結する連結壁(24b)からなる。各凸部(24)の両外方突出壁(24a)間の間隔は0.2mm以下であることが好ましく、両外方突出壁(24a)間は、図示しないろう材で満たされている。また、各凸部(24)の幅は側壁(21a)の肉厚の2倍以上であり、側壁(21a)外面からの凸部(24)の突出高さが0.5mm以上であることが好ましい。さらに、蓄冷材容器(16)を左右いずれか一方から見た際の左右の各側壁(21a)と各冷媒流通管(13)とが重なる重なり部分において、凸部(24)と各冷媒流通管(13)との接触面積は、前記重なり部分の面積の20%以上であることが好ましい。
【0033】
図5に示すように、蓄冷材容器(16)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ周縁部どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板(25)よりなる。両アルミニウム板(25)における本体部(21)を形成する部分、すなわち前側部分を除いた大部分には、左右方向外方に膨出した第1膨出部(26)が設けられ、同じく外方張り出し部(22)を形成する部分、すなわち前側部分には、第1膨出部(26)の前側に連なるとともに左右方向外方に膨出し、かつ第1膨出部(26)よりも膨出高さの高い第2膨出部(27)が、上下方向の全長にわたって設けられている。第1膨出部(26)の膨出頂壁に凸部(24)が形成されている。
【0034】
そして、2枚のアルミニウム板(25)を、インナーフィン(23)を間に挟んで第1および第2膨出部(26)(27)の開口どうしが対向するように組み合わせ、この状態でろう付することによって蓄冷材容器(16)が形成されている。ここで、両アルミニウム板(25)の第1膨出部(26)により本体部(21)が形成され、第2膨出部(27)により外方張り出し部(22)が形成されている。
【0035】
アウターフィン(17)は、前側熱交換管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後の熱交換管(13)にろう付されたフィン本体部(28)と、フィン本体部(28)の前側縁に連なるとともに前側熱交換管(13)の前側縁よりも前方に張り出すように設けられた外方張り出し部(29)とを備えている。そして、蓄冷材容器(16)が配置された通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)に配置されたアウターフィン(17)の外方張り出し部(29)が、蓄冷材容器(16)の外方張り出し部(22)の左右両側面にろう付されている。また、隣接するアウターフィン(17)の外方張り出し部(29)間にはアルミニウム製スペーサ(31)が配置されており、外方張り出し部(29)にろう付されている。
【0036】
上述した蓄冷機能付きエバポレータ(1)は、車両のエンジンを駆動源とする圧縮機、圧縮機から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(冷媒冷却器)、コンデンサを通過した冷媒を減圧する膨張弁(減圧器)とともに冷凍サイクルを構成し、カーエアコンとして、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両、たとえば自動車に搭載される。そして、圧縮機が作動している場合には、圧縮機で圧縮されてコンデンサおよび膨張弁を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(7)を通って蓄冷機能付きエバポレータ(1)の風下側上ヘッダ部(5)内に入り、全冷媒流通管(13)を通って風上側上ヘッダ部(6)の冷媒出口(8)から流出する。そして、冷媒が冷媒流通管(13)内を流れる間に、通風間隙(15)を通過する空気と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0037】
このとき、冷媒流通管(13)内を流れる冷媒の有する冷熱が、蓄冷材容器(16)の本体部(21)の両側壁(21a)に設けられて冷媒流通管(13)にろう付されている凸部(24)から両側壁(21a)を経てインナーフィン(23)に伝わり、さらに蓄冷材容器(16)内の蓄冷材に伝わって蓄冷材に冷熱が蓄えられる。
【0038】
圧縮機が停止した場合には、蓄冷材容器(16)内の蓄冷材に蓄えられた冷熱が、インナーフィン(23)を経て蓄冷材容器(16)の本体部(21)の両側壁(21a)に伝わり、さらに凸部(24)を経て冷媒流通管(13)に伝わり、さらに冷媒流通管(13)を通過して当該冷媒流通管(13)にろう付されているアウターフィン(17)に伝わる。そして、アウターフィン(17)を介して蓄冷材容器(16)が配置されている通風間隙(15)の両隣の通風間隙(15)を通過する空気に伝えられる。したがって、エバポレータ(1)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0039】
上記実施形態においては、蓄冷材容器(16)に配置されたインナーフィン(23)はコルゲート状であるが、これに代えて、前後方向(通風方向)にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部および波頂部と波底部とを連結する連結部を有する波状帯板が、通風方向に複数並べられるとともに相互に一体に連結されることにより形成されたオフセット状のインナーフィンが用いられていてもよい。この場合、インナーフィンの帯板の波頂部および波底部が蓄冷材容器(16)の本体部(21)の左右両側壁(21a)にろう付される。
【0040】
図6はこの発明による蓄冷機能付きエバポレータの他の実施形態を示す。
【0041】
図6において、熱交換コア部(4)における前後2つの冷媒流通管(13)からなる各組(14)の片面、ここでは左面側に、各組(14)の2つの冷媒流通管(13)に跨るように、内部に蓄冷材(図示略)が封入されたアルミニウム製扁平状蓄冷材容器(40)が、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が前後方向を向いた状態で配置されており、蓄冷材容器(40)の右面の少なくとも一部が右側の冷媒流通管(13)の左面に沿わされている。
【0042】
蓄冷材容器(40)は、前側冷媒流通管(13)の前側縁よりも後方に位置し、かつ各組(14)の前後の冷媒流通管(13)にろう付された本体部(41)と、本体部(41)の前側縁部に連なるとともに前側冷媒流通管(13)よりも前方に張り出すように設けられた外方張り出し部(42)とを備えており、本体部(41)の右面が右側の冷媒流通管(13)の左面に沿わされている。
【0043】
蓄冷材容器(40)の本体部(41)の右側壁(41a)に、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管(13)に接触した状態でろう付された複数の凸部(24)が点在するように設けられている。凸部(24)の構成は、図1〜図5に示す第1の実施形態の蓄冷機能付きエバポレータ(1)と同じである。
【0044】
蓄冷材容器(40)の外方張り出し部(42)は、上下方向の寸法が本体部(41)の上下方向の寸法と等しく、かつ左右方向の寸法が本体部(41)の左右方向の寸法よりも大きくなっており、本体部(41)に対して左右方向外方に膨出している。外方張り出し部(42)の左右方向の寸法は、冷媒流通管(13)の左右方向の寸法である管高さに、蓄冷材容器(40)の本体部(41)の左右方向の寸法と、凸部(24)の突出高さを加えた高さと等しくなっている。
【0045】
蓄冷材容器(40)内には、本体部(41)の後端部から外方張り出し部(42)の前端部に至るアルミニウム製インナーフィン(43)が、上下方向のほぼ全体にわたって配置されている。インナーフィン(43)は、前後方向にのびる波頂部、前後方向にのびる波底部、および波頂部と波底部とを連結する連結部よりなるコルゲート状である。インナーフィン(43)のフィン高さは全体に等しく、蓄冷材容器(40)の本体部(41)および外方張り出し部(42)の左側壁内面と、本体部(41)の右側壁(41a)内面とにろう付されている。
【0046】
蓄冷材容器(40)は、両面にろう材層を有するアルミニウムブレージングシートにプレス加工が施されることにより形成され、かつ周縁部どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板周縁部どうしが互いにろう付された2枚の略縦長方形状アルミニウム板(44)(45)よりなる。蓄冷材容器(40)を構成する右側のアルミニウム板(44)における本体部(41)を形成する部分、すなわち前側部分を除いた大部分に凸部(24)が形成されている。また、右側のアルミニウム板(44)における外方張り出し部(42)を形成する部分、すなわち前側部分には、右方に膨出した膨出部(46)が、上下方向の全長にわたって設けられている。
【0047】
蓄冷材容器(40)を構成する左側のアルミニウム板(45)における本体部(41)を形成する部分、すなわち前側部分を除いた大部分には、左方に膨出した第1膨出部(47)が設けられ、同じく外方張り出し部(42)を形成する部分、すなわち前側部分には、第1膨出部(47)の前側に連なるとともに右方に膨出し、かつ第1膨出部(47)と膨出高さの等しい第2膨出部(48)が、上下方向の全長にわたって設けられている。
【0048】
そして、2枚のアルミニウム板(44)(45)を、インナーフィン(43)を間に挟んで左側アルミニウム板(45)の第1膨出部(47)の開口を、右側アルミニウム板(44)の本体部(41)を形成する部分で塞ぐとともに、両アルミニウム板(44)(45)の膨出部(46)(48)の開口どうしが対向するように組み合わせ、この状態でろう付することによって蓄冷材容器(40)が形成されている。ここで、右側アルミニウム板(44)の後側部分と左側アルミニウム板(45)の第1膨出部(47)により本体部(41)が形成され、右側アルミニウム板(45)の膨出部(46)と左側アルミニウム板(45)の第2膨出部(48)により外方張り出し部(42)が形成されている。
【0049】
熱交換コア部(4)において、前後方向に並んだ2つの冷媒流通管(13)からなる各組(14)および各組(14)の2つの冷媒流通管(13)に跨って配置された蓄冷材容器(40)によって、複数の組み合わせ体(49)が構成されている。当該組み合わせ体(49)は左右方向に間隔をおいて配置されており、隣り合う組み合わせ体(49)どうしの間が通風間隙(15)となるとともに、当該通風間隙(15)にアルミニウム製アウターフィン(17)が配置されて冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(40)にろう付されている。各組(14)の冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(40)からなる組み合わせ体(49)の右側に位置するアウターフィン(17)のフィン本体部(28)は各組(14)の前後の冷媒流通管(13)にろう付され、同じく外方張り出し部(29)は蓄冷材容器(40)の外方張り出し部(42)にろう付されている。また、各組(14)の冷媒流通管(13)および蓄冷材容器(40)からなる組み合わせ体(49)の左側に位置するアウターフィン(17)のフィン本体部(28)は蓄冷材容器(40)の本体部(41)にろう付され、同じく外方張り出し部(29)は蓄冷材容器(40)の外方張り出し部(42)にろう付されている。
【産業上の利用可能性】
【0050】
この発明による蓄冷機能付きエバポレータは、停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両のカーエアコンを構成する冷凍サイクルに好適に用いられる。
【符号の説明】
【0051】
(1):蓄冷機能付きエバポレータ
(13):冷媒流通管
(15):通風間隙
(16)(40):蓄冷材容器
(21)(41):本体部
(21a)(41a):側壁
(23)(43):インナーフィン
(24):凸部
(24a):外方突出壁
(24b):連結壁
(25):アルミニウム板(金属板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた状態で互いに間隔をおいて並列状に配置された複数の扁平状冷媒流通管と、長手方向が上下方向を向くとともに幅方向が通風方向を向いた状態で配置され、かつ内部に蓄冷材が封入された複数の蓄冷材容器とを有し、蓄冷材容器の少なくとも一方の側壁が冷媒流通管に沿わされて冷媒流通管に熱的に接触させられ、蓄冷材容器内にインナーフィンが配置され、蓄冷材容器内の蓄冷材が、冷媒流通管内を流れる冷媒の有する冷熱により冷却されるようになされている蓄冷機能付きエバポレータにおいて、
蓄冷材容器における冷媒流通管に沿う側壁に、外方に突出しかつ突出端部が冷媒流通管に接触した複数の凸部が点在するように設けられており、各凸部が、蓄冷材容器の側壁に一体に形成された1対の外方突出壁および両外方突出壁の先端どうしを連結する連結壁からなり、各凸部の両外方突出壁間がろう材で満たされている蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項2】
隣り合う冷媒流通管どうしの間に通風間隙が形成され、全通風間隙のうち一部の通風間隙に蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器の左右両側壁が、蓄冷材容器が配置された通風間隙を形成する両側の冷媒流通管に沿わされ、蓄冷材容器の両側壁に凸部が設けられている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項3】
各冷媒流通管の片面側のみに蓄冷材容器が配置され、蓄冷材容器の一方の側壁が冷媒流通管に沿わされるとともに当該側壁に凸部が設けられ、冷媒流通管および蓄冷材容器からなる組み合わせ体が、冷媒流通管の幅方向と直角をなす方向に間隔をおいて配置され、隣り合う前記組み合わせ体どうしの間が通風間隙とされている請求項1記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項4】
各凸部の両外方突出壁間の間隔が0.2mm以下である請求項1〜3のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項5】
各凸部の長さ方向の寸法が幅方向の寸法に比較して大きくなっており、凸部の幅が、凸部が設けられた側壁の肉厚の2倍以上となっている請求項1〜4のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項6】
蓄冷材容器の側壁外面からの凸部の突出高さが0.5mm以上である請求項1〜5のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項7】
蓄冷材容器を左右いずれか一方から見た際の側壁と冷媒流通管とが重なる重なり部分において、凸部と冷媒流通管との接触面積が、前記重なり部分の面積の20%以上である請求項1〜6のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。
【請求項8】
蓄冷材容器が、両面にろう材層を有するブレージングシートからなる金属板を相互にろう付することにより形成されている請求項1〜7のうちのいずれかに記載の蓄冷機能付きエバポレータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−79761(P2013−79761A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219957(P2011−219957)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(512025676)株式会社ケーヒン・サーマル・テクノロジー (25)
【Fターム(参考)】